JP4122534B2 - カルボニル化反応液から第viii族金属を回収する方法 - Google Patents
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Description
本発明は、オキソ反応等の第VIII族金属を触媒とするカルボニル化反応液から、触媒金属を回収する方法に関する。
【従来の技術】
オキソ反応、レッペ反応、ヒドロカルボキシル化反応、ヒドロエステル化反応等のカルボニル化反応を工業的に実施する場合、触媒としては第VIII族貴金属の錯体がよく使用されている。貴金属触媒は高価であるため、工業的に実施するためには、反応後に触媒金属を効率よく回収再使用することが必要であり、かかる金属の回収法はこれまでも種々研究されている。
【0001】
例えば、特開昭51−63388号に示される方法はオキソ反応の蒸留残留物を、鉱酸および過酸化水素で処理し、含有するロジウムあるいはイリジウムを水相に抽出し、次いで、その金属含有水溶液を第3級ホスフィンとハロゲン化水素酸あるいはハロゲン化アルカリの存在下、一酸化炭素で処理し、再生された錯体を晶析により回収する方法である。この方法は、ハロゲン化物を使用するため装置に耐ハロゲン材料を使用しなければならず、設備のコスト面で不利である。また、非ハロゲン系の触媒系についてはハロゲンが触媒の失活要因となるため適用できない。
【0002】
特開昭54−26218号に示されるトリアリールホスファイトを配位子とするオキソ反応の蒸留残留物からのロジウムの回収法は、酸素ガスを用いた酸化によりゼロ価のロジウムを沈殿物として回収する方法であるが、回収した金属を活性な触媒に再生するためには繁雑な化学処理が必要である。
特開昭57−72995号は第VIII族貴金属を含有する有機溶液を極性有機溶剤と水およびアルカリの存在下、空気酸化することにより、金属を錯体として晶析回収する方法であるが、晶析や沈殿により回収する方法は、ろ過設備を必要とし工業的に有利とは言えない。
【0003】
特開平2−145439号はトリフェニルホスフィンモノスルホン酸塩を含有する水溶液でオキソ反応残留物を抽出処理し、水相にロジウムを回収する方法であるが、水溶性ホスフィンは高価であり、限られた系にしか適用できない。
特開平3−146423号はオキソ反応の蒸留残留物をカルボン酸およびカルボン酸のアルカリ塩の存在下、酸素ガスで処理した後、水で抽出することによりロジウムを回収する方法である。この方法は回収率が必ずしも満足し得るものではなく、また、抽出後の水相にカルボン酸あるいはカルボン酸塩が含有されるため、この液がある割合で廃水となる場合、水相中の有機化合物濃度を下げる廃水処理が必要となる。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、カルボニル化反応に用いられた第VIII族金属触媒を含有する有機溶媒溶液と、極性溶媒に無機酸のアルカリ金属塩を溶解させた極性溶媒溶液であって該有機溶媒溶液と二液相を形成するものとを混合し、この混合液を酸化剤で処理して第 VIII 族金属を極性溶媒溶液相に移行させたのち相分離し、第VIII金属を含有する極性溶媒溶液相を回収することにより達成される。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、カルボニル化反応に用いられた第VIII族金属含有溶液を、無機酸のアルカリ金属塩を溶解した極性溶媒及び酸化剤と接触させた後、相分離により、第VIII族金属を含有する極性溶媒相を分離、回収することにより達成される。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明を適用できるカルボニル化反応は、オキソ反応、レッペ反応、ヒドロカルボキシル化反応、ヒドロエステル化反応等であり、好ましくは、オキソ反応である。オキソ反応はオレフィンに一酸化炭素及び水素を反応させて、オレフィンをヒドロホルミル化する反応である。原料であるオレフィンは特に限定されるものではないが、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、ブテン混合物、C4 ダイマー、ヘキセン、オクテン、ノネン、C3 トリマーなどの炭素原子数2〜20のオレフィン、またはイソブチレンなどのビニリデン構造を有するオレフィン、あるいはそれらオレフィンの混合物が挙げられる。
【0007】
これらオレフィンを原料とするオキソ反応の触媒金属としては、第VIII族金属であるCo、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Ptなどが挙げられる。本発明はこれら金属のいずれにも適用可能であるが、好ましくは、Co、Ru、Rh、Pd、Ptであり、より好ましくは、Co、Rh、特にRhである。現在、工業的規模のオキソ反応の実施においては、高選択性を有し、比較的マイルドな条件を設定できる理由で、ロジウムが金属価格が高いにも関わらず、専ら触媒金属として使用されている。本発明はこうしたロジウムを触媒金属とするオキソ反応において、特に有効である。
【0008】
ロジウムを触媒金属とするオキソ反応を実施する場合、ロジウムは非修飾型、あるいは錯塩形成配位子により修飾されて用いられる。錯塩形成配位子としては第3級リン化合物、例えば、第3級アルキルまたはアリールホスフィン、あるいは第3級アルキルまたはアリールホスファイトが用いられる。具体的には例えば、トリメチル、トリエチル、トリプロピル、トリブチルなどのトリアルキルホスフィンあるいはホスファイト類、トリフェニル、トリトルイル、ジフェニルプロピルなどのトリアリールおよび第3級アルキルアリールホスフィンあるいはホスファイト類、トリフェニルトリスルホン酸、ジフェニルホスフィンモノスルホン酸などの置換基に親水性の置換基を有するホスフィンあるいはホスファイト類である。
【0009】
本発明はロジウムを非修飾、あるいは上記の配位子で修飾して用いる触媒系のいずれにも適用可能である。好ましくはロジウムを非修飾あるいはトリフェニルホスフィン配位子で修飾してオキソ反応に用いた液からのロジウムの回収である。これらの反応系のプロセスは、トルエン、高沸点副生成物溶媒等の溶媒存在下あるいは非存在下に行われ、反応後、未反応ガスによるストリッピングあるいは蒸留により触媒金属と粗生成物とを分離し、触媒は反応域に残留させたまま、あるいは反応域に再循環して反応に用いられる。いずれの分離方法においても、失活した触媒金属あるいは副生する高沸点副生物の蓄積をさけるために一部触媒液を間欠的または連続的に反応域外に廃触媒液として抜き出し、抜き出された量に対応する量の触媒が新たに反応域に供給される。
【0010】
本発明方法を適用できるカルボニル化反応に用いられた液とは、カルボニル化反応を行った触媒金属を含有する溶液のことであり、原料、反応生成物および副生成物、反応溶媒、抽出溶媒、希釈溶媒等が任意の割合からなる媒体に金属が溶解している溶液である。通常、こうした溶液に含有される金属濃度は0.1ppm〜10%(重量基準)であり、本発明はこの濃度範囲において適用できるが、好ましくは1ppm〜1%であり、より好ましくは、10ppm〜0.1%である。また、回収処理する液に含有される配位子の量に制限はないが、過剰の配位子を含有する場合、本発明方法の酸化処理による配位子の損失を少なくするために予め大部分の配位子を回収しておくことが好ましい。
【0011】
オキソ反応の場合、本発明方法が適用されるのは、生成アルデヒドを含有した反応液、ストリッピングあるいは蒸留によりアルデヒドを留去した後の触媒液、更に反応溶媒を除去あるいは高沸点副生物を濃縮した後の高沸点生成物を媒体とする触媒液、これら触媒液から配位子あるいは金属錯体を一部あるいは大部分回収した後の残金属含有液あるいは反応系から抜き出された廃触媒液などである。より好ましくは、生成アルデヒドおよび配位子を除いた反応液である。
【0012】
本発明に用いる極性溶媒は、無機酸のアルカリ金属塩を溶解することができ、且つ金属含有液と二相に分離し得るものでなければならない。通常、極性溶媒としては水、あるいは水と極性有機溶剤の混合液が用いられる。混合溶媒の場合、水とそれに混合した極性有機溶剤は均一相であり、かつ金属含有液とは二相に分離する条件下に極性溶媒の組成がきめられる。水と混合する極性有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、ジエチルケトンなどのケトン類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールなどのアルコール類、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジグライム、トリグライムなどのエーテル類であり、好ましくは、水、メタノール、エタノール、プロパノールである。極性溶媒として特に好ましくは水である。
極性溶媒と金属含有溶液の容量比は0.1〜10、好ましくは0.3〜3である。この極性溶媒に、無機酸のアルカリ金属塩を溶解させたもの及び酸化剤を金属含有液と接触させる。
【0013】
無機酸のアルカリ金属塩は被処理液中の金属に対し大過剰に用いる必要がある。従って、被処理液中の金属濃度、使用する極性溶媒量等を考慮して決められるが、通常、極性溶媒相中の無機酸のアルカリ金属塩の濃度は0.01〜10mol/l、好ましくは0.1〜5mol/lである。アルカリ金属としては、例えば、ナトリウム、カリウムが好ましい。
【0014】
また無機酸塩は硫酸、硝酸、塩酸、炭酸、ほう酸あるいはリン酸の塩である。回収率および取扱い易さを考慮すると好ましくは硫酸塩、リン酸塩、塩酸塩、ホウ酸塩、炭酸塩である。より好ましくは硫酸塩である。また、これらの塩は対応する酸とアルカリを添加して系中で生成させてもよい。酸化剤は過酸化水素などの無機酸化剤、t−ブチルパーオキサイド、オクテンパーオキサイドなどの有機過酸化物、あるいは酸素または酸素含有ガスから選ぶことができる。好ましくは過酸化水素、酸素または酸素含有ガスである。過酸化水素と酸素または酸素含有ガスの併用も可である。本発明に用いる酸素含有ガスの酸素濃度は任意に選ぶことができ、酸素を不活性ガスで希釈したものを使用できる。工業的に好ましくは空気の使用である。
【0015】
酸素含有ガスのフィード形式は特に限定されるものではなく、バッチ方式、連続方式、いずれでもよい。必要酸素量は金属含有液中の金属、配位子、あるいは有機物などの酸化されるものの量によって決まるので、これらに対して過剰量あればよい。ただし、回収率は酸素の絶対量だけでなく分圧にも依存するため加圧系が好ましい。その圧力はガス中の酸素濃度などの条件によって変わるが、例えば、空気を使用するときは1〜150kg/cm2 ・Gで可能である。好ましくは10〜100kg/cm2 ・Gである。
接触処理は金属含有液と極性溶媒を撹拌により十分接触させた状態で、温度60〜150℃、好ましくは、80〜150℃、より好ましくは100〜140℃で行なわれる。反応方式は十分な接触が行なえれば特に限定されるものではなく、バッチ式でも連続式でもよい。
【0016】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。
ロジウム含有液の調製
ロジウム/トリフェニルホスフィンを触媒としたプロピレンのオキソ反応溶液から未反応原料、および生成物のアルデヒドを除去し、更に、この液から反応溶媒のトルエンを除去した後の主としてオキソ反応高沸点副生物およびトリフェニルホスフィンからなるロジウム含有溶液を得た。この溶液から晶析法によりロジウム錯体とトリフェニルホスフィン(TPP)を回収し、そのろ液から晶析溶媒を除去した残液を本発明方法の対象とするロジウム含有液とした。
この残液の組成は次の通りであった。
【0017】
【表1】
高沸生成物* 88.0(重量%)
トリフェニルフォスフィン 10 (重量%)
トリフェニルフォスフィンオキサイド 2 (重量%)
ロジウム 350 mg/l
*GC分析による高沸生成物組成は以下の通りであった。
【0018】
【表2】
【0019】
〔実施例1〕
ロジウム含有液50mlと1mol/lの硫酸ナトリウム水溶液50mlを、500mlの上下撹拌式SUS製オートクレーブに仕込み、空気を導入し100kg/cm2 ・Gに加圧し、120℃、6時間処理した。室温に降温した後、空気を放圧し、静置後、油水を分離し水相を回収した。油相はさらに等量の水で2回洗浄し、洗浄水を先の水相と併せて回収した。ロジウムの分析はゼーマン原子吸光法により行った。その結果、下式より求めたロジウムの回収率は87.0%であった。
【0020】
【数1】
ロジウム回収率=(水相に抽出されたRh量)/(原料中のRh量)×100
【0021】
〔実施例2〜4〕
硫酸ナトリウムの代りに下記の無機酸塩を用いた以外は実施例1と同様に行った。結果を表−1に示す。
【0022】
【表3】
【0023】
〔比較例1〕
アルカリ金属塩水溶液の代りに純水を用いた以外は実施例1と同様に行った。その結果、回収率は68.9%であった。
〔比較例2〕
特開平3−146423号の方法を本実施例と同じRh含有液を用いて実施した。500mlの上下撹拌式SUS製オートクレーブ中にロジウム含有液75g、キシレン225g、30%苛性ソーダ3.1gならびに酢酸2.7gを仕込み、撹拌下15分以内に78℃に加温した。引き続いて21時間にわたって2MPaの圧力下に毎時120lの空気を浸漬管を通じて導入した。反応は2MPaの一定な内部圧及び80℃の一定温度において行った。廃ガスはニードル弁を介してオートクレーブふたにおいて解放し、冷却トラップに通した。反応の完結後、オートクレーブ内容物を約15分で60℃に冷却し、空気の供給を中止した。引き続いて反応混合物に水100gを加え、さらに15分間60℃で撹拌した。処理液を反応器から取り出し、相分離し、有機相をなお2回それぞれ50gの水で抽出した、全処理後、有機相にはなお出発物質中にふくまれるロジウムの60%(水相回収率40%)に相当するロジウム15.5mgが含有されていた。
【0024】
【発明の効果】
本発明方法によれば、高価な試薬や特殊な試薬を用いることなく、カルボニル化反応の反応液から触媒として使用された第VIII族金属を効率的に回収することができる。
Claims (6)
- カルボニル化反応に用いられた第VIII族金属触媒を含有する有機溶媒溶液と、極性溶媒に無機酸のアルカリ金属塩を溶解させた極性溶媒溶液であって該有機溶媒溶液と二液相を形成するものとを混合し、この混合液を酸化剤で処理して第VIII族金属を極性溶媒溶液相に移行させたのち相分離し、第VIII族金属を含有する極性溶媒溶液相を回収することを特徴とする第VIII族金属の回収方法。
- オキソ反応に用いられたロジウム触媒が溶解している有機溶媒溶液と、水性溶媒に無機酸のアルカリ金属塩を溶解させた水性溶媒溶液であって該有機溶媒溶液と二液相を形成するものとを混合し、この混合液を酸化剤で処理してロジウムを水性溶媒溶液相に移行させたのち相分離し、ロジウムを含有する水性溶媒溶液相を回収することを特徴とする第VIII族金属の回収方法。
- オキソ反応に用いられた錯塩形成配位子により修飾されたロジウム触媒が溶解している有機溶媒溶液と、水性溶液に無機酸のアルカリ金属塩を溶解させた水性溶媒溶液であって該有機溶媒溶液と二液相を形成するものとを混合し、この混合液を酸素含有ガスで処理してロジウムを水性溶媒溶液相に移行させたのち両相を分離し、ロジウムを含有する水性溶媒溶液相を回収することを特徴とする第VIII族金属の回収方法。
- 酸素含有ガスによる処理を、加圧下に80〜150℃で行うことを特徴とする請求項3記載の第VIII族金属の回収方法。
- 無機酸が硫酸、硝酸、塩酸、炭酸、リン酸及びほう酸から選ばれるものであり、アルカリ金属がナトリウム及びカリウムから選ばれるものであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の第VIII族金属の回収方法。
- 無機酸のアルカリ金属塩を含有する溶液のアルカリ金属塩濃度が0.1〜5mol/Lであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の第VIII族金属の回収方法。
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