JP4114021B2 - 多孔質成形体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本願発明は、多孔質成形体の製造方法に関する。詳しくは、3次元形状を備えるフィルター等の多孔質成形体を製造するのに好適な製造方法及び製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
たとえば、特開平5 25800号公報に記載されているものの
ように、3次元形状を備えるファイバー成形品等の多孔質成形体は、通常、吸引成形法を用いて形成される。
【0003】
上記吸引成形法は、粒状あるいは繊維状の成形材料を液体中に分散させたスラリーを、多孔状型面を有する吸引成形型内に注入するとともに、成形型面の背後に設けた吸引ポンプによって、上記スラリーの液体成分を上記成形型から吸引し、成形材料を成形型の型面に堆積させることにより型面に沿った形状の成形品を形成する。
【0004】
また、特開平7 51565号公報に記載されているもののように
、成形型をスラリーを満たした容器内に浸漬し、スラリーを型内に吸引充填することにより成形を行う手法も採られている。
【0005】
上記吸引成形法によって充填成形された成形材料は、成形型から取り出されて脱水乾燥させられる。さらに、熱可塑性樹脂繊維等のバインダを含むものは充填成形後加熱装置に移されて加熱され、上記バインダが成形材料を接合して所定形状の多孔質成形体が形成される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記吸引成形法においては、成形型内で脱水乾燥処理や加熱処理を施すことができないため、充填された材料を、生乾きの柔らかい状態で成形型から取り出して、乾燥装置等の他の装置に移動させなければならない。このため、移動中に損傷を受けやすい。また、損傷を受けやすいため工程を自動化するのも困難であり、生産効率が低い。
【0007】
しかも、成形型から取り出した状態で、脱水乾燥工程あるいは加熱処理を行うと、これら工程の間に成形品が大きく変形し、成形品の寸法精度が大きく低下する。
【0008】
また、吸引成形法では、成形型面にほぼ均等に成形材料が積層されるため、各部で異なる肉圧をもつ成形品や、凹凸のある成形品を製造するのは困難である。
【0009】
特に、絡まりやすい短繊維状の成形材料から立体的な成形品を形成する場合、スラリーの流れによって成形品の各部に大きな密度差が生じるため、成形型の全面を透液性材料で形成する必要があり、成形型の製作が困難であった。このため、繊維材料を用いて複雑な三次元形状の多孔質成形品を形成するのは不可能であった。
【0010】
また、従来の成形法においては、バインダが成形材料とともに混練されてスラリーが調整され、成形型に充填された。このため、スラリーが調製困難なバインダは使用することができなかった。たとえば、水性スラリーを採用する場合、油性の液体バインダは使用することが困難であった。
【0011】
しかも、スラリーの充填特性を確保するため、添加量にも制限があった。一方、過剰なバインダを添加する場合も多く、バインダによって多孔質成形体の空隙率が低下することがあった。
【0012】
本願発明は、上述の事情のもとで考え出されたものであって、上記従来の問題を解決し、一つの成形型で、充填及び乾燥のみならず、加熱等の成形作業の全てを行うことができ、生産効率及び寸法精度が高く、しかも、種々の形状の多孔質成形品に適用できるだけでなく、これまでにないバインダを採用できるとともに、最適な量のバインダを添加することが可能な多孔質成形体の製造方法を提供することをその課題とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本願発明では、次の技術的手段を講じている。本願の請求項1に記載した発明は、型面の少なくとも一部に液体を通過させる排出孔を設けた成形型内に、粉粒状又は/及び短繊維状の成形材料を含むスラリーを注入するとともに、上記排出孔からスラリ中の液体成分を排出させながら所定量の成形材料を成形型内に充填する成形材料充填工程と、所定量の成形材料が充填された成形型内に空気を吹き込むことにより、成形材料あるいは成形材料間に残留した液体成分を、上記排出孔から強制排出する脱水・乾燥工程と、液体状バインダを成形型内に注入するとともに、成形型内に空気を吹き込むことにより余分のバインダを上記排出孔から強制排出するバインダ注入工程とを含む、多孔質成形体の製造方法に関する。
【0014】
本願発明は、成形型内に成形材料を充填した後、そのままの状態で脱水及び乾燥処理を行う。したがって、脱水処理が行われて成形材料の保形性が高まったから成形型から取り出すことができる。このため、これらの処理を行うために生乾きの材料を成形型から取り出す必要はなくなり、成形材料が損傷を受けることもなくなる。しかも、製造工程を大幅に削減できる。
【0015】
また、成形型内に空気を吹き込むことにより脱水乾燥処理を行うため、乾燥するまで成形品が型面から遊離することもなく、精度の高い成形品を製造することができる。また、脱水・乾燥処理に必要な時間を大幅に短縮できる。したがって、生産効率が大幅に向上する。上記排出孔は、成形型の型面の少なくとも一部に設ければよく、成形品の形状等に応じて設定できる。また、排出孔の数も限定されることはない。
【0016】
さらに、本願発明では、液体状バインダを成形型内に注入するとともに、成形型内に空気を吹き込むことにより余分のバインダを上記排出孔から強制排出するバインダ注入工程を行う。
【0017】
上記バインダ注入工程は、成形材料を成形型内に充填した後に、バインダを添加するものである。バインダを含むスラリーが調製困難な場合に適用できる。また、水性バインダのみならず有機系のバインダや、気体状のバインダを適用することも可能となり、バインダ選択の幅が広がる。
【0018】
また、成形材料を接合するのに必要なだけの液体状バインダを成形材料に添加することが可能となり、成形品をバンイダ液に浸漬する場合のように、過剰なバインダによって多孔質成形体の空隙率が低下することはなくなる。また、成形材料の特性を充分に発揮させる多孔質成形体を形成することができる。
【0019】
たとえば、水を主としたスラリーによって成形材料を充填し、脱水乾燥を行った後に、バインダとしての樹脂エマルジョン等を成形型内に注入する。そして、空気を吹き込んで、余分な樹脂エマルジョンを排出孔から強制排出させる。その後、上位エマルジョンが自然に硬化するのを待ち、あるいは、加熱空気等を吹き込んで強制的に硬化させることができる。
【0020】
本願の請求項2に記載した発明は、充填された上記成形材料を成形型内で互いに接合させて多孔質成形体を形成する型内成形工程を含むものである。
【0021】
本願発明においは、成形型内で脱水・乾燥工程を行うことができる。したがって、水分が蒸発することにより成形材料が互いに接合する場合は、材料を注入した成形型内で最終的な成形体を形成することができる。また、水性のバインダ等を採用した場合にも、脱水・乾燥工程において上記バインダを硬化させることができるため、成形型内で成形材料を接合させて成形体を形成できる。
【0022】
本願の請求項3に記載した発明は、上記成形材料を、注入口を移動させながら上記成形型内に注入することを特徴とするものである。
【0023】
従来の成形方法では、成形材料を均一な密度で充填できる厚さ、形状は限られており、凹凸等のある外面形状を備える成形体を製造することは困難であった。本願発明では、注入口を移動させながら成形材料を成形型内に注入するため、成形型の型面形状等に応じて成形材料の積層量をコントロールすることができる。たとえば、型面の凹部に集中的に成形材料を充填する一方、平坦面や凸部の充填量を減少させることができる。
【0024】
また、成形型内におけるスラリーの流れを見込んで成形材料を注入することができるため、成形型の全面に排出孔を設ける必要がなくなる。このため、成形型の製作がきわめて容易となる。
【0025】
さらに、成形型の隅々にまで成形材料を確実に充填することができるため、複雑な三次元形状の多孔質体を形成することも可能となる。また、絡まりやすい繊維状の成形材料を成形型の隅々にまで充填することも可能となり、従来の製造法では不可能であった短繊維を集合させた複雑な三次元形状の多孔質成形体を容易に形成することが可能となる。
【0026】
本願の請求項4に記載した発明は、スラリーの注入量及び/又は注入口の移動速度を変化させながら、成形型内にスラリーを注入することを特徴とするものである。
【0027】
スラリーの注入量及び/又は注入口の移動速度を変化させることにより、成形型の特定の部分の材料充填密度を高めることができる。このため、成形材料の充填されにくい部位等に均一に成形材料を充填することが可能となり、複雑な形状を備える成形品に対応できる。また、充填密度が各部で異なる成形体を形成することも可能となり、従来にはない多孔質成形体を得ることができる。
【0028】
本願発明においては、成形型内で充分に脱水乾燥を行うことができるため、型内でそのまま加熱して熱可塑性樹脂バインダを溶融させ、成形材料を接合させて成形品を得ることができる。したがって、工程を削減できるばかりでなく、生産効率を大幅に向上させることができる。
【0029】
加熱方法は特に限定されることはなく、ヒータ等で成形型を加熱したり、電磁誘導加熱等を利用できる。
【0030】
本願の請求項に記載した発明は、上記型内成形工程が、上記バインダを溶融させる温度以上の加熱空気あるいは加熱気体を成形型内に吹き込むことにより行われるものである。
【0031】
上記加熱空気等の吹き込みは、成形材料を注入する側から行ってもよいし、排出孔側から行うこともできる。また、加熱空気吹き込み用の吹き込み孔を別途設けてもよい。成形型内でバインダを溶融させて成形材料を接合させることができるため、成形型面に沿わせた状態で材料の成形を行うことができる。したがって、寸法精度、形状精度の高い成形品を形成することが可能となる。
【0032】
また、材料の充填から加熱成形まで、すべての工程を一つの成形型内で行うことができるため、生産効率を大幅に向上させることができる。
【0033】
吹き込まれる気体は成形材料等に応じて選択することができ、加熱空気のみならず、成形材料の特性等に応じて窒素等の不活性気体を用いることもできる。
【0034】
本願の請求項に記載した発明は、成形型内に充填された成形材料をプレスして、所定の形状あるいは所定の密度に調整するプレス整形工程を含むものである。
【0035】
成形型の全体に均一に充填された粉粒状あるいは短繊維状の成形材料に圧力を加えても、成形材料を均一に加圧することができない。たとえば、プレスの影響が成形型の奥部にまで届かないため、プレス面の密度が奥部の密度に比べて高くなる。このため、多孔質材料を成形する場合に、プレス等の操作を加えることはほとんどなかった。また、成形材料を注入する注入口近傍は、最終工程まで不定型な形状のままで放置されることが多く、成形終了後に切断等の2次加工の必要があった。
【0036】
本願発明においては、成形型の各部に充填される成形材料の充填密度を、成形型の各部において変化させることができる。このため、プレスによって圧縮整形することを考慮して成形材料を充填することにより、プレス整形工程を行うことが可能となった。また、注入口近傍を整形することが可能となり、二次加工の必要性もなくなる。
【0037】
請求項に記載した発明のように、上記プレス整形工程を、上記成形材料充填工程、上記脱水・乾燥行程、上記型内成形工程のうち、1又は2以上の工程と並行し、あるいはこれら工程の間に行うことができる。
【0038】
すなわち、一部の成形材料を成形型に注入した状態で、プレス整形工程を行って充填材料の密度・形状等を調整し、再び成形材料を充填する。これにより、成形品の所望の部位の密度を調製することができる。また、成形材料充填工程とプレス整形工程とを複数回繰り返すことにより、より均一な充填密度を備える多孔質成形体を得ることができる。また、乾燥空気を吹き込みながら、あるいは加熱空気を吹き込みながらプレス整形工程を行うこともできる。これにより、精度の高い三次元形状を備える多孔質成形体を形成することが可能となり、従来にない形状の多孔質成形体を形成することが可能となる。
【0039】
本願の請求項に記載した発明は、上記成形材料として繊維状活性炭を採用し、この活性炭を水に分散させることにより生成されるスラリーを用いて成形を行うものである。
【0040】
本願の請求項に記載した発明は、請求項1から請求項のいずれかに記載した多孔質体の製造方法によって製造された多孔質体に関するものである。
【0041】
【発明の実施の形態】
以下、本願発明の実施の形態を図に基づいて具体的に説明する。
【0042】
本実施の形態は、繊維状活性炭及び繊維状樹脂バインダを用いて段付き円柱状の多孔質体を形成する場合に、本願発明を適用したものである。本実施の形態に係る製造装置全体の概略構成を図1に示す。
【0043】
図1に示すように、本実施の形態に係る製造装置1は、水性スラリーを調整するスラリー調整槽2と、このスラリー調整槽2で調整された水性スラリーを搬送するポンプ3と、上記水性スラリーが注入される成形型4と、この成形型4に水性スラリーを注入するスラリー注入装置5とを備えて大略構成される。
【0044】
上記スラリー調整槽2は、図示しない攪拌機構によって、水中に上記繊維状活性炭と繊維状バインダとを分散させることができるように構成されている。
【0045】
上記スラリー注入装置5は、図示しない開閉弁及び計量装置と、射出ノズル6とを備えて構成されるとともに、この射出ノズル6を所定の軌跡で移動させながら、水性スラリーを吐することができるように構成されている。
【0046】
上記成形型4は、下型4bと上型4aとから構成されており、これら下型4bと上型4aとを嵌合させることにより、多孔質成形品に対応した成形空間を形成できる。
【0047】
さらに、本実施の形態では、上記上型4aを介して、乾燥空気を上記成形型内に吹き込むことのできるエアポンプ7及びこの空気を加熱する空気加熱装置8が設けられている。
【0048】
本実施の形態においては、成形材料として、平均繊維長3mm、太さ5μmの短繊維状活性炭を採用した。一方、上記繊維状活性炭を接合するバインダとして、この繊維状活性炭とほぼ同じ繊維長及び太さを有し、軟化点110℃のポリエステル繊維を採用した。
【0049】
なお、上記繊維状のバインダに代えて、液体状バインダを採用し、バインダ注入工程を設けてバインダを添加することができる。
【0050】
上記バインダ注入工程は、液体状バインダを成形型内に注入するとともに、成形型内に空気を吹き込むことにより余分のバインダを上記排出孔から強制排出することにより行うことができる。
【0051】
上記バインダ注入工程は、成形材料を成形型内に充填した後に、バインダを添加するものである。バインダを含むスラリーが調製困難な場合に適用できる。また、水性バインダのみならず有機系のバインダや、気体状のバインダを適用することも可能となり、バインダ選択の幅が広がる。
【0052】
また、成形材料を接合するのに必要なだけの液体状バインダを成形材料に添加することが可能となり、成形品をバンイダ液に浸漬する場合のように、過剰なバインダによって多孔質成形体の空隙率が低下することはなくなる。また、成形材料の特性を充分に発揮させる多孔質成形体を形成することができる。
【0053】
たとえば、水を主としたスラリーによって成形材料を充填し、脱水乾燥を行った後に、バインダとしての樹脂エマルジョン等を成形型内に注入する。そして、空気を吹き込んで、余分な樹脂エマルジョンを排出孔から強制排出させる。その後、上位エマルジョンが自然に硬化するのを待ち、あるいは、加熱空気等を吹き込んで強制的に硬化させることができる。
【0054】
上記スラリー調整槽2において、上記繊維状活性炭100部と、上記ポリエステル繊維5部とを、水5000部に混合分散させ、成形材料及び繊維状バインダを含む水性スラリーを調整した。
【0055】
図1に示すように、上記水性スラリーをスラリー調整槽2からスラリーポンプ3を用いてスラリー注入装置5に導き、射出ノズル6から成形型4内に吐出する。
【0056】
図2に本実施の形態に係る製造装置によって形成される多孔質成形体9の外観形状を示す。この図に示すように、多孔質成形体9は、直径の異なる円柱を二段に重ねた段付き円柱形状に形成されており、従来の吸引成形法等では、小径円柱部9aと大径円柱部9bに均一な密度で成形材料を注入するのが困難であり、大きな歪みや変形が生じることが多かった。特に、大径円柱部9bと小径円柱部9aの接合部分に隅部が形成されるため、この部分の収縮が大きく、外観形状が大きく崩れるといった問題があった。
【0057】
図7に示すように、本実施の形態に係る成形型4は、段付き円筒状の成形空間を備える下型4bと、上記下型4bの上部開口に嵌合させられて、成形体に対応した成形空間を形成する上型4aとを備える。
【0058】
上記下型4bの上記大径円柱底部の段付き部10と、小径円柱部の底面11に対応する部分には、液体を通過させるための多数の排出孔12が形成されている。なお、本実施の形態では、作用を説明するために、上記排出孔12の径を実際より大きく表してある。
【0059】
一方、上記上型4aは、上記下型4bの上部開口に嵌合させられる下部材14と上記エアポンプ7及び空気加熱装置8に接続される上部材15とから形成されている。
【0060】
上記下部材14の底面は上記下型4bと共働して成形空間を仕切る型面13が形成されているとともに上部に円形凹部16が形成されており、この凹部16から上記型面13に連通する多数の孔が形成されている。上記上部材15は、上記円形凹部16を覆うようにして上記下部材14に連結されるとともに中央部に空気導入口18が設けられている。
【0061】
本実施の形態に係るスラリー注入装置5は、図示しない数値制御駆動機構を用いて、射出ノズルを所望の軌跡に沿って移動させながら、水性スラリーを成形型内に注入できるように構成されている。
【0062】
図3ないし図6に成形材料を含む水性スラリー19を充填する態様を示す。図3に示すように、上記射出ノズル6は、まず小径円柱成形空間の底部から成形材料の充填を開始する。上記射出ノズル6は、小径円柱部に挿入され、外周壁に沿う平面視円弧状軌跡を描きつつ上方へ向かって移動しながら水性スラリーを射出する。これにより、成形型の隅部にまで充分に成形材料を注入することができる。水性スラリーを成形型に注入すると、大部分の水分20は底面に形成した排出孔12から排出され、図4に示すように、繊維成分からなる成形材料21のみが成形型内に集積されていく。
【0063】
小径円柱部への成形材料21の充填が終了すると、図5に示すように、大径円柱部へスラリーが注入される。この大径円柱部においては、射出ノズル6を、半径方向内方へ向かう螺旋状軌跡と半径方向外側へ向かう螺旋軌跡とを交互に描きながら上方へ次第に移動させる。上記射出ノズル6の移動により、成形材料をほぼ均一に充填することができる。上記充填工程中、スラリーに含まれる水分は、上述したと同様に、段付き部10及び底部11に形成した排出孔12から排出される。
【0064】
図6に示すように、下型4b内への成形材料の充填が終了した後、下型4bの上部開口に上型4aを嵌合させる。上記上型4aによって、充填された成形材料の上部が押圧され、所定の成形品形状に整形される。
【0065】
成形材料21を成形型に充填しただけでは、成形材料の各繊維間、あるいは各繊維中に多量の水分が保持された状態となる。本実施の形態では、上型4aの空気導入口18に乾燥空気を導入するとともに、型面13に形成した孔17を介して、成形空間に乾燥空気22を吹き込む。上記乾燥空気22を吹き込むと、成形材料21を構成する各繊維間に保持された水分が上記排出孔12から強制的に排除されるとともに、繊維状活性炭繊維内部に残留した水分も蒸発させられて排出され、成形材料が脱水・乾燥させられる。
【0066】
次に、上記空気加熱装置8を作動させ、約130℃の温度の加熱空気を吹き込む。上記加熱空気を吹き込むと、成形材料中に配合した繊維状バインダが溶融し、繊維状活性炭を互いに接合させる。これにより、繊維状活性炭が上記バインダを介して接合され、多孔質成形体が形成される。
【0067】
さらに、本実施の形態においては、上記繊維状バインダを溶融させて繊維状活性炭を接合させた後、冷却空気を吹き込むことにより成形体及び成形型を冷却する。その後、多孔質整形体を成形型4から取り出す。実施の形態においては、下型4bを、大径円筒部と小径円筒部とに分割できるように構成しているため、これらを分割させることにより、成形空間から成形体を容易に取り出すことができる。
【0068】
本実施の形態においては、成形材料を成形型内に密度むらなく充填できるとともに、成形型内において、脱水・乾燥行程、加熱成形工程を施すことができる。このため、一つの装置内で成形体を完成させることが可能となり、吸引成形法等の従来の成形方法に比べて作業工程を大幅に削減することができる。
【0069】
また、成形途中で成形品を成形型から取り出す必要がないため、搬送途中で変形したり、損傷を受ける恐れもない。
【0070】
しかも、一つの型内ですべての加工工程を行うことができるため、製造工程を自動化することも容易であり、生産効率を大幅に高めることができる。
【0071】
また、各部で異なる肉圧をもつ成形品や、凹凸のある成形品を製造するのも容易である。
【0072】
さらに、射出ノズルの移動軌跡、速度を調整することにより、複雑な三次元形状にも対応することが可能となる。
【0073】
本願発明の範囲は、上述した実施の形態に限定されることはない。実施の形態では、段付き円柱状の成形体に本願発明を適用したが、他の形状に適用することもできる。
【0074】
また、実施の形態では、射出ノズルを移動させながら、スラリーを注入したが、成形型と射出ノズルは相対的に動けばよく、成形型と射出ノズルの一方、又は双方を移動させることができる。また、移動方向等も実施の形態に限定されることはない。
【0075】
また、実施の形態では、成形材料として繊維状活性炭を採用したが、他の形態を備える種々の成形材料を採用できる。また、液体に分散しなくとも、液体流で搬送して成形型内に充填できるものであればよく、粒状の石質材、金属、樹脂等を採用できる。また、固形廃棄物を粉砕して利用することもできる。
【0076】
また、実施の形態では、一種の成形材料を用いて成形体を形成したが、粒度、種類等の異なる複数種類の成形材料を順に成形型に充填して、複数層からなる多孔質成形体を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明に係る製造装置の概略構成を示す図である。
【図2】実施の形態で製造される成形体の外観形状を示す図である。
【図3】成形材料を下型に充填している状態を表す断面図である。
【図4】成形材料を下型に充填している状態を表す断面図である。
【図5】成形材料を下型に充填している状態を表す断面図である。
【図6】成形材料を下型に充填している状態を表す断面図である。
【図7】上型を下型に嵌合させた状態を表す断面図である。
【符号の説明】
1 製造装置
2 スラリー調製槽
4 成形型
5 スラリー注入装置
6 射出ノズル(注入口)
7 エアポンプ(吹き込み装置)
8 加熱装置

Claims (9)

  1. 型面の少なくとも一部に液体を通過させる排出孔を設けた成形型内に、粉粒状又は/及び短繊維状の成形材料を含むスラリーを注入するとともに、上記排出孔からスラリ中の液体成分を排出させながら所定量の成形材料を成形型内に充填する成形材料充填工程と、
    所定量の成形材料が充填された成形型内に空気を吹き込むことにより、成形材料あるいは成形材料間に残留した液体成分を、上記排出孔から強制排出する脱水・乾燥工程と、
    液体状バインダを成形型内に注入するとともに、成形型内に空気を吹き込むことにより余分のバインダを上記排出孔から強制排出するバインダ注入工程とを含む、多孔質成形体の製造方法。
  2. 充填された上記成形材料を上記成形型内で互いに接合させて多孔質成形体を形成する型内成形工程を含む、請求項1に記載の多孔質成形体の製造方法。
  3. 上記成形材料を、注入口を移動させながら上記成形型内に注入することを特徴とする、請求項1又は請求項2のいずれかに記載の多孔質成形体の製造方法。
  4. スラリーの注入量及び/又は注入口の移動速度を変化させながら、成形型内にスラリーを注入することを特徴とする、請求項3に記載の多孔質成形体の製造方法。
  5. 上記型内成形工程が、上記バインダを溶融させる温度以上の加熱空気あるいは加熱気体を成形型内に吹き込むことにより行われる、請求項2から請求項4のいずれかに記載の多孔質体の製造方法。
  6. 成形型内に充填された成形材料をプレスして、所定の形状あるいは所定の密度に調整するプレス整形工程を含む、請求項1から請求項のいずれかに記載の多孔質体の製造方法。
  7. 上記プレス整形工程は、上記成形材料充填工程、上記脱水・乾燥行程、上記型内成形工程のうち、1又は2以上の工程と並行し、あるいはこれら工程の間に行われる、請求項1から請求項のいずれかに記載の多孔質体の製造方法。
  8. 上記成形材料が繊維状活性炭であり、上記活性炭を水に分散させることによりスラリーが形成されている、請求項1から請求項のいずれかに記載の多孔質体の製造方法。
  9. 請求項1から請求項のいずれかに記載した多孔質体の製造方法によって製造された多孔質体。
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