JP4107813B2 - 血圧測定装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は血圧測定装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より知られるデジタル式血圧測定の手法は、オシロメトリックス法と呼ばれる圧脈波振動法によるものが一般的である。これは、カフ(腕帯)に空気を送り込んで動脈を圧迫した後、徐々に減圧を過程で血圧を測定する方法であって、心臓の拍動に同期した血管壁の振動をカフに内蔵されたゴム袋の圧力変動(圧脈波)としてとらえるものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、血圧は周囲の環境や体内の状態によっても変動しているため、数度の断続的な測定よりは位置心拍毎の連続測定ができることが望まれるが、上記した従来のデジタル血圧計ではこの要請に応えることができない。
【0004】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、血圧の連続測定を高精度になしうる測定装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、血管を圧迫するためのカフと、このカフによって圧迫された部分から圧脈波を連続して検出する圧力センサと、被験者の皮膚へ所定波長の光を照射しこの照射光による透過光あるいは反射光の光量を光電容積脈波として検出する発光センサと、基準時において前記圧力センサにより測定された圧脈波と前記カフのカフ圧とに基づいて算出される基準血圧面積と、基準時において前記発光センサにより測定された光電脈波データに基づいて算出される基準脈波面積との面積比をキャリブレーション値として前記発光センサの出力を校正し、前記校正の後、前記発光センサにより光電脈波データを測定し、得られた光電脈波データと前記面積比とに基づいて血圧面積を算出し、この血圧面積に基づいて血圧算出アルゴリズムにしたがって血圧値を算出する制御装置とからなることを特徴とするものである。
【0006】
また請求項2の発明は、請求項1記載のものにおいて、前記発光センサは、近赤外光を照射して血管での反射光量の変化を検出する光電センサと、この光電センサより短い波長の光を照射して皮膚表面での反射光量の変化を検出する体動センサとからなり、前記光電センサ及び前記体動センサにはこれらの出力から不要な周波数成分を除去するフィルター手段が接続され、さらに前記制御装置には前記フィルター手段を通過した後の両センサの出力波形に対し、前記光電センサの出力波形から前記体動センサの出力波形を減じる脈波再生部が設けられていることを特徴とするものである。
【0007】
さらに請求項3の発明は、請求項1または2記載のものにおいて、腕を測定部位とする場合に、胴部に対する腕の傾斜角度を検出する角度センサが設けられるとともに、前記制御装置ではこの角度センサからの出力に基づいて測定値に対する角度補償がなされることを特徴とするものである。
【0008】
さらにまた、請求項4の発明は、前記圧脈波の検出にあたり、圧脈波が出現しないカフ圧にまで高めてから減圧に移行させて圧脈波に関する測定を行うものにおいて、前記圧脈波の出現から消滅までの圧脈波の推移データを蓄積し、この後に、蓄積された推移データに基づいて前記血圧面積を求め、算出された血圧面積から血圧値を算出することを特徴とするものである。
【0009】
【発明の作用及び効果】
請求項1の発明によれば、カフによって血管が圧迫され減圧される過程で、圧力センサからは血管内の圧力変動が圧脈波(絶対値)として検出される。この間に、発光センサから皮膚に対して所定波長の光が照射されると、血中ヘモグロビンはある波長帯の光に強い吸収スペクトルを持っているため、透過光あるいは反射光の光量は血管の容量変動(血流量変動)に伴い変化するヘモグロビン量に応じて変化し、その変化の様子が光電容積脈波(相対値)として検出される。
【0010】
そして、制御装置内では、ある基準時において前記した両センサの出力値をとらえ、その比を算出する。そして、この値をキャリブレーション値として光電容積脈波の検出データが校正され、予め設定された血圧算出アルゴリズムにしたがって絶対値としての血圧値が得られる。
【0011】
このように、請求項1の発明によれば、光電容積脈波を検出し、これを絶対値である圧脈波の変化との比をとることで、これをキャリブレーション値として発光センサの出力値を校正するようにしたため、被験者の体格差等による個別事情に基づく測定誤差を除去して高精度にかつ連続して血圧測定をすることができる。
【0012】
また、請求項2の発明によれば、光電脈波波形から体動による動的成分を除去し、静的分だけを検出することができる。この場合においても、両センサの出力からはそれぞれフィルター手段よって所定周波数帯域のノイズ成分が除去されているため、より一層測定精度を向上させることができる。
【0013】
請求項3の発明によれば、腕を測定部位に選択した場合には、心臓から測定部位までの高さによって測定精度にばらつきを生じてしまうが、角度センサによって角度補償をすることができる。
【0014】
請求項4の発明によれば、カフ圧を高めて血管内圧より高くしてやれば、血管は圧閉されるため、圧脈波は消失する。この時点から常に測定を開始するようにすれば、測定のばらつきを解消することができる。また、測定中にカフ圧が変動しても、圧脈波出現から消滅までの推移データを蓄積し、これらの累積データを例えば平均化することによって血圧値を求めるようにしたため、カフ圧変動が生じても誤差を極力小さくして測定することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0016】
本発明の第1実施形態を図1ないし図6によって説明する。図1において、1は例えば手首に装着可能なカフであり(上腕部に装着してもよい)、内部にゴム袋が内蔵されている。このゴム袋にはチューブが接続されていてエアー供給用のポンプ2と接続されている。また、チューブの途中には開閉弁3が介在されていて、その開閉動作によってカフ1内のゴム袋に対するエアーの供給と排気を行うことができるようにしてある。さらに、カフ1内にはゴム袋内の空気圧変動を検出するための圧力センサ4が組み込まれ、制御装置5と接続されている。
【0017】
また、カフ1に並んで装着される部分として、発光センサ6が設けられている(発光センサ6はカフ1内に組込んでもよく、また別途に設けても良い。)。発光センサ6は、この実施形態では光電センサ7とこれに近接して配される体動センサ8とからなっている。このうち、光電センサ7としては、この実施形態においては、近赤外光波長(例えば640nm)をもった光を皮膚へ向けて照射可能な発光赤色LEDとその反射光を受光するフォトトランジスタ(受光器)とからなっている。赤外光は皮膚深部にある撓骨動脈に至ることができ、フォトトランジスタの出力は血管の容量変動に伴う吸光度の変化が血流量の相対変化として検出される。
【0018】
また、体動センサ8としては、この実施形態においては、青外光波長(例えば420nm)をもった光を皮膚へ向けて照射可能な発光青色LEDとその反射光を受光するフォトトランジスタ(受光器)とからなっている。青外光は皮膚表面で反射し、フォトトランジスタの出力は被験者の測定中の微少な動き(体動)として検出される。
【0019】
図2は本実施形態における測定装置の電気的構成を示すブロック図であり、上記したカフ1内の圧力センサ4は増幅器11を介してローパスフィルタ9、ハイパスフィルタ10に接続され、それぞれ所定周波数成分がカットされた状態でマルチプレクサ12を介してCPU13へ入力されるようになっている。また、光電センサ7も増幅器14を介してローパスフィルタ15及びハイパスフィルタ16に接続され、さらに後述する脈波再生回路17と接続されている。なお、光電センサ7に接続されたローパスフィルタ15では体動等を含む低周波成分を除去するためにこの実施形態では30HZ以下の成分をカットし、また、同じくハイパスフィルタ16では所定の高周波成分(150HZ以上)をカットすることができるような設定となっている。さらに、体動センサ8は増幅器18を介してアクティブフィルタ19(バンドパスフィルタ)に接続され、所定周波数帯域以外の成分をカットして脈波再生回路17及びマルチプレクサ12へと入力されるようになっている。
【0020】
脈波再生回路17は、それぞれフィルタを通した後の光電センサ7の出力波形から体動センサ8の出力波形を減じることで、光電センサ7の出力から体動成分を取り除いた波形を生成させる役割を果たすものである。
【0021】
CPU13の内部でなされる処理は図3に示すフローチャートにしたがってなされる。まず、測定に際して装置のキャリブレーションのための処理手順がなされる。すなわち、カフ圧と圧脈波の入力があると、これに基づいて所定の時期(基準時)において基準となる最高・最低の両血圧値及び脈拍数の各絶対値が測定される。なお、最高・最低の血圧値はオシロメトリックス法によって決定される。
【0022】
次に、こうして基準となる血圧値を得た時点における血圧面積(基準血圧面積Ax)の算出がなされる。基準血圧面積は、図5に示すように、時間を横軸に、血圧を縦軸にとって、一心拍の時間TX内における最高・最低の両血圧値によって定まる平面図形の面積によって決定される。具体的には、図5に示すように、基準血圧面積全体Axは、横の辺が一心拍時間、縦の辺が最低血圧によって形成される長方形の領域(下部領域Axp2)と、底辺が一心拍時間、高さが最高血圧値と最低血圧値の差となって表される三角形の領域(上部領域Axp1)との和から求められる。
【0023】
一方、光電センサ7の出力に対しては後述するような体動の処理がなされた後に、CPU13からD/A変換器を介して出力される光電容積脈波の相対変化に基づき脈拍面積が求められる。具体的には、図6に示すような一心拍時間(TX)内の血流量変化の積分値として基準脈波面積(Vs)が求められる。次に基準脈波面積(Vs)と基準血圧面積(Ax)との面積比(Ax/Vs)を算出する。こうして得られた面積比(Ax/Vs)がキャリブレーション値となる。そして、このキャリブレーション値に基づき、発光センサ6に対しては自動的に光量調整がなされるとともに、その出力に対しても自動ゲイン調整がなされる。これによって、発光センサ6の出力が自動的にレベル調整がなされる。
【0024】
上記のようなゲイン調整等を行ったもとで、血圧の測定がなされる。この場合においても、光電脈波以外の体動等のノイズ成分を除去するための処理が施される。すなわち、前述したように、光電センサ7の出力に対してローパス・ハイパスの両フィルタによって所定周波数域の周波成分が除去され、同時に体動センサ8の出力に対してもアクティブフィルタによって高周波ノイズ等の成分が除去され、その上で脈波再生回路17によってフィルタ処理がなされた光電脈波の波形から体動波形が減じられた状態での脈波の再生がなされる。
【0025】
そして、連続的に得られる光電脈波データから得られる一心拍毎の脈拍面積に前記した面積比が乗じられ、血圧面積が算出される。かくして、得られた血圧面積に基づき、公知の血圧算出アルゴリズムにしたがって一心拍毎の最高・最低血圧値が連続的に求められる。
【0026】
次に、上記のように構成された本実施形態の作用効果を具体的に説明すると、カフ1を被験者の手首部分に装着し、続いてポンプ2を駆動させてカフ1のゴム袋へエアーを供給する。圧脈波が検出されなくなるまでカフ1へのエアー供給が継続される。圧脈波が出現しなくなった時点で、カフ1へのエアー供給を停止し、開閉弁を開いて減圧を開始する。これによって、CPU13内では既述したオシロメトリックス法にしたがって、最高・最低の両血圧値と脈拍の測定がなされる。
この場合において、血圧値の決定にあたり、圧脈波の出現から消滅までの推移を累積し、これを例えば平均化処理をして最高・最低の両血圧値を求めるようにするようにしてもよく、そのようにすれば測定中のカフ圧変動を吸収して測定精度を高めることができる。
【0027】
なお、圧脈波が出現しなくなるまでカフ圧を常に昇圧するようにしている理由は、常に血流を完全に遮断した状態から測定を開始するような統一的な扱いをしないと、血管の圧迫状況がばらつくと正確な測定を行い得ないからである。
【0028】
その一方で、光電センサ7及び体動センサ8からそれぞれ波長の異なる光がそれぞれ皮膚に向けて照射される。光電センサ7からは近赤外光が皮膚深部に至り、撓骨動脈の反射光が受光器であるフォトトランジスタにて受光される。体動センサ8からは青外光が皮膚表面に照射され、その反射光が受光器であるフォトトランジスタにて受光される。そして、これらはそれぞれ上記したフィルター処理がなされた後、一心拍内の脈拍面積が求められ、同様の血圧面積との比に基づいて自動ゲイン調整及び発光センサ6に対する自動光量調整といったキャリブレーション処理がなされ、その結果、発光センサ6の出力レベルが調整される。
【0029】
かくして、キャリブレーションの後段階が実際の測定段階となる。光電センサ7の出力データは、ローパス・ハイパスの両フィルターを通してこれらによるノイズ除去処理、さらには体動センサ8からの出力を減じる処理をそれぞれ経ることで、純粋な脈波成分のみが連続して取り出される。
【0030】
一心拍毎の最高・最低の血圧値の算出は、体動処理がなされた後の光電センサ7の出力波形に基づいて次のようにして求められる。すなわち、圧力センサ4によって得られた圧脈波の変化と光電脈波はほぼ対応する関係にある。例えば基準時において得られた血圧面積図(図5参照)及び最高・最低血圧値と、その時点でのキャリブレーションされた後の補正脈拍面積とを対応させることができ、このことから、任意の時刻での補正脈拍面積が算出されれば、これと対応する血圧面積図を得て最高・最低血圧を求めることができる。具体的には、次のような要領で求められる。
【0031】
基準時に得られた血圧面積=Akとし、測定時刻Xにおいて得られた補正脈拍面積図と対応する血圧面積図の血圧面積=Axとする。
測定時間 X時の時
最大血圧:Pxs、最小血圧:Pxd、上部面積:Axp1、下部面積:Axp2、心拍時間:Txとすると
Axp1=Pxs−Pxd/2×Tx (1)
Axp2=Pxd×Tx (2)
Ax=Axp1+Axp2 (3)
基準値測定時の
最大血圧:Pks、最小血圧:Pkd、上部面積:Akp1、下部面積:Akp2、心拍時間:Tkとすると
Akp1=Pks−Pkd/2×Tk (4)
Akp2=Pkd×Tk (5)
Ak=Akp1+Akp2 (6)
ここで
Akp1:Akp2=Ka (7)
Axp1:Axp2=Ka (8)
とする。
(3)式より
Axp2=Ax−Axp1 (9)
(9)式、(8)より
Axp1=Ka/(1+Ka)×Ax (10)
(6)式を(8)式に代入し
Axp2=1/(1+Ka)×Ax (11)
(2)式より
Pxd=Axp2/Tx (12)
(11)式を(12)式に代入し
Pxd=(1/1+Ka)×Ax/Tx (13)
(10)式を(1)式に代入し
Pxs=((2Ka/1+Ka×Ax)/Tx)+Pxd (14)
(13)式を(14)式に代入し
Pxs=(2Ka+1)×Ax/(1+Ka)×Tx (15)
(13)、(15)式によりPxd、Pxsが算出できる。
【0032】
以上のように、本実施形態によれば、光電センサ7からの出力データに基づいて一心拍毎の血圧を連続して測定することができる。また、体動等の不要成分を確実に除去することができるため、高精度に血圧測定を行うことができる。さらに、測定にあたり、血圧面積と脈拍面積との比をとってキャリブレーションをするようにしているため、被験者が異なってもばらつきのない測定が可能となっている。
【0033】
なお、本実施形態は次のような変更を加えることもできる。すなわち、本実施形態のように測定部位が手首である場合には、測定時における腕の角度によって心臓からの高さが異なるため、測定誤差が生じる虞がある。そのような場合の対策として、角度センサを取り付けてCPU13内での処理に角度補償を行うようにすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態における血圧測定方法を実現するための装置の概要図
【図2】同じくブロック図
【図3】オシロメトリックス法によって得られた基準血圧値と基準血圧面積との関係図
【図4】カフ圧と圧脈波とを示す波形図
【図5】血圧面積図
【図6】脈波面積図
【符号の説明】
1…カフ
4…圧力センサ
6…発光センサ
7…光電センサ
8…体動センサ
Claims (4)
- 血管を圧迫するためのカフと、
このカフによって圧迫された部分から圧脈波を連続して検出する圧力センサと、
被験者の皮膚へ所定波長の光を照射しこの照射光による透過光あるいは反射光の光量を光電容積脈波として検出する発光センサと、
基準時において前記圧力センサにより測定された圧脈波と前記カフのカフ圧とに基づいて算出される基準血圧面積と、基準時において前記発光センサにより測定された光電脈波データに基づいて算出される基準脈波面積との面積比をキャリブレーション値として前記発光センサの出力を校正し、前記校正の後、前記発光センサにより光電脈波データを測定し、得られた光電脈波データと前記面積比とに基づいて血圧面積を算出し、この血圧面積に基づいて血圧算出アルゴリズムにしたがって血圧値を算出する制御装置とからなることを特徴とする血圧測定装置。 - 前記発光センサは、近赤外光を照射して血管での反射光量の変化を検出する光電センサと、この光電センサより短い波長の光を照射して皮膚表面での反射光量の変化を検出する体動センサとからなり、
前記光電センサ及び前記体動センサにはこれらの出力から不要な周波数成分を除去するフィルター手段が接続され、さらに前記制御装置には前記フィルター手段を通過した後の両センサの出力波形に対し、前記光電センサの出力波形から前記体動センサの出力波形を減じる脈波再生部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の血圧測定装置。 - 腕を測定部位とする場合に、胴部に対する腕の傾斜角度を検出する角度センサが設けられるとともに、前記制御装置ではこの角度センサからの出力に基づいて測定値に対する角度補償がなされることを特徴とする請求項1または2記載の血圧測定装置。
- 前記圧脈波の検出にあたり、圧脈波が出現しないカフ圧にまで高めてから減圧に移行させて圧脈波に関する測定を行うものにおいて、
前記圧脈波の出現から消滅までの圧脈波の推移データを蓄積し、この後に、蓄積された推移データに基づいて前記血圧面積を求め、算出された血圧面積から血圧値を算出することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の血圧測定装置。
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