JP4117588B2 - 内燃機関の着火時期検出装置 - Google Patents

内燃機関の着火時期検出装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関(エンジン)の筒内圧力を検出し、その検出圧力から着火時期を検出する内燃機関の着火時期検出装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
エンジンの着火時期は、エンジン出力、燃費及びエミッションに直接影響を与える制御パラメータである。一般に、着火時期は、エンジン運転条件、環境条件、燃料噴射系の経時変化等によって変化し、特に、ディーゼルエンジンでは、混合気を高圧縮して自己着火させるため、着火時期が変化しやすい傾向がある。従って、エンジン出力、燃費及びエミッションを向上するには、着火時期を制御する必要がある。
【0003】
そこで、ディーゼルエンジンでは、特開平9−68081号公報に示すように筒内圧力センサにより筒内圧力を検出し、この筒内圧力に基づいて燃焼(着火)による圧力上昇を検出することで、実際の着火時期を検出し、この着火時期を目標着火時期と一致させるように燃料噴射時期をフィードバック制御する技術が検討されている。
【0004】
しかし、ディーゼルエンジンは、圧縮比が大きく、筒内に多量の空気を吸入するため、筒内空気の圧縮圧力(以下「基準圧力」という)が燃焼による圧力上昇に比べて相対的に大きくなる。このため、筒内圧力の検出値から基準圧力を除去しないと、燃焼による圧力上昇を精度良く検出することができない。
【0005】
そこで、上記公報のものは、予め各クランク角での基準圧力を計算により求めてマップ等で記憶しておき、検出した筒内圧力から基準圧力を減算して基準圧力の影響を排除した燃焼圧力(燃焼による圧力上昇)を求め、この燃焼圧力が着火判定値を越えた時を着火時期と判定するようにしている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、基準圧力は一定ではなくエンジン運転条件等により変化し、特に過給機付きのエンジンではその変化が大きくなる傾向がある。従って、上記公報の技術において、正確な燃焼圧力を求めるには、検出した筒内圧力からその時のエンジン運転条件に応じた基準圧力を減算する必要がある。このため、予めエンジン運転条件毎に各クランク角での基準圧力を計算してマップ等で記憶しておく必要がある。しかし、刻々と変化する全てのエンジン運転条件に対して、その全ての基準圧力を予め計算で求めて記憶しておくことは事実上困難である。しかも、全てのエンジン運転条件の基準圧力に関する膨大なデータを記憶しておく必要があり、大容量のメモリが必要になってコストアップする欠点もある。
【0007】
本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、従ってその目的は、エンジン運転条件毎の基準圧力を予め計算してマップ等で記憶しておかなくても、エンジン運転中にエンジン運転条件に応じた基準圧力を簡単に求めることができ、この基準圧力を用いて筒内圧力の検出値から着火時期を精度良く検出することができる内燃機関の着火時期検出装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1の内燃機関の着火時期検出装置は、筒内圧力検出手段で過去に検出された非燃焼時の筒内圧力(以下「モータリング圧力」という)に基づいて、燃焼による圧力上昇を除いた現在の筒内空気の圧力(以下「基準圧力」という)を基準圧力算出手段で算出し、筒内圧力検出手段で検出した現在の筒内圧力(以下「検出圧力」という)と基準圧力とを比較して、着火時期検出手段によって着火時期を検出することを第1の特徴とし、更に、基準圧力を算出する際に、検出圧力とモータリング圧力との圧力比から求めた係数をモータリング圧力に乗算して基準圧力を算出することを第2の特徴とする。
【0009】
この場合、モータリング圧力は、あるエンジン運転条件における非燃焼時の筒内圧力、つまり燃焼による圧力上昇を除いた筒内空気の圧縮圧力である。従って、モータリング圧力は、それを検出した時のエンジン運転条件における基準圧力に相当することから、モータリング圧力検出時のエンジン運転条件と現在のエンジン運転条件との関係から、モータリング圧力をベースデータとして現在のエンジン運転条件における基準圧力を算出することができる。このため、本発明では、エンジン運転条件毎の基準圧力を予め計算してマップ等で記憶しておかなくても、エンジン運転中にその時のエンジン運転条件に応じた基準圧力を簡単に算出することができ、この基準圧力と検出圧力との比較から着火時期を精度良く検出することができる。しかも、エンジン運転条件毎の基準圧力に関する膨大なデータを記憶しておく必要がないため、大容量のメモリを必要とせず、その分、低コスト化できる。更に、基準圧力を算出する際のベースデータとなるモータリング圧力は、エンジン運転中に筒内圧力検出手段で検出するので、個々のエンジンの個体差によるモータリング圧力特性の違いにも対処できる。
【0010】
ここで、車両減速時や高回転時等に実施される燃料噴射カットは、筒内が非燃焼状態となるため、請求項2のように、筒内圧力検出手段によって燃料噴射カット時の筒内圧力をモータリング圧力として検出するようにすると良い。このようにすれば、エンジン運転中にモータリング圧力の検出のための非燃焼状態をわざわざ作り出す必要がなく、運転性を損なわずに、車両減速時等の燃料噴射カットを利用してモータリング圧力を検出することができる。
【0011】
また、請求項1に係る発明は、検出圧力とモータリング圧力との圧力比から求めた係数をモータリング圧力に乗算して基準圧力を算出するようにしている。つまり、モータリング圧力は、モータリング圧力検出時のエンジン運転条件における検出圧力(=モータリング圧力検出時の基準圧力)であることから、現在のエンジン運転条件における検出圧力とモータリング圧力(モータリング圧力検出時の検出圧力)との圧力比は、現在のエンジン運転条件における基準圧力とモータリング圧力検出時の基準圧力との圧力比を推定する有力なパラメータとなる。従って、この圧力比から求めた係数をモータリング圧力(=モータリング圧力検出時の基準圧力)に乗算すれば、現在のエンジン運転条件における基準圧力を簡単に算出することができる。
【0012】
この場合、請求項のように、検出圧力とモータリング圧力との圧力比を燃料着火前の少なくとも一点のクランク角において算出するようにすると良い。図2に示すように、燃料着火前であれば、燃焼による筒内圧力の上昇が生じないため、検出圧力と基準圧力とがほぼ一致する。従って、燃料着火前に圧力比を算出すれば、燃焼による圧力上昇の影響を全く受けない圧力比を算出することができ、燃料着火後のクランク角でも基準圧力を精度良く算出することができる。
【0013】
ところで、筒内圧力検出手段として用いられる筒内圧力センサは、温度等の使用条件によって出力特性にオフセット誤差が生じることがあり、これが着火時期の検出精度を低下させる原因となる。
【0014】
この対策として、請求項のように、筒内圧力検出手段により複数のクランク角で検出した複数の検出圧力に基づいて筒内圧力検出手段の出力特性のオフセット誤差を算出し、このオフセット誤差の分だけ筒内圧力検出手段の出力特性を補正するようにしても良い。このようにすれば、たとえ、筒内圧力検出手段の出力特性にオフセット誤差が生じたとしても、筒内圧力検出手段の出力からオフセット誤差を排除した補正値を用いて着火時期を精度良く検出することができる。
【0015】
また、請求項のように、燃料噴射カット毎に所定条件下で筒内圧力検出手段によりモータリング圧力を検出して該モータリング圧力の記憶値を更新するようにすると良い。このようにすれば、内燃機関の特性や筒内圧力検出手段の出力特性が経時変化したとしても、その経時変化に応じて更新した最新のモータリング圧力に基づいて基準圧力を精度良く算出することができ、経時変化による着火時期の検出精度の低下を防ぐことができる。
【0016】
また、筒内圧力検出手段の出力特性は、使用条件、経時変化等により圧力変化に対するゲイン(出力感度)が変化することがある。この対策として、請求項のように、筒内圧力検出手段により少なくとも一点のクランク角で検出したモータリング圧力をその標準値と比較することで筒内圧力検出手段の出力特性のゲイン誤差を求め、このゲイン誤差の分だけ筒内圧力検出手段の出力を補正するようにしても良い。このようにすれば、筒内圧力検出手段の出力特性にゲイン誤差が生じたとしても、筒内圧力検出手段の出力からゲイン誤差を排除した補正値を用いて着火時期を精度良く検出することができる。
【0017】
ところで、着火時期の検出方法は、例えば、検出圧力と基準圧力との比が着火判定値を越えた時を着火時期と判定するようにしても良いが、請求項のように検出圧力と基準圧力との差圧が着火判定値を越えた時を着火時期と判定するようにしても良い。検出圧力と基準圧力との差圧は、燃焼による圧力上昇分に相当するため、差圧から着火時期を精度良く検出することができる。
【0018】
ここで、検出圧力と基準圧力との差圧を所定のサンプリング間隔Δθ毎に算出するシステムでは、図6(a)に示すように、例えば、サンプリングタイミング角θf-1 で差圧ΔP(θf-1 )を算出した直後に着火が起った場合、次のサンプリングタイミング角θf (=θf-1 +Δθ)で算出した差圧ΔP(θf )が初めて着火判定値Fを越えることになる。この場合、サンプリングタイミング角θf を着火時期と判定すると、着火時期の検出値と実際の着火時期との間にずれが生じる。このため、サンプリング間隔Δθを大きくすると、着火時期の検出誤差が大きくなり、かといって、サンプリング間隔Δθを小さくすると、CPU負荷が増大する。
【0019】
この対策として、請求項のように、検出圧力と基準圧力との差圧を所定期間毎に算出する場合、着火判定値を越えた、連続する少なくとも2点の差圧を結ぶ特性線を求め、この特性線の延長線が着火判定値を越える時を着火時期と判定するようにしても良い。図6(b)に示すように、例えば、差圧ΔPが着火判定値Fを越えた後に算出した差圧ΔP(θf )とΔP(θf +Δθ)とを結ぶ直線を求め、この直線の延長線が着火判定値Fと交差するクランク角θffを着火時期と判定すれば、たとえ、サンプリング間隔Δθを大きくしても、実際の着火時期と着火時期の検出値とのずれ幅を小さくすることができ、着火時期を精度良く検出することができる。しかも、サンプリング間隔Δθを大きくできるため、CPU負荷も軽減できる。
【0020】
【発明の実施の形態】
[実施形態(1)]
以下、本発明を4気筒のディーゼルエンジンに適用した実施形態(1)を図1乃至図5に基づいて説明する。
【0021】
まず、図1に基づいてエンジン制御システム全体の構成を説明する。内燃機関であるディーゼルエンジン11の各気筒には、電磁弁式の燃料噴射弁12が取り付けられ、各燃料噴射弁12には、高圧ポンプ(図示せず)から高圧に畜圧された燃料がコモンレール13を通して分配される。このコモンレール13には、燃料噴射弁12に分配する燃料の圧力(コモンレール燃圧)を検出する燃圧センサ14が取り付けられている。また、ディーゼルエンジン11の1つの代表気筒には、筒内圧力を検出する筒内圧力センサ15(筒内圧力検出手段)が取り付けられている。
【0022】
更に、エンジン11のクランク軸20の近傍には、所定クランク角毎にパルス信号を出力するクランク角センサ16が設置され、カム軸(図示せず)の近傍には、気筒判別センサ17が設置されている。また、アクセルペダル(図示せず)には、アクセルセンサ等の負荷センサ18が設けられている。
【0023】
前述した各種センサの出力信号は、エンジン電子制御回路(以下「ECU」と表記する)19に入力される。このECU19は、マイクロコンピュータを主体として構成され、各種センサで検出したエンジン運転状態に基づいて燃料噴射量や燃料噴射時期を演算し、その演算結果に基づいて燃料噴射弁12を制御する。
【0024】
更に、ECU19は、燃料噴射カット時に所定条件下で筒内圧力センサ15によって検出した非燃焼時の筒内圧力(モータリング圧力)Pmに基づいて、燃焼による圧力上昇を除いた現在の筒内空気の圧縮圧力(基準圧力)Pbを算出する基準圧力算出手段として機能すると共に、筒内圧力センサ15で検出した筒内圧力(検出圧力)Pkと基準圧力Pbとの差圧(燃焼による圧力上昇)に基づいて着火時期を検出する着火時期検出手段として機能する。そして、ECU19は、検出した着火時期を目標着火時期に一致させるように燃料噴射弁12の噴射時期をフィードバック制御する。
【0025】
ここで、ECU19による着火時期の検出方法について説明する。
図2に示すモータリング圧力Pm(θ)の波形は、燃料噴射カット中に所定の運転条件が成立した時(例えばエンジン回転数が所定回転数Nとなった時)に、筒内圧力センサ15の出力を1サイクル(720℃A)分だけ読み込んで、ECU19内のバックアップRAM等の不揮発性メモリ(図示せず)に記憶したものである。このモータリング圧力Pm(θ)の波形は、所定走行時間T1(例えば100時間)経過毎に、燃料噴射カット中に所定の運転条件が成立した時に新たに検出し、記憶値を更新する。
【0026】
また、検出圧力Pk(θ)は、所定のサンプリング間隔Δθ(例えば1℃A)毎に筒内圧力センサ15によって検出する。
一方、基準圧力Pb(θ)は、モータリング圧力Pm(θ)と検出圧力Pk(θ)とから次のようにして算出する。
【0027】
燃料着火前における検出圧力Pk(θ)は、燃焼による圧力上昇を含まないため、基準圧力Pb(θ)とほぼ一致する。従って、着火前の圧縮行程に設定された算出クランク角θ0 における検出圧力Pk(θ0 )とモータリング圧力Pm(θ0 )との圧力比Hを次式により算出すれば、燃焼による圧力上昇の影響を全く受けない圧力比Hを算出することができる。
H=Pk(θ0 )/Pm(θ0 )
ここで、算出クランク角θ0 は、圧力比Hの算出精度を高めるために、できるだけ着火直前であることが好ましく、例えばBTDC10℃A(圧縮上死点前10℃A)に設定すると良い。また、着火前の一点のクランク角θ0 のみで圧力比Hを算出しても良いが、着火前の複数点のクランク角で圧力比Hを算出し、複数の圧力比Hの平均値を用いるようにしても良い。
【0028】
この算出クランク角θ0 以降の各クランク角θ毎に、モータリング圧力Pm(θ)に圧力比Hを掛け合わせることで、各クランク角θにおける基準圧力Pb(θ)を算出する。
Pb(θ)=H×Pm(θ)
これにより、基準圧力Pb(θ)を簡単に算出することができる。
【0029】
図4に示すように、圧力比Hを算出した算出クランク角θ0 以降のクランク角θにおいて、所定のサンプリング間隔Δθ毎に、検出圧力Pk(θ)と算出した基準圧力Pb(θ)との差圧ΔP(θ)を次式により算出する。
ΔP(θ)=Pk(θ)−Pb(θ)
この差圧ΔP(θ)は、燃焼による圧力上昇分に相当するため、この差圧ΔP(θ)を着火判定値Fと比較して、この差圧ΔP(θ)が着火判定値Fを越えたクランク角θf を着火時期と判定する。これにより、検出圧力Pk(θ)から燃焼による圧力上昇分のみを取り出して着火時期を精度良く検出できる。尚、着火判定値Fは、検出誤差を考慮して例えば100kPaに設定すれば良い。
【0030】
以上説明したECU19による着火時期の検出は、図5に示す着火時期検出プログラムにより実行される。本プログラムは、所定時間毎又は所定クランク角毎に実行され、筒内圧力センサ15が設けられた代表気筒の着火時期が検出される。本プログラムが起動されると、まず、ステップ101で、前回モータリング圧力Pm(θ)の波形を更新してからの積算走行時間が、所定時間T1(例えば100時間)を越えたか否かを判定する。もし、積算走行時間が所定時間T1に達していなければ、モータリング圧力Pm(θ)の波形を更新せず、そのままステップ105に進む。
【0031】
一方、積算走行時間が所定時間T1を越えていれば、ステップ102に進み、燃料噴射カット中に所定の運転条件が成立した時(例えばエンジン回転数が所定回転数Nとなった時)に、1サイクル分だけ筒内圧力センサ15の出力をモータリング圧力Pm(θ)として読み込み、ECU19の不揮発性メモリに記憶されたモータリング圧力Pm(θ)の記憶データを更新する。この後、ステップ103で、更新したモータリング圧力Pm(θ)のピーク圧Pmax が所定値Psよりも高いか否かを判定する。もし、ピーク圧Pmax が所定値Ps以下であれば、筒内圧力が異常低下していると判断して、ステップ104に進み、警告ランプ(図示せず)の点灯等により異常表示を行って筒内圧力の異常低下を運転者に知らせ、本プログラムを終了する。
【0032】
これに対して、ステップ103で、ピーク圧Pmax が所定値Psよりも高いと判定された場合は、筒内圧力が正常であると判断して、ステップ105に進む。このステップ105では、ECU19の不揮発性メモリに記憶されたモータリング圧力Pm(θ)の波形を読み出し、次のステップ106で、現在のクランク角θを算出クランク角θ0 (例えばBTDC10℃A)と比較し、算出クランク角θ0 に達するまで、ステップ106で待機する。その後、算出クランク角θ0 に達した時点で、ステップ107に進み、算出クランク角θ0 における検出圧力Pk(θ0 )とモータリング圧力Pm(θ0 )との圧力比Hを次式により算出し、ステップ106に戻る。
H=Pk(θ0 )/Pm(θ0 )
【0033】
この後、クランク角θが算出クランク角θ0 を越えた時に、ステップ106からステップ108に進み、算出クランク角θ0 以降の各クランク角θ毎に、モータリング圧力Pm(θ)に圧力比Hを乗算して各クランク角θの基準圧力Pb(θ)を次式により算出する。
Pb(θ)=H×Pm(θ)
この基準圧力Pb(θ)のデータは、本プログラムが終了するまでECU19内のRAM等のメモリに一時的に記憶しておく。
【0034】
基準圧力Pb(θ)の算出後、ステップ109に進み、算出クランク角θ0 以降のクランク角θ(以降θx と表記する)における差圧ΔP(θx )を次式により算出する。
ΔP(θx )=Pk(θx )−Pb(θx )
【0035】
この後、ステップ110に進み、差圧ΔP(θx )が着火判定値Fを越えたか否かを判定し、差圧ΔP(θx )が着火判定値F以下であれば、ステップ111に進み、現在のクランク角θx が着火検出終了クランク角θk を越えたか否かを判定する。この着火検出終了クランク角θk は、膨張行程終了付近のクランク角に設定されている。従って、正常に着火すれば、着火検出終了クランク角θk までに差圧ΔP(θx )が着火判定値Fを越える。
【0036】
上記ステップ111で、クランク角θx が着火検出終了クランク角θk を越えと判定されるまで、上述したステップ106→108→109→110の処理を繰り返して差圧ΔP(θx )を着火判定値Fと比較する処理を繰り返し、ステップ110で、差圧ΔP(θx )が着火判定値Fよりも大きいと判定された時点で、ステップ112に進み、着火と判定し、そのときのクランク角θf を着火時期と記憶して、本プログラムを終了する。
【0037】
一方、ステップ110で、差圧ΔP(θx )が着火判定値Fを越えたと判定されることなく、ステップ111でクランク角θx が着火検出終了クランク角θk を越えたと判定された場合は、失火と判断してステップ113に進み、失火表示して運転者に失火を知らせ、本プログラムを終了する。
【0038】
ところで、図3に破線で示す従来例のように、例えばエンジン低負荷時に対応した基準圧力を予め計算して記憶しておき、この基準圧力を全てのエンジン運転条件に適用すると、エンジン高負荷時では、基準圧力が実際の基準圧力と大きく異なってしまい、着火時期を誤検出する可能性がある。この対策として、予めエンジン運転条件毎に基準圧力を計算してマップ等で記憶しておき、エンジン運転条件に応じた基準圧力をマップ等から求めるようにすれば、着火時期の検出精度を向上できるが、刻々と変化する全てのエンジン運転条件に対して、その全ての基準圧力を予め計算で求めて記憶しておくことは事実上困難である。しかも、エンジン運転条件毎の基準圧力に関する膨大なデータを記憶しておく必要があり、大容量のメモリが必要になってコストアップする欠点もある。
【0039】
これに対し、本実施形態(1)では、図2に示すように、燃料着火前の算出クランク角θ0 における検出圧力Pk(θ0 )と、その時のエンジン運転条件の算出クランク角θ0 における基準圧力Pb(θ0 )とがほぼ一致する点に着目し、燃料着火前の算出クランク角θ0 における検出圧力Pk(θ0 )とモータリング圧力Pm(θ0 )との圧力比Hを算出することで、現在のエンジン運転条件における基準圧力Pbとモータリング圧力Pmとの圧力比Hを求め、算出クランク角θ0 以降の各クランク角θx 毎に、モータリング圧力Pm(θx )に圧力比Hを掛け合わせることで、各クランク角θx における基準圧力Pb(θx )を算出する。これにより、燃焼による圧力上昇の影響を全く受けない圧力比Hを用いて、燃料着火後のクランク角の基準圧力Pb(θx )を精度良く算出することができ、この基準圧力Pb(θx )と検出圧力Pk(θx )との差圧ΔP(θx )から着火時期を精度良く検出することができる。しかも、従来のようにエンジン運転条件毎の基準圧力を予め計算してマップ等で記憶しておく必要がないため、大容量のメモリを必要とせず、その分、低コスト化できる。
【0040】
また、上記実施形態(1)では、車両減速時等に実施される燃料噴射カット時に筒内圧力センサ15でモータリング圧力Pmを検出するので、個々のエンジンの個体差によるモータリング圧力特性の違いにも対処することができ、エンジンの個体差による着火時期の検出精度のばらつきを少なくすることができる。しかも、モータリング圧力Pmを所定時間T1経過毎に更新するので、エンジン特性や筒内圧力センサ15の出力特性が経時変化したとしても、その経時変化に応じて更新したモータリング圧力Pmに基づいて基準圧力Pbを精度良く算出することができ、経時変化による着火時期の検出精度の低下を防ぐことができる。
【0041】
尚、上記実施形態(1)では、モータリング圧力Pmを所定時間T1経過毎に更新するようにしたが、所定走行距離経過毎に更新するようにしても良い。
また、筒内圧力センサ15は、燃料噴射弁12やグロープラグ(図示せず)と一体型のものを用いるようにしても良い。
【0042】
また、上記実施形態(1)では、筒内圧力センサ15が設けられた代表気筒について着火時期の検出を行うようにしたが、筒内圧力センサ15を全気筒に設けて、各気筒毎に図5の着火時期検出プログラムを実行して、各気筒毎に着火時期を検出するようにしても良い。
【0043】
更に、上記実施形態(1)の着火時期の検出方法は、エンジン出力発生のためのメイン噴射に先立って行うパイロット噴射の着火時期の検出や、いわゆる「均一予混合燃焼システム」における圧縮行程前半での燃料噴射の着火時期の検出に適用しても良い。
【0044】
[実施形態(2)]
図6(a)に示すように、サンプリングタイミング角θf-1 の直後に着火が起った場合、次のサンプリングタイミング角θf (=θf-1 +Δθ)になった時に初めて差圧ΔP(θf )が着火判定値Fを越えたと判定される。この場合、サンプリングタイミング角θf を着火時期と判定すると、着火時期の検出値と実際の着火時期との間にずれが生じる。このため、サンプリング間隔Δθを大きくすると、着火時期の検出誤差が大きくなり、かといって、サンプリング間隔Δθを小さくすると、ECU19のCPU負荷が増大する。実際の着火時期のとのずれ幅が大きくなってしまう。
【0045】
このような事情を考慮して、本発明の実施形態(2)では、図6(b)に示すように、差圧ΔPが着火判定値Fを越えた領域において、サンプリングタイミング角θf での差圧ΔP(θf )と、その次のサンプリングタイミング角θf +Δθでの差圧ΔP(θf +Δθ)とを結ぶ差圧上昇直線A(特性線)を求め、この差圧上昇直線Aの延長線と着火判定値Fとの交点のクランク角θffを着火時期と判定する。これにより、たとえ、サンプリング間隔Δθを大きくしても、実際の着火時期と着火時期の検出値とのずれ幅を小さくすることができ、着火時期を精度良く検出することができる。しかも、サンプリング間隔Δθを大きくできるため、ECU19のCPU負荷も軽減できる。
【0046】
以上のような着火時期の補正は、図7に示す着火時期補正プログラムにより実行される。本プログラムが起動されると、まず、ステップ201で、差圧ΔPが着火判定値Fを越えたか否かを判定し、差圧ΔPが着火判定値Fを越えた時に、次のステップ202に進み、サンプリングタイミング角θf での差圧ΔP(θf )と、次のサンプリングタイミング角θf +Δθでの差圧ΔP(θf +Δθ)を算出する。
【0047】
この後、ステップ203に進み、差圧ΔP(θf )と差圧ΔP(θf +Δθ)とを結ぶ差圧上昇直線Aを求め、この差圧上昇直線Aと着火判定値Fとの交点のクランク角θffを求め、このクランク角θffを着火時期と判定する(ステップ204)。
【0048】
尚、上記実施形態(2)では、着火判定値Fを越えた、連続する2点のクランク角での差圧ΔPから差圧上昇直線Aを求めるようにしたが、連続する3点以上のクランク角での差圧ΔPから差圧上昇直線(又は差圧上昇曲線)を求めるようにしても良い。
【0049】
[実施形態(3)]
次に、本発明の実施形態(3)を図8乃至図11に基づいて説明する。
筒内圧力センサ15は、温度等の使用条件によって出力特性にオフセット誤差が生じることがあり[図8(a)参照]、これが着火時期の検出精度を低下させる原因となる。このオフセット誤差は、次のようにして求めることができる。
【0050】
ここで、オフセット誤差をb、着火前のクランク角θ1 ,θ2 (但し、θ1 <θ2 <θ0 )における検出圧力をそれぞれPs(θ1 ),Ps(θ2 )、真の筒内圧力をそれぞれPt(θ1 ),Pt(θ2 )とすると、次式のように表すことができる。
Ps(θ1 )=Pt(θ1 )+b ……(1)
Ps(θ2 )=Pt(θ2 )+b ……(2)
【0051】
また、クランク角θ1 からθ2 までの筒内空気の状態変化を断熱変化と仮定すると、次式のように表すことができる。
Pt(θ1 )×{V(θ1 )}γ =Pt(θ2 )×{V(θ2 )}γ
Pt(θ2 )/Pt(θ1 )={V(θ1 )/V(θ2 )}γ =K ……(3)
ここで、V(θ)は筒内容積、γは比熱比、KはV(θ)とγから決まる定数である。
【0052】
上記(1)〜(3)式を解くと、オフセット誤差bは次式により算出することができる。
b=1/(K−1)×{K×Ps(θ1 )−Ps(θ2 )} ……(4)
このオフセット誤差bを筒内圧力センサ15の出力から減算すれば、筒内圧力センサ15の出力のオフセット誤差を補正することができる。
【0053】
また、筒内圧力センサ15の出力特性は、使用条件、経時変化等により圧力変化に対するゲイン(出力感度)が変化することがあり(図9参照)、これによっても着火時期の検出精度が低下する。このゲイン誤差は、次のようにして求めることができる。
【0054】
ここで、ゲイン誤差をa、算出クランク角θ0 におけるモータリング圧力の標準値をPmt(θ0 )、モータリング圧力の検出値をPms(θ0 )とすると、次式のように表すことができる。尚、モータリング圧力の標準値Pmt(θ0 )は、算出クランク角θ0 における標準的なモータリング圧力であり、予め設計データに基づいて設定したり、或は、初期状態(劣化前)の筒内圧力センサ15で検出したモータリング圧力を用いるようにしても良い。
Pms(θ0 )=a×Pmt(θ0 )
【0055】
従って、ゲイン誤差aは次式により算出することができる。
a=Pms(θ0 )/Pmt(θ0 ) ……(5)
このゲイン誤差aで筒内圧力センサ15の出力を割り算することで、筒内圧力センサ15の出力のゲイン誤差を補正することができる。尚、モータリング圧力の検出値Pms(θ0 )は、エンジン回転数等のエンジン運転条件によって変化するため、標準値Pmt(θ0 )をエンジン運転条件毎に設定して、その時のエンジン運転条件に応じた標準値Pmt(θ0 )を選択するようにすると良い。
【0056】
本実施形態(3)では、ECU19は、図10及び図11に示す着火時期検出プログラムを実行することで、上記(4),(5)式を用いて筒内圧力センサ15の出力特性のオフセット誤差及びゲイン誤差を補正するオフセット誤差補正手段及びゲイン誤差補正手段として機能すると共に、オフセット誤差及びゲイン誤差を補正した差圧を用いて着火時期の検出を行う。
【0057】
図10及び図11の着火時期検出プログラムは、所定時間毎又は所定クランク角毎に実行される。本プログラムが起動されると、まず、ステップ301で、モータリング圧力Pm(θ)の波形を更新する。これにより、筒内圧力センサ15の出力特性の経時変化に対応してモータリング圧力Pm(θ)が更新される。尚、モータリング圧力Pm(θ)の更新は、前記実施形態(1)と同じく、燃料噴射カット中に所定の運転条件が成立した時に、1サイクル分だけ筒内圧力センサ15の出力を読み込み、ECU19の不揮発性メモリに記憶されたモータリング圧力Pm(θ)の記憶データを更新する。
【0058】
この後、ステップ302で、ECU19の不揮発性メモリに記憶されたモータリング圧力Pm(θ1 ),Pm(θ2 )を読み出し、モータリング圧力Pm(θ)のオフセット誤差bmを次式により算出する。
bm=1/(K−1)×{K×Pm(θ1 )−Pm(θ2 )}
【0059】
次のステップ303で、このオフセット誤差bmを用いてモータリング圧力Pm(θ)のオフセット誤差を次式により補正する。
Pm’(θ)=Pm(θ)−bm
このようにして求められたオフセット誤差補正後のモータリング圧力Pm’(θ)は、本プログラムが終了するまでECU19のRAM等のメモリに一時的に記憶しておく。
【0060】
この後、クランク角θがクランク角θ1 となった時に、検出圧力Pk(θ1 )を検出し、その後、クランク角θがクランク角θ2 となった時に、検出圧力Pk(θ2 )を検出し、検出圧力Pk(θ)のオフセット誤差bkを次式により算出する(ステップ304〜308)。
bk=1/(K−1)×{K×Pk(θ1 )−Pk(θ2 )}
【0061】
この後、クランク角θが算出クランク角θ0 となった時に、ステップ309からステップ310に進み、算出クランク角θ0 におけるオフセット誤差補正後のモータリング圧力Pm’(θ0 )と、算出クランク角θ0 におけるモータリング圧力の標準値Pmt(θ0 )とをECU19の不揮発性メモリから読み出し、ゲイン誤差aを次式により算出する。
a=Pm’(θ0 )/Pmt(θ0 )
この際、モータリング圧力の標準値Pmt(θ0 )は、エンジン運転条件に応じた値を選択できるするようにすると良い。
【0062】
次のステップ311で、オフセット誤差bkを用いて検出圧力Pk(θ0 )のオフセット誤差を次式により補正する。
Pk’(θ0 )=Pk(θ0 )−bk
【0063】
この後、ステップ312で、オフセット誤差補正後の検出圧力Pk’(θ0 )とオフセット誤差補正後のモータリング圧力Pm’(θ0 )との圧力比H’を次式により算出する。
H’=Pk’(θ0 )/Pm’(θ0 )
【0064】
この後、クランク角θが算出クランク角θ0 を越えた時に、ステップ309からステップ313に進み、オフセット誤差bkを用いて検出圧力Pk(θ)のオフセット誤差を次式により補正する。
Pk’(θ)=Pk(θ)−bk
【0065】
次のステップ314で、オフセット誤差補正後の基準圧力Pb’(θ)を次式により算出する。
Pb’(θ)=H’×Pm’(θ)
【0066】
次のステップ315で、ゲイン誤差aを用いて、オフセット誤差補正後の検出圧力Pk’(θ)と基準圧力Pb’(θ)との差圧ΔP’(θ)のゲイン誤差を次式により補正する。
ΔP’(θ)=1/a×{Pk’(θ)−Pb’(θ)}
このようにして算出された差圧ΔP’(θ)は、オフセット誤差とゲイン誤差の両方が補正された値となる。
【0067】
この後、ステップ316で、差圧ΔP’(θ)が着火判定値F’を越えたか否かを判定し、差圧ΔP’(θ)が着火判定値F以下であれば、上述したステップ309→313→314→315→316の処理を繰り返して差圧ΔP’(θ)を着火判定値Fと比較する処理を繰り返実行する。
【0068】
その後、ステップ316で、差圧ΔP’(θ)が着火判定値F’を越えたと判定されたときに、ステップ317に進み、着火と判定し、そのときのクランク角θ’f を着火時期と記憶して、本プログラムを終了する。
【0069】
以上説明した実施形態(3)では、使用条件や経時変化によって筒内圧力センサ15の出力にオフセット誤差やゲイン誤差が発生しても、そのオフセット誤差やゲイン誤差を求めて、検出圧力、モータリング圧力及び差圧を補正するので、筒内圧力センサ15の出力のオフセット誤差やゲイン誤差を取り除いたデータを用いて着火時期を検出することができ、より高精度な着火時期の検出が可能である。
【0070】
尚、上記実施形態(3)では、一点のクランク角θ0 におけるモータリング圧力の標準値Pmt(θ0 )を記憶しておき、一点のクランク角θ0 でゲイン誤差aを求めたが、モータリング圧力の標準値Pmt(θ)の波形を記憶しておき、2点以上のクランク角でゲイン誤差を求め、それらの平均値をゲイン誤差として用いるようにしても良い。
【0071】
また、上記実施形態(3)では、検出圧力とモータリング圧力の両方のオフセット誤差を補正した後、オフセット誤差補正後の検出圧力と基準圧力との差圧のゲイン誤差を補正するようにしたが、これとは反対に、ゲイン誤差を補正してから、オフセット誤差を補正するようにしても良く、また、筒内圧力センサ15の出力を読み込む段階で、オフセット誤差とゲイン誤差の両方を補正するようにしても良く、要は、差圧を着火判定値と比較するまでに、オフセット誤差とゲイン誤差を補正すれば良い。或は、オフセット誤差とゲイン誤差の一方のみを補正するようにしても良い。
【0072】
[実施形態(4)]
次に、本発明の実施形態(4)を図12乃至図16に基づいて説明する。本実施形態(4)では、図12に示すように、前記実施形態(1)の図1で説明したシステム構成に加えて、エンジン11の排気管21に、NOx触媒22が設けられている。このNOx触媒22は、セラミックや金属等の担体の表面に、酸素過剰雰囲気中でも還元剤(HC)の存在下でNOx(窒素酸化物)を還元浄化可能な触媒成分(例えばCu−ゼオライトやPt−ゼオライト)を担持したものである。
【0073】
燃料噴射弁12は、図13に示すように、圧縮上死点近傍でエンジン出力発生のためのメイン噴射を行うと共に、このメイン噴射に先立ち、パイロット噴射を行う。更に、メイン噴射後の膨張行程(例えばATDC90〜180℃A)において、ポスト噴射を行って少量の燃料(例えばメイン噴射の1〜5%)を噴射し、還元剤としての燃料(HC)をNOx触媒22に供給する。
【0074】
通常、ポスト噴射は、シリンダ内温度が燃料の燃焼温度より低い時期に実施されるため、ポスト噴射した燃料は、燃焼することなく、シリンダ内の燃焼熱により適度に熱分解(改質)されて、反応性の高い(分子量が小さい)低沸点HCに変化する。これにより、NOx触媒22での反応量を増加させてNOx浄化率を高める。
【0075】
しかし、エンジン出力が大きい場合には、シリンダ内温度が高くなるため、ポスト噴射した燃料がシリンダ内で燃焼して、NOx触媒22ヘ供給されなくなり、NOx浄化率が低下してしまう。
【0076】
これを防止するには、ポスト噴射時期を遅角すれば良いが、遅角し過ぎると、シリンダ内温度が低くなりすぎて、ポスト噴射した燃料が十分に熱分解されないため、反応性の低い(分子量が大きい)高沸点HCの割合が多くなってしまい、NOx浄化率が低下してしまう。
【0077】
そこで、本実施形態(4)では、ポスト噴射燃料が着火(燃焼)した場合、図15に示すように、検出圧力Pkと基準圧力Pbの差圧ΔPが上昇する点に着目して、図16に示すポスト噴射時期補正プログラムを実行することで、検出圧力Pkと基準圧力Pbの差圧ΔPに基づいてポスト噴射燃料の着火の有無を判定し、それに応じてポスト噴射時期を補正する。
【0078】
図16のポスト噴射時期補正プログラムは、クランク角θがポスト噴射燃料の燃焼可能範囲θA 〜θB (例えばATDC90〜180℃A)にある場合のみに着火の有無を判定する。つまり、θA 〜θB の範囲内に着火時期があるか否かを判定する。
【0079】
本プログラムが起動されると、まずステップ401で、クランク角θがクランク角θA 以上か否かを判定し、クランク角θA 以上となったときに、ステップ402に進み、例えば実施形態(1)と同じ方法で、検出圧力Pkと基準圧力Pbの差圧ΔP(θ)を算出し、次のステップ403で、今回算出した差圧ΔP(θ)と前回算出した差圧ΔP(θ−1)との差が着火判定値ΔP1よりも大きいか否かを判定する。
【0080】
もし、ΔP(θ)−ΔP(θ−1)が着火判定値ΔP1以下であれば、ステップ404に進み、クランク角θがクランク角θB 以上か否かを判定し、θ<θB と判定される毎に、上述したステップ402,403を繰り返し実行する。そして、θ≧θB に達するまでに、ステップ403で、ΔP(θ)−ΔP(θ−1)が着火判定値ΔP1よりも大きいと判定されれば、ステップ405に進み、ポスト噴射燃料が着火(燃焼)していると判定する。この場合、NOx触媒22ヘHCが供給されなくなってしまうため、ステップ406に進み、ポスト噴射時期を遅角する。これにより、ポスト噴射時のシリンダ内温度が下がるため、ポスト噴射燃料の燃焼が抑えられる。
【0081】
一方、ステップ403で、ΔP(θ)−ΔP(θ−1)が着火判定値ΔP1より大きいと判定されることなく、θ≧θB となった場合は、ステップ404からステップ407に進み、ポスト噴射燃料は着火(燃焼)していないと判定する。しかし、ポスト噴射時期が遅すぎると、シリンダ内温度が低すぎて、ポスト噴射燃料が十分に熱分解されないため、高いNOx浄化率を得ることができない。従って、ポスト噴射燃料が着火(燃焼)していない場合は、ステップ408で、ポスト噴射時期を進角する。これにより、ポスト噴射時のシリンダ内温度が上がるため、ポスト噴射燃料の熱分解が促進され、NOx浄化率が高められる。
【0082】
以上のようにすれば、ポスト噴射時期がポスト噴射燃料が着火し始める直前の時期に補正され、ポスト噴射燃料は、ほとんど燃焼することなく、最も効率良く熱分解されるため、反応性の高いHCをNOx触媒22に供給することができ、NOx浄化率を向上させることができる。
【0083】
尚、上記各実施形態(1)〜(4)では、本発明をコモンレース式の噴射システムをもつ4気筒のディーゼルエンジンに適用したが、コモンレール式以外の噴射システムのディーゼルエンジンや4気筒以外のディーゼルエンジンに本発明を適用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態(1)におけるシステム全体の概略構成を示す図である。
【図2】検出圧力と基準圧力とモータリング圧力の波形を示す図である。
【図3】実施形態(1)と従来の方法について検出圧力と基準圧力の特性を説明する図で、(a)はエンジン低負荷時の図、(b)はエンジン高負荷時の図である。
【図4】着火時期の検出方法を説明するための図である。
【図5】実施形態(1)の着火時期検出プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】(a),(b)は、実施形態(2)における着火時期検出の補正方法を説明するための図である。
【図7】実施形態(2)の着火時期検出補正プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】(a)はオフセット誤差補正前の筒内圧力センサの出力特性を示す図、(b)はオフセット誤差補正後の筒内圧力センサの出力特性を示す図である。
【図9】筒内圧力センサの出力特性のゲイン誤差について説明するための図である。
【図10】実施形態(3)の着火時期検出プログラムの処理の流れを示すフローチャート(その1)である。
【図11】実施形態(3)の着火時期検出プログラムの処理の流れを示すフローチャート(その2)である。
【図12】実施形態(4)におけるシステム全体の概略構成を示す図である。
【図13】パイロット噴射、メイン噴射、ポスト噴射のタイミングを示すタイムチャートである。
【図14】シリンダ内温度の変化特性を示す図である。
【図15】ポスト噴射燃料の着火時期の検出方法を説明するための図である。
【図16】実施形態(4)のポスト噴射時期補正プログラム処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
11…ディーゼルエンジン(内燃機関)、12…燃料噴射弁、15…筒内圧力センサ(筒内圧力検出手段)、16…クランク角センサ、19…ECU(基準圧力算出手段,着火時期検出手段,オフセット誤差補正手段,ゲイン誤差補正手段)、22…NOx触媒。

Claims (8)

  1. 内燃機関の筒内圧力を筒内圧力検出手段で検出し、その検出値に基づいて着火時期を検出する内燃機関の着火時期検出装置において、
    前記筒内圧力検出手段で過去に検出された非燃焼時の筒内圧力(以下「モータリング圧力」という)に基づいて、燃焼による圧力上昇を除いた現在の筒内空気の圧力(以下「基準圧力」という)を算出する基準圧力算出手段と、
    前記筒内圧力検出手段で検出した現在の筒内圧力(以下「検出圧力」という)と前記基準圧力とを比較して着火時期を検出する着火時期検出手段とを備え
    前記基準圧力算出手段は、前記検出圧力と前記モータリング圧力との圧力比から求めた係数を前記モータリング圧力に乗算して前記基準圧力を算出することを特徴とする内燃機関の着火時期検出装置。
  2. 前記筒内圧力検出手段は、燃料噴射カット時の筒内圧力を前記モータリング圧力として検出することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の着火時期検出装置。
  3. 前記基準圧力算出手段は、前記圧力比を燃料着火前の少なくとも一点のクランク角で算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関の着火時期検出装置。
  4. 前記筒内圧力検出手段により複数のクランク角で検出した複数の検出圧力に基づいて前記筒内圧力検出手段の出力特性のオフセット誤差を算出し、このオフセット誤差の分だけ前記筒内圧力検出手段の出力特性を補正するオフセット誤差補正手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の内燃機関の着火時期検出装置。
  5. 燃料噴射カット毎に所定条件下で前記筒内圧力検出手段により前記モータリング圧力を検出して該モータリング圧力の記憶値を更新するモータリング圧力更新手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の内燃機関の着火時期検出装置。
  6. 前記筒内圧力検出手段により少なくとも一点のクランク角で検出した前記モータリング圧力をその標準値と比較することで前記筒内圧力検出手段の出力特性のゲイン誤差を求め、このゲイン誤差の分だけ前記筒内圧力検出手段の出力特性を補正するゲイン誤差補正手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の内燃機関の着火時期検出装置。
  7. 前記着火時期検出手段は、前記検出圧力と前記基準圧力との差圧が着火判定値を越えた時を着火時期と判定することを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の内燃機関の着火時期検出装置。
  8. 前記着火時期検出手段は、前記検出圧力と前記基準圧力との差圧を所定期間毎に算出し、前記着火判定値を越えた、連続する少なくとも2点の差圧を結ぶ特性線を求め、この特性線の延長線が前記着火判定値を越える時を着火時期と判定することを特徴とする請求項に記載の内燃機関の着火時期検出装置。
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