JP4116828B2 - 油圧式制震ダンパ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ピストンの軸線方向両側にピストンロッドが突出するような両ロッド形式の油圧式制震ダンパに関し、特にその両側の一対のピストンロッドとその間のピストンとの組立てに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般的な油圧式制震ダンパとしては、図5に示すようなものがある。
同図の油圧式制震ダンパ2において、油圧シリンダ4内にはその軸線方向に往復運動するピストン6が収納され、このピストン6の軸線方向両側には油圧室8a、8bが形成され、これらの両油圧室8a、8b内には作動油が充填されている。ピストンロッド10は、ピストン6の軸線方向両端から突出するように設けられた両ロッド形式になっている。
【0003】
油圧シリンダ4の一端部には、連結部材12の一端部が連結されており、この連結部材12の他端部はボールジョイント14を介して建築物の構造体の一方に連結されている。一方、ピストンロッド10のピストン6に対して連結部材12と反対側の一端部は、ボールジョイント14を介して建築物の構造体の他方に連結されている。
【0004】
前記建築物の構造体において、このような油圧式制震ダンパ2にその軸線方向に地震等の外力が加わった場合、油圧シリンダ4とピストン6との間には相対移動が発生し、ピストン6の端面には、移動の向きとは反対の向きに、バルブ16を通って油圧室8a、8b間を移動する作動油からの減衰力が加わることとなり、この減衰力により油圧式制震ダンパ2は制震動作をすることができる。
【0005】
上記両ロッド形式の油圧式制震ダンパ2における、従来のピストン6及びピストンロッド10の構造としては、図6に示すように、ピストン6とピストンロッド10が一体的に成形されたものがあった。しかし、このような一体成形のピストン6の内部に、同図に示すような減衰バルブ16を設ける場合には、実際には加工困難であるため、ピストン6とピストンロッド10を分離することができる構造とする必要がある。
【0006】
そのため、図7に示すように、ピストンロッド10の長さ方向の中央部分にネジ構造を設け、ピストン6の両側端面をナット17で締付けて固定する構造があった。しかしこのような構造では、組立後にナット17が前記ピストン6内部に設けたバルブ16の出入口を塞ぐこととなる。そのため、後でピストン6内部のバルブ16の調整、交換ができないという問題が生じる。
【0007】
そこで図8に示すように、ピストンロッドを2つのピストンロッド10a、10bに分割して、それぞれの結合側の端部に雄ネジ18と雌ネジ20を設けて、ピストンロッド10aの段部22と、ピストンロッド10bの端面の肩部24により、ピストン6の内部の2つの段部を挟んで締め付ける構造が採用された。
【0008】
このような構造では、前記油圧式制震ダンパ2の制震動作時において、ピストン6に最大減衰力が加わっても、ピストンロッド10a、10b間に挟みこまれたピストン6が緩まないようにするため、ピストンロッド10a、10b間に一定以上の締付けトルクを加えることにより、軸線方向に最大減衰力以上の荷重を発生させてピストン6を挟みこむことが望ましい。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような構造では、両側のピストンロッド10aと10bのネジ結合の際、軸線方向に最大減衰力以上の荷重を発生させてピストン6を挟み込むために必要な締付けトルクの他に、ピストンロッド10aの段部22と、ピストンロッド10bの肩部24の各々と、ピストン6の接触面との間で生ずる摩擦力等に費やす締付けトルクも必要とされるため、更に締付けトルクを増やす必要があるが、その増分量はそれらの間の摩擦係数等によって変動する。そのため、締付けトルクによってピストン6を挟み込むための荷重を管理することは非常に困難であった。
【0010】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みて、両ロッド形式の油圧式制震ダンパにおける、ピストンと一対のピストンロッドの組立ての際に、ピストンが確実に緩まないように挟み込まれるようにすることができる油圧式制震ダンパを提供することを課題とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明による油圧式制震ダンパは、2つのピストンロッドに挟まれて保持されるピストンを有する油圧式制震ダンパにおいて、一方のピストンロッドに所定値以上の引張荷重を付加させた際に生じる他方のピストンロッドとピストンとの隙間を、前記引張荷重を付加させた状態で除去させることによりピストンを保持することを特徴とするものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて具体的に説明する。
図1ないし図4は、本発明による油圧式制震ダンパの一実施の形態について説明するために参照する図である。
【0013】
図1ないし図4に示す、本発明の一実施の形態に係る油圧式制震ダンパの説明においては、前記従来の油圧式制震ダンパと同じ部分には同じ符号を付して説明し、従来と同様の構成や作用の重複する説明は省略するものとする。
【0014】
図1は、ピストンロッド10a、10bとピストン6が組み立てられる前の状態を示している。ピストンロッド10aの一端部には雄ネジ部18が形成され、更にこの雄ネジ部18の半径方向内側の軸孔の周部には後述する最大減衰力に耐え得る雌ネジ部26(引張治具取付部)が設けられている。ピストンロッド10bの一端部には前記雄ネジ部18にネジ結合する雌ネジ部20が設けられ、このピストンロッド10bは中空の管状となっている。
【0015】
ピストン6には、その軸線部に沿って貫通する通し孔21が設けられ、この通し孔21の両端より外側にはこの通し孔21の径より大きな径の孔が設けられている。
図2には、ピストンロッド10a、10b、及びピストン6が組み立てられた状態を示している。
【0016】
本実施例による組立作業は、以下の工程による。
まず図3に示すように、ピストンロッド10a、10b、及びピストン6を仮組立する。その後、両端部に雄ネジ部28a、28bが形成されている反力ボルト30(引張治具)をピストンロッド10b内に挿入し、その一方の雄ネジ部28aをピストンロッド10aの先端部の雌ネジ部26にネジ結合させる。そして反力ボルト30の他方の雄ネジ部28bに、それに対向して雌ネジ部33が形成されている反力プレート32(引張治具)のその雌ネジ部33をネジ結合させる。
【0017】
次に図4に示すように、ピストン6のバルブ16用の孔が無い部分と反力プレート32の間にジャッキ34を配置して、このジャッキ34により反力プレート32にそれをピストンロッド10bから引離す側(図中左側)に荷重を付加することで、反力ボルト30の雄ネジ部28aを介して、ピストンロッド10aの先端部内側の雌ネジ部26を引張ることにより、ピストンロッド10aの雄ネジ部18に最大減衰力以上の引張り荷重を加える。このことにより、ピストンロッド10aの段部22が接触するピストン6の接触面と段部22との間にも同等の、最大減衰力以上の荷重が発生する。ちなみに最大減衰力とは、油圧式制震ダンパ2の制震動作時に作用する最大荷重を意味するものとする。
【0018】
逆に、ピストンロッド10bの肩部24が接触するピストン6の接触面と肩部24との間では、上記同等の荷重分だけ軽減されるか、またはピストンロッド10aの段部22と雄ネジ18の間の部分の伸びにより隙間が生ずることとなる。このことにより、ピストンロッド10bの雌ネジ部20はピストンロッド10aの雄ネジ部18に更に締め付けることができ、このことにより、ピストンロッド10bの肩部24が接触するピストン6の接触面にその肩部24が隙間無く接触する。
【0019】
上記ピストンロッド10bの雌ネジ部20をピストンロッド10aの雄ネジ部18へ締め付けて肩部24がピストン6の接触面に接触した後に、ジャッキ34を外して反力ボルト30による荷重を解除すると、ピストンロッド10aと反力ボルト30の間に生じていた引張り荷重が、ピストンロッド10aの段部22とピストンロッド10bの肩部24の間に生じることとなり、ピストン6はピストンロッド10aと10bの間に最大減衰力以上の荷重で挟み込まれることとなる。
【0020】
以上の作業終了後に反力ボルト30及び反力プレート32を取り外すことにより、ピストン6とピストンロッド10a、10bの組立作業が完了する。この結果、ピストンロッド10aの段部22及びピストンロッド10bの肩部24の各々とピストン6の接触面との間には、ピストン6の軸線方向に油圧式制震ダンパ2の最大減衰力以上の荷重が加わっているため、油圧式制震ダンパ2の制震動作時に、雄ネジ部18と雌ネジ部20の締付けが緩んでピストン6の固定が緩むことはない。
【0021】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明による油圧式制震ダンパによれば、ピストンが一対のピストンロッド間に所定値以上の荷重で挟み込まれるので、油圧式制震ダンパの制震動作時にピストンロッド間に挟みこまれたピストンの固定が緩まないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による油圧式制震ダンパの一実施の形態に係るピストン6とピストンロッド10a、10bを組み立てる前の状態を示す各々の断面図である。
【図2】図1におけるピストン6とピストンロッド10a、10bを組み立てた状態を示す断面図である。
【図3】図2におけるピストン6とピストンロッド10a、10bの組み立て工程を示す断面図である。
【図4】図2におけるピストン6とピストンロッド10a、10bの別の組み立て工程を示す断面図である。
【図5】従来の一般的な油圧式制震ダンパ2の断面図である。
【図6】従来のピストン6及びピストンロッド10の構造を示す側面図である。
【図7】他の従来のピストン6及びピストンロッド10の構造を示す断面図である。
【図8】他の従来のピストン6及びピストンロッド10a、10bの構造を示す断面図である。
【符号の説明】
2 油圧式制震ダンパ
4 油圧シリンダ
6 ピストン
8a,8b 油圧室
10,10a,10b ピストンロッド
12 連結部材
14 ボールジョイント
16 減衰バルブ
17 ナット
18 雄ネジ部
20 雌ネジ部
21 通し孔
22 段部
24 肩部
26 雌ネジ部
28a 雄ネジ部
28b 雄ネジ部
30 反力ボルト
32 反力プレート
33 雌ネジ部
34 ジャッキ

Claims (4)

  1. 2つのピストンロッドに挟まれて保持されるピストンを有する油圧式制震ダンパにおいて、一方のピストンロッドに所定値以上の引張荷重を付加させた際に生じる他方のピストンロッドとピストンとの隙間を、前記引張荷重を付加させた状態で除去させることによりピストンを保持することを特徴とする油圧式制震ダンパ。
  2. 前記一方のピストンロッドの先端部に引張治具取付部を設けるようにした請求項1に記載の油圧式制震ダンパ。
  3. 前記一方のピストンロッドの先端部と引張治具とがネジ結合により結合されるようにした請求項2に記載の油圧式制震ダンパ。
  4. 前記ネジ結合が制震動作時の最大減衰力に耐え得る強度を有するようにした請求項3に記載の油圧式制震ダンパ。
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