JP4129472B2 - 特定の遺伝的特性を有する哺乳動物を作製する方法 - Google Patents

特定の遺伝的特性を有する哺乳動物を作製する方法 Download PDF

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Description

本発明は特定の遺伝的特性を有する哺乳動物、特にトランスジェニック動物の作製に関する。
トランスジェニック動物とは、その生殖細胞に恒久的遺伝的変化が導入されている生物である;新しく導入された遺伝子は導入遺伝子として知られている。トランスジェニック動物は、遺伝子の組織特異的制御およびそれらの発生および疾病における機能の解析に関する現代生物学の重要なツールを構成するものである。さらに、トランスジェニック技術はヒトの疾病に関して利用できる動物モデルを得る機会および家畜において多量のタンパク質を生産する機会を提供する。
トランスジェニック動物を作製する、これまで最も頻繁に使用されてきた方法においては、組換えDNAが受精卵中にマイクロインジェクションされる;動物の胚に遺伝子を導入する他の技術はウイルス、通常は組換えレトロウイルスベクターを利用する(WagnerとKeller、1992による総説記事を参照のこと)。
動物に外来遺伝性物資を導入するための第3の、かつ最も最近の技術は胚性幹細胞(ES細胞)の潜在能力を利用してキメラ動物を作り出すものである。哺乳動物の胚はその発生過程で外来細胞を取り込む能力を有する。2つの異なる未着床胚、通常は桑実胚、がin vitroで凝集される;これは2つの胚の混合を構成するキメラ胚を作り出す。これらの胚は次に仮親(foster mother)として機能する擬妊娠マウスに移植される;得られたキメラ子孫はその組織中に2つの元の胚の一方に由来する異なる数の細胞を有している。この方法をES細胞の利用と組み合わせると、遺伝的に操作された動物の作製に非常に効率的であることが分かった。
胚性幹細胞は胚盤胞の内部細胞塊(ICM)に由来する;胚性幹細胞は二倍体胚盤胞にインジェクションすることにより、または桑実胚と凝集させることによって胚に導入されたときに、生殖細胞を含む全ての細胞系に発生することのできる全能細胞である(Robertson, 1987;Bradley, 1987;BeddingtonおよびRobertson, 1989; Nagyら、1990)。ES細胞は胚盤胞から単離することができ、その後、厳密に結びついた、はっきり定められた培養条件下で培養されれば永久細胞株として樹立することができる;これらを遺伝的に操作することができる。この能力のために、これらを動物に導入することによって、例えば、制御された変異または他の遺伝的修飾によって、哺乳動物、特にマウスのゲノムを改変するための効果的なツールを構成する(Wagnerら、1991;Ramirez-Solisら,1993; Skarnes, 1993; BronsonとSmithies, 1994)。
ある場合には、「胚性生殖細胞」(embryonic germ cell)(EG細胞)と称される細胞が利用可能であり、原生殖細胞から不死細胞株へと培養することができるもので、色々な点でES細胞に類似している;EG細胞は、とりわけ、全能性であり、ES細胞と同じやり方で扱うことができ、胚盤胞に導入されると生殖細胞キメラを形成する(Donovanら、1997)。
近年、全能性細胞に由来する動物を作製するために種々の実験技術が開発されている(全能性細胞とはそれ自体が全ての体細胞ならびに生殖細胞へ分化することができる細胞である)。ES細胞の場合は、これらの方法の初期の目的はin vitroでES細胞の完全な発生能を得(Williamsら、1998;Smithら、1988)、キメラ形成における宿主細胞発生能を制限し、そうして生殖細胞キメラの形成頻度を増大させることであった(Nagyら、1990; KaufmanとWebb,1990)。これらの技術の開発における伸展の最も重要な一片は、宿主細胞として四倍体胚を利用することである。なぜなら、四倍体細胞は移植された後に限られた発生能しか持たないからである(Nagyら、1990;KaufmannとWebb, 1990; KubiakとTarkowski, 1985)。四倍体胚が二倍体胚と凝集するとき、四倍体細胞の分化が原始内胚葉および栄養外胚葉に強く制限され、これらはその後、胚体外組織を形成し、一方二倍体細胞は実際の胚を形成することができる(JamesとWest,1994; Jamesら、1995)。
初期の研究においては、ES細胞に完全に由来する胎仔を作製するために種々のES細胞株が桑実胚と凝集された(ES細胞に完全に由来する生物はこれ以後ES動物という。例えば、ESマウスあるいはES胎仔という);しかしながら、得られたES胎仔は生まれてすぐ死んだ(Nagy, 1990)。更なる研究により、初期継代eralier passage)の野生型R1細胞(Nagyら、1993)またはTT2細胞株(Uedaら、1995)が四倍体桑実胚との凝集に使用された場合、専らES細胞に由来する生存可能な、稔性のあるマウスが得られることが示された。
更に、ESマウスは、第一段階においてES細胞を二倍体胚盤胞にインジェクションすることによって、これによって最初にキメラマウスを得て作製される;さらに交配することにより二世代後にESマウスが作られる。胚盤胞へのインジェクション方法はGardner,1968によって最初に記載され、単純化された変法がBradleyとRobertson,1986およびBradley, 1987に記載された。
後期継代(later passage)のES細胞を用いて生存可能なESマウスを得るという目標はこれまでに利用できる方法では達成されていない(Nagyら、1993);遺伝的に改変されたES細胞を用いてESマウスを作製することは全然可能ではないように見えた。(後期継代のES細胞使用が可能であるということは、細胞株の利用という観点から特に重要であり、また、遺伝的に改変されたES細胞の利用、通常その選抜は継代数の増加と同調するものだが、この細胞の利用という点でも特に重要である。)
本発明の目的は、新規な方法、それによって、全能性細胞に完全に由来する、特定の遺伝的特性を有する哺乳動物、特にトランスジェニック哺乳動物を得ることができる方法を提供することである。
この目的は、特定の遺伝的特性を有する哺乳動物、特にトランスジェニック哺乳動物動物を作製する方法であって、同じ哺乳動物種の全能性細胞が胚盤胞に導入されて、生じた胚が仮親に移植されるという方法によって達成される。この方法は、特定の遺伝的特性を有する全能性細胞が四倍体胚盤胞に導入されることを特徴とする。
本発明の方法を用いることにより、全能性細胞に完全に由来する動物を得ることができる。本発明の方法は、全体として全能性細胞に由来する動物がin vitroで培養された全能性細胞(ES細胞またはEG細胞)から一段階で得られるという利点を有する。
用語「トランスジェニック哺乳動物」は、本発明の目的に関しては、なんらかの恒久的遺伝的改変を有する動物を含むものである。
「全体として全能性細胞に由来する」動物とは、好ましくはES細胞またはEG細胞に由来する細胞を100%に至るまで有するものである。しかしながら、この動物は低い割合、好ましくは10%を越えない割合で、四倍体胚盤胞に由来する細胞を含むことがある。
本発明の好ましい実施態様では、哺乳動物はマウスである;しかしながら、理論的には本方法はES細胞またはEG細胞が得られる全ての哺乳動物にも適用できる。マウス以外の哺乳動物からの全能性細胞を得るために不可欠なことは、これらの生物からのES細胞または原生殖細胞を培養できる、および、ESまたはEG細胞株を樹立できる条件をはっきりさせることであり、これには、とりわけ、特異的な増殖因子およびES細胞またはEG細胞との共培養のためのフィーダー細胞に対する必要性が含まれる。これらの条件は一連のテストによって経験的に決定することができる。
胚盤胞からのES細胞の単離、ES細胞株の樹立および続いてのそれらの培養は、例えば、Doetchmannら、1985;Liら、1992;Robertson,1987;Bradley, 1987;WurstおよびJoyner, 1993; Hogenら、1994; Wangら、1992に記載されているような従来の方法によって行なわれる。EG細胞の培養はDonovanら、1997による総説記事およびここで引用した原論文中に記載されている方法を用いて行なうことができる。全能性細胞株、例えばマウスES細胞株は、その発生能に基づいて本発明における使用に関して適切かどうかを調べるために、予備試験でテストすることができる。これを明らかにするために、問題にしている株の細胞は二倍体マウス胚にインジェクションされ、生じた胚は仮親に導入され、子供はそのキメラ率および生殖細胞キメラの形成頻度に関して調べられることがある。
本発明の好ましい実施態様においては、全能性細胞はES細胞である。
四倍体胚盤胞は、既知の方法により、例えば、Jamesら、1992;NagyとRossant、1993;またはKubiakとTarkowski、1985に記載されているように、二細胞胚のエレクトロフュージョンおよびそれに続く培養により得てよい。
ES細胞またはEG細胞の胚盤胞への導入も、それ自体既知の方法で行なわれる。本発明の目的のために好ましい方法は、例えば、Wangら、1991に記載されているようなマイクロインジェクション法である。慣習的なマイクロインジェクションにおいては、単一の細胞懸濁物からとった約5〜10個のES細胞が、顕微操作装置中でホールディングピペットによって固定された胚盤胞にインジェクションされる。次に、胚は少なくとも3時間、できれば一晩、インキュベーションされる。
本発明の好ましい実施態様において、遺伝的に操作された全能性細胞がトランスジェニック動物を得るために使用される。
全能性細胞の遺伝的改変に関して制限はない;遺伝子は過剰発現されても、変異されてもよく、あるいは、いわゆるノックアウト動物を作製するためにスイッチオフされてもよい;更に、外来遺伝子が挿入されてもよく、染色体内欠失が行なわれてもよい。遺伝的改変は一方または双方のアレル上で行なわれてよい;この後者のアプローチは例えば、HilbergとWagner、1992により、c-jun遺伝のスイッチオフに関して記載されている。本発明が双方のアレルにおける遺伝的改変を許すことは特に都合がよい;先行技術における方法では、双方のアレルが望みの改変を有するトランスジェニック動物は、一方のアレル上に遺伝的改変を有する動物の、更なる交配および長い育種の後でのみ得ることが可能であった。
全能性細胞の遺伝的操作は従来の方法によって行なって良い。一般には望みの遺伝的改変を有するプラスミド、好ましくは直線化されたプラスミドが使用される。遺伝的に改変されたES細胞が選抜できるように、プラスミドはプロモーターの制御下にあるマーカー遺伝子、例えば、ネオマイシン、ハイグロマイシンまたはピューロマイシン耐性遺伝子を含むのが好ましい。プラスミド上に含まれる遺伝子の宿主細胞中における発現のために、プラスミドは遺伝子発現制御配列、例えば、PGK(フォスホグリセロールキナーゼ)プロモーターのようなES細胞またはEG細胞中で機能する強いプロモーターを含むことがある。
プラスミドを細胞に導入する方法は、哺乳動物細胞へのin vitro DNA導入に関して文献から知られている、例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿またはWO 93/07283に開示されているレセプター媒介エンドサイトーシスに基づく方法のような標準的な方法である。
全能性細胞に遺伝的変異を導入する他の方法はウイルス、例えば組換えレトロウイルスベクターを使用するものである;遺伝的に改変された細胞を選抜できるようにする、または、細胞中で発現できるようにする配列断片に関しては、すでにプラスミドについて述べたのと基本的に同じことが適用される(WagnerとKeller,1992;Stewartら、1985)。
本発明の方法を使用すると、ごく日常的に生存可能な稔性のあるトランスジェニック哺乳動物、特にESまたはEGマウスをin vitroで遺伝的に改変された全能性細胞から作り出すことができる。
本発明の方法を用いると、トランスジェニック動物は再現性をもって作り出すことができ、とりわけ、例えば特定の遺伝子を過剰発現している、または特定の遺伝子が不活性化されている、遺伝的に操作された全能生細胞から作り出すことができ、これらのトランスジェニック動物は、特に遺伝子機能の研究またはタンパク質生産のために利用されることがある。トランスジェニック動物を作り出す従来の方法と比較すると、本発明の方法は効率的で迅速かつ経済的な変異動物胎仔、特にマウス胎仔を作製する方法、および、望みの遺伝的改変をされた全能性細胞から直接にトランスジェニック系統を作製する方法を提供するものである。
本発明の目的のために調べられ、D3、R1およびGS1と名付けられた3つのES細胞株はすべて二倍体胚盤胞にインジェクションされると生殖細胞キメラを形成した。それらが四倍体胚盤胞にインジェクションされると、R1およびGS1細胞から生きたESマウスが得られた。D3細胞では、初期継代(継代数9)の細胞でも、ES細胞を四倍体胚盤胞にインジェクションした後に生きたESマウスを作り出すことができなかった。このことは、これらの細胞での凝集実験の以前の観察(Nagyら、1990;表2も参照せよ)と一致するものである。D3細胞が生存可能なESマウスを形成できないことは、おそらく、これらの細胞がその発生能を失っているという事実に帰着することはできないであろう;D3細胞はいわゆるジーンターゲッティング実験にしばしば用いられており、それらの実験ではそれらの細胞が2倍体胚盤胞にインジェクションされると、キメラおよび生殖細胞キメラが高頻度で得られている(Urbanekら、1994;Wangら、1992;Wangら、1994;表1も参照のこと)。しかしながら、胎仔が出生後生存に適応するために決定的ないくつかのタイプの細胞へ分化するD3細胞の能力が未知の遺伝的または後発的な変異によって影響を受けるということはあり得ることである。この仮定は、D3細胞は正常な出生日まで発育する胎仔を作り出すことができるが、新生仔は呼吸を維持できないこと、および生下時体重が重く、多指症であり生まれてすぐ死ぬという観察により支持される.これらの特徴はインプリントされた(imprinted)Igf2/Mpr遺伝子を欠損しているマウスの表現型的特徴(Wangら、1994;Lauら、1994)を連想させる;従って,胎仔の生長を制御しているインプリント遺伝子が観察された影響に関係しているということがあるかもしれない。二倍体胚の宿主細胞環境においてはES細胞が欠損している機能は宿主細胞に相補されるかもしれないのに対して、全ての機能的な細胞タイプを形成できる発生能は、D3細胞についてはそれが分化能を欠くために固有のものだが、全体的にES細胞由来の環境中では制限されるように見える。従って、種々の野生型ES細胞の四倍体胚への導入は、都合よくは一連のテストにおいて、ES細胞が本発明の範囲の使用に適しているかをチェックするための迅速で信頼性のあるテストとして利用されることがある。
種々のES細胞が由来するマウス系統の遺伝的背景はESマウスの生存能力に影響を与える別の要因となりうる。本発明の範囲内で使用される全てのES細胞株はマウス系統129起源である:R1細胞は亜系統129/Svと129/Sv-CP間の交配のマウス胚盤胞起源である(Nagyら、1993);GS1細胞は129/Sv/Ev起源である。D3-細胞(Doetchmannら1985)およびJ1細胞(Liら、1992)は129/Svまたは129/terSv起源である。やはりESマウスを生み出したTT2細胞はF1雑種系統(C57BL/6 x CBA)(Yagiら、1993)起源である。本発明の範囲および先行する研究(Nagyら、1993、Uedaら、1995) で得られた結果に基づくと、異なるマウス系統または亜系統に由来するES細胞株が生存可能なESマウスを形成する異なる能力を有する可能性を除外することはできない。
野生型R1細胞を四倍体胚にインジェクションすることによる新生ESマウスの作製効率(14%)は、凝集による作製率(本発明の範囲では6%、Nagyら、1993に記載された研究においては7%)よりも大きい。これらの結果は、凝集法とES細胞を二倍体胚にインジェクションすることによる方法との比較と一致するものである(Woodら、1993)。本発明の、インジェクション法における四倍体胚盤胞の使用は、in vitroで24継代数よりも長い間培養されてきた幾つかの選抜R1細胞クローン(例えば、R169.2.3およびR-fra3)が、なお生存可能なESマウスを作り出す能力を有していることを明らかにした。これらの発見は注目すべきことであり、特に、野生型R1細胞が継代数14の後に生存可能なESマウスをつくり出す能力を失うという以前の凝集実験の結果(Nagyら、1993)を考慮すると注目すべきことである。ES細胞の四倍体胚盤胞へのインジェクションが再現性を有してESマウスの形成につながる理由は全体として明らかではない。ES細胞は胚盤胞のICMから元々由来するものであり、それらはICM細胞に類似するものでもあるため(BeddingtonとRobertson、1989)、ES細胞とICMの空間的接近性と発生におけるその和合性の双方がこの効果に関与していることが考えられる。この仮定は、更に、キメラマウスの作製効率はES細胞が二倍体桑実胚中の「透明層(zona pellucida)」の下に導入された場合は、従来の胚盤胞インジェクション法(二倍体胚盤胞へのインジェクション)が用いられた場合よりも低いという、比較実験における観察によって支持される。
本発明の方法の高い効率は、この方法を従来技術の方法(ES細胞の四倍体胚盤胞との凝集または二倍体胚盤胞へのインジェクション)に対して優れたものにしており、遺伝的に改変された全能性細胞から直接に変異体マウスを作製する、現時点で唯一の可能性を提供するものである。
生存可能な変異体マウスを遺伝的に操作された全能性細胞から直接に作製することは多くの利点を有している。胎仔組織は遺伝的操作可能な全能性細胞から全体として由来するので、この技術は細胞生物学、分子生物学または遺伝学的研究のための純粋なES細胞またはEG細胞起源の胎児性材料を作り出す直接的な方法を提供するものである(Forresterら、1991;Carmelietら、1996)。
ES胎仔は、同じES細胞から得られたヘテロ接合変異体マウスの交配によって作製された胎仔と比較して、特定の遺伝子、例えばPax5遺伝子または「トラップされた」遺伝子のような遺伝子の発現パターンを信頼性のある挙動で再現する。有利なことに、ES胎仔は発現研究に使用することができる。これはES胎仔が、従来の育種が通常4から5か月かかるのに対して、胎児性材料の迅速な(数日)生産を可能とするからである。さらに、ES胎仔における信頼性および再現性のある発現は、従来のキメラ組織、その定義上野生型および変異ES細胞の双方からなる組織においてあり得るいかなる複雑さをも最小限にする。従って、この技術は遺伝子機能の研究または新規な遺伝子の同定、例えば、「ジーントラップ」研究(Skarnes, 1993)において有用である。本発明の方法(ES細胞の四倍体胚盤胞へのインジェクション)の助けにより、変異マウス系統、例えばc-fos遺伝子導入マウスおよびfra-1「ノックアウト」マウスを効率的なやり方で変異体ES細胞から直接に作製することができることが示されている。本発明の方法は、導入遺伝子の組込みおよび発現に関して予め選抜されたES細胞またはEG細胞からトランスジェニックマウス系統を作製することを可能とする。特定の遺伝子を過剰発現しているマウスの作製効率はこれにより、従来の二倍体胚盤胞が用いられるインジェクション法に比べて大きく改善される。本発明の方法は遺伝子過剰発現および不活性化に関する多くの研究において使用される。
更に、この方法を用いると、不活性化または過剰発現が死につながるかどうか、ヘテロ接合変異体またはキメラにおける配偶子形成障害につながるかどうか、特異的効果の研究のための変異体組織を作製することができる(例えば、Carmelietら、1996を参照せよ)。
最後に、本発明の方法は、変異動物系統、特にマウス系統を迅速かつ経済的に作製する可能性、および、変異体胎仔および動物に簡単にアクセスできる可能性を提供するものであり、これはマウス遺伝学の分野の研究にとって主要な利点である。
トランスジェニック動物の作製だけでなく、本発明の方法は、非遺伝的に改変された、特定の望みの性質を有するES動物またはEG動物を作製するためにも使用されることがある。このためには、要求される性質を有する同一の動物を得るため、望みの性質に関して培養実験で予め選抜された全能性細胞が使用される。
本発明を説明する以下の実施例においては、特にことわりのない限り以下の材料と方法を使用した:
a)マウス:C57BL/6マウスを二倍体胚のドナーとして使用しB6CBAF1マウス(C57BL/6 x CBA)を四倍体胚のドナーとして使用した。両方の系統とも、グルコースリン酸イソメラーゼ(GPI)をコードするGpi-1遺伝子座においてGpi-1bアレルに関してホモ接合である。
b)ES細胞および遺伝子導入:文献に記載されている以下のES細胞を使用した:
D3細胞(Doetchmannら、1985)
R1細胞(Nagiら、1993)
J1細胞(Liら、1992)
GS1細胞は、亜系統129/Sv/EVの胚盤胞から単離した。このマウス系統はAB1遺伝子型のES細胞の生殖細胞導入によって得られたキメラマウスから確立されたものである。AS1-ES細胞は、McMahonとBradley, 1990およびPapaioannou, 1993に記載されたように、亜系統129/Sv/EVから最初に樹立された。GS1細胞はRobertson, 1987に記載されている方法を用いて本質的に単離し、胚盤胞はフィーダー細胞上、4-ウェルプレート上にプレートし、ICMが5日培養後に増加した。ES細胞に似た細胞塊をピペットでばらばらにし、フィーダー細胞の入った新しいプレート上に再びプレートした。拡張したES細胞を同定し、その核型および発生に関するその全能性を知るために更に調べた。
全てのES細胞は、GPi-1aアレルに関してホモ接合であるマウス系統129から得られた胚盤胞の複製から最初に単離した。ES細胞を改変するために、継代数16のR1細胞を種々の構築物でエレクトロポレーションした。G418耐性クローンを選抜し、インジェクションの前に拡張した。以下の構築物を使用した:c-fos過剰発現ベクター(Wangら、1991);プロモーターのない、どんな遺伝子のイントロン中にも組み込まれ得る、lacZ-neo融合遺伝子を含むpSAβgeoと称する、いわゆる「ジーントラップベクター」(FriedrichとSoriano, 1991);マウス中で相同組換えによってPax5遺伝子に割り込む、いわゆるジーンターゲッティングベクター(Urbanekら、1994);および、相同組換えによって内在性fra-1遺伝子(Fos関連抗原1)に割り込むジーンターゲッティングベクター。fra-1「ジーンターゲッティングベクター」を調製するために、fra-1遺伝子を有する幾つかのコスミドクローンをマウスゲノムライブラリーから単離して、この遺伝子の配列およびエクソン/イントロン構成全体を決定した。この情報に基づき、fra-1遺伝子のゼロ変異を相同組換えによりES細胞に導入した。プラスミドpGNA(Le Mouellicら、1990;1992)から始めて、ジーンターゲッティングベクターを構築した。このベクターにおいては、fra-1の必須なDNA結合部位および二量体化(ロイシンジッパー)領域を、哺乳動物におけるレポーター遺伝子または選抜マーカーとして働くβ-ガラクトシダーゼおよびネオマイシン耐性をコードするバクテリア遺伝子で置換した。ES細胞のエレクトロポレーション後、ベクターの組込みを確認するために、G418耐性コロニーをサザンブロットまたはβ-ガラクトシダーゼ活性に関する染色によって解析した。
c)2細胞胚の取得;エレクトロフュージョン:
2細胞胚を交尾後(p.c.)1.5日にメスB6CBAF1マウスから単離し、四倍体胚盤胞の作製に使用した(図1A)。胚の四倍体化はエレクトロフュージョンにより、NagyとRossant(1993)に記載された方法の修正変法によって行なった:2細胞胚を0.3Mマンニトール溶液で30秒間平衡化した後、個別に0.3Mマンニトール中の2枚の白金電極の間に置き、電流サージ発生装置CF-100(Biochemical Laboratory Service,Budapest)を用いて、有効場2V中、95Vで30μ秒間の短い電流サージにさらした(図1B)。15分間のインキュベーション期間の後、2つの割球は融合し始め(図1C、白矢印)、次第に単一細胞胚を形成した(図1C、矢印)。
d)ES細胞の桑実胚との凝集;胚盤胞へのES細胞のインジェクション:凝集のため、桑実胚を、妊娠マウス(2.5日p.c.)のファロピウス管(Fallopian tube)から単離するか、または、四倍体単一細胞胚からそれらをエレクトロフュージョン後に24から40時間培養することによって得た。ES細胞の処理および凝集はNagyら(1990)に記載されたように行なった。2倍体胚盤胞は妊娠C57BL/6マウス(3.5日p.c.)の子宮から単離した。四倍体胚盤胞を得るため、エレクトロフュージョン単一細胞胚を融合後48から60時間培養した(95%空気/5%CO2のインキュベーター中、37℃にてM16培地;図1D)。野生型または遺伝子操作ES細胞をWangら(1991)に記載された方法で2倍体または四倍体胚盤胞にインジェクションした(図1E、図1F)。インジェクションされた2倍体胚は正常な妊娠期間で発育し、自然に分娩されたのに対して、四倍体胚を与えられた妊娠マウスは18.5日に帝王切開を受けた(Nagyら、1990)。心臓の鼓動および呼吸で評価した生存可能な胎仔は、同じ日に出産した、またはそれ以前の日に出産したメスに育てさせた。何匹かの幼動物をGPIマーカーについて調べた。生き残ったESマウスを野生型C57BL/6マウスとつがいにして、それらの稔性および生殖細胞の遺伝形質について調べた。
e)GPI-アイソザイム解析:ES細胞起源の胎仔または成体動物の種々の組織を単離し、蒸留水中で砕いて細かくした。Bradley(1987)およびWangら(1991)に記載されたように、サンプルを3回の凍結/融解サイクルで溶解し、タンパク質を抽出後、GPI解析にかけた。キメラ組織においてES細胞または宿主起源の細胞の割合を、対になった光学的アッセイで測定したGPI-1AまたはGPI-1Bアイソザイム活性の割合から評価した。
f)β-ガラクトシダーゼ組織化学:固定した無傷の胚におけるβ-ガラクトシダーゼ活性を測定するためにSanesら(1996)に記載された方法の修正変法を使用した。胚および胚体外膜を5〜10分間固定し(100mMリン酸ナトリウム、pH7.4、5mM EGTA、2mM MgCl2、0.2%グルタルアルデヒド)、次に、3回洗浄し(100mMリン酸ナトリウム、pH7.4、2mM MgCl2、0.01%デオキシコール酸ナトリウム、0.02% NP-40)、組織化学反応混合液(100mMリン酸ナトリウム、pH7.4、2mM MgCl2、0.01%デオキシコール酸ナトリウム、0.02% NP-40、5mM K-鉄(III)-シアニド、5mM K-鉄(II)-シアニドおよび1mg/ml X-Gal)で染色した。
1.二倍体胚および野生型ES細胞起源のキメラマウスの調製
種々のES細胞株の発生能をテストするために、最初の4種の異なる野生型ES細胞株を、一方ではES細胞を二倍体桑実胚と凝集させることにより、他方ではそれらを二倍体胚盤胞にインジェクションすることによりキメラマウスを作製するために使用した。4種の全てのES細胞株は、二倍体マウス胚に導入されると、高率のキメラ現象を起こすことができ、高い頻度で生殖細胞キメラを形成し得ることが示された(表一を参照せよ)。興味深いことに、R1およびJ1細胞で雌性キメラも高率で得られ、そのいくらかは129/Sv系統のアグーチ色の毛をその子孫に伝えた(表1)。













表1.野生型ES細胞と凝集させた、または野生型ES細胞をインジェクションした二倍体胚から作製されたキメラマウス

M:オスの動物;F:メスの動物
2.ES細胞を四倍体胚と凝集させることによる、またはES細胞を胚盤胞にインジェクションすることによる、生存可能なESマウスの作製
四倍体胚を作製するために、2細胞胚に、胚の約90%の融合をもたらす短い電流サージをかけた。これらの胚を更に培養した。5回の実験を行ない、その実験では胚は高頻度で桑実胚(68〜95%)および胚盤胞(80%〜98%)へ発生した。この桑実胚をES細胞との凝集に使用し、この胚盤胞をそれらへのES細胞のインジェクションに使用した(図1E、図1F)。4種の全ての野生型ES細胞株(D3、R1、J1およびGS1)をESマウス作製に関してテストした。D3細胞の凝集から帝王切開後26匹の生きた新生仔が得られたが、それらの一匹も生き残らなかった(表2)。同様に、J1細胞から生存可能なESマウスは得られなかった(表2)。これに対して、R1細胞は、四倍体桑実胚との凝集後Nagyら、1993に記載されたのと類似の頻度でESマウスを作り出した(表2を参照せよ)。
ES細胞を二倍体胚盤胞にインジェクションする方法はキメラ形成という点で凝集法と同程度に効率的であったため(Woodら、1993も参照せよ)、まず、野生型ES細胞を四倍体胚盤胞にインジェクションすることによりESマウスが得られるかどうかを調べるために研究を行なった。継代数9のD3細胞を使用した場合、かなり高い頻度で(28%)完全に発育した胎仔が18.5日p.c.で帝王切開によって得られた(E18.5)(表2);しかしながら、新生仔は呼吸を維持することができず、その後まもなく死亡した。興味深いことに、これらの新生仔は体重が重く、多指症であった。R1細胞(継代数14)をインジェクションした36の四倍体胚盤胞のうち、9匹の生存可能な幼動物がE18.5の時点で帝王切開により生まれた(表2)。それらのうちの5匹は呼吸を維持することができ仮親に育てさせた。残念なことに、2匹の幼動物はは7日後には見ることができず、1匹は5週齡で死亡した。これらのESマウスの2匹は成熟期まで生き残り生殖細胞の全遺伝形質を示した(表2)。GS1細胞の54の四倍体胚盤胞へのインジェクション後、17の胚が通常の妊娠期間で発育した(表2)。6匹の幼動物が帝王切開で生まれ、呼吸を維持することができた。5匹の幼動物が48時間以内に死亡し1匹のESマウスが生き延びて成体に達し、ES細胞に由来する遺伝物質をその子孫に伝えた(表2)。


M:オスの動物;F:メスの動物
3.遺伝的に改変されたES細胞クローンによるESマウスの作製
R1またはGS1野生型細胞がインジェクションされた四倍体胚盤胞から生存可能なESマウスが作られた後は、次のテストは本発明の方法が遺伝的に操作されたES細胞から変異体ESマウスを作り出すのにも適しているかどうかを見出すことである。最初に、R1細胞をc-fos発現ベクターでエレクトロポレーションし、2つのG418耐性クローン、R-169.2.3およびR-169.2.5と名付けたものを四倍体胚盤胞にインジェクションするために使用した(R1クローンは胚盤胞にインジェクションする前に24継代数より多く培養した。)。クローンR-169.2.5を総数103の胚盤胞にインジェクションした;12匹の新生仔が帝王切開により得られた。それらのうち3匹が呼吸を維持したが48時間後に死亡した。クローンR-169.2.3はより多い数の生存新生仔を作り出した;23匹の幼動物が帝王切開の後で生存可能で、それらのうち12匹を仮親に育てさせた(表2)。不幸なことに、仮親が充分に世話をしなかったために7匹の新生仔が最初の3日間で死亡した。2匹の他のマウスが離乳期に死んだ。3匹のマウスが成体まで生き延びた。導入遺伝子が子孫に伝わっていることをサザンブロット解析で確かめられたので、2つのトランスジェニック系統が確立された。
さらなる実験において、fra-1遺伝子のアレルが相同組換えによって割り込まれているR-fra 3と名付けた継代数24のR1クローン(fra-1 +/-)を使用した。R-fra 3細胞を48の四倍体胚盤胞にインジェクションした;8匹の生きた幼動物が帝王切開によって得られた。仮親に育てさせた5匹の新生仔のうち4匹が成体に達し、それらのうち3匹が変異アレル(fra-1 +/-)をその子孫に伝えたことが示された(表2)。メスのキメラマウスは不稔性であったが、これは野生型R1細胞で得られた、生殖細胞系列子孫を生み出すことのできるキメラのメスがこれらの細胞及び二倍体胚で得られたという結果と矛盾する。
4.ES胎仔およびESマウスの組織についてのGPI解析
上記の実施例によって得られた胎仔および成体マウスが実際に専らES細胞起源であることを確かめるために、GPI解析を行なった。これによりES細胞の組織形成への寄与を決定することができる。凝集を行なった実験から、D3細胞からの11の胎仔全て、R1細胞からの1つ、J1細胞からの1つは調べた全ての組織において100%ES細胞系であることが示された(表3)。R1細胞由来の胎仔は心臓において宿主細胞に由来する組織を少ない割合で(約10%)有していたが、調べた他の組織は専らES細胞に由来していた(図2A、表3)。同様に、R1およびGS1に由来する、これらの細胞を四倍体胚盤胞にインジェクションすることによって作製されたES胎仔の大部分および全ての成体マウスは専らES細胞起源であったが、D3-由来胎仔の2つは例外であり(E18.5)、これらは心臓、肺および肝臓において10から50%の宿主細胞の寄与を示した。注目すべきことに、R1細胞に由来する4つの胎仔は初期段階(13.5日p.c.)ではES-特異的GPI-1Aマーカーのみを示した(表3)。さらに、R1由来のESマウスの子孫をGPI解析で調べ、それらがES細胞起源であることが示された。
遺伝的に改変されたR1細胞を四倍体胚盤胞にインジェクションすることによって作製されたES胎仔および成体マウスもGPI解析で調べた。ESクローンR-169.2.5に由来する2匹の新生仔(E18.5)の組織は全体としてES細胞起源であることが分かった。3日齢の幼動物(D3細胞由来)および、c-fos導入遺伝子を過剰発現しているR1細胞(R-169.2.3)か、またはfra-1不活性アレルを含んでいるR1細胞(R-fra 3)で作製した成体マウスのGPI解析は、調べた全ての組織において、これらが100% ES細胞起源であることを示した(表3)。さらに、これらのESマウスの子孫についてGPIおよびサザンブロット解析を行なった。全ての子孫でGPI-1Aマーカーのみが存在していることが確かめられた;何匹かは導入遺伝子(c-fos)か、または割り込まれたアレルfra-1を受け継いでいた。図2AはR1細胞に由来する新生ESマウスのGPI解析を示すものである。胎盤と心臓を別にして全ての組織はGPI-1Aマーカーのみを含んでいたが、これは100% ES細胞系統であることを示すものである。図2BはESマウスの子孫のGPI解析を示すものである:成体ESマウスの4匹の仔の血液はGPI-1Aアイソザイムのみを含んでおり、このことはこの子孫がES細胞に由来するものであったことを確認するものである。



























E13.5、E16.5およびE18.5:それぞれ妊娠開始から13.5、16.5および18.5日;
P3:出生後3日
5.ES細胞胚および生殖細胞系胚の遺伝子発現パターンの比較
遺伝子発現および変異体表現型の研究のためにESマウスを作製することに関する本発明の方法の適切さを調べる目的で、ES細胞胚および生殖細胞系胚において特定の遺伝子がいつ、どこで発現するかを決定するためのテストを行なった。この研究のために、遺伝的に操作された、lacZレポーター遺伝子を有する2種類のES細胞クローンを選んだ。その1つは非常に限定されたlacZ発現パターンに至った(Pax5 +/- ESクローンD3-15;Uranekら、1994);ところが、もう一方は広がったβ-ガラクトシダーゼ呈色をもたらした(以下参照)。図3は、ES胎仔(図3A、C)におけるlacZ遺伝子発現とヘテロ接合交配起源の胎仔におけるlacZ遺伝子発現(図3B、D)の比較を示したものである。クローンD3-15をインジェクションされた四倍体胚盤胞から得られたE9.5胚は中心脳(central brain)と後脳の境界においてlacZ遺伝子の特異的発現を示した(図3A、矢印)。この染色パターンはヘテロ接合交配で得られた胚のものと同一であった(図3B;Urbanekら、1994も参照せよ)。調べた2つめのESクローンはR-βgeo3と名付けたR1クローンであり、このクローンはジーントラップ実験で得られたものである。R-βgeo3細胞を二倍体および四倍体胚盤胞へインジェクションした。インジェクションされた二倍体胚は稔性のキメラを生み出し、その幾つかはlacZ導入遺伝子をその子孫に伝えた。ヘテロ接合交配からこの種のトランスジェニックマウスを確立し、胚にアクセスするためには約4〜5か月かかる。R-βgeo3細胞を四倍体胚盤胞へインジェクションすることによって得られた胚を8.5日で単離し、β-ガラクトシダーゼ活性について染色した。胚全体、羊膜(図3C、白矢印)および尿膜にわたって強い呈色が検出されたが(図3C、白矢印)、臍小胞(umbilical vesicle)では検出されなかった(図3C、矢印)。この染色パターンはヘテロ接合交配後に得られたヘテロ接合胚における染色パターン(図3D)と同一であった。これらの結果は導入遺伝子の発現パターンは生殖細胞遺伝によってESマウス中で確かに維持されていることを示すものである。
参考文献



四倍体胚の作製。四倍体胚盤胞へのES細胞のインジェクション。 R1細胞起源の新生ESマウスおよびESマウスの子孫のGPI解析。 ES胎仔およびヘテロ接合交配起源の胎仔におけるlacZ遺伝子発現の比較。

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  1. 特定の遺伝的特性を有するトランスジェニックマウスを胚性幹細胞から作製する方法であって、マウスの遺伝的に操作された胚性幹細胞を胚盤胞に導入すること、得られた胚を仮親に移植すること前記仮親に前記胚を妊娠満期まで維持させること、および新生仔マウスを得ること、および前記新生仔マウスを成体まで生育させることを含み、遺伝的に操作された胚性幹細胞が四倍体胚盤胞へ導入されることを特徴とする、前記方法。
  2. 2細胞胚のエレクトロフュージョンおよび続いての培養によって得られる胚盤胞が使用されることを特徴とする、請求項1記載の方法。
  3. 胚性幹細胞が四倍体胚盤胞へマイクロインジェクションによって導入されることを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
  4. 遺伝的に操作された胚性幹細胞が遺伝的改変を有するプラスミドの導入によって得られることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
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