JP4113772B2 - 負イオン源および負イオンビーム発生方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、放電プラズマを発生させて、発生した放電プラズマから負イオンを引き出すことにより負イオンビームを発生させる負イオン源および負イオンビーム発生方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
負水素イオンビーム等の負イオンビームは、100keVを超える高エネルギ領域においては中性ビームへの変換効率が良好である。このため、プラズマ加熱を伴い高エネルギの原子ビームを必要とする核融合炉の中性粒子入射装置(NBI:Neutral Beam Injector)のイオン源として従来提案される負イオン源が注目されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
従来の負イオン源は、容器状の放電容器の開口部を、複数の貫通孔を設けた電極で閉塞し、放電容器の内部において磁界を形成するとともに放電容器の内部に水素ガスHとアルカリ金属蒸気とを導入し、かつ放電プラズマを発生させることにより体積生成法と表面生成法とを併用して負水素イオンHを生成するものである。
【0004】
さらに、放電容器の開口部の電極に貫通孔を設けた板状の電極を複数個並設して設けるとともに各電極間に引出電源と加速電源とを接続して、放電容器内で生成した負水素イオンHを放電容器の開口部における電極の貫通孔から引き出して加速させることにより所定のエネルギの負イオンビームを放出するものである。
【0005】
しかし、従来の負イオン源においては、負水素イオンHを所定のエネルギに加速するための各電極間において放電容器から漏れ出した原料ガス等の残留ガスと負水素イオンHとの反応で副生された正水素イオンH が、負水素イオンHとは逆方向に加速されて電極に衝突し、電極材料原子をスパッタしたり、電極表面の付着ガス分子を叩き出すという現象が生じていた。
【0006】
このため、従来100keVを超える高エネルギの負イオンビームを発生させる負イオン源における電極の構成として図15に示すものが提案される(例えば非特許文献1あるいは非特許文献2参照)。
【0007】
従来提案される負イオン源1の電極構成は、負水素イオンXを加速するために6枚の電極で構成され、そのうち上流側の4枚の電極には多数の貫通孔2が整列配置して設けられて上流側電極3とされ、下流側の2枚の電極には、上流側電極に整列配置して設けられた多数の貫通孔2の各軸を包含するスリット4を長手方向が同方向となるように整列配置して設けられて、下流側電極5とされる。
【0008】
正水素イオンH の発生量を低減させるためには、残留ガスの各電極間における密度を小さくすることが効果的である。残留ガスは、各電極間を経由したのち図示しない真空ポンプにより排気される。
【0009】
このため、負イオン源1は、下流側電極5に貫通孔2を設ける代わりにスリット4を設け、残留ガスを排気する際のコンダクタンスを大きく設定することにより、各電極間における残留ガスの密度を小さくして正水素イオンH の発生を抑制するものである。
【0010】
【特許文献1】
特開2001−057160号公報(第3頁−第4頁、図12参照)
【0011】
【非特許文献1】
堀池 寛他、"負イオンビームを用いた500keV20MW中性粒子入射装置の概念設計"、JAERI−M 86−064、1986年4月発行、第18頁―第27頁
【0012】
【非特許文献2】
Y.Ohara, et al., "BEAM OPTICS OF A MULTI-SINGLE TYPE NEGATIVE ION BEAM ACCELERATOR", Proceedings of the Twelfth Symposium of Ion Sources and Ion-Assisted Technology, '89 Tokyo,1989年発行,第143頁−第146頁
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来提案される負イオン源においては水素ガス等の残留ガスの排気量を大きくすることができるものの、下流側電極5の各スリット4が、その長手方向の向きが同一の方向となるように整列配置されるため、上流側電極3間の領域で生成されて各電極の貫通孔2の軸上を通過する電子は500keV付近まで加速される。
【0014】
各電極を通過して加速された加速電子は質量が負水素イオンHに比べて軽く、核融合炉でプラズマを閉じ込めるための磁場あるいはその他の磁石の作る磁場の影響で容易に軌道偏向を受けるため、各電極3、5や負イオン源1と図示しない核融合炉の間をつなぐビームラインの壁面に衝突して熱負荷を与える。さらに、ビームラインや電極3、5は熱負荷に伴って溶融する恐れがあり、負イオン源1ないし中性粒子入射装置の信頼性の低下に繋がる。
【0015】
また、このような加速電子は軌道偏向により核融合炉のプラズマ内に入射することが殆どなく、プラズマ加熱エネルギとして用いられることはない。このため引出電源あるいは加速電源から供給される負イオン引出電力あるいはビーム加速電力のうち、加速電子に与えられる電力は損失となり負イオン源1ないし中性粒子入射装置の稼働効率の低下に繋がる。
【0016】
本発明はかかる従来の事情に対処するためになされたものであり、正イオンや電子の高エネルギ化を抑制することにより、より低出力の電力で効率的に負イオンビームを発生させることが可能な負イオン源および負イオンビーム発生方法を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る負イオン源は、上述の目的を達成するために、請求項1に記載したように、開口部を有する放電容器と、この放電容器の開口部に絶縁体を介して閉塞するように並設され、かつ複数の貫通孔をそれぞれ有する少なくとも2つの負イオン引出電極と、前記放電容器の内部を真空状態にして原料ガスを導入し、放電によって所要の放電プラズマを生成する放電プラズマ生成系と、各負イオン引出電極間に電界を形成させることにより前記放電容器内に生成した放電プラズマから負イオンを各負イオン引出電極の貫通孔を経由させて外部に引き出す引出電源と、引き出された負イオンの経路中に設けられ、複数のスリットをそれぞれ有する複数の負イオン加速電極と、この負イオン加速電極間に電界を形成させることにより負イオンを加速させて負イオンビームを生成する加速電源とを具備し、共通の負イオン加速電極上のスリット同士はその長手方向が同様な方向となるように整列配置される一方、隣接する負イオン加速電極上のスリット同士の長手方向が負イオンの進行方向に沿う線に垂直な面上において互いに所定の角度をなして設けられるように構成したことを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明に係る負イオンビーム発生方法は、上述の目的を達成するために、請求項14に記載したように、複数の貫通孔を有し並設された複数の負イオン引出電極で開口部を閉塞した放電容器内を真空状態にして原料ガスを導入するステップと、前記放電容器内に放電プラズマを生成するステップと、前記放電容器内の放電プラズマから負イオンを前記負イオン引出電極間に引出すステップと、引出された負イオンの進行経路上に、複数のスリットを有する複数の負イオン加速電極を、共通の負イオン加速電極上のスリット同士はその長手方向が同様な方向となるように整列配置し、かつ隣接する負イオン加速電極上のスリット同士の長手方向が負イオンの進行方向に沿う線に垂直な面上において互いに所定の角度をなすように配置するステップと、負イオン加速電極間に電界を形成して負イオンを導くことにより負イオンを所要のエネルギに加速して負イオンビームを生成するステップと、負イオン加速電極間に存在する電子および正イオンのうち少なくとも一方を負イオン加速電極の隣接するスリット間の間隙部に衝突させてエネルギ増加を抑制するステップとを有することを特徴とする方法である。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明に係る負イオン源および負イオンビーム発生方法の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
【0020】
図1は本発明に係る負イオン源の第1の実施形態を示す断面図である。
【0021】
負イオン源10は開口部を有する箱型の放電容器11を具備する。そして放電容器11の四方の側壁面12の開口部側に絶縁材13を介して板状の第1の電極14が設けられることにより放電容器11が閉塞される構成である。
【0022】
放電容器11の閉口側壁面15には、放電容器11の内外を貫通するガス導入口16とアルカリ金属蒸気導入口17とが設けられる。そして、放電容器11外部にはガス源18が設けられ、このガス源18に接続されたガス配管19は放電容器11のガス導入口16と接続される。さらに、放電容器11外部にはアルカリ金属オーブン20が設けられ、このアルカリ金属オーブン20に接続されたアルカリ金属蒸気配管21は放電容器11のアルカリ金属蒸気導入口17と接続される。
【0023】
なお、ガス導入口16とアルカリ金属蒸気導入口17とは放電容器11の閉口側壁面15に限らず、放電容器11の四方の側壁面12の任意の部位に任意数箇所設けてもよい。
【0024】
そして、ガス源18からは原料ガスの一例である水素ガスがガス配管19およびガス導入口16を介して放電容器11の内部に導入されるように構成される一方、アルカリ金属オーブン20は、アルカリ金属を加熱し蒸気化することによりアルカリ金属蒸気を生成し、この生成されたアルカリ金属蒸気がアルカリ金属蒸気配管21およびアルカリ金属蒸気導入口17を介して放電容器11の内部に導入されるように構成される。
【0025】
また、放電容器11の閉口側壁面15の外側には複数の棒状の磁石22が設けられる。このとき各磁石22の極性は閉口側壁面15に垂直な向きで、かつ隣接する磁石22の極性は互いに異なる向きとされる。同様に、放電容器11の四方の側壁面12には、複数の棒状の磁石22が側壁面12に設けられ、各磁石22の極性は側壁面12に垂直な向きで、かつ隣接する磁石22は互いに極性が異なる向きとされる。このため、閉口側壁面15と側壁面12において隣接する各磁石22間に磁力線X1が形成される。
【0026】
さらに、放電容器11の側壁面12における第1の電極14の近傍には、フィルタ磁石23が設けられる。フィルタ磁石23は側壁面12に設けられた他の磁石22よりも残留磁束密度が大きく、かつ放電容器11内部を挟んで向かい合う側壁面12に対をなして1組ないし複数組設けられる。そして、各フィルタ磁石23の極性は全て側壁面12に垂直で互いに同じ向きとされる。
【0027】
このため、一方の側壁面12のフィルタ磁石23から対向する他方の側壁面12のフィルタ磁石23に向かう磁力線が形成され、形成されたフィルタ磁石23の磁力線により磁気フィルタX2が構成される。
【0028】
この結果、放電容器11内部は磁気フィルタX2により区画されて閉口側壁面15側の第一室24と第1の電極14側の第二室25とが形成される。
【0029】
さらに、放電容器11内部の第一室24には、単一あるいは複数のフィラメント26が放電容器11の側壁面12および閉口側壁面15と絶縁された状態で設けられる。そして、放電容器11の側壁面12および閉口側壁面15を陽極としてフィラメント26が陰極を形成する。このため、フィラメント26と放電容器11の側壁面12および閉口側壁面15との間に電圧を印加することにより放電容器11内を放電することができる。
【0030】
一方、放電容器11の開口部を閉塞する第1の電極14には、放電容器11の内外を貫通する複数の貫通孔27が設けられる。
【0031】
また、第1の電極14の放電容器11の反対側には板状の第2の電極28が絶縁材13を介して所定の間隔をおいて並設され、さらに第2の電極28の放電容器11の反対側には板状の第3の電極29が、第3の電極29の放電容器11の反対側には板状の第4の電極30が絶縁材13を介して所定の間隔をおいて並設される。
【0032】
そして、第1の電極14と第2の電極28とが負イオン引出電極としての機能を果たし、第3の電極29と第4の電極30とが負イオン加速電極としての機能を果たすように構成される。
【0033】
図2は、図1に示す第1から第4までの電極14、28、29、30の詳細な構成を示す断面図であり、図3は図1に示す第2の電極28から第4の電極30までの形状を示す斜方向からの断面図である。
【0034】
第2の電極28には複数の貫通孔31が第1の電極14の貫通孔27に対応する位置に設けられる。第2の電極28の貫通孔31は、第1の電極14から第3の電極29に向かう向きで孔径が大きくなるようにテーパ加工され、更に第2の電極28の貫通孔31の第3の電極29側端部の孔径がテーパ加工部の孔径よりも小さい径とされて電子トラップ32が形成される。
【0035】
また、第2の電極28の内部には複数の棒状の磁石33が内蔵されて設けられる。これら磁石33の極性は貫通孔31の軸方向であり、かつ貫通孔31を挟んで隣接する磁石33の極性は互いに逆向きとされる。このため、貫通孔31を挟んで隣接する一方の磁石33から他方の磁石33に向かう磁力線X3が形成される。
【0036】
さらに、第2の電極28の内部には冷却用の冷却水が流れる水冷パイプ34が内蔵されて設けられる。
【0037】
また、第3の電極29および第4の電極30にはそれぞれ複数のスリット35、36が設けられる。このとき第3の電極29の各スリット35は規則的に同様な方向となるように配置され例えば互いに平行に設けられる。但し、第3の電極29の各スリット35は互いに所要の角度をなしていてもよく、さらに各スリット35は直線状でなく曲線状、断続的な線分状、線分同士が所要の角度で連続した線状に形成されてもよい。
【0038】
同様に第4の電極30の各スリット36も規則的に同様な向きで配置され例えば互いに平行に設けられる。
【0039】
一方、第3の電極29のスリット35の長手方向X4と第4の電極30のスリット36の長手方向X5とは互いに所定の角度αをなす向き例えば直角に設けられる。
【0040】
さらに、第2の電極28の貫通孔31の各軸が第3および第4の電極29、30の各スリット35、36内を通るように構成される。
【0041】
そして、第1の電極14と第2の電極28の間には引出電源37が接続される。さらに第2の電極28と第3の電極29の間および第3の電極29と第4の電極30の間には加速電源38が接続される。この引出電源37および加速電源38により放電容器11側の電極14、28、29の電位が放電容器11側から離れた側の電極28、29、30の電位に対して負となるように各電極14、28、29、30間に電位が印加され、各電極14、28、29、30間に一様な方向に電界が形成される。
【0042】
また、第3の電極29と第4の電極30との間には真空ポンプ39が設けられ、放電容器11内および各電極14、28、29、30間の領域に残留するガスを負イオン源10の外部に排気できるように構成される。
【0043】
ただし、真空ポンプ39を設ける位置は任意であり、放電容器11内および各電極14、28、29、30間の領域を真空状態にできるように構成されていればよい。
【0044】
そして、放電容器11内を真空状態にする真空ポンプ39、放電容器11内に原料ガスを導入するガス源18およびガス配管19、放電容器11内に放電する放電フィラメント26により放電容器11内に放電プラズマを生成させるための放電プラズマ生成系が形成される。
【0045】
従って、負イオン源10は、少なくとも放電容器11に放電プラズマ生成系、負イオン引出電極、負イオン加速電極、引出電源37、加速電源38とを備えていれば、その他の構成は必要に応じて設けられればよい。さらに、このとき引出電源37は加速電源38を兼ねてもよい。
【0046】
次に、負イオン源10の作用について説明する。
【0047】
まず、真空ポンプ39によって放電容器11内の気体が排気され真空状態にされる。そして、アルカリ金属がアルカリ金属オーブン20で加熱されて蒸気化し、アルカリ金属蒸気が生成される。このアルカリ金属蒸気は、アルカリ金属蒸気配管21およびアルカリ金属蒸気導入口17を介して放電容器11の内部に導入される。
【0048】
一方、ガス源18からは例えば水素ガスがガス配管19およびガス導入口16を介して放電容器11の内部に導入される。
【0049】
さらに、図示しないフィラメント電源によってフィラメント26に通電して加熱するとともに、図示しないアーク電源によってフィラメント26と放電容器11の側壁面12および閉口側壁面15との間に直流アーク放電を発生させる。このときフィラメント26が陰極、放電容器11の側壁面12および閉口側壁面15が陽極とされる。
【0050】
この結果、放電容器11内には、水素ガスと直流アーク放電とにより放電プラズマが生成される。このとき生成された放電プラズマは磁石22により形成される磁場の作用で放電容器11内に閉じ込められる。
【0051】
そして、放電容器11内においていわゆる体積生成法によって負イオンの一例である負水素イオンHが生成される。体積生成法によれば、負水素イオンHの生成は2段階の原子反応からなるとされる。
【0052】
すなわち式(1)に示すように放電容器11内の水素ガスHと数10〜100eVの高温電子e(f)とが衝突して反応することにより高振動レベルの振動励起水素ガスH と電子eとが生成される。
【0053】
【化1】
+e(f)→H +e ……(1)
【0054】
続いて式(2)に示すように高振動レベルの振動励起水素ガスH と1eV以下の低温電子e(s)が解離的に付着することによって負水素イオンHが生成される。
【0055】
【化2】
+e(s)→H +H ……(2)
【0056】
放電容器11内の第一室24に生成された放電プラズマは第二室25に向かって拡散する。ここで放電プラズマが磁気フィルタX2を横切って通過する際、放電プラズマ中の高温電子e(f)は磁界中のラーマ半径が小さいため、磁気フィルタX2に捕捉される。そして、放電プラズマ中の高温電子e(f)は、放電容器11の第一室24に存在する水素ガスHやイオン等の粒子と衝突してエネルギを失って低温電子e(s)となった後に、磁気フィルタX2を通過して放電容器11の第二室25に到達する。
【0057】
このため、放電容器11内の第一室24には、水素ガスHの励起に適した電子エネルギ分布を持つ高温プラズマが生成される一方、第二室25には振動励起水素ガスH と解離性付着反応を起こすために適した電子エネルギ分布を持つ低温プラズマが生成される。
【0058】
一方、磁界中でのラーマ半径が磁気フィルタX2の厚みに対して大きい水素イオン等の粒子は磁気フィルタX2を通り抜けて第二室25に移動することができる。
【0059】
この結果、放電容器11内の第一室24において式(1)に示す反応が起こり水素ガスHと高温電子e(f)とが衝突して振動励起水素ガスH が生成される。さらに、第一室24において生成された励起水素ガスH は磁気フィルタX2を越えて第二室25に拡散する。そして、第二室25に拡散した励起水素ガスH が低温電子e(s)と衝突して式(2)に示す解離性付着反応を起こすことにより、負水素イオンHが生成される。
【0060】
また、大電流の負イオンビームYを構成する負水素イオンHを発生させるため、放電容器11内では体積生成法による式(1)および(2)の反応に加えて、いわゆる表面生成法と呼ばれる方法が併用される。
【0061】
すなわち、放電容器11内に導入されたアルカリ金属蒸気は放電容器11内を拡散して第1の電極14の放電容器11内側の表面に付着する。この結果、付着したアルカリ金属蒸気の作用により第1の電極14における放電容器11内側の表面の仕事関数は、下げられるといわれている。
【0062】
そして、放電容器11内の放電プラズマ中で生成された正水素イオンHや中性水素原子H等の粒子が拡散し、仕事関数が下げられた第1の電極14と衝突して第1の電極14から電子を受け取ることにより負水素イオンHが生成される。
【0063】
このように体積生成法と表面生成法との併用により放電容器11内の第二室25に生成された負水素イオンHは、負水素イオンHと同じ荷電極性である電子と共に、引出電源37により形成された電界の作用により第1の電極14の貫通孔27から引き出されて第2の電極28側に導かれる。第1の電極14の貫通孔27から引き出された負水素イオンHと電子とは、引出電源37により形成された電界の作用により第2の電極28に向かって加速される。
【0064】
一方、放電容器11内において水素ガスHは拡散するが、拡散した水素ガスHの一部は第1の電極14の貫通孔27を通過して第1の電極14と第2の電極28との間の領域に流入する。第1の電極14と第2の電極28との間の領域に流入した水素ガスHは負水素イオンHとの間で式(3)に示す反応を起こすことが知られる。
【0065】
【化3】
+H → H+e +H ……(3)
【0066】
すなわち、第1の電極14と第2の電極28との間において水素ガスHと負水素イオンHとが反応することにより負水素イオンHから電子eが離脱し、中性水素原子Hおよび電子eが生成される。
【0067】
さらに、式(3)の反応に加えて第1の電極14と第2の電極28との間の領域に流入した水素ガスHと負水素イオンHとが衝突することにより例えば式(4)に示す反応も起こり得る。
【0068】
【化4】
+H +H +e ……(4)
【0069】
すなわち、第1の電極14と第2の電極28との間において水素ガスHと負水素イオンHとが衝突して水素ガスHが電離され、正水素イオンH とともに電子eが生成される。
【0070】
さらに、第1の電極14あるいは第2の電極28の表面からは粒子の衝突や熱等の要因により二次電子が放出される。
【0071】
式(3)および式(4)の反応により生成された電子eや第1の電極14あるいは第2の電極28の表面から放出された二次電子eは、第1の電極14の貫通孔27から引き出された負水素イオンHと電子eとともに引出電源37により形成された電界の作用により第2の電極28に向かって加速される。
【0072】
ここで、第2の電極28に内蔵された複数の磁石33の作用により、第2の電極28の貫通孔31を挟んで隣接する一方の磁石33から第1の電極14と第2の電極28との間の領域あるいは第2の電極28の貫通孔31内を経由して第2の電極28の他方の磁石33に向かう磁力線X3が形成される。
【0073】
このため、第2の電極28に内蔵された磁石33により形成される磁力線X3の作用により、第1の電極14の貫通孔27に対応して設けられた第2の電極28の貫通孔31を通過する負水素イオンHおよび電子のうち電子成分の量が低減され、負水素イオンHが選別される。
【0074】
すなわち、負水素イオンHおよび電子は、第2の電極28に内蔵された磁石33により形成される磁力線X3の作用により軌道偏向される。しかしながら、負水素イオンHのラーマ半径が磁界に対して大きいため負水素イオンHの軌道偏向量は第2の電極28の貫通孔31内部への移動量に対して十分に小さい。このため、負水素イオンHは、第2の電極28の貫通孔31内部へ移動して通過することができる。
【0075】
一方、ラーマ半径が磁界に対して小さい電子は、第2の電極28の貫通孔31内部への移動および通過に影響を与える程十分大きく軌道偏向するため、第2の電極28の貫通孔31内部への電子の量は低減される。
【0076】
さらに、第2の電極28の貫通孔31内において軌道偏向した電子は第2の電極28の電子トラップ32に衝突し、第2の電極28の貫通孔31を通過しないように抑制される。
【0077】
このとき、第2の電極28には軌道偏向した電子およびその他の荷電粒子の衝突による影響で熱が発生するが、第2の電極28内部の水冷パイプ34を流れる冷却水の作用により発生した熱は除去される。
【0078】
一方、第2の電極28の貫通孔31内部へ移動した負水素イオンHは、第2の電極28の貫通孔31を通過して第2の電極28と第3の電極29との間に導かれる。さらに、軌道偏向量が小さく第2の電極28の貫通孔31を通過した電子も第2の電極28と第3の電極29との間に導かれる。
【0079】
また、第1の電極14と第2の電極28との間の水素ガスHは、さらに第2の電極28の貫通孔31を通過して第2の電極28と第3の電極29との間の領域に流入する。このため、第2の電極28と第3の電極29との間との間においても、負水素イオンHと水素ガスHとの間で、式(3)および式(4)等に示す反応が起こって電子および正水素イオンH が生成される。
【0080】
同様に第3の電極29と第4の電極30との間においても式(3)および式(4)等に示す反応が起こって電子および正水素イオンH が生成される。
【0081】
また、第3の電極29あるいは第4の電極30の表面からは粒子の衝突や熱等の要因により二次電子が放出される。
【0082】
さらに、式(3)および式(4)等に示す反応は、各電極14、28、29、30間のみならず、負水素イオンHが第4の電極30を通過して、負イオン源10から負イオンビームYが放出された後においても、負イオンビームYのビームライン上の領域等の負イオンビームYが存在する領域において起こり得る。
【0083】
そして、負水素イオンHが存在する領域において生成された電子および正水素イオンH は、プラズマ加熱に使用されず、加速電源38あるいは引出電源37の電力損失となって負イオン源10や中性粒子入射装置の稼動効率の低下に繋がるため、生成量を低減させることが重要である。
【0084】
ここで、式(3)に示す反応により負水素イオンHと水素ガスHとが反応して離脱電子が発生する確率Pは、負水素イオンHが走行する領域の水素ガスHの密度をN、負水素イオンHの走行距離をL、式(3)の反応の衝突断面積σをするとおよそ式(5)で示される。
【0085】
【数1】
P≒1−exp(−NσL) ……(5)
式(5)から脱離電子の発生量を少なくするためには、負水素イオンHが走行する領域において水素ガスHの密度Nを小さくすることができれば良いことが分かる。
【0086】
また、式(3)の反応の衝突断面積σの値は、負水素イオンHのエネルギが10keV程度以下の低エネルギ領域において大きくなる。負水素イオンHが放電プラズマ源である放電容器11から引き出された直後の十分に加速されていない領域においては、負水素イオンHは低エネルギである。
【0087】
このため、負水素イオンHが加速され始める領域となる第1の電極14と第2の電極28との間あるいは第2の電極28と第3の電極29との間における水素ガスHの密度すなわちガス圧力を小さくすることが有効である。
【0088】
負水素イオンHの走行領域である各電極14、28、29、30間の領域における水素ガスHは、放電プラズマ源である放電容器11内において放電プラズマを生成するために導入された原料である水素ガスHの一部が使用されずに、各電極14、28、29、30を通過して漏れ出したものである。
【0089】
そして、各電極14、28、29、30間の領域における水素ガスHは、真空ポンプ39により負イオン源10の外部に排気される。
【0090】
ここで、第3の電極29および第4の電極30にはそれぞれスリット35、36が設けられているため、水素ガスHの透過率が大きく、水素ガスHを容易に透過させることができる。このため、水素ガスHを排気する際のコンダクタンスを大きくすることが可能となり、負水素イオンHの走行領域である各電極14、28、29、30間の領域における水素ガスHの密度を小さくすることができる。
【0091】
そして、負水素イオンHと水素ガスHとが反応することにより離脱電子が発生する確率Pが小さくなって、負水素イオンHの損失率を低減させることができる。
【0092】
なお、第3の電極29および第4の電極30にそれぞれスリット35、36を設けたことにより、仮に貫通孔を設けた場合に比べて、負水素イオンHの損失率が5%程度減少することができる。
【0093】
一方、式(3)ないし式(4)の反応により生成された電子や第3、第4の電極29、30の表面から放出された二次電子は、負水素イオンHおよび第2の電極28の貫通孔31を通過した電子とともに加速電源38により形成された電界の作用により下流側に向かって加速される。さらに、式(4)の反応により生成された正水素イオンH は、正イオンであるため負水素イオンHとは逆方向である上流側に向かって加速される。
【0094】
ここで、第3の電極29および第4の電極30にはそれぞれスリット35、36が設けられ、かつ第4の電極30のスリット36の長手方向X5と第3の電極29のスリット35の長手方向X4とは互いに所定の角度αをなす方向となるように配置される。
【0095】
このため、負水素イオンHは第2の電極28の貫通孔31の軸線方向に向かって第3の電極29のスリット35および第4の電極30のスリット36を通過しつつ加速電源38により所定のエネルギに加速される。
【0096】
一方、電子の質量は負水素イオンHの質量に比べて軽く、磁界が存在すると磁界の影響により容易に軌道偏向する。一般に、核融合炉ではプラズマを閉じ込めるために強力な磁界が形成される。この磁界は第1〜第4の各電極14、28、29、30間の領域においても影響を与えるため、磁界により電子は負水素イオンHに比べて大きい量で軌道偏向する。
【0097】
この結果、電子は加速電源38により加速されるが、加速された電子のうち軌道偏向されて第2の電極28の貫通孔31の軸線方向から十分に異なる方向に向かう電子は、第3の電極29のスリット35間の間隙部位あるいは第4の電極30のスリット36間の間隙部位に衝突してエネルギを奪われる。
【0098】
さらに、式(3)および式(4)等に示す反応により生じた電子および正水素イオンH は衝突により生成されるため、不特定方向に向かう。また、各電極14、28、29、30から放出された二次電子も同様に不特定方向に向かう。したがって、同様に正水素イオンH は加速電源38により加速されたとしても第2の電極28の貫通孔31の軸線方向から十分に異なる方向に向かうものは、第3の電極29のスリット35間の間隙部位あるいは第4の電極30のスリット36間の間隙部位に衝突してエネルギを奪われる。
【0099】
そして、第4の電極30のスリット36から負イオン源10の外部に引き出される電子の量が低減される。さらに、正水素イオンH のエネルギ増加が抑制されるため、第1から第4までの各電極14、28、29、30に衝突したとしても各電極14、28、29、30に与える影響が低減される。そして、正水素イオンH が各電極14、28、29、30に与える影響も分散される。
【0100】
一方、負水素イオンHは、所定のエネルギとなって第4の電極30のスリット36から負イオン源10の外部に引き出される。
【0101】
すなわち、負イオン源10は、容器状の放電容器11の開口部を複数の貫通孔27を設けた第1の電極14で閉塞し、放電容器11の内部において磁界を形成するとともに放電容器11の内部に水素ガス等のガスとアルカリ金属蒸気とを導入し、かつ放電プラズマを発生させることにより体積生成法と表面生成法とを併用して負水素イオンH等の負イオンを生成するものである。
【0102】
さらに、第1の電極14に貫通孔31を設けた板状の第2の電極28とスリット35、36をそれぞれ設けた板状の第3および第4の電極29、30をギャップを設けて並設し、生成した放電容器11内の負水素イオンH等の負イオンを第1の電極14の貫通孔27から引出電源37の作用で引き出すとともに各電極14、28、29、30間において加速電源38の作用で所定のエネルギに加速して放出するものである。
【0103】
そしてこのとき、第3の電極29に設けたスリット35の長手方向X4と第4の電極30に設けたスリット36の長手方向X5とが所定の角度αをなすように配置することにより、各電極14、28、29、30間において副生された電子および正水素イオンH 等の正イオンを第3の電極29および第4の電極30に衝突させてエネルギ増加を抑制させる構成である。
【0104】
従来の負イオン源においては、負水素イオンHを所定のエネルギに加速するための各電極間において副生された正水素イオンH が、負水素イオンHとは逆方向に加速されて電極に衝突し、電極材料原子をスパッタしたり、電極表面の付着ガス分子を叩き出すという現象が生じていた。このため、電極が浸食されるとともに電極表面から叩き出されたガス分子により電極間のガス圧が高められ、絶縁破壊が生じる恐れがあった。
【0105】
このため、従来、数100keVを超えるような高エネルギの負イオン源1においては、負イオンを加速するために電極を複数枚使用する場合が多いため、上流側の電極3に整列配置して設けられた多数の貫通孔2の各軸を包含するスリット4を下流側の各電極5に同方向に設けて水素ガス等の残留ガスの排気量を大きくする構成が提案されていた。
【0106】
しかし、この従来提案される負イオン源1においては水素ガス等の残留ガスの排気量を大きくすることができるものの、下流側の電極5の各スリット4が、その長手方向の向きが同一の方向となるように整列配置されるため、上流側の電極3間の領域で生成されて電極3の貫通孔2の軸上を通過する電子は500keV付近まで加速され得るという問題があった。
【0107】
一方、負イオン源10では、第3の電極29のスリット35の長手方向X4と第4の電極30のスリット36の長手方向X5が互いに所定の角度αをなすため、各電極14、28、29、30に垂直な直線上に第3の電極29および第4の電極30の双方のスリット35、36が存在する部位を除いては、電子および正水素イオンH は各電極29、30のスリット35、36の間隙部分に衝突する。
【0108】
このため、負イオン源10では、水素ガス等の残留ガスの排気量を大きくして密度を小さくし、正水素イオンH の発生を抑制することができるのみならず、電子および生成された正水素イオンH の移動量を低減させるとともに高エネルギまで加速されないようにエネルギ増加を抑制させることができる。
【0109】
そして、電子および正水素イオンH に消費されるエネルギを抑制し、加速電源38や引出電源37の負イオンビーム加速電力ないし引出電力のエネルギ損失量を低減させることができる。このため、負イオン源10および中性粒子入射装置の稼働効率を向上させることができる。
【0110】
また、負イオン源10においては、各電極14、28、29、30あるいは負イオン源10と核融合炉との間をつなぐビームラインの壁面に衝突する電子や逆流正水素イオンH 等の粒子のエネルギを低エネルギ化させて熱負荷を低減させることにより、各電極14、28、29、30あるいはビームラインにおける熱的な溶融の発生を回避させることができる。そして、負イオン源10の信頼性を向上させることができる。
【0111】
さらに、負イオン源10においては、第2の電極28に到達する逆流正水素イオンH の量を少なくすることが可能となり第2の電極28の浸食量を抑え、放出ガス分子による絶縁破壊の発生頻度を小なくさせることができる。
【0112】
なお、第3の電極29のスリット35の長手方向X4の向きと第4の電極30のスリット36の長手方向X5の向きは図3に示す向きに限らず互いに置き換えてもよい。さらに、必要に応じて複数の電極を設けてもよく、この場合、共通の電極上の各スリットの長手方向が互いに同様な向きで整列配置される一方、少なくとも2つの隣接する電極上の各スリット同士の長手方向が互いに所定の角度をなすように設けられていればよい。
【0113】
図4は本発明に係る負イオン源の第2の実施形態を示す斜視方向からの断面図である。
【0114】
図4に示された、負イオン源10Aでは、第2の電極28と第3の電極29との間に低エネルギ領域用加速電極の一例として第5の電極40を設けた構成が図1に示す第1の実施形態による負イオン源10と相違する。他の構成および作用については図1に示す負イオン源10と実質的に異ならないため第2の電極28から第4の電極30までの間の構成以外については図示せずかつ同一の構成については同符号を付して説明を省略する。
【0115】
負イオン源10Aにおいては、第2の電極28と第3の電極29との間に第5の電極40が設けられる。第5の電極40には複数の貫通孔41が設けられる。このとき第5の電極40の貫通孔41は、第5の電極40の貫通孔41の軸が第2の電極28の貫通孔31の軸と同一直線上付近となるような位置に設けられる。
【0116】
また第2の電極28と第5の電極40との間および第5の電極40と第3の電極29との間には加速電源38が設けられ、加速電源38により各電極28、29、30、40間に電圧が印加される。
【0117】
ここで、第2の電極28と第5の電極40とは、同様な形状であるため、第2の電極28と第5の電極40との間に形成される電界は、第5の電極40の貫通孔41の軸および第2の電極28の貫通孔31の軸に対して線対象となる。
【0118】
また、第2の電極28の近傍における負水素イオンHのエネルギは、10keV前後の低エネルギである。
【0119】
このため、負イオン源10Aにおいては、低エネルギ領域の負水素イオンHをより低出力の加速電源38により効率良く加速させることが可能となる。そして、負イオン源10Aでは、負イオン源10の効果に加えて、負水素イオンHの量およびエネルギの損失を低減させてより大電流かつ高効率の負イオンビームYの引き出しを可能とすることができる。
【0120】
なお、負イオン源10Aにおいて、第5の電極40を単一とせずに複数枚の電極により構成してもよい。
【0121】
図5は本発明に係る負イオン源の第3の実施形態を示す斜視方向からの断面図である。
【0122】
図5に示された、負イオン源10Bでは、第2の電極28、第3の電極29および第4の電極30の位置関係が図1に示す第1の実施形態による負イオン源10と相違する。他の構成および作用については図1に示す負イオン源10と実質的に異ならないため第2の電極28から第4の電極30までの間の構成以外については図示せずかつ同一の構成については同符号を付して説明を省略する。
【0123】
負イオン源10Bでは、第3の電極29および第4の電極30のスリット35、36が、所要の位置となるようにスライドされて設けられる。あるいは、スリット35、36の位置が所要の位置となるように第3の電極29および第4の電極30がスライドされて配置される。
【0124】
例えば、第3の電極29のスリット35の位置を、スリット35の長手方向X4にスライドさせる。この結果、第3の電極29のスリット35端部を通り第2の電極28の貫通孔31の軸と平行な線と、第2の電極28の貫通孔31のうち第3の電極29のスリット35の端部側の貫通孔31の軸とが一定の距離aだけスライドされる。
【0125】
同様に、第2の電極28の貫通孔31の軸と第4の電極30のスリット36端部を通り第2の電極28の貫通孔31の軸と平行な線との距離が一定の距離aだけスライドした位置となるように第4の電極30のスリット36の位置が設定される。
【0126】
第3の電極29および第4の電極30の形状は、複数のスリット35、36をそれぞれ一様な方向に有する形状であるため、第3の電極29および第4の電極30の近傍においては、各スリット35、36の中心面に対して対称となるような電界が形成される。
【0127】
このため、第3の電極29および第4の電極30の近傍において、負水素イオンHは、第3の電極29および第4の電極30の各スリット35、36の中心面に対して垂直な方向に軌道偏向される。負水素イオンHの軌道偏向の大きさは、第3の電極29および第4の電極30の形状や位置関係等の電界形成条件に依存する。
【0128】
そこで、負水素イオンHの軌道偏向量に応じて第3の電極29のスリット35のスライド量aおよび第4の電極30のスリット36のスライド量aが設定される。逆に、各電極28、29、30間の電界形成条件と第3ないし第4の電極29、30の各スリット35、36のスライド量a、aとを調整することにより所要の電界を形成して負水素イオンHを任意の方向に軌道偏向させることができる。
【0129】
すなわち、第3の電極29および第4の電極30の各スリット35、36の中心面の法線ベクトルは互いに異なる方向成分を有するため、負イオン源10Bでは、負水素イオンHの軌道偏向を合成してあらゆる方向に負水素イオンHを軌道偏向させることができる。
【0130】
また、負イオン源10Bでは、負イオン源10の効果に加えて、負水素イオンHの生成量が多く各電極14、28、29、30の面積が大きい場合に、負水素イオンHのエネルギ損失等のロスを低減させて大容量の負イオンビームYを長距離まで高効率で輸送することができる。
【0131】
なお、負イオン源10Bにおいて、さらに複数の所要の形状の電極を所要の電極14、28、29、30間に設けてもよい。
【0132】
また、第3の電極29および第4の電極30の各スリット35、36のスライド方向は必要に応じて各スリット35、36の長手方向X4,X5に限らず長手方向X4,X5に垂直な方向あるいは斜方向でもよい。
【0133】
また、第3の電極29および第4の電極30の位置を固定して第2の電極28あるいは第2の電極28の貫通孔31の位置をスライドしてもよく、第2の電極28の貫通孔31と第3の電極29および第4の電極30の各スリット35、36との相対的な位置関係が所要の位置関係となる構成であればよい。
【0134】
図6は本発明に係る負イオン源の第4の実施形態を示す斜視方向からの断面図である。
【0135】
図6に示された、負イオン源10Cでは、第5の電極40の形状が図4に示す第2の実施形態による負イオン源10Aと相違する。他の構成および作用については図1に示す負イオン源10と実質的に異ならないため第2の電極28から第4の電極30までの間の構成以外については図示せずかつ同一の構成については同符号を付して説明を省略する。
【0136】
負イオン源10Cでは、第5の電極40に設けられた貫通孔41のうち端部の貫通孔41の軸が、第2の電極28の貫通孔31の軸に対してスライドするように第5の電極40上の貫通孔41が配置される。
【0137】
すなわち、第5の電極40の貫通孔41の軸のうち、第3の電極29のスリット35端部に対応する貫通孔41の軸が第2の電極28の貫通孔31の軸に対して距離bだけスライドするように配置される。一方、第5の電極40の貫通孔41の軸うち、第4の電極30のスリット36端部に対応する貫通孔41の軸が第2の電極28の貫通孔31の軸に対して距離bだけスライドするように配置される。
【0138】
このため、第5の電極40の端部の貫通孔41近傍においては、貫通孔41の軸のスライド方向に電界の歪が生じる。
【0139】
一方、第3の電極29および第4の電極30の形状は、複数のスリット35、36をそれぞれ一様な方向に有する形状であるため、第3の電極29および第4の電極30の各スリット35、36端部近傍においては、電界の歪が各スリット35、36の長手方向X4,X5に生じる。
【0140】
このため、第5の電極40の端部の貫通孔41を通過する負水素イオンHは貫通孔41の軸のスライド方向に軌道偏向される。さらに、第3の電極29および第4の電極30の各スリット35、36端部を通過する負水素イオンHは各スリット35、36の長手方向X4,X5に軌道偏向される。
【0141】
したがって、第2の電極28の端部の貫通孔31を通過した電子は、第5の電極40において軌道偏向された後、さらに第3の電極29あるいは第4の電極30の各スリット35、36端部を通過する際に軌道偏向されてもとの軌道付近に戻る。
【0142】
すなわち、負イオン源10Cは、第5の電極40の端部の貫通孔41の位置をスライドさせて電界の歪を形成し、形成した歪と第3の電極29および第4の電極30の各スリット35、36端部近傍において生じる電界の歪とで相殺する構成である。
【0143】
したがって、第5の電極40の端部の貫通孔41のスライド量である距離bおよび距離bは、各電極28、29、30、40の形状や位置関係等の電界形成条件に応じて第3の電極29および第4の電極30の各スリット35、36端部近傍において生じる電界の歪を相殺させるように設定される。
【0144】
負イオン源10Cでは、負イオン源10Aの効果に加えて第3の電極29および第4の電極30の各スリット35、36端部近傍において生じる電界の歪による負水素イオンHへの影響を回避できるため、発生した負水素イオンHを長距離までより高効率で輸送することができる。
【0145】
図7は本発明に係る負イオン源の第5の実施形態を示す斜視方向からの断面図である。
【0146】
図7に示された、負イオン源10Dでは、第3の電極29および第4の電極30のスリット35、36の長さが図4に示す第2の実施形態による負イオン源10Aと相違する。他の構成および作用については図4に示す負イオン源10Aと実質的に異ならないため第2の電極28から第4の電極30までの間の構成以外については図示せずかつ同一の構成については同符号を付して説明を省略する。
【0147】
負イオン源10Dでは、第5の電極40の貫通孔41の各軸が第3の電極29のスリット35内を通過するために必要な長さよりも第3の電極29のスリット35の長さが所要の長さだけ長く設定される。すなわち、第5の電極40の貫通孔41のうち第3の電極29のスリット35端部側の貫通孔41の軸と第3の電極29のスリット35端部を通り第5の電極40の軸と平行な線との距離が所要の距離cとなるように設定される。
【0148】
同様に、第5の電極40の貫通孔41の各軸が第4の電極30のスリット36内を通過するために必要な長さよりも第4の電極30のスリット36の長さが所要の長さだけ長く設定される。すなわち、第5の電極40の貫通孔41のうち第4の電極30のスリット36端部側の貫通孔41の軸と第4の電極30のスリット36端部を通り第5の電極40の軸と平行な線との距離が所要の距離cとなるように設定される。
【0149】
このため、第3の電極29および第4の電極30の各スリット35、36端部近傍において電界の歪が生じるが、第5の電極40の貫通孔41を通過した負水素イオンHは、この電界に歪が生じた領域である第3の電極29および第4の電極30の各スリット35、36端部近傍から十分に離れた位置を通過する。
【0150】
したがって、負イオン源10Dでは、第5の電極40の貫通孔41を通過した負水素イオンHが、第3の電極29および第4の電極30の各スリット35、36端部近傍において生じた電界の歪の影響を受けずに各スリット35、36の長手方向X4,X5へ軌道偏向することなく第3の電極29および第4の電極30の各スリット35、36を通過することができる。
【0151】
このため、負イオン源10Dでは、第5の電極40の貫通孔41を通過した負水素イオンHが、第3の電極29および第4の電極30の各スリット35、36の中心面に垂直な方向へ軌道偏向するのみとすることができる。そして、より長距離かつ高効率で負水素イオンHの輸送を可能とする電極の設計作業を容易にすることができる。
【0152】
図8は本発明に係る負イオン源の第6の実施形態を示す斜視方向からの断面図である。
【0153】
図8に示された、負イオン源10Eでは、第3の電極29および第4の電極30のスリット35、36の幅が互いに異なる点が図1に示す第1の実施形態による負イオン源10と相違する。他の構成および作用については図1に示す負イオン源10と実質的に異ならないため第2の電極28から第4の電極30までの間の構成以外については図示せずかつ同一の構成については同符号を付して説明を省略する。
【0154】
負イオン源10Eでは、第3の電極29のスリット35の幅dよりも第4の電極30のスリット36の幅dのほうが広くなるように構成される。
【0155】
負イオン源10Eにおいて、各電極14、28、29、30間の領域における水素ガスHは、真空ポンプ39により負イオン源10Eの外部に排気される。この際、負イオン源10Eでは、第4の電極30のスリット36の幅dは広く設定されるため水素ガスHを排気する際のコンダクタンスを大きくすることができる。
【0156】
このため、各電極14、28、29、30間の領域における水素ガスHの密度を小さくすることができる。そして、負水素イオンHと水素ガスHとが反応することにより離脱電子が発生する確率が小さくなって、負水素イオンHの損失量を低減させることができる。
【0157】
すなわち、負イオン源10Eでは、負イオン源10の効果に加えてより大電流の負イオンビームYを引き出すことが可能となる。
【0158】
図9は本発明に係る負イオン源の第7の実施形態を示す斜視方向からの断面図である。
【0159】
図9に示された、負イオン源10Fでは、第3の電極29および第4の電極30のスリット35,36の幅が互いに異なる点が図1に示す第1の実施形態による負イオン源10と相違する。他の構成および作用については図1に示す負イオン源10と実質的に異ならないため第2の電極28から第4の電極30までの間の構成以外については図示せずかつ同一の構成については同符号を付して説明を省略する。
【0160】
負イオン源10Fでは、第4の電極30のスリット36の幅eが、第3の電極29の複数の例えば2つの隣接する各スリット35の幅に各スリット35、35間の間隙部の幅を加えた長さeと同程度の幅となるように設定される。
【0161】
負イオン源10Fにおいて、各電極14、28、29、30間の領域における水素ガスHは、真空ポンプ39により負イオン源10Fの外部に排気される。この際、負イオン源10Fでは、第4の電極30のスリット36の1つ当たりの幅eが広く面積が大きいため水素ガスHの透過率が高くなって排気する際のコンダクタンスを大きくすることができる。
【0162】
このため、各電極14、28、29、30間の領域における水素ガスHの密度を小さくすることができる。そして、負水素イオンHと水素ガスHとが反応することにより離脱電子が発生する確率が小さくなって、負水素イオンHの損失量を低減させることができる。
【0163】
すなわち、負イオン源10Fでは、負イオン源10の効果に加えてより大電流の負イオンビームYを引き出すことが可能となる。
【0164】
図10は本発明に係る負イオン源の第8の実施形態を示す斜視方向からの断面図である。
【0165】
図10に示された、負イオン源10Gでは、第4の電極30のさらに下流側に正イオン抑制電極の一例として第6の電極50を設け、さらに第4の電極30と第6の電極50との間に正イオン抑制電源51を設けた構成が図1に示す第1の実施形態による負イオン源10と相違する。他の構成および作用については図1に示す負イオン源10と実質的に異ならないため第2の電極28から第4の電極30までの間の構成以外については図示せずかつ同一の構成については同符号を付して説明を省略する。
【0166】
負イオン源10Gでは、第4の電極30のさらに下流側に第6の電極50が設けられ、さらにこの第6の電極50と第4の電極30との間には正イオン抑制電源51が設けられる。そして、この正イオン抑制電源51により第4の電極30に正の電位を印加する一方、第6の電極50は接地されて接地電位とされる。この結果、正イオン抑制電源51の作用により第4の電極30から第6の電極50に向かう電界が形成される。
【0167】
第6の電極50からは負イオンビームYが引き出され、図示しない負イオンビームYのビームライン内の領域に導かれるが、この領域においても負イオンビームYと負イオン源10から漏れ出した水素ガス等の粒子との間で式(4)等の各種反応が起こりビームプラズマが発生しうる。発生したビームプラズマには正イオンが含まれるが、正イオン抑制電源51により第4の電極30と第6の電極50との間に形成された電界の作用により、正イオンが負イオンビームYの進行方向と逆方向に進み再び第6の電極50を通過して第4の電極30と第6の電極50との間に侵入するのを抑制することができる。
【0168】
このため、負イオン源10Gでは、負水素イオンHの加速領域に逆流する正イオンの量を低減させることが可能となり、電源効率を向上させてより高効率の負イオンビームYを引き出すことができる。
【0169】
なお、第6の電極50の形状は任意であり、貫通孔あるいはスリットのいずれを設けてもよく、スリットを設けた場合には向きも任意であるが、第6の電極50のスリットと同方向の向きのスリットを第4の電極30に設ければ、より最適な電界が形成されて効率的に正イオンの侵入を抑制することができる。さらに、水素ガス等の放電原料ガスやその他の不純粒子が第6の電極50を通過しやすくなって第4の電極30と第6の電極50との間の残留放電原料ガス密度を小さくできるという効果が得られる。
【0170】
また、第6の電極50の下流にさらに複数の電極を設けてもよい。
【0171】
図11は本発明に係る負イオン源の第9の実施形態を示す斜視方向からの断面図、図12は図11に示すA部分の拡大図、図13は図11に示すB−B方向からみた断面図、図14は図13に示すC−C方向からみた断面図である。
【0172】
図11に示された、負イオン源10Hでは、第3の電極29および第4の電極30に設けられたスリット35、36の形状および第3の電極29および第4の電極30の構造が図1に示す第1の実施形態による負イオン源10と相違する。他の構成および作用については図1に示す負イオン源10と実質的に異ならないため第3の電極29ないし第4の電極30の以外については図示せずかつ同一の部分については同符号を付して説明を省略する。
【0173】
負イオン源10Hでは、第3(第4)の電極29(、30)の各スリット35(、36)間の間隙部を互いに接続して固定する架橋60がスリット35(、36)内に設けられる。この架橋60の数および位置は任意である。そして、この架橋60の作用により第3(第4)の電極29(、30)の各スリット35(、36)の中心面に垂直な方向の強度が向上されて補強される。
【0174】
一方、第3(第4)の電極29(、30)の端部は、絶縁体等の電極支持体61に接続される。電極支持体61は例えば第3(第4)の電極29(、30)の任意の一方の面と接続される。このため、第3(第4)の電極29(、30)の端部には、第3(第4)の電極29(、30)を電極支持体61と一体化するための段付のボルト用貫通孔62および第3(第4)の電極29(、30)と電極支持体61との間の位置決めをするための溝状の位置決め用長孔63が設けられる。
【0175】
そして、第3(第4)の電極29(、30)の段付のボルト用貫通孔62の孔径が小さい側は電極支持体61側とされ、位置決め用長孔63は第3(第4)の電極29(、30)端部の電極支持体61側の面に設けられる。このとき第3(第4)の電極29(、30)に設けられた位置決め用長孔63の長手方向がスリット35(、36)の長手方向X4(,X5)と同方向となるように構成される。
【0176】
さらに、電極支持体61の第3(第4)の電極29(、30)のボルト用貫通孔62に対応する位置にボルト用タップ孔64が設けられ、位置決め用長孔63に対応する位置に座繰り状の位置決め孔65が設けられる。
【0177】
そして、電極支持体61の位置決め孔65と第3(第4)の電極29(、30)の位置決め用長孔63とに滑合する位置決めピン66が設けられることにより、電極支持体61と第3(第4)の電極29(、30)と位置決め用長孔63の長手方向に垂直な方向の位置決めがなされる。
【0178】
さらに、第3(第4)の電極29(、30)のボルト用貫通孔62内には筒状あるいはコイル状のカラー67が設けられる。このカラー67の長さは、段付き状のボルト用貫通孔62の孔径が小さい側の孔の深さよりも長い形状とされる。そして、カラー67と電極支持体61のボルト用タップ孔64とがボルト68で固定される。すなわち、ボルト68を強いトルクで締結しても第3(第4)の電極29(、30)は電極支持体61に強固には固定されない構造とされる。
【0179】
このため、第3(第4)の電極29(、30)は電極支持体61に扇動可能に設けられる。そして、第3(第4)の電極29(、30)の位置決め用長孔63と滑合した位置決めピン66が、位置決め用長孔63の長手方向に滑って移動することができるように構成される。
【0180】
すなわち、第3(第4)の電極29(、30)と電極支持体61とは、位置決め用長孔63の長手方向には扇動可能であるが、位置決め用長孔63の長手方向と垂直な方向には位置決めピン66の作用により扇動不可能に構成される。
【0181】
負イオン源10Hでは、第3(第4)の電極29(、30)の各スリット35(、36)の中心面に垂直な方向の強度が補強されて変形に対する抵抗力が増加させることができる。このため、第3(第4)の電極29(、30)にスリット35(、36)を設けるための穿孔や切削加工等の加工の際および製作後の熱等の原因によるスリット35(、36)の変形を抑えることが可能となって電極29(、30)の信頼性を高めることができる。
【0182】
さらに、負イオン源10Hでは、第3(第4)の電極29(、30)は、各スリット35(、36)の中心面に垂直な方向に補強されかつスリット35(、36)の長手方向X4(,X5)に扇動可能に構成されるため、熱の影響により材料の伸縮が発生した場合でも、第3(第4)の電極29(、30)の伸縮方向をスリット35(、36)の長手方向X4(,X5)として逃がすことができる。
【0183】
したがって、負イオン源10Hでは、第3(第4)の電極29(、30)のスリット35(、36)の長手方向X4(,X5)に垂直な方向への変形を抑制することが可能となり、第3(第4)の電極29(、30)に変形が生じる程入熱があったとしても、負イオンビームYの軌道に変位が生じることなくより安定した信頼性のある負イオンビームYの発生が可能となる。
【0184】
なお、各実施形態における負イオン源10、10A,10B,10C,10D,10E,10F,10G,10Hは、複合的に組み合わせて構成してもよい。例えば、第5の電極40と第6の電極50の双方を設ける構成としてかつ第3(第4)の電極のスリット35(、36)内に架橋60を設けてもよい。
【0185】
また、負イオンは負水素イオンH以外の負イオンであってもよく、原料となるガスは、水素ガスに限らず生成しようとする負イオンに応じたガスが選択されればよい。さらに、正イオンは正水素イオン以外の正イオンであっても対象とすることが可能であり正水素イオンはH 以外の正水素イオンであってもよい。
【0186】
また、引出電源38、加速電源38および正イオン抑制電源の個数は任意であり、各電極14、28、29、30、40、50間に所要の電界が形成されるように構成されていればよい。
【0187】
さらに、各実施形態における負イオン源10、10A,10B,10C,10D,10E,10F,10G,10Hでは、第1の電極14の貫通孔27の軸上に第2の電極28の貫通孔31、第3の電極29のスリット35、第4の電極のスリット36、第5の電極40の貫通孔41および第6の電極50のスリットないし貫通孔を設けたが、負イオンの進行方向が直線とならない場合には、必ずしも第1の電極14の貫通孔27の軸上に設ける必要はなく、負イオンの進行方向に沿う線に沿って設けられればよい。
【0188】
さらに、このとき負イオンの進行方向に沿う線の全てが第1の電極14の貫通孔27、第2の電極28の貫通孔31、第3の電極29のスリット35、第4の電極のスリット36、第5の電極40の貫通孔41および第6の電極50のスリットないし貫通孔を通過する必要はなく、所要の一部の線が通過できるように構成されていればよい。
【0189】
【発明の効果】
本発明に係る負イオン源においては、残留ガスの排気コンダクタンスを大きくして正イオンの副生量を低減させることができるのみならず、副生された逆流正イオンや電子を各負イオン加速電極の隣接するスリット間の間隙部に衝突させることにより、その高エネルギ化を抑制してより低出力の電力で効率的に負イオンビームを発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る負イオン源の第1の実施形態を示す断面図。
【図2】図1に示す第1から第4までの電極の詳細な構成を示す断面図。
【図3】図1に示す第2の電極から第4の電極までの形状を示す斜方向からの断面図。
【図4】本発明に係る負イオン源の第2の実施形態を示す斜視方向からの断面図。
【図5】本発明に係る負イオン源の第3の実施形態を示す斜視方向からの断面図。
【図6】本発明に係る負イオン源の第4の実施形態を示す斜視方向からの断面図。
【図7】本発明に係る負イオン源の第5の実施形態を示す斜視方向からの断面図。
【図8】本発明に係る負イオン源の第6の実施形態を示す斜視方向からの断面図。
【図9】本発明に係る負イオン源の第7の実施形態を示す斜視方向からの断面図。
【図10】本発明に係る負イオン源の第8の実施形態を示す斜視方向からの断面図。
【図11】本発明に係る負イオン源の第9の実施形態を示す斜視方向からの断面図。
【図12】図11に示すA部分の拡大図。
【図13】図11に示すB−B方向からみた断面図。
【図14】図13に示すC−C方向からみた断面図。
【図15】従来の負イオン源の電極の構成を示す斜視図。
【符号の説明】
10 負イオン源
11 放電容器
12 側壁面
13 絶縁材
14 第1の電極
15 閉口側壁面
16 ガス導入口
17 アルカリ金属蒸気導入口
18 ガス源
19 ガス配管
20 アルカリ金属オーブン
21 アルカリ金属蒸気配管
22 磁石
23 フィルタ磁石
24 第一室
25 第二室
26 フィラメント
27 貫通孔
28 第2の電極
29 第3の電極
30 第4の電極
31 貫通孔
32 電子トラップ
33 磁石
34 水冷パイプ
35,36 スリット
37 引出電源
38 加速電源
39 真空ポンプ
40 第5の電極
41 貫通孔
50 第6の電極
51 正イオン抑制電源
60 架橋
61 電極支持体
62 ボルト用貫通孔
63 位置決め用長孔
64 ボルト用タップ孔
65 位置決め孔
66 位置決めピン
67 カラー
68 ボルト
X1 磁力線
X2 磁気フィルタ
X3 磁力線
X4 第3の電極のスリットの長手方向
X5 第4の電極のスリットの長手方向
Y 負イオンビーム

Claims (14)

  1. 開口部を有する放電容器と、
    この放電容器の開口部に絶縁体を介して閉塞するように並設され、かつ複数の貫通孔をそれぞれ有する少なくとも2つの負イオン引出電極と、
    前記放電容器の内部を真空状態にして原料ガスを導入し、放電によって所要の放電プラズマを生成する放電プラズマ生成系と、各負イオン引出電極間に電界を形成させることにより前記放電容器内に生成した放電プラズマから負イオンを各負イオン引出電極の貫通孔を経由させて外部に引き出す引出電源と、
    引き出された負イオンの経路中に設けられ、複数のスリットをそれぞれ有する複数の負イオン加速電極と、
    この負イオン加速電極間に電界を形成させることにより負イオンを加速させて負イオンビームを生成する加速電源とを具備し、
    共通の負イオン加速電極上のスリット同士はその長手方向が同様な方向となるように整列配置される一方、隣接する負イオン加速電極上のスリット同士の長手方向が負イオンの進行方向に沿う線に垂直な面上において互いに所定の角度をなして設けられるように構成したことを特徴とする負イオン源。
  2. 前記放電容器に最近傍の負イオン引出電極の貫通孔内を経由した前記負イオンの進行方向に沿う線のうち所要の線が他の負イオン引出電極の貫通孔内および各負イオン加速電極のスリット内を経由するように構成したことを特徴とする請求項1記載の負イオン源。
  3. 前記負イオン引出電極よりも下流で前記放電容器から引き出された負イオンのエネルギが低い低エネルギ領域に、複数の貫通孔を有する低エネルギ領域用加速電極を設け、前記負イオン引出電極の貫通孔を経由した負イオンの進行方向に沿う線のうち所要の線が前記低エネルギ領域用加速電極の貫通孔を経由するように前記低エネルギ領域用加速電極の貫通孔を配置することにより、前記低エネルギ領域用加速電極の近傍に所要の電界が形成されるように構成したことを特徴とする請求項1記載の負イオン源。
  4. 前記負イオン引出電極よりも下流で前記放電容器から引き出された負イオンのエネルギが低い低エネルギ領域に、複数の貫通孔を有する低エネルギ領域用加速電極を設け、前記負イオン引出電極の貫通孔を経由した負イオンの進行方向に沿う線のうち所要の線が前記低エネルギ領域用加速電極の貫通孔を経由するように前記低エネルギ領域用加速電極の貫通孔を配置しかつ前記負イオン加速電極のスリット端部に対応する前記低エネルギ領域用加速電極の貫通孔の位置を前記負イオン加速電極のスリットの長手方向にスライドさせることにより所要の電界が形成されるように構成したことを特徴とする請求項1記載の負イオン源。
  5. 前記負イオン加速電極のスリットの位置が前記負イオンの進行方向に沿う線に対して相対的に所要の向きで所要の距離だけスライドした位置となるように設定することにより、前記負イオンの進行方向を変更可能に構成したことを特徴とする請求項1記載の負イオン源。
  6. 前記負イオン加速電極のスリット端部により形成される電界の歪が負イオンに影響を与えない程度に前記負イオン加速電極のスリットの長さを負イオン通過領域よりも所要の長さだけ相対的に長くなるように設定したことを特徴とする請求項1記載の負イオン源。
  7. 前記負イオン加速電極は、負イオンの進行方向に対して上流側の前記負イオン加速電極のスリットの幅よりも下流における負イオン加速電極のスリットの幅のほうが大きくなるように構成されて排気コンダクタンスを大きく設定したことを特徴とする請求項1記載の負イオン源。
  8. 前記負イオン加速電極は、負イオンの進行方向に対して上流側の前記負イオン加速電極のスリットの幅よりも下流における負イオン加速電極のスリットの幅のほうが大きくかつ上流側の前記負イオン加速電極のスリットの数よりも下流における負イオン加速電極のスリットの数のほうが少なくなるように構成されて排気コンダクタンスを大きく設定したことを特徴とする請求項1記載の負イオン源。
  9. 前記負イオン加速電極の負イオンの進行方向に対して下流側に接地電位にされた正イオン抑制電極を設け、前記負イオン加速電極と正イオン抑制電極との間に負イオンの進行方向に向かう電界を形成したことを特徴とする請求項1記載の負イオン源。
  10. 前記負イオン加速電極の負イオンの進行方向に対して下流側に接地電位にされた正イオン抑制電極を設け、さらに前記負イオン加速電極と正イオン抑制電極との間に正イオン抑制電源を設けて電荷を付加することにより負イオンと逆方向に進む正イオンの侵入を抑制し、負イオンの進行方向に向かう電界を形成したことを特徴とする請求項1記載の負イオン源。
  11. 前記負イオン加速電極の隣接するスリット間の間隙部と、この間隙部に隣接する間隙部とを架橋により接続して補強したことを特徴とする請求項1記載の負イオン源。
  12. 前記負イオン加速電極には、スリットの長手方向に溝状に形成された位置決め用長孔と内部に筒状あるいはコイル状のカラーを有するボルト用貫通孔とが設けられる一方、前記負イオン加速電極を支持するための電極支持体には位置決め孔とボルト用タップ孔とが設けられ、ボルトを前記カラー内に挿入して前記電極支持体のボルト用タップ孔に締結してもボルトの頭により前記負イオン加速電極が強固に固定されない構造とする一方、位置決めピンを前記電極支持体の位置決め孔と前記負イオン加速電極の位置決め用長孔とに位置決め用長孔の長さ方向に扇動可能に滑合させることにより、前記スリットの長手方向にのみ前記負イオン加速電極が伸縮できるように構成したことを特徴とする請求項1記載の負イオン源。
  13. 隣接する前記負イオン加速電極上のスリット同士はその長手方向が負イオンの進行方向に沿う線に垂直な面上において互いに直角となるように設けられたことを特徴とする請求項1記載の負イオン源。
  14. 複数の貫通孔を有し並設された複数の負イオン引出電極で開口部を閉塞した放電容器内を真空状態にして原料ガスを導入するステップと、
    前記放電容器内に放電プラズマを生成するステップと、
    前記放電容器内の放電プラズマから負イオンを前記負イオン引出電極間に引出すステップと、
    引出された負イオンの進行経路上に、複数のスリットを有する複数の負イオン加速電極を、共通の負イオン加速電極上のスリット同士はその長手方向が同様な方向となるように整列配置し、かつ隣接する負イオン加速電極上のスリット同士の長手方向が負イオンの進行方向に沿う線に垂直な面上において互いに所定の角度をなすように配置するステップと、
    負イオン加速電極間に電界を形成して負イオンを導くことにより負イオンを所要のエネルギに加速して負イオンビームを生成するステップと、
    負イオン加速電極間に存在する電子および正イオンのうち少なくとも一方を負イオン加速電極の隣接するスリット間の間隙部に衝突させてエネルギ増加を抑制するステップとを有することを特徴とする負イオンビーム発生方法。
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