JP4118010B2 - アレーアンテナ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はビームステアリング可能なアレーアンテナに関し、特に平面回路により構成される給電線路上に取り付ける簡易な構造の誘電体移相器を用いたアレーアンテナに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、アレーアンテナでビームをステアリングするためには、各MSA素子毎に可変移相器を取り付けおり、また、前記各移相器のシフト量を適度に調整することによって所望のビーム角度を得ている。特に平面アレーアンテナの場合、アンテナと一体で作成可能な給電部である平面回路上に移相器を取り付ける方法が一般的である。
【0003】
平面回路に用いられる移相器は、シフト量が固定の移相器とシフト量を制御できる可変型移相器とがある。前記シフト量固定の移相器は、所望の遅延を与えるよう平面回路にプリントされる線路に冗長な部分を備え、その冗長部の線路長に応じた伝送遅延を与えることができる。
【0004】
一方、可変型移相器は数多くあるが、第1の例としてPINダイオード移相器がある。このPINダイオード移相器は、重量、寸法も小さく安価である。第二の例として、伝送線路に電圧制御可能な誘電体を回路構成する基板として用いる方法があり(特開平7−7303号公報)、また、誘電体基板に液晶を用いて同様の効果を得るという報告(九鬼、藤掛、曾山、野本、「液晶を用いたマイクロ波可変遅延線」、99年信学ソサイエティ大会、C−2−63、p−92.参照)もなされている。さらに、第三の例として、複数の線路上に誘電体を配した可変型移相器(特願2000−13278号公報)がある。これは誘電体基板上に構成された平行な線路の上に、三角形状の誘電体を取り付けて線路に位相差を与える誘電体移相器を実現している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、平面回路に予め位相差を組み込んだシフト量固定の移相器においては、位相を変化させるときに、新しく回路を構成することが必要になるため、アレーアンテナのビームを制御(ステアリング)することができない。また、シフト量を制御できる可変型移相器の第1の例として挙げたPINダイオード移相器は、挿入損失が大きいため、増幅器を付加する必要があり、回路は複雑になるという問題がある。さらに、可変型移相器の第二の例として挙げた電圧制御可能な誘電体を回路基板として用いる方法では、伝送線路を電圧制御可能な特殊な基板上に構成する必要があり、構造が複雑になるという問題がある。また、第三の例として挙げた可変型移相器では、位相調整のためには、主に誘電体の着脱や交換が必要となり、調整のためには多くの形状の誘電体を予め用意する必要がある。また、上記に挙げている構造をアレーアンテナに適用した場合、一次元的なビーム制御しかできない。
【0006】
本発明は、各MSA素子個別に位相制御をする必要がなく、また位相制御の操作に部品の着脱や交換の作業を省いた、二次元的にビーム制御(ステアリング)可能なアレーアンテナを実現するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、1つの分岐点を具備する給電線路と、前記各給電線路と接続されるアンテナ素子と、前記分岐点から放射状に分岐した3つ以上の前記給電線路の一部または全てを覆う単一の誘電体板を平面回路上に具備し、前記誘電体板を可動する手段によって、前記誘電体板が覆う前記複数の給電線路の長さを可変にすることを特徴とする。
【0008】
また、前記給電線路が1つ以上の分岐点を具備する放射状の平面回路で、前記誘電体板が放射状に分岐した3つ以上の給電線路の一部または全てを覆うことを特徴とし、また、前記誘電体が円板状で、前記放射状の給電線路の中心点が前記誘電体の円内に入る範囲で前記給電線路面を前記誘電体が移動することを特徴とする。
【0009】
また、前記誘電体を前記給電線路が互いに接続される点を中心として回転させることにより、前記各給電線路を覆う長さを可変とすることを特徴とし、また、前記誘電体は板状で、ある方向にアンテナビームを向けるのに必要な遅延量によって予め定められた長さで前記給電線路を覆う形状であることを特徴とする。
【0010】
また、前記給電線路の放射状方向へ、前記誘電体の縁の厚さがテーパ状に加工されていることを特徴とし、また、前記誘電体が円弧状の誘電体板であって、1つまたは2つ以上の円弧状誘電体板を円弧の中心を支点として回転させることにより、前記誘電体板の各給電線路を覆う長さを可変とすることを特徴とする。
【0011】
また、前記3つ以上に分岐した放射状の給電線路が、蛇行していることを特徴とし、また、前記分岐した3つ以上の線路に特定の遅延を与え、前記誘電体の場所によって厚みもしくは誘電率に変化をつけた誘電体板であって、前記給電線路の遅延量制御を、前記誘電体板の可動及び着脱により行うことを特徴としている。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の第1の実施形態を図1を用いて説明する。
【0013】
図1(a)は、本アンテナの上面図、図1(b)は、本アンテナの側面図、図1(c)は、本アンテナの下面図である。図1(a)に示すように、誘電体基板2には、MSA(マイクロストリップアンテナ)素子1がプリントされている。また、図1(b)に示すように、前記誘電体基板2と誘電体基板6との間には、地板導体3が形成され、この地板導体3に形成されたスロット4を有している。また、給電線路5がプリントされた前記誘電体基板6上には、移動可能な円盤状の誘電体板7が密着するように配置されている。前記MSA素子1は、前記給電線路5よりスロット4を介して給電されるようになっているスロット結合型MSA素子である。また、図1(c)に示すように、給電線路5は、前記誘電体基板6の中心より放射状に形成され、60゜の間隔で均等に給電線路5が配置されている。また、図1(b)に示すように、前記誘電体板7は前記誘電体基板6に密着させて配置される。さらに、給電線路5の放射状の中心点が、前記誘電体板7の円内に入る範囲で、給電線路面に沿って誘電体板7を移動させることができる。前記誘電体板7を誘電体基板6の中央に配置する場合は、各MSA素子1に同じ位相で給電されるが、誘電体板7を任意の方向に移動した場合、各線路毎に誘電体板7と交差する線路長が異なるために、各MSA素子1に異なる位相で給電されることになる。
【0014】
また、ビームの方向の制御可能な最大角度は、前記誘電体板7の円の中心が、給電線路5の放射状の中心と最も離れた場合に得られる角度(ビーム角度)である。MSA素子1の面の法線から、前述の最大角度離れた範囲の円内で本平面アレーアンテナのビームステアリング(ビーム制御)が実現される。
【0015】
次に図2(a)は、図1のアンテナ構造におけるビーム形状を計算した結果をグラフにした図であり、図2(b)は、誘電体基板6の中心からの移動量をΔxとしたときの誘電体板の図である。ここでは、例えば、誘電体基板6と誘電体板7は厚さ共に1.6mのものを用いており、前記誘電体板7全体を貫いている給電経路5の長さは60mm、誘電体板7の直径は30mmである。
【0016】
図2(a)では、誘電体板7の誘電率ε2=10の時に最大約4°、ε2=20の時に最大約6°の角度で指向性を変化させることができることを示している。また、本平面アレーアンテナは、アンテナ面の法線から前記の最大角度の範囲内で自由にビームの方向を変えることができ、簡易な構造で容易にビームステアリング可能なアンテナを実現することができる。
【0017】
次に、本発明の第2の実施形態を図3を用いて説明する。第2の実施の形態は、誘電体板の形状が第1の実施形態と相違している。また、図中において、同一部分は、第1の実施形態と同一符号を付してその説明を省略し、第3の実施形態以降においても同様である。
【0018】
図3に示すように、701は回転可能な板状の誘電体板であり、各MSA素子にビームを傾けるのに必要な遅延量を与えるために、その与える遅延量によって予め定められた長さで給電線路5を覆う形状となっている。また、前記誘電体板701を給電線路5が互いに接続される点を中心として回転させることによって、本平面アレーアンテナのビームの方向は、アンテナ面の法線方向と一定の角度を保ちながら連続的に変化する。誘電体板の詳細な構造を図3(b)に示す。誘電体の回転中心を原点とし、φはxy平面におけるx軸からの角度、r(φ)は原点からの誘電体縁までの距離で、本図形の原点からの最短距離をr0、最長の距離を(r0+r1)とすると、図形の形状は次のように規定される。
【0019】
r(φ)=r1(1+cosφ)+r0
このアンテナは、最適な位相差をMSA素子に与えることが可能なため、指向性制御による利得の低下を最低限に抑えることができる。また、ビームの方向の制御はアンテナ面の法線と一定角を保った条件内でのみ可能である。
【0020】
次に、本発明の第3の実施形態を図4を用いて説明する。まず、給電線路5が誘電体基板6の中心より放射状に形成され、図4に示すように、60°の間隔で均等に線路が構成されている。回転可能な板状の誘電体板702は、ある方向にビームを向けるのに必要な遅延を与えるために、その与える遅延量によって予め定められた長さで給電線路を覆う形状をとっている。誘電体板702を前記給電線路5が互いに接続される点を中心として回転させることによって、本平面アレーアンテナのビームの方向を制御する。また、上述の第2の実施形態では、アンテナ面の法線と一定角を保った円周方向でのみビーム制御が可能であったが、本実施形態は、図4のような花状の形状を取ることによって、第2の実施形態とほぼ同様な操作に加えてアンテナ面の法線との角度の制御を行うことができる。また、図4の状態から、誘電体板702を右回転させるとビームの方向はアンテナ面法線に近づき、回転角が60°に達すると再びビームと法線方向の角度が大きくなり、また、誘電体702を回転させた方向に60°の角度で向きを変える。さらに60°ずつ右回転させていくと同様の動作を行う。その結果、第2の実施形態よりも広い自由度でビームを制御することができる。一方、誘電体702の回転方向におけるビーム操作の方向は段階的なものとなる。例えば、図4の場合は6段階の形態を示している。
【0021】
次に、本発明の第4の実施形態を図5を用いて説明する。図5に示すように、第4の実施形態では、着脱、移動可能な円板状の誘電体板703を用いる。図5(a)は、アレーアンテナの側面図であり、前記円板状の誘電体板703の縁には厚みが変化するようにテーパがかけられているのがわかる。図5(b)は、下面図であり、テーパのかかった円板状の誘電体板703が、例えばこの場合は中央に配置されている。このようなテーパを施すことによって、誘電体板703の装着による給電線路5の反射特性の劣化を抑制することが可能となり、高誘電率の誘電体を用いても反射特性の劣化が抑制され、位相シフトの効果の大きい高誘電率誘電体の採用が可能となる。その結果、ビーム制御範囲が広く、かつ反射特性の改善を図った平面アレーアンテナが実現できる。
【0022】
次に、本発明の第5の実施形態を図6を用いて説明する。本実施形態では回転可能な板状の誘電体板704を用いる。図6(a)は、アレーアンテナの側面図であり、前記誘電体板704は、各MSA素子にビームを傾けるのに必要な位相差を与える形状をとり、かつ第4の実施形態と同様に縁には厚みが変化するようにテーパがかけてあるのがわかる。図5(b)は、下面図であり、このような形状にすることによって誘電体板704の装着による給電線路5の反射特性の劣化を抑制することが可能となり、従って、位相制御量を大きくすることができる高誘電率の誘電体の採用が可能となる。また、本アンテナは位相制御による利得低下を最低限に抑制することができるため、高誘電率の誘電体の採用が有効であり、そのため、他の例よりも広角でビームを制御することが可能である。一方、誘電体板の操作は原点を中心に回転させるだけなので、ビームの方向の制御はアンテナ面の法線と一定角を保った条件内でのみ可能である。
【0023】
次に、本発明の第6の実施形態を図7を用いて説明する。本実施形態では円弧状の誘電体板705を用い、6個の円弧状誘電体板705を配している。配置(a)では、放射状に分岐した全ての給電線路5と誘電体板705との交差長が等しいため、遅延が均等に与えられるようになっており、ビームはアンテナ正面方向に放射される。また、配置(b)では、右側の給電線路5に最も遅延が大きく左側の線路に対しては遅延を与えないようになっており、右側に行くに従って段階的に遅延を与えることが可能な配置であり、ビームの方向は傾く。さらに、配置(c)は、配置(b)よりも遅延差を少なく与えることが可能で、ビームの傾きは小さい。また、配置(d)は、右斜め上方向に遅延を与える配置で、ビームの傾く方向が(b)や(c)の給電線路5にそった方向ではなく、2つの線路の中間の方向になる。また、配置(a)〜(d)の誘電体全体を回転させることによって、さらに多様な方向にビームを向けることが可能である。
【0024】
本発明の第7の実施形態を図8を用いて説明する。第7の実施形態では、放射状に構成された蛇行した給電線路501を用いている。これによって、線路と誘電体の交差長を長く取ることが可能となるので、位相遅延のシフト量が大きくなる。したがって、ビームステアリング(制御)角度を大きくすることが可能となる。図9は、図8のアンテナ構造におけるビーム形状を計算したものをグラフに表した図である。アレーアンテナと誘電体板7の形状は、第1の実施形態に示す構造と同一であって、説明は省略する。グラフでは、前記誘電体板7の中心からの移動量Δx=15mmとし、誘電体板7の比誘電率ε2=20とし、給電線路5は蛇行によって第1の実施形態と比べて2倍の線路長を有する。また、約12°の角度でアンテナ正面から指向方向が変化しており、第1の実施形態よりも広い範囲でビームを制御可能である。本平面アレーアンテナは、アンテナ面の法線から前記の最大角度の範囲内で自由にビームの方向を変えることができる。
【0025】
次に、本発明の第8の実施形態を図10を用いて説明する。第8の第実施形態では、放射状に構成された蛇行した給電線路501を用いている。着脱、移動可能な円板状の誘電体板703の縁は厚みが変化するようにテーパがかけられている。これらによって、ビームステアリング(制御)角度がより大きく、かつ給電線路501の反射特性の劣化を抑制したアンテナを実現する。
【0026】
次に、本発明の参考実施形態を図11を用いて説明する。図11(a)に示すように、MSA素子1がプリントされている誘電体基板2の下には、回転可能であって厚みに連続的な変化を持つ誘電体板706が配置されており、また、図11(b)に示すように、前記誘電体板706のさらに下には、給電線路502がプリントされている誘電体基板6が配置されている。
【0027】
図11に示すように、誘電体基板2と誘電体基板6の間には地板(図示せず)があり、前記MSA素子1は、502の給電線路より、地板に設けられたスロットを介して給電される、スロット結合型MSA素子である。給電線路502は、給電点の中心より、二分岐による等分配を繰り返し、MSA素子1直下のスロットに達する。また、誘電体板706は誘電体基板6に密着させて配置される。これにより、誘電体板706の厚い部分では給電線路502に与えられる遅延が大きくなり、薄い部分では与えられる遅延が小さくなる。従ってMSA素子毎に段階的に遅延が与えられ、それによってビームの方向がアンテナ面法線より傾けられる。さらに、誘電体板706を回転させることによって、ビームの方向を法線と一定の角度を保ちながら誘電体板と共に回転させることができる。これによって本平面アレーアンテナのビームステアリングを実現できる。
【0028】
【発明の効果】
以上本発明によれば、MSA素子個別に位相制御をする必要の無い、簡易なビームステアリング可能なアレーアンテナを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る構成説明を示す図。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る平面アレーアンテナの指向性パターンの変化を示す図。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る構成説明を示す図。
【図4】本発明は第3の実施形態に係る構成説明を示す図。
【図5】本発明は第4の実施形態に係る構成説明を示す図。
【図6】本発明の第5の実施形態に係る構成説明を示す図。
【図7】本発明の第6の実施形態に係る構成説明を示す図。
【図8】本発明の第7の実施形態に係る構成説明を示す図。
【図9】本発明の第7の実施形態に係る平面アレーアンテナの指向性パターンを示す図。
【図10】本発明は第8の実施形態に係る構成説明を示す図。
【図11】本発明の参考実施形態に係る斜視図。
【符号の説明】
1・・・MSA素子、2、6・・・誘電体基板、3・・・地板、4・・・電磁結合給電用スロット、5・・・給電線路、7・・・ビームの方向制御用誘電体、501、502…給電線路、701、702、703、704、705、706…誘電体板

Claims (6)

  1. 1つの分岐点を具備する給電線路と、
    前記各給電線路と接続されるアンテナ素子と、
    前記分岐点から放射状に分岐した3つ以上の前記給電線路の一部または全てを覆う単一の誘電体板を平面回路上に具備し、
    前記誘電体板を可動する手段によって、前記誘電体板が覆う前記複数の給電線路の長さを可変にすることを特徴とするアレーアンテナ。
  2. 前記誘電体板が円板状で、前記放射状の給電線路の中心点が前記誘電体板の円内に入る範囲で前記給電線路面を前記誘電体板が移動することを特徴とする請求項1に記載のアレーアンテナ。
  3. 前記誘電体板を前記給電線路が互いに接続される点を中心として回転させることにより、前記各給電線路を覆う長さを可変とすることを特徴とする請求項1に記載のアレーアンテナ。
  4. 前記誘電体板は、ある方向にアンテナビームを向けるのに必要な遅延量によって予め定められた長さで前記給電線路を覆う形状であることを特徴とする請求項3に記載のアレーアンテナ。
  5. 前記給電線路の放射状方向へ、前記誘電体板の縁の厚さがテーパ状に加工されていることを特徴とする請求項2または3に記載のアレーアンテナ。
  6. 前記3つ以上に分岐した放射状の給電線路が、蛇行していることを特徴とする請求項2乃至5のいずれかに記載のアレーアンテナ。
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