JP4108282B2 - ポリウレタン系一液型湿気硬化性組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体、食品、医薬品、バイオテクノロジー関連の工場や研究所等におけるクリーンルームで使用される湿式シール材として好適な、ポリウレタン系一液型湿気硬化性組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体、食品、医薬品、バイオテクノロジー関連の工場や研究所等におけるクリーンルームでは、空気中の浮遊粒状物質を捕集する乾式エアフィルターを空気導入経路に設置し、これを通過した空気を室内に導入するようにしている。
ところが、例えば半導体関連のクリーンルームでは、半導体の高集積化などに伴い、クリーンルーム内への導入空気について塵挨だけでなくガス状有機物の拡散も問題とするようになってきている。
すなわち、半導体の高集積化、微細化に伴い、クリーンルーム内で半導体基板(シリコンウエハ)の表面に有機物が吸着すると、素子特性が低下してしまうことがあるからである。
【0003】
このような不都合を回避するため、従来のクリーンルームに用いられる湿式シーリング材としては、専らシリコーン系シーリング材が使用されていた。しかし、シリコーン系シーリング材もこれから低分子量の環状シロキサンが発生することが分かり、したがって低分子量の環状シロキサンの発生を抑えた低シロキサンタイプのシリコーン系シーリング材が使用されるようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このような低シロキサンタイプのシリコーン系シーリングは値段が高く、したがってクリーンルームを作製する上でコスト高を招く大きな要因となっている。
【0005】
また、特開平9−95661号公報には、クリーンルーム用シリコーン系湿式シーリング材の代わりにクリーンルーム用ポリウレタン系湿式シーリング材が開示されている。
この湿式シーリング材については、これに含まれる添加剤として、その滑剤の主成分がマイクロクリスタリンワックスであり、可塑剤の主成分がセバチン酸ジ−2−エチルヘキシルであり、酸化防止剤の主成分が2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)であるものが好ましいと記載されている。
しかしながら、このような原料は非常に高価であるため、当然これを用いてクリーンルームを作製した場合、先の例と同様にコスト高を招いてしまうと考えられる。
【0006】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、特にクリーンルーム用のものとして好適なもので、発生するガス状有機物が少なく、しかも低コストであるポリウレタン系一液型湿気硬化性組成物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成した。すなわち、本発明のポリウレタン系一液型湿気硬化性組成物では、空気中の水分で硬化するクリーンルーム用のポリウレタン系一液型湿気硬化性組成物であって、硬化後にポリウレタン樹脂となる主成分と、以下の一般式に示す添加剤(揺変性付与剤)とを有してなり、有機溶剤を配合しないで用いられるものとすることを前記課題の解決手段とした。ここで、本発明において有機溶剤とは、一般的に有機溶剤と呼称されるものをいい、具体的には、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、エーテル類等を指す。
【0008】
前記添加剤としては、以下の一般式
R1(NHCON−R2,−R3)m
(ただし、式中、R1は、ポリイソシアネート由来のポリイソシアネートの残基であり、R2及びR3は、モノアミン由来の残基で、このうち一つの基は水素であってもよい。mは2〜4の整数を示す。)
で示されるポリ尿素化合物からなる揺変性付与剤を配合するのが好ましい。
【0009】
また、このポリ尿素化合物からなる揺変性付与剤を配合する場合、該揺変性付与剤を予め可塑剤中に分散して揺変性付与剤分散ペーストを形成し、この揺変性付与剤分散ペーストを組成物中に添加するのが好ましく、このような添加方法を採用する場合、前記可塑剤としてはジイソデシルフタレートを用いることが望ましい。
【0010】
このポリウレタン系一液型湿気硬化性組成物にあっては、発生するガス状有機物が少なく、またシリコン系シーリング材等に比べ低コストのものとなる。
また、添加剤としては前記のポリ尿素化合物からなる揺変性付与剤を配合すれば、特に貯蔵安定性に優れ、チキソトロピー性もよいものとなる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のポリウレタン系一液型湿気硬化性組成物を詳しく説明する。
本発明のポリウレタン系一液型湿気硬化性組成物は、空気中の水分で硬化するもので、例えば部材間の隙間に充填されて用いられるものであり、後述するように特にクリーンルームの作製等において、シーリング材、接着剤、防水材などとして好適に用いられるものである。
【0012】
また、このポリウレタン系一液型湿気硬化性組成物は、硬化後にポリウレタン樹脂となる主成分と、添加剤とを有してなるもので、有機溶剤が配合されないで用いられるものである。
硬化後にポリウレタン樹脂となる主成分としては、特に制限されることなく従来公知の一般的なものが用いられ、例えばポリプロピレンオキサイドを主鎖骨格とし、末端にイソシアネート基を有するプレポリマーが好適に用いられる。なお、このプレポリマーにおいてイソシアネート基としては、例えばTDI(トリレンジイソシアネート)に由来するイソシアネート基や、MDI(メチレンジフェニルジイソシアネート)に由来するイソシアネート基とされる。
【0013】
添加材としては、特にチキソトロピー性を付与するための揺変性付与剤が用いられる。この揺変性付与剤は、ポリイソシアネートとモノアミンとの反応により得られるポリ尿素化合物であって、分子中に複数の尿素結合を有している化合物である。
このポリ尿素化合物は、ポリイソシアネート[R1(NCO)m](ただし、式中、R1はポリイソシアネート残基、mは2〜4の整数を示す。)と、モノアミン[R2R3NH](式中R2,R3は、モノアミンの残基で、一方が水素であってもよい。)との反応によって得られるもので、以下の一般式、
R1(NHCON−R2,−R3)m
(式中、R1はポリイソシアネート残基、R2及びR3は、それぞれモノアミンの残基であり、mは2〜4の整数を示す。)
で表されるものである。
【0014】
ポリイソシアネートとしては、特に制限はなく、脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネートなどの公知のものを用いることができる。具体的には、炭素数2〜8の直鎖状または分枝脂肪族ポリイソシアネート、無置換またはハロゲンもしくは炭素数1〜4のアルキル基によって置換されているベンゼン系またはナフタリン系ポリイソシアネート[イソシアネート基は、直接または適当な架橋基(例えば炭素数1〜4のアルキレン基)を介して芳香族環に結合していてもよい]、炭素数3〜6の脂環族ポリイソシアネート[この脂環族はメチル基等によって置換されることができ、またイソシアネート基は直接または適当な架橋基(例えば炭素数1〜4のアルキレン基)を介してシクロアルキル環に結合してもよい]が挙げられる。
【0015】
さらに具体的には、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリフェニルメタンポリイソシアネート(ポリメリックMDI)、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ジフェニルスルホンジイソシアネートなどが挙げられる。また、これらに水素添加した化合物、例えば1−メチル−2,4−ジイソシアネートシクロヘキサン、1−メチル−2,6−ジイソシアネートシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなども用いられる。さらに、これらジイソシアネートの2量体化(ウレトジオンジイソシアネート)、もしくは3量体化(イソシアヌレートトリイソシアネート)等も用いられる。
【0016】
これらのポリイソシアネート化合物については、一種を単独で用いても良く、ニ種以上を併用してもよい。
なお、前記したポリイソシアネートの中では、揺変性、製造効率及びコストの点から、特にジフェニルメタンジイソシアネートのようなアリールアルキルアリールジイソシアネートが好適に用いられる。
【0017】
一方、モノアミンについても特に制限はなく、第一アミン、第二アミンのいずれも使用可能である。上記R2及びR3として具体的には、それぞれが、水素、あるいは置換されていてもよい脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基、または芳香族炭化水素基であることが好ましい。ただし、当然ながらR2とR3との両方が同時に水素であることはない。
【0018】
R2及びR3として具体的には、それぞれが、水素、炭素数1〜8の直鎖状または分枝状の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基、炭素数1〜4のアルキル基によって置換されていてもよい炭素数3〜6の脂環基、ハロゲン原子または炭素数1〜4のアルキル基によって置換されていてもよいベンゼン環またはナフタレン環、アリール置換された炭素数1〜4のアルキル基、が挙げられる。ただし、この場合にもR2とR3との両方が同時に水素であることはない。
【0019】
さらに具体的には、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、アミルアミン、ヘキシルアミンのような脂肪族第一アミン。また、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミンのような脂肪族第二アミン。アリルアミン、ジアリルアミンのような脂肪族不飽和アミン。シクロプロピルアミン、シクロブチルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミンのような脂環式アミン。アニリン、ジフェニルアミン、メチルアニリン、エチルアニリン、トルイジン、キシリジン、ベンジルアミン、ナフチルアミンのような芳香族アミン、等が挙げられる。
特に、本発明のモノアミンとしてはモノアルキルアミンが好ましく、さらに好ましくは直鎖モノアルキルアミンが用いられる。その中でも、揺変性、製造効率及びコストの点から、n−ブチルアミンがより好適とされる。
【0020】
前記ポリイソシアネートとモノアミンとの反応条件については、特に限定されることなく、例えば、前記したポリイソシアネートとモノアミンとをそれぞれ、フタル酸ジアルキル(例えばジイソデシルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジヘプチルフタレートなど)のごとくイソシアネートに対して不活性な液体(可塑剤)に溶解しまたは分散し、[イソシアネート基/(アミノ基またはイミノ基)]の比を1.0〜1.1にして常法で反応させることにより、分子中に複数の尿素結合を持つポリ尿素化合物、すなわち本発明における揺変性付与剤を得る。
なお、このようにして可塑剤中に分散した揺変性付与剤は、後述するように本発明における揺変性付与剤分散ペーストとなる。
【0021】
本発明において揺変性付与剤として用いられる前記のポリ尿素化合物は、水分やシラノール基を含んでおらず、また硬化後にポリウレタン樹脂となる主成分、すなわち重合体成分に対しても不活性であるため、製造時や貯蔵時においてこれを配合した組成物の粘度を上昇させるといった問題を引き起こすことがない。
また、この揺変性付与剤を配合することにより、可塑剤等の液状成分が空気中に拡散しにくくなるため、アウトガスの少ない組成物が得られる。したがって、このようなポリ尿素化合物からなる揺変性付与剤が配合された組成物は、アウトガスが少なく、貯蔵安定性に非常に優れたものとなり、また、実際の施工時においても充分な揺変性(チクソトロピー性)を発揮するものとなる。
【0022】
また、本発明のポリウレタン系一液型湿気硬化性組成物には、通常用いられる各種の充填剤、可塑剤、及び前記揺変性付与剤以外の添加剤が、本発明の目的を損なわない範囲で適宜配合される。
【0023】
まず、充填剤としては、炭酸カルシウム、酸化チタン、脂肪酸処理炭酸カルシウム、クレー、タルク、酸化亜鉛、シラスバルーン、カーボンブラック、ポリアマイド等が使用可能である。
可塑剤としては、フタル酸ジアルキル(例えばジイソデシルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジヘプチルフタレートなど)、アジピン酸ジアルキル(例えばアジピン酸ジブチル、アジピン酸ジ−n−ヘキシルなど)等が使用可能である。
【0024】
また、有機溶剤については、前述したように本発明の組成物においては配合されない。ただし、各配合剤の不純物として微量混入する分については、意識して配合したものでないため、これは本発明において許容されるものとする。なお、ここでいう有機溶剤とは、前述したように脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、エーテル類等を指している。
【0025】
前記揺変性付与剤以外の添加剤としては、硬化触媒(例えばジブチルチンジクロライド、オクチル酸錫、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジマレエート、ジブチル錫ジフタレート、アルキルチタン酸塩、有機ケイ素チタン酸塩、ジブチルアミン−2−エチルヘキソエートなど)、接着付与剤(例えば3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランとビュレット型HDIとの付加物など)、脱水剤(例えばトルエンスルホニルイソシアネートなど)、さらには酸化防止剤、紫外線吸収剤、有機顔料等が必要に応じて選択され、それぞれ適量配合される。
【0026】
このようなポリウレタン系一液型湿気硬化性組成物の製造方法としては、従来から採用されているような湿分(湿気)の影響を極力抑える方法、例えば真空下で製造するといった周知の方法が採用される。
具体的には、まず、本発明における重合体成分(硬化後にポリウレタン樹脂となる主成分)、及び揺変性付与剤をバッチ式2軸混練ミキサー等を用いて混合し、その後、必要に応じて各種の充填剤、可塑剤、及び揺変性付与剤以外の添加剤等を適宜配合し、さらに混合・脱泡することにより、目的とする組成物を製造するといった方法が採用される。
【0027】
このような配合のポリウレタン系一液型湿気硬化性組成物にあっては、有機溶剤が配合されないで用いられるようにしたことによって発生するガス状有機物が少なく、またシリコン系シーリング材等に比べ低コストのものとなる。
また、添加剤として前記ポリ尿素化合物からなる揺変性付与剤を配合すれば、特に貯蔵安定性に優れ、チキソトロピー性もよいものとなる。したがって、この組成物は、半導体、食品、医薬品、バイオテクノロジー関連の工場や研究所等におけるクリーンルームに使用されるシーリング材、接着剤及び防水材等とした場合に、クリーンルーム内にガス状有機物をほとんど放出せず、また安価であってクリーンルームの建設費等のコスト低減に寄与するなどの理由により、特に有効なものとなる。
【0028】
【実施例】
次に、本発明のポリウレタン系一液型湿気硬化性組成物の実施例を示す。また、比較のため比較例も示す。なお、特に断りのない限り、本明細書中において「部」は重量部を表す。
【0029】
「揺変性付与剤分散ペースト(A)の合成」
ジフェニルメタンジイソシアネート80部をジイソデシルフタレート235部中に溶解させたイソシアネート溶液と、n−ブチルアミン40部をジイソデシルフタレート275部中に溶解させたアミン溶液とを、等量ずつ別々の定量ポンプによって反応器に導入した。その後、スタティックミキサーで攪拌混合して反応させ、分子中に複数の尿素結合を持つ揺変性付与剤の分散ペースト、すなわち本発明における揺変性付与剤分散ペースト(A)を得た。
【0030】
「ポリウレタン系一液型湿気硬化性組成物の調製」
(実施例1)
バッチ式2軸混練ミキサーの反応釜に、ポリプロピレンオキサイドを主鎖骨格とし、末端にイソシアネート基(特にTDIに由来するイソシアネート基)を有するプレポリマー880部、ポリプロピレンオキサイドを主鎖骨格とし、末端にイソシアネート基(特にMDIに由来するイソシアネート基)を有するプレポリマー240部、及び前記揺変性付与剤分散ペースト(A)890部(ただし、揺変性付与剤分散ペースト(A)からジイソデシルフタレートを除いたポリ尿素化合物の固形分は約170部である。)を室温において順次投入し、さらに、炭酸カルシウム1820部、酸化チタン180部、酸化カルシウム50部、ジイソデシルフタレート440部、トルエンスルホニルイソシアネート30部、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン10部、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランとビュレット型HDIとの付加物20部、硬化触媒(ESC−501:旭電化株式会社製)4部をそれぞれ反応釜に加えた。
次に、真空状態で攪拌・混練し、その後脱抱することにより、ポリウレタン系一液型湿気硬化性組成物を得た。
【0031】
(実施例2)
バッチ式2軸混練ミキサーの反応釜に、ポリプロピレンオキサイドを主鎖骨格とし、末端にイソシアネート基(特にTDIに由来するイソシアネート基)を有するプレポリマー880部、ポリプロピレンオキサイドを主鎖骨格とし、末端にイソシアネート基(特にMDIに由来するイソシアネート基)を有するプレポリマー240部、及び前記揺変性付与剤分散ペースト(A)1435部(ただし、揺変性付与剤分散ペースト(A)からジイソデシルフタレートを除いたポリ尿素化合物の固形分は約170部である。)を室温において順次投入し、さらに、炭酸カルシウム1715部、酸化チタン180部、酸化カルシウム50部、トルエンスルホニルイソシアネート30部、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン10部、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランとビュレット型HDIとの付加物20部、硬化触媒(ESC−501:旭電化株式会社製)4部をそれぞれ反応釜に加えた。
次に、真空状態で攪拌・混練し、その後脱抱することにより、ポリウレタン系一液型湿気硬化性組成物を得た。
【0032】
(比較例1)
バッチ式2軸混練ミキサーの反応釜に、ポリプロピレンオキサイドを主鎖骨格とし、末端にイソシアネート基(特にTDIに由来するイソシアネート基)を有するプレポリマー880部、ポリプロピレンオキサイドを主鎖骨格とし、末端にイソシアネート基(特にMDIに由来するイソシアネート基)を有するプレポリマー240部を室温において順次投入し、さらに、炭酸カルシウム1990部、酸化チタン180部、酸化カルシウム50部、イソデシルフタレート1160部、トルエンスルホニルイソシアネート30部、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン10部、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランとビュレット型HDIとの付加物20部、硬化触媒(ESC−501:旭電化株式会社製)4部をそれぞれ反応釜に加えた。
次に、真空状態で攪拌・混練し、その後脱抱することにより、ポリウレタン系一液型湿気硬化性組成物を得た。
【0033】
得られた実施例1,2、比較例の組成物それぞれについて、以下に示すように「押し出し性」、「貯蔵安定性」、「揺変性(スランプ値)」についての評価試験を行った。得られた結果を表1に記す。なお、各種物性の評価試験方法は以下の通りである。
【0034】
(1)押し出し性
JIS−A−5758−1992「建築用シーリング材」の「4.2 押し出し性」に準拠して測定を行った。
すなわち、作製直後の各試料組成物を高密度ポリエチレン製カートリッジに泡が入らないようにして充填し、充填後速やかにカートリッジをエアーガンに装着した。そして、各試料組成物をノズルをつけないカートリッジの先端から98.0kPaの圧力で押し出し、カートリッジ内の各試料組成物の全量を押し出すのに要した時間を測定した。なお、測定温度は20℃とした。
この評価試験では、押し出し性が良好な組成物ほど、押し出しに要する時間が短くなる。
【0035】
(2)貯蔵安定性
前記「押し出し性」試験に用いるカートリッジ中に各試料組成物を充填密閉し、温度20℃、湿度55%RH〜65%RHの条件のもとで一箇月間放置した。その後、前記「押し出し性」試験と同様の方法にしたがい、カートリッジ内の各試料組成物の全量を押し出すのに要した時間を測定し、貯蔵安定性を評価した。この評価試験では、貯蔵安定性が良好な組成物ほど、押し出しに要する時間が短くなる。
【0036】
(3)揺変性(スランプ試験)
JIS−A−5758−1992「建築用シーリング材」の「4.3 スランプ試験」に準拠して測定を行った。
すなわち、まず、3個のスランプ試験用溝形容器(耐食性金属製、厚さ約1mm)を用意し、それぞれの容器に各試料組成物を泡が入らないようにして速やかに充填し、試料組成物の表面を平滑にならした。続いて、直ちに50℃の恒温器中で各試料組成物を6時間鉛直に懸垂させた。その後、各試料組成物が溝形容器の溝部分の下端から垂れ下がった先端までの距離を測定し(mm)、その測定値をスランプ(縦)値とした。
この評価試験では、スランプ値が小さい試料組成物ほど、良好な揺変性を示す。なお、スランプ値が2mm以上になると、十分に揺変性があるとはいえない場合がある。
【0037】
【表1】
【0038】
表に示したように、本発明のポリウレタン系一液型湿気硬化性組成物(実施例1,2)は、いずれも貯蔵安定性及び揺変性の全てにおいて優れていた。
一方、比較例の組成物では、揺変性付与剤を含んでいないため、揺変性について測定することができなかった。したがって、このような組成物は、縦目地に使用されるシーリング材等のごとく、揺変性が要求される一液型湿気硬化性組成物としては、その使用が難しいことが分かった。
【0039】
実施例1のポリウレタン系一液型湿気硬化性組成物をシーリング材として用い、施工後の経過時間とこれから発生する有機ガスの発生量との関係を調べた。なお、比較のため、従来のウレタン系標準品、シリコーン系低シロキサンタイプ−1、シリコーン系低シロキサンタイプ−2についても同様にして調べた。得られた結果を図1に示す。
【0040】
図1に示したように本発明品は、従来のものに比べ、各材令時における有機ガスの発生量が1/10〜1/100に低減した。
また、本発明品はシリコン系シーリング材ではないため、低シロキサン化合物の発生が全くなく、したがってこれがシリコンウエハや液晶の基板表面に付着するといった不都合を招くことはない。さらに、価格もシリコン系シーリング材の1/2以下と極めて安価である。
【0041】
図2(a)に、実施例1の配合で、DIDP(ジイソデシルフタレート)の代わりにDOP(ジ−2−エチルヘキシルフタレート)を使用した試験体から発生したガス成分を、また図2(b)に、比較例の配合で、DIDPの代わりにDOPを使用した試験体から発生したガス成分を、それぞれGC−MS(ガスクロマトグラフ質量分析装置)で分析した結果を示す。
なお、添加した配合量は同量とした。また、アウトガスのサンプリングについては、試験体をデシケーター中に静置した後、空気流通法によって行い、捕集剤にはシリコンウエハーの粉砕物を使用した。
【0042】
DOPの成分は47付近のピーク(矢印)として認められるものであるが、揺変性付与剤分散ペーストとしてDOPの添加した実施例1(図2(a))の試験体のピークの大きさは、DOPを直接添加した比較例(図2(b))に比べて、約1/2であった。このことから、実施例1のシーリング材はシリコンウエハーに付着するガス成分の発生が少ないことが確認できた。なお、DOPよりも蒸気圧の低い可塑剤、例えばジイソデシルフタレートを使用すれば、ガス発生の低減効果はより顕著になる。
【0043】
【発明の効果】
以上のように本発明のポリウレタン系一液型湿気硬化性組成物は、有機溶剤が配合されないで用いられるようにしたことによって発生するガス状有機物が少なく、またシリコン系シーリング材等に比べ低コストのものとなる。
また、添加剤として前記した一般式で示されるポリ尿素化合物からなる揺変性付与剤を配合すれば、特に貯蔵安定性に優れ、またチキソトロピー性もよいものとなって作業性、取り扱い性等にも優れたものとなる。
さらに、この組成物から施工後に得られる硬化物は、前記表1に示したスランプ値に示したごとく、接合部分等の垂直面に対して流下することなく確実に留まるものとなり、したがって優れた水密・気密効果を発揮し、かつ、部材相互間の伸縮・振動・変形等を確実に吸収緩和するものとなる。
【0044】
したがって、この組成物は、半導体、食品、医薬品、バイオテクノロジー関連の工場や研究所等におけるクリーンルームに使用されるシーリング材、接着剤及び防水材等とした場合に、クリーンルーム内にガス状有機物をほとんど放出せず、また安価であってクリーンルームの建設費等のコスト低減に寄与し、しかもシーリング材等として要求される特性を十分に兼ね備えているなどの理由により、極めて有効なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 各種シーリング材からのアウトガス発生速度の経時変化を示すグラフである。
【図2】 GC−MS(ガスクロマトグラフ質量分析装置)で分析した結果を示すグラフであり、(a)は実施例1の試験体から発生したガス成分の分析結果を示すグラフ、(b)は比較例の試験体から発生したガス成分の分析結果を示すグラフである。
Claims (3)
- 空気中の水分で硬化するクリーンルーム用のポリウレタン系一液型湿気硬化性組成物であって、
硬化後にポリウレタン樹脂となる主成分と、以下の一般式
R1(NHCON−R2,−R3)m
(ただし、式中、R1は、ポリイソシアネート由来のポリイソシアネートの残基であり、R2及びR3は、モノアミン由来の残基で、このうち一つの基は水素であってもよい。mは2〜4の整数を示す。)
で示されるポリ尿素化合物からなる揺変性付与剤とを有してなり、かつ、有機溶剤が配合されないで用いられるものであることを特徴とするポリウレタン系一液型湿気硬化性組成物。 - 前記揺変性付与剤は、可塑剤中に分散させられて形成された揺変性付与剤分散ペーストとして、組成物中に添加されていることを特徴とする請求項1記載のポリウレタン系一液型湿気硬化性組成物。
- 前記可塑剤がジイソデシルフタレートであることを特徴とする請求項2記載のポリウレタン系一液型湿気硬化性組成物。
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---|---|---|---|
JP2001057185A JP4108282B2 (ja) | 2000-04-12 | 2001-03-01 | ポリウレタン系一液型湿気硬化性組成物 |
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