JP4128484B2 - 熱可塑性樹脂成形体の穴埋め方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性樹脂成形体に形成された穴を熱可塑性樹脂で埋める穴埋め方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
複雑な形状の熱可塑性樹脂製成形体(以下、成形体と略す)に穴を形成する場合、穴の形成位置によっては、最終的な製品では穴が不要な部分までも穿孔せざるをえないことがある。例えば、図5に示すような、幅の狭い溝部22が形成され、その溝部22の側面に穴24bが形成された成形体11を作製しようとする場合、溝部22にドリルなどの穿孔手段が入らないので、図6に示すように、穴を必要としない部分28の側面21から穿孔して、穴24aを形成させてから必要な穴24bを形成させることがある。このようにした場合、穴24aは不要であるから、熱可塑性樹脂で埋める工程が行われる。
【0003】
成形体の穴を熱可塑性樹脂で埋める従来の穴埋め方法について図7、図8を参照して説明する。なお、図7,図8は、穴の中心軸に沿って成形体を切断したときの横断面図である。
従来の穴埋め方法では、まず、穴埋めしようとする穴にネジ加工を施すとともに、外径が穴の内径に略同等な熱可塑性樹脂製円柱体(以下、円柱体と略す)に穴のネジに対応したネジ加工を施す。次いで、図7(a)に示すように、ネジ加工が施された円柱体31を成形体11の穴24aに手でねじ込んで、図7(b)に示すように、円柱体31を穴24aに充填していた。
しかしながら、上述した穴埋め方法では、穴埋めしようとする穴と円柱体とにネジ加工を施さなければならず、しかも、円柱体を手でねじ込んでいたため、手間を要しており、コストが高くなっていた。また、円柱体をねじ込んだだけでは、強固に固定できず内部からの高圧力に耐えられないことがあった。
【0004】
そこで、円柱状の栓を熱融着により固定する方法も検討されている。すなわち、埋めるべき穴の内面と円柱状の栓の外面をあらかじめ加熱溶融させてから栓を差し込み、冷却固着させる方法が検討されている。この加熱溶着法としては、特許文献1に開示された加熱ヒータにより加熱する方法や、特許文献2に示されたホットエアまたはフレーム処理による方法などが提案されている。
【0005】
【特許文献1】
特開平4−321894号公報
【特許文献2】
特開平5−254042号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した加熱溶着法によっても、ねじ込み法に比して手間はそれほど変わらず、耐圧性も十分とは言えなかった。
上述したように、成形体を穿孔し、穴埋めして製造するものとしては、例えば、フィルタープレスに備えられる濾過板などが挙げられるが、濾過板においてはコストが低く、耐圧性に優れたものが求められていた。
本発明は、前記事情を鑑みてなされたものであり、手間を少なくしてコストを低くでき、しかも、1MPa以上の高圧力にも耐えるように穴埋めできる熱可塑性樹脂成形体の穴埋め方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の熱可塑性樹脂成形体の穴埋め方法は、熱可塑性樹脂成形体に形成された穴に対して、外側に向けて拡径する漏斗状の拡径部を形成する拡径工程と、
該拡径部に対応する形状の熱可塑性樹脂製栓体を回転させながら拡径部に回転摩擦溶接する封止工程とを有することを特徴とする。
本発明の熱可塑性樹脂成形体の穴埋め方法においては、前記拡径工程前に、熱可塑性樹脂成形体に形成された穴中に、該穴の太さに対応した太さの熱可塑性樹脂製円柱体を回転させながら挿入、溶接する充填工程を有することが好ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の熱可塑性樹脂成形体の穴埋め方法の一実施形態例について図面を参照して説明する。
本実施形態例は、図6に示すような、側面21から穿孔されて溝部22の対向する面23a,23bに穴24a,24bが形成された熱可塑性樹脂成形体11の穴24aを穴埋めする例であって、熱可塑性樹脂がポリプロピレンの例である。
【0009】
この穴埋め方法の工程について、穴の中心軸に沿って成形体を切断したときの横断面図である図1,図2を参照して説明する。まず、図1(a)に示すように、充填工程として、ドリル25のチャック26に、穴の太さに対応した太さのポリプロピレン製の円柱体12を取り付け、ドリル25を回転させてその円柱体12を回転させながら成形体11の穴に挿入して回転摩擦溶接する。次いで、図1(b)に示すように、円柱体12を穴24aに充填した後、円柱体12の、ドリルのチャックに掴まれていた部分13を切断する。
次いで、拡径工程において、図1(c)に示すように、成形体11に形成され、円柱体12が充填された穴24aに対して、外側に向けて拡径する漏斗状の拡径部14を回転切削刃27により形成し、図2(a)に示すように、ドリル25のチャック26に、拡径部14に対応する形状のポリプロピレン製の栓体15を取り付ける。そして、封止工程において、ドリル25を回転させて栓体15を回転させながら拡径部14に回転摩擦溶接して、図2(b)に示すように、穴埋めを完了する。
【0010】
上述した穴埋め方法において、回転摩擦溶接とは、熱可塑性樹脂からなる物体を回転させながら熱可塑性樹脂に形成された穴に挿入し、その際に発生する物体と穴との摩擦熱によって熱可塑性樹脂を溶融し、それらを溶接することである。回転摩擦溶接については、異なる目的として実用されている(参照:例えば、特開平6−312279号公報、特開平11−115055号公報、特開昭53−33954号公報、特開昭57−96821号公報)。
【0011】
ただし、円柱体12の外径、円柱体12を回転摩擦溶接する際の回転数は、より良好に溶接するために、成形体11の穴の径によって適宜変更することが好ましい。本実施形態例のように、成形体11および円柱体12の材質がポリプロピレンである場合には、穴24aの径D0 に応じて、表1に示すような、円柱体12の外径D1 、回転数にすることが好ましい。
さらに、栓体15の外径と、栓体15を回転摩擦溶接する際の回転数は、成形体の穴の径によって適宜変更することが好ましく、成形体11および栓体15の材質がポリプロピレンである場合には、穴24aの径D0 に応じて、表2に示すような、栓体15の外径D2 、回転数にすることが好ましい。
【0012】
【表1】
【0013】
【表2】
【0014】
栓体15は、拡径部14に対応する形状になっている。ここで、栓体15を拡径部14に対応する形状にするには、栓体15の先端の角度A(図3(a)参照)と、拡径部を形成する回転切削刃27の先端の角度B(図3(b)参照)とを略同等にすればよい。
【0015】
充填工程で穴24aに充填される円柱体12の太さは、円柱体12を回転させながら穴24aに挿入する際に摩擦熱が発生するように、穴24aの内径より僅かに大きくなっている。
円柱体12の長さL(図4参照)は特に制限はないが、円柱体12をドリルのチャックに取り付けやすいことから、円柱体12の外径D1が13mm以上の場合、長さLは、穴埋めしようとする穴の長さ+約10mmであることが好ましく、円柱体12の外径D1が13mm未満の場合、長さLは、穴埋めしようとする穴の長さ+約20mmであることが好ましい。
【0016】
以上説明した穴埋め方法では、円柱体12を回転摩擦溶接して穴24aに装填し、さらに、栓体15を溶接しているので、穴24aおよび円柱体12のネジ加工を省略できる。また、熱可塑性樹脂が半透明なポリプロピレンであり、溶接の具合を目視で確認できるので、漏れテストを省略できる。したがって、従来の穴埋め方法に比べて工数を削減でき、その結果、例えば、1個の製品を製造するのに要する時間を50%削減でき、コストを40%削減できる。
【0017】
なお、本発明は上述した実施形態例に限定されない。例えば、熱可塑性樹脂成形体は溝部が形成されたもの以外であってもよく、不要な穴が形成された成形体であれば、本発明の穴埋め方法を適用できる。特に、本発明は、フィルタープレスに備えられる濾過板を作製する際に好ましく採用される。
【0018】
また、熱可塑性樹脂としてはポリプロピレン以外のものであってもよく、例えば、ポリエチレンやポリアミドなどであってもよい。ただし、本発明では回転摩擦溶接するので、成形体と円柱体と栓体とは、同じ種類の熱可塑性樹脂あるいは互いに相溶する熱可塑性樹脂からなることが好ましい。
また、上述した実施形態例では、拡径工程の前に充填工程を有していたが、本発明では、充填工程を有していなくてもよい。ただし、充填工程を有していた方が、溶接後に円柱体に高圧力を付与した場合でも、圧力により栓が抜けることがより防止される。
【0019】
【発明の効果】
本発明によれば、穴や円柱体にネジ加工を施す必要がないので、手間を少なくして低コストで穴埋めできる。しかも、栓体を穴に回転摩擦溶接するから、1MPa以上の高圧力にも耐えるように穴埋めできる。
さらに、拡径工程の前に充填工程を有していれば、より高圧力にもより耐えるように穴埋めできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の熱可塑性樹脂成形体の穴埋め方法の一実施形態例を工程順に示す横断面図である。
【図2】 本発明の熱可塑性樹脂成形体の穴埋め方法の一実施形態例を工程順に示す横断面図である。
【図3】 (a)は栓体を示す側面図であり、(b)は回転切削刃を示す側面図である。
【図4】 円柱体を示す斜視図である。
【図5】 必要な穴のみが形成された熱可塑性樹脂成形体の一例を示す斜視図である。
【図6】 不要な穴が形成された熱可塑性樹脂成形体の一例を示す斜視図である。
【図7】 従来の熱可塑性樹脂成形体の穴埋め方法を工程順に示す横断面図である。
【符号の説明】
11 成形体
12 円柱体
14 拡径部
24a 穴
Claims (2)
- 熱可塑性樹脂成形体に形成された穴に対して、外側に向けて拡径する漏斗状の拡径部を形成する拡径工程と、
該拡径部に対応する形状の熱可塑性樹脂製栓体を回転させながら拡径部に回転摩擦溶接する封止工程とを有することを特徴とする熱可塑性樹脂成形体の穴埋め方法。 - 前記拡径工程前に、熱可塑性樹脂成形体に形成された穴中に、該穴の太さに対応した太さの熱可塑性樹脂製円柱体を回転させながら挿入、溶接する充填工程を有することを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂成形体の穴埋め方法。
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