JP4127784B2 - 糖鎖固相合成法における呈色反応による反応モニタリング法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、糖鎖固相合成法における呈色反応による反応モニタリング法に関する。より詳細には、本発明は、水酸基、並びに水酸基の保護基であるクロロアセチル基の存在を呈色反応により検出することを特徴とする、糖鎖固相合成法における反応モニタリング法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、糖鎖固相反応において反応の進行状況を確認するためには固相から反応産物を切り出すか、またはMagic angle spinning NMRなどの装置を必要としていた (Seeberger, P. H.他、Angew. Chem. Int. Ed., 1997, 36, 491-493)。その他の手法としては、NMRにより測定可能な炭素同位体13Cやフッ素原子を保護基に組み込んで測定する手法も知られていた(Kanemitsu, T.他、Angew. Chem. Int. Ed., 1998, 37, 3415-3418; Mogemark, M.他、Org. Lett., 2001, 3, 1463-1466)。しかしながら、これらの方法は時間と労力を要するか、あるいは特殊な装置を必要とし、反応を逐一停止しないと測定できないという欠点があった。
【0003】
ペプチド固相合成においてはアミノ基とニンヒドリンによるアミノ基の発色であるニンヒドリン反応により反応進行を呈色追跡確認する技術が確立され、自動合成機にも応用されている(Kaiser, E.他、Anal. Biochem., 1970, 34, 595-598)。
【0004】
しかしながら、糖鎖固相合成に関しては主要な官能基に対する水酸基に対してペプチド合成におけるアミノ基と同様な発色法が開発されていなかったために簡便な呈色反応による反応モニタリングは開発されていなかった。
【0005】
【非特許文献1】
Seeberger, P. H.他、Angew. Chem. Int. Ed., 1997, 36, 491-493
【非特許文献2】
Kanemitsu, T.他、Angew. Chem. Int. Ed., 1998, 37, 3415-3418
【非特許文献3】
Mogemark, M.他、Org. Lett., 2001, 3, 1463-1466
【非特許文献4】
Kaiser, E.他、Anal. Biochem., 1970, 34, 595-598
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
固相合成法は自動合成の鍵技術であり、またコンビナトリアル・ケミストリーの基盤技術でもある。上記した通り、固相反応は過剰の試薬や基質を洗い流せることができる長所がある一方、反応の追跡が非常に難しいという欠点があった。本発明の目的は、糖鎖固相合成において簡便、迅速、高感度かつ選択的に反応の進行状況をリアルタイムにてモニターすることができる手法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、糖鎖固相合成における反応進行状況をリアルタイムで追跡する技術を開発することに成功した。即ち、グリコシル化反応、並びに一時的保護基の脱保護反応の2つの反応の繰り返しからなる糖鎖固相合成においては、水酸基のみならず、一時的な保護基の呈色反応も必要となる。そこで本発明者らは、一時的な保護基として糖鎖合成において汎用されているクロロアセチル基を(p−ニトロベンジル)ピリジン(PNBP) (下記反応式中の化合物1)と反応させて塩基性下において赤色を発色させることにより検出し、一方、水酸基はDieperse Red (赤色色素)とcyanuric chloride複合体(下記反応式中の化合物2) により検出することにより、糖鎖固相合成における反応進行状況をリアルタイムで追跡することに成功した。
【0008】
【化1】
【0009】
クロロアセチル基などの水酸基の保護基を有する糖供与体を用いてグリコシル化反応を行うとグリコシル化反応の進行状況は水酸基の消失、すなわちDisperse Redの呈色反応の消失とPNBPの呈色反応の増大、クロロアセチル基などの水酸基の保護基の脱保護反応はPNBPの呈色反応の消失とDisperse Redの呈色反応の増大により、簡便に追跡することができる。すなわち、本発明の方法によれば、固相から基質を切り出すことなくまた特殊な装置を必要とせずに、迅速にリアルタイムで固相反応を追跡することができる。また、必要とする固相樹脂の量は極少量である。
【0010】
即ち、本発明によれば、固相に固定されている水酸基を有する糖類と、式X−Y(式中、Xはアゾ色素化合物の残基を示し、Yは糖の水酸基と反応しうる基を示す)の化合物とを反応させることを含む、糖類中における水酸基の存在を検出する方法が提供される。
【0011】
本発明の別の側面によれば、固相に固定されているZ−CH2−CO−基(式中、Zはハロゲン又は−O−SO2−Rを示し、ここでRは脂肪族又は芳香族炭化水素基を示す)で保護された水酸基を有する糖類と、(p−ニトロベンジル)ピリジンとを塩基性条件下で反応させることを含む、糖類中における保護された水酸基の存在を検出する方法が提供される。
【0012】
本発明のさらに別の側面によれば、固相に固定されている、水酸基又はZ−CH2−CO−基(式中、Zはハロゲン又は−O−SO2−Rを示し、ここでRは脂肪族又は芳香族炭化水素基を示す)で保護された水酸基を有する糖類と、式X−Y(式中、Xはアゾ色素化合物の残基を示し、Yは糖の水酸基と反応しうる基を示す)の化合物とを反応させる工程、及び/又は、上記糖類と(p−ニトロベンジル)ピリジンとを塩基性条件下で反応させる工程を含む、糖類中における水酸基が保護されているか否かを検出する方法が提供される。
【0013】
好ましくは、式X−Yの化合物は、N-[2-[(4,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジン-2-イル)オキシ]エチル]-N-エチル-4-[(4-ニトロフェニル)アゾ]-ベンゼンアミンである。
好ましくは、Z−CH2−CO−基はクロロアセチル基である。
【0014】
本発明のさらに別の側面によれば、固相に固定されている水酸基を有する第一の糖類と、該水酸基と反応する反応性基と保護された水酸基とを有する第二の糖類とを反応させて糖鎖を合成する方法において、水酸基の保護基がZ−CH2−CO−基(式中、Zはハロゲン又は−O−SO2−Rを示し、ここでRは脂肪族又は芳香族炭化水素基を示す)であり、固相に固定されている糖類中の水酸基または保護された水酸基の存在を、式X−Y(式中、Xはアゾ色素化合物の残基を示し、Yは糖の水酸基と反応しうる基を示す)の化合物または(p−ニトロベンジル)ピリジンとの反応によって検出する、糖鎖の合成反応の進行をモニターする方法が提供される。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明は、固相に固定されている糖類の水酸基又は保護された水酸基の存在を検出する方法に関するものである。
糖類の水酸基は、糖類と式X−Y(式中、Xはアゾ色素化合物の残基を示し、Yは糖の水酸基と反応しうる基を示す)の化合物とを反応させることにより検出することができる。
【0016】
水酸基を検出するために使用する式X−Y(式中、Xはアゾ色素化合物の残基を示し、Yは糖の水酸基と反応しうる基を示す)の化合物について説明する。
式X−Yの化合物は、Xで示されるアゾ色素成分を含有するため着色しており、またYで示される基により糖の水酸基と結合することができる化合物である。固相に固定された水酸基を有する糖と式X−Yの化合物とを反応させることにより固相に式X−Yの化合物が固定され、固相の着色の有無を判別することにより、糖中における水酸基の有無を検出することができる。
【0017】
Xで示されるアゾ色素成分の具体例としては、
Disperse Red (一般名):2-[エチル[4-[(4-ニトロフェニル)アゾ]フェニル]アミノ]-エタノール;
【化2】
Basic Blue 41(一般名): 2-[4-[エチル(2-ヒドロキシエチル)アミノ]フェニル]アゾ]-6-メトキシ-3-メチル-ベンゾチアゾリウムメチル硫酸塩;
【化3】
Congo Red(一般名):1-[[3-メチル-4-[(3-メチルフェニル)アゾ]フェニル]アゾ-ナフタノール ;
【化4】
Sudan Red 7B (一般名):N-エチル1-[[4-(フェニルアゾ)-フェニルアゾ]-2-ナフタレンアミン;
【化5】
Congo Red (一般名):3,3'-[[1,1'-ビフェニル-] -4,4'-ジイルビス(アゾ)-]ビス[4-アミノ]-1-ナフタレンスルホン酸ジナトリウム塩;及び、
【化6】
5-アミノ-3-[(1E)-フェニルアゾ]-4-ヒドロキシ-2,7-ナフタレンジスルホン酸ジナトリウム塩;
【化7】
などが挙げられる。
【0018】
Yで示される糖の水酸基と反応しうる基の具体例としては、ハロゲン、O-SO2-R(Rは脂肪族又は芳香族炭化水素基を示す)、イソチオシアネート、クロロトリアジン誘導体などが挙げられる。
【0019】
式X−Yの化合物の好ましい具体例としては、
N-[2-[(4,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジン-2-イル)オキシ]エチル]-N-エチル-4-[(4-ニトロフェニル)アゾ]-ベンゼンアミン、
Procion Red MX-5B(一般名);5-[(4,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジン-2-イル)アミノ]-4-ヒドロキシ-3-フェニルアゾ2,7-ナフタレンジスルホン酸ジナトリウム塩、
【化8】
Cibacron Brilliant Red MX-5B(一般名)、5-(ベンゾイルアミノ)-3-[[5-[[4-クロロ-6-[(4-スルホフェニル)アミノ]-1,3,5-トリアジン-2-イル]アミノ]-2-スルホフェニル]アゾ]-4-ヒドロキシ-2,7-ナフタレンジスルホン酸塩ジナトリウム塩、
【化9】
などが挙げられる。
【0020】
また、糖類中のZ−CH2−CO−基で保護された水酸基は、糖類と(p−ニトロベンジル)ピリジンとを塩基性条件下で反応させることによって検出することができる。
【0021】
上記式中、Zはハロゲン又は−O−SO2−Rを示し、ここでRは脂肪族又は芳香族炭化水素基を示す。ハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素が挙げられるが、好ましくは塩素である。また、Rが示す脂肪族又は芳香族炭化水素基としては、メチル、エチル、プロピル又はブチルなどの低級(例えば、炭素数1〜6程度の)アルキル基又はフェニル又はナフチルなどの炭素数6〜12のアリール基などが挙げられ、これらが組み合わせて成るアルキル基でもよい。Z−CH2−CO−基の特に好ましい例は、クロロアセチル基である。
【0022】
固相に固定されているZ−CH2−CO−基(式中、Zはハロゲン又は−O−SO2−Rを示し、ここでRは脂肪族又は芳香族炭化水素基を示す)で保護された水酸基を有する糖類と、(p−ニトロベンジル)ピリジンとを塩基性条件下で反応させることにより、呈色反応が生じる。ここで言う塩基性条件下とは、好ましくはピリジン、アミン類(例えば、N, N'-ジイソプロピルアミン、トリエチルアミン、N-メチルモルフォリンなど)、アニリン類(例えば、アニリン、N-メチルアニリン、p-トルイジンなど)などの弱塩基の存在下で反応を行うことを言う。この呈色の有無を判別することにより、Z−CH2−CO−基で保護された水酸基の存在を検出することができる。
【0023】
上記した本発明の方法を利用して糖鎖の合成反応の進行をモニターすることができる。糖鎖の合成は、固相に固定されている第一の糖類に第二の糖類を反応させて行う。糖鎖の合成反応は、当業者に公知の常法により行うことができる。
【0024】
固相に固定されている第一の糖類は、必要に応じて保護基を有している水酸基を有している。この水酸基の保護基は、次に行われる第二の糖類との反応の際に適宜、脱保護する必要がある。本発明では、水酸基の保護基としてZ−CH2−CO−基(式中、Zはハロゲン又は−O−SO2−Rを示し、ここでRは脂肪族又は芳香族炭化水素基を示す)を使用する。この保護基の存在は、上記した通り(p−ニトロベンジル)ピリジンと塩基性条件下で呈色反応を行うことにより検出することができる。また、保護基が脱保護された水酸基は、式X−Y(式中、Xはアゾ色素化合物の残基を示し、Yは糖の水酸基と反応しうる基を示す)の化合物との反応により検出することができる。本発明においては、この2種類の反応により水酸基の保護及び脱保護の状態をモニターすることにより、糖鎖の合成反応の進行をモニターすることができる。
【0025】
本発明で用いる固相は糖を固定化でき、洗浄・分離などの操作を行うことができるものであれば特に限定されず、通常の糖鎖の固相合成方法で使用するものを使用することができる。本発明で用いることができる固相担体の具体例としては、マイクロプレート、ビーズ、チューブ、メンブレン、ゲル、微粒子状固相担体〔例えばアガロース粒子、ゼラチン粒子、カオリン粒子、合成ポリマー粒子(ラテックス粒子等)〕等が挙げられ、これらの中でも微粒子状固相担体を用いることが好ましい。
【0026】
本発明で用いることができる糖類の種類は特に限定されず、単糖、二糖、又は三糖以上の多糖の何れでもよい。より具体的には、エリスロース、スレオース等のテトラオース、リボース、アラビノース、キシロース等のペントース、グルコース、マンノース、ガラクトース、アロース、タロース等のヘキソース、または2−デオキシグルコース、2−デオキシリボース等これらの糖の一部がデオキシ化された糖あるいは2−アセトアミド−2−デオキシグルコース等のアミノ糖、さらには、ラクトース、キトビオース等のようにこれらの糖が相互にエーテル結合したオリゴ糖や、シアル酸、グルクロン酸などを挙げることができる。また、これらの糖にはD体、L体が存在するが、そのいずれでも、また、混合物でも使用できる。
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【0027】
【実施例】
(1)N-[2-[(4,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジン-2-イル)オキシ]エチル]-N-エチル-4-[(4-ニトロフェニル)アゾ]-ベンゼンアミンの合成;
【0028】
【化10】
【0029】
Disperse Red I (2.00g, 6.36 mmol)とN,N'-ジイソプロピルエチルアミン(1.1 mL, 6.36 mmol) をCH2Cl2 (50 mL)に溶解し、cyanuric chloride (1.17 g, 6.36 mmol, lachrymator) を0°Cで加えた。反応液を室温にて終夜撹拌し、酢酸エチル(100 mL) で薄めた後、冷飽和食塩水(30 mL)で有機層を洗浄した。水層を酢酸エチル(30 mL) で抽出し、あわせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、溶媒を減圧濃縮し、残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl3:EtOAc 9:1 - 1:1)で精製し、目的物(2.05 g 70%)を得た。
1H NMR δ8.34(dd, J=9.2Hz, 2H), 8.0-7.9(m, 3H), 6.87(d, J=9.2Hz, 2H), 4.71(t, J=6.4Hz, 2H), 3.89(t, J=6.0Hz, 2H), 3.62(q, J=7.6Hz, 2H), 1.26(t, J=7.6Hz, 3H).
【0030】
(2)PNBP 法によるクロロアセチル基発色の典型的実験方法;
反応液中の数粒の樹脂をミクロチューブに移し、(p-ニトロベンジル)ピリジントルエン溶液 (80 mg/10 mL)を約0.3 mL 加えた。5分後、固相樹脂をシリカゲル薄層上に溶液ごと広げ、ホットプレート上で1分加熱した。その後、10% piperidine トルエン溶液を噴霧し、10秒ホットプレート上で加熱した。樹脂の色は裸眼で観察、またはCCD カメラ付き顕微鏡(280x, CCD Micro Scope Inf-550(Moritex))によりコンピュータに画像として取り込むことも可能であった。
【0031】
(3)Disperse Red-cyanuric chloride 複合体による水酸基発色法の典型的実験項;
反応液中の数粒の樹脂をミクロチューブに移し、THF (0.1 mL) に膨潤させた。1%DisperseRed THF 溶液(0.1 mL), 0.5% i-Pr2NEt, THF 溶液を一滴加え、10分放置した。10分後、上澄み溶液を捨て、THF, DMF により固相樹脂を上澄み液が透明になるまで洗浄した。樹脂の色は裸眼で観察、またはCCD カメラ付き顕微鏡によりコンピュータに画像として取り込むことも可能であった。
【0032】
(4)糖鎖合成のモニタリング
【0033】
【化11】
【0034】
カルボン酸3 (411.0 mg, 0.563 mmol) とTentagel 型固相樹脂4 (1.50 g, 1.375 mmol)の塩化メチレン懸濁液(10 mL) に1,3-diisopropyl carbodiimide (88 μL, 0.563 mmol) を室温にて滴下した。反応液を終夜震盪し、固相樹脂をろ過した。固相樹脂を順次塩化メチレン、ジメチルホルムアミド、塩化メチレン、メタノール、エーテルにより洗浄した。その後、真空乾燥した。PNBP 法、Disperse Red 法により反応が進行していたが、完結していないことが確かめられた(PNBP 法、Disperse Red 法両法ともに呈色反応有り)(図1の一番上の図)。未反応の水酸基を不活性化するためにアセチル化を行った。固相樹脂を塩化メチレン(7 mL) に懸濁し、i-Pr2NEt (0.6 mL)と Ac2O (0.3 mL) を滴下した。反応液を2時間震盪させ、固相樹脂をろ過し、順次塩化メチレン、メタノール、塩化メチレン、エーテルにより洗浄した後、真空乾燥した(アセチル化後、PNBP 法で呈色有り、Disperse Red 法で呈色反応なし)。
【0035】
【化12】
【0036】
固相樹脂5 (1.50 g) をDMF (10 mL) に懸濁し、hydrazinedithiocarbonate溶液 (0.37 M, 2.9 mmol)を滴下し、室温して1時間震盪した。固相樹脂をろ過し、順次DMF, 塩化メチレン、メタノール、エーテルで洗浄した後、真空乾燥した(PNBP 法では呈色反応無し、Disperse Red 法では呈色反応有り)。呈色反応によりクロロアセチル基を脱保護されていることが明らかになった(図1の上から2番目の図)。
【0037】
【化13】
【0038】
固相樹脂6 (1.50 g) と糖供与体7 を塩化メチレン(10 mL) に懸濁させ、BF3・OEt2 (0.3 mL)を滴下した。反応液を終夜室温にて震盪した。固相樹脂を順次DMF,メタノール、塩化メチレン、エーテルにて洗浄し、真空乾燥した(PNBP 法では呈色反応有り、Disperse Red 法では呈色反応無し)(図1の上から3番目の図)。グリコシル化反応が進行し、水酸基が消失していることが明らかになった。
【0039】
この固相樹脂のうち、200 mgをメタノール(3 mL) に懸濁し、NaOMe (0.15 mL, 28%メタノール溶液)を室温にて滴下した。終夜撹拌した後、Amberlyst 15E にて反応液を中和した。固相樹脂をろ過し、ろ液を減圧濃縮した後、残さをプレパラティブシリカゲル薄層クロマトグラフィーで精製し、化合物8 を得た。切り出された2糖は高純度であった。
1H NMR δ7.3-7.2(m, 10H), 5.03(d, J=11.2Hz, 1H), 4.87(d, J=11.7Hz, 1H), 4.80(d, J=11.2Hz, 1H), 4.70(d, J=12.4Hz, 1H), 4.66(d, J=12.0Hz, 1H), 4.64(d, J=12.4Hz, 1H), 4.42(d, J=7.6Hz, 1H), 3.8-3.7(m, 2H), 3.7-3.3(m, 13H), 3.28(m, 1H), 3.27(m, 1H)
【0040】
【化14】
【0041】
固相樹脂9 (500 mg) をDMF (5 mL) に懸濁し、hydrazinedithiocarbonate溶液 (0.37 M, 2.9 mmol)を滴下し、室温して1時間震盪した。固相樹脂をろ過し、順次DMF, 塩化メチレン、メタノール、エーテルで洗浄した後、真空乾燥した(PNBP 法では呈色反応無し、Disperse Red 法では呈色反応有り)。クロロアセチル基が脱保護されていることが明らかになった。
【0042】
【化15】
【0043】
固相樹脂10 (500 mg) と糖供与体 7 (464 mg) を塩化メチレン(4mL) に懸濁し、BF3・OEt2 (0.15 mL) を加え、室温にて13時間震盪した。固相樹脂をろ過した後、塩化メチレン、メタノール、DMF、塩化メチレンで順次洗浄し、真空乾燥を行った(PNBP 法では呈色反応有り、Disperse Red 法では呈色反応無し)(図1の上から4番目の図)。水酸基が消失し、グリコシル化反応が進行していることが明らかになった。
【0044】
この固相樹脂のうち、200 mgをメタノール(3 mL) に懸濁し、NaOMe (0.15 mL, 28%メタノール溶液)を室温にて滴下した。終夜撹拌した後、Amberlyst 15E にて反応液を中和した。固相樹脂をろ過し、ろ液を減圧濃縮した後、残さをプレパラティブシリカゲル薄層クロマトグラフィーで精製し、化合物15を得た。切り出された4糖は高純度であった。
【0045】
【化16】
【0046】
1H NMRδ(CD3OD)7.3-7.2(m,25H), 4.99(d,J=10.7Hz,1H), 4.94(d,J=10.5Hz,1H), 4.84(d,J=11.0Hz,1H), 4.82(d,J=11.7Hz,1H), 4.6-4.5(m,3H), 4.49(d,J=11.2Hz, 1H), 4.45(d,J=10.7Hz,1H), 4.35(d,J=7.8Hz,1H), 4.31(d,d=7.8Hz,1H), 4.06(m,1H), 3.9-3.8(m,2H), 3.57(m,1H), 3.6-3.3(m,14H), 3.04(t,J=8.8Hz,1H), 2.62(m,1H);
13C NMRδ139.98(C),139.88(C),139.70(C),139.42(C),138.91(C),129.56(CH), 129.41(CH),129.13(CH),129.09(CH),129.13(CH),129.09(CH),129.06(CH),129.03(CH),128.97(CH),128.83(CH),128.67(CH),128.54(CH),128.49(CH),128.45(CH), 128.34(CH),105.09(CH),104.56(CH),104.09(CH),103.00(CH),85.25(CH),83.70(CH),79.08(CH),78.79(CH),78.39(CH),78.26(CH),77.88(CH),77.78(CH),77.44(CH), 76.75(CH),76.57(CH),76.46(CH),76.09(CH),76.00(CH2),75.92 (CH2), 77.72(CH), 75.61(CH2),75.47(CH),75.07(CH2),71.82(CH2),69.33(CH2),62.43(CH2),62.36(CH2),62.07(CH2).
【0047】
【化17】
【0048】
固相樹脂6 (200 mg) と糖供与体12 を塩化メチレン (2 mL) に懸濁し、BF3・OEt2(30 mL) を滴下した。反応液を12時間震盪させ、固相樹脂をろ過した後、塩化メチレン、メタノール、DMF, 塩化メチレンで洗浄した。(PNBP 法では呈色反応有り、Disperse Red 法では呈色反応無し)
【0049】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、糖鎖固相合成において簡便、迅速、高感度かつ選択的に反応の進行状況をリアルタイムにてモニターすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、水酸基の脱保護を含む糖鎖合成の進行を本発明の方法でモニターした結果を示す。
Claims (1)
- 固相に固定されている、水酸基、又はクロロアセチル基で保護された水酸基を有する糖類と、N-[2-[(4,6- ジクロロ -1,3,5- トリアジン -2- イル ) オキシ ] エチル ]-N- エチル -4-[(4- ニトロフェニル ) アゾ ]- ベンゼンアミンとを反応させる工程、及び、上記糖類と(p−ニトロベンジル)ピリジンとを塩基性条件下で反応させる工程を含む、糖類中における水酸基が保護されているか否かを検出する方法。
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