JP4121896B2 - エコー抑圧方法、装置、プログラムとその記憶媒体 - Google Patents

エコー抑圧方法、装置、プログラムとその記憶媒体 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、エコー抑圧方法、装置、プログラムとその記憶媒体に関し、特に2線4線式通話、およびスピーカとマイクロホンを用いたハンズフリー拡声通話の如き通話において、ハウリングの原因となり或いは聴覚上の劣化を引き起こすエコー信号を抑圧し、送話者音声品質を向上させるエコー抑圧方法、装置、プログラムとその記憶媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
送話音声信号である収録信号にエコー信号が重畳したエコー重畳収録信号から周波数領域でエコー信号を抑圧する従来の技術について説明する(特許文献1 参照)。
図6を参照するに、301はエコー抑圧装置全体を示す。このエコー抑圧装置301は、エコー経路結合量推定部304、エコー抑圧ゲイン算出部305、乗算器306より成る。302はエコー経路伝搬遅延推定部、303は遅延器、401および402は周波数分析部、403は周波数合成部である。
始めに、送信側の送信端11から伝送路を経由して受信側の受信端21に到来した音声再生されるべき再生(受話)信号x(k)は周波数分析部401で周波数領域に変換され、信号の短時間スペクトルXが求められる。受信側において収録された収録(送話)信号s(k)にエコー経路を介してエコー信号b(k)が混入したエコー重畳収録信号y(k)は周波数分析部402で周波数領域に変換され、信号の短時間スペクトルYが求められる。
【0003】
次に、周波数領域に変換された再生信号x(k)および周波数領域に変換されたエコー重畳収録信号y(k)をエコー経路結合量推定部304に入力し、これらの信号のパワーPX、PYの比の極小値から、推定エコー経路結合量PHeを計算する。具体的には、所定期間毎にエコー重畳収録信号y(k)のパワーPYに対する再生信号x(k)のパワーPXの比を算出し、前回取得した比と今回取得した比とを比較して、小さい方を推定エコー経路結合量とする。そして、エコー抑圧ゲイン算出部305において、先ず、再生信号のパワーPXに推定エコー経路結合量PHeを乗じ、予測エコー信号パワーPBeを計算する。この予測エコー信号パワーPBeと、エコー重畳収録信号y(k)の短時間スペクトルYを用いて、エコー抑圧ゲインGを計算する。エコー抑圧ゲインGはエコー重畳収録信号y(k)に含まれる収録信号s(k)のパワー比率に等しく決定する。この値を、乗算器306でエコー重畳収録信号y(k)に乗じることにより、エコー信号b(k)を抑圧した処理信号Se(k)が得られ、周波数合成部403で時間領域の信号に変換することにより、エコー信号b(k)を抑圧して収録信号s(k)を強調した時間信号se(k)が得られる。
【0004】
以上の通りにして、収録信号s(k)にエコー信号b(k)が重畳されたエコー重畳収録信号y(k)からエコー信号b(k)だけを抑圧し、収録信号s(k)だけを強調して、受信側の送信端22から伝送路を経由して送信側の受信端12に送り出されることとなる。
一方、周波数領域でのエコー信号抑圧において、フレームシフト毎に一定数、2Nサンプル(Nは2以上の整数)からなるフレーム毎に各フレームのデータに窓関数を乗じて周波数領域に変換しエコー抑圧を行い、時間領域に逆変換した後にオーバーラップ加算処理済の信号を出力する技術が提案されている(特許文献2 参照)。
【0005】
この概略を図7を参照して説明するに、INPUT1およびINPUT2は、それぞれ、窓掛け演算処理ステップWIN1および窓掛け演算処理ステップWIN2の前段で実行されるフレーム生成ステップ1およびフレーム生成ステップ2を示す。OUTPUTは、時間領域逆変換ステップIFFTの後段で実行されるオーバーラップ加算処理ステップを示す。フレーム生成ステップ1の入力信号INSig1およびフレーム生成ステップ2のINSig2は、デジタル信号列を示す。これらデジタル信号列INSig1およびデジタル信号列INSig2から、サンプルデータが、例えば、512サンプル分の記憶容量を持つメモリに記憶される。メモリは最新のサンプルデータを書き込む際は、その書き込み位置が最も古いサンプルデータが記憶されているアドレスに選定される。従って、メモリに記憶されているサンプルデータは常時最新の512個サンプルのデータである。図7に示すNo.1は最も新しいサンプルデータの番号を示し、No.512は512個前にメモリに記憶されたサンプルデータを示している。KはK回目のフレーム生成処理ステップ、K+1はK+1回目のフレーム生成処理ステップを示す。
【0006】
前回No.768からNo.256までの512個のサンプルデータがメモリに記憶された時点で、これらNo.768からNo.256までの512個のデータを読み出し、1フレーム分のサンプルデータとして窓掛け演算処理ステップWIN1およびWIN2に引き渡す。窓掛け演算処理ステップWIN1およびWIN2では、例えば、ハニング窓関数の如き窓関数の窓掛け演算を行い、周波数領域変換ステップFFT1および周波数領域変換ステップFFT2に引き渡す。周波数領域変換ステップFFT1および周波数領域変換ステップFFT2は、512個分のサンプルデータを周波数領域係数に変換し、エコー抑圧ステップERはこれら変換データにエコー抑圧処理を施し、時間領域逆変換ステップIFFTはエコー抑圧処理を施されたデータに時間領域逆変換処理を施して時間領域の信号S1を出力する。
【0007】
メモリから1フレーム分のサンプルデータが読み出された後、メモリには引き続いて例えば16kHzの速度でサンプルデータが書き込み続けられる。最初の1フレーム分のサンプルデータが読み出された時点から更に256個分のサンプルデータNo.256からNo.1が書き込まれると、メモリの半分の領域のデータが書き換えられる。この時点でK+1回目の読み出しが実行され、窓掛け演算処理ステップWIN1およびWIN2で窓掛け演算処理を施されたNo.512からNo.1までのデータも周波数領域変換ステップFFT1および周波数領域変換ステップFFT2に送り込まれる。K+1回目に送り込まれた512個のサンプルデータは、周波数領域変換ステップFFT1および周波数領域変換ステップFFT2と、エコー抑圧ステップERと、時間領域逆変換ステップIFFTを経て、時間領域の信号S2として出力される。
【0008】
即ち、K+1回目の処理では、K回目に出力された信号S1のデータのより新しい後半の256個分のデータと、K+1回目に出力された信号S2のデータのより昔の前半の256個分のデータをオーバーラップ加算処理した信号OUTSigが出力される。信号OUTSigはその後にD/A変換部でアナログ信号に変換されて音声信号に再現される。
上述した通り、従来は、入力側において、メモリに256個のサンプルデータが書き込まれる度毎に1フレーム分のサンプルデータに対し窓掛け演算を行い周波数領域変換処理ステップFFT1および周波数領域変換処理ステップFFT2に送り出されるので、処理遅延は256個のサンプルデータを取り込む時間となる。
【0009】
更に、出力側においては、前後する2つのフレームをオーバーラップ加算処理して出力信号OUTSigを生成する。そのため、次回処理される信号が出力される256個分の時間を待った。出力側でも256個分の処理遅延が発生することになる。
結局、従来は入力側と出力側の双方で256個分のデータを処理する時間が掛かることになり、合計で512個分のデータを処理する時間が処理遅延時間となる。サンプリング周波数を16kHzとすれば512個分のサンプルデータを処理する時間は約32msとなる。
【0010】
【特許文献1】
特開2002−84212号 公報
【特許文献2】
特願2002−104363号 明細書
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
以上の従来例は、周波数領域のエコー抑圧処理であり、各帯域におけるエコーの比率に見合った損失を挿入してエコーを低減するため、非線形エコー抑圧処理でありながら双方向同時通話(ダブルトーク)時にも収録信号s(k)が途切れることなく、エコー信号b(k)だけを抑圧することができる。その代わりに、周波数領域に変換するためにフレーム単位の処理を行う必要がある。
即ち、周波数領域への変換を高速フーリエ変換を用いて実行する場合、FFT点数に対応するフレーム長Lは、時間および周波数分解能のトレードオフから、16kHzサンプリングの場合で512〜1024サンプル程度とするのが最も良く、この場合は、512サンプルから1024サンプルを蓄積するに要する時間32ms〜64ms程度の処理遅延が発生することになる。
【0012】
しかし、例えば、最近利用が拡大しているIP網を用いたハンズフリー拡声通話において、以上のエコー抑圧を用いる場合、ネットワークの伝送遅延を含めた一巡遅延が増大し、通話品質の劣化を引き起こす。また、TV会議におけるハンズフリー通話において上述のエコー抑圧を用いる場合にも同様に、一巡遅延を増大させるためにエコーが検知され易くなるという問題も生じる。
処理遅延を少なくするには、周波数領域に変換する際のフレーム長を短くする方法がある。しかし、この方法は周波数分解能が低下し、音声と雑音の分離性能が劣化するために、音声の歪み、抑圧量の低下が生じる。
この発明は、処理音声歪みの発生を抑え、エコー抑圧性能を保持したまま、処理遅延だけを削減することのできるエコー抑圧方法、装置、プログラムとその記憶媒体を提供するものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
再生信号に起因するエコー信号が収録信号に重畳して生じるエコーを抑圧するエコー抑圧方法において、再生信号および収録信号をそれぞれ所定のサンプル数ずつ記憶し、記憶されているサンプル中の最新のサンプル数が予め定めたサンプル数(予め定めたサンプル数N2<所定のサンプル数N1)に達する度毎に再生信号および収録信号を周波数係数に変換するための所定のサンプル数の長さの変換フレームをそれぞれ生成し、変換フレームの各サンプルデータをそれぞれ周波数領域に変換し、周波数領域で再生信号および収録信号の周波数係数を用いて収録信号からエコー信号を抑圧し、エコー信号が抑圧されたエコー抑圧済収録信号を時間領域に変換し、出力信号を生成するための所定のサンプル数の長さの加算フレームを生成し、加算フレームの予め定めたサンプル数のサンプルと、この加算フレームの1フレーム前の加算フレームの予め定めたサンプル数のサンプルをオーバーラップ加算して出力信号を生成するエコー抑圧方法を構成した。
【0014】
そして、再生信号に起因するエコー信号が収録信号に重畳して生じるエコーを抑圧するエコー抑圧装置において、再生信号および収録信号をそれぞれ所定のサンプル数N1ずつ記憶する再生信号記憶部103および収録信号記憶部108と、再生信号記憶部103および収録信号記憶部108に記憶したサンプル中の最新のサンプル数が予め定めたサンプル数N2(予め定めたサンプル数N2<所定のサンプル数N1 )に達する度毎に再生信号および収録信号をそれぞれ周波数係数に変換する再生信号変換フレーム生成部104および収録信号変換フレーム生成部109と、再生信号変換フレーム生成部104および収録信号変換フレーム生成部109のそれぞれが生成した再生信号変換フレームおよび収録信号変換フレームをそれぞれ周波数領域に変換する再生信号周波数領域変換部105および収録信号周波数領域変換部110と、周波数領域で再生信号および収録信号の周波数係数を用いて収録信号からエコー信号を抑圧するエコー抑圧部111と、エコー信号が抑圧されたエコー抑圧済収録信号を時間領域に変換する時間領域逆変換部112と、出力信号を生成するための予め定めたサンプル数の長さの加算フレームを生成する加算フレーム生成部113と、加算フレーム生成部113が生成した加算フレームを記憶する加算フレーム記憶部114と、加算フレーム生成部113が生成した加算フレームの予め定めたサンプル数N2 のサンプルと加算フレーム記憶部114に記憶した1フレーム前の加算フレームの予め定めたサンプル数N2 のサンプルをオーバーラップ加算して出力信号を生成する出力信号生成部115と、を具備するエコー抑圧装置を構成した。
【0015】
また、再生信号および収録信号をそれぞれ所定のサンプル数ずつ記憶し、記憶されているサンプル中の最新のサンプル数が予め定めたサンプル数(予め定めたサンプル数<所定のサンプル数)に達する度毎に再生信号および収録信号を周波数係数に変換するための所定のサンプル数の長さの変換フレームをそれぞれ生成し、変換フレームの各サンプルデータをそれぞれ周波数領域に変換し、周波数領域で再生信号および収録信号の周波数係数を用いて収録信号からエコー信号を抑圧し、エコー信号が抑圧されたエコー抑圧済収録信号を時間領域に変換し、出力信号を生成するための所定のサンプル数の長さの加算フレームを生成し、加算フレームの予め定めたサンプル数のサンプルと、この加算フレームの1フレーム前の加算フレームの予め定めたサンプル数のサンプルをオーバーラップ加算して出力信号を生成する、指令をコンピュータに対して実行するエコー抑圧プログラムを構成した。
更に、先のエコー抑圧プログラムを記憶した記憶媒体を構成した。
【0016】
【発明の実施の形態】
この発明は、再生信号に起因するエコー信号成分が収録信号に重畳して生じるエコーを抑圧するエコー抑圧方法であり、再生信号および収録信号をそれぞれ所定のサンプル数ずつ記憶し、記憶されているサンプル中の最新のサンプル数が予め定めたサンプル数Nに達する度毎に再生信号および収録信号を周波数領域係数に変換するための変換フレームをそれぞれ生成し、これらの変換フレームの各サンプルデータをそれぞれ周波数領域に変換し、周波数領域で再生信号の周波数領域係数を用いて収録信号に重畳するエコー信号を抑圧し、エコー信号が抑圧されたエコー抑圧済収録信号を時間領域に変換し、出力信号を生成する加算フレームを生成し、この加算フレームのNサンプルと、この加算フレームの1フレーム前の加算フレームのNサンプルをオーバーラップ加算して出力信号を生成するエコー抑圧方法を提供する。
【0017】
この発明は、また、再生信号に起因するエコー信号成分が収録信号に重畳して生じるエコー信号を抑圧するエコー抑圧装置であり、再生信号および収録信号をそれぞれ所定のサンプル数ずつ記憶する再生信号記憶部および収録信号記憶部を具備し、これらの再生信号記憶部および収録信号記憶部に記憶したサンプル中の最新のサンプル数が予め定めたサンプル数Nに達する度毎に再生信号および収録信号をそれぞれ周波数領域係数に変換する再生信号変換フレーム生成部および収録信号変換フレーム生成部を具備し、これらの再生信号変換フレーム生成部および収録信号変換フレーム生成部のそれぞれが生成した再生信号変換フレームおよび収録信号変換フレームをそれぞれ周波数領域に変換する再生信号周波数領域変換部および収録信号周波数領域変換部を具備し、周波数領域で再生信号の周波数領域係数を用いてエコー信号の重畳した収録信号からエコー信号を抑圧するエコー抑圧部とエコー信号が抑圧されたエコー抑圧済収録信号を時間領域に変換する時間領域逆変換部を具備し、出力信号を生成するための加算フレームを生成する加算フレーム生成部を具備し、この加算フレーム生成部が生成した加算フレームを記憶する加算フレーム記憶部を具備し、加算フレーム生成部が生成した加算フレームのNサンプルと加算フレーム記憶部に記憶した1フレーム前の加算フレームのNサンプルをオーバーラップ加算して出力信号を生成する出力信号生成部とを具備するエコー抑圧装置を提供する。
【0018】
この発明は、更に、コンピュータが読み取り可能な符号によって記述され、請求項1に記載されるエコー抑圧方法をコンピュータに実行させるエコー抑圧プログラムとその記憶媒体を提供する。
上述したこの発明によるエコー抑圧方法および装置によれば、変換フレーム生成部は再生信号記憶部および収録信号記憶部に記憶されている所定のサンプル数のサンプル中の最新のサンプル数が予め定めた数Nに達する度毎に入力信号を周波数領域に変換するための変換フレームを生成する。
最新のサンプル数Nを例えばN=32とすれば、変換フレーム生成部は、再生信号記憶部および収録信号記憶部に記憶されている例えば512サンプル中の最新のサンプル数が32サンプルに達する度毎に512サンプルで構成される変換フレームを生成する。即ち、変換フレーム生成部は再生信号記憶部および収録信号記憶部に32個のサンプルが取り込まれる度毎に512サンプルで構成される1フレーム分の変換フレームを生成する。32個のサンプルを蓄積する時間は約2msであるから、ここにおける処理遅延時間は約2msで済むことになる。
【0019】
2msの時間間隔で生成された変換フレームの各サンプルデータは周波数領域係数に変換され、周波数領域でエコー抑圧処理が施される。エコー抑圧処理を施した後の信号を時間領域に逆変換し、次いで加算フレーム生成部で時間領域に変換した処理済信号の最新(先頭)の値から2Nサンプル(64サンプル)過去までの値を切り取る。その切り取ったフレームに長さ64点の時間窓関数(例えばハニング窓関数)を掛ける。
次に、出力信号生成部で加算フレーム記憶部に記憶した長さ32サンプルの1処理ブロック前の加算フレームと、今回生成した現加算フレームの最新の値から32サンプル過去迄の値(長さ32サンプル)をオーバーラップさせて加算し、出力信号として出力する。今回生成した現加算フレームの後半の32サンプル分は加算フレーム記憶部に記憶し、次回のオーバーラップ加算処理に利用する。このオーバーラップ加算処理は32サンプル分の遅延(2ms)となり、合計して4msで済むことになる。
【0020】
この発明によれば、周波数領域に変換する際にNサンプルを蓄積するに要する時間と、Nサンプル分のデータをオーバーラップ加算処理するに要する時間の和はNサンプルの数を「32」とした場合、「4ms」となり、従来の処理遅延時間「32ms」と比較して約1/8に減少することになる。
この発明は、更に、周波数領域に変換するステップでは512サンプルを1フレームとして周波数領域変換部に投入するから、周波数分解能を充分に保ったままエコー抑圧処理を施すことができる利点が得られる。
【0021】
【実施例】
この発明の実施例を図1を参照して説明する。
図中100はこの発明によるエコー抑圧装置の全体を示す。再生信号入力端101および収録信号入力端106に入力された再生信号x(k)およびエコー重畳収録信号y(k)は、再生信号A/D変換部102および収録信号A/D変換部107でデジタル信号にそれぞれ変換される。この再生信号A/D変換部102および収録信号A/D変換部107は、サンプリング周波数16kHzで動作するものとして説明する。
再生信号A/D変換部102および収録信号A/D変換部107でデジタル信号に変換された再生信号x(k)およびエコー重畳収録信号y(k)はこの発明によるエコー抑圧装置100にそれぞれ入力される。この発明によるエコー抑圧装置100は、再生信号記憶部103および収録信号記憶部108、再生信号変換フレーム生成部104および収録信号変換フレーム生成部109、再生信号周波数領域変換部105および収録信号周波数領域変換部110、エコー抑圧部111、時間領域逆変換部112、加算フレーム生成部113、加算フレーム記憶部114、出力信号記憶部115によって構成される。
【0022】
再生信号記憶部103および収録信号記憶部108はメモリで構成され、従来の技術と同様に、最新の、例えば512個のサンプルデータを記憶する。
再生信号変換フレーム生成部104および収録信号変換フレーム生成部109は再生信号記憶部103および収録信号記憶部108に予め定めたN個のサンプルデータを含む512個のサンプルデータを1フレームとする変換フレームを生成する。図2に変換フレームの様子を示す。F1は前回に生成された変換フレーム、F2は現在生成された変換フレームを示す。前回生成された変換フレームF1と現在生成された変換フレームF2は、共に、その生成時点で最新のN個のサンプルデータを先頭に具備している。図2に示す例ではN=32とした場合を示す。即ち、再生信号変換フレーム生成部104および収録信号変換フレーム生成部109は再生信号記憶部103および収録信号記憶部108に32個のサンプルデータが書き込まれる度毎に、その32個のサンプルデータに続く全てのサンプルデータ、この例においては512個のサンプルデータ、を再生信号記憶部103および収録信号記憶部108から取り込み、変換フレームF1、F2、・・・・・を生成する。
【0023】
なお、ここで、先頭から256個目までのサンプルデータはそのまま入力信号の値で再生信号変換フレーム生成部104および収録信号変換フレーム生成部109に取り込み、それ以下のサンプルデータには「0」を代入した場合を示す。これは、入力信号の512サンプル全てを変換フレームに用いると、周波数変換の際に信号の冗長性に起因する悪影響が発生するため、ここでは半分以下の長さには「0」を代入する。
再生信号変換フレーム生成部104および収録信号変換フレーム生成部109で生成された変換フレームF1、F2、・・・は32サンプルの処理遅延時間、即ち、この例では2msの時間間隔で再生信号周波数領域変換部105および収録信号周波数領域変換部110に引き渡されて周波数領域係数に変換される。再生信号周波数領域変換部105および収録信号周波数領域変換部110は高速フーリエ変換部により構成する。
【0024】
次に、エコー抑圧部111でエコーを抑圧する。このエコー抑圧部111としては先の特許文献1に記載されるエコー抑圧装置その他の周知慣用の抑圧装置を適宜に適用することができる。エコー抑圧処理自体に関する説明は、エコー抑圧処理に要する処理遅延時間の削減を要旨とするこの発明と直接関連するものではないので、その詳細な説明は省略する。
時間領域逆変換部112はエコー抑圧処理を施された後の信号を時間領域の信号に逆変換するところである。
加算フレーム生成部113は、時間領域に変換した処理済信号の最新(先頭)の値から64サンプル過去までの値を切り取る。その切り取ったフレームに長さ64点の時間窓関数(例えばハニング窓関数)を掛ける。
【0025】
図3を用いてその様子を説明する。図3に示すオーバーラップ加算処理ステップOUTPUTにおいて、DAT1−1とDAT1−2は加算フレーム生成部113の処理により前フレームの先頭から64サンプルを切り取ったフレームに64点のハニング窓関数を掛けて生成した加算フレームを示す。また、DAT2−1とDAT2−2は、今回、加算フレーム生成部113の処理により次フレームの先頭から64サンプルを切り取ってハニング窓関数を掛けて生成した加算フレームを示す。これらの加算フレームDAT1−1とDAT1−2およびDAT2−1とDAT2−2は、それぞれ、自己のフレームと次のフレームの処理が終了するまで加算フレーム記憶部114に記憶される。
【0026】
出力信号生成部115は、今回加算フレーム生成部113が生成した加算フレームの中の前半の加算フレームDAT2−1と前フレームで生成された後半の加算フレームDAT1−2とをオーバーラップ加算し、出力信号として出力する。今回生成された加算フし一ムDAT2−2は次フレームで生成される加算フレームとの加算処理に使用される。
このオーバーラップ加算処理時に、ここでは32サンプル分の処理遅延(2ms)が発生する。図1の加算処理された出力信号d(k)は、出力D/A変換部116でアナログ信号に変換し、出力端117から出力される。
【0027】
以上の説明から明らかなように、この発明によれば再生信号記憶部103および収録信号記憶部108に予め定めた32サンプルが取り込まれる間の時間(2ms)と、出力側で行われるオーバーラップ加算処理により発生する上述した処理遅延(2ms)の和(4ms)が全ての処理遅延時間となる。その結果、512サンプルを単位として処理する場合の32msと比較して処理遅延は1/8に削減することができる。上述では予め定めたNサンプルの値を32サンプルとした場合を説明したが、この発明では32サンプルに限られるものではなく、1サンプルまで削減することができる。しかも、周波数領域への変換は512サンプル毎に処理する場合と同じであるため、音声歪みの発生やエコー抑圧量の低下もほぼない。なお、処理遅延時間の削減は、単位サンプル時間に対する演算処理量とのトレードオフの関係にある。
【0028】
[第1の適用例] ハンズフリー機能付き音声通信
クライアント・ソフトウェア
第1の適用例は、ハンズフリー機能付き音声通信クライアント・ソフトウェアであり、図4にその構成図を示す。A地点の話者の音声にはエコーが重畳してマイクロホン202に入力される。マイクロホン202により収録されたエコー重畳収録信号をこの発明によるエコー抑圧部200に入力し、エコーを抑圧して出力し、コーデック203に入力する。次いで、ネットワーク通信部204を介してネットワーク205に接続し、B地点、C地点、D地点の話者にエコーを抑圧した音声を送信することができる。
[第2の適用例] ハンズフリー通話装置
第2の適用例は、ハンズフリー通話装置であり、図5にその構成図を示す。ライン入力302に受信した相手側の音声信号はスピーカ201から拡声されてエコーとなり、マイクロホン202に収音される。同時に、話者の音声もマイクロホン202に収音される。エコー信号をエコー抑圧部200で抑圧し、ライン出力302′からはエコー信号のない音声信号を相手側に送信することができる。
【0029】
【発明の効果】
上述した通りであって、この発明のエコー抑圧方法および装置は、変換フレーム生成部は再生信号記憶部および収録信号記憶部に記憶されている所定のサンプル数のサンプル中の最新のサンプル数が予め定めた数Nに達する度毎に入力信号を周波数領域に変換するための変換フレームを生成する。
最新のサンプル数NをN=32とすれば、変換フレーム生成部は、再生信号記憶部および収録信号記憶部に記憶されている例えば512サンプル中の最新のサンプル数が32サンプルに達する度毎に512サンプルで構成される変換フレームを生成する。即ち、変換フレーム生成部は再生信号記憶部および収録信号記憶部に32個のサンプルが取り込まれる度毎に512サンプルで構成される1フレーム分の変換フレームを生成する。32個のサンプルを蓄積する時間は約2msであるから、ここにおける処理遅延時間は約2msである。そして、出力信号生成部で加算フレーム記憶部に記憶した長さ32サンプルの1処理ブロック前の加算フレームと、今回生成した現加算フレームの最新の値から32サンプル過去までの長さ32サンプルをオーバーラップさせ加算して出力信号として出力する。このオーバーラップ加算処理は32サンプル分の処理遅延、約2msとなる。即ち、この発明によれば、周波数領域に変換する際にNサンプルを蓄積するに要する時間と、Nサンプル分のデータをオーバーラップ加算処理するに要する時間の和は、Nサンプルの数を「32」とした場合に約4msとなり、従来の処理遅延時間32msと比較して、約1/8 に減少することになる。更に、周波数領域に変換するステップでは512サンプルを1フレームとして周波数領域変換部に投入するから、周波数分解能を充分に保ったままエコー抑圧処理を施すことができる利点が得られる。
【0030】
この発明によれば、結局、エコー抑圧処理において抑圧性能を保持したまま処置遅延を削減することができ、ハンズフリー拡声通信システムにおける一巡遅延の増加による通話品質の劣化を防ぎ、ハンズフリー通話装置におけるエコーが聞こえやすくなる悪影響を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例を説明する図。
【図2】変換フレーム生成の実施例を説明する図。
【図3】加算フレーム生成の実施例を説明する図。
【図4】第1の適用例を説明する図。
【図5】第2の適用例を説明する図。
【図6】従来例を説明する図。
【図7】周波数変換および逆変換の従来例を説明する図。
【符号の説明】
101 再生信号入力端 102 再生信号A/D変換部
103 再生信号記憶部 104 再生信号変換フレーム生成部
105 再生信号周波数領域変換部 106 収録信号入力端
107 収録信号A/D変換部 108 収録信号記憶部
109 収録信号変換フレーム生成部 110 収録信号周波数領域変換部
111 エコー抑圧部 112 時間領域逆変換部
113 加算フレーム生成部 114 加算フレーム記憶部
115 出力信号生成部 116 出力D/A変換部
117 出力端

Claims (4)

  1. 再生信号に起因するエコー信号が収録信号に重畳して生じるエコーを抑圧するエコー抑圧方法において、
    前記再生信号および収録信号をそれぞれ最新のものから所定のサンプル数ずつ記憶し、
    前記記憶したサンプル数N(2N<前記所定サンプル数)の最新の再生信号および最新の収録信号書き込まれる度毎に、前記記憶された前記Nサンプルの最新の再生信号および最新の収録信号をそれぞれ含む最新のものから前記所定のサンプル数の長さの再生信号および収録信号をそれぞれ再生信号変換フレームおよび収録信号変換フレームとしてそれぞれ生成し、
    前記再生信号変換フレームおよび前記収録信号変換フレームをそれぞれ周波数領域に変換し、
    前記周波数領域に変換した再生信号および収録信号の周波数係数を用いて収録信号からエコー信号を抑圧し、
    前記エコー信号が抑圧されたエコー抑圧済収録信号を前記所定のサンプル数の長さの時間領域の信号に変換し、
    前記所定のサンプル数の長さの時間領域の信号に、最新のものから前記予め定めたサンプル数の倍のサンプル数である2N個を取り出す時間窓関数を掛けたものを加算フレームとして生成し、
    前記サンプル数2Nの加算フレームの最新でない側のN個のサンプルと、1回前のサンプル数Nの加算フレームの最新側のN個のサンプルを対応するサンプル毎に加算してサンプル数Nの出力信号を生成することを特徴とするエコー抑圧方法。
  2. 再生信号に起因するエコー信号が収録信号に重畳して生じるエコーを抑圧するエコー抑圧装置において、
    前記エコー抑圧装置に入力された再生信号および収録信号をそれぞれ最新のものから所定のサンプル数ずつ記憶する再生信号記憶部および収録信号記憶部と、
    前記再生信号記憶部および前記収録信号記憶部に記憶したサンプル数N(2N<前記所定サンプル数)の最新の再生信号および最新の収録信号書き込まれる度毎に、前記再生信号記憶部および収録信号記憶部に記憶された前記Nサンプルの最新の再生信号および最新の収録信号をそれぞれ含む最新のものから前記所定のサンプル数の長さの再生信号および収録信号をそれぞれ再生信号変換フレームおよび収録信号変換フレームとして生成する再生信号変換フレーム生成部および収録信号変換フレーム生成部と、
    前記再生信号変換フレーム生成部および前記収録信号変換フレーム生成部のそれぞれが生成した前記再生信号変換フレームおよび前記収録信号変換フレームをそれぞれ周波数領域に変換する再生信号周波数領域変換部および収録信号周波数領域変換部と、
    前記再生信号周波数領域変換部および前記収録信号周波数領域変換部がそれぞれ周波数領域に変換した再生信号および収録信号の周波数係数を用いて収録信号からエコー信号を抑圧するエコー抑圧部と、
    前記エコー抑圧部でエコー信号が抑圧されたエコー抑圧済収録信号を前記所定のサンプル数の長さの時間領域の信号に変換する時間領域逆変換部と、
    前記時間領域逆変換部が生成した前記所定のサンプル数の長さの時間領域の信号に、最新のものから前記予め定めたサンプル数の倍のサンプル数である2N個を取り出す時間窓関数を掛けたものを加算フレームとして生成する加算フレーム生成部と、
    前記加算フレーム生成部が生成した加算フレームを記憶する加算フレーム記憶部と、
    前記加算フレーム生成部が生成したサンプル数2Nの加算フレームの最新でない側のN個のサンプルと前記加算フレーム記憶部に1回前に記憶した加算フレームの最新側のN個のサンプルを対応するサンプル毎に加算してサンプル数Nの出力信号を生成する出力信号生成部と、
    を具備することを特徴とするエコー抑圧装置。
  3. コンピュータを、
    再生信号および収録信号をそれぞれ最新のものから所定のサンプル数ずつ記憶する手段
    前記記憶されているサンプル数N(2N<前記所定サンプル数)の最新の再生信号および最新の収録信号書き込まれる度毎に、前記記憶された前記Nサンプルの最新の再生信号および最新の収録信号をそれぞれ含む前記所定のサンプル数の長さの再生信号および収録信号をそれぞれ再生信号変換フレームおよび収録信号変換フレームとしてそれぞれ生成する手段と
    前記再生信号変換フレームおよび前記収録信号変換フレームをそれぞれ周波数領域に変換する手段と
    前記周波数領域に変換した再生信号および収録信号の周波数係数を用いて収録信号からエコー信号を抑圧する手段と
    前記エコー信号が抑圧されたエコー抑圧済収録信号を前記所定のサンプル数の長さの時間領域の信号に変換する手段と、
    前記所定のサンプル数の長さの時間領域の信号に、最新のものから前記予め定めたサンプル数の倍のサンプル数である2N個を取り出す時間窓関数を掛けたものを加算フレームとして生成する手段と
    前記サンプル数2Nの加算フレームの最新でない側のN個のサンプルと、1回前のサンプル数Nの加算フレームの最新側のN個のサンプルを対応するサンプル毎に加算してサンプル数Nの出力信号を生成する手段として機能させるためのエコー抑圧プログラム。
  4. 請求項3に記載されるエコー抑圧プログラムを記憶した記憶媒体。
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