JP4109973B2 - 光記録媒体およびその超解像再生方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は光記録媒体およびその超解像再生方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
光ビームの照射により情報の再生または記録・再生を行なう光ディスクメモリは、大容量性、高速アクセス性、媒体可搬性を兼ね備えた記憶装置として音声、画像、計算機データなど各種ファイルに実用化されており、今後もその発展が期待されている。光ディスクの高密度化技術としては、原盤カッティング用ガスレーザーの短波長化、動作光源である半導体レーザーの短波長化、対物レンズの高開口数化、および光ディスクの薄板化が考えられている。さらに記録可能な光ディスクにおいては、マーク長記録、ランド・グルーブ記録など種々のアプローチがある。
【0003】
また、光ディスクの高密度化の効果が大きい技術として、媒体膜を利用する再生超解像技術が提案されている。再生超解像技術は、当初、光磁気ディスク特有の技術として提案されたものである。光磁気記録の再生超解像技術では、記録層に対して再生光照射側に超解像機能を有する磁性膜(超解像膜)を設け、両者を交換結合または静磁結合させた媒体を用いる。そして、再生光を照射して超解像膜を昇温させて層間の交換力または静磁力を変化させ、超解像膜に再生スポットに対する部分的な光学マスクまたは光学開口を形成する。
【0004】
その後、光磁気ディスク以外にROMディスクでも、記録層に対して再生光照射側に、再生光の照射により光透過率が変化する超解像膜を設けて超解像再生する試みが報告されている。このように、再生超解像技術は光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、WORM、相変化光記録媒体など全ての光ディスクに適用可能なことが明らかになった。
【0005】
従来の超解像再生技術で提案されている超解像膜は、ヒートモード方式とフォトンモード方式に大別される。ヒートモード方式では、再生光照射によって超解像膜を加熱して超解像膜に相転移などを発生させ、透過率の高い光学開口を形成する。この光学開口の形状は、超解像膜の等温線と同一になる。この光学開口のサイズは、環境温度の影響により変動しやすいため、光ディスクの線速に合わせて厳密に熱制御することが必要になる。また、ヒートモード方式の超解像膜は、再生時および記録時の熱疲労により、十分な繰り返し安定性を得るのが困難である。
【0006】
フォトンモード方式では、超解像膜としてフォトクロミック材料を用い、再生光照射による発色または消色を利用する。フォトクロミック材料は、光照射により電子が基底準位から寿命の短い励起準位へ励起し、さらに電子が励起準位から寿命の非常に長い準安定励起準位へ遷移して捕捉されることにより、光吸収特性の変化を発現する。したがって、繰り返して再生するには、準安定励起準位に捕捉された電子を基底準位へ脱励起して、いったん形成された光学開口を閉じる必要がある。このための手段としては補助ビームの照射が用いられるため、原理的に2ビーム動作となり、高速応答には不利である。また、フォトクロミック材料では、原子移動または結合状態の変化を伴う複雑な過程を経て透過率変化が生じるので、繰り返し安定性は1万回程度が限界である。
【0007】
また、光ビームの径を絞るためのシャッター層を備えた光ディスクが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このシャッター層は、ガラスまたは樹脂のマトリックス中に、半導体微粒子を分散させたものである。半導体としては、CdS、CdSe、CdSSe、GaAs、α−Si、CdTe、CdSe、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、GaP、GaN、AlAs、AlP、カーボンナノチューブ、α−SiCなどが記載されている。半導体微粒子は、含有量が5〜70mol%、粒径が0.1〜50nmであることが好ましいと記載されている。このシャッター層を形成する方法としては、超急冷および熱処理、含浸、ゾル−ゲル法、スピンコート、スパッタリング、蒸着が記載されている。
【0008】
さらに、半導体、金属または金属化合物の微粒子を含み、低強度の光ビームに対しては透過率が低く、高強度の光ビームに対しては透過率が高くなる光透過特性を有する光制御膜を設けた光記録媒体もまた、提案されている(例えば、特許文献2参照)。この光制御膜は、SiO、SiN4、YbO3、Al2O3、Li3N、Ta2O、Nb2O3などの透明誘電体または透明樹脂中に、たとえばCdS、CdSeなどの半導体微粒子を分散させたものである。半導体微粒子は、粒径が1〜20nmであることが好ましいと記載されている。この光制御膜を形成する方法としては、スパッタリング、スピンコート、プラズマCVDが記載されている。
【0009】
しかしながら、これらの文献からは、シャッター層や光制御膜がどのような原理で超解像膜として機能するのか記載されておらず、超解像膜に適した特性が得られる条件が不明である。
【0010】
以上のように、光ディスクの超解像再生を実現するには、実用的な再生光パワーの領域で超解像膜の透過率の変化が起こり、その変化量が大きく、再生光スポットの通過時間程度の短時間で高速に光学開口を形成でき、繰り返し再生に対して安定であることが要求される。
【0011】
超解像再生を可能とするために、マトリックス中に半導体微粒子を分散させた微粒子分散膜または半導体の連続膜からなる超解像膜であって、半導体微粒子または半導体の連続膜中に混入しているマトリックス材料またはコンタミネーションの含有率を20at%以下に規定したものが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0012】
超解像技術は、再生時のみならず記録時にも用いることが望まれる。例えば、複数回の記録と消去との繰り返しが可能なRAM媒体に、高い記録密度で記録するためには、照射ビーム径よりも小さい径の記録マークを形成しなければならない。この際に用いることができるのが、記録超解像技術である。しかしながら、これまでのところ、再生時よりも光ビーム強度が極めて高い記録時に用いることが可能な記録超解像膜は実現されていない。
【0013】
【特許文献1】
特開平6−28713号公報
【0014】
【特許文献2】
特開平6−44609号公報
【0015】
【特許文献3】
特開平10320857号公報
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、実用的な記録光パワーまたは再生光パワーの領域で超解像膜の透過率の変化が起こり、その変化量が大きく、記録光または再生光スポットの通過時間程度の短時間で高速に光学開口を形成でき、繰り返しの記録や再生に対しても安定性を示す光記録媒体およびその超解像再生方法を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明の一態様にかかる光記録媒体は、記録層と、この記録層に対して記録光または再生光の入射側に設けられた超解像膜とを有し、前記超解像膜がフラーレンC 60 およびフラーレンC 70 から選択されるカーボンクラスターまたはその誘導体を含有する膜からなることを特徴とする。
【0019】
本発明の一態様にかかる超解像再生方法は、前述の光記録媒体に対し再生光を照射し、前記超解像膜における前記再生光の照射フォトン数の多い領域の透過率を低下させることによって、前記超解像膜における前記再生光の照射フォトン数の少ない領域に光学開口を形成し、この光学開口を通して前記記録層中の記録マークを検出することを特徴とする。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態をさらに詳細に説明する。
【0021】
本発明の実施形態にかかる光記録媒体における超解像膜は、フラーレンといったカーボンクラスター、またはその誘導体を含有する膜であり、カーボンクラスターは、マトリックス中に分散されていてもよい。カーボンクラスターを含有する超解像膜では、低エネルギーの光励起によってオプチカルリミッティング現象を起こすことができる。特に分散膜を用いる場合には、フラーレンが凝集していると効率が高められるので好ましい。
【0022】
まず、フラーレンに代表されるカーボンクラスターについて説明する。炭素原子同士の結合には、一重、二重、および三重結合があり、それぞれ立体状、平面状、および直線状を有する。立体的に結合した炭素原子からなる物質としてはダイヤモンドが挙げられ、平面状の結合を基本とする物質としてはグラファイト(黒鉛)が挙げられる。グラファイトでは、平面上で炭素原子同士が120°の角度で結合して、いわゆるグラファイトシートを形成しており、それらが重なり合って互いに弱い力(ファンデルワールス力)で結びついている。
【0023】
最近、グラファイトシートに類似した構造を基本として、包まれたり巻かれたような形状を有し、しかも個々のサイズが数ナノメートルという極めて小さなスケールの新しい炭素物質が発見された。それがフラーレンやカーボンナノチューブなどのカーボンクラスターと呼ばれる物質である。こうした物質は、従来にない新規な性質を有する夢の素材として注目されている。グラファイトシートは、正六角形に並んだ炭素原子を基本として平面を形成しているが、その中に五角形を混ぜると、平面に丸みを持たせて立体的な構造を形成することができる。これがフラーレンと呼ばれる物質である。60個の炭素原子からなるサッカーボール状のC60や、70個の炭素からなるラグビーボール状のC70が有名であるが、より多くの炭素原子を含有するフラーレンも存在する。
【0024】
また、グラファイトシートを巻いて筒状の形状とした物質が、カーボンナノチューブである。一枚のシートで形成されたものは単層ナノチューブ(single−walled nanotube,SWNT)と呼ばれ、年輪状に何重にも重ねたものは多層ナノチューブ(multi−walled nanotube,MWNT)と呼ばれている。
【0025】
本発明の実施形態において用いられる超解像膜は、上述したようなカーボンクラスターを含有する膜が示すオプチカルリミッティングという現象によって、光学開口が形成されるという特徴を有する。オプチカルリミッティングとは、照射光強度を増大させた際に光の透過率が低下する現象であり、ある強度以上の光を照射させたとき透過する光強度は一定に近くなる。オプチカルリミッティング現象の起源は諸説あり明確ではないものの、フラーレンに関して最も広く受け入れられているのが、Reverse Saturable Absorption(RSA)である。このメカニズムは、基底準位S0から励起準位S1への遷移確率よりもS1からS2などの高準位への遷移確率が高いために、吸収が増大するというものである。また、カーボンナノチューブに関しては非線形散乱が主な起源であると言われている。
【0026】
RSAや非線形散乱というメカニズムで起こるとされるオプチカルリミッティングの感度波長、光強度閾値、レスポンスタイム、さらに寿命は、用いられる分子の構造、その凝集状態(2次粒子構造、3次粒子構造、その分布)、マトリックス材料などによって大きく変化する。例えば、カーボンナノチューブの場合には、アスペクト比が大きいほどオプチカルリミッティングの効率が高いという報告がある。また、フラーレンやMWNTやSWNTが凝集しているとオプチカルリミッティングの効率が高いという報告がある。
【0027】
こうしたオプチカルリミッティングを示す材料を含む薄膜に光を照射した場合には、当初は光学濃度から予測されるだけの光が透過し、数fsから数10ns程度でオプチカルリミッティング現象が起こって、透過光量は時間の経過とともに減少する。
【0028】
図1を参照して、カーボンクラスターを含有する超解像膜における照射時間と透過率との関係を説明する。ここでは、カーボンクラスターとしてのカーボンナノチューブ微粒子をポリカーボネート中に分散させてなる超解像膜をガラス基板上に形成して、その特性を評価した。
【0029】
この超解像膜に、波長650nmの半導体レーザー光をパルス幅50nsでパワーを変えながら、NA0.6の対物レンズを通して照射し、光検出器を用いて透過率の時間変化を調べた。試料面でのスポットサイズはe-2幅で0.89μm、全半値幅で約0.5μmであった。パルス幅を50nsに設定したのは、光ディスクを線速10m/sで動作させたときのスポットの全半値幅の通過時間である50nsに合わせるためである。
【0030】
照射フォトン数は、再生光や記録光といった照射光のパワーに比例する。すなわち、照射パワーをP(W)としたとき、照射フォトン数Npは下記の式により与えられる。
【0031】
Np=P×τp/(1240/λ×1.6×10-19) (1)
ここで、τpは光照射時間[sec]、λは波長[nm]である。(1)式において、分子は照射した光のエネルギー、分母はフォトン1つの持つエネルギー[J]である(1240は1eVに相当する波長[nm]を意味し、1.6×10-19はeVからJへの変換係数である)。τp=50ns、λ=650nmを(1)式に代入すると、1mWの照射パワーに対して、Npは1.64×108photons/mWとなる。照射フォトン数Npを全半値幅のサイズで割ると、フォトン数密度8×1016photons/mW・cm2が得られる。
【0032】
図1中、透過率Trは規格化した値として示してあり、曲線a、b、cおよびdは、それぞれ照射フォトン数Np=1.0×107photons、1.7×107photons、2.7×107photons、および4.3×108photonsを表わす。透過率は、少なくとも20%以上減少することが望まれる。図1の結果から、50nsの光照射によってオプチカルリミッティングが生じ、それにより透過率が40%程度減少するためには、2.7×107photons程度の照射フォトン数Npが必要であることがわかる。これは、フォトン数密度1.35×1016photons/cm2に相当する。
【0033】
上述したような特性を有する超解像膜は、例えば再生時に用いて超解像再生を実現することができる。図2は、超解像膜を備えた本発明の一実施形態にかかる超解像再生用光記録媒体の断面図である。
【0034】
図2に示される光記録媒体においては、光ディスク基板1上に、超解像膜2、中間層3、記録層4および保護層5が順次形成されている。なお、中間層3および保護層5は必要に応じて設けられる。再生光は光ディスク基板1側から、超解像膜2および中間層3を通して、記録層4中に形成された記録マーク列に照射される。このように、超解像膜2は記録層4に対して再生光が照射される側に形成される。
【0035】
図2に示した光記録媒体における超解像膜は、ディスク基板を兼ねることもできる。この場合の光記録媒体の断面図を図3に示す。図3の光記録媒体では、超解像膜を兼ねる光ディスク基板6上に、記録層7および保護層8が順次形成されている。なお、保護層8は必要に応じて設けられる。再生光は超解像膜を兼ねる光ディスク基板6側から、記録層7中に形成された記録マーク列に照射される。このように、超解像膜は記録層に対して再生光が照射される側に形成される。
【0036】
こうした光記録媒体に再生ビームを走査させると、再生ビームスポット内のフォトン数の多い領域に対応して超解像膜にオプチカルリミッティングが起こる。通常、再生ビームスポット内においては、照射フォトン数に分布が存在し、スポットの中央部の照射フォトンは周辺部より多い。しかも、再生ビームを走査させているので、この再生ビームの走査後端部にはより多くの照射フォトンが照射されることになって、透過率の低下した光学マスクが走査後端部に形成される。図4を参照してこれについて説明する。
【0037】
図4に示すように、記録マークMを含む記録マーク列に対し、図中矢印方向に再生ビームを走査させると、再生スポットSにおける走査前端部には光学開口OPが形成される。ここで形成される光学開口OPのサイズは、実質上、再生ビームスポットよりも小さい。すなわち、再生スポットSの走査先端部は光照射が始まったばかりの領域なので、再生光は光学濃度に応じた透過率で超解像膜を透過する。一方、再生ビームスポットSの走査後端部は、オプチカルリミッティングが起こって透過率が低くなり、これは光学マスクCLで表わされる。その結果、再生スポットSの走査先端部のみに光学開口OPが形成されたことになる。この光学開口OPを通して記録層の記録マークを検出することによって、超解像再生を実施することができる。
【0038】
適切な再生パワーを選ぶことによって、超解像膜における照射フォトン数の多い位置にのみ透過率の低い領域が形成される。ここでの照射フォトン数は、再生時におけるスポットに対する媒体の移動に伴なって時間積分したフォトン数になる。したがって、再生ビームスポットの走査後端部における照射フォトン数は相対的に多くなって、走査先端部における照射フォトン数は相対的に少なくなる。この場合、図4の光学マスクCLの領域では透過率が低下し、この光学閉口領域の外側の超解像膜では光が十分に透過する。再生信号に寄与するのは、再生光スポット内の光学開口OPとマークMとの共通集合部である。したがって、超解像膜を有しない光ディスクでは識別不能な高密度の記録マークであっても、本発明の実施形態にかかる光ディスクでは容易に識別することが可能となる。
【0039】
こうした特性を示す超解像再生膜を有する光ディスクを再生する場合の記録マーク列、再生スポットの関係を図5に示す。図5において、TRは記録トラックを表わし、TRiは再生を実施しているトラック、TRi-1、TRi+1は隣接トラック、Sは再生スポットを示す。記録マークは、超解像再生膜を設けない場合には符合間干渉が大きく、識別が不能な程度に狭ピッチで記録されている。すなわち、図5に示すように再生ビームのスポット径の中に2個以上の記録マークが存在している。
【0040】
図4を参照して説明したように、再生ビームの走査先端部には光学開口が形成されているので、再生スポットSにおけるトラックTRiの前方部のマークのみが再生される。隣接トラックTRi-1、TRi+1に記録されているマークとのクロストークも生じないため、トラックピッチもつめることが可能である。しかも本発明の実施形態では、1ビーム動作で光学開口を閉じることができることから、従来のフォトクロミック材料を用いたフォトンモードの超解像膜のように、光学開口を閉じるために補助ビームを照射する必要はない。
【0041】
なお、超解像膜は、光が照射され始めて励起されることにより、所定の時間以内にオプチカルリミッティングを起こし、透過光強度が変化して光学開口が形成され、光照射後の所定の時間内に(例えば光ディスクが1回転する間に)基底状態に戻ることが好ましい。
【0042】
以上のように、本発明者らは、オプチカルリミッティングという現象を、超解像再生に利用できることを見いだした。さらに、酸化物半導体と比べて格段に低い光強度でオプチカルリミッティングが起こるフラーレンなどのカーボンクラスターやその誘導体を用いることによって、非常に高性能な超解像膜を作製可能であるという知見を得て、本発明をなすにいたったものである。なお、酸化物半導体においても、1kJ/cm2程度以上の光エネルギー密度で光を照射すれば、オプチカルリミッティングが起こることは確認されている。しかしながら、そのような強度でオプチカルリミッティングが生じたところで、光記録媒体の超解像膜として適用することは不可能である。
【0043】
カーボンクラスターを含有する超解像膜は、オプチカルリミッティング現象に加えて多波長に対応可能であるという特性も有する。フラーレンなどのカーボンクラスターは、ブロードな光吸収特性を示すからである。したがって、記録光や再生光の波長を選択できる点で有利である。
【0044】
本発明の実施形態における超解像膜は、再生時のみならず記録時に用いて超解像記録を実現することもできる。以下、超解像記録について詳細に説明する。
【0045】
上述したような超解像再生は、予めスタンパなどの技術により形成させた光ビームよりも小さい記録マークを読み出すのに有効に用いることができる。したがって、超解像再生はROM媒体に主に適用することができる。一方、超解像記録は、繰り返して記録再生が行なわれるRAM等に好適に用いられる技術である。超解像記録の原理は、超解像再生の場合と同様であり、光学開口を微細な記録マークを記録する際に用いるところのみが異なる。本発明の実施形態における超解像膜を記録時に用いる場合には、超解像膜は記録光のビーム強度で光学開口が開くように調整される。光ビームよりも小さいスポットに記録されたマークを読み出すために、超解像再生のための超解像膜を媒体に別途設けることが必要である。超解像再生膜としては、超解像記録膜よりも遙かに小さい光エネルギーで光学開口が開くものが用いられる。
【0046】
図6は、超解像膜を備えた本発明の実施形態にかかる超解像記録用光記録媒体の断面図である。図6に示した光記録媒体では、光ディスク基板9上に、超解像再生膜10、中間層11、超解像記録膜12,中間層13、記録層14および反射層付き保護層15が順次形成されている。なお、中間層11、13および反射層付き保護層15は必要に応じて設けられる。記録光および再生光は、基板9側から、超解像再生膜10、中間層11、超解像記録膜12、および中間層13を通して記録層14に照射され、マークの記録および読み出しが行なわれる。
【0047】
書き換え可能な光記録媒体を実現するには、図6に示したように、超解像記録膜12と超解像再生膜10との2層の超解像膜を有することが必要である。超解像記録膜12には、記録時の強いパワーの光により光学開口が形成され、一方、超解像再生膜10には、再生時の相対的に弱いパワーの光によって光学開口が形成される。記録時には超解像再生膜は機能せず、再生時には超解像記録膜は機能しないことが望ましい。これを実現するには、超解像記録膜には上述したような特性を有する超解像膜を用いるとともに、超解像再生膜には、吸収飽和などで光のエネルギー密度が高いときに透明になる膜を用いることが好ましい。光のエネルギー密度が高いときに透明になる膜としては、例えば、本発明者らが特開平10−320857号公報において報告した膜を用いることができる。すなわち、マトリックス中に半導体微粒子を分散させた微粒子分散膜または半導体の連続膜からなる超解像膜であって、半導体微粒子または半導体の連続膜中に混入しているマトリックス材料またはコンタミネーションの含有率を20at%以下に規定したものである。こうした超解像再生膜においては、半導体の吸収飽和により光学開口が形成される。吸収飽和とは、半導体に光を照射したときに、基底状態にある電子が励起状態に遷移して保持され、基底状態にある電子が減少する結果、半導体がもはや光を吸収しなくなる現象をいう。半導体は、吸収飽和して光を吸収しなくなると透過率が上がる。そのため、再生ビームスポット内のフォトン数の多い領域、すなわち中央部に対応して超解像膜に飽和吸収が起こり、再生ビームスポットよりも小さい光学開口が形成される。
【0048】
なお、超解像再生膜10は、図6に示すように、超解像記録膜12よりも基板9側に形成されることが好ましい。このような順序で積層することによって、記録層に近い超解像記録膜は、常に超解像再生膜よりも光パワー密度が高くなるので、両者が機能しやすい。
【0049】
カーボンクラスターを含有する超解像膜は、種々の方法により形成することができる。
【0050】
1つは、蒸着やスパッタリングなどの方法が挙げられる。例えば超解像膜をスパッタリングにより成膜する際には、基板にバイアスを印加してもよい。基板にバイアス、特にRFバイアスを印加してスパッタリングを行なうことにより、適切なエネルギーをもったイオンが基板に入射して、基板表面に被着したスパッタ粒子の表面移動を促進する。この場合には、フラーレン、あるいはその誘導体の粒子サイズを大きく変化させることができ、最も特性の高い粒子サイズまで成長させることが可能である。また、マトリックス材料を用いる場合、フラーレン、その誘導体とマトリックス材料とが互いにぬれ性が悪い場合には、同じ材料同士が凝集するため、適当なサイズの粒子に成長し、しかもマトリックス材料またはコンタミネーションの混入量が少なくなる。
【0051】
スパッタ時には、マトリックス材料のターゲットとオプチカルリミッティング特性を示す材料のターゲットとを用いて、二元同時スパッタすることができる。あるいは、マトリックス材料とフラーレンとのコンポジットターゲットをスパッタしてもよい。RFスパッタのほか、イオンビームスパッタ、蒸着、およびCVDなどを用いることもできる。
【0052】
マトリックスとして高分子材料を用いた場合には、上述した成膜方法に加えて、射出成形、溶液からのキャスティング、ディッピング、およびスピンコーティングなど通常の高分子材料の製膜に用いられている様々な方法を用いることができる。
【0053】
マトリックス材料は特に限定されず、任意の材料を使用することができる。例えば、SiO2、Si−N、Al−O、Al−N、B−Nなどの無機材料、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリイミドなどの高分子有機材料など、使用する再生ビームの波長に対して透明な材料から幅広く選定できる。
【0054】
フラーレンといったカーボンクラスターの含有量は、以下に示すパラメータによって適宜決定することができる。パラメータは、使用する再生光や記録光の波長、超解像膜の膜厚、基板の反射率、さらにはフラーレンの凝集状態などである。通常は、照射光ビームの50%程度が超解像膜を透過することが好ましいので、オプチカルパスに存在するフラーレンによる光の吸収が50%以下となるように、その含有量を調節することが望まれる。カーボンクラスターの凝集状態によって吸光係数は異なるので、最適な含有量も異なる。例えば、再生光として波長400nmの光を用いるときには、フラーレンC60単体を含有する超解像膜の場合には、50〜500nm程度の厚さとすることが好ましい。したがって、単位面積1cm2の超解像膜を切り取ったとき、その中に存在するフラーレンC60の量は5×10-9から5×10-8mol程度であることが好ましい。マトリックスを含有する超解像膜の厚さが10μmの場合には、5×10-5mol/cm3となる。フラーレンC70は、その吸光係数がC60よりも大きいのでmol濃度はより小さい範囲とすることが好ましく、具体的には5×10-10から1×10-8mol程度が好ましい。
【0055】
【実施例】
以下、本発明の実施例を、図面を参照して説明する。
【0056】
(参考例1)
まず、基板上に超解像膜のみを形成してその特性を調べた。
【0057】
カーボンナノチューブターゲットおよびSiO2ターゲットの2つのターゲットが配置されたスパッタ装置内にガラス基板を設置して、二元同時スパッタにより膜厚100nmの超解像膜を基板上に形成した。カーボンナノチューブターゲットは、直径15〜20nm程度の多層のMWNT、直径15〜20nm程度の単層のSWNT、多層のグラファイトシート、およびフラーレンの混合物である。二元同時スパッタ時にカーボンナノチューブターゲットおよびSiO2ターゲットへ投入するRF電力比を変えて膜中のカーボンナノチューブ含有率を調整し、成膜時の基板バイアスを変更することにより膜中のカーボンナノチューブ微粒子のサイズを変化させた。具体的には、超解像膜中のカーボンナノチューブ体積含有率を10〜100vol%(100vol%の場合はカーボンナノチューブ連続膜を意味する)の範囲で変化させ、カーボンナノチューブ粒径を0.7nmから60nmまでの範囲で変化させた。ここで粒径とは、カーボンナノチューブの凝集物の平均直径を意味する。
【0058】
得られた超解像膜に対して波長650nmの半導体レーザー光をパルス状に照射して、時間分解スペクトルアナライザーを用いて透過率の時間応答性を調べた。
【0059】
その結果、時間応答性は、カーボンナノチューブ体積含有率のみならずカーボンナノチューブの凝集状態など、様々なパラメータによって変化することが確認された。最適な特性を超解像膜に付与するカーボンナノチューブ体積含有率の範囲は、用いるターゲットに含まれる各種カーボンクラスター(フラーレンおよびナノチューブを含む)の種類および含有量、さらには製膜条件によって変化する。例えば、カーボンナノチューブ体積含有率が10vol%未満であって、粒径が5〜10nm程度と小さい場合には、パルス照射後に上昇した透過率が元の状態に復元するまでに数分以上を要した。これに対し、カーボンナノチューブ体積含有率が10vol%以上で、粒径が20〜60nm程度の場合には、主にオプチカルリミッティングが起こり、実用的な透過率変化量と適切な時間応答性が得られる。なお、実用的な透過率変化量とは、記録層の透過率や反射層の反射率ならびに検出系にもよるが、通常20%以上程度であり、適切な時間応答性とは、変化の立ち上がりが3nm以下で、変化が戻る時間が4ms以下であることを意味する。
【0060】
次に、以上の結果に基づいて、それぞれカーボンナノチューブ体積含有率[vol%]および平均粒径[nm]が、25vol%、20nm(参考例1−1)、40vol%、60nm(参考例1−2)、10vol%、50nm(参考例1−3)である超解像膜を形成した。
【0061】
これらの超解像膜に対して、波長650nmの半導体レーザー光を照射し、時間分解スペクトラムアナライザーを用いて透過率の時間変化を調べた。オプチカルリミッティングにより低下した透過率が、時間とともに元にもどる様子を調べた。透過率の低下に要する時間は、光パルスとほぼ同一のnsである。このことから、オプチカルリミッティング応答は極めて高速に起こっていることがわかる。光パルスの照射終了後、透過率は脱励起に伴って元に戻り、最終的にはパルス照射前のレベルに戻る。時定数を求めると、参考例1−1、1−2では200ns、参考例1−3では500nsである。時定数がこうした値であれば、超解像記録膜や超解像再生膜として充分機能する。
【0062】
一方、再生スポットのマーク通過時間は、波長650nm、対物レンズのNA0.6の条件で50nsである。光ディスクの回転数は、現状のところ3600rpm程度であり、将来的には2倍の7200rpm程度まで高速化する可能性があるが、この場合でも1回転に要する時間は8.3msである。すなわち、同一トラックを再生する場合でも1回目の再生と2回目の再生との間の時間は、脱励起の時定数の10倍以上である。したがって、再生光スポット通過後に次の再生が行なわれるまでの間に脱励起が起こって、透過率も元に戻るものと判断することができる。
【0063】
上述したように、脱励起の時定数は、超解像膜中のカーボンナノチューブの含有率および粒径によって、幅広く制御することができる。また、脱励起の時定数の下限はスポットサイズに依存し、再生スポットが照射されている間に脱励起が顕著に起こるとオプチカルリミッティングが起こりにくくなる。このため、脱励起の時定数は、再生スポットの全半値幅の通過時間の2倍以上であることが好ましい。脱励起の時定数の上限はシングルビーム動作で繰り返し再生を行なうために、再生インターバルの半分未満にすることが好ましい。これはディスク回転数などの動作条件に依存するが、具体的には4ms以下とすることが好ましい。
【0064】
次に、図7に示すように、超解像膜を有する相変化光記録媒体(DVD−RAM)を作製した。図示する相変化光記録媒体においては、ポリカーボネートからなるディスク基板16上には、膜厚100nmのSiN干渉層17、膜厚50nmの超解像膜18、膜厚150nmのZnS−SiO2下部干渉層19、膜厚20nmのGeSbTeからなる相変化記録層20、膜厚150nmのZnS−SiO2上部干渉層21、および膜厚50nmのAl−Mo反射層22が形成されている。また、Al−Mo反射層22上に接着剤23により対向基板24が接着されている。
【0065】
図7の相変化光記録媒体は、例えば以下のような手法により製造することができる。トラッッキングガイドグルーブが設けられたポリカーボネート製のディスク基板16を、多室マグネトロンスパッタリング装置にセットして真空排気する。第1室でBドープSiターゲットをN2−Ar混合ガスプラズマ中で反応性DCスパッタし、膜厚100nmのSiN干渉層17を形成する。第2室では、上述したようにカーボンナノチューブターゲットおよびSiO2ターゲットの2つのターゲットを用いて、二元同時スパッタにより膜厚50nmの超解像膜18を形成する。この際、2つのターゲットに供給するRF電力比や基板バイアスを調整することによって、上述の予備実験で形成した参考例1−1〜1−3の超解像膜を形成することができる。
【0066】
第3室で、ZnS−SiO2をArプラズマでRFスパッタして膜厚150nmの下部干渉層19を形成し、第4室では、Ge2Sb2Te5ターゲットをArプラズマでDCスパッタして膜厚20nmのGeSbTe記録層20を形成する。第5室でZnS−SiO2をArプラズマでRFスパッタして膜厚150nmのZnS−SiO2上部干渉層21を形成する。第6室でAl−2at%MoターゲットをArプラズマでDCスパッタして膜厚50nmのAl−Mo反射層22を形成する。
【0067】
この後、ディスクを大気中に取り出す。さらに、接着剤(ホットメルト接着剤またはUV樹脂)23を、Al−Mo反射層22上にスピンコートし、対向基板24を載せ、接着剤23を硬化して貼り合わせ構造の光ディスクを作製する。
【0068】
SiN干渉層17は、必ずしも設ける必要はないが、超解像膜18の透過率変化を干渉効果により増大させるために設けることが好ましい。対向基板24は、膜の設けられていない平板でもよいし、ディスク基板16と同様にグルーブを設け、機能性多層膜を形成したものでもよい。
【0069】
なお、比較のために、SiN干渉層および超解像膜を設けていない以外は図7と同様の構成の光ディスク(比較例1)を作製した。ディスク基板16に設けられるグルーブのピッチは、ディスク動作に使用するレーザーの波長、対物レンズのNAおよび超解像膜の特性に応じて決定される。以下の実験では、照射されるレーザービームの波長は400nmとし、対物レンズのNA0.6という条件を採用する。この条件では、超解像膜を設けていない場合にはグルーブピッチは高々0.6μm程度までしか詰めることができないが、超解像膜を設けた場合には0.3μm程度まで詰めてもクロストークを所定量以下に抑えることができる。ただし、記録時のクロスイレーズを考慮すると、グルーブピッチはレーザースポットの全半値幅相当の0.5μm程度とすることが好ましい。グルーブ深さは、ランドグルーブ記録方式でのクロストークを低減し、記録時のクロスイレーズを低減するために、150nm(いわゆるディープグルーブ)が設定されている。
【0070】
参考例1−1〜1−3の超解像膜が形成された光ディスク、および比較例1の光ディスクを用いて、記録再生特性を評価した。まず、初期化装置を用いて、相変化光記録層20をディスク全面にわたって初期結晶化した。次に、光ディスクを波長400nmの半導体レーザー、NA0.6の対物レンズを備えた光ディスクドライブにセットし、オーバーライトモードで記録マーク(マーク長0.3μm)を、マーク間隔を変化させながら単一周波数で記録した。この際、ディスク線速を10m/s、記録パワーレベルを12mW、消去パワーレベルを6mWに設定した。また、熱干渉の影響を防ぐ目的で、記録パルスを分割する記録補償を適用した。
【0071】
上記のようにして記録した光ディスクについて再生を行なった。まず、マーク間隔(MP)が0.2μmのマーク列に対して再生パワーを変えながら再生した。
【0072】
比較例1の光ディスクでは、0.2μm間隔のマーク列を分離識別して再生することが不可能であり、符号間干渉の影響から再生信号強度は極めて低いレベルであった。また、再生パワーを増加させると、光強度の増加に応じて信号強度も増加するが、同時に雑音レベルも増加するため、CNRは低いレベルのままであった。
【0073】
これに対して、参考例1−3の超解像膜を設けた光ディスクでは、1.0mW程度未満の低パワー領域では、超解像膜がオプチカルリミッティングせず、透過率が低い状態のままであるため、信号が得られない。再生パワーが1.0mW以上になると徐々にオプチカルリミッティングして透過率が増加し、CNRが向上した。再生パワーが1.3mW程度では、十分にオプチカルリミッティングが起こって、十分に高いCNRを示すようになった。さらに再生パワーを高めると超解像膜中に形成される光学閉口が過大になり、実質上光学開口が開かなくなって、マークの識別ができなくなりCNRが徐々に低下した。
【0074】
参考例1−1および参考例1−2の超解像膜でも、前述と同様な傾向が認められた。具体的には、参考例1−1は参考例1−3とほぼ同等の特性を示した。また、参考例1−2は参考例1−3よりもCNRが低かったが、CNRが一定値を示すパワー範囲は参考例1−3よりも広く、パワーマージンの点では有利であった。
【0075】
以上の結果から、CNRを高くするためには透過率変化量を大きくすることが好ましく、高密度化およびパワーマージンの観点からは光学開口を小さくすることが好ましいことがいえる。
【0076】
さらに、本発明の実施形態にかかる光ディスクでは、繰り返し再生回数が多いという効果が得られる。すなわち、従来知られているヒートモードまたはフォトンモードの超解像再生方法と異なって、本発明の実施形態においては原理的に電子励起のみを用いており、熱疲労または原子移動や結合状態の変化による劣化がない。このため、繰り返し安定性は極めて良好である。
【0077】
(実施例2)
超解像膜および基板としてフラーレンC70をドープしたポリカーボネート膜を用いた以外は、参考例1と同様に光ディスクを作製して評価した。
【0078】
具体的には、フラーレンC70微粒子を体積含有率50vol%でポリカーボネート中に分散させて超解像膜18を形成して、図7に示す構造の光ディスクを作製した。得られた光ディスクに対し前述と同様の手法により情報を記録し、波長650nmの再生光を照射したところ、オプチカルリミッティングが生じて、超解像再生が可能であった。
【0079】
なお、上述した実施例の光ディスクは、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、およびWORMなどに適用することができ、同様に高密度化を実現できることが予測される。
【0080】
(実施例3)
図8に示すような超解像記録膜と超解像再生膜とを有する相変化光記録媒体(DVD−RAM)を作製した。図示する相変化光記録媒体においては、ポリカーボネートからなるディスク基板25上には、膜厚5nmの中間層26、超解像再生層27、膜厚5nmの中間層28、超解像記録層29、および膜厚5nmの中間層30、GeSbTeからなる相変化記録層31、およびAl−Mo反射層32が形成されている。また、Al−Mo反射層32上に接着剤33により対向基板34が接着されている。超解像再生層27は、平均粒径が8nmのAlSbをSiO2中に体積含有率60vol%で含有する膜であり、超解像記録層29は、アスペクト比が3のMWNTを20vol%の体積分率でPMMAに含有させて形成した。
【0081】
比較のために、超解像記録層および超解像再生層のいずれも設けない以外は実施例3と同様の構成の光ディスク(比較例2)を作製した。
【0082】
実施例3および比較例2の光ディスクを用いて、記録再生特性を評価した。まず、初期化装置を用いて、相変化光記録層31をディスク全面にわたって初期結晶化した。次に、光ディスクを波長400nmの半導体レーザー、NA0.6の対物レンズを備えた光ディスクドライブにセットし、オーバーライトモードで記録マーク(マーク長0.3μm)を、マーク間隔を変化させながら単一周波数で記録した。この際、ディスク線速を10m/s、記録パワーレベルを20mW、消去パワーレベルを6mWに設定した。また、熱干渉の影響を防ぐ目的で、記録パルスを分割する記録補償を適用した。
【0083】
上記のようにして記録した光ディスクについて再生を行なった。まず、マーク間隔(MP)が0.2μmのマーク列に対して再生パワーを変えながら再生した。
【0084】
比較例2の光ディスクでは、0.2μm間隔のマーク列を分離識別して再生することが不可能であり、符号間干渉の影響から再生信号強度は極めて低いレベルであった。また、再生パワーを増加させると、光強度の増加に応じて信号強度も増加するが、同時に雑音レベルも増加するため、CNRは低いレベルのままであった。
【0085】
これに対して、超解像再生膜および超解像記録膜を設けた実施例3の光ディスクでは、再生パワー0.7mWで再生可能であった。
【0086】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明の一態様によれば、実用的な記録光パワーまたは再生光パワーの領域で超解像膜の透過率の変化が起こり、その変化量が大きく、記録光または再生光スポットの通過時間程度の短時間で高速に光学開口を形成でき、繰り返しの記録や再生に対しても安定性を示す光記録媒体の超解像再生方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態における超解像膜について、透過率と照射時間との関係を示すグラフ図。
【図2】本発明の一実施形態にかかる光記録媒体の断面図。
【図3】本発明の他の実施形態にかかる光記録媒体の断面図。
【図4】本発明の一実施形態にかかる光記録媒体の再生時における記録マーク列、再生スポット、光学開口の関係を示す図。
【図5】本発明の一実施形態にかかる光記録媒体の再生時における記録マーク列、再生スポット、光学開口の関係を示す図。
【図6】本発明の他の実施形態にかかる光記録媒体の断面図。
【図7】参考例1にかかる光記録媒体の断面図。
【図8】実施例3にかかる光記録媒体の断面図。
【符号の説明】
S…再生スポット
M…マーク
OP…光学開口
CL…光学閉口
TR…トラック
1…基板
2…超解像膜
3…中間層
4…記録層
5…保護膜
6…基板および超解像膜
7…記録層
8…保護膜
9…光ディスク基板
10…超解像再生膜
11…中間層
12…超解像記録層
13…中間層
14…記録層
15…保護層
16…ディスク基板
17…SiN干渉層
18…超解像膜
19…ZnS−SiO2下部干渉層
20…GeSbTe記録層
21…ZnS−SiO2上部干渉層
22…Al−Mo反射層
23…接着剤
24…対向基板
25…ディスク基板
26…中間層
27…超解像再生層
28…中間層
29…超解像記録層
30…中間層
31…GeSbTe記録層
32…Al−Mo反射層
33…接着剤
34…対向基板
Claims (2)
- 記録層と、この記録層に対して記録光または再生光の入射側に設けられた超解像膜とを有し、前記超解像膜がフラーレンC60およびフラーレンC70から選択されるカーボンクラスターまたはその誘導体を含有する膜からなることを特徴とする光記録媒体。
- 請求項1に記載の光記録媒体に対し再生光を照射し、前記超解像膜における前記再生光の照射フォトン数の多い領域の透過率を低下させることによって、前記超解像膜における前記再生光の照射フォトン数の少ない領域に光学開口を形成し、この光学開口を通して前記記録層中の記録マークを検出することを特徴とする光記録媒体の超解像再生方法。
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