JP4117475B2 - プライマーセット及び細菌の検出方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主に酸性食品の細菌汚染検査に用いられるPCRプライマーセット及びそのプライマーセットを用いた細菌の検出方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
乳酸菌は乳糖やブドウ糖を分解して乳酸をつくる細菌の総称であり、ヨーグルトや発酵乳等の食品の製造に活用されている。その乳酸菌の中で、自然界のあらゆるところに生息するグラム陽性通性嫌気性細菌の一部の細菌群は、加工食品等に汚染し、風味の劣化や食品収納密閉容器の膨化等を引き起こす原因菌として知られている(J. Appl. Bacteriol. 34:541-545(1971), Dakin J. C. and J. Y. Radwell; Lactobacilli causing spoilage of acetic acid preserves.; Int. J. Food Microbiol. 64:355-360(2001), Lyhs U., H. Korkeala H., P. Vandamme, and J. Bjorkroth; Lactobacillus alimentarius: a specific spoilage organism in marinated herring.)。
【0003】
マヨネーズや食酢のような低pH食品では、含有される酢酸の静菌作用により、一般的な汚染菌の増殖による食品腐敗は制御されている。しかし、このような酢酸等による低pH環境下においても増殖可能で、食品の腐敗、汚染原因となる乳酸菌(酢酸耐性乳酸菌群に属する細菌)が存在する。低pH食品製造事業所等で危機管理の対象菌となっている代表的な酢酸耐性乳酸菌群に属する細菌としては、具体的にはラクトバチルスフラクチボランス(Lactobacillus fructivorans)、ラクトバチルスブレビス(L. brevis)、ラクトバチルスブチェネリ(L. buchneri)、ラクトバチルスプランタラム(L. plantarum)、ラクトバチルスパラカゼイ(L. paracasei)の5菌種が挙げられる(「食品の腐敗変敗防止対策ハンドブック」、株式会社サイエンスフォーラム発行)。これらの酢酸耐性乳酸菌群に属する細菌は、いずれもラクトバチラレス(Lactobacillales)目; ラクトバチラセ(Lactobacillaceae)科に属する。
【0004】
これら酢酸耐性乳酸菌群に属する細菌群を迅速かつ精度よく検出することは、低pH食品の製品や製造工程における品質管理手法を開発する上で非常に重要である。
【0005】
従来主に、Lactobacilli MRA Broth[Difco Laboratories Inc. (BD Difco)]寒天培地のようなラクトバチルス属細菌を選択的に培養できる培地を用いることにより低pH食品の乳酸菌汚染の有無が判定されている。しかし、酢酸耐性乳酸菌群に属する細菌はいずれも増殖速度が遅いため、この方法では、細菌が視覚的に確認可能なコロニーにまで増殖するのに通常3〜5日間の培養時間を要し、即ち汚染状況の把握に長時間を要するという問題がある。
【0006】
そこで、迅速な細菌検出方法としてPCRを行うことが考えられる。乳酸菌をPCR法で検出するためのプライマーとしては、特許文献1、2又は3に記載のプライマーが知られている。しかし、これらは特定の乳酸菌の16SrRNA遺伝子に由来するDNAを認識できるプライマーであり、低pH食品の汚染菌として問題となる酢酸耐性乳酸菌群に属する細菌の有無を一度に検出できるものではない。
【0007】
一方、広範囲な細菌を一度に検出できるプライマーとして非特許文献1又は2に記載されたプライマーが知られている。しかし、これらはいずれも細菌一般、グラム陽性菌又はグラム陰性菌のように極めて広範囲の細菌種を対象としているため、酢酸耐性乳酸菌群に属する細菌に汚染されているか否かの判断には用い難い。しかもこれらのプライマーは植物のクロロプラストのDNAも認識するため、食品の検査には使用し難い(本明細書の表1参照)。
【0008】
【特許文献1】
特開平07-289295号公報(段落0029、0031等)
【0009】
【特許文献2】
特開平11-151097号公報(段落0060、配列1〜21等)
【0010】
【特許文献3】
特開2003-255号公報(請求項1、請求項2、段落0055等)
【0011】
【非特許文献1】
J. Dent. Res. 78:850-856(1999)Rupf, S., K. Merte, and K. Eschrich;Qu antification of bacteria in oral samples by competitive polymerase chain reaction. (第851頁等)
【0012】
【非特許文献2】
J. Clin. Microbiol. 37:464-466(1999),Klausegger, A., M. Hell, A. Berger, K. Zinober, S. Baier, N. Jones, W. Sperl, and B. Kofler; Gram type-specific broad-range PCR amplification for rapid detection of 62 pathogenic bacteria. (第464〜465頁等)
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、酢酸耐性乳酸菌群に属する細菌を迅速かつ精度よく検出できるPCR用プライマーセット及び酢酸耐性乳酸菌群に属する細菌を迅速かつ精度よく検出できる方法を提供することを主目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために本発明者は研究を重ね、酢酸耐性乳酸菌群に属する細菌の16SrRNA遺伝子の塩基配列を確認し、また公共のDNAデータベースに収録されているその他の細菌の16SrRNA遺伝子、細菌以外の原生生物の16SrRNA遺伝子、食品中に含まれる植物又は動物のミトコンドリアの16SrRNA遺伝子、植物のクロロプラストの16SrRNA遺伝子を確認し、さらにこれらの遺伝子のアラインメント解析を行うことにより、以下の知見を得た。
▲1▼ 酢酸耐性乳酸菌群に属する細菌は、特徴的な塩基配列として、16SrRNAをコードするDNA(16SrDNA)分子中に配列番号3の塩基配列(5'-CTTGAGTGCAGAAGAGGAC-3')及び配列番号4の塩基配列(5'-GAGGGTTTCCGCCCTTCA-3')を有する。この配列は、酢酸耐性乳酸菌群及びこれに類縁のラクトバチルス属に属する一部細菌の16SrRNAに特異的な塩基配列であり、ラクトバチルス属細菌以外の細菌、その他の原生生物、植物、動物等には実質的に存在しない。従って、配列番号3の塩基配列及び配列番号4の塩基配列を有するDNAの2本鎖を認識して増幅できるPCRプライマーセットを用いることにより、酢酸耐性乳酸菌群に属する細菌を検出でき、さらにラクトバチルス属細菌中の酢酸耐性乳酸菌群の類縁細菌を特異的に検出できる。
▲2▼ 配列番号3の塩基配列及び配列番号4の塩基配列を有するDNAを認識して増幅できるプライマーセットとしては、配列番号1の塩基配列(5'- CTTGAGTGCAGAAGAGGAC-3')からなるプライマーと他のプライマーとのセット、配列番号2の塩基配列(5'-TGAAGTGCGGAAACCCTC-3')からなるプライマーと他のプライマーとのセット、好ましくは、配列番号1の塩基配列からなるプライマーと配列番号2の塩基配列からなるプライマーとのセットが挙げられる。
【0015】
配列番号1の塩基配列からなるプライマーは、配列番号3に相補的な配列部分にハイブリダイズでき、配列番号2の塩基配列からなるプライマーは、配列番号4の配列部分にハイブリダイズできるものである。
【0016】
本発明は上記知見に基づき完成されたものであり、以下のプライマーセット、プライマー及び細菌の検出方法を提供する。
【0017】
項1. 所定条件のPCRに供されることにより酢酸耐性乳酸菌群に属する細菌の16SrRNA遺伝子を検出可能に増幅するが、同じ条件のPCRに供されることにより、実質的にラクトバチルス属細菌以外の生物の16SrRNA遺伝子を検出可能に増幅しないプライマーセット。
【0018】
項2. 細菌のDNA分子中に配列番号3の塩基配列及び配列番号4の塩基配列を含むDNAを特異的に検出可能に増幅するプライマーセット。
【0019】
項3. 所定条件のPCRに供されることにより、実質的に、細菌のDNA分子中に配列番号3の塩基配列及び配列番号4の塩基配列を含むDNAを検出可能に増幅するが、同じ条件のPCRに供されることにより、実質的に、分子中に配列番号3の塩基配列及び配列番号4の塩基配列を含まないDNAを検出可能に増幅しないプライマーセット。
【0020】
項4. 以下の(1)又は(2)のプライマーと(3)又は(4)のプライマーとからなるプライマーセット。
(1) 配列番号1における塩基番号10〜19の塩基配列、塩基番号9〜19の塩基配列、塩基番号8〜19の塩基配列、塩基番号7〜19の塩基配列、塩基番号6〜19の塩基配列、塩基番号5〜19の塩基配列、塩基番号4〜19の塩基配列、塩基番号3〜19の塩基配列、塩基番号2〜19の塩基配列、又は、塩基番号1〜19の塩基配列からなるプライマー。
(2) 配列番号1における塩基番号10〜19の塩基配列、塩基番号9〜19の塩基配列、塩基番号8〜19の塩基配列、塩基番号7〜19の塩基配列、塩基番号6〜19の塩基配列、塩基番号5〜19の塩基配列、塩基番号4〜19の塩基配列、塩基番号3〜19の塩基配列、塩基番号2〜19の塩基配列、又は、塩基番号1〜19の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるプライマー。
(3) 配列番号2における塩基番号9〜18の塩基配列、塩基番号8〜18の塩基配列、塩基番号7〜18の塩基配列、塩基番号6〜18の塩基配列、塩基番号5〜18の塩基配列、塩基番号4〜18の塩基配列、塩基番号3〜18の塩基配列、塩基番号2〜18の塩基配列、又は、塩基番号1〜18の塩基配列からなるプライマー。
(4) 配列番号2における塩基番号9〜18の塩基配列、塩基番号8〜18の塩基配列、塩基番号7〜18の塩基配列、塩基番号6〜18の塩基配列、塩基番号5〜18の塩基配列、塩基番号4〜18の塩基配列、塩基番号3〜18の塩基配列、塩基番号2〜18の塩基配列、又は、塩基番号1〜18の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるプライマー。
【0021】
項5. 以下の(1)又は(2)のプライマー。
(1) 配列番号1における塩基番号10〜19の塩基配列、塩基番号9〜19の塩基配列、塩基番号8〜19の塩基配列、塩基番号7〜19の塩基配列、塩基番号6〜19の塩基配列、塩基番号5〜19の塩基配列、塩基番号4〜19の塩基配列、塩基番号3〜19の塩基配列、塩基番号2〜19の塩基配列、又は、塩基番号1〜19の塩基配列からなるプライマー。
(2) 配列番号1における塩基番号10〜19の塩基配列、塩基番号9〜19の塩基配列、塩基番号8〜19の塩基配列、塩基番号7〜19の塩基配列、塩基番号6〜19の塩基配列、塩基番号5〜19の塩基配列、塩基番号4〜19の塩基配列、塩基番号3〜19の塩基配列、塩基番号2〜19の塩基配列、又は、塩基番号1〜19の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるプライマー。
【0022】
項6. 以下の(3)又は(4)のプライマー。
【0023】
(3) 配列番号2における塩基番号9〜18の塩基配列、塩基番号8〜18の塩基配列、塩基番号7〜18の塩基配列、塩基番号6〜18の塩基配列、塩基番号5〜18の塩基配列、塩基番号4〜18の塩基配列、塩基番号3〜18の塩基配列、塩基番号2〜18の塩基配列、又は、塩基番号1〜18の塩基配列からなるプライマー。
(4) 配列番号2における塩基番号9〜18の塩基配列、塩基番号8〜18の塩基配列、塩基番号7〜18の塩基配列、塩基番号6〜18の塩基配列、塩基番号5〜18の塩基配列、塩基番号4〜18の塩基配列、塩基番号3〜18の塩基配列、塩基番号2〜18の塩基配列、又は、塩基番号1〜18の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるプライマー。
【0024】
項7. (i)被験食品に含まれるDNAを抽出する工程と、(ii)このDNAを鋳型として項1から4のいずれかに記載のプライマーセットを用いてPCRを行う工程と、
(iii) DNA増幅の有無を検出する工程と
を含む細菌の検出方法。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
(I) プライマー・プライマーセット
本発明のプライマーセットは、所定条件のPCRに供されることにより酢酸耐性乳酸菌群に属する細菌の16SrRNA遺伝子(16SrRNAをコードするDNA)を検出可能に増幅するが、同じ条件のPCRに供されることにより、実質的にラクトバチルス属細菌以外の生物の16SrRNA遺伝子を検出可能に増幅しないプライマーセットである。
【0026】
本発明において、「16SrRNA遺伝子を検出可能に増幅する」とは、16SrRNA遺伝子の全配列又はその部分配列を、何らかの手段で検出可能な程度までPCRにより増幅することを意味する。
【0027】
本発明において、「酢酸耐性乳酸菌群に属する細菌」とは、ラクトバチルスフラクチボランス(Lactobacillus fructivorans)、ラクトバチルスブレビス(L. brevis)、ラクトバチルスブチェネリ(L. buchneri)、ラクトバチルスプランタラム(L. plantarum)及びラクトバチルスパラカゼイ(L. paracasei)をいう。
【0028】
本発明のプライマーセットは、酢酸耐性乳酸菌群に属する細菌の他に、酢酸耐性乳酸菌群に類縁のラクトバチルス属細菌の全て又は一部を検出可能に増幅するものであってもよい。
【0029】
「酢酸耐性乳酸菌群に類縁の細菌」とは、酢酸耐性乳酸菌群と同様にラクトバチルス属に属し、酢酸耐性乳酸菌群に分子系統樹上極めて近く、酢酸耐性乳酸菌群と同様に低pH下での増殖が可能で、場合によっては低pHの食品において、酢酸耐性乳酸菌群と同様に食品の腐敗、汚染の原因となる可能性を有する菌である。
【0030】
また、実質的にラクトバチルス属細菌以外の生物の16SrRNA遺伝子を検出可能に増幅しないことには、ラクトバチルス属細菌以外の全ての生物の16SrRNA遺伝子を検出可能に増幅しない場合だけでなく、例外的にラクトバチルス属細菌以外の数種の生物の16SrRNA遺伝子を検出可能に増幅する場合も含まれる。
【0031】
前記の所定条件は通常PCRにおいて採用される条件であればよいが、例えば、変性を85〜99℃程度で30秒間〜15分間程度まで、アニーリングを50〜68℃程度で5秒間〜1分間程度行い、DNA伸長を68〜75℃程度で10秒間〜1分間程度行い、反応液中のMgイオン濃度を1〜4mM程度とする条件が挙げられる。
【0032】
ラクトバチルス属細菌の中の酢酸耐性乳酸菌及びその類縁細菌の16SrRNA遺伝子には、そのDNA分子中に配列番号3の塩基配列(5'-CTTGAGTGCAGAAGAGGAC-3')及び配列番号4の塩基配列(5'-GAGGGTTTCCGCCCTTCA-3')が特異的に含まれている。特に酢酸耐性乳酸菌群に属する細菌の16SrRNA遺伝子には、そのDNA分子中に上記2配列が含まれている。従って、本発明のプライマーセットは、換言すれば、配列番号3の塩基配列及び配列番号4の塩基配列を含むDNAを特異的に検出可能に増幅するものといえる。
【0033】
また上記2配列は、ラクトバチルス属細菌以外の生物種には、実質的に見出されない。従って、本発明のプライマーセットは、所定条件のPCRに供されることにより、実質的に、1分子中に配列番号3の塩基配列及び配列番号4の塩基配列を含むDNAを検出可能に増幅するが、同じ条件のPCRに供されることにより、実質的に、1分子中に配列番号3の塩基配列及び配列番号4の塩基配列を含まないDNAを検出可能に増幅しないプライマーセットと表現することもできる。
【0034】
前述したように、酢酸耐性乳酸菌群に属する細菌は、主に低pH食品を汚染して風味の低下や食品の密閉包装容器の膨張等を引き起こす点で問題になっている危機管理の対象細菌群である。従って、これらの酢酸耐性乳酸菌群に属する細菌を一度に必ず検出でき、しかも、ラクトバチルス属細菌以外の細菌、細菌以外の原生生物、食品に含まれる植物及び動物の各16SrRNA遺伝子を実質的に検出しない本発明のプライマーセットは、上記の危機管理対象菌群を精度よく検出できる、優れたプライマーセットである。
プライマーセットの具体例
本発明におけるプライマーの塩基配列には、その塩基配列及びその塩基配列において1〜3個程度の塩基が欠失、挿入又は置換された塩基配列が含まれる。
【0035】
本発明のプライマーとしては、代表的には、以下の(1)若しくは(2)のプライマー、又は、(3)若しくは(4)のプライマーが挙げられる。(1)及び(2)のプライマーは、前述した配列番号3の塩基配列に相補的な塩基配列を認識できるプライマーであり、(3)及び(4)のプライマーは、前述した配列番号4の塩基配列を認識できるプライマーである。
(1) 配列番号1(5'- CTTGAGTGCAGAAGAGGAC-3')における塩基番号10〜19の塩基配列、塩基番号9〜19の塩基配列、塩基番号8〜19の塩基配列、塩基番号7〜19の塩基配列、塩基番号6〜19の塩基配列、塩基番号5〜19の塩基配列、塩基番号4〜19の塩基配列、塩基番号3〜19の塩基配列、塩基番号2〜19の塩基配列、又は、塩基番号1〜19の塩基配列からなるプライマー。
(2) 配列番号1における塩基番号10〜19の塩基配列、塩基番号9〜19の塩基配列、塩基番号8〜19の塩基配列、塩基番号7〜19の塩基配列、塩基番号6〜19の塩基配列、塩基番号5〜19の塩基配列、塩基番号4〜19の塩基配列、塩基番号3〜19の塩基配列、塩基番号2〜19の塩基配列、又は、塩基番号1〜19の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるプライマー。
【0036】
(2)のプライマーは、前記列記したいずれかの塩基配列の5'末端側に任意の塩基配列を有し、全体として最大30塩基までの長さのDNAからなるものである。(2)のプライマーにおいて、5'末端側に付加されて存在することがある前記任意の塩基配列は、1〜6個程度の塩基からなることが好ましい。この任意の塩基配列は付加されていないのが最も好ましい。
【0037】
(1)又は(2)のプライマーの中では、塩基番号3〜19の塩基配列からなるプライマー、塩基番号2〜19の塩基配列からなるプライマー、若しくは、塩基番号1〜19の塩基配列からなるプライマー、又は、これらの塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるプライマーが好ましく、塩基番号1〜19の塩基配列からなるプライマーがより好ましい。
(3) 配列番号2(5'-TGAAGTGCGGAAACCCTC-3')における塩基番号9〜18の塩基配列、塩基番号8〜18の塩基配列、塩基番号7〜18の塩基配列、塩基番号6〜18の塩基配列、塩基番号5〜18の塩基配列、塩基番号4〜18の塩基配列、塩基番号3〜18の塩基配列、塩基番号2〜18の塩基配列、又は、塩基番号1〜18の塩基配列からなるプライマー。
(4) 配列番号2における塩基番号9〜18の塩基配列、塩基番号8〜18の塩基配列、塩基番号7〜18の塩基配列、塩基番号6〜18の塩基配列、塩基番号5〜18の塩基配列、塩基番号4〜18の塩基配列、塩基番号3〜18の塩基配列、塩基番号2〜18の塩基配列、又は、塩基番号1〜18の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるプライマー。
【0038】
(4)のプライマーは、前記列記したいずれかの塩基配列の5'末端側に任意の塩基配列を有し、全体として最大30塩基までの長さのDNAからなるものである。(4)のプライマーにおいて、5'末端側に付加されて存在することがある前記任意の塩基配列は、1〜6個程度が好ましい。この任意の塩基配列は付加されていないのが最も好ましい。
【0039】
(3)又は(4)のプライマーの中では、塩基番号3〜18の塩基配列からなるプライマー、塩基番号2〜18の塩基配列からなるプライマー、若しくは、塩基番号1〜18の塩基配列からなるプライマー、又は、これらの塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるプライマーが好ましく、塩基番号1〜18の塩基配列からなるプライマーがより好ましい。
【0040】
本発明のプライマーセットとしては、代表的には(1)又は(2)のプライマーと(3)又は(4)のプライマーとの組み合わせが挙げられる。
【0041】
(1)又は(2)のプライマーと(3)又は(4)のプライマーとの組み合わせは、特に限定されずどのような組み合わせであってもよいが、配列番号1の塩基番号1〜19の塩基配列からなるプライマーと配列番号2の塩基番号1〜18の塩基配列からなるプライマーとの組み合わせが最も好ましい。
製造方法
本発明のプライマーセットの各プライマーは、その塩基配列に基づき常法に従って合成することができる。また、プライマー合成メーカー(例えばサワディーテクノロジー社)から購入することもできる。
(II) 細菌の検出方法
基本的構成
本発明の細菌の検出方法は、(i)被験食品に含まれるDNAを抽出する工程と、(ii)このDNAを鋳型として上記説明した本発明のプライマーセットを用いてPCRを行う工程と、(iii) DNA増幅の有無を検出する工程と
を含む方法である。
対象食品
本発明方法の対象となる被験食品は、酢酸耐性乳酸菌に汚染し得る食品である限り特に限定されない。被験食品には加工食品の他にその原材料も含まれる。特に、酢酸耐性乳酸菌の増殖が問題となる食品が対象として好適である。このような食品として、例えば、マヨネーズ、ケチャップ、ドレッシング、醤油、つゆ、ウスターソース、中濃ソース、みりん、ウインナーソーセージ、ロングライフ牛乳等及びこれらの原材料が挙げられる。
【0042】
DNA 抽出工程
本発明においては、食品から分離培養した細菌からDNAを抽出してもよいが、食品から直接DNAを抽出することもできる。
【0043】
被験食品からのDNAの調製方法は公知の方法を採用すればよい。例えば、被験食品に市販の界面活性剤を加え、80〜100℃程度で1〜15分間程度加熱した後、冷却し、次いで遠心分離して上清を採取することによりDNAを含有する試料を調製することができる。被験食品から調製されたDNA含有試料には、食品に細菌が含まれている場合には細菌16SrRNA遺伝子が含まれており、その他各種RNA、DNA及びタンパク質等が含まれる。従って、この試料を常法に従って精製してDNAを含む画分を得てもよい。
【0044】
死菌がPCRの結果に影響を与えると考えられる場合や、得られる菌数が少なすぎるために十分量のDNAを得ることができないが酢酸耐性乳酸菌の検出感度を高めたい場合には、例えば以下の方法でDNAを抽出すればよい。先ず、MRA培養液(日水製薬)のようなラクトバチルス属細菌の選択培地を塩酸等でpH6.0程度に調整し、この選択培地で被験食品を20〜30℃程度で培養する。培養時間は、被験食品中に存在する細菌数によっても異なるが、通常12〜36時間程度とすればよい。培養液を50〜300×g程度で遠心分離し、得られる上清をさらに、2000〜14000×g程度で遠心分離する。被験食品に細菌が含まれていれば、得られる沈殿には通常細菌が含まれる。この沈殿を10%キレックス液[10%(W/V)キレックス(バイオラッド社)、10mM Tris-HCl、0.1mM EDTA、pH 8.0]200μL中に懸濁後、ヒートブロックを用いて100℃前後で5分間程度加熱することにより溶解し、細菌溶解物を2000〜14000×g程度で遠心分離した上清を採取することによりDNA含有試料を調製することができる。
【0045】
食品の種類によっても異なるが、食品1g当たり10〜20cfu程度の酢酸耐性乳酸菌が含まれていれば、被験食品を上記のようにして24時間程度培養することにより、PCRにより酢酸耐性乳酸菌由来のDNAを検出できる。
【0046】
食品1g当たりに含まれる酢酸耐性乳酸菌の数が10cfu未満の場合の検査等で、さらに、検出感度を高くしたい場合は、被験食品量を増やしたり、培養時間を延長させたりすればよい。
【0047】
PCR 工程
PCRを行うにあたっては、上記説明した本発明のプライマーセットを用いる。具体的には、(1)又は(2)のプライマーと(3)又は(4)のプライマーとのセット、特に、配列番号1のプライマーと配列番号2のプライマーとのセットを用いることが好ましい。
【0048】
PCR条件は特に限定されず、PCR装置毎に最適条件を定めればよいが、例えば、リアルタイムPCR装置の場合、以下の条件が挙げられる。
反応液:例えば、PCR反応用のキットであるTakara Ex TaqTM R-PCR Version (Takara Bio社、Otsu、Japan)のようなリアルタイムPCR専用のPCR反応液を用いる。
PCRサイクル条件:
・2本鎖DNAの熱変性:95℃で5秒間
・プライマーの一本鎖DNAへのアニーリング:66℃で10秒間
・DNA伸長:72℃で20秒間
この反応を通常30〜35サイクル程度行うことにより、目的DNAを検出可能な程度に増幅することができる。
【0049】
PCR装置としては、ブロックタイプ、リアルタイムPCRタイプ等の市販の装置を使用できる。迅速にDNAを増幅するためにはキャピラリータイプのリアルタイムPCR装置を用いることが好ましい。
【0050】
DNA 増幅の確認工程
DNA増幅の有無の確認は、通常、PCR産物をアガロースゲル電気泳動により分離し、エチジウムブロマイド、サイバーグリーンIなどで核酸染色することにより行える。また、リアルタイムPCR装置を用いてPCRを行う場合は、その装置の検出システムにより自動的に短時間でDNA増幅の有無が確認される。例えば、PCR反応液中にサイバーグリーンIを添加した場合では、サイバーグリーンIが二本鎖DNAに結合したときに発する蛍光値から増幅産物量をサイクル毎にモニター可能であり、さらに、PCR後に融解曲線分析を行うことによりPCR増幅産物が目的の増幅産物であるかどうかを確認できる。判断が困難な場合は、増幅産物の大きさをアガロースゲル電気泳動により確認すればよい。
【0051】
PCRによりPCR産物が検出される場合は、酢酸耐性乳酸菌が被験食品に存在していたと判定できる。またPCR産物が検出されない場合は、酢酸耐性乳酸菌は被験食品に存在していなかったと判定できる。酢酸耐性乳酸菌が存在する場合は、アガロースゲル電気泳動により、203塩基対程度の大きさのバンドが検出される。
【0052】
被験食品の酢酸耐性乳酸菌による汚染の有無をさらに精度よく判定する必要がある場合には、PCR増幅断片が酢酸耐性乳酸菌の16S rRNA遺伝子に由来するものであることを確認することがより好ましい。
【0053】
確認方法としては、例えばPCR増幅断片を制限酵素で処理して得られるDNA断片について制限断片長多型解析を行う方法が挙げられる。この際使用する制限酵素はPCR増幅断片を切断し制限断片長多型を示し得るものであれば特に限定されない。制限酵素は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できるが、2種以上を組み合わせて使用することが望ましい。制限断片長多型は、例えば、アガロース電気泳動やサザンブロット法により検出することができる。
【0054】
また、PCR増幅断片の塩基配列を常法により決定し、その塩基配列を公共のDNAデータベースの塩基配列と比較することによっても、PCR増幅断片が酢酸耐性乳酸菌の16S rRNA遺伝子に由来するものであることを確認することができる。
【0055】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び試験例を示して詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0056】
実施例1(酢酸耐性乳酸菌群に属する細菌の標準菌株に対する検出感度の確認)
Lactobacillus casei JCM 1134T株及びLactobacillus fructivorans JCM 1117T株をそれぞれMRS液体培地(pH6.0)を用いて培養した。各菌株の培養液からPUREGENE DNA Isolation Kit (Gentra社、Minneapolis、USA)を用いて、DNA溶液を調整した。各菌株のDNA量を測定し、各菌株のゲノムの分子量を3.0Mbpと概算してゲノムのコピー数を2コピー/μL程度、20コピー/μL程度、2×102コピー/μL程度、2×103コピー/μL程度及び2×104コピー/μL程度にした被験DNA溶液をそれぞれ調整した。
【0057】
一方、配列番号1及び配列番号2の各DNAプライマーをDNA合成機を用いて合成した。上記各被験DNA溶液1μLをPCR反応用のキットであるTakara Ex TaqTM R-PCR Version (Takara Bio社、Otsu、Japan)の説明書に従って調整して総量20μLのPCR反応液を調整した。すなわち、2μLの10×R-PCR Buffer(Mg2+free)、0.16μLの250mM Mg2+Solution for R-PCR、0.4μLのdNTP Mixture(各10mM)、0.2μL のTaKara EX TaqTM R-PCR(5units/μL)、0.8μLの0.125% SYBRTM GreenI (Fmc Bioproducts社、Rockland、USA)、1.0μLのDNAプライマー液(配列番号1のDNAプライマー及び配列番号2のDNAプライマーを各々5μM含有)及び16.44μLの蒸留水を含む19μLの調整液に、被験DNA溶液1μLを加えて20μLにしたPCR反応液を調整した。
【0058】
PCRはロシュ・ダイアグノスティックス社のLightCyclerを用いて次のように行った。すなわち、初期変性を95℃で1分間行った後、95℃で5秒間、66℃で10秒間、及び72℃で20秒間、蛍光測定(PCRによる増幅産物の測定)を1サイクルとし、これを35サイクル行い、続いて増幅産物の融解曲線分析のために、97℃で0秒、60℃で10秒後、0.2℃/秒の速度で97℃まで昇温させると同時に連続的に蛍光測定により各温度に対する増幅産物の二本鎖DNA量を測定し、最後に40℃まで降温させた。
【0059】
PCR終了後、融解曲線解析を同PCR装置上のソフトウェアで行い、増幅産物のTm値を求めることで特異的な増幅産物の有無を判定した。さらに、Mupidミニゲル泳動槽(ADVANCE社)を用いて1.8%アガロースゲルによる電気泳動を行い、エチジウムブロマイド溶液でゲルを染色して、目的バンドの増幅の有無を確認することにより、増幅産物の有無を確認した。
【0060】
PCR後の反応液を電気泳動した後のゲルを図1に示す。レーン1〜5はLactobacillus fructivorans JCM 1117T株を示し、図1のレーン6〜10はLactobacillus casei JCM 1134Tを示す。レーンMはDNA分子量マーカーを、レーンBはネガティブコントロールを示す。
【0061】
図1の結果から、配列番号1のDNAプライマーと配列番号2のDNAプライマーとをセットで使用することにより、反応液中に2〜20コピー程度のゲノムDNAが存在すれば前記のPCR条件でLactobacillus fructivorans JCM 1117T株やLactobacillus casei JCM 1134T株DNAを検出できることが確認された。
【0062】
Lactobacillus brevis JCM 1059T株、Lactobacillus buchneri JCM 1115T株、Lactobacillus plantarum JCM 1149T株及びLactobacillus paracasei JCM 8130T株について同様にしてゲノムDNAコピー数を変化させてPCRを行ったところ、いずれの菌種のDNAにおいても、2〜20コピー程度のゲノムDNAが存在すれば、同様に検出できることが確認された。
【0063】
実施例2(酢酸耐性乳酸菌群に属する細菌の標準菌株に対する反応性の確認)
実施例1と同様にしてLactobacillus fructivorans JCM 1117T株、Lactobacillus casei JCM 1134T株、Lactobacillus brevis JCM 1059T株、Lactobacillus buchneri JCM 1115T株、Lactobacillus plantarum JCM 1149T株及びLactobacillus paracasei JCM 8130T株のDNA溶液を調整し、ゲノムのコピー数が2×104コピー/μL程度の被験DNA溶液をそれぞれ調整した。
【0064】
これらの各菌株のDNAに対する配列番号1のDNAプライマーと配列番号2のDNAプライマーとのプライマーセットの反応性を調べるために、上記の各被験DNA溶液1μLに対する同DNAプライマーセットを用いたPCRを実施例1と同様にして実施した。PCR増幅産物の有無を、実施例1と同様にしてアガロースゲルによる電気泳動で確認した。
【0065】
PCR後の反応液を電気泳動した後のゲルを図2に示す。図2のレ−ン1〜6はそれぞれLactobacillus casei JCM 1134T株、Lactobacillus fructivorans JCM 1117T株、 Lactobacillus brevis JCM 1059T株、Lactobacillus buchneri JCM 1115T株、Lactobacillus plantarum JCM 1149T株及びLactobacillus paracasei JCM 8130T株を示す。図2から、配列番号1のDNAプライマーと配列番号2のDNAプライマーとをセットで使用することにより、上記乳酸菌(酢酸耐性乳酸菌とその類縁菌1種)6種を検出できることが確認された。
【0066】
実施例3(酢酸耐性乳酸菌群に属する細菌以外の細菌及びその他の生物由来DNAとの反応性の確認)
以下の表1に示す各細菌株及び各真菌株をそれぞれに適合する培地を用いて培養し、実施例1と同様にしてDNA溶液を調整した。各DNA溶液のDNA量を測定し、各細菌株DNAは濃度5pg/μL程度にした被験DNA溶液を調整し、各真菌株DNAは濃度1ng/μLにした被験DNA溶液を調整した。また、市販の小麦粉、トウモロコシ、ジャガイモ、ナタネ、及びダイズからDNeasy Plant Mini Kit(キアゲン社)を用いてそれぞれの植物DNAを抽出した。各DNA溶液のDNA量を測定し、小麦DNAは濃度8ng/μL程度にした被験DNA溶液を調整し、トウモロコシ、ジャガイモ、ナタネ及びダイズのDNAは濃度3ng/μL程度にした被験DNA溶液をそれぞれ調整した。また、ヒトMCF-7細胞(大日本製薬社)からDNeasy Tissue Mini Kit(キアゲン社)を用いてヒトDNAを抽出した。DNA溶液のDNA量を測定し、濃度3ng/μL程度にした被験DNA溶液を調整した。ウシ及びニワトリの精製DNAはCeMines社から購入し、サケの精製DNAはBD Bioscience Clontech社から購入した。各DNA溶液のDNA量を測定し、ウシ及びニワトリDNAは濃度3ng/μL程度にした被験DNA溶液を調整し、サケDNAは濃度1ng/μL程度にした被験DNA溶液を調整した。
【0067】
これらの各生物のDNAに対する配列番号1のDNAプライマーと配列番号2のDNAプライマーとのプライマーセット(LA1-203)の反応性を調べるために、上記の各被験DNA溶液1μLに対する同DNAプライマーセットを用いたPCRを実施例1と同様にして実施した。PCR増幅産物の有無を、実施例1と同様にしてアガロースゲルによる電気泳動で確認した。
【0068】
また、配列番号1及び2のプライマーセット(LA1-203)に代えて前述した非特許文献1に記載の細菌一般を検出できるプライマーセット(prbac)を用いて同様にしてPCRを行った。但し、PCRは次の反応条件に置換して実施した。すなわち、初期変性を95℃で1分間行った後、95℃で5秒間、59℃で10秒間、及び72℃で20秒間、蛍光測定(PCRによる増幅産物の測定)を1サイクルとし、これを30サイクル行った。
【0069】
これらのPCRの結果を次の表1及び表2に示す。表中+は電気泳動によりバンドが検出されたことを示し、マイナスはバンドが検出されなかったことを示す。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
表1及び表2に示す結果から、配列番号1のプライマーと配列番号2のプライマーとのセットを用いたPCRにより、酢酸耐性乳酸菌5種(Lactobacillus fructivorans JCM 1117T、 Lactobacillus brevis JCM 1059T、Lactobacillus buchneri JCM 1115T、Lactobacillus plantarum JCM 1149T及びLactobacillus paracasei JCM 8130T株)及びその類縁のLactobacillus属に属する一部細菌の16S rRNA遺伝子に由来するDNA断片を特異的に増幅できることが判明した。
【0073】
これに対して、公知のプライマーセットであるprbacを用いた場合は、広く細菌が検出され、さらに植物から抽出されたDNAが検出された。なお、塩基配列解析の結果、植物由来のDNAからprbacによって増幅されたPCR増幅産物はクロロプラストの16SrRNAをコードするDNA断片であることが確認された。
【0074】
図3は各種細菌の16S rRNA遺伝子配列に基づいて作成された分子系統樹であり、配列番号1及び配列番号2の各DNAプライマーを用いたPCRにおいて検出された各菌株を+で示している。
【0075】
図3から、配列番号1及び配列番号2のDNAプライマーセットを用いてPCRを行うことで、16S rRNA遺伝子配列に基づいて作成された分子系統分類上においても一群の菌群に分類可能な主要5種の酢酸耐性乳酸菌群とこれに類縁の菌群とを特異的に検出できたことがわかる。
【0076】
実施例4(食品中の酢酸耐性乳酸菌群に属する細菌16SrRNA遺伝子の検出)
一般生菌に汚染されていないことを予め確認済みの市販のマヨネーズ及び食酢に、代表的な酢酸耐性乳酸菌であるLactobacillus fructivorans JCM 1117T株を指標菌として、それぞれの食品1gあたり10〜20cfu程度となるように添加したもの及び、無添加のものを調整した。それぞれ食品重量の9倍量のMRS液体培地(pH6.0)を加え、ストマッカーを用いて無菌的に攪拌混合した。
【0077】
これらの食品希釈混合液10mLを15mL容の培養管に移して密栓後、30℃で20時間〜28時間、静置培養した。PCRで使用するDNA溶液の調整のために、0時間、20時間、24時間及び28時間後の培養液を1.3mLづつ採取した。
【0078】
採取した培養液を100×gで1分間遠心した後の上清をさらに13,000×gで5分間遠心して沈殿を得た。この沈殿を洗浄するために0.5mLのTE緩衝液(10mM Tris-HCl、0.1mM EDTA、pH 8.0)に懸濁後、13,000×gで5分間遠心して沈殿を得た。この沈殿に10%キレックス液[10%(W/V)キレックス(バイオラッド社)、10mM Tris-HCl、0.1mM EDTA、pH 8.0]200μLを加えて沈殿を懸濁後、ヒートブロックを用いて99℃で5分間加熱し、13,000×gで3分間遠心した上清を採取した。上清中にはDNAが含まれており、PCRに使用するDNA溶液とした。
【0079】
得られたDNA溶液1μLを試料とし、実施例1に記載されたと同様の方法でPCRを行い、PCR増幅産物の有無を確認した。アガロースゲルによる電気泳動パターンを図4に示す。
【0080】
図4の(A)は市販マヨネーズの場合の電気泳動パターンであり、図4の(B)は市販食酢である場合の電気泳動パターンである。また、図(A)、(B)ともに、レーン1、2、3及び4は、細菌を添加せずに食品の培養時間を0、20、24及び28時間にしたサンプルである。またレーン5、6、7及び8は、食品に細菌を添加した後DNAを抽出する前の培養時間を0、20、24及び28時間にしたサンプルである。
【0081】
図4の(A)に示すように、市販マヨネーズ1gあたり10〜20cfu程度のLactobacillus fructivorans JCM 1117T株の指標菌が存在する場合、DNA抽出前の食品培養時間を24時間以上にすれば、前記PCRによってその細菌DNAを検出できることがわかる。また、図4の(B)に示すように、市販食酢1gあたり10〜20cfu程度のLactobacillus fructivorans JCM 1117T株の指標菌が存在する場合、DNA抽出前の食品培養時間を24時間以上にすれば、前記PCRによってその細菌DNAを検出できることがわかる。
【0082】
【発明の効果】
本発明により、酢酸耐性乳酸菌群に属する細菌を迅速かつ精度よく検出できるPCR用のプライマー及び酢酸耐性乳酸菌群に属する細菌を迅速かつ精度よく検出できる方法が提供された。
【0083】
さらにいえば、本発明のプライマーセットを用いたPCRを行うことにより、酢酸耐性乳酸菌を一括して検出できる。具体的には、酸性食品の腐敗において問題となるLactobacillus fructivorans、Lactobacillus brevis、Lactobacillus buchneri、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus paracaseiの食品等への混入の有無を従来の寒天培養法よりもより迅速に検査することができる。
【0084】
従って、本発明のプライマーセットは、汚染頻度が比較的低い食品を対象にした細菌検査の一次スクリーニングに好適に使用できる。すなわち、本発明のプライマーセットを用いた一次スクリーニングにより細菌が検出された場合には、食品の製造工程や製品に対する適切な措置をより迅速に執ることが出来る。また、必要に応じて、PCR増幅産物の塩基配列解析の実施や二次スクリーニングとして特定乳酸菌に特異的なプライマーセットを用いてPCRを行うことにより、菌種を同定することもできる。
【0085】
また、従来の細菌一般を広く検出できるプライマーを使用する場合は、目的細菌以外の混入生物のDNAや食品由来のDNAまで検出されるが、本発明のプライマーを用いることにより、酢酸耐性乳酸菌を検出できるとともに、ラクトバチルス属細菌以外の混入生物由来のDNAや食品由来のDNAを実質的に検出せず、即ち高精度の検出が行える。
【0086】
特に、本発明のプライマーは食品である植物や動物のDNAを検出しないため、食品から細菌を分離培養した上でそのDNAを抽出する必要がなく、食品から直接DNAを抽出するだけで、又は食品をおよそ24時間培養した培養液からDNAを抽出するだけで、そのDNAをPCRに供することができる。それにより、検査時間を大幅に短縮することができる。
【0087】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】 酢酸耐性乳酸菌の検出感度を示す図である。
【図2】 配列番号1及び2のプライマーセットにより乳酸菌6種を検出できたことを示す図である。
【図3】 細菌16S rRNA 遺伝子配列に基づいた分子系統樹及び、配列番号1及び2のプライマーセットにより検出可能な細菌群を示す図である。
【図4】 被験食品の培養時間と酢酸耐性乳酸菌の検出の有無との関係を示す図である。(A)は市販マヨネーズ、(B)は市販食酢の結果を示す。
Claims (2)
- 所定条件のPCRに供されることにより酢酸耐性乳酸菌群に属する細菌の16SrRNA遺伝子を検出可能に増幅するが、同じ条件のPCRに供されることにより、実質的にラクトバチルス属細菌以外の生物の16SrRNA遺伝子を検出可能に増幅しないプライマーセットであって、
配列番号1における塩基番号1〜19の塩基配列からなるプライマーと、
配列番号2における塩基番号1〜18の塩基配列からなるプライマーと
からなるプライマーセット。 - (i)被験食品に含まれるDNAを抽出する工程と、
(ii)このDNAを鋳型として請求項1に記載のプライマーセットを用いてPCRを行う工程と、
(iii) DNA増幅の有無を検出する工程と
を含む細菌の検出方法。
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