JP4125515B2 - スピーカー - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気音響機器の分野に関し、また家庭や公共用と業務用の音声再生システムにおいて、具体的には、音響制御チャンネル、駅構内放送システム、輸送手段キャビン、および改良された明瞭度が特に雑音による公害と干渉の状態でも要求される場所において、音楽と音声の高品質の再生をするスピーカー構成体に使用できるものに関する。
【0002】
【従来の技術】
ドライバーエンクロージャキャビネットの外面に設置される直接放射式動電形(ダイナミック)ドライバ(EDD)を有するスピーカーは、周知のものであり、また広く使用されている。(V.K.Iofeなどの著作、音響のハンドブック、モスコー、「Svyaz」、1979年版参照)。
【0003】
上述の装置の欠点、すなわち音声再生の不十分な詳細と明瞭度、音量とEDDへの距離Rとの間の急激な関係(逆二乗法則1/R2による)は、必要な有効(スカラー)成分に対して、その放射の無効(ベクトル)成分がかなり優勢であることに関連する。
【0004】
これらの欠点は、音響振動数範囲の少なくとも中間振動数部分において電気信号を音響信号へ変換する一対の、同一で共軸の位相の揃った対向放射動電形(ダイナミック)ドライバを有するモジュールから構成される対向開口スピーカーにおいて首尾よく克服される。(国際出願WO95/05057,IPC6H04R5/02,1995を参照)。
【0005】
上述の対向開口スピーカーにおいて、同一の動電形(ダイナミック)ドライバ対の対向放射の有効成分は共に付加され、一方、ベクトル成分は相互に控除され、それにより補償される。
【0006】
そのようなデバイスの欠点は、対における同一の特性を有する対の数の動電形(ダイナミック)ドライバと、および開口間の空間量による拡大したスピーカー寸法とにより余儀なくされる。
【0007】
本発明の主な目的は、一方において、高品質音声再生を保証し、また他方では、一層コンパクトであり、かつ製造と調整が一層簡単であるので、比較的低い製造コストを有するものを犠牲にして、対の同一帯域の動電形(ダイナミック)ドライバを必要としないようなスピーカー構成体を提供することにある。
【0008】
本発明の基礎は、対向開口スピーカーの作動原理、および放射開口の共通軸に直交する一定の対向開口スピーカーの対称平面が左右鏡面対称の平面であるという物理数学的な着想である。ここで対称とは、構造的な対称ばかりではなく、スピーカーの作動において生じる物理的プロセスの力学の対称も意味する。したがって、対向開口対の動電形(ダイナミック)ドライバにより放射されるベクトルまたは速度流の相互作用の部位を重ねる反射部が上述の平面内に置かれるならば、物理的現象またはスピーカー作動中の現象の発展の程度が変わることがある。かくして、上述の平面に位置する反射部を有する対向開口スピーカーを、一対の共軸で、対向配設される独立半対向開口スピーカーとして正式に表すことができ、そのスピーカーのそれぞれは、独立モジュールであり、またその全ての放射態様は、対向開口スピーカーの独自の正特性の全ての集合体を有し、またそのスピーカーのそれぞれは、対向開口スピーカーに比べて一層コンパクトであり、かつ材料集約性が少ない。
【0009】
本発明の主な目的は、音響振動数範囲の少なくとも中間振動数部分において電気信号を音響信号へ変換する直接放射ベース動電形(ダイナミック)ドライバ(EDD)と、およびキャビネットの外面内の取付け孔に重なるコーンを有する上述のベースEDDのエンクロージャキャビネットとを有するモジュールから構成されるスピーカーにおいて、本発明によれば、そのモジュールには、上述のベースEDDの放射開口に面し、かつ上述のエンクロージャキャビネットの外側に置かれ、かつ上述のベースEDDと共軸の軸方向に対称の音響反射部が設けられることにより達成され、そこにおいて、ベースEDDの放射開口から音響反射部までの距離Δは、ベースEDDの放射表面の有効部位の半径REの半分以上であるが、ベースEDDにより再生される空気中の最大音響波長λmaxの四分の一未満であり、一方、音響反射部の部位SRは、ベースEDDの放射表面の有効部位SEの三分の一以上で、その四倍未満であり、すなわち下記のようになる。
【0010】
【数1】
Figure 0004125515
【0012】
快適な音伝播ゾーン、具体的には快適な音伝播平面(聞き手のヘッドの存在が仮定される平面)における音響分野の最上の均一性を得るために、本発明に係るスピーカーは、ベースEDD軸が快適な音伝播平面へ直角であり、一方、この平面が、ベースEDDとその音響反射部との間にで上述の軸と交差するように室内に配設される。音伝播を受ける部屋が水平床(例えば、ダンスホールまたはファッション実演ホール)を有するならば、ベースEDDの軸は垂直に位置し、一方、置かれるスピーカーの高さは聞き手のヘッドの位置に対応する。部屋の床が傾斜しているならば、スピーカーモジュールのベースEDDの軸は、床の部屋範囲の平面へ直交して位置する。音伝播を受ける部屋が天井を有するならば、ベースEDDは実質的に上方に面し、一方、音響反射部はベースEDD上に置かれる。音伝播が未密閉空間で実施されている場合、ベースEDDは下方へ(床へ)面し、一方、音響反射部はベースEDDの下に置かれる。
【0013】
さらに、本発明によれば、スピーカーモジュールには、ベースEDDと共軸で設置できる少なくとも1つの高振動数EDD(以下HFEDDと呼ぶ)を設けることができる。共軸のHFEDDとベースEDDは、一方向および対向方向に設置できる。HFEDDとベースEDDが対向方向に設置される場合、放射開口間の距離ΔHは、HFEDD放射表面の有効部位の半径REH以上であるが、ベースEDDの放射表面から音響反射部までの距離Δ未満であり、すなわち下記のようになる。
【0014】
【数3】
Figure 0004125515
HFEDDの1つは、音響反射部の裏側の背後でベースEDDと共軸でかつ一方向に設置できる。
【0016】
HFEDDを上述のように設置する(ベースEDDと共軸で)ことは、スピーカー放射の最高の均一性(非指向性)を得るのに役立つ。
【0017】
放射指向性を得るのが必要な場合、本発明に従うHFEDDの少なくとも1つの軸は、ベースEDDの軸に直角である。
【0018】
さらに、本発明に係るスピーカーのモジュールには、低振動数EDD(以下でLFEDDと呼ぶ)を設けることができ、そのコーンは、LFEDDのエンクロージャキャビネットの外面内の取付け孔に重なり、またそのモジュールには、LFEDDの放射開口に面し、かつLFEDDのエンクロージャキャビネットの外側に置かれ、かつベースEDDとLFEDDと共軸の軸方向に対称の低振動数音響反射部(以下でLF音響反射部と呼ぶ)を設けることができる。かくしてLFEDDは、ベースEDDと共軸で置かれる。そこにおいて、LFEDDの放射開口からLF音響反射部までの距離ΔLは、ベースEDDの放射表面の有効部位の半径RELの半分以上であるが、LFEDDにより再生される空気中の最大音響波長λLmaxの四分の一未満であり、一方、LF音響反射部の部位SRLは、ベースEDDの放射表面の有効部位SELの三分の一以上で、その四倍未満であり、すなわち下記のようになる。
【0019】
【数4】
Figure 0004125515
【0021】
ここにおいて、任意のEDDの放射表面の有効部位は、丸い平坦ピストンの部位として解するべきであり、その端面は、EDD音量振動速度に等しい音量振動速度を有し、ついでEDD音量振動速度がEDDコーンの要素部分の振動速度の部位分に等しい。
【0022】
【数6】
Figure 0004125515
【0023】
ここにベクトルVは、EDDコーンの要素部分の音量振動速度であり、dSEは、コーンの要素部分の部位である。
【0024】
加えて、一方または他方の音響反射部の部位は、一定の音響反射部に対応するEDDの放射開口に面する表面である作動表面の部位として解され、またそのような表面だけが、本明細書における「音響反射部表面」として解されることが明らかである。
【0025】
距離ΔとΔLの限界は、コーン内を半径方向に延びる曲げ励振波についての進行波機構の作用の限界以内でスピーカー作動のモードを提供するように選択される。
【0026】
それぞれのEDDコーンは、2つの仕方で同時に作用する。すなわち音声コイルから全ての周辺コーン分へ軸方向励振の半径方向伝達ラインとして機能し、さらに励振されたコーン分が、動かされて隣接する空気分子に作用し、それらの分子を動かす。上述の軸方向信号の半径方向伝達ラインとしてコーンの有効な作動を確実にするために、このラインの調和が、他の伝達ラインと丁度同様に要求され、すなわち不可避の不連続性からの反射(この場合は曲げ波の反射)を減少、除外または補償すべきである。距離ΔとΔLは、対応する対「円錐音響反射部」において、コーンの中央近くのコイル(先細コーンの場合)部分により励振される反射される動的圧力が、この時点でコーンにわたり伝播される半径方向曲げ波に対して逆相で周辺コーン分へ到達するように、かつコーン縁部においてこの波を抑制し、それによりコーン内の定在波を除外し、かつ多数の変換器が特定の一時的な励振に応答するように選択される。
【0027】
スピーカーコーンが、空気よりも剛性の媒体であるが完全に剛性ではないので、距離ΔとΔL は、対応するコーンの半径の半分以上であるが(これは単一の全体として動く完全剛性コーンの場合に、反射される信号の位相対向の条件である)、曲げ励振波伝播の速度が空気中の音響速度に等しい大部分の非剛性コーンの場合の対応する波長λ max とλLmax の四分の一未満であるべきである。
【0028】
本発明によれば、一方または他方の音響反射部の部位は、反射の場合に励振された空気の共振動の生音に忠実な部分の有効使用を決定する限度以内で選択され、その限度により、一方では、逆相ベクトル励振積のほぼ均等性が保証され、また他方では、一定のEDD音響反射部に対応するコーン内の不連続部から反射される曲げ振動を上述のように制約することが保証される。したがって少なくとも部位SRまたはSRLは、対応してSEとSELから1/3に達し(大きい粘性損失を有するコーンの場合のように)、また大部分の部位は、対応して部位SEとSELを四倍以上超えてはならない。というのは、音響反射部の部位がより大きいならば、半径方向円形伝達ラインがコーンの有効半径の外側に現れるからである。そのようなラインは、全ての対応する好ましくない結果と共にファブリーペロ共振器として作用する。かくしてパラメータΔ、ΔL、SRL、SRNの特定の値は、コーンの材料、その形状、厚さ、密度、剛性、粘性に左右されるので、特定のEDDについて決定される。
【0029】
本発明によれば、LF音響反射部は、ベースEDDのエンクロージャキャビネットの裏側に固定できる。特に上述の裏側の表面は、LF音響反射部として使用できる。
【0030】
一方または他方の音響反射部の表面は、凸状、凹状または段差状を含む平坦または湾曲した形状を有することができる。
【0031】
空気中、および本発明に係るスピーカーにおけるコーン上の音響波伝播の不変性を提供するために、一方または他方の音響反射部の表面部分の曲率が、一定の音響反射部に対応するコーンの表面部分の曲率と類似するようにしてもよい。
【0032】
距離ΔとΔLを決定する目的のために、対応するEDDの放射開口が、EDDコーン周辺部分にこのEDDのエンクロージャキャビネットを固定する平面に置かれるとみなされる。ここに、任意の音響反射部の表面が非平面であるならば、上述の距離ΔとΔLは、音響反射部の相当な平面に基づいて測定される。そのために、任意のEDDの放射開口からこのEDDに対応する音響反射部までの距離は、実質的に、EDDのエンクロージャキャビネットを固定するEDDコーン周辺部分の平面から音響反射部の相当平面までの距離である。音響反射部の用語「相当平面」を、図4と5の図面を使用して以下に開示する。
【0033】
必要に応じて、一方または両方の音響反射部の部位の少なくとも一部分を、振動のQ係数を減少するために穿孔できる。
【0034】
一方または両方の音響反射部は、ベースEDDの軸に関して半径方向におかれる1つ以上のリブにより対応するEDDのエンクロージャキャビネットへ装着できる。
【0035】
音響反射部が2つ以上の上述のリブにより対応するEDDのエンクロージャキャビネットへ装着されるならば、これらのリブは、垂直平面における音声指向性図をさらに強めるか、または是正するように、半径方向音響レンズのホーンセルを上述のリブと共に形成する平坦または円錐状リングにより互いに固定できる。ここで、これらのリングの内径は、音響反射部の周辺縁部とDDのコーンとを通過する直線状母線を有する想像先細物の断面にリングが部分的でも重ならないように選択される。この条件は、EDDから対応する音響反射部まで音声流れ波を妨害しないで通過させるために必要である。
【0036】
上述のリブと固定リングは、ベースEDDの軸に関して対称的に主として置かれる。しかしながら、ベースEDD軸から全ての半径方向に、すなわち放射の半径方向均一に(非指向性で)均一音声伝播が要求されないならば、上述のリブとリングの上述した載置は、強制的なものではない。
【0037】
ベースEDDおよび/またはLFEDDのコーンが、ダストキャップ無しのコーンである場合、対応する音響反射部は、中央ロッドにより、対応するEDDの磁気システムコアへ装着できる。
【0038】
音伝播部位および/または音声再生の動的範囲(音声増幅)を増加するために、本発明に係るスピーカーは、対で載置され、かつ付属の請求項に記載される上述の実施例の1つに従って作られる偶数のモジュールから構成できる。それぞれのモジュール対におけるベース動電形(ダイナミック)ドライバが共軸で載置される。ここで、モジュール対には、同一および異なるモジュールの両方を備えることができ、そのモジュールのベース動電形(ダイナミック)ドライバは、一方向および対向方向に置くことができる。
【0039】
モジュール対におけるベース動電形(ダイナミック)ドライバが互いに対向するならば、音響反射部間の距離は、音響反射部と対の上述のベース動電形(ダイナミック)ドライバの1つのエンクロージャキャビネットが、音響反射部の周辺縁部と他のEDDの対応するコーンとを通過する直線状母線を有する想像的先細物の断面の外側に延びないように選択される。音響反射部間の距離の選択の上述の条件は、音響反射部から、および対の1つのEDDのエンクロージャキャビネットからこの対の他のEDDのコーンへ反射される放射の侵入を避けるために合致しなければならない。
【0040】
モジュール対が同一のモジュールから構成される場合、そのベース動電形(ダイナミック)ドライバは互いに面し、音響反射部間の距離をゼロにできるので、両側に作動面を有する1つの共通の音響反射部は、対のベース動電形(ダイナミック)ドライバの両方に使用できる。
【0041】
垂直平面において非対称の指向性放射が必要とされる場合(スポーツグランド、水泳プール、大形ホールおよび駅構内を音伝播する場合)、モジュール対でのベース動電形(ダイナミック)ドライバは一方向に置かれ、そこにおいて対のベース動電形(ダイナミック)ドライバの放射方向の前方に位置する第1のベースEDDの音響反射部と、対の第2のベースEDDのエンクロージャキャビネットとの間の距離は、音響反射部と第2のベースEDDのエンクロージャキャビネットが、音響反射部の周辺縁部と第1のベースEDDのコーンとを通過する直線状母線を有する想像的先細物の断面の外側に延びないように選択される。
【0042】
音響反射部または一定のEDDのエンクロージャキャビネットから他のEDDへの反射の不足の上述の条件は、本発明に係るスピーカーの多モジュール実施例において合致しなければならない。同時に、スピーカーの全体寸法の不当な増加を避けるために、スピーカーモジュールの1つの音響反射部と、反射部として作動できる他のモジュールの構造部材との間の距離は、上述の音響反射部が、コーンと相互作用する断面に依然重なり、したがって反射に影響する他の構造部材を妨害する場合、できるだけ少なく選択される。
【0043】
さらに本発明は、下記の図面を参照して本発明に係るスピーカーの幾つかの特定の実施例により説明される。
【0044】
【発明の実施の形態】
最も単純な実施例の1つにおいて、本発明に係るスピーカー1のモジュール(図1)は、電気信号を音響振動数範囲の少なくとも中間振動数部分における音響信号に変換する直接放射ベースEDD2(これはホーンEDDと区別すべきである)と、EDD2のエンクロージャキャビネット3と、およびEDD2の直接放射の音響反射部4を有する。ベースEDD2は、そのコーン5がキャビネット3の外面内の取付け孔に重なるようにキャビネット3内に置かれる。音響反射部4は、EDD2の放射開口へ(コーン5へ)面し、EDD2の軸6に関して対称の形状(軸方向に対称の形状)を有し、またEDD2の放射開口から距離ΔにおいてEDD2と共軸でキャビネット3の外側の所定位置に固定される。上述の距離は、(1)の関係により明示される範囲内にあり、一方、音響反射部4の部位SRは、(2)の関係により明示される限度内で選択される。キャビネット3は、密閉型ボックスまたは位相反転型ボックスとして、また音響抵抗パネルを有するボックスまたは伝達ラインなどを有するボックスとして製造できる。音響反射部4は、軸6に関して半径方向に置かれる幾つかのリブ7により、または1つのそのようなリブにより(図6)キャビネット3へ装着される。リブ7は、任意の既知の適切な方法により(溶接、ハンダ付け、リベット締めなどにより)音響反射部4とキャビネット3へ接続される。
【0045】
図2は、段付き床8を有する部屋における本発明に係るスピーカーモジュールの載置を図示する。スピーカー1のベースEDD2の軸6(この軸は、音響反射部4の軸でもあるので、全体としてスピーカー2のモジュールの軸をほぼ表す)は、快適な音伝播の平面10に対してこの軸を直角に置くために、床8の範囲の平面9の傾斜である角度αだけ垂直から偏らされ、そこにおいて平面10は、好ましくはEDD2と音響反射部4との間でスピーカー1を横断する。
【0046】
図3は、ベースEDD2に加えて、対応するエンクロージャキャビネット12を有する直接放射LFEDD11が設けられる本発明に係るスピーカーモジュールを示す。LFEDD11のコーン13は、キャビネット12の外面内の対応する取付け孔に重なる。LFEDD11は、ベースEDD2と共軸で置かれる。LFEDD11から送られる低振動数放射の軸方向に対称の音響反射部(以下でLF音響反射部と呼ぶ)14は、キャビネット12の外側の所定位置に固定される。LFEDD11の放射開口から音響反射部14までの距離ΔLは、距離Δの選択との類似により上述の関係(4)から選択され、一方、LF音響反射部14の部位SRLは、ベースEDD2の音響反射部4のSRの選択と同様に関係(5)により選択される。LF音響反射部14は、ベースEDD2のエンクロージャキャビネット3の裏側において固定できるか、またはキャビネット3の裏側の表面は、LF音響反射部14としてそれ自体が機能できることが図3から分る。
【0047】
ベースEDDまたはLFEDDの放射開口から、音響反射部表面の形状が非平面(先細または段付き形状のような)である対応するまでの距離(ΔとΔL)を決定する目的のために、音響反射部の用語「相当平面」を使用すべきである。一般的な場合(図4参照)、音響反射部4または14の相当平面15は、軸6へ直角な想像的平面であり、一方、音響反射部4または14の構成部分16の軸6へ直角の平面までの投影と、およびこの構成部分16から音響反射部部位にわたる相当平面15まで軸6に沿って測定される距離との積の積分がゼロに等しい、すなわち以下の通りである。
【0048】
【数7】
Figure 0004125515
【0049】
ここにAiは、音響反射部のi番目の構成部分からこの音響反射部の相当平面までの軸6に沿って測定された距離である(プラスとマイナスの符号を考慮して)。
φiは,ベースEDDの軸へ直角である平面に対する上述のi番目の構成部分の傾斜角度である。
dFiは、上述のi番目の構成部分の部位である。
【0050】
音響反射部の表面が段付きであり、一方、段付き平面が軸6に対して直角であるならば(図5参照)、この特別の場合、積分関係(7)は、音響反射部のn番目の段付き部分の部位Fnと、および上述のn番目の段付き部分から相当平面15までの軸6に沿って測定された距離An(プラスとマイナスの符号を考慮して)との積の合計に再配列することにより単純化される。すなわち
【0051】
【数8】
Figure 0004125515
【0052】
ここにmは、上述の段付き部分の数である。
nは、1からmまでの整数である。
【0053】
図5に示される音響反射部4または14の表面は、3つの段付き部分を有する。すなわち部位F1を有する第1の丸い部分および部位F2とF3を有する2つの丸い部分であり、そこにおいて相当平面15の位置は下記の条件に合致する。
【0054】
【数9】
Figure 0004125515
【0055】
ベースEDD2の軸6に沿って見ると、音響反射部4または14の表面は、異なる軸方向に対称の形態、特に円形形態、楕円のような丸められた形態、または多角形、星形および多花びら形態を有することができる。
【0056】
音響反射部4または14をキャビネット3または12へ装着するのに使用されるリブ7の断面は、対応して、方形形態、および先細、涙状または菱形形態も有することができる。リブ断面厚さが放射方向に沿って一定でないならば、この断面のより狭い部分がベースEDD軸の方向に向けられ、これは、ベースEDD軸からの半径方向の音声伝播に対応し、またこの場合、ベースEDD軸へ面したリブ表面からの音響波の有害な反射の欠如を保証する。
【0057】
音響反射部4(または14)が、軸6の周りに置かれる幾つかのリブ7で、キャビネット3(または対応して12)へ装着される場合、これらのリブが、平坦または円錐状リング17(図7参照)の手段により互いに固定され、それらのリングは、リブ7と共に、半径方向音響レンズのセルを形成する。リング17は、自体の軸が軸6と整合する想像的先細物の断面に部分的にも重なってはならないし、またその直線状母線は、音響反射部4(または14)の周辺縁部とコーン5(または対応して13)を通過するので、リング17の内径は、この条件から選択される。
【0058】
図7において、本発明に従って、ベースEDD2に加えて、第1のHFEDD19、第2のHFEDD20、および別のHFEDD21を有するスピーカーの実施例が示される。第1と第2のHFEDD19、20は、ベースEDD2と共軸で置かれ、また第1のHFEDD19は、ベースEDD2と音響反射部4との間に設置され、かつベースEDD2へ向けて面し、一方、第2のHFEDD20は、ベースEDD2と一方向に音響反射部4の裏側の背後に設置される。別のHFEDD21は、ベースEDD2と第2のHFEDD20の放射開口の位置平面間にベースEDD2の軸6の周りに置かれる。別のHFEDD21の軸は、軸6に対して直角である。HFEDD19乃至21は、直接放射型およびホーン型の両方にできる。同一のスピーカーにおいて異なる形式の同一でないHFEDDの組合せは可能である。
【0059】
図8において、本発明に係るスピーカーの実施例が示され、そこにおいて、ベースEDD2(または対応してLFEDD11)のコーン5(または13)は,ダストキャップ無しのコーンである.この場合、音響反射部4(または14)は、円筒形または円錐形中央ロッド24により、ベースEDD2(または対応してLFEDD11)の磁気システム23のコア22へ装着される。デバイスの材料集約性を減少するために、ロッド24を中空にでき、また十分な剛性を確保するために、それをリブ付きにできる。
【0060】
図9において、本発明に従って、2つの非同一のモジュール、すなわち下部モジュール5と上部モジュール26から構成されるスピーカーが示され、そのベースEDD2は、対向方向にかつ共軸で置かれる。これらのモジュールの音響反射部4間の距離L1は、下部モジュール25の音響反射部とベースEDDのエンクロージャキャビネットが、音響反射部の周辺縁部と上部モジュール26のベースEDDのコーンを通過する直線状母線27を有する想像的先細物の断面の外側に延びないように、また逆に、上部モジュール26の音響反射部とベースEDDのエンクロージャキャビネットが、音響反射部の周辺縁部と下部モジュール25のベースEDDのコーンを通過する直線状母線28を有する想像的先細物の断面の外側に延びないように、選択される。
【0061】
図10は、本発明に係るスピーカーのモジュール式構成の実施例を図示し、そこにおいて、モジュール25,26のベースEDD2が一方向にかつ共軸で置かれ、一方、モジュール25は、ベースEDD2の放射方向の前方に位置し、またモジュール26は、背後に位置する。この場合、第1のモジュール25のベースEDD音響反射部から第2のモジュール26のベースEDDエンクロージャキャビネットまでの距離L2は、第2のモジュール26の音響反射部とベースEDDのエンクロージャキャビネットが、音響反射部の周辺縁部と第1のモジュール25のベースEDDのコーンを通過する直線状母線28を有する想像的先細物の断面の外側に延びないように、選択される。
【0062】
(産業上の利用可能性)
本発明に係るスピーカーの作動原理は、下記の通りである。増幅器出力部で発生する信号電圧により、EDDの音声コイルに電流が生じる。この電流の磁場が、EDD磁気システムの一定の半径方向分野と相互作用するので、EDDコーンを作動させる軸方向力が形成される。この作動は、コーンにわたり伝播するリング曲げ波により生じる。同時にコーン部分の加速により、必要な音圧を直接形成する圧縮と引張の部分的空気変形(スカラー積)が生じ、一方、コーン振動速度により、コーン近くの非変形空気層の軸方向振動(ベクトル積)が生じる。EDDは、空気中での音響波の長さがコーン径よりも大きい振動数についてだけの信号を有効に変換する。この振動数範囲において、無効(ベクトル)放射抵抗成分は、有効(スカラー)成分を数倍超える。したがって、放射のバイアスは、それ自体に無い限り、無効成分であり、そのために、放射の空間角度における運動量保存の法則(mVベクトル)が当てはまるが、エネルギー保存の法則(mV2/2)は当てはまらず、その結果、音量振動速度により主に生じる音圧は、法則1/R2(ここにRは放射部から受信部までの距離である)に基づいて減少する。そのようなシステムに加えて、それが絶対的に直線状である場合でも、パラメトリック歪みが、放射部−聞き手の方向に沿う放射表面移動の結果として、ドップラー振動数相互変調の形態で現れる。
【0063】
スピーカー構成におけるベースEDDおよびLFEDDの共軸音響反射部の存在により、対向する、大きさが殆ど等しい速度圧が得られるので、速度放射成分および関連するパラメトリック歪みが補償される。さらに上述の対向する速度圧は、直接および反射された速度を、空気分子の局部的な濃度変化へ、すなわち有効放射成分へ変換するので、媒体放射抵抗の有効と無効成分間の関係を、有効成分に有利に励振器へ変化する。
【0064】
音響反射部の部位と形状、および音響反射部と、その特定のエンクロージャキャビネット用の特定のEDDとの間の距離は、コーン内を半径方向に伝播するリング曲げ波についての進行波モードが保証される条件で選択される。というのは、コーンは、空気に影響するばかりではなく、音声コイルから空気に影響するそれ自体の表面部分の全てへの励振伝達ラインとしても機能するからである。この放射伝達ラインにおいて不連続性があれば、曲げ波の反射が生じる。反射された波が直接波と干渉するので、空気媒体を励振する定在波を生じる。それにより、変換されている信号の一時的な一貫性の中断が生じ、かつ振動数の区別、すなわち振幅−振動数応答の非直線性を生じる。音響反射部の使用は、あたかも視覚耐反射被覆が作用するように、コーンの主な不連続性に、すなわちその周辺カラーとコーンホルダーとの連結に付加的に影響する。2つの大きさが等しい反射された信号は、逆相で互いに重なると、互いに消滅する。同一の手法により、コーン表面部分の大気との分布された時間と空間の干渉の自己協調が同時に解決される。
【0065】
上で検討したパラメータΔ、ΔL、SRおよびSRLが適正に選択される、請求されたスピーカーにおける音響反射部により、音声再生の効率と品質の主な事項が統合的に解決される。
【0066】
本発明の使用により、複雑性とコストが低いスピーカー構造の変更による音声再生品質が向上する。音声再生の達成不能の鮮明度と明瞭度(明白度)が確保される前に、情報内容が強化されるばかりでなく、自然性、効果的な性能雰囲気、熟達した演奏の最も細かい詳細の再生、および指揮者の個性も強化される場合、価値と自負のレベルの消費者は、ハイエンド品質の音声を再生する可能性を有する。同時に材料、労力およびエネルギー入力から生じる生産コストは、事実上一定のままであり、ハイファイ範疇の通常の品質再生の場合に典型的である。
【0067】
本発明の範囲は、上述の実施例に限定されない。スピーカーの他の特定の実施例は、添付請求項の範囲内で実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、1つだけのベースEDDを有する本発明に係るスピーカーモジュールの図である。
【図2】 図2は、傾斜した(段付きの)床を有する部屋を音伝播するとき、本発明に係るスピーカーモジュールの位置の線図である。
【図3】 図3は、LFEDDが設けられるスピーカーモジュールの実施例の図である。
【図4】 図4は、表面が非平面である一般的な場合に音響反射部の用語「相当平面」を説明する線図である。
【図5】 図5は、音響反射部の表面が段付きである特殊な場合の同一の線図である。
【図6】 図6は、1つのリブによる音響反射部装着の実施例の図である。
【図7】 図7は、幾つかのリブがリングにより互いに固定され、またスピーカーには、第1、第2および別の高振動数動電形(ダイナミック)ドライバが設けられる実施例の図である。
【図8】 図8は、中央ロッドによる音響反射部装着の実施例の図である。
【図9】 図9は、本発明に係るスピーカーが2つの共軸のモジュールから構成され、かつそのベースEDDが対向して置かれる実施例の図である。
【図10】 図10は、本発明に係るスピーカーが2つの共軸のモジュールから構成され、かつそのベースEDDが同一方向を向いて置かれる実施例の図である。

Claims (17)

  1. 音響周波数領域のうち少なくとも中間周波数を含む周波数領域の音響信号を電気信号から変換する直接放射型のベース動電形ドライバと、外部表面の取付け穴に重なるようにしてコーンが設けられた前記ベース動電形ドライバ用のエンクロージャキャビネットと、を有するモジュールを備えたスピーカーであって、
    前記モジュールはベース音響反射部を有し、このベース音響反射部は、前記ベース動電形ドライバの放射開口面に面するとともに、前記エンクロージャキャビネットの外部に位置し、かつ、前記ベース動電形ドライバと同軸となるように位置しており、
    前記ベース動電形ドライバの放射開口面から前記ベース音響反射部までの距離は、前記ベース動電形ドライバの放射面における有効半径の半分以上、かつ、前記ベース動電形ドライバで再生される空気中での最大音響波長の4分の1未満であり、
    前記ベース音響反射部の面積は、前記ベース動電形ドライバの放射面における有効面積の3分の1以上、かつ、4倍以下であることを特徴とするスピーカー。
  2. 前記モジュールは、音響周波数領域のうち高周波数領域の音響信号を電気信号から変換する高振動数動電形ドライバを少なくとも1つ有することを特徴とする、請求項1に記載のスピーカー。
  3. 前記高振動数動電形ドライバの少なくとも1つは、前記ベース動電形ドライバと軸を共通するように配設されていることを特徴とする、請求項2に記載のスピーカー。
  4. 互いの軸が共通する前記ベース動電形ドライバと前記高振動数動電形ドライバとは、対向するように配設されており、それらの放射開口面間の距離は、前記高振動数動電形ドライバの放射表面の有効半径以上、かつ、前記ベース動電形ドライバの放射表面から前記ベース音響反射部までの距離未満であることを特徴とする、請求項3に記載のスピーカー。
  5. 前記高振動数動電形ドライバの少なくとも1つは、前記ベース動電形ドライバと軸を共通にし、かつ、前記ベース動電形ドライバに対向する前記ベース音響反射部の裏側の背後に配設されていることを特徴とする、請求項2〜4のうちいずれか一の項に記載のスピーカー。
  6. 前記高振動数動電形ドライバの少なくとも1つは、その軸が前記ベース動電形ドライバの軸に対して直角になるように配設されていることを特徴とする、請求項2〜5のうちいずれか一の項に記載のスピーカー。
  7. 前記モジュールは、前記ベース動電形ドライバと軸を共通にする直接放射型の低振動数動電形ドライバと、外部表面の取付け穴に重なるようにしてコーンが設けられた前記低振動数動電形ドライバ用のエンクロージャキャビネットと、低周波放射音響反射部と、を有し、
    前記低振動数音響反射部は、前記低振動数動電形ドライバの放射開口面に対向するとともに、前記低振動数動電形ドライバ用のエンクロージャキャビネットの外部に位置し、かつ、前記低振動数動電形ドライバと同軸となるように位置しており、
    前記低振動数動電形ドライバの放射開口面から前記低振動数音響反射部までの距離は、前記低振動数動電形ドライバの放射面における有効半径の半分以上、かつ、前記低振動数動電形ドライバで再生される空気中での最大音響波長の4分の1未満であり、
    前記低振動数音響反射部の面積は、前記低振動数動電形ドライバの放射面における有効面積の3分の1以上、かつ、4倍以下である、ことを特徴とする請求項1〜6のうちいずれか一の項に記載のスピーカー。
  8. 前記低振動数音響反射部は、前記ベース動電形ドライバ用のエンクロージャキャビネットの裏側に配設されることを特徴とする、請求項7に記載のスピーカー。
  9. 前記ベース動電形ドライバ用のエンクロージャキャビネットの裏面は、前記低振動数音響反射部であることを特徴とする、請求項8に記載のスピーカー。
  10. 前記音響反射部における表面部の曲率は、その音響反射部に対応する前記動電形ドライバのコーンにおける表面部の曲率に略等しいことを特徴とする、請求項1〜9のうちいずれか一の項に記載のスピーカー。
  11. 前記音響反射部の表面のうち、少なくとも一部が穿孔されていることを特徴とする、請求項1〜10のうちいずれか一の項に記載のスピーカー。
  12. 前記音響反射部が、前記ベース動電形ドライバの軸に対して半径方向に配設された少なくとも1つのリブによって、対応するエンクロージャキャビネットに装着されることを特徴とする、請求項1〜11のうちいずれか一の項に記載のスピーカー。
  13. 平坦又は円錐状状のリングで互いに固定された少なくとも2つの前記リブによって、前記音響反射部が、対応する電動ドライバのエンクロージャキャビネットに取付けられており、前記リングは前記リブと共に半径方向音響レンズを形成しており、
    対応する前記音響反射部及び前記動電形ドライバのコーンの周辺端部を通過する仮想テーパを想定したとき、前記リングの内径は前記仮想テーパ面と部分的にも重ならないように形成されている、ことを特徴とする請求項12に記載のスピーカー。
  14. 前記ベース動電形ドライバ および/または 前記低振動数動電形ドライバのコーンは、ダストキャップ無しのコーンであって、かつ、対応する前記音響反射部は、中央ロッドによって、対応する前記動電形ドライバにおける磁気システムのコアに取付けられていることを特徴とする、請求項1〜3、5〜13のうちいずれか一の項に記載のスピーカー。
  15. 前記モジュールを偶数備え、互いの前記ベース動電形ドライバが軸を共通するようにして、前記各モジュールが対になるよう配設されていることを特徴とする、請求項1〜14のうちいずれか一の項に記載のスピーカー。
  16. 対になる前記モジュールのベース動電形ドライバが互いに対向し、かつ、これらのベース動電形ドライバの前記ベース音響反射部間における距離は、対のうち一方の前記ベース音響反射部及びエンクロージャキャビネットが、他方の仮想テーパの外に広がらないように選択されており、前記他方の仮想テーパは対のうち他方の前記ベース音響反射部及び前記ベース動電形ドライバのコーンの周辺端部を通過することを特徴とする、請求項15に記載のスピーカー。
  17. 対になるモジュールの前記ベース動電形ドライバが同一方向に向き、かつ、放射方向前方に位置する第1ベース動電形ドライバのベース音響反射部と、この対となる第2ベース動電形ドライバのエンクロージャキャビネットとの間の距離は、前記第2ベース動電形ドライバのベース音響反射部とエンクロージャキャビネットが、仮想テーパの外に広がらないように選択されており、前記仮想テーパは前記第1ベース動電形ドライバの前記ベース音響反射部及びコーンの周辺端部を通過することを特徴とする、請求項15に記載のスピーカー。
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