JP4123984B2 - 記録媒体搬送装置及び記録装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、記録媒体を搬送する記録媒体搬送装置及びこの記録媒体搬送装置を備えた記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、記録装置の1つである例えばインクジェット式プリンタにおいては、記録媒体の1つである例えば用紙を用紙搬送装置により記録部に送り込みつつ記録して外部に送り出す構成のものがある。かかるインクジェット式プリンタにおいては、用紙を紙送りローラ及びその従動ローラで挟持して送りつつ記録ヘッドで記録し、排紙ローラ及びその従動ローラとしての拍車ローラで挟持して送って排出するようになっている。
【0003】
このような用紙搬送装置を備えるインクジェット式プリンタでは、用紙に例えばベタ画像等のように多数のインク滴が吐出される画像が記録される場合には、用紙が多量のインクを吸収して、記録後に記録ヘッド側に波状に膨らむ、いわゆるコックリングが発生する場合がある。そして、このコックリングが発生して発達すると、用紙と記録ヘッドとの間隔が不均一になり、インク滴の飛翔距離がばらつくことにより記録むらが生じ、あるいは、用紙が記録へッドに接触して汚れてしまう不具合がある。そこで、近年、用紙搬送面に用紙搬送方向及びそれと直交する方向に一定ピッチで複数の穴、すなわち格子状に複数の穴を穿孔し、これらの穴を介して吸引ポンプ等で用紙を吸引して上述したコックリングを抑制するインクジェット式プリンタが提案されている(特許文献1、2参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開昭63−303781号公報
【特許文献2】
特開平3−270号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の吸引式の用紙搬送装置を備えるインクジェット式プリンタには、負圧×面積で規定される吸引力を高めるために各穴の周りにディンプルが形成されているものがある。ところが、上記ディンプルは各穴に対応して格子状に形成されているため、各ディンプル間には仕切壁が存在することになる。このため、用紙の先端は、ディンプル内に一旦引き込まれた後、用紙搬送方向と直交する方向の仕切壁によって跳ね上げられ、記録へッドに接触して汚れてしまうおそれがある。
【0006】
本発明は、上記のような種々の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、記録媒体を搬送する際に記録媒体の先端の跳ね上がりを防止することができる記録媒体搬送装置及びこの記録媒体搬送装置を備えた記録装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的達成のため、本発明に係る記録媒体搬送装置では、記録媒体搬送面上に供給される記録媒体を吸着しつつ搬送する記録媒体搬送装置であって、前記記録媒体搬送面には、前記記録媒体搬送面の記録部から排紙部までに亘って、連通して延びる凹みが形成されていることを特徴としている。これにより、記録媒体の先端は、凹み内に一旦引き込まれた後は、その状態が維持されて搬送されるので、従来のように記録媒体の搬送方向と直交する方向の仕切壁によって跳ね上げられることは無く、記録へッドとの接触による汚染を防止することができる。
【0008】
前記ディンプルは、前記記録媒体の搬送方向と直交する方向に複数並設されていることを特徴としている。これにより、コックリングの波状凹部をディンプル内に確実に引き込むことができるので、コックリングの波状凸部の記録媒体搬送面からの飛び出しを確実に抑制することができる。
【0009】
前記記録媒体搬送面に設けられた複数の吸引穴、前記複数の吸引穴と連通した減圧室及び前記減圧室内の空気を吸引する吸引手段を有し、前記吸引穴が、前記減圧室と連通する吸引孔と、前記記録媒体と対向する吸引面の面積が前記吸引孔の断面積よりも大きい吸引室とを含む吸引ユニットを備え、前記吸引室が前記ディンプルとして機能することを特徴としている。これにより、吸引室上に差し掛かった記録媒体の下方の空気の流速が早くなって負圧が高くなるので、記録媒体にコックリングが発生しても、記録媒体を吸引室内に完全に吸着することができるとともに、吸引室により適度な吸引力が発生するので、記録媒体の送り精度を高精度に維持しつつ吸着搬送することができる。
【0010】
上記目的達成のため、本発明の液体噴射装置では、上記各機能を有する被噴射材搬送装置を備えたことを特徴としている。これにより、上述した各作用効果を奏する液体噴射装置を提供することができる。上記目的達成のため、本発明の記録装置では、上記各搬送装置を備えたことを特徴としている。これにより、上述した各作用効果を奏する記録装置を提供することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施形態に係る記録媒体搬送装置を示す側面図である。この記録媒体搬送装置100は、記録時に記録媒体を吸引保持する吸引ユニット110と、吸引ユニット110の上流側から下流側へ記録媒体を搬送する記録媒体搬送手段150とを備えている。上記吸引ユニット110は、記録媒体に記録するための記録へッド231に対して、記録媒体搬送路Lを挟んで下側に配置されている。そして、上段の吸引部120と下段の吸引力発生部130から成る上下2段構成の中空箱状に形成されている。
【0012】
吸引部120は、内部に形成された減圧室121と、記録媒体搬送面122に記録媒体の搬送方向に長い長方形状の凹みとして形成された本発明の特徴的な部分である複数の吸引室123と、これら吸引室123をそれぞれ減圧室121と連通させるべく、上下方向に伸長する上記吸引室123より小さい円形の断面積を有する複数の吸引孔124とを有している。
【0013】
図2(A)、(B)は、上記吸引部120を示す平面図及びA−A線断面側面図である。吸引室123は、短辺が所定長さであって長辺が記録媒体搬送面122の上流端近傍から下流端近傍に至る長さとなるように形成されている。すなわち、各吸引室123は、記録媒体の搬送方向には連通して延び、記録媒体の搬送方向と直交する方向には仕切壁125を挟んで並ぶように形成されている。吸引孔124は、吸引室123の底面において記録媒体の搬送方向に所定ピッチで形成されている。すなわち、吸引孔124は、吸引室123毎に1列形成されている。
【0014】
上述したように、各吸引室123を記録媒体の搬送方向には仕切壁を設けずに連通して延びるように形成しているので、記録媒体の先端は、ディンプル状の吸引室123内に一旦引き込まれた後は、その状態が維持されて搬送される。したがって、記録媒体の先端は、従来のように記録媒体の搬送方向と直交する方向の仕切壁によって跳ね上げられることは無く、記録へッド231との接触による汚染を防止することができる。
【0015】
ここで、吸引室123の長辺を記録媒体搬送面122の上流端近傍から下流端近傍に至る長さとなるように形成したことにより、記録媒体の先端部が記録媒体搬送面122の下流端に到達するまでは、吸引室123の一部分しか覆われていない状態が続くことになる。このため、吸引力の低下による記録媒体の吸着搬送不良が懸念される。しかし、記録媒体の先端の下面には、吸引孔124により記録媒体の下面と吸引室123の底面との間を通る気流が引き起こす動圧損失と吸引孔124そのものの動圧損失とによる負圧が発生するので、記録媒体の先端を安定的に吸着して搬送することが可能となる。この点について検討した結果を図3を参照して説明する。
【0016】
図3(A)は、異なる長辺の長さを有する吸引室123全体を記録媒体で覆ったときの記録媒体に働く張力を示す図、図3(B)は、所定の長辺の長さを有する吸引室123を記録媒体で徐々に覆ったときの記録媒体に働く張力の変化を示す図である。図3(A)に示すように、吸引室123の長辺、すなわち記録媒体の搬送方向(副走査方向)の全長を20mm、30mm、45mmとして形成し、各吸引室123全体を記録媒体で覆ったときの記録媒体に働く張力は、約20cN、約30cN、約45cNとなり、ほぼリニアに増加することが判明した。
【0017】
そして、図3(B)に示すように、吸引室123の長辺、すなわち記録媒体の搬送方向(副走査方向)の全長を45mmとして形成し、この吸引室123を記録媒体で徐々に覆ったときの記録媒体に働く張力も、ほぼリニアに増加することが判明した。さらに、図3(A)に示す吸引室123の長辺が20mm、30mmのときの記録媒体に働く張力は、図3(B)に示すグラフ上にほぼ乗ることが判明した。
【0018】
したがって、記録媒体の先端部が記録媒体搬送面122の下流端に到達するまでは、吸引室123の一部分しか覆われていない状態、すなわち記録媒体の先端部側が開放状態になっていても、記録媒体の先端の下面には、吸引孔124により記録媒体の下面と吸引室123の底面との間を通る気流が引き起こす動圧損失と吸引孔124そのものの動圧損失とによる負圧が発生するので、記録媒体の先端を安定的に吸着して搬送することが可能となる。
【0019】
吸引力発生部130は、吸引部120の減圧室121と連通孔131を介して連通されており、内部に遠心ファンを備えたポンプ132を有している。ポンプ132は、減圧室121の下方の所定位置に連通孔131を介して減圧室121と連通した状態で取り付けられており、遠心ファンが記録時に回転するようになっている。
【0020】
記録媒体搬送手段150は、記録媒体を記録へッド231と吸引ユニット110の間に送り込む送りローラ151と、この送りローラ151に対して上方から圧接される従動ローラ152と、記録媒体を外部へ排出する排出ローラ153と、この排出ローラ153に対して上方から接触される拍車ローラ154を備えている。尚、吸引ユニット110を排出方向へ移動可能な構成とすること等により、排出ローラ153と拍車ローラ154を設けないことも可能である。
【0021】
以上のように、吸引穴を吸引孔124と吸引室123で構成し、さらに吸引孔124を小径の貫通孔により形成することで、ポンプ132の特性に対して利用できる負圧の利用率を高めると共に、吸引室123を吸引孔124より面積の大きい略矩形の凹みとして形成することで、記録媒体に対して大きな吸引力を発生できるようになっている。さらに、各吸引室123を記録媒体の搬送方向には仕切壁を設けずに吸引室123の長辺を記録媒体搬送面122の上流端近傍から下流端近傍に至る長さとなるように形成しているので、記録媒体の先端は、吸引室123内に一旦引き込まれた後は、その状態が維持されて搬送される。したがって、記録媒体の先端は、従来のように記録媒体の搬送方向と直交する方向の仕切壁によって跳ね上げられることは無く、記録へッド231との接触による汚染を防止することができる。
【0022】
このような構成の記録媒体搬送装置100は、以下のように動作する。送りローラ151等が回転駆動して、記録媒体を記録ヘッド231と吸引ユニット110との間に送り込む。一方、ポンプ132が駆動して、吸引力を連通孔131及び減圧室121を介して吸引孔124と吸引室123に作用させる。これにより、記録媒体は、記録媒体搬送面122に吸引吸着された状態で搬送される。同時に、記録へッド231が、記録媒体の上方を主走査方向に移動しながら記録媒体に対してインク粒を吐出して記録を行う。
【0023】
このとき、記録媒体の先端は、ディンプル状の吸引室123内に一旦引き込まれた後は、その状態が維持されて搬送されることになるので、記録媒体と記録ヘッド231との間隔は均一となる。したがって、インク滴の飛翔距離がばらつくことによる記録むらや、記録媒体が記録へッド231に接触することによる汚染を防止することができる。そして、排出ローラ153等が回転駆動して、記録が終了した記録媒体を外部へ排出する。
【0024】
図4は、上記記録媒体搬送装置100を備えた記録装置としてのインクジェット式プリンタを示す斜視図、図5〜図7は、その主要部を示す平面図、正面図及び側面図である。このインクジェット式プリンタ200は、プリンタ本体210の後方上部に斜めに取り付けられた自動給紙(ASF)ユニット220と、プリンタ本体210に内蔵された記録部230及び記録媒体搬送装置100を備えている。記録媒体としては、インクジェット式プリンタ200の専用紙、普通紙の他、OHPフィルム、トレーシングペーパ一、ハガキ等各種のものを用いることができる。
【0025】
ASFユニット220は、用紙1を収容するトレイ221と、このトレイ221から用紙1を引き出して供給する給紙ローラ222等を備えている。記録部230は、記録ヘッド231及びインクカートリッジ232が搭載されたキャリッジ233と、このキャリッジ233を主走査方向に配設されたガイド軸234に沿って移動させるDCモータ235等を備えている。記録ヘッド231は、例えばシアン、マゼンタ、イエロー、ライトシアン、ライトマゼンタ、ライトイエロー、ブラックの各色毎に、例えば96個等複数のノズルから成るノズル列を有している。
【0026】
記録媒体搬送装置100は、記録時に記録媒体を吸引保持する上段の吸引部120と下段の吸引力発生部130から成る吸引ユニット110と、吸引ユニット110の上流側から下流側へ記録媒体を搬送する記録媒体搬送手段150とを備えている。吸引部120は、内部に形成された減圧室121と、記録媒体搬送面122に記録媒体の搬送方向に長い長方形状の凹みとして形成された複数の吸引室123と、これら吸引室123をそれぞれ減圧室121と連通させる複数の吸引孔124とを有している。
【0027】
吸引力発生部130は、吸引部120の減圧室121と連通孔131を介して連通されており、内部に遠心ファンを備えたポンプ132を有している。ポンプ132は、減圧室121の下方の所定位置に連通孔131を介して減圧室121と連通した状態で取り付けられており、遠心ファンが記録時に回転するようになっている。
【0028】
記録媒体搬送手段150は、記録媒体を記録へッド231と吸引ユニット110の間に送り込む送りローラ151と、この送りローラ151に対して上方から圧接される従動ローラ152とを有している。なお、この実施形態では、記録媒体を外部へ排出する排出ローラ153と、この排出ローラ153に対して上方から接触される拍車ローラ154とが不要な、排出方向へ移動可能な吸引ユニット110を有するインクジェット式プリンタ200としているが、排出ローラ153と拍車ローラ154を有するインクジェット式プリンタとしても良い。
【0029】
このような構成のインクジェット式プリンタ200は、以下のように動作する。図示しないホストコンピュータ等によりトレイ221に収容されている用紙1に対する記録命令が入力されると、給紙ローラ222が回転駆動して、トレイ221に収容されている用紙1を1枚ずつピックアップして給紙する。さらに、送りローラ152等が回転駆動して、用紙1を記録ヘッド231と吸引ユニット110との間に送り込む。
【0030】
一方、ポンプ132が駆動して、吸引力を連通孔131及び減圧室121を介して吸引孔124と吸引室123に作用させる。そして、用紙1を記録媒体搬送面125に吸引吸着した状態で搬送する。これと同時に、DCモータ235が駆動して、タイミングベルトを介してキャリッジ233をガイド軸234に沿って移動させる。このとき、記録へッド231は、インクカートリッジ232から各色毎に供給されるインクを記録データに応じて複数のノズルの全部又は一部から微小なインク滴として用紙1上に吐出して記録する。記録媒体の先端は、吸引室123内に一旦引き込まれた後は、その状態が維持されて搬送されることになるので、記録媒体と記録ヘッド231との間隔は均一となり、高精度な記録を行うことができる。そして、排出ローラ153等が回転駆動して、記録が終了した用紙1を排紙口201から外部へ排紙する。
【0031】
以上説明したように、記録媒体の先端は、ディンプル状の吸引室123内に一旦引き込まれた後は、その状態が維持されて搬送されるので、従来のように記録媒体の搬送方向と直交する方向の仕切壁によって跳ね上げられることは無く、記録ヘッド231を記録媒体により近接させることができ、記録精度をさらに向上させることができる。なお、上述した実施形態では、記録媒体を搬送する装置を備えた記録装置について説明したが、例えばインクジェット式プリンタを含む被噴射材を搬送する装置を備えた液体噴射装置についても適用可能であり同一の作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態に係る記録媒体搬送装置を示す側面図である。
【図2】 図1の吸引部を示す平面図及びA−A線断面側面図である。
【図3】 吸引室を記録媒体で覆ったときの記録媒体に働く張力を示す図である。
【図4】 本発明の記録媒体搬送装置を備えた記録装置としてのインクジェット式プリンタを示す斜視図である。
【図5】 図4のインクジェット式プリンタの主要部を示す平面図である。
【図6】 図4のインクジェット式プリンタの主要部を示す正面図である。
【図7】 図4のインクジェット式プリンタの主要部を示す側面図である。
【符号の説明】
1 用紙、100 記録媒体搬送装置、110 吸引ユニット、120 吸引部、121 減圧室、122 記録媒体搬送面、123 吸引室、124 吸引孔、125 仕切壁、130 吸引力発生部、131 連通孔、132 ポンプ、150 記録媒体搬送手段、151 送りローラ、152 従動ローラ、153 排出ローラ、154 拍車ローラ、200 インクジェット式プリンタ、210 プリンタ本体、220 ASFユニット、221 トレイ、222 給紙ローラ、230 記録部、231 記録ヘッド、232 インクカートリッジ、233 キャリッジ、234 ガイド軸、235 DCモータ

Claims (2)

  1. 記録媒体搬送面上に供給される記録媒体を吸着しつつ搬送する記録媒体搬送装置であって、
    前記記録媒体搬送面の記録部を越え下流側に亘って、連通して延びる凹みから形成される吸引室と、
    前記吸引室に設けられた減圧室と連通させる複数の吸引孔と、
    前記複数の吸引孔と連通した前記減圧室内の空気を吸引する吸引手段とを有し、
    前記記録媒体搬送面の上方からみた前記吸引室の底面の搬送方向と直交する方向における幅より前記吸引孔の径の方が小さいことを特徴とする記録媒体搬送装置。
  2. 請求項1に記載の搬送装置を備えたことを特徴とする記録装置。
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