JP4130346B2 - 磁気共鳴撮像装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、脂肪等の抑制すべき撮像対象からの信号を抑制して撮像するための磁気共鳴撮像装置および磁気共鳴信号抑制方法に関する。
特定的には、本発明は、特定のタイミングで抑制信号を印加することによって、撮像に用いるフーリエデータ空間を充填する順番が所定の軌跡に沿って変化する場合にも効果的に所望の信号を抑制することが可能な磁気共鳴撮像装置および磁気共鳴信号抑制方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
磁気共鳴撮像において、磁気共鳴信号に基づいて得られ、磁気共鳴診断画像を生成するために用いられるデータを、コンピュータのメモリ等の記憶手段に配列したものを、フーリエデータ空間、またはk空間と呼ぶ。
k空間は、通常、被検部位のおよその形状やコントラストを表わす低周波数成分のデータが中心部の領域に位置し、画像の細部に関連する高周波数成分のデータが周辺部の領域に位置するように配列される。
【0003】
脂肪等の、診断時に不要な組織の信号を抑制した画像を得る方法としては、エコーデータの入手順序を、k空間がたとえば行ごとに一方の端部から他方の端部まで一方向に進行する向きに沿って充填されるように規定し、各行の充填を開始する端部において常に抑制パルスを印加する方法が知られている(たとえば、非特許文献1参照。)。
【0004】
【非特許文献1】
マグラー・ジェイピー・3世(Mugler JP 3rd),ブルックマン・ジュニア(Brookeman JR.),「3次元前磁化高速グラディエントエコー・イメージング(Three-dimensional magnetization-prepared rapid gradient-echo imaging)」,マグネティック・レゾナンス・イン・メディシン(Magnetic Resonance in Medicine)1990年7月,15(1):p152-157
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の方法では、k空間の各行の充填を開始する端部において必ず抑制パルスを印加するため、撮像時間が長くなっていた。
また、k空間の端部から、一方向に進行する軌跡に沿ってk空間を充填していく以外の充填方法においては、k空間の端部において抑制パルスを印加していたのでは、抑制パルス印加による縦緩和の影響の向きと、データを充填していく向きが異なるため画像にアーチファクトが発生し、実用的ではなかった。
【0006】
したがって、k空間を充填する軌跡の向きが変化する場合にも磁気共鳴信号の特定の周波数成分を抑制する効果があり、撮影時間も可能な限り短くなり、アーチファクトの発生しにくい実用的な磁気共鳴撮像装置を提供することが本発明の目的である。
また、k空間を充填する軌跡の向きが変化する場合にも磁気共鳴信号の特定の周波数成分を抑制する効果のある磁気共鳴信号抑制方法を提供することも本発明の目的である
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る磁気共鳴撮像装置は、静磁場内の被検体の被検部位にRF信号を送信するRF信号送信手段と、前記被検部位に位置情報を付与する勾配磁場を発生させる勾配磁場発生手段と、前記被検部位からの磁気共鳴信号を受信する磁気共鳴信号受信手段と、前記RF信号の送信と前記勾配磁場の発生と前記磁気共鳴信号受信手段による受信を制御する制御手段とを備え、前記制御手段により所定のタイミングで前記被検部位に前記RF信号を送信させ、前記勾配磁場を所定の大きさに変化させて得られる前記磁気共鳴信号に基づくデータを、フーリエデータ空間のうち前記勾配磁場の大きさに応じた領域に充填する部分パルスシーケンスを繰り返すパルスシーケンスにより、画像の元データを得る磁気共鳴撮像装置であって、前記制御手段は、前記フーリエデータ空間の低周波数成分領域に前記データを充填する前記部分パルスシーケンスの前に、周波数選択性抑制信号を前記RF信号として前記被検部位に送信させる、磁気共鳴撮像装置である。
【0008】
また、本発明に係る磁気共鳴撮像装置は、前記制御手段により前記被検部位に前記RF信号を送信させ、前記勾配磁場の大きさを変化させて得られる前記磁気共鳴信号に基づくデータを、中央部の最も低い周波数成分領域から周辺部の高周波数成分領域に向かう螺旋状の軌跡でフーリエデータ空間に充填するパルスシーケンスにより、画像の元データを得る磁気共鳴撮像装置であって、前記制御手段は、前記パルスシーケンスの前に、周波数選択性抑制信号を前記RF信号として前記被検部位に送信させる磁気共鳴撮像装置の構成を採用することも可能である。
【0009】
本発明に係る磁気共鳴信号抑制方法は、静磁場内の被検体の被検部位に、所定のタイミングでRF信号を送信し、前記被検部位に印加する勾配磁場を所定の大きさに変化させて得られる磁気共鳴信号に基づくデータを、フーリエデータ空間のうち前記勾配磁場の大きさに応じた領域に充填する部分パルスシーケンスを繰り返すパルスシーケンスに対して、所定のタイミングで周波数選択性抑制信号を前記被検部位に送信して、所定の周波数成分が抑制された前記磁気共鳴信号を得る磁気共鳴信号抑制方法であって、前記所定のタイミングは、前記フーリエデータ空間の低周波数成分領域に前記データを充填する前記部分パルスシーケンスの前である、磁気共鳴信号抑制方法である。
【0010】
本発明における磁気共鳴信号抑制方法は、静磁場内の被検体の被検部位にRF信号を送信し、前記被検部位に印加する勾配磁場を所定の大きさに変化させて得られる磁気共鳴信号に基づくデータを、中央部の最も低い周波数成分領域から周辺部の高周波数成分領域に向かう螺旋状の軌跡でフーリエデータ空間に充填するパルスシーケンスの前に、周波数選択性抑制信号を前記被検部位に送信して、所定の周波数成分が抑制された前記磁気共鳴信号を得る、磁気共鳴信号抑制方法であってもよい。
【0011】
本発明においては、磁気共鳴撮像のために、一様な静磁場内の被検体の被検部位に、RF信号送信手段によりRF信号が送信される。
被検部位の位置情報を得るために、勾配磁場発生手段が被検部位に勾配磁場を印加させる。
RF信号送信手段から送信されたRF信号によって励起された被検部位からの磁気共鳴信号は、磁気共鳴信号受信手段によって受信される。
制御手段は、勾配磁場発生手段による勾配磁場の大きさおよびその発生タイミング、RF信号送信手段によるRF信号の送信タイミングを制御し、磁気共鳴信号受信手段が受信した磁気共鳴信号を選択的に入手する。これにより、磁気共鳴信号に基づくデータを、勾配磁場の大きさに応じた領域に充填する部分パルスシーケンスが生成される。
部分パルスシーケンスを所定回数繰り返したパルスシーケンスにより、画像の元となるデータを得ることができる。
【0012】
制御手段は、フーリエデータ空間の低周波数成分領域のうちの所定の領域にデータを充填する部分パルスシーケンスの前に、RF信号送信手段により周波数選択性抑制信号をRF信号として被検部位に送信する。
これにより、被検部位からの磁気共鳴信号のうちの、所定の周波数成分が抑制される。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について述べる。
まず、磁気共鳴撮像装置(以下、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置)の構成例について述べる。
以下では、MRIの一例として、造影剤を用いた頭部の血管撮像を行なう場合を例に挙げて述べる。
【0014】
図1は、本発明に係るMRI装置の一構成例を示す要部の概略構成図である。
図1に示すMRI装置20は、マグネットシステム21と、RF(Radio Frequency)コイル駆動部271と、勾配コイル駆動部272と、データ収集部273と、制御部274と、画像処理部275とを有する。
【0015】
図1に示すマグネットシステム21は、静磁場の方向Zが、被検体99の体軸方向に沿っている、いわゆるクローズドタイプのものである。
マグネットシステム21は、静磁場発生用マグネット部212と、勾配コイル部213と、RFコイル部214を有する。
円筒形状の静磁場発生用マグネット部212の内周側に同じく円筒形状に勾配コイル部213が配置され、勾配コイル部213の内周側の空間がボア94となる。
被検体99は、クレードル243上に載置されて、ボア94内に搬送される。被検体99の頭部は、頭部をMR撮像する場合には、クレードル243上に載置される円筒状の頭部撮像用RFコイル部214内に収容される。
【0016】
静磁場発生用マグネット部212は、たとえば超伝導磁石を用いて構成される。超伝導磁石の他に、永久磁石や常伝導磁石などの磁場発生用磁石を用いてもよい。
円筒状に構成されたこれらの磁場発生用磁石によって、ボア94内において、図中体軸に平行なZ方向に、均一な静磁場が形成される。
【0017】
RFコイル部214は、本発明におけるRF信号送信手段の一実施態様に相当し、本実施の形態においては、磁気共鳴信号受信手段の一実施態様も兼ねている。
被検体99の被検部位および被検部位にRF信号を送信するためのRFコイル部214は、良好な磁気共鳴画像を入手するために、最も均一な静磁場が形成されている、ボア94の中心部分に位置付けられるが、図1においては、図示の明確さのために、頭部およびRFコイル部214はボア94の外部に描かれている。
RFコイル部214は、感度領域内の高周波の回転磁場(RF信号)の分布が均一になるように設計された形状のRFコイルによって、被検部位のスピンを励起するためにRF信号を送信する。このRF信号の送信を停止した際に被検部位から再放射される、被検部位のスピンに起因して生じる共鳴周波数を有する磁気共鳴信号が、再びRFコイルによって受信される。
回転磁場としては、一例として、2.13MHzから85MHzの範囲の高周波の磁場が用いられる。
【0018】
なお、RFコイル部は、図1に示すようなRFコイル部214に限らず、被検部位によっては、勾配コイル部213のさらに内周側に円筒形状に配置される場合もあるし、被検部位の表面近傍にかざして使用される表面コイルが用いられる場合もある。これらの他のRFコイル部についても、RF信号の送信用のコイルと磁気共鳴信号の受信用のコイルを同一のコイルによって兼用してもよいし、それぞれ異なる専用のコイルを用いてもよい。
【0019】
勾配コイル部213は、本発明における勾配磁場発生手段の一実施態様に相当する。勾配コイル部213は、RFコイル部214が受信する磁気共鳴信号に3次元の位置情報を持たせるために勾配磁場コイルを3系統有する。勾配コイル部213は、これらの勾配磁場コイルを用いて、静磁場発生用マグネット部212が形成した静磁界の強度にX方向、Y方向、Z方向の勾配を付ける勾配磁場を発生させる。
これら3つの勾配磁場は、1つが被検部位のスライスを選択するスライス選択勾配磁場であり、1つが位相エンコード勾配磁場であり、もう1つが読み取り勾配磁場(周波数エンコード勾配磁場とも言う)である。
【0020】
RFコイル駆動部271はRFコイル部214にRF信号励起駆動信号を与えることによりボア94にRF信号による高周波磁界を発生させ、被検体99の被検部位のスピンを励起する。
【0021】
勾配コイル駆動部272は勾配コイル部213に勾配磁場励起駆動信号を与えることによりボア94内に勾配磁場を発生させる。勾配コイル駆動部272は、勾配コイル部213の3系統の勾配コイルに対応して、図示しない3系統の駆動回路を有する。
【0022】
データ収集部273は、本実施の形態においては、RFコイル部214における受信用のチャンネルに接続され、受信信号を取り込み、それを磁気共鳴画像生成のための元データとして収集する。収集されたデータを所定の順序に配列したものがフーリエデータ空間、いわゆるk空間である。k空間を構成するデータは、たとえばデータ収集部273の図示しないRAM(Random Access Memory)に格納される。
データ収集部273は、画像を生成するためのk空間が全て充填されると、収集したデータを画像処理部275に送信する。
【0023】
画像処理部275は、データ収集部273から受け取った元データに対して所定の画像処理を施し、磁気共鳴画像を生成する。画像処理部275は、図1に示すように、好適にはMRI装置本体からは離れた場所に設置されているオペレータ装置280に、生成した画像の画像信号を送信する。
【0024】
制御部274は、本発明における制御手段の一実施態様に相当する。
制御部274は、オペレータ装置280からの指令信号を受けて、後述する所定の軌跡に沿ってk空間が充填されるようにRFコイル駆動部271、勾配コイル駆動部272、およびデータ収集部273を制御し、磁気共鳴信号に基づいたデータを得る。
また、制御部274は、オペレータ装置280を介して入力される、所望の画像を得るための各種指令信号を画像処理部275に送信する。
【0025】
オペレータ装置280は、図示はしないが、画像処理部275から送信された画像信号に基づいた磁気共鳴画像の表示やMRI装置20の操作のための操作画面を表示する表示部と、制御部274にオペレータからの操作信号を入力するための操作部とを備えており、オペレータ装置280を介してMRI装置20が操作される。
【0026】
ここで、図2を参照しながら、図1に示すMRI装置20を用いて被検体99の被検部位から磁気共鳴信号を入手するためのパルスシーケンスの一例について述べる。
図2は、グラディエントエコー法のパルスシーケンスを模式的に表わした図である。図2の横軸は経過時間tを表わしており、各グラフは、図2の上から順にRF信号送信シーケンスRF、スライス選択勾配磁場信号送信シーケンスG_slice、位相エンコード勾配磁場信号送信シーケンスG_phase、読み取り勾配磁場信号送信シーケンスG_read、磁気共鳴信号発生シーケンスSignal、データ収集シーケンスDaq(Data AcQuisition)をそれぞれ表わしている。
【0027】
グラディエントエコー法により磁気共鳴信号を取得するためには、まず、制御部274は勾配コイル駆動部272にスライス選択勾配磁場信号51を発生させる指令信号を出力し、被検部位の撮像スライスを選択する。
撮像スライスを励起した状態において、制御部274はRFコイル駆動部271に指令信号を出力し、静磁場が形成されているボア94内に配置されるRFコイル部214によって、被検部位にフリップ角α°のシンク(sinc)関数であるRF信号50を送信する。撮像データ収集のために1度RF信号50を送信することを、1ショットという。
【0028】
RF信号50によって被検部位のスピンを励起した後に、制御部274は、勾配コイル駆動部272に位相エンコード勾配磁場信号52を発生させる指令信号を出力し、位相方向の位置情報をエンコーディングする。
その次に、制御部274がRFコイル駆動部271を介して読み取り勾配磁場信号53をかけることにより、被検部位から磁気共鳴信号54が放出される。
制御部274は、RFコイル部214が受信する信号のうち、データ収集シーケンスDaqの図2に示す期間における磁気共鳴信号54のみを収集し、撮像データを得る。
収集された磁気共鳴信号54に基づく撮像データは、k空間のうち、その磁気共鳴信号54の位相エンコーディング量に応じた領域に充填される。
【0029】
RF信号50を印加して、位相エンコード勾配磁場により位相エンコードするステップは、目的とする画像のピクセルサイズに応じて、位相エンコード勾配磁場の大きさを変化させながら所定回数繰返される。この作業が、図2の位相エンコード勾配磁場信号送信シーケンスG_phaseにおける複数の位相エンコード勾配磁場信号52により表現されている。
【0030】
RF信号50の中心から磁気共鳴信号54の中心までの時間がエコー時間TEと呼ばれ、あるRF信号50の中心から次のRF信号50の中心までの時間が繰り返し時間TRと呼ばれる。
図2において、スライス選択勾配磁場信号送信シーケンスG_sliceにおけるリフェージング、位相エンコード、読み取り勾配磁場信号送信シーケンスG_readにおけるディフェージングは、エコー時間TEを短縮するために、同時に行なわれている。
【0031】
RF信号50の1ショットにより、複数の磁気共鳴信号54を得ることができる。RF信号50の印加後、得られる複数の磁気共鳴信号54を、その位相エンコーディング量に応じて、k空間の所定の領域に充填する各シーケンスを、それぞれ部分パルスシーケンスと呼ぶ。
部分パルスシーケンスを所定回数繰り返すパルスシーケンスにより、所望の診断画像のための元データを入手することができる。
【0032】
しかしながら、たとえば被検体99の頭部の血管の画像化などの場合には、RF信号50を送信した場合の脂肪と血管からの信号強度が近似しているため、コントラストが低く脂肪と血管の区別がつきにくい画像となる場合が多い。このため従来から、特定の組織からの磁気共鳴信号を抑制する抑制パルスシーケンスにより、組織の種類を区別し易い画像を生成することがあった。
しかしながら、前述のように、従来の磁気共鳴信号抑制パルスシーケンスは、撮像時間が長い、k空間を充填する軌跡が一定の向きに一様でなければ使用できない等の不都合が存在した。
以下では、本発明に係る磁気共鳴信号抑制パルスシーケンスの実施の形態について、脂肪の信号を抑制する脂肪抑制パルスシーケンスの場合を例に挙げて述べる。
【0033】
第1実施形態
図3は、本発明に係る脂肪抑制パルス印加シーケンスの第1実施形態を表わす図であり、図3(a)においては、k空間100を充填する順番が、軌跡tr1によって示されている。
簡単化のため、k空間100は6×6のマトリクス状にしているが、典型的には、k空間は128×256から512×512のマトリクス状に配置される。
k空間は、図3に示すような2次元平面だけでなく、画像の種類によっては3次元に配列される場合もあり、そのような場合においても本発明は適用することが可能である。
【0034】
本第1実施形態においては、図3(a)に示すように、k空間100の充填開始領域である中央部分の領域101のデータを収集する際に脂肪抑制パルスを最初に印加する。その後、領域101から出発する螺旋状の軌跡tr1に沿って、内部から外部へ向かってk空間を充填していく。
図3(a)に示されるように、軌跡tr1の向きは一定ではなく、k空間100において様々に変化している。
【0035】
前述のように、k空間の中心部には低周波数の磁気共鳴信号のデータが格納される。脂肪の水素原子のスピンの周波数を脂肪の周波数という。また、画像においては血管となる、水の水素原子のスピンの周波数を水の周波数という。脂肪の周波数は水の周波数よりも低いため、k空間100における低周波成分領域において脂肪の信号を抑制する脂肪抑制パルスを印加することにより、脂肪の信号を効果的に抑制することができる。
また、低周波成分は磁気共鳴画像における被検部位のおよその形状やコントラストに寄与する。したがって、被検部位の形状を明確にし、画像のコントラストを向上させる点からも、低周波成分領域において脂肪の信号を抑制することは効果的である。
なお、脂肪の信号を抑制することを、脂肪抑制という。
【0036】
脂肪抑制パルスによる脂肪抑制効果は、時間の経過とともに、また、収集する磁気共鳴信号の周波数が高くなるごとに弱くなる。この状態が図3(b)に示されており、領域101から軌跡tr1に従って、低周波成分領域から高周波領域成分に向かって順番にデータが収集されるにつれて、脂肪抑制効果は弱くなる。
【0037】
上記の脂肪抑制パルス印加シーケンスを、図2と同様のパルスシーケンスを用いてさらに詳細に述べる。
図4(a)が、脂肪抑制パルスを印加する場合の印加シーケンスを模式的に示しており、図4(b)が、図4(a)の印加シーケンスに対応した、脂肪の信号の縦緩和に関する信号強度を表わすグラフである。
図4(a)の横軸は図2の場合と同様に経過時間tであり、縦軸の各グラフも、図2と同じ種類の信号を表わしている。
【0038】
図4(a)は周波数選択抑制部a、定常状態作成部b、信号収集部cの3つの部分を有している。図3に示すようにk空間の所定の周波数成分領域において抑制を行なう場合には、図4(a)に示すように、まず周波数選択抑制部aにおいて、被検部位の所定の周波数成分の信号を抑制するためのRF信号を印加する。本第1実施形態においては、脂肪を抑制するために、脂肪の共振周波数と同じ周波数のsinc関数からなるRF信号である脂肪抑制パルス60を印加して、脂肪を励起する。
脂肪抑制パルス60が、本発明における周波数選択性抑制信号の一実施態様に相当する。
【0039】
脂肪抑制パルス60の印加に引き続き、たとえば、勾配コイル部213を用いてスライス選択勾配磁場によりフリップ角αf°の勾配磁場を印加させるように、勾配磁場信号61を勾配コイル駆動部272に入力する。これにより、励起された脂肪のスピンの位相が分散、スポイルされ、これ以降の新たなRF信号による励起に不感になる。
以後、脂肪のスピンをスポイルするための勾配磁場信号61を、スポイリング勾配磁場信号と称する。
また、後述する信号収集部cにおいて脂肪信号の大きさが最も低下するように、スポイリング勾配磁場信号61によって発生されるスライス選択勾配磁場のフリップ角αfを選択することが、効果的な脂肪抑制の観点から好ましい。
【0040】
周波数選択抑制部aにおける脂肪抑制パルス60とスポイリング勾配磁場信号61の印加により、図4(b)に示すように、脂肪の信号強度は負の方向に低下する。続く定常状態作成部bは、被検部位のスピンを定常状態にするためのシーケンスである。
脂肪信号に縦緩和の影響が存在していると、得られる画像にアーチファクトが発生し易いため、定常状態作成部bにおいて脂肪のスピンを定常状態にし、縦緩和の影響を低減することが、画質向上の点からは好ましい。しかしながら、周波数選択抑制部aにおいて脂肪は抑制されているため、撮像時間の短縮等を目的とする場合には、定常状態作成部は省略することも可能である。
【0041】
定常状態作成部bにおいては、図2に図解のシーケンスと同様の作業によって定常状態を作成する。即ち、スライス選択勾配磁場信号51aによりスライスを励起した状態において、フリップ角α°のRF信号50aを、励起したスライスに送信し、読み取り勾配磁場信号53aにより読み取り勾配磁場を印加することにより、磁気共鳴信号54aを発生させる。
ただし、このRF信号50aの印加とそれによる磁気共鳴信号54aの発生は、定常状態作成のための作業である。したがって、図4(a)に示す脂肪抑制シーケンスのデータ収集シーケンスDaqにおいては、磁気共鳴信号54aは収集しない。
また、磁気共鳴信号54aは画像生成のためのデータとしては用いないため、位置情報をエンコードするための位相エンコーディングも、定常状態作成部bにおいては行なわない。
【0042】
定常状態作成部bにおける作業によって定常状態が作成されることにより、図4(b)に示すように脂肪のスピンの縦緩和の影響が減少し、脂肪の信号強度は点P1において0となる。
【0043】
定常状態を作成した後には、信号収集部cにおいて、診断画像生成データの基となる磁気共鳴信号54bを収集する。
信号収集部cにおける作業は図2を参照して述べた部分パルスシーケンスと同じである。簡単に説明すると、スライス選択勾配磁場信号51bによりスライスを励起した状態において、フリップ角α°のRF信号50bを、励起したスライスに送信する。次いで、位相エンコード勾配磁場信号52に基づいて位相エンコード勾配磁場を発生させ、位相方向の位置情報をエンコーディングする。最後に、読み取り勾配磁場信号53bにより読み取り勾配磁場を印加することにより、磁気共鳴信号54bを発生させ、収集する。
以上により、脂肪信号が抑制された状態で磁気共鳴信号が入手可能であることが分かる。また、本実施形態においては、部分パルスシーケンスの前に、印加シーケンスが挿入されている。
【0044】
周波数選択抑制部aおよび定常状態作成部bのパルスシーケンスは、k空間のうちの脂肪抑制パルスを印加する周波数成分領域の数n1に対応した回数だけ実行される。一方、信号収集部cは、k空間の周波数成分領域の数n2だけ実行される。ただし、前述のように、信号収集部cにおいてRF信号50bは毎回印加されるわけではなく、磁気共鳴信号54bを所定個数収集するたびに印加される。
図3の場合には、領域101においては周波数選択抑制部aと定常状態作成部bと信号収集部cの全てが実行されるが、周波数選択抑制部aおよび定常状態作成部bが実行されるのは領域101においてのみであり、n1=1となる。
k空間100の領域101以外の領域においては信号収集部cのみが実行され、n2=36となる。
【0045】
以上のように、本第1実施形態においては、脂肪信号が抑制された磁気共鳴信号を得ることができる。
その場合に、k空間の最も低周波数領域部において1回だけ脂肪抑制パルスを印加しているため、縦緩和の影響を最小限に抑えることができ、縦緩和の影響に起因するアーチファクトを最小限に抑制することができる。
また、撮像時間を短縮可能な螺旋状の軌跡tr1を用いており、脂肪抑制の回数も1回であるため、従来の脂肪抑制方法に較べて撮像時間が非常に短い。同じ撮像時間の場合には、従来よりも多くの画像を得ることができる。
さらには、撮像時間が短くなるため、造影剤が流出しないうちに撮像が可能であり、また被検体の息止め時間も短くなるため、撮像が容易になり、高画質の画像を入手し易くもなる。
【0046】
第2実施形態
第1実施形態においては、脂肪抑制パルスを一度だけ印加した。しかし、図3(b)および図4(b)に示すように、撮像時間tが経過するにつれて脂肪の信号強度は回復して大きくなり、脂肪抑制効果は減少する。
本発明に係る脂肪抑制パルス印加シーケンスの第2実施形態においては、脂肪抑制パルスの印加回数を増やすことにより脂肪抑制効果を向上させる。
【0047】
図5(a)が、本発明に係る脂肪抑制パルス印加シーケンスの第2実施形態を表わす図である。本第2実施形態においては、軌跡tr1に従ってk空間100を充填していく際に、k空間100の行rw1と列cl1に含まれる十字型の領域において脂肪抑制パルスを印加してデータを収集する。
それ以外のMRI装置の構成と、脂肪抑制ならびに磁気共鳴信号入手のためのパルスシーケンスは第1実施形態の場合と同様であるため、詳細な記述は省略する。
【0048】
図5(a)に示す第2実施形態においては、脂肪抑制パルスが、第1実施形態の場合よりも多く印加される。脂肪抑制パルスの印加回数は、n1=11である。したがって、第1実施形態の場合よりも脂肪抑制効果は高い。
また、行rw1および列cl1はk空間100の各行、または列のうちの低周波数成分領域に相当するため、より効果的に脂肪を抑制することができる。さらに、k空間100の中心部の低周波数成分領域においては脂肪抑制パルスの印加回数が多くなっているため、さらに効果的な脂肪抑制を行なうことができる。
【0049】
第3実施形態
図5(b)は、本発明に係る脂肪抑制パルス印加シーケンスの第3実施形態を表わす図である。
本第3実施形態においては、第2実施形態において脂肪抑制パルスを印加した領域に、それ以外の行rw2と列cl2に含まれる領域を加えた、図5(a)の場合よりも幅の広い十字型の領域において、脂肪抑制パルスを印加している。
脂肪抑制パルスを新たに印加する領域も、行rw1または列cl1に隣接する行または列に位置しており、k空間100の低周波成分領域の近傍である。
【0050】
以上のように、本第3実施形態においては、第2実施形態の場合よりも多く、低周波成分領域近傍に脂肪抑制パルスを印加しているため、脂肪を、第2実施形態の場合よりもさらに効果的に抑制することができる。
ただし、印加回数が多くなるため、撮像時間は第2実施形態の場合よりも長くなる。
なお、脂肪抑制パルスを新たに印加する領域がk空間100における高周波成分領域であった場合には、脂肪抑制効果が低いばかりか、撮像時間の短縮にも寄与しない。
【0051】
第4実施形態
第3実施形態は、第2実施形態よりも脂肪抑制効果は高くなるが、撮像時間は長くなる。
図6に示す本発明に係る脂肪抑制パルス印加シーケンスの第4実施形態は、脂肪抑制効果の向上と撮像時間の抑制を両立させるための実施形態である。
図6においては、k空間100の中心部に位置する最も低い周波数成分領域を中心とした所定範囲の低周波成分領域である領域101〜104において脂肪抑制パルスを印加している。したがってパルスの印加回数はn1=4であり、第2、第3実施形態の場合よりも大幅に少ない。しかしながら、第1実施形態よりは印加回数は多い。
【0052】
領域101〜104は脂肪の周波数を抑制するために有効な低周波成分領域に位置しているため、脂肪抑制効果は高い。
また、領域104において脂肪抑制パルスを印加した場合、脂肪抑制効果は図6中の領域107の近傍まで持続するため、脂肪抑制パルス印加回数が少なくとも、高い脂肪抑制効果が期待できる。
さらに、画像の概略に寄与する領域において脂肪抑制を済ませていることにもなっているため、撮像を中止しk空間100の周辺部に格納すべきデータを収集しなかった場合にも、ある程度の画質の画像を得ることができる。
【0053】
以上により、第4実施形態によれば、撮像時間の増加を最小限に抑制しつつ、効果的に脂肪を抑制することができる。
また、撮像中に被検体が動いた等の理由により撮像を途中で中止した場合にも、ある程度脂肪抑制され、被検部位の概略をとらえることが可能な画質の画像を入手することができる。
【0054】
第5実施形態
図6に示す第4実施形態においては、k空間100の中心部分である低周波成分領域においてのみ脂肪抑制パルスを印加した。
しかしながら、k空間100の周辺部である高周波成分領域にも、脂肪信号の情報は含まれている。高周波成分は磁気共鳴画像の細部の再現に寄与するため、高周波成分領域において脂肪を抑制することは、画像の細部において脂肪と血管を区別し易くなることにつながる。
また、図3(b)に示したように、一度脂肪抑制パルスを印加した後は、縦緩和により脂肪の信号が回復するまでの間はある程度脂肪抑制効果が残留している。
したがって、以下では、これらのことを利用して、より効果的に脂肪を抑制する脂肪抑制パルス印加シーケンスについて述べる。
【0055】
図7(a)が、本発明に係る脂肪抑制パルス印加シーケンスの第5実施形態である。
図7(a)のk空間100の各領域の色の濃さが脂肪抑制効果の強さを表わしており、色が薄くなるほど脂肪抑制効果が弱くなることを示している。
【0056】
第5実施形態においては、まず、k空間100の最も周波数の低い中央部分の領域101において脂肪抑制パルスを印加する。
その後、螺旋状の軌跡tr1に従ってk空間100を充填してゆき、領域101において印加した脂肪抑制パルスの脂肪抑制効果が弱くなってきた領域105において再び脂肪抑制パルスを印加する。
その後も、所定の領域ごとに領域109、および領域113において脂肪抑制パルスを印加する。
【0057】
第5実施形態においては、脂肪抑制効果が持続する所定の領域ごとに脂肪抑制パルスを印加するため、脂肪抑制の効率が良い。
また、k空間100のうちの高周波成分領域近傍においても脂肪抑制パルスが印加されるため、さらなる画質向上が期待できる。
【0058】
なお、図7(a)においては3つの領域ごとに脂肪抑制パルスを印加しているが、印加する間隔を変えて、k空間100の中央部分においては密に脂肪抑制パルスを印加し、周辺部に向かうにつれて粗に印加してもよい。図7(b)に示す、本発明に係る脂肪抑制パルス印加シーケンスの第6実施形態は、脂肪抑制パルス印加の間隔を変化させた場合の一例である。
【0059】
第6実施形態
図7(b)においては、領域101と領域102において連続して脂肪抑制パルスを印加している。
その後、1つおきに、領域104と領域106において脂肪抑制パルスを印加している。
【0060】
第6実施形態においては、脂肪抑制パルスを印加する間隔を変化させているだけでなく、最初に印加した低周波成分領域101が存在する行または列と同じ行または列に、脂肪抑制パルスを印加する領域が位置するようにしている。
したがって、脂肪抑制パルスが印加される行または列においては縦緩和の影響が小さくなり、アーチファクトが発生しにくくなる。
【0061】
また、図7(b)においては、図6の第4実施形態の場合よりも高周波数成分領域である領域106においても脂肪抑制パルスを印加している。しかし、領域106は、図6において最後に脂肪抑制パルスが印加される領域104からそれほど離れた領域ではないため、造影剤の流出等の事項に必要以上に留意する必要がなくなる。また、被検体の息止め時間も短くなり、被検体への負荷も軽減される。
なお、造影剤としては、たとえばガドリニウム系造影剤を利用することができる。
【0062】
以上により、本第6実施形態によれば、撮像時間の抑制と画質の向上を高いレベルで両立させることができる。
撮像時間の抑制と画質向上の両立という観点から見れば、図7(b)に示す第6実施形態が最も優れており、次いで図5(a)に示す第2実施形態、図7(a)の第5実施形態の性能が良い。
【0063】
なお、上記第1〜6実施形態においては、磁気共鳴信号54bを所定回数収集するごとにRF信号50bをショットする部分パルスシーケンスを繰り返すことにより、画像の元データを収集した。しかし、RF信号50bを最初に1度だけ印加したのちに、全ての撮像データを収集してk空間に充填する、いわゆるシングルショットのパルスシーケンスにおいても、本発明を適用することができる。
この場合には、k空間における最も低い周波数成分領域である領域101から螺旋状に充填を開始するパルスシーケンスの前に、脂肪抑制パルス60を印加する。
【0064】
第7実施形態
第1〜6実施形態までは、k空間を充填する順番が、軌跡tr1によって示されるように変化していた。
本発明は、k空間を充填する軌跡の向きが一方向に並んでいる場合にも適用することができる。
【0065】
図8(a)は、本発明に係る脂肪抑制パルス印加シーケンスの第7実施形態である。
第7実施形態においては、k空間100が、軌跡tr2のように、図8(a)に示す1〜6の順番によって、一行ずつ充填されるものとする。なお、各行においては、位相エンコーディング量が同じになっている。
この場合に、本第7実施形態においては、領域124において1回のみ脂肪抑制パルスが印加される。
【0066】
領域124は、k空間100のうちの、行方向に見た場合に最も低周波成分領域部分であり、1番目にデータが収集される行の最初の領域である。
また、領域124に脂肪抑制パルスを印加した場合には、1行目においては縦緩和の影響が小さくなる。
【0067】
したがって、本第7実施形態によれば、k空間を充填する軌跡の向きが一方向に並んでいる場合にも、脂肪抑制を可能にしつつ、従来よりも短い撮像時間で撮像を行なうことができる。
【0068】
第8実施形態
図8(b)は、本発明に係る脂肪抑制パルス印加シーケンスの第8実施形態である。
第8実施形態においては、k空間を充填する軌跡の向きが一方向に並んでいるある場合に、ハーフフーリエ法を用いてk空間100を充填する。ハーフフーリエ法とは、k空間の約半分の領域のみのデータを実際に収集し、残りの半分の領域のデータは、収集したデータの供役複素数を計算することによって得る方法である。
【0069】
図8(b)においても、図に示す番号1〜6の順番で行ごとにデータが収集されるが、その際に、軌跡tr3によって示すように、各行の半分の領域のデータのみが収集される。
また、脂肪抑制パルスは、最初にデータが収集される領域である領域103において印加される。
【0070】
第8実施形態によれば、第7実施形態の場合よりもさらに撮像時間を短くすることができる。
【0071】
第9実施形態
図8(c)は、本発明に係る脂肪抑制パルス印加シーケンスの第9実施形態である。
図8(c)に示すように、本第9実施形態によれば、位相エンコードが1次元のみの場合にも、脂肪抑制パルスを印加し、図4に示すパルスシーケンスを実行することによって、脂肪が抑制された画像を得ることができる。
脂肪抑制パルスは、図8(c)に示すk空間100のうちの領域103に印加される。
なお、図8(a)〜(c)においても、図7(a),(b)の場合と同様に、各領域の色の濃さが、脂肪抑制効果の強さを表わしている。
【0072】
以上述べてきた第1〜9実施形態に係る磁気共鳴撮像方法をフローチャートとしてまとめると、図9のようになる。
まず、被検体99を、図1に示すMRI装置20のボア94内に収容する(ステップST1)。
【0073】
次に、k空間をどのような順番によって充填するかの軌跡情報を、制御部274に与える(ステップST2)。
すなわち、軌跡tr1や軌跡tr2,3のような軌跡情報が与えられる。これは、オペレータが手動により与えてもよいし、撮像プロトコルに応じて軌跡の種類が自動的に選択されるようにしてもよい。
【0074】
制御部274は、入手した軌跡情報に基づいて、k空間のうちの、データを収集すべき領域を決定する(ステップST3)。
最初のループにおいては、データを収集すべき初期領域が規定される。前述のように、第1〜9実施形態においては、k空間の領域のうちの最も低周波成分部分が初期領域となる。
【0075】
ステップST3においてデータを収集すべき領域が決定されたら、制御部274は、その領域が脂肪抑制パルスを印加してデータを収集する抑制領域かどうかを判断する(ステップST4)。
上記の判断は、軌跡情報に応じて第1〜9実施形態のように適宜規定される脂肪抑制パルス印加シーケンスに基づいて行なわれる。
なお、第1〜9実施形態においては、初期領域は必ず抑制領域になっている。
【0076】
ステップST4において抑制領域であると判断した場合には、図4(a)に示す周波数選択抑制部aのように抑制パルスを印加する(ステップST5)。
抑制パルスが印加される場合には、ひき続いて、定常状態作成部bにおける定常状態作成作業も実行される。
ステップST5において周波数選択抑制部aおよび定常状態作成部bのシーケンスが実行された場合、またはステップST4において抑制領域ではないと判断された場合には、図4(a)に示す信号収集部cの作業が実行され、磁気共鳴信号のデータが収集される(ステップST6)。
【0077】
k空間が充填完了されるまで、ステップST3〜6が繰返される(ステップST7)。
ただし、撮像時間を短縮するために、k空間を全て充填しない場合もある。
【0078】
画像処理部275は、診断画像を得るために、ステップST7において得られたk空間の元データに所定の画像処理を施す(ステップST8)。
画像処理部275が生成した画像データに基づいて、診断画像が入手され、オペレータ装置280の表示部に表示される(ステップST9)。
【0079】
変形形態
これまでは、図1に示すクローズドタイプのMRI装置20に本発明を適用した場合について述べたが、本発明は、図10に示すようなオープンタイプのMRI装置にも適用することができる。
【0080】
図10に示すMRI装置200は、マグネットシステムのみが図1に示すMRI装置20と異なっている。
MRI装置200のマグネットシステム220a,220bは、互いに対向して配置される静磁場発生用マグネット部と、勾配コイル部と、RFコイル部とを有する。これらの機能は、MRI装置20の場合と同じである。
【0081】
1組の静磁場発生用マグネット部260a,bは、平坦であり、互いに対向して配置される。
各静磁場発生用マグネット部260a,bの対向面側に、平坦で互いに対向して配置される、1組の勾配コイル部261a,bが存在する。
勾配コイル部261a,bの対向面側には、平坦で互いに対向して配置される1組のRFコイル部263a,bがさらに存在する。
また、勾配コイル部261a,bとRFコイル部263a,bとの間には、金属薄膜製のRFシールド部262a,bがそれぞれ配置される。
【0082】
RFコイル部263a,bの対向面間が、ボア94となる。
MRI装置200においては、静磁場の方向Zは、被検体99の体軸に垂直である。
【0083】
また、図5(a)に示すような+字型に加えて、*型になるように抑制パルスを印加することもできる。
上記実施形態においてはグラディエントエコー法を使用した場合について述べたが、本発明はスピンエコー法等のその他の磁気共鳴信号入手方法についても適用することができる。
さらに、脂肪抑制だけでなく、必要がある場合には血管を抑制した画像を得ることもでき、抑制パルスの周波数を調整することにより、任意の組織を抑制した画像を得ることもできる。
【0084】
【発明の効果】
上述のように、本発明によれば、k空間を充填する軌跡の向きが変化する場合にも磁気共鳴信号の特定の周波数成分を抑制する効果があり、撮影時間も可能な限り短くなり、アーチファクトの発生しにくい実用的な磁気共鳴撮像装置を提供することができる。
また、本発明によれば、k空間を充填する軌跡の向きが変化する場合にも磁気共鳴信号の特定の周波数成分を抑制する効果のある磁気共鳴信号抑制方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るMRI装置の要部の概略構成図である。
【図2】図2は、グラディエントエコー法による磁気共鳴信号取得のためのパルスシーケンスの一例の一部である。
【図3】図3(a)は、本発明に係る信号抑制方法の第1実施形態を示す図であり、図3(b)は、図3(a)における信号抑制効果の影響を示す図である。
【図4】図4(a)は、本発明に係る信号抑制パルスシーケンスの一例であり、図4(b)は、図4(a)の各部分に対応した、脂肪の信号強度を表わすグラフである。
【図5】図5(a)は、本発明に係る信号抑制方法の第2実施形態を示す図であり、図5(b)は、本発明に係る信号抑制方法の第3実施形態を示す図である。
【図6】図6は、本発明に係る信号抑制方法の第4実施形態を示す図である。
【図7】図7(a)は、本発明に係る信号抑制方法の第5実施形態を示す図であり、図7(b)は、本発明に係る信号抑制方法の第6実施形態を示す図である。
【図8】図8(a)〜(c)は、本発明に係る信号抑制方法の第7〜第9実施形態をそれぞれ示す図である。
【図9】図9は、本発明に係る信号抑制方法に基づいた磁気共鳴撮像方法の手順を示すフローチャートの一例である。
【図10】図10は、本発明の他の実施形態に係るMRI装置の要部の概略構成図である。
【符号の説明】
20,200…MRI装置
21…マグネットシステム
50,50a,50b…RF信号
51,51a,51b…スライス選択勾配磁場信号
52…位相エンコード勾配磁場信号
53,53a,53b…読み取り勾配磁場信号
54,54a,54b…磁気共鳴信号
60…脂肪抑制パルス
61…スポイリング勾配磁場信号
94…ボア
99…被検体
100…k空間
101〜104,105,106,109,113,124…領域
212,260a,260b…マグネット部
213,261a,261b…勾配コイル部
214,263a,263b…RFコイル部
243…クレードル
271…RFコイル駆動部
272…勾配コイル駆動部
273…データ収集部
274…制御部
275…画像処理部
280…オペレータ装置
tr1,tr2,tr3…軌跡
TE…エコー時間
TR…繰り返し時間

Claims (3)

  1. 静磁場内の被検体の被検部位にRF信号を送信するRF信号送信手段と、前記被検部位に位置情報を付与する勾配磁場を発生させる勾配磁場発生手段と、前記被検部位からの磁気共鳴信号を受信する磁気共鳴信号受信手段と、前記RF信号の送信と前記勾配磁場の発生と前記磁気共鳴信号受信手段による受信を制御する制御手段とを備え、前記制御手段により所定のタイミングで前記被検部位に前記RF信号を送信させ、前記勾配磁場を所定の大きさに変化させて得られる前記磁気共鳴信号に基づくデータを、フーリエデータ空間のうち前記勾配磁場の大きさに応じた領域に充填する部分パルスシーケンスを繰り返すパルスシーケンスにより、画像の元データを得る磁気共鳴撮像装置であって、
    前記制御手段は、前記フーリエデータ空間の中央部の低周波数成分領域から周辺部の高周波数成分領域に向かう螺旋状の軌跡で、前記データを前記フーリエデータ空間に充填する前記パルスシーケンスの場合に、前記フーリエデータ空間のうち、最も低い周波数成分領域を中心とした、所定の領域幅を有する十字型の領域に前記データを充填する前記部分パルスシーケンスの前に、周波数選択性抑制信号を送信させる
    磁気共鳴撮像装置。
  2. 静磁場内の被検体の被検部位にRF信号を送信するRF信号送信手段と、前記被検部位に位置情報を付与する勾配磁場を発生させる勾配磁場発生手段と、前記被検部位からの磁気共鳴信号を受信する磁気共鳴信号受信手段と、前記RF信号の送信と前記勾配磁場の発生と前記磁気共鳴信号受信手段による受信を制御する制御手段とを備え、前記制御手段により所定のタイミングで前記被検部位に前記RF信号を送信させ、前記勾配磁場を所定の大きさに変化させて得られる前記磁気共鳴信号に基づくデータを、フーリエデータ空間のうち前記勾配磁場の大きさに応じた領域に充填する部分パルスシーケンスを繰り返すパルスシーケンスにより、画像の元データを得る磁気共鳴撮像装置であって、
    前記制御手段は、前記フーリエデータ空間の中央部の低周波数成分領域から周辺部の高周波数成分領域に向かう螺旋状の軌跡で、前記データを前記フーリエデータ空間に充填する前記パルスシーケンスの場合に、前記フーリエデータ空間の最も低い周波数成分領域を含む行と列の領域のうちの所定の領域に前記データを充填する前記部分パルスシーケンスの前に、前記周波数選択性抑制信号を送信させる
    磁気共鳴撮像装置。
  3. 前記制御手段は、前記RF信号送信手段により、前記周波数選択性抑制信号を送信させたのち、前記磁気共鳴信号の受信の前に、定常状態を作り出す前記RF信号を送信させる
    請求項1又は請求項2に記載の磁気共鳴撮像装置。
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