JP4125907B2 - 油入変圧器の劣化診断装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、大形の油入変圧器に適した劣化診断装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
油入変圧器の劣化診断装置は、油入変圧器に使用されている絶縁物の劣化度で以て油入変圧器の劣化度を診断するものである。油入変圧器においては、運転中の温度上昇によって絶縁物が経年劣化する。また絶縁物の一部は熱分解して可燃性ガス、フルフラール生成物等を発生して絶縁油に溶解する。従来の劣化診断装置の診断方法としては、この絶縁油中の溶存ガスの成分分析を行って診断するもの、あるいは油入変圧器に使用されている絶縁物を採取し平均重合度を測定して診断するもの、あるいはこれら両者を用いて診断するもの等の方法がある。油入変圧器では、これらの診断方法を活用して予防保全を図っている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
油入変圧器に使用されている絶縁物を採取して劣化診断を行うには、絶縁物は巻線の最高温度に達する部分から採取することが最適であるが、その部分は巻線の内層部にあるために巻線を分解しなければ絶縁物を採取することができないので、他の部分から採取していた。この採取方法では、信頼性が乏しいと言う問題があった。
【0004】
本発明の目的は、劣化診断の信頼性を向上させた油入変圧器の劣化診断装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、油入変圧器のタンク内の上部に設けた収容室に診断片を収容して、この収容室に収容された診断片を定期的に採取して劣化診断を行う油入変圧器の劣化診断装置に関するものである。
【0006】
請求項1に記載の発明は、油入変圧器の巻線に使用している紙巻き絶縁電線と同種の紙巻き絶縁電線から形成された診断片を、油入変圧器のタンク内の上部に設けられた収容室に巻線が受ける圧力と同等の圧力で加圧した状態でかつ絶縁油に浸漬した状態で加圧手段と共に収容して、収容室内の絶縁油の温度を巻線の最高温度と同じ又はそれに近い温度まで更に加熱するようにしたものである。
請求項1の発明においては、絶縁紙と導体とが一体となって形成されて実際の絶縁紙の使用環境と同等の環境を模擬できる診断片を、巻線の紙巻き絶縁電線の加圧状態及び温度状態と同等の環境に置くことによって劣化状態が模擬されて、巻線の紙巻き絶縁電線から診断片を採取する場合と同等の劣化状態の診断片が形成され、信頼性が向上した油入変圧器の劣化診断を行うことができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、加圧手段に、加圧力が調整可能な弾性体を備えたものである。
請求項2の発明においては、弾性体の歪み量の調整によって加圧力の調整ができ、油入変圧器の容量に応じた適正な加圧力が設定できる。
【0008】
請求項3に記載の発明は、補助加熱手段に、発熱体と、油入変圧器の負荷電流を入力として発熱体の加熱源となる変流器と、負荷電流に基づいて発熱体が発生する発熱量を調整する発熱調整器とを備えたものである。
請求項3の発明においては、負荷電流に対応した発熱量の変化を模擬でき、この発熱量の変化が診断片の劣化状態の模擬に寄与する。
【0009】
請求項4に記載の発明は、収容室とタンク内とを連通するパイプと、このパイプに絶縁油を循環させるポンプとを更に設けたものである。
請求項4の発明においては、絶縁油がパイプを通じて収容室とタンク内とを循環して、収容室内の診断片は巻線の紙巻き絶縁電線と同等の絶縁油環境となり絶縁油中の水分及び酸素等が劣化状態の模擬に寄与する。
【0010】
請求項5に記載の発明は、収容室とタンク内とを連通するパイプと、このパイプに絶縁油の流動を遮断できるバルブとを更に設けたものである。
請求項5の発明においては、バルブを閉鎖位置に切り換えると、絶縁油の流動を遮断して収容室とタンク内とを隔離することができ、絶縁油が噴出することなく診断片の取り出しが行える。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明に係る油入変圧器の劣化診断装置を設けた油入変圧器の構成図、図2は、本発明に係る油入変圧器の劣化診断装置の一実施形態を示す構成図、図3は、その油入変圧器の劣化診断装置の加圧手段の組立構造を示す分解斜視図である。
【0012】
この実施形態の油入変圧器1の劣化診断装置10は、診断片11と、この診断片11を加圧する加圧手段12と、診断片11が加圧された状態でかつ絶縁油4に浸漬した状態で加圧手段12と共に収容する収容室13と、収容室13内の絶縁油4を油入変圧器1の巻線3の最高温度と同じ又はそれに近い温度まで更に加熱する補助加熱手段16と、絶縁油4を循環させるポンプ14と、絶縁油4の流動を遮断できるバルブ15とから成っている。
【0013】
診断片11は、油入変圧器1の巻線3に使用している紙巻き絶縁電線3aと同種の電線から、導体11bと絶縁紙11aとを一体で適宜の長さで切り取ったものである。なお、診断片11は、劣化診断を定期的に行えるように複数個作られる。
【0014】
加圧手段12は、台板12aと、台板12aの片面に適宜の間隔をもって垂設された一端に雄ネジ12hを有する一対の軸12bと、軸12bが貫通する一対の孔12fが設けられた押さえ板12cと、ナット12dと、加圧力が調整可能な弾性体12e(例えばバネ)と、歪みゲージ12gとから成っている。この加圧手段12は、押さえ板12cと取出口蓋13aとが連結棒13cで連結されて収容室13に固定されている。また、加圧力は、油入変圧器1の容量に応じた適正な圧力とし、歪みゲージ12gの歪み値を測定しながら調整する。なお、12gAは測定端子である。
【0015】
収容室13は、上部に取出口蓋13aで開閉できる取出口13bが設けられて、タンク2内の上部にタンク2内とは隔離して設けられ、絶縁油4が充填されている。また、取出口13bでは、診断片11が、加圧手段12に装着されて加圧手段12と共に出し入れが行われる。
【0016】
補助加熱手段16は、発熱体16a(例えば電熱器)と、負荷電流を入力として発熱体16aの加熱源となる変流器16cと、負荷電流に基づいて発熱体16aが発生する発熱量を調整する発熱調整器16bとから成っている。この補助加熱手段16では、発熱体16aが収容室13内に設けられ、油入変圧器1の外部に設けられた発熱調整器16bを介して、二次ブッシング1aの近傍に設けられた変流器16cに電気的に接続されている。
【0017】
上記のような油入変圧器1の劣化診断装置10では、紙巻き絶縁電線3aから切り取った診断片11を下記のように装着する。先ず、加圧手段12では、軸12bが垂設された台板12aの一面を上方に向け、この面の軸12bと他方の軸12bとの間に診断片11を複数個重ねて載せ、その上に歪みゲージ12gを重ね、更に押さえ板12cを一対の軸12bに緩挿して重ね、更に押さえ板12cの孔12fから突出した一対の軸12bに弾性体12eを緩挿して、更に一対の軸12bの雄ネジ12hにナット12dを螺合して締め付けて、巻線3が受ける圧力と同等の圧力で加圧する。ここで、加圧力は、弾性体12eを加圧して加圧力に対応した歪み量で以て設定する。次に、診断片11を装着した加圧手段12を、取出口13bを通して収容室13に収容する。また、診断片11を採取するには、取出口蓋13aを開けて加圧手段12を取り出して診断片11の加圧状態を開放して、一回の診断に必要な診断片11を取り出す。
【0018】
また、上記のような油入変圧器1の劣化診断装置10では、油入変圧器1が運転されると、紙巻き絶縁電線3aには油入変圧器1の負荷電流が流れて巻線3全体が発熱して、タンク2内の絶縁油4は温度が上昇して対流して収容室13を加熱する。収容室13が加熱されると、収容室13内の絶縁油4の温度がタンク2内の絶縁油4の温度と同じ温度まで上昇する。更に、補助加熱手段16で、収容室13内の絶縁油4の温度を巻線3の最高温度と同じ又はそれに近い温度まで加熱する。
【0019】
ここで、診断片11は、タンク2内の絶縁油4の最高温度相当分の熱量と、補助加熱手段16の発熱量とを合算した熱量を受熱して、巻線3の最高温度と同じ又はそれに近い温度となる。
【0020】
以上のような、加圧手段12及び補助加熱手段16によって診断片11は、巻線3の紙巻き絶縁電線3aと同等の圧力環境及び温度環境に置かれることになり、巻線3の紙巻き絶縁電線3aと同等の劣化を受けることになる。
【0021】
また、収容室13とタンク2内とを連通する一組のパイプ9と、一方のパイプ9に絶縁油4を循環させるポンプ14とを設けると、絶縁油4がパイプ9を通じて収容室13とタンク2内とを循環して、収容室13内の診断片11は、巻線3の紙巻き絶縁電線3aと同等の絶縁油環境に置かれることになり、巻線3の紙巻き絶縁電線3aと同等の劣化を受けることになる。ここで、パイプ9の収容室13内の端部は、絶縁油4の循環を一様にするために、一方のパイプ9は収容室13内の上部付近に、他方のパイプ9は収容室13内の下部付近に設けられている。
【0022】
また、収容室13とタンク2内とを連通する一組パイプ9と、パイプ9に絶縁油4の流動を遮断できるバルブ15とを設けると、バルブ15を閉鎖位置に切り換えた場合に、絶縁油4の流動を遮断して収容室13とタンク2内とを隔離することができ、絶縁油4が噴出することなく診断片11の取り出しが行える。
【0023】
【発明の効果】
以上のように請求項1に記載の発明によれば、油入変圧器の巻線に使用している紙巻き絶縁電線と同種の紙巻き絶縁電線から形成された診断片を、油入変圧器のタンク内の上部に設けられた収容室に巻線が受ける圧力と同等の圧力で加圧された状態でかつ絶縁油に浸漬した状態で加圧手段と共に収容して、収容室内の絶縁油の温度を油入変圧器の巻線の最高温度と同じ又はそれに近い温度まで更に加熱するようにしたので、絶縁紙と導体とが一体となって形成されて実際の絶縁紙の使用環境と同等の環境を模擬できるこの診断片は、巻線の紙巻き絶縁電線の加圧状態及び温度状態と同等の環境に置かれることになり、巻線の紙巻き絶縁電線から診断片を採取する場合と同等の劣化状態の診断片が形成され、信頼性が向上した油入変圧器の劣化診断を行うことができる。
【0024】
請求項2に記載の発明によれば、加圧手段に、加圧力が調整可能な弾性体を備えたので、弾性体の歪み量の調整によって加圧力の調整ができ、油入変圧器の容量に応じた適正な加圧力が設定できる。
【0025】
請求項3に記載の発明によれば、補助加熱手段に、発熱体と、油入変圧器の負荷電流を入力として発熱体の加熱源となる変流器と、負荷電流に基づいて発熱体が発生する発熱量を調整する発熱調整器とを備えたので、負荷電流に対応した発熱量の変化を模擬でき、この発熱量の変化が診断片の劣化状態の模擬に寄与する。
【0026】
請求項4に記載の発明によれば、収容室とタンク内とを連通するパイプと、このパイプに絶縁油を循環させるポンプとを更に設けたので、絶縁油がパイプを通じて収容室とタンク内とを循環して、収容室内の診断片は巻線の紙巻き絶縁電線と同等の絶縁油環境となり絶縁油中の水分及び酸素等が劣化状態の模擬に寄与する。
【0027】
請求項5に記載の発明によれば、収容室とタンク内とを連通するパイプと、このパイプに絶縁油の流動を遮断できるバルブとを更に設けたので、バルブを閉鎖位置に切り換えると、絶縁油の流動を遮断して収容室とタンク内とを隔離することができ、絶縁油が噴出することなく診断片の出し入れが行える。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る油入変圧器の劣化診断装置を設けた油入変圧器の構成図である。
【図2】本発明に係る油入変圧器の劣化診断装置の一実施形態を示す構成図である。
【図3】本発明に係る油入変圧器の劣化診断装置の加圧手段の組立構造を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
1 油入変圧器
1a 二次ブッシング
2 タンク
3 巻線
3a 紙巻き絶縁電線
4 絶縁油
9 パイプ
10 劣化診断装置
11 診断片
11a 絶縁紙
11b 導体
12 加圧手段
12a 台板
12b 軸
12c 押さえ板
12d ナット
12e 弾性体
12f 孔
12g 歪みゲージ
12gA 測定端子
12h 雄ネジ
13 収容室
13a 取出口蓋
13b 取出口
13c 連結棒
14 ポンプ
15 バルブ
16 補助加熱手段
16a 発熱体
16b 発熱調整器
16c 変流器

Claims (5)

  1. 油入変圧器の巻線に使用している紙巻き絶縁電線と同種の紙巻き絶縁電線から形成された診断片と、前記診断片を加圧する加圧手段と、前記油入変圧器のタンク内の上部に設けられ前記診断片を前記巻線が受ける圧力と同等の圧力で加圧した状態でかつ絶縁油に浸漬した状態で加圧手段と共に収容する収容室と、前記収容室内の絶縁油の温度を前記巻線の最高温度と同じ又はそれに近い温度まで更に加熱する補助加熱手段とを備えた油入変圧器の劣化診断装置。
  2. 加圧手段は、加圧力が調整可能な弾性体を備えた請求項1に記載の油入変圧器の劣化診断装置。
  3. 補助加熱手段は、発熱体と、油入変圧器の負荷電流を入力として前記発熱体の加熱源となる変流器と、前記負荷電流に基づいて前記発熱体が発生する発熱量を調整する発熱調整器とを備えた請求項1又は請求項2に記載の油入変圧器の劣化診断装置。
  4. 収容室とタンク内とを連通するパイプと、前記パイプに絶縁油を循環させるポンプとを更に設けた請求項1又は請求項2又は請求項3に記載の油入変圧器の劣化診断装置。
  5. 収容室とタンク内とを連通するパイプと、前記パイプに絶縁油の流動を遮断できるバルブとを更に設けた請求項1又は請求項2又は請求項3又は請求項4に記載の油入変圧器の劣化診断装置。
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