JP4122398B2 - ダイレクト駆動式偏心ねじポンプ装置 - Google Patents

Description

本発明は、構造が極めて簡単でコンパクトなダイレクト駆動式偏心ねじポンプ装置に関する。

一軸偏心ねじポンプは、周知のように、長手方向にねじ状に連続する断面長円形孔を備えた雌ねじ型ステータと、このステータのねじ孔内に摺動回転自在に嵌挿され断面真円形でねじのピッチがねじ孔の１／２からなる雄ねじ型ロータと、駆動装置と、この駆動装置のドライブシャフトと前記ロータとを接続するカップリングロッドとからなり、ロータがステータ内で回転中心軸線を中心に偏心回転することによりポンピング作用をする構造を備えている。このため、一般的に、駆動装置のドライブシャフトとロータとを接続するカップリングロッドとの間に自在継手を介在させたり、カップリングロッドをフレキシブルで長尺なものにしたりすることでロータの偏心回転を許容している。そして、ステータの一端にエンドスタッドを取り付け、前記カップリングロッドや自在継手を内蔵するポンプケーシングに設けた開口から被移送液を吸い込んでエンドスタッド側から吐出したり、あるいはエンドスタッド側から被移送液を吸い込んでポンプケーシング側の開口から吐出したりしている。したがって、被移送液を駆動装置側へ漏れ出させないための液封部材をはじめとし、ドライブシャフトを支持する軸受けおよび軸受けハウジングなども必要で、部品点数が非常に多く、構造が複雑でポンプ装置全体が長尺になり、また、重量のうちポンプケーシングや軸受けハウジングなどの金属製のケーシングが占める割合が高くて重量も重い。

そこで、一軸偏心ねじポンプ装置の小型化および軽量化を図るためにサイズダウンの方法があるが、これには限界がある。

また、一軸偏心ねじポンプを用いたディスペンサーの先行技術として、被移送液の吸入孔および吐出孔と、ロータおよびこのロータを収納する固形部材の間に形成された被移送液の輸送部と、前記ロータと連結した軸と、この軸と前記固定部材との間に相対的な回転運動と揺動運動を与えるための回転揺動パルスモータと、その駆動電源である回転揺動制御部より構成される装置が提案されている（例えば、特許文献１参照）。
特開平８−７１４７８号公報（段落番号００１１〜００１８および図２）

上記した従来の一般的な一軸偏心ねじポンプおよび上記公報に記載のディスペンサーでは、次のような課題がある。

１．前者は、上記したとおり、部品点数が多く、構造が複雑で、装置全体が長くなり小型軽量化が困難なうえに、製造コストが高い。

２．後者は、従来構造に比べると、カップリングロッド部および上下の自在継手部が省かれ構造が簡略になっているが、片持ち支持構造であり、移送液量の大きなポンプ装置に適用するには、構造的に無理がある。

この発明は上述の点に鑑みなされたもので、カップリングロッド、自在継手、ポンプケーシング、軸封部材、軸受けおよび軸受けハウジングなどを省いて構造を簡略化でき、小
型・軽量化が可能で、移送液量に制約のないダイレクト駆動式偏心ねじポンプ装置を提供しようとするものである。

上記の課題を解決するために本発明にかかるダイレクト駆動式偏心ねじポンプ装置は、a) 吸込口および吐出口と、断面真円形の雄ねじ形ロータおよびこのロータが嵌挿される開口断面長円形の雌ねじ孔を有するステータを備えた一対の一軸偏心ねじポンプ本体と、これらのポンプ本体を挟んでその中間位置に配置される駆動モータ部とから構成し、b) 両側の前記各ポンプ本体は回転中心軸に対するロータの偏心量および偏心方向がそれぞれ等しくなるように設定し、c) 前記駆動モータ部は、そのモータロータの両側面中心部に前記ポンプ本体の左右の前記ロータを一体回転可能に連結し、かつ前記モータロータの半径方向への変位が許容されるように両側の前記ステータにより回転自在に支持したことを特徴とする。

上記の構成を有する本発明にかかるダイレクト駆動式偏心ねじポンプ装置によれば、回転軸を水平にした姿勢において左右のポンプ本体のロータ（以下、ポンプロータという）をそれぞれステータで回転自在に支持して軸受けとし、ポンプロータ中間のモータロータを半径方向に変位可能に構成することによって、モータロータがポンプロータと一体で回転しつつ偏心運動（遊星運動）を行う。そして、モータロータは駆動モータ部の一構成部材として電磁誘導により回転駆動され、ポンプロータに所定の回転力を伝達しながらポンプロータとともに一体に回転する。これにより、ポンプロータはステータ内で偏心回転してポンプ作用をし、吸込口から被移送液を吸い込んで吐出口から吐出する。そして、構造上からカップリングロッドや自在継手、ポンプケーシング、軸封部材、軸受けおよび軸受けハウジングなどが省かれるので、全長が同サイズの従来の一軸偏心ねじポンプに比べて約１／４とコンパクトになる。

請求項２に記載のように、両側の前記各一軸偏心ねじポンプ本体におけるロータの捩れ方向を相互に逆向きに設定し、各ポンプ本体の先端側開口から被移送液を吸い込むか吐出するかし、前記各ポンプ本体間（たとえば、前記駆動モータ部のモーターケーシング）に設けた開口より被移送液を吐出するか吸い込むかすることができる。

請求項２記載のダイレクト駆動式偏心ねじポンプ装置によれば、両側のポンプ本体の先端側吸込口から被移送液を吸い込み中間位置の吐出口から吐出するか、あるいは中間位置の吸込口から被移送液を吸い込み両側のポンプ本体の先端側吐出口から被移送液を吐出するかするので、被移送液の移送量が増大する。また、両側のポンプ本体のロータにそれぞれ発生するスラスト負荷が相互に対向するか逆向きになるかして相殺される。

請求項３に記載のように、両側の前記各一軸偏心ねじポンプ本体におけるロータの捩れ方向を同じ向きに設定し、前記モータロータの中心部付近に前記両側のポンプ本体間を連通する貫通路を設け、一方の前記ポンプ本体の先端側吸込口から被移送液を吸い込み、前記貫通路を通って他方の前記ポンプ本体の先端側吐出口から吐出することができる。

請求項３記載のダイレクト駆動式偏心ねじポンプ装置によれば、一方のポンプ本体先端の吸込口から被移送液を吸い込み、貫通路を通って基端側から他方のポンプ本体へ流入し同ポンプ本体先端の吐出口から被移送液を吐出するから、被移送液の移送圧力が増大する。

請求項４に記載のように、前記モータロータの両側中心部外周にスラストベアリングを環状に配設することができる。

請求項４記載のダイレクト駆動式偏心ねじポンプ装置によれば、両側のポンプ本体によるスラスト負荷が一方に偏っている場合に、モータロータの軸方向への移動をスラストベアリングが阻止する。

本発明のダイレクト駆動式偏心ねじポンプ装置は上記したように、左右のポンプステータを軸受けとし、ポンプロータ中間に設けたモータロータの半径方向への移動を許容することにより、カップリングロッドや自在継手やポンプケーシングをはじめ、軸封部材、軸受けや軸受けハウジングなどを省けるので、構造が単純化して簡略になり、全長が同サイズの一軸偏心ねじポンプに比べて約１／４とコンパクトになり、軽量化およびコストダウンが図れる。

以下、本発明にかかるダイレクト駆動式偏心ねじポンプ装置の実施の形態を図面に基づいて説明する。

図１はダイレクト駆動式偏心ねじポンプ装置の実施例を示す断面図、図２は図１のダイレクト駆動式偏心ねじポンプ装置の外観を概略的に示す斜視図、図３は図１のダイレクト駆動式偏心ねじポンプ装置の概念を概略的に示す一部を切り欠いて断面で表した斜視図である。なお、図４（ａ）は左右のエンドスタッド２４・３４を異なる形状にした別の実施例を示す一部を断面で表した正面図、図４（ｂ）は本発明の実施例に係るダイレクト駆動式偏心ねじポンプ装置に適用される駆動モータ部の一例を概略的に示す断面図である。

図１〜図３に示すように、本例の偏心ねじポンプ装置１は、駆動モータ部５を中心にして左右両側に一軸偏心ねじポンプ本体２・３を備えている。一軸偏心ねじポンプ本体２または３の主要部分は、断面真円形の雄ねじ形ロータ２１（３１）とこのロータ２１（３１）の２倍のピッチをもつ開口断面長円形の雌ねじ孔２３（３３）を備えたステータ２２（３２）から構成されており、ロータ２１（３１）は雌ねじ孔２３（３３）内でその中心軸線Ｌを中心に偏心して回転する。ロータ２１（３１）は雌ねじ孔２３（３３）内で、一方向に自転しながら中心軸線Ｌを中心とする自転と逆の方向へ公転し、雌ねじ孔２３（３３）の任意位置における断面ではロータ２１（３１）は自転しながら長円形開口の長軸方向に往復移動する。

ステータ２２（３２）の先端にはエンドスタット２４（３４）が装着され、その開口２４ａ（３４ａ）が吸込口（本例）あるいは吐出口になる。一方、ステータ２２（３２）の周囲には、円筒状ステータケーシング２５（３５）を備え、ステータケーシング２５（３５）の基端側は駆動モータ部５のモータケーシング５４の側面中央部に長尺の緊締ボルト８でエンドスタッド２４（３４）とともに一体に結合されている。

駆動モータ部５は、左右のロータ２１・３１の中間位置にあって同ロータ２１・３１と連接棒４０を介して一体回転可能に連結された円盤状モータロータ５１と、このモータロータ５１の外周部に配設されたロータマグネット５２と、モータロータ５１のロータマグネット５２を隙間をあけて挟むように両側に配設された駆動磁極部側固定ステータとしての円環体状電磁コイル５３・５３とを備えている。ロータマグネット５２は永久磁石を交互に磁極を変えて軸方向に一体に貼着した磁石体を周方向に一定の隙間をあけて交互に磁極が変わるように配置した構造からなり、モータロータ５１の周囲は樹脂製カバー５１ａにより被覆している。モータロータ５１の中心部には、周方向に間隔をあけ複数の貫通路５１ｂが穿設されている。これらの貫通路５１ｂは、左右のステータ２２（３２）の雌ねじ孔２３（３３）に連通されている。

一方、電磁コイル５３の周囲は、本例では珪素鋼板からなる磁性体枠５３ａで取り囲んだうえ、さらにその周囲を樹脂製カバー５３ｂで被覆している。モータケーシング５４は左右に分割され、これらの分割ケーシング５５・５５に各電磁コイル５３がそれぞれ埋設された状態で、分割ケーシング５５・５５が突き合わされて相対向する複数組の緊締ボルト９により一体に締め付けて固定している。各分割ケーシング５５・５５の中心部付近には、空洞部５６が形成され、これらの空洞部５６はモータロータ５１の中心部外周に配設した環状のスラストベアリング５７を支持するストッパー溝５６ａおよび左右のステータ２２（３２）との連通路５６ｂならびにモータロータ５１の収容室５６ｃからなる。

駆動モータ部５はさらに駆動制御部（図示せず）を備えており、この駆動制御部はロータマグネット５２の磁化位置に応じて電磁コイル５３・５３に流す電流を制御し、図４（ｂ）に示すようにロータマグネット５２を外周部の周方向に有するモータロータ５１を特定方向に回転させ、両側のポンプ本体２・３のロータ２１・３１に回転力を伝達して一体回転させる。

本例のダイレクト駆動式偏心ねじポンプ装置１は、左右のロータ２１・３１の捩れ方向および偏心方向が等しくなるように設定している。前記モータロータ５１は左右のロータ２１・３１とステータ２２・３２とにより回転自在に支持され、収容室５６ｃ内において左右のロータ２１・３１の偏心運動に対応してモータロータ５１の半径方向への変位が許容される。

上記のようにして構成された実施例１のダイレクト駆動式偏心ねじポンプ装置１について作動態様を説明する。

図４（ａ）に示すポンプ装置１の左側のエンドスタッド２４に移送管（図示せず）を接続した状態で、駆動モータ部５の電源を入れて電磁コイル５３に電流を流すことにより、モータロータ５１が一方向に回転する。これにより左右のロータ２１・３１が同時に回転を開始し、一方（本例では図４（ａ）の左側）のエンドスタッド２４の開口２４ａが吸込口となって被移送液（矢印）がポンプ本体２内に吸い込まれる。モータロータ５１は左右のロータ２１・３１の偏心回転に対応して半径方向へ変位しながら遊星運動を行い、回転力を左右のロータ２１・３１へ伝達する。被移送液（矢印）はステータ２２の雌ねじ孔２３を通ってロータ２１とのポンプ作用により右方向へ移送され、図１に示される連通路５６ｂおよび貫通路５１ｂを通って右側のポンプ本体３内に吸い込まれ、ここでさらに加圧されて右側のエンドスタッド３４の開口３４ａから吐出される。この状態で、モータロータ５１には図１の左方向へのスラスト力が作用するが、スラストベアリング５７およびストッパー溝５６ａによりモータロータ５１の左右方向への位置ズレが阻止される。

以上に本発明のダイレクト駆動式偏心ねじポンプ装置の一実施例を挙げたが、下記のように実施することができる。

a) 上記実施例の偏心ねじポンプ装置において、図５に示すように左右のロータ２１・３１の捩れ方向を相互に逆向きにし、両側のエンドスタッド２４・３４から被移送液を吐出する。一方、モータケーシング５４に吸込用ポート５８を開口し、モータロータ５１と両側の電磁コイル５３との間隙を流路として左右のポンプ本体２・３の連通路５６ｂへ被移送液を導く。モータロータ５１および電磁コイル５３は、上記したようにそれぞれカバー５１ａ、５３ｂにて液封処理しておく。本例のダイレクト駆動式偏心ねじポンプ装置１’の場合は、軸方向中間位置のモータケーシング５４のポート５８から被移送液（矢印）を吸い込み、左右のポンプ本体２・３により両側のエンドスタッド２４・３４の開口２４ａ・３４ａから相反する方向に被移送液（矢印）を吐出するので、モータロータ５１にはスラスト負荷がほとんど作用しない。なお、左右のロータ２１・３１を逆方向に回転し、
両側のエンドスタッド２４・３４から被移送液を吸い込んでモータケーシング５４のポート５８から被移送液を吐出させることもできる。

b) 駆動モータ部５に使用する電動モータの種類についてはとくに限定しないが、固定ステータ側の電磁コイル５３に対しモータロータ５１が半径方向に変位可能な構造にすることが要求される。たとえば、特開平８−７１４７８号公報に記載のパルスモータを使用したうえ、パルスモータのモータロータの回転軸を横向け（水平方向）にして両側にポンプロータ２１・３１を一体回転可能に接続し、モータロータの周囲に一定の間隔をあけて固定ステータを配置する。これにより、モータロータは回転の際に半径方向への変位が許容される。

本発明に係るダイレクト駆動式偏心ねじポンプ装置の実施例を示す断面図である。 図１のダイレクト駆動式偏心ねじポンプ装置の外観を概略的に示す斜視図である。 図１のダイレクト駆動式偏心ねじポンプ装置の概念を概略的に示す一部を切り欠いて断面で表した斜視図である。 図４（ａ）は左右のエンドスタッド２４・３４を異なる形状にした別の実施例を示す一部を断面で表した正面図、図４（ｂ）は本発明の実施例に係るダイレクト駆動式偏心ねじポンプ装置に適用される駆動モータ部の一例を概略的に示す断面図である。 本発明に係るダイレクト駆動式偏心ねじポンプ装置の別の実施例を示す断面図である。

符号の説明

１・１’ダイレクト駆動式偏心ねじポンプ装置
２・３ ポンプ本体
５ 駆動モータ部
２１・３１ 雄ねじ形ロータ
２２・３２ ステータ
２３・３３ 雌ねじ孔
２４・３４ エンドスタット
４０ （ポンプロータの）連接棒
５１ モータロータ
５１ｂ貫通路
５２ ロータマグネット
５３ 電磁コイル（固定ステータ）
５４ モータケーシング
５６ 空洞部
５６ａストッパー溝
５６ｂ連通路
５７ スラストベアリング

Claims (4)

1. 吸込口および吐出口と、断面真円形の雄ねじ形ロータおよびこのロータが嵌挿される開口断面長円形の雌ねじ孔を有するステータを備えた一対の一軸偏心ねじポンプ本体と、これらのポンプ本体を挟んでその中間位置に配置される駆動モータ部とから構成し、
   両側の前記各ポンプ本体は回転中心軸に対するロータの偏心量および偏心方向がそれぞれ等しくなるように設定し、
   前記駆動モータ部は、そのモータロータの両側面中心部に前記ポンプ本体の左右の前記ロータを一体回転可能に連結し、かつ前記モータロータの半径方向への変位が許容されるように両側の前記ステータにより回転自在に支持したことを特徴とするダイレクト駆動式偏心ねじポンプ装置。
2. 両側の前記各一軸偏心ねじポンプ本体におけるロータの捩れ方向を相互に逆向きに設定し、各ポンプ本体の先端側開口から被移送液を吸い込むか吐出するかし、前記各ポンプ本体間に設けた開口より被移送液を吐出するか吸い込むかすることを特徴とする請求項１記載のダイレクト駆動式偏心ねじポンプ装置。
3. 両側の前記各一軸偏心ねじポンプ本体におけるロータの捩れ方向を同じ向きに設定し、前記モータロータの中心部付近に前記両側のポンプ本体間を連通する貫通路を設け、一方の前記ポンプ本体の先端側開口から被移送液を吸い込み、前記貫通路を通って他方の前記ポンプ本体の先端側開口から吐出することを特徴とする請求項１記載のダイレクト駆動式偏心ねじポンプ装置。
4. 前記モータロータの両側中心部外周にスラストベアリングを環状に配設したことを特徴とする請求項１〜３のいずれか記載のダイレクト駆動式偏心ねじポンプ装置。
   

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