JP4112951B2 - Nb3Sn超電導線の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、内部拡散法を用いたNbSn超電導線の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のNbSn超電導線の製造方法においては、無酸素銅部材にNbフィラメントを所定数組み込むことによって形成した複合ビレットを、所定の寸法まで押し出し加工により断面縮小加工を施した後、両端を切断する。その後、外周部の余分な銅部材を切削加工し、さらに中央部にドリルにより孔を空けてそこにSn基合金線を挿入する。続いて、引き抜き加工を行って所定の寸法まで断面縮小加工し、熱処理を施してNbSn超電導線を得ていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平6−139847号公報(第5頁)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来のNbSn超電導線の製造方法では、押し出し加工が施された複合ビレットにおける外周部の切削領域およびSn棒が挿入される中心部の位置決め方法が明記されておらず、例えば、押し出し加工後の複合ビレットの外径から中心位置を決定し、その位置を基に外周部の切削領域やSn基合金線の挿入位置を決める方法においては、押し出し加工時にNbフィラメントの組込領域が全体に偏芯した場合、その状態で外径から決定した中心位置はNbフィラメントの存在領域に対する中心位置とはズレが生じるため、外周部の切削加工時にNbフィラメントの外側の無酸素銅部材が均等な状態になるように切削することが出来ず、外周部のNbフィラメントを傷つけることもあり、また、Sn基合金線の挿入位置がNbフィラメントの存在領域に対する中心からズレを生じるため、形成された超電導線の超電導特性を低下させるという問題点があった。
【0005】
また、押し出し加工時にNbフィラメントの組込領域が全体に偏芯した場合の対処法として、押し出し加工後の切断面のNbフィラメントの位置から中心位置を決める場合には、切断面に面削加工や研磨加工を施す必要があった。
さらに、中心位置を決めるための計測作業や罫書き加工が必要であり、作業性を低下させるという問題点があった。
【0006】
この発明は、上記のような問題点を解消するためになされたもので、安定化銅部材(無酸素銅部材)にNbフィラメントが組み込まれ押し出し加工が施された複合ビレットにおいて、外周部切削加工の安定化およびSn基合金線の挿入位置の精密化を図るために必要な、組み込まれているNbフィラメントに対する中心位置の決定を容易かつ正確に行うことができ、超電導特性の良好なNbSn超電導線を製造する方法を得ることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明に係わる安定化銅部材内にNbフィラメントが多芯複合され、中心部にSn基合金線が挿入されてなるNbSn超電導線の製造方法は、安定化銅部材内にNbフィラメントを所定数組み込んで複合ビレットを形成する際に、複合ビレットの真円中心部に目印となるCu基合金線を一本配置する工程と、複合ビレットを押し出し加工により所定の寸法まで断面縮小加工を施した後、複合ビレットに配置されているCu基合金線を中心位置の目印として外周部の安定化銅部材を切削加工する工程と、Cu基合金線を中心位置の目印として中心部に穿孔加工を施し、同時にCu基合金線を除去して所定の寸法の貫通孔を形成し、貫通孔にSn基合金線を挿入する工程を含むものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
以下、この発明の一実施の形態であるNbSn超電導線の製造方法を図について説明する。図1〜図4は各々この発明の実施の形態1におけるNbSn超電導線の製造工程途中の状態を示す断面図である。
【0009】
図1は安定化銅部材内にNbフィラメントが多芯複合された複合ビレットの組立工程後を示す複合ビレットの断面図(a)、および複合ビレットの長さ方向の断面図(b)で、無酸素銅等の安定化銅部材1の中に所定数のNbフィラメント2が組み込まれてなる複合ビレットの真円中心部に、中心位置の目印となるCu基合金線3が配置され、また、この複合ビレットの両端には安定化銅部材1とNbフィラメント2を固定するビレット蓋4が配設されている。
【0010】
図2は図1に示す複合ビレットに押し出し加工(断面縮小加工)を施した後の複合ビレットの長さ方向の断面図である。
図3は図2に示す複合ビレットに均等切断加工を施した後の複合ビレットの長さ方向の断面図である。
【0011】
図4は図3に示す複合ビレットに外周部の切削加工および中心部の穿孔加工を施した後の複合ビレットの断面図(a)、および複合ビレットの長さ方向の断面図(b)で、外周切削加工部5と中心穿孔加工部(貫通孔)6が形成されている。
【0012】
次に、本実施の形態によるNbSn超電導線の製造方法について説明する。
まず、安定化銅部材1の中にNbフィラメント2を所定数組み込み複合ビレットを構成する際に、その複合ビレットの真円中心部にCu基合金線3を一本配置する(図1)。
次に、上記複合ビレットを押し出し加工により所定の寸法まで断面縮小加工を施した後(図2)、Nbフィラメント2の配列が正常な部分まで両端部を切断加工してNbフィラメント2の配列が正常であることを確認した後に、均等に切断加工を施す(図3)。
【0013】
次に、均等に切断した複合ビレットの中央部に配置されているCu基合金線3を中心位置の目印とし、外周部の安定化銅部材1をCu基合金線3に対して均等に切削加工する。このとき、Cu基合金線3はNbフィラメント2の存在領域に対する中心位置に配置されているため、Nbフィラメント2の存在領域に対して均等に外側の安定化銅部材1を切削することができる。
続いて、Cu基合金線3を中心に精密穿孔加工を施し、同時にCu基合金線3を除去して所定の寸法の貫通孔6を形成する(図4)。その後、貫通孔6にSn基合金線(図示せず)を組み入れ、従来と同様の方法によりNbSn超電導線を形成する。
【0014】
本実施の形態によれば、複合ビレットの中心位置の目印としてCu基合金線3を予め組み入れることにより、押し出し加工(断面縮小加工)後の外周切削加工時および中心部の穿孔加工時に複合ビレットの中心位置(Nbフィラメント2の存在領域に対する中心位置)を容易かつ正確に把握することができ、外周切削加工および中心部の穿孔加工を安定かつ精密に行うことができる。
【0015】
なお、複合ビレットの中心位置の目印として組み入れるCu基合金線3の代わりに銅色以外の黄銅線やニッケル合金線を用いることにより、押し出し加工後に線材が細くなった場合にも目印の判別が容易となり、作業性を向上させることができる。
【0016】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、安定化銅部材に所定数のNbフィラメントを組み込み複合ビレットを構成する際に、その複合ビレットの真円中心部に中心位置の目印として金属線を一本配置しておくことにより、押し出し加工(断面縮小加工)後の複合ビレットにおいて、Nbフィラメントの存在領域に対する中心位置を上記目印(金属線)により容易かつ正確に判別することができるため、切削加工時のNbフィラメントの損傷等を防止して外周部の余分な銅部材を精密に切削加工することができると共に、Sn基合金線を中心位置に正確に挿入することができ、超電導特性の良好なNbSn超電導線を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1によるNbSn超電導線の製造工程において、組立工程後の状態を示す断面図である。
【図2】 この発明の実施の形態1によるNbSn超電導線の製造工程において、押し出し加工後の状態を示す断面図である。
【図3】 この発明の実施の形態1によるNbSn超電導線の製造工程において、均等切断加工後の状態を示す断面図である。
【図4】 この発明の実施の形態1によるNbSn超電導線の製造工程において、外周部の切削加工および中心部の穿孔加工後の状態を示す断面図である。
【符号の説明】
1 安定化銅部材、2 Nbフィラメント、3 Cu基合金線、
4 ビレット蓋、5 外周切削加工部、6 中心穿孔加工部(貫通孔)。

Claims (2)

  1. 安定化銅部材内にNbフィラメントが多芯複合され、中心部にSn基合金線が挿入されてなるNbSn超電導線の製造方法において、
    上記安定化銅部材内に上記Nbフィラメントを所定数組み込んで複合ビレットを形成する際に、上記複合ビレットの真円中心部に目印となるCu基合金線を一本配置する工程と、
    上記複合ビレットを押し出し加工により所定の寸法まで断面縮小加工を施した後、上記複合ビレットに配置されている上記Cu基合金線を中心位置の目印として外周部の上記安定化銅部材を切削加工する工程と、
    上記Cu基合金線を中心位置の目印として中心部に穿孔加工を施し、同時に上記Cu基合金線を除去して所定の寸法の貫通孔を形成し、上記貫通孔に上記Sn基合金線を挿入する工程を含むことを特徴とするNbSn超電導線の製造方法。
  2. 上記複合ビレットの真円中心部の目印として、Cu基合金線の代わりに銅色以外の黄銅線、ニッケル合金線を配置することを特徴とする請求項1記載のNbSn超電導線の製造方法。
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