JP4125842B2 - 高周波フィルタ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、通信システムなどの高周波信号処理装置に用いられる高周波フィルタに関する。
【0002】
【従来の技術】
高周波通信システムにおいては、フィルタ、分波器などをはじめとする共振器を基本に構成される高周波回路素子は不可欠の要素である。特に、移動体通信システムなどにおいては、周波数帯域の有効利用のために、狭帯域なフィルタが要求される。また、移動体通信の基地局や通信衛星などにおいては、低損失でかつ小型で、大きな電力に耐えることのできるフィルタが強く要望されている。
【0003】
現在用いられている共振器フィルタなどの高周波回路素子としては、誘電体共振器を用いたもの、伝送線路構造を用いたもの、表面弾性波素子を用いたものなどが主流となっている。このうち、伝送線路構造を用いたものは、小型で、マイクロ波、ミリ波領域の高周波まで適用することができ、さらに、基板上に形成する2次元的な構造であり、他の回路や素子との組み合わせが容易であるため、広く利用されている。従来、このタイプの共振器としては、伝送線路による1/2波長共振器が最も一般的に利用されており、さらに、この1/2波長共振器を複数個結合させることにより、フィルタなどの高周波回路素子が構成されている。
【0004】
また、他の従来例として、平面回路構造を用いたものがある。その代表例としては、円板共振器を複数個並べたもの、あるいは、円板型共振器の外周の一部に突起部を設けてダイポールモードを結合させることにより、フィルタ特性を発揮させるものなどがある(『Low Loss Multiplexers with Planar Dual Mode HTS Resonators』 IEEE Trans actions on Microwave Theory and Techniques, Vol.44, No.7, pp.1248-1257, 『電子情報通信学会技術研究報告, 1993, Vol.93, No.363(SCE93 47-56)永井靖浩他』, 電子通信学会論文誌, 72/8 Vol.55-B No.8『マイクロ波平面回路の解析的取扱い(Analysis of Microwave Planar Circuit)』三好旦六、大越孝敬)。その他の従来例として、特開平6 - 037504号公報(特に図6)を挙げることができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、1/2波長共振器等の伝送線路構造の共振器では、導体中における高周波電流が部分的に集中するために、導体の抵抗による損失が比較的大きく、共振器ではQ値の劣化、フィルタを構成した場合には損失の増加を招いてしまう。また、通常よく利用されるマイクロストリップ線路構造の1/2波長共振器を用いた場合には、回路から空間への放射による損失の影響も問題となる。
【0006】
これらの影響は、構造を小型化したり、動作周波数を高くすると、さらに顕著になる。損失が比較的小さく、耐電力性に優れた共振器としては、誘電体共振器が利用されている。しかし、誘電体共振器は立体構造を有しており、かつ、サイズが大きいために、高周波回路素子の小型化にとっては問題である。
【0007】
また、超伝導体を利用することにより、これら高周波回路素子の低損失化を図ることも可能である。しかし、上記した従来の構造のものでは、電流の過度の集中によって超伝導性が失われるために、大きな電力の信号を利用することは困難である。実際の測定例でも、最大入力電力は数十mW程度であり、実用的なレベルには達していない。
【0008】
また、円板共振器に代表される平面回路共振器を用いたフィルタは、電流分布が広い面積にわたって均一となるため、優れた耐電力性能を有すると言われている。しかし、円板共振器を複数個並べたものは、素子面積が非常に大きくなり、急峻なスカート特性を実現するために多段構成とする場合に特に深刻な問題となる。また、外周の一部に突起部を設けたタイプの平面回路構造の共振器フィルタの場合には、3段以上の多段構成とするための簡易な方法がなかった。
【0009】
以上のようなことから、マイクロ波、ミリ波領域の高周波領域において他の回路や素子との整合性が良く、かつ、高性能な小型の共振器フィルタ等の高周波回路素子を2次元的な構造で実現するためには、伝送線路構造や平面回路構造の共振器が有するこのような問題を解決することが極めて重要である。
【0010】
本発明は、従来技術における前記課題を解決するためになされたものであり、低損失で、耐電力性に優れ、かつ、急峻なスカート特性をも実現することのできる高性能な高周波フィルタを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成する本発明に係る高周波フィルタは、
それぞれ2つの直交した共振モードを有し、順番に結合したn個(nは2以上の整数)の平面回路共振器と、金属からなる直線状の2つの結合端子とを備えた高周波フィルタであって、
前記2つの結合端子が第1番目の前記平面回路共振器が有する2つの共振モードとそれぞれ容量結合しており、
第n番目の平面回路共振器が有する2つの共振モード間に結合を生じさせる手段が備わっており、
前記高周波フィルタは、誘電体からなる基板と、前記基板の表面上に形成された金属からなるn個のストリップ導体と、前記基板の裏面上に形成された導体膜からなるグランドプレーンとからなり、
前記各平面回路共振器は、前記基板の表面に形成された各前記ストリップ導体と、前記基板の裏面に形成された前記グランドプレーンとから構成され、
n個の前記ストリップ導体が距離dの間隙部を介して直線状に配置され、
n個の前記ストリップ導体のうちの一端部に位置する第1番目のストリップ導体の輪郭上において、前記第1番目のストリップ導体の中心から見て、前記第1番目のストリップ導体に隣接する第2番目のストリップ導体と反対側の位置に第1の結合端子が結合され、前記第1の結合端子の結合位置とほぼ90゜ずれた位置に第2の結合端子が結合され、
第n番目の平面回路共振器が有する2つの共振モード間に結合を生じさせる手段は、
(a) 前記2つの共振モードのうち一方の共振モードと他方の共振モードとの分極方向に対して45°の方向に長軸を有する楕円形状を有する第n番目のストリップ導体
(b) 前記2つの共振モードのうち一方の共振モードと他方の共振モードとの分極方向に対して45°の方向に突起部を有する第n番目のストリップ導体、または
(c) 前記2つの共振モードのうち一方の共振モードと他方の共振モードとの分極方向に対して45°の方向に切り掻き部を有する第n番目のストリップ導体
のいずれかであり、
前記距離dの間隙部を挟んで隣接する2つの前記平面回路共振器が有する共振モードのうち、前記直線状の第1の結合端子に平行な共振モードの結合係数khと、前記直線状の第2の結合端子に平行な共振モードの結合係数kpとが一致するように、距離dが設定されている。
前記第1番目のストリップ導体の形状が円板形状あるいは楕円形状であることが好ましい。
周囲が導体壁によって包囲されていることが好ましい。
前記平面回路共振器の導体材料として超伝導材料を用いられていることが好ましい。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、実施の形態を用いて本発明をさらに具体的に説明する。
【0019】
〈第1の実施の形態〉
図1は本発明の第1の実施の形態における高周波フィルタを示す平面図、図2はその断面図である。
【0020】
図1、図2に示すように、誘電体単結晶などからなる基板1の表面上には、真空蒸着、エッチングなどの適当な方法によって複数の例えば円板形状あるいは楕円形状の第1、第2及び第3のストリップ導体2a、2b及び2cが形成されている。そして、これらの第1、第2及び第3のストリップ導体2a、2b及び2cは、間隙部5a、5bを介して直線状に配置されている。また、基板1の裏面上には、その全面にグランドプレーン3が形成されている。この構成において、第1、第2及び第3のストリップ導体2a、2b及び2cは、それぞれ別個の第1、第2及び第3の平面回路共振器4a、4b及び4cとして動作する。また、第1のストリップ導体2aに対しては、第1及び第2の結合端子6a、6bが設けられている。
【0021】
第1及び第2の結合端子6a、6bは、第1の平面回路共振器4aが有する2つの直交方向に分極した共振モード7a、7bをそれぞれ励振するような方向から第1の平面回路共振器4aに誘導結合されている。但し、図1中の共振モードを示す矢印は共振モードの電流方向、すなわち、電気的な分極方向を示しているものとする。
【0022】
典型的な例としては、円板共振器におけるTM11モードがこのような電気的特性を有する共振モードとなる。また、第2の平面回路共振器4bも2つの直交方向に分極した共振モード8a、8bを有し、第3の平面回路共振器4cも2つの直交方向に分極した共振モード9a、9bを有している。共振モード7a、8a、9aは互いに分極の方向が同じとなるようにすることができ、また、共振モード7b、8b、9bも互いに分極の方向が同じとなるようにすることができる。
【0023】
以下、上記のように構成された回路の動作について説明する。
【0024】
第1の結合端子6aに入力した信号は第1の平面回路共振器4aの共振モード7aを励振する。共振モード7aは第2の平面回路共振器4bの共振モード8aと結合する。この場合、共振モード7aは共振モード7b、8bとは分極の方向がほぼ直交しているので、これらの共振モード7b、8bとの結合量は無視できる程度に非常に小さい。
【0025】
次に、第2の平面回路共振器4bの共振モード8aは第3の平面回路共振器4cの共振モード9aと結合する。
【0026】
次に、平面回路共振器4cにおいて、適当な方法により、共振モード9aと共振モード9bとの間に結合を生じさせる。共振モード9aと共振モード9bとの間に結合を生じさせる方法としては、例えば、図3(a)に示すように、第3のストリップ導体2cの形状を、共振モード9aと共振モード9bの分極方向に対して45゜の方向に長軸を有する楕円形状にしたり、図3(b)、(c)に示すように、その方向の輪郭部に突起部10や切り欠き部11などを形成する方法がある。
【0027】
同様にして、第3の平面回路共振器4cの共振モード9bは、第2の平面回路共振器4bの共振モード8b及び第1の平面回路共振器4aの共振モード7bと順次結合し、最終的に第2の結合端子6bから出力される。
【0028】
以上の過程で、第1の結合端子6aに入力した信号は6つの共振モード7a、8a、9a、9b、8b、7bを介していることから、この回路は6段の共振器結合型帯域通過フィルタとして動作する。
【0029】
〈第2の実施の形態〉
図4は本発明の第2の実施の形態における高周波フィルタを示す平面図、図5はその高周波フィルタを導体壁によって囲まれた空洞内に固定した状態を示す断面図である。
【0030】
図4、図5に示すように、ランタンアルミナ(LaAlO3)単結晶などの比誘電率24の基板12の表面上には、真空蒸着、エッチングなどの適当な方法によって複数の楕円形状の第1及び第2のストリップ導体13a、13bが形成されている。そして、これらの第1及び第2のストリップ導体13a、13bは、間隙部16を介してそれぞれの長軸が一直線上にくるように配置されている。また、基板12の裏面上には、その全面に導体膜からなるグランドプレーン14が形成されている。この構成において、第1及び第2のストリップ導体13a、13bは、それぞれ別個の第1及び第2の平面回路共振器15a、15bとして動作する。また、第1のストリップ導体13aに対して、第1及び第2の結合端子17a、17bが設けられている。
【0031】
第1の結合端子17aは、第1のストリップ導体13aの輪郭上の、第2のストリップ導体13bと反対側の位置で第1のストリップ導体13aに容量結合されている。また、第2の結合端子17bは、同じく第1のストリップ導体13aの円周上の、第1の結合端子17aの結合位置と90゜ずれた位置で第1のストリップ導体13aに容量結合されている。ここで、第1及び第2の結合端子17a、17bは、その先端部(第1のストリップ導体13aとの結合部分)の線路幅が拡げられている。これにより、第1及び第2の結合端子17a、17bと第1のストリップ導体13aとの間の結合容量を増加させて、入出力結合度を大きくすることができる。
【0032】
第1及び第2の結合端子17a、17bは、伝送線路によって基板12の縁部まで延長されており、この部分で外部導入ケーブル等と結合されている。
【0033】
そして、図5に示すように、基板12を導体壁20によって囲まれた空間内に固定して、特性の検討を行った。このように基板12を導体壁20によって囲まれた空間内に配置すれば、第1及び第2の平面回路共振器15a、15bからの放射損失を防止することができるため、損失をより一層低減することができる。しかも、導体壁20によって囲まれた空間の形状を変えることによってモード結合量をより大きな自由度で調節することが可能となる。
【0034】
本高周波フィルタの具体的寸法を挙げれば、次のとおりである。基板12は、その大きさ(面積)が50.8mm×25.4mm、厚みが1mmである。第1及び第2のストリップ導体13a、13bは、半径7mmの円形を基に、所望の特性を得るために僅かに歪ませた形状となっている。特に第2のストリップ導体13bは、第2の平面回路共振器15bの2つの直交方向に分極した共振モード19aと共振モード19bとを結合させるために、図3(a)に示したような楕円形状となっている。また、図5に示すように、導体壁20によって囲まれた空洞の高さは、基板12の表面から測って10mmとなっている。
【0035】
図6に、図4の配置における、共振モード18aと共振モード19aとの間の結合係数khと間隙部16の距離dとの関係、及び、共振モード18bと共振モード19bとの間の結合係数kpと間隙部16の距離dとの関係を示す。図6から分かるように、間隙部16の距離dの増加に対し、共振モード18aと共振モード19aとの間の結合係数khは減少傾向にあり、共振モード18bと共振モード19bとの間の結合係数kpは増加傾向にある。いずれにしても、結合係数kh、kpは、間隙部16の距離dの値によって制御できることが分かる。
【0036】
図7に、第2のストリップ導体13bの形状を、共振モード19aと共振モード19bの分極方向に対して45゜の方向に長軸を有する楕円形状に歪ませた場合の、両モード間の結合係数を示す。図7から分かるように、楕円率に対し、結合係数がほぼ比例して増加している。
【0037】
以上のことから、各共振モード間の結合係数は、間隙部16の距離dと第2のストリップ導体13bの楕円率とを変化させることにより、調節できることが分かる。この結果を基に、本実施の形態においては、比帯域1%、帯域内リップル0.01dBの4段チェビシェフ型フィルタ特性を得るために、間隙部16の距離dを3mm、第2のストリップ導体13bの楕円率を0.9%に設定した。図8に、HPeesof社製の電磁界シミュレータである『Momentum』を用いて計算した周波数特性を示す。図8から分かるように、4段の帯域通過フィルタ特性が得られることが実証された。
【0038】
さらに、第1のストリップ導体13aを楕円形状とすることにより、共振モード18aと共振モード18bとの間の直接結合を生じさせることができる。これにより、楕円関数型のフィルタ特性を得ることができる。図9に、HPeesof社製の電磁界シミュレータである『Momentum』によって実際に求めた周波数特性の一例を示す。図9に示すように、通過帯域のすぐ両側にノッチが入り、急峻なスカート特性が得られていることが分かる。この場合、第1のストリップ導体13aの楕円の長軸を、第1及び第2の結合端子17a、17bのそれぞれの結合箇所の間を通り、共振モード18aと共振モード18bの分極方向に対して45゜の方向に設定すれば、ノッチを効果的に挿入することができる。
【0039】
本発明の高周波フィルタの構成によれば、平面回路共振器の2つの直交方向に分極した共振モードを効果的に利用することにより、構成部材である平面回路共振器の個数の2倍の段数のフィルタを実現することができるので、フィルタ形状の小型化を図ることができる。また、本構成によれば、従来、直交モードを利用した平面回路共振器フィルタでは明確な構成方法がなかった3段以上の多段フィルタを簡易な方法によって実現することができる。
【0040】
尚、上記第1及び第2の実施の形態においては、平面回路共振器を3個あるいは2個並べた場合を例に挙げて説明したが、本発明は必ずしもこの構成に限定されるものではなく、平面回路共振器を4個以上並べた場合であっても同様に共振器結合型多段フィルタを実現することができる。この場合にも、構成部材である平面回路共振器の個数の2倍の段数のフィルタを実現することができるので、より多くの平面回路共振器を並べた場合、より段数を増やすことができ、非常に有効である。
【0041】
また、上記第1及び第2の実施の形態においては、平面回路共振器が、基板上に形成された円板形状あるいは楕円形状のストリップ導体によって構成されている場合を例に挙げて説明したが、本発明は必ずしもこの構成に限定されるものではなく、他の形状のストリップ導体であっても平面回路共振器を構成する形状であれば同様にフィルタ特性を実現することができる。但し、この場合の平面回路共振器とは、2次元的に電磁界が分布し、それによって狭い周波数範囲内に2つの直交方向に分極した共振モードが存在し得る構造の共振器を意味している。特に、上記第1及び第2の実施の形態のように円板形状あるいは楕円形状のストリップ導体を用いれば、ストリップ導体パターンの輪郭部における電流集中を効果的に減少させて、損失をより一層低減することが可能となる。
【0042】
また、上記第1及び第2の実施の形態においては、平面回路共振器が、基板の表面上に形成されたストリップ導体と、基板の裏面上に形成されたグランドプレーンとにより構成される場合を例に挙げて説明したが、本発明は必ずしもこの構造の平面回路共振器に限定されるものではない。例えば、図10に示すような、ストリップ導体23が2枚の基板21、22に挟まれ、それぞれの基板21、22の外側の面上にそれぞれグランドプレーン24、25が形成された構成のトリプレート型構造や、ストリップ導体とグランドプレーンとが基板の同一表面上に形成された構成のコプレナー導波路型構造であっても、平面回路共振器を構成する形状であれば同様にフィルタ特性を実現することができる。
【0043】
このうちトリプレート型構造を採用すれば、電磁界の放射の影響がほとんどなく、非常に安定で損失の少ない高周波フィルタを実現することができる。また、コプレナー導波路型構造を採用すれば、基板の片面での加工だけで素子を形成することができるので、作製プロセスの簡略化を図ることができる。
【0044】
また、本発明の高周波フィルタにおける平面回路共振器のストリップ導体等に用いられる導体材料は特に限定されるものではなく、金属材料や超伝導材料等を用いることができる。金属材料としては、Au、Ag、Pt、Pd、Cu及びAl等を挙げることができ、これらの材料から選ばれる少なくとも2つの金属を積層して用いれば、良好な電気伝導性が得られ、高周波への応用に有利である。また、超伝導材料としては、金属系材料(例えば、Pb、PbIn、等のPb系材料、Nb、NbN、Nb3Ge等のNb系材料)でもよいが、実用的には、温度条件の比較的緩やかな高温酸化物超伝導体(例えば、Ba2YCu3O7)を用いるのが望ましい。特に、導体材料として超伝導材料を用いれば、挿入損失が劇的に低減され、また、平面回路共振器中で電流分布が均一であることから、耐電力性能の優れた高周波フィルタを実現することができる。
【0045】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る高周波フィルタによれば、平面回路共振器を基本として構成されていることにより、高周波電流の導体膜中への集中を緩和することができるので、損失が小さく、かつ、大きな電力の高周波信号を扱うことが可能となる。特に、従来、平面回路共振器を用いたモード結合型フィルタでは設計が困難であった3段以上の多段共振器結合型フィルタを容易に実現することができるので、低損失で、耐電力性が優れ、かつ、急峻なスカート特性を有するフィルタを容易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施の形態における高周波フィルタを示す平面図
【図2】 本発明の第1の実施の形態における高周波フィルタを示す断面図
【図3】 本発明の第1の実施の形態における高周波フィルタの第3のストリップ導体の形状の例を示す平面図
【図4】 本発明の第2の実施の形態における高周波フィルタを示す平面図
【図5】 本発明の第2の実施の形態における高周波フィルタを導体壁によって囲まれた空洞内に固定した状態を示す断面図
【図6】 本発明の第2の実施の形態における高周波フィルタのモード結合係数と間隙部の距離との関係を示す図
【図7】 本発明の第2の実施の形態における高周波フィルタのストリップ導体の楕円率とモード結合係数との関係を示す図
【図8】 本発明の第2の実施の形態における高周波フィルタの周波数特性を表す図
【図9】 本発明の第2の実施の形態における高周波フィルタの他の周波数特性を表す図
【図10】 本発明に係る高周波フィルタの他の例を示す断面図
【符号の説明】
1、12、21、22 基板
2a、13a 第1のストリップ導体
2b、13b 第2のストリップ導体
2c 第3のストリップ導体
3、14、24、25 グランドプレーン
4a、15a 第1の平面回路共振器
4b、15b 第2の平面回路共振器
4c 第3の平面回路共振器
5a、5b、16 間隙部
6a、17a 第1の結合端子
6b、17b 第2の結合端子
7a、7b、8a、8b、9a、9b、18a、18b、19a、19b 共振モード
10 突起部
11 切り欠き部
20 導体壁
23 ストリップ導体
Claims (4)
- それぞれ2つの直交した共振モードを有し、順番に結合したn個(nは2以上の整数)の平面回路共振器と、金属からなる直線状の2つの結合端子とを備えた高周波フィルタであって、
前記2つの結合端子が第1番目の前記平面回路共振器が有する2つの共振モードとそれぞれ容量結合しており、
第n番目の平面回路共振器が有する2つの共振モード間に結合を生じさせる手段が備わっており、
前記高周波フィルタは、誘電体からなる基板と、前記基板の表面上に形成された金属からなるn個のストリップ導体と、前記基板の裏面上に形成された導体膜からなるグランドプレーンとからなり、
前記各平面回路共振器は、前記基板の表面に形成された各前記ストリップ導体と、前記基板の裏面に形成された前記グランドプレーンとから構成され、
n個の前記ストリップ導体が距離dの間隙部を介して直線状に配置され、
n個の前記ストリップ導体のうちの一端部に位置する第1番目のストリップ導体の輪郭上において、前記第1番目のストリップ導体の中心から見て、前記第1番目のストリップ導体に隣接する第2番目のストリップ導体と反対側の位置に第1の結合端子が結合され、前記第1の結合端子の結合位置とほぼ90゜ずれた位置に第2の結合端子が結合され、
第n番目の平面回路共振器が有する2つの共振モード間に結合を生じさせる手段は、
(a) 前記2つの共振モードのうち一方の共振モードと他方の共振モードとの分極方向に対して45°の方向に長軸を有する楕円形状を有する第n番目のストリップ導体
(b) 前記2つの共振モードのうち一方の共振モードと他方の共振モードとの分極方向に対して45°の方向に突起部を有する第n番目のストリップ導体、または
(c) 前記2つの共振モードのうち一方の共振モードと他方の共振モードとの分極方向に対して45°の方向に切り掻き部を有する第n番目のストリップ導体
のいずれかであり、
前記距離dの間隙部を挟んで隣接する2つの前記平面回路共振器が有する共振モードのうち、前記直線状の第1の結合端子に平行な共振モードの結合係数k h と、前記直線状の第2の結合端子に平行な共振モードの結合係数k p とが一致するように、距離dが設定されている、高周波フィルタ。 - 前記第1番目のストリップ導体の形状が円板形状あるいは楕円形状である、請求項1に記載の高周波フィルタ。
- 周囲が導体壁によって包囲されている、請求項1〜2のいずれかに記載の高周波フィルタ。
- 前記平面回路共振器の導体材料として超伝導材料を用いられている、請求項1〜3のいずれかに記載の高周波フィルタ。
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