JP4110684B2 - 脱酸素装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は脱酸素装置、特に水中の溶存酸素を電気化学的に除去する装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
水中の溶存酸素は金属の腐食、食品の酸化、微生物の繁殖を助長するので、これらを防止するためには、溶存酸素の除去が必要である。水中の溶存酸素を除去する方法として還元剤と触媒を組み合わせたもの、真空脱気塔を用いるもの、窒素ガスを吹き込み接触させるもの、酸素透過膜を介して真空で吸引するものなどがあるが、薬品の使用が必要であったり、装置が大型化するなどの問題点があった。
【0003】
電気化学的な脱酸素方法として、消耗電極による脱酸素法がある(例えば特開平10−323671号)。この方法では酸素より卑な金属と貴な金属を接続して水と接触させることにより卑な金属を酸化して水に溶出させ、これにより溶存酸素を除去する。
しかしながらこの方法では酸素の酸化力により電極を酸化して溶出させるため、低濃度の溶存酸素では酸化が進行しなくなり、このため高除去率で溶存酸素を除去できない。また溶出したイオンが処理水に持込まれ処理水質が悪化するという問題点がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、薬品を使用することなく、簡単な装置と操作により高除去率で溶存酸素を除去し、低溶存酸素濃度の処理水を得ることが可能な脱酸素装置を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は次の脱酸素装置である。
(1) 陰極および陽極と、
陰極および陽極間に設けられたイオン透過性、非導電性かつ液透過性の隔膜と、
隔膜の陰極側に設けられた第1の多表面積導体層と、
隔膜の陽極側に設けられた炭素質の材質からなる第2の多表面積導体層と、
第1の多表面積導体層に被処理液を通液する通液手段と、
陰極および陽極間に通電する電源装置と
を含む脱酸素装置。
(2) 第1および/または第2の多表面積導体層が活性炭からなる上記(1)記載の装置。
【0006】
本発明で用いられる隔膜はイオン透過性、非導電性かつ液透過性の隔膜である。このような隔膜としては従来より電気分解等の電気化学処理において隔膜として用いられていた隔膜が使用でき、具体的には素焼き粘土、セラミックス、紙、織布、不織布等の隔膜のほか、ポリプロピレン、ポリエチレン、フッ素系樹脂等のプラスチック繊維の織布、不織布、網物等が使用できる。このような非導電性、液透過性の隔膜としてはポアサイズ0.1〜0.01mm、厚さ0.05〜0.5mmのものが好ましい。
【0007】
第1および第2の多表面積導体層(以下、単に導体層という場合がある)は比表面積の大きい導体からなる層である。比表面積は500m2/g以上、好ましくは1000〜3000m2/g、厚さは10〜0.3mm、好ましくは1〜0.5mmのものが好ましい。多表面積導体層としては多孔質または繊維集合体のように三次元的に空隙部の多い構造を有する導体層が使用できる。
【0008】
導体としては単体金属、合金、炭素などがあげられ、陰極側に設ける第1の導体層には通常導体として使用されている全てのものが使用できるが、陽極側に設ける第2の導体層には金属イオン等の不純物の溶出が少ない材質として、炭素質の材質からなるものが使用でき、特に活性炭が好ましい。これらの導体層は被処理液を通液できるように粒子間あるいは繊維間に空隙を保持するように充填または成形して導体層を形成する。
【0009】
第1の導体層は陰極に接続するのが好ましく、この場合陰極部として利用されるので、陰極反応による溶出はなく、このため材質としては任意のものを使用しても差支えない。第2の導体層は陽極に接続するのが好ましく、この場合陽極部として利用されるので、酸化による溶出の少ない材質として、炭素質の材質からなるものを使用する。
【0010】
活性炭の場合は酸化により表面が徐々に酸化されるが、最終的には二酸化炭素となるので、液透過性の隔膜を用いることができる。
活性炭としては粒状活性炭を層状に充填し、あるいはシート状に成形してもよく、また繊維状活性炭の織布、不織布、網物等のシート状物を使用することもできる。
【0011】
陰極は第1の導体層に給電できるように設置するが第1の導体層を同電位に保持するようにこれと接触して設けるのが好ましい。陰極は酸化は生じないので材質には制限はないが、生成するOHイオンに安定な材質のものが好ましい。陽極は第2の導体層に給電できるように設置するが、第2の導体層を同電位に保持するようにこれと接触して設けるのが好ましい。陽極は酸化が生じるので酸化により金属イオン等の不純物が生じないものが好ましい。このため陰極、陽極とも安定な黒鉛等の炭素系電極が好ましい。陰極、陽極は板状のものが好ましく、電極間隔は10〜0.1mm、好ましくは0.5〜0.2mmとする。
【0012】
電源装置は陰極、陽極間に脱酸素に必要な電力を供給するように構成される。脱酸素に必要な電力は溶存酸素をOHイオンに転換するのに必要であり、かつ電解が生じない電圧とする。電圧は水分解電解以下、好ましくは0.5〜2V、さらに好ましくは0.5〜1.2V、電流は10〜1000mA/liter/hr、好ましくは30〜150mA/liter/hrとされる。陰極、陽極に供給される電力は直流が好ましいが、脈流、パルスでもよい。
【0013】
通液装置は第1の導体層の一端部から被処理液を流し、他端部から処理液を取り出すように構成する。第1および第2の導体層として活性炭のような非溶出性の導体を用い、隔膜として透液性の隔膜を用いる場合は、被処理液が第1および第2の導体層を通して流れるように構成することができる。
【0014】
上記の装置による脱酸素の方法は、第1の導体層に被処理液を通液し、電源装置から陰極、陽極間に給電することにより行う。通電により陰極および第1の導体層は陰極部(カソード)として負に帯電し、(1)式により溶存酸素は除去されるものと推定される。
O2 + 2H2O +4e- → 4OH-・・・(1)
【0015】
ここで生成するOH-イオンは隔膜を通して陽極に移動し、陽極および第2の導体層からなる陽極部(アノード)で酸化された酸化物との間で電荷の中和が行なわれる。
【0016】
第2の導体層が炭素質のような非溶出性の導体の場合はその導体自体が酸化されるかあるいは被処理水中の有機物その他の被酸化性物質が酸化される。
【0017】
第2の導体層が活性炭等の炭素質材料からなる場合、炭素質材料が酸化されてアルデヒド、カルボン酸、二酸化炭素等が生成するものと推測される。この場合は被処理水を第2の導体層に流してもよい。酸化の進行により活性炭の活性が低下したときは、加熱、アルカリ洗浄等により賦活することができる。
【0018】
いずれの場合も給電しないで、単に溶存酸素の酸化力だけで陽極または第2の導体層を酸化して溶存酸素を除去すると除去率は低く、溶存酸素濃度を低くすることはできないが、給電を行うと溶存酸素は直ちにOH-イオンに転化されるため脱酸素率は高く、溶存酸素濃度の低い処理水が得られる。
【0019】
このとき第1の導体層として多表面積導体を用いることにより溶存酸素と負電荷面の接触面積が大きくなり、脱酸素効率は高くなる。第2の導体層として多表面積導体層を用いるとOH-との接触面積が大きくなり、陽極反応が促進されるため溶存酸素除去効率は高くなる。特に活性炭のように比表面積の大きい材料を第1および第2の導体層として用いると陰極反応、陽極反応とも大きくなるので脱酸素効率は高くなる。
【0020】
上記の陰極反応および陽極反応は酸化還元反応であるため起電力が生じるが、発生した電力は使用電力の一部として利用される。そしてこの起電力と外部電力の全体を水の電解電圧以下に維持することにより、電気分解の発生を防止し、無駄な電力消費を抑制することができる。
本発明で処理の対象とする被処理水は溶存酸素含有水であれば特に制限はないが、電気伝導度が1mS/m以上、好ましくは5〜50mS/m、溶存酸素が1〜10mg/l以上、好ましくは2〜8mg/lの被処理水が対象として適している。
【0021】
【発明の効果】
本発明によれば、陰極および陽極と、陰極および陽極間に設けられたイオン透過性、非導電性かつ液透過性の隔膜と、隔膜の陰極側に設けられた第1の多表面積導体層と、隔膜の陽極側に設けられた炭素質の材質からなる第2の多表面積導体層と、第1の多表面積導体層に被処理液を通液する通液手段と、陰極および陽極間に通電する電源装置とを設けて給電するようにしたので、薬品を使用することなく、簡単な装置と操作により高除去率で酸素を除去し、低溶存酸素濃度の処理水を得ることが可能である。
そして第1および/または第2の導体層として活性炭を用いることにより、さらに効率よく脱酸素を行うことができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面により説明する。
図1は実施形態の脱酸素装置を示す断面図である。
【0023】
図1において、10は処理槽であり、内部には多数の脱酸素ユニット1a、1b…1nが積層状態で収容されている。脱酸素ユニット1a、1b…は間隔をおいて対向して設置された平板状の陰極2および陽極3間にイオン透過性の隔膜4が配置され、その陰極2側には多表面積導体からなる第1導体層5が陰極2に接するように設けられ、陽極3側には同様の第2導体層6が陽極3に接するように設けられている。各ユニット1a、1b…間に位置する陰極2または陽極3は両側のユニットに共用されている。
【0024】
電源装置7は陰極2および陽極3に直流電流を供給するように複数のユニットの電極に並列に接続している。給液路8は被処理液を各ユニットの電極間の第1、第2導体層5、6を通して、上向流で平行に流すように処理槽10の一端部の下部に連絡している。処理液路9は各ユニットから出た処理液を集めて取り出すように処理槽10の他端部の上部に連絡している。
【0025】
上記の装置において、陰極2および陽極3は黒鉛等の炭素質電極が用いられている。
隔膜はポリプロピレン等のプラスチック繊維の織布のようにイオン透過性、透液性、非導電性のシート状隔膜が用いられている。第1および第2導体層5、6は活性炭繊維の織布、活性炭粒子のシート状成形物のような活性炭からなるものが使用されている。
【0026】
上記の装置による脱酸素方法は、給液路8から被処理液を処理槽10に導入し脱酸素ユニット1a、1b…の第1および第2導体層5、6を通して流し、電源装置7から直流電流を陰極2、陽極3に供給して電気化学的処理を行う。
【0027】
これにより陰極と接触する第1導体層5では酸素はOH-イオンとなって脱酸素される。OH-イオンは隔膜4を透過して第2導体層6へ移行し、電荷が中和される。これと入れ替えに第2導体層6を流れる被処理水は隔膜4を透過して第1導体層5に入り、ここで溶存酸素は脱酸素される。各ユニットで脱酸素された処理水は処理液路9から取り出される。
【0028】
上記の装置は四辺形の直方体状の構造にされているが、円形の陰極2、陽極3、隔膜4、第1、第2導体層を積層した脱酸素ユニット1a、1b…を並べた円筒状の構造とし、周辺部に給液路8、中心部に処理液路9(逆でもよい)を連絡した構造、その他の構造とすることができる。
【0029】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。
実施例1
図1の装置において陰極2および陽極3として黒鉛シート(日本カーボン(株)製、ニカフィルム、商標、有効面積100cm2、極間距離0.5mm)、隔膜4としてポリプロピレン繊維織布(ユニチカ(株)製、エルベスSO303WDO、商標、厚さ0.2mm、目付30g/m2)、第1および第2導体層5、6として活性炭繊維織布(クラレ(株)製、クラクティブ、商標、繊維径8〜10μm、目付100〜250g/m2)を積層した脱酸素ユニット1a、1b…を100ユニット積層した脱酸素装置を用いた。
【0030】
上記装置に溶存酸素8.5mg/l、電気伝導率20mS/mの被処理水(水道水に0.1重量%の活性汚泥を添加したもの)を3 liter/hrで通水し、電源装置7から2Vの電圧で0.4〜0.3Aの直流電流を供給して脱酸素を行った。処理水の溶存酸素濃度を表1に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
比較例1
実施例において、陰極2および陽極3に通電することなく同様の処理を行った。
【0033】
【表2】
【0034】
上記の結果より実施例の電気化学的処理により酸素除去率が高くなり、低溶存酸素濃度の処理水が得られることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態の脱酸素装置の断面図である。
【符号の説明】
1a、1b… 脱酸素ユニット
2 陰極
3 陽極
4 隔膜
5 第1導体層
6 第2導体層
7 電源装置
8 給液路
9 処理液路
10 処理槽
Claims (2)
- 陰極および陽極と、
陰極および陽極間に設けられたイオン透過性、非導電性かつ液透過性の隔膜と、
隔膜の陰極側に設けられた第1の多表面積導体層と、
隔膜の陽極側に設けられた炭素質の材質からなる第2の多表面積導体層と、
第1の多表面積導体層に被処理液を通液する通液手段と、
陰極および陽極間に通電する電源装置と
を含む脱酸素装置。 - 第1および/または第2の多表面積導体層が活性炭からなる請求項1記載の装置。
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JP2001062459A JP2001062459A (ja) | 2001-03-13 |
JP4110684B2 true JP4110684B2 (ja) | 2008-07-02 |
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ID=17108829
Family Applications (1)
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JP (1) | JP4110684B2 (ja) |
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