JP4106440B2 - 不凍タンパク質を用いた包接化合物の生成制御法 - Google Patents

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本発明は、石油や天然ガスを輸送する際に輸送管中に生成し、閉塞事故を起こす原因となる包接化合物の生成を制御するため、水溶液中にタイプIIIの球状不凍タンパク質を溶解させることにより、生成過程を抑制する方法に関する。
包接化合物は、天然ガスなどの疎水性気体やフルオロカーボン、テトラヒドロフランのような溶剤等の分子(ゲスト分子と呼ぶ)と水(ホスト分子とも呼ばれる)とが低温高圧条件下で反応し、水(あるいは氷)への溶解度をはるかに超える高濃度にゲスト分子を包蔵した固体のことを言う。この物質は18世紀末に発見されているが、1950年代に高緯度地域の石油化学プラントにて輸送パイプが閉塞する事故が生じ、この原因物質として大きく注目された。その後こうした事故を防ぐため、生成を阻害する技術を中心に研究が進められてきた(例えば非特許文献1を参照)。
包接化合物は、主として2種類の結晶構造をとる。ひとつはメタンガスや炭酸ガス等と反応して生成するI型結晶(立方晶、単位胞長約1.2nm)で、もうひとつはテトラヒドロフランやプロパンガス等と反応して生成するII型結晶(立方晶、単位胞長約1.7nm)である。いずれも水分子の作る格子からなるが、氷の結晶(六方晶、単位胞長a=0.45nm、c=0.74nm)とは異なる構造であり、水分子間距離もそれぞれ異なる。
化石燃料が次第に極地域、大水深地域に展開していく現在、包接化合物の生成抑制技術は古くて新しい技術として現在も研究対象となっている(例えば非特許文献2参照)。また海底の堆積物中や極域の永久凍土層中には、こうした化石燃料に付随するものばかりではない天然ガスが包接化合物の形で腑存していることが知られており、近年これらを天然ガス資源として開発するための開発研究が開始されている(例えば非特許文献3を参照)。さらに包接化合物の持つ高密度ゲスト分子包蔵性や生成・分解反応時のゲスト分子選択性等のユニークな特性を利用し、工業的に利用する技術についても検討が行われ始めている。例えば包接化合物を利用した混合ガスの分離技術としては、「ガスハイドレートを利用した混合ガスの分離および海水の淡水化方法」(特許文献1)や「同位体分離方法」(特許文献2)「希ガスの分離方法」(特許文献3)などが報告されており、従来から行われている混合ガス中の各成分の沸点差を利用した低温分離法、膜分離法、振動吸着分離法などの手法に比べて低エネルギー性、小設備性、低環境負荷性など優れた点を持つことが知られている。
これらの技術開発において、包接化合物の生成・分解挙動を制御することは、きわめて重要である。特に前述したように、包接化合物の生成を抑制する技術についてはその応用範囲が広い。また包接化合物中の成長速度と、形成された包接化合物中のゲスト分子濃度との間には相関があり、必要な量のゲスト分子濃度をもつ包接化合物を得るためには、生成速度を制御する必要がある。
包接化合物の生成を抑制する技術としては、主として次のような2つの添加剤を用いる方法が主流である。ひとつは、包接化合物の平衡条件を抑制側にシフトさせる添加物(例えば海水やアルコールなど)を利用する方法であり、他のひとつは平衡条件はほとんど変化させないが生成した結晶を抑制する添加物(PVPなどの化学薬品)を利用する方法である。いずれの方法も実際の生産において利用されてはいるが、前者の添加物は包接化合物の成長を抑制するわけではないので、系がシフトした平衡条件になってしまうと包接化合物の生成を抑制することができない。また後者の添加物は現在も開発が進められているが、環境への影響評価などが十分に行われておらず、経済的な問題も多い。
Uchida et al. (1999)(非特許文献4)は炭酸ガス包接化合物の生成実験を行い、純水−炭酸ガス界面で生成される膜状包接化合物の成長速度を調べた。その結果、炭酸ガス包接化合物の成長速度は、その圧力下で生成を開始する時の温度の平衡温度からのずれ(過冷却度DT)の関数であらわされることがわかった。さらにUchida et al. (2002) (非特許文献5)は、同様の実験をNaClを含む水溶液で行い、NaCl水溶液−炭酸ガス界面で生成する包接化合物は、純水系よりも成長速度が遅いこと、またNaCl濃度が高いほど成長速度抑制効果が大きいことを見出した。
包接化合物と同様の水素化合物系結晶である氷の生成抑制技術として、近年天然に産出する不凍タンパク質の利用技術開発が活発になっている。この不凍タンパク質は氷の結晶面上に選択的に付着し、その結晶成長を抑制する働きを持つといわれている。しかしながらその機能は氷の結晶構造に限定されて評価されている。
最近Zengら(非特許文献6)は、タイプIに分類されるらせん状不凍タンパク質がテトロヒドロフランやプロパンガスなどのII型包接化合物の生成を抑制する可能性を指摘した。しかしながら効果がII型結晶構造に対してのみ示されており、天然ガスの主成分であるメタンガスや炭酸ガスと反応して生成するI型包接化合物結晶への有効性についての報告はない。
特開平11-319805 特開2000-33236 特開2000-107549 Sloan, E.D.Jr., Clathrate Hydrates of Natural Gases 2ndEd. Revised and Expanded, Marcel Dekker Inc., 1998 Carroll, J.J., Natural Gas Hydrates: A Guide for Engineers, Butterwort-Heinemann, 2002 Paull, C.K and Dilloin, W.P. Eds., Natural Gas Hydrates: Occurrence, Distribution, and Detection Uchida et al. J. Crystal Growth, 204, p. 348, 1999 Uchida et al. J. Crystal Growth, 237-239, p. 383, 2002 Zeng et al Can. J. Phys., 81, p.17, 2003 Sicheri et al. Nature, 375, p. 427, 1995 Gronwald et al. Biochemistry, 37, p. 4712, 1998 Jia et al. Nature, 384, p. 285, 1996 Deng et al. Biochim. Biophys. Acta, 1388, p.305, 1998
この発明は、石油や天然ガスを輸送する際に輸送管中に生成し、あるいは工業的に生成された包接化合物スラリーの輸送管中で成長を続け、閉塞事故を起こす原因となる包接化合物の生成過程を制御するため、天然に産出し環境調和性の高いタイプIIIの球状不凍タンパク質を水溶液中に微量に溶解させることにより、生成過程を抑制する方法を提供することである。
本発明者は包接化合物の生成に用いる水溶液やゲスト分子と、形成された包接化合物の生成過程について鋭意研究を重ねた結果、氷の生成制御に効果があることが報告された不凍タンパク質水溶液から包接化合物を形成させる際、包接化合物相の生成安定条件に達してから結晶が発生するまでの時間(生成誘導期間)が純水を用いたときより長くなること、また結晶が発生してから成長する速度が純水を用いたときより遅くなることを見出し、水溶液中のタイプIIIの球状不凍タンパク質の濃度に変化させても同様の成果が得られるという知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、水とガス体および/または溶剤等の液体とから包接化合物が形成されるに際し、タイプIIIの球状不凍タンパク質を添加することにより該包接化合物の形成を抑制する包接化合物の形成抑制方法である。
さらに、本発明は、ガス体および/または溶剤等の液体を輸送・貯蔵する際に、タイプIIIの球状不凍タンパク質を添加し包接化合物の形成を抑制することを特徴とするガス体および/または液体の輸送・貯蔵方法である。
さらに、本発明は、ガス体および/または溶剤等の液体を輸送管により輸送する方法において、タイプIIIの球状不凍タンパク質を添加し包接化合物の形成を抑制することにより輸送管の閉塞を防止する方法である。
上記それぞれの方法において、ガス体としては、メタンやプロパンなどの炭化水素ガス、炭酸ガスや硫化水素などの酸性ガス、及びネオンやクリプトンなどの希ガスが挙げられ、液体としては、HFC-32やHFC-134aなどのフルオロカーボン、テトラヒドロフランやアセトンなどの有機溶剤、または上記ガス体との共存下で包接化合物を生成するメチルシクロヘキサンやイソペンタンなどの有機溶剤や液体炭化水素が挙げられる。
また、使用するタイプIIIの球状不凍タンパク質は水溶液中での濃度が0.01 mg/mlで有効であり、上限の濃度については特に限定はない。
本発明により、水とガス体および/または溶剤等の液体から包接化合物が形成されるに際し、これらにタイプIIIの球状不凍タンパク質を添加することにより該包接化合物の形成を抑制することができた。そして、この方法をガス体および/または溶剤等の液体を輸送管により輸送する方法において適用することにより包接化合物の形成による輸送管等の閉塞を防止することができた。
本発明の方法は、包接化合物を生成し得るゲスト分子相(気相または液相)と水とを反応させる際に、包接化合物を形成し得る条件下においても生成反応が起こらない時間(生成誘導期間)を長くすることで包接化合物の生成を抑制する技術、及び生成反応が起きた後包接化合物が成長する速度を低下させることで包接化合物の生成を抑制する技術とからなっている。ここでいう不凍タンパク質とは、不凍能力を有するタンパク質のことである。不凍タンパク質はそのアミノ酸配列および分子形状によってタイプIからIVの4種類に分類される(図1参照)。図1において、(a)はタイプIの構造(一本のアルファヘリックス構造)を、(b)はタイプIIの構造(ジスルフィド結合を5つ有する、C-typeレクチンに類似した構造)を、(c)はタイプIIIの構造(ベータシート構造に富んだ球状構造)をそれぞれ示す。
タイプIは分子量3300〜4500で、アミノ酸配列にはアラニンを多く含むという特徴をもつ。代表的なアミノ酸配列としてはカレイの一種winter flounder由来の配列が挙げられる(非特許文献7)。分子形状は図1(a)に示すように、1本のアルファへリックス構造をとる。タイプIIは分子量11000〜24000で、アミノ酸配列にはシステインを多く含むという特徴をもつ。代表的なアミノ酸配列としてはカジカの一種sea raven由来の配列が挙げられる(非特許文献8)。分子形状は図1(b)に示すように、ジスルフィド結合を5つ有し、C-typeレクチンに類似した構造をとる。タイプIIIは分子量6500〜14000で、アミノ酸配列の特徴は特に無い。代表的なアミノ酸配列としてはゲンゲの一種ocean pout由来配列が挙げられる(非特許文献9)。分子形状は図1(c)に示すように、ベータシート構造に富んだ球状構造をとる。タイプIVは分子量10000で、アミノ酸配列にはグルタミンを多く含むという特徴をもつ。代表的なアミノ酸配列としてはカジカの一種longhorn sculpin由来の配列が挙げられる(非特許文献10)。分子形状の特徴は4本のアルファへリックスバンドル構造と予測されているが、まだ構造解析されておらず、タイプI〜IIIに示すような明確な分子形状はまだ決定されていない。本発明で用いている不凍タンパク質は、タイプIIIに分類される球状タンパク質である。実施例で使用したタイプIIIの不凍タンパク質は、配列表の配列番号1で表されるアミノ酸配列を有する。ただし本発明でもたらされる効果は、当該アミノ酸配列に限定されるものではなく、広くタイプIIIの不凍タンパク質に当てはまるものである。また本発明においては凍結といっても氷化ではなく、包接化合物の生成を意味し、通常、不凍タンパク質(Antifreeze Protein, AFPと略記する)という名称を用いる。なお、本明細書においては、不凍タンパク質はタイプIIIの球状不凍タンパク質であることから文脈に応じてAFP(III)と略記する。
本発明において用いられる包接化合物を生成することのできるゲスト分子としては、メタンガスのほか、エタンガス、プロパンガスなどの天然ガスの主成分である炭化水素気体や炭酸ガス、窒素ガス、酸素ガス、硫化水素等の小さな分子、キセノンガス、アルゴンガス、クリプトンガスなどの希ガスが挙げられる。またフルオロカーボンやアンモニウム塩水溶液などのゲスト分子は、上記のゲスト分子と異なり常圧条件で包接化合物を生成することができる。ここでは炭酸ガスを用いて実施したが、本発明に用いた手法は、上記に示したようなゲスト分子に対しても一般的に成立する。
本発明において用いられる水は、通常脱イオン・脱気した蒸留水を用いるが、塩や塩基等の不純物が多少含まれていても一般的に成立する。ただし、含まれる不純物の種類や濃度により、包接化合物の生成平衡条件がシフトする場合もあるため、得られる気体や包接化合物中の成分比が異なってくることもある。
反応させる条件は、用いるゲスト分子と純水との反応から予想される平衡条件より低温・高圧条件である。例えば炭酸ガスを用いた場合、純水と反応して生成される包接化合物の平衡圧力は、273.2Kにおいて約1.2MPaである。従ってこのガスを用いる実験では1.2MPa以上の範囲で行われる。温度範囲は圧力条件によって任意であるが、不凍タンパク質が氷中にほとんど溶存しないため水溶液との反応条件のもとで行う方が好ましく、273.2K以上で行う。
図2は本発明で使用した包接化合物生成観測装置である。この装置は炭酸ガス−純水(または塩水)系での包接化合物生成速度測定に用いられており(非特許文献5)不凍タンパク水溶液の効果を定量的に比較するために適している。一定量の水試料を高圧容器HV中に入れ全体を恒温槽TB中に入れて所定温度にする。その後HV中の空気を排気しボンベBよりゲスト分子試料をHV中へ導入し、所定圧力にする。そして恒温槽の設定を下げて包接化合物生成条件へ持っていく。温度・圧力が包接化合物生成条件になった時刻をゼロとし、温度・圧力を熱電対TC、圧力計PGで計測し、記録計Rにて記録する。
包接化合物の生成の確認は、観測窓Wからの目視観測、および生成熱放出に伴う系の温度上昇によって行う。また包接化合物の成長速度は、観測窓から系内の様子を顕微鏡MSで観測し、その変化をビデオカメラVTRで録画して得られた画像を解析することで測定した。
なお生成速度の測定実験の後、系内の温度を上昇させて包接化合物を分解させ、その分解温度を測定することによって不凍タンパク質水溶液による平衡条件の変化を確認した。
従来AFPは氷の結晶構造に特有の大きさを持っており、そのため成長結晶面に選択的に配意して成長を抑制するというメカニズムが提案されていた。しかしながら本発明で適応した包接化合物は、氷の一種である水素結合系の結晶ではあるが、その結晶構造は氷と異なり、同じ機能を期待することができなかった。しかしながら本発明で示されたように、0.01 mg/ml(10-3 wt%)という微量な添加により大きな成長阻害効果が得られた。AFP自体は天然に産出される物質であるため、化学薬品で合成された形成抑制剤とは異なり環境調和性が高い。またNaClのように反応容器や輸送管等を腐食する恐れも少ないという利点を持っている。
平衡条件を変えずに核生成を抑制するという特徴を持つことから、結晶成長の駆動力を低く抑えることによって包接化合物の成長は著しく抑制されることとなる。また成長速度が抑制されるという特徴から、ゲスト分子−水界面で生成される膜状包接化合物の成長速度を抑制することになり、気・液接触型での反応装置系においても、生成速度の低下が観測されることが期待される。
以上のことから、本発明の以下の実施例で示した系のほか、同じ結晶構造を持つメタン包接化合物、異なる結晶構造を持つプロパン包接化合物や多くのフルオロカーボン包接化合物、準包接化合物と呼ばれるアンモニア塩を用いた包接化合物などの生成抑制剤として利用することが可能であることが示された。従ってこれらの包接化合物を利用する技術に関して、本発明による生成制御法を適応することが可能である。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
脱イオン・脱気処理した蒸留水試料に配列番号1で示されるAFP(III)を所定の濃度で溶かした水溶液一滴(約0.5 cm3)を、図2に示す高圧反応容器HV(内容積約10 cm3)中に封入し、恒温槽TB中に入れる。その際、HV中に残存していた空気はバルブV2を開けて真空ポンプVPにて脱気する。脱気後バルブV2は閉じる。
その後バルブV1を開けてボンベBより炭酸ガス試料をHV中へ導入し、所定圧力まで昇圧させた後、バルブV1を閉じる。そして温度圧力が所定条件になったことを確認した後、恒温槽TBの設定を下げて温度を所定温度にする。設定圧力における包接化合物生成温度に達した後、界面上に包接化合物が生成するのを観測する。
図3はAFP(III)を0.01mg/ml溶かした水溶液を用いたときの、炭酸ガス包接化合物生成までの温度Tの時間t変化を示す。恒温槽温度は263.2Kに設定し、系内圧力は約5 MPaとした。このときの平衡温度は、分解実験の結果純水−炭酸ガス系で求められる包接化合物の平衡温度である約283.2Kと同じであった。
繰返し実験を行った結果、包接化合物は温度低下中には生成せず、ほとんどの場合設定温度(264.2 K)に達してからしばらく期間をおいて生成した。従って生成に必要な過冷却度DTは、約18Kとなった。また生成にかかる誘導期間は30〜120分と見積もられた。純水を用いたときの炭酸ガス包接水和物の生成条件は、同じ設定において過冷却度は10K以下であり、生成誘導期間は20分未満である(非特許文献4)。すなわちAFP添加により、炭酸ガス包接化合物の生成が著しく阻害されたことが示された。
Zengら(2003)(非特許文献6)の行ったタイプIに分類されるらせん状不凍タンパク質を用いた実験では、273.2Kに温度を保持した時に、24時間以内に核生成が起こる確率を持ってその性能を評価していた。従って本実施例と直接比較することは難しいが、不凍能力に濃度依存性があることと、本実施例で用いたAFP濃度がZengらの論文に記載された濃度より10倍以上希薄であることから、本発明で用いた不凍タンパク質の不凍能力のほうが勝っていると考えられる。
図4は同じ実験系における、炭酸ガス包接化合物の成長速度を示す。横軸には過冷却度DTをとり、縦軸にはビデオ画像から求めた膜状包接化合物の成長速度vfをとった。図中点線は純水−炭酸ガス系における成長速度を示し(非特許文献4)、実線は濃度10wt%のNaCl水溶液−炭酸ガス系における成長速度の過冷却度依存性を示している(非特許文献5)これらの結果と比較すると、濃度0.01 mg/mlのAFP(III)水溶液−炭酸ガス系における成長速度は、海水の3倍以上の濃度のNaCl水溶液と同等の成長抑制効果を持つことが示唆された。AFPの濃度を重量パーセントで表すと10-3 wt%のオーダーとなるため、本発明で用いたAFPの包接化合物生成抑制効果はNaClの104倍であるといえる。
Zengら(2003)(非特許文献6)の行ったタイプIに分類されるらせん状不凍タンパク質を用いた実験では、プロパンガスの消費率からその性能を評価していた。従って本実施例と直接比較することは難しいが、生成速度抑制能力に極端な優位性が無いことと、本実施例で用いたAFP(III)濃度がZengらの論文(非特許文献6)に記載された濃度より100倍以上希薄であることから、本発明で用いたAFP(III)の生成速度抑制能力のほうが勝っていると考えられる。
実施例1と同様にして、AFP(III)の濃度を0.1 mg/ml〜1 mg/mlにした水溶液と炭酸ガスとを試料として用いた実験を行い、同様な条件下で炭酸ガス包接化合物の生成誘導期間が純水−炭酸ガス系に比べて長くなり、成長速度もAFP(III)濃度0.01 mg/mlの場合とほぼ同じくらいに抑制された。従って、AFP(III)の濃度による効果の変化は、濃度の違いほど大きくはなかった。
不凍タンパク質の各タイプの分子形状。 実施例で使用した生成観測装置構造の概略を示す図。 0.01 mg/mlのAFPを含む水溶液と炭酸ガス(圧力約5 MPa)とを試料として用いて包接化合物生成実験を9回行ったときの、反応容器内温度Tの時間t変化を示す図。なお、包接化合物の生成が確認された時刻を矢印で示した。 0.01 mg/mlのAFPを含む水溶液と炭酸ガス(圧力約5 MPa)とを試料として用いて包接化合物生成実験を行ったときの、包接化合物成長速度vfの過冷却度DT依存性を示す図。
符号の説明
B:ガス用の高圧ボンベ
V1,V2:弁
HV:高圧反応容器
TB:恒温槽
SM:水溶液(試料)
PG:圧力計
TC:温度計
R:記録計
VP:真空ポンプ
W:観測窓
MS:顕微鏡
VHS:ビデオカメラ

Claims (9)

  1. 水とガス体および/または溶剤等の液体とから包接化合物が形成されるに際し、タイプIIIの球状不凍タンパク質を添加することにより該包接化合物の形成を抑制する包接化合物の形成抑制方法。
  2. ガス体がメタンやプロパンなどの炭化水素ガス、炭酸ガスや硫化水素などの酸性ガス、及びネオンやクリプトンなどの希ガスである請求項1記載の形成抑制方法。
  3. 液体がHFC-32やHFC-134aなどのフルオロカーボン、テトラヒドロフランやアセトンなどの有機溶剤、または請求項2記載のガス体との共存下で包接化合物を形成するメチルシクロヘキサンやイソペンタンなどの有機溶剤や液体炭化水素である請求項1記載の形成抑制方法。
  4. ガス体および/または溶剤等の液体を輸送・貯蔵する際に、タイプIIIの球状不凍タンパク質を添加し包接化合物の形成を抑制することを特徴とするガス体および/または液体の輸送・貯蔵方法。
  5. ガス体がメタンやプロパンなどの炭化水素ガス、炭酸ガスや硫化水素などの酸性ガス、及びネオンやクリプトンなどの希ガス等である請求項4記載のガス体および/または液体の輸送・貯蔵方法。
  6. 液体がHFC-32やHFC-134aなどのフルオロカーボン、テトラヒドロフランやアセトンなどの有機溶剤、または請求項5記載のガス体との共存下で包接化合物を生成するメチルシクロヘキサンやイソペンタンなどの有機溶剤や液体炭化水素である請求項4記載のガス体および/または液体の輸送・貯蔵方法。
  7. ガス体および/または溶剤等の液体を輸送管により輸送する方法において、タイプIIIの球状不凍タンパク質を添加し包接化合物の形成を抑制することにより輸送管の閉塞を防止する方法。
  8. ガス体がメタンやプロパンなどの炭化水素ガス、炭酸ガスや硫化水素などの酸性ガス、及びネオンやクリプトンなどの希ガスである請求項7記載の輸送管の閉塞を防止する方法。
  9. 液体がHFC-32やHFC-134aなどのフルオロカーボン、テトラヒドロフランやアセトンなどの有機溶剤、または請求項5記載のガス体との共存下で包接化合物を生成するメチルシクロヘキサンやイソペンタンなどの有機溶剤や液体炭化水素である請求項7記載の輸送管の閉塞を防止する方法。
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