JP4128838B2 - 水硬性物質の製造法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゾノトライト(6CaO・6SiO2・H2O)系材料及び/又はトバモライト(5CaO・6SiO2・5H2O)系材料から容易にβ−C2S(β−2CaO・SiO2)、C3S(3CaO・SiO2)等の水硬性物質を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
β−C2SおよびC3Sを主要構成物質としているポルトランドセメントは最も代表的な水硬性物質であり、通常、カルシウム質原料(ライム)と珪酸質原料(石英)に安定化剤を加え、高温固相反応(1400℃以上での加熱処理)することにより製造されている。
【0003】
β−C2Sを合成する他の方法としては、Ca(NO32・4H2Oとコロイダルシリカの混合溶液を高温空気中(750〜1050℃)に噴霧して合成する方法(非特許文献1参照)、CaC24・H2Oと非晶質シリカを出発物質に950℃で合成する方法(非特許文献2参照)、ライムとエアロジルをCa/Si=2.0に調整し、100℃で水熱処理の後、この水和生成物を950℃で加熱、脱水分解させて純粋なβ−C2Sを合成する方法(非特許文献3参照)等がある。また、出発物質にライムと石英を用いた場合(Ca/Si=2.0、水/固体比(W/S)=20)、250℃の飽和蒸気圧下2時間で生成相はヒレブランダイト単相となり、このヒレブランダイトを用いることで加熱により490〜665℃の間で脱水分解を起こし低結晶性のβ−C2Sが生成するとの報告もある(非特許文献4参照)。さらに、製鋼脱リンスラグの遊離石灰分(CaO)にC2S組成になるように珪石(SiO2)を加え、更にCaO:SiO2=2:1のモル比となるように石灰と珪石を追加配合して950℃ないし1200℃の温度範囲で1ないし3時間加熱焼成するとβ−C2Sを55wt%以上含有するビーライトスラグを得ることができるとの報告もある(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平11−292578号公報
【非特許文献1】
ディー.エム.ロイ及びエス.オー.オイフェソービ(D. M. Roy and S. O. Oyefesobi),「ジャーナル オブ アメリカン セラミクス ソサイアティ(Journal of American Ceramics Society)」,1977年,第60巻,p.178-180
【非特許文献2】
ディー.クラール,ビー.マトブォビック,アール.トローコ,ジェイ.エス.ヤング及びシー.ジェイ.チャン(D.Kralj, B. Matkovic, R. Trojko, J. F. Young and C. J. Chan),「アメリカン ジャーナル オブ セラミクス ソサイアティ(Journal of American Ceramics Society)」,1986年,第69巻,p.170-172
【非特許文献3】
エヌ.ヤン及びビー.ゾン(N. Yang and B. Zhong),「ジャーナル オブ チャイニーズ シリケート ソサイアティ(Journal of Chinese Silicate Society)」,1982年,第10巻,p.161-166
【非特許文献4】
石田秀輝ら,「ヒレブランダイトの水熱合成と高活性β−C2Sへの分解」,第46回セメント技術大会講演集 1992,1992年5月,p.104-109
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来の方法では、β−C2Sを製造するためには、Ca/Si比を2.0に調整する必要があり、場合によっては新たに原料を追加配合する必要があった。また、原料によっては水熱合成処理やメカノケミカル処理等の高エネルギー処理が必要であった。
従って、本発明の目的は、Ca/Si比の調整や水熱合成処理などの高エネルギー処理を行うことなく、簡便なβ−C2S等の水硬性物質の製造法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者は、珪酸カルシウム保温材、珪酸カルシウム建材、ALC等のゾノトライト系及び/又はトバモライト系の珪酸カルシウム成形体廃材を原料とし、これにまず二酸化炭素を反応させ、次いで600〜800℃に加熱すれば容易に高純度のβ−C2S等の水硬性物質が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、ゾノトライト又はトバモライトを主成分とする材料に、湿潤状態において二酸化炭素を該材料100質量部に対して100質量部以上反応させ、次いでゾノトライトを主成分とする材料の場合600〜750℃にて、トバモライトを主成分とする材料の場合650〜800℃にて、3〜24時間加熱することを特徴とするβ−C 2 の製造法を提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明方法においては、原料としてゾノトライト(C66・H2O)及び/又はトバモライト(C56・5H2O)を主成分とする材料を用いる。これらの材料としては、ゾノトライト系珪酸カルシウム成形体廃材、トバモライト系珪酸カルシウム成形体廃材が挙げられ、より具体的にはゾノトライト系又はトバモライト系の珪酸カルシウム系建材や保温材廃材が挙げられる。本発明に用いる材料中のゾノトライト及びトバモライトの含有量は60質量%以上、さらに70質量%以上、特に90質量%以上であることが好ましい。これらの材料は、粉砕して用いるのが好ましく、特に75〜250μmの粒子径となるように粉砕したものを用いるのが好ましい。
【0009】
本発明においては、まず、前記材料に二酸化炭素を反応させる。二酸化炭素としては、炭酸ガスを用いるのが好ましい。また、当該二酸化炭素の反応は、湿潤状態で行うのが好ましく、具体的には湿潤状態の前記材料に炭酸ガスを吹き込むことにより行われる。より詳細には、粉砕した前記材料100質量部に対し、炭酸ガスが流通できる空間を残し100質量部以下の水を加え、これに炭酸ガスを吹き込むことにより行われる。用いる炭酸ガスの量は、過剰であるのが通常であり、前記材料100質量部に対して100質量部以上、特に100〜200質量部が好ましい。当該二酸化炭素の反応は、20〜30℃の条件で24〜48時間行うのが好ましい。
【0010】
次いで炭酸化した材料を600〜800℃に加熱する。加熱温度が600℃未満ではβ−C2Sが生成せず、炭酸カルシウムはそのまま残る。また、800℃を超えると、ワラストナイトが生成し、生成物がβ−C2Sではなくなる。また、加熱時間は、温度によっても異なるが、通常3〜24時間、特に12〜24時間が好ましい。
【0011】
なお、加熱温度は、前記材料がゾノトライト系材料の場合には、600〜750℃が好ましく、一方前記材料がトバモライト系材料の場合には650〜800℃が好ましい。
【0012】
本発明方法によりゾノトライト及び/又はトバモライト系原料から、何ら成分調整せず、かつ低温条件でβ−C2Sが得られるのは、まず炭酸化反応により炭酸カルシウムと非晶質シリカが生成し、これらの成分が600〜800℃の加熱により選択的にβ−C2Sに変化することによる。
【0013】
【発明の効果】
本発明によれば、Ca/Si比調整のための成分添加を必要とせず、かつ600〜800℃という低温処理により、ゾノトライト及び/又はトバモライトからβ−C2S等の水硬性物質を効率良く製造できる。また、ゾノトライト及び/又はトバモライト原料として珪酸カルシウム形成体廃材を用いることができるので、特に廃棄物のリサイクルとして環境上も重要である。
【0014】
【実施例】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0015】
実施例1
廃棄物として回収した主成分であるゾノトライトの含有量が90質量%程度であるゾノトライト系珪酸カルシウム保温材を原料として用いた。当該保温材を粉砕し、粒子径75〜250μmとした。得られた保温材粉砕品100質量部に20質量部の水を加え、得られた湿潤粉体に炭酸ガスを0.02m3/分の流量で2日間吹き込んだ。この炭酸化処理粉体を高温電気炉に投入し、450〜800℃に12時間加熱した。各加熱温度条件で得られた焼成品の鉱物組成を分析した結果を表1に示す。なお分析手段は、粉末X線回折装置により行った。ここで、X線回折による分析は以下の方法で行う。すなわち、粉末X線回折は、まず、試料をめのう乳鉢、アルミナ乳鉢等を用いて粉砕して試料粒径を約20μm以下とし、得られた粉末試料を金属製の試料ホルダーに充填する。X線回折はCu管球を用い、回折角をθとして、測定速度を2θ=2deg./min.で2θ=5〜65deg.の範囲で測定を行う。鉱物分析は得られた回折ピークをJCPDS検索カードにより同定する。
【0016】
【表1】
Figure 0004128838
【0017】
表1から明らかなように、ゾノトライト系材料を二酸化炭素処理後600〜750℃に加熱すれば、何ら成分添加することなくβ−C2Sが得られることがわかる。
【0018】
実施例2
廃棄物として回収した主成分であるトバモライトの含有量が90質量%程度であるトバモライト系珪酸カルシウム保温材を原料として用いた。当該保温材を粉砕し、粒子径75〜250μmとした。得られた保温材粉砕品100質量部に20質量部の水を加え、得られた湿潤粉体に炭酸ガスを0.02m3/分の流量で2日間吹き込んだ。この炭酸化処理粉体を高温電気炉に投入し、450〜900℃に12時間加熱した。各加熱温度条件で得られた焼成品の鉱物組成を分析した結果を表2に示す。なお分析手段は実施例1の場合と同じ。
【0019】
【表2】
Figure 0004128838
【0020】
表2から明らかなように、トバモライト系材料を二酸化炭素処理後650〜800℃に加熱すれば、何ら成分添加することなくβ−C2Sが得られることがわかる。

Claims (2)

  1. ゾノトライト(6CaO・6SiO2・H2)又はトバモライト(5CaO・6SiO2・5H2O)を主成分とする材料に、湿潤状態において二酸化炭素を該材料100質量部に対して100質量部以上反応させ、次いでゾノトライトを主成分とする材料の場合600〜750℃にて、トバモライトを主成分とする材料の場合650〜800℃にて、3〜24時間加熱することを特徴とするβ−C 2 S(β−2CaO・SiO 2 の製造法。
  2. ゾノトライト又はトバモライトを主成分とする材料が、夫々ゾノトライト系珪酸カルシウム成形体廃材又はトバモライト系珪酸カルシウム成形体廃材である請求項記載の製造法。
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