JP4105444B2 - エレクトレット濾過材及びこれを用いたエアフィルタ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はエレクトレット濾過材及びこれを用いたエアフィルタに関する。より具体的には、空気清浄機、マスクなどに使用することのできるエレクトレット濾過材及びこれを用いたエアフィルタに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、気体中の塵埃等を除去するために、不織布からなる濾過材が使用されている。この不織布濾過材は主として物理的作用によるブラウン拡散、遮り、慣性衝突などによって塵埃等を除去するものであるため、不織布濾過材を構成する繊維の直径を小さくすれば、より小さな塵埃等を捕捉し除去できるため、濾過効率を高めることができる。しかしながら、不織布濾過材を構成する繊維の直径を小さくすればするほど、圧力損失が大きくなり、不織布濾過材の寿命が短くなるという問題があった。
【0003】
この問題点を解決する方法として、不織布濾過材をエレクトレット化し、物理的作用に加えて静電気的作用を利用することにより、濾過効率と圧力損失の両立を図るという試みがなされている。この方法によれば、ある程度濾過効率と圧力損失の両立を図ることができるが、電荷量が不十分であるため、不織布濾過材を構成する繊維に対して、様々な添加剤を添加して、更に電荷量を多くすることが行われている。
【0004】
例えば、特開平1−287914号公報には「特定分子量分布のポリプロピレンに対してヒンダードアミン系安定剤を配合した、トラップ電荷量が7.5×10-10クーロン/cm2以上であるエレクトレット材料」が開示されており、特表平11−510862号公報には「非導電性熱可塑性樹脂と、(a)少なくとも1個の完全フッ素化部分を有する熱安定性有機化合物もしくはオリゴマー、または(b)熱安定性有機トリアジン化合物またはオリゴマーのトリアジン基の窒素原子以外に少なくとも1個の窒素原子を含有する該熱安定性有機トリアジン化合物もしくはオリゴマー、または(c)それらを組み合わせたもの、である添加剤との配合物から、非導電性熱可塑性繊維の繊維ウエブを使用した繊維エレクトレット材料を製造する方法」が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような添加物を配合した場合であっても、電荷量が不十分であるため、濾過効率と圧力損失の両立が不十分であり、また、熱安定性が不十分であるため、電荷寿命が短いものであった。
【0006】
本発明は上記のような問題点を解決するためになされたもので、濾過効率、圧力損失、及び電荷寿命の点で優れるエレクトレット濾過材、及びこれを用いたエアフィルタを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明のエレクトレット濾過材にかかる発明は、「下記一般式(I)で表される繰り返し構造を有するポリアミンを含有する樹脂材料を含む成形体からなるエレクトレット濾過材。
【化2】
(式中、R1〜R8は、各々独立的に、メチル基又は水素原子を表わし、R 1 〜R 8 の内、メチル基である基は2個以下であり、nは0又は1を表わす。nが0の場合、R9は、炭素原子数が4〜15の直鎖状アルキレン基を表わす。nが1の場合、Aはp−フェニレン基を表わし、R9及びR10は、各々独立的に、炭素原子数1〜8のアルキレン基を表わすが、R9及びR10のアルキレン基の炭素原子数の和は2〜9の範囲にある。)」であり、濾過効率、圧力損失、及び熱安定性に優れ、電荷寿命の点で優れていることを見出したものである。特に、前記一般式(I)で表される繰り返し構造を有するポリアミンのR1〜R8がすべて水素原子である場合、前記一般式(I)で表わされる繰り返し構造を有するポリアミンの数平均分子量が500〜100,000の範囲にある場合、前記一般式(I)で表される繰り返し構造を有するポリアミンの含有量が樹脂材料全体の0.01〜5mass%である場合、前記樹脂材料がポリオレフィン系樹脂からなる場合、前記成形体が繊維シートからなる場合、及び前記成形体がメルトブロー不織布からなる場合に、濾過効率、圧力損失、及び熱安定性の点で優れていることを見出したものである。
【0008】
本発明のエアフィルタにかかる発明は、「上記のエレクトレット濾過材を備えているエアフィルタ」であり、濾過効率、圧力損失、及び熱安定性の点で優れていることを見出したものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明のエレクトレット濾過材は、下記一般式(I)で表される繰り返し構造を有するポリアミンを含有する樹脂材料を含む成形体からなる。
【化3】
(式中、R1〜R8は、各々独立的に、炭素原子数1〜4のアルキル基又は水素を表わし、nは0又は1を表わす。nが0の場合、R9は、炭素原子数1〜4のアルキル基及びフェニル基からなる群から選ばれる置換基を有していても良い炭素原子数が4〜15のアルキレン基を表わす。nが1の場合、Aは炭素原子数1〜4のアルキル基で環上の水素原子が置換されていても良いフェニレン基を表わし、R9及びR10は、各々独立的に、炭素原子数1〜8のアルキレン基を表わすが、R9及びR10のアルキレン基の炭素原子数の和は2〜9の範囲にある。)
【0010】
前記一般式(I)において、R1〜R8については、各々独立的に、炭素原子数1〜4のアルキル基、又は水素からなる。アルキル基が長くなるとポリアミン合成の際、立体障害の影響を受ける傾向があり、反応の進行が遅くなりやすく、結果として生成するポリアミンの分子量低下、融点の低下、更には、そのために水との親和性が強くなりやすく、電荷量が低下する傾向があるため好ましくない。したがって、R1〜R8のすべてがアルキル基で置換されているよりも、R1、R2、R7、R8の内の少なくともひとつが水素原子であり、且つR3、R4、R5、R6の内の少なくともひとつが水素原子であるか、R1〜R8のすべてが水素原子である方が、合成上の観点、更には結果として生成するポリアミンの電荷量の観点から、より好ましい。
【0011】
前記一般式(I)において、nが0の場合、R9は、炭素原子数1〜4のアルキル基及びフェニル基からなる群から選ばれる置換基を有していても良い炭素原子数が4〜15のアルキレン基を表わす。そのような場合のR9としては、例えば、ブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基、トリデカメチレン基、テトラデカメチレン基、ペンタデカメチレン基の如き直鎖状アルキレン基;これらの直鎖状アルキレン基の水素原子の一部がメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基及びフェニル基からなる群から選ばれる置換基で置換されたアルキレン基、などが挙げられる。これらのアルキレン基の中でも、炭素原子数が4〜15の直鎖状アルキレン基が好ましく、炭素原子数が6〜12の直鎖状アルキレン基が特に好ましい。
【0012】
なお、前記一般式(I)で表される繰り返し構造として、nが0であり、かつR9がメチレン基である構造のみを有するポリアミンは、高融点で非常に堅いものとなってしまい、混練の際に樹脂材料中への分散性が悪く、使用できない。
【0013】
前記一般式(I)で表される繰り返し構造を有するポリアミンは、その繰り返し構造が同一であっても異なっていてもよく、例えば、nが0の場合、繰り返し単位中に有するR9を少量のメチレン基、エチレン基、プロピレン基の如き炭素原子数が小さいアルキレン基と、ヘキサメチレン基、デカメチレン基といった炭素原子数が大きいアルキレン基とを組み合わせてもよい。しかしながら、このように組み合わせる場合において、メチレン基の割合が多すぎると、得られるポリアミンは高融点で非常に堅いものとなってしまい、混練の際に樹脂材料中への分散性が悪くなる傾向にあり、また、エチレン基やプロピレン基の割合が多すぎると、得られるポリアミンはピペラジン基に由来する親水性が強く、水との親和性が強くなるため、樹脂材料に配合する際に空気中の水分を吸着して、電荷量が低下してしまう傾向にある。そのため、炭素原子数が小さいアルキレン基を組み合わせる場合、炭素原子数が小さいアルキレン基の割合は、ポリアミンが有するすべてのR9に対して、モル換算で10%以下にとどめておくことが好ましい。
【0014】
nが1の場合、Aは炭素原子数1〜4のアルキル基で環上の水素原子が置換されていても良いフェニレン基を表わし、当該フェニレン基は、p−フェニレン基、m−フェニレン基又はo−フェニレン基のいずれであっても良いが、p−フェニレン基が特に好ましい。R9及びR10は各々独立的に、炭素原子数1〜8のアルキレン基を表わすが、R9及びR10のアルキレン基の炭素原子数の和は2〜9の範囲にある。
【0015】
nが1の場合、R9及びR10としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基が挙げられる。
【0016】
前記一般式(I)において、nが0であり、R1〜R8がすべて水素原子であり、かつ、R9が炭素原子数4〜15の直鎖状アルキレン基であるポリアミンが好ましく、R9が炭素原子数6〜12の直鎖状アルキレン基であるポリアミンが特に好ましい。また、前記一般式(I)において、nが1であり、R1〜R8がすべて水素原子であり、Aがp−フェニレン基であり、かつ、R9及びR10がともにメチレン基であるポリアミンが特に好ましい。
【0017】
本発明で使用するポリアミンの数平均分子量は、500〜100,000の範囲にあるのが好ましく、5,000〜30,000の範囲が特に好ましい。ポリアミンの数平均分子量が500未満の場合、ポリアミンの融点が低く、成形体に加工する際の混練時に飛散しやすい傾向にあり、また、ポリアミンの数平均分子量が100,000を超えると前記混練時の分散性に劣る傾向にある。
【0018】
前記ポリアミンの融点としては、80℃以上であるのが好ましく、120℃以上であるのがより好ましい。融点が80℃未満では、混練又は成形体加工の際に、揮発又は飛散しやすい傾向がある。他方、ポリアミンの融点は300℃以下であるのが好ましい。融点が300℃を超えると、混練の際の分散性が劣る傾向がある。
【0019】
なお、本発明における「融点」は、示差走査熱量計を用い、昇温速度10℃/分で室温から昇温して得られる融解吸熱曲線の極大値を与える温度をいう。なお、極大値が2つ以上ある場合には、最も低温の極大値を融点とする。
【0020】
また、前記ポリアミンは、樹脂材料、成形体、或いはエレクトレット濾過材の製造時又は使用時の熱によって、揮発又は分解をほとんど起こさず、電荷を保持できるように、180〜350℃の温度範囲において、熱安定性に優れていることが好ましい。
【0021】
このようなポリアミンの含有量は樹脂材料全体の0.01〜5mass%であるのが好ましい。ポリアミンの含有量が0.01mass%未満では含有しているにもかかわらず、電荷の熱安定性及び濾過効率が悪い傾向があるためで、0.05mass%以上であるのがより好ましく、0.1mass%以上であるのが更に好ましい。他方、ポリアミンの含有量が5mass%を超えると、成形性が低下したり、樹脂材料の強度が劣化する傾向があるためで、2.5mass%以下であるのがより好ましく、1.5mass%以下であるのが更に好ましい。
【0022】
本発明のエレクトレット濾過材は、上述のようなポリアミンを含有する樹脂材料を含んでいるが、樹脂材料は上述のようなポリアミンに加えて、酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤など、通常、樹脂材料に含まれている安定剤を含んでいることができる。
【0023】
また、本発明のエレクトレット濾過材は、上述のようなポリアミンを含有しない樹脂材料や、電荷量を多くすることのできる、例えば、ヒンダードアミン系化合物、脂肪族金属塩(例えば、ステアリン酸のマグネシウム塩、ステアリン酸のアルミニウム塩など)、不飽和カルボン酸変性高分子などを含有する樹脂材料を含んでいても良い。
【0024】
本発明のエレクトレット濾過材である成形体を構成する樹脂材料は、どのような樹脂から構成されていても良いが、電荷量を多くすることができ、結果として濾過効率が優れ、圧力損失を小さくすることのできる、体積固有抵抗値が1015Ω/cm以上の樹脂から構成されているのが好ましい。このような体積固有抵抗値を有する樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂、ポリスチレン系樹脂など)、四フッ化エチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、メタクリル樹脂、ポリウレタンなどを挙げることができる。これらの中でもポリオレフィン系樹脂は特に体積固有抵抗値が高く、しかも熱可塑性で加工しやすいため好適である。これらの中でも、ポリプロピレン系樹脂又はポリメチルペンテン系樹脂は耐熱性の点でも優れているため、特に好適である。
【0025】
前述のようなポリアミンを含有する樹脂材料を含む成形体、つまりエレクトレット濾過材はどのような構造を有するものであっても良く、例えば、繊維シート構造、繊維シート等の多孔性基材間に繊維及び/又はフィルムを切断(例えば、短冊状)したスプリットフィルムを充填した構造、などを挙げることができる。これらの中でも、取り扱い性及び加工性に優れている、不織布、織物、編物などの繊維シート構造であるのが好ましく、濾過効率の優れる不織布構造であるのがより好ましい。この不織布構造の中でも、メルトブロー不織布は繊維径が小さく(平均繊維径:0.1μm〜10μm)、物理的作用による濾過性にも優れているため特に好適である。
【0026】
なお、本発明のエレクトレット濾過材の形態もどのような形態であっても良く、例えば、シート形態、シートがジグザグ状に折られた板状の形態、シートがジグザグ状に折られた円筒状の形態、袋状の形態、お椀状の形態、などを挙げることができる。
【0027】
このような本発明のエレクトレット濾過材は、上述のような成形体からなり、この成形体はポリアミンの作用によって電荷量が多いため、濾過効率に優れており、しかも圧力損失の低いものである。更に、熱安定性に優れ、電荷寿命の長いものである。
【0028】
本発明のエレクトレット濾過材が繊維シート構造を有する場合、例えば、次のようにして製造することができる。
【0029】
まず、前述のようなポリアミン及び樹脂材料を用意する。
【0030】
次いで、ポリアミンと樹脂材料とを混練した後に、押し出し機から押し出して、フィルム、繊維、繊維ウエブ、或いは不織布など、所望の構造に加工する。なお、フィルムを形成した場合には、このフィルムを切断(例えば、短冊状)して繊維状(以下、「スプリットファイバー」という)とするのが好ましい。
【0031】
次いで、繊維やスプリットファイバーを使用して、常法により繊維シートを形成する。例えば、繊維シートが織物又は編物からなる場合には、前記繊維及び/又はスプリットファイバーを使用して糸を形成した後、織ったり、編むことによって製造することができる。また、繊維シートが不織布からなる場合には、前記繊維及び/又はスプリットファイバーを使用して繊維ウエブを乾式法や湿式法により形成した後に、繊維ウエブを結合して不織布を製造したり、前記繊維ウエブをスパンボンド法やメルトブロー法により形成した後に、繊維ウエブを結合して不織布を製造することができる。
【0032】
次いで、このような繊維シートに対して、エレクトレット化処理を実施して、本発明のエレクトレット濾過材を製造できる。このエレクトレット化処理方法は特に限定されるものではなく、例えば、電子ビーム照射、コロナ帯電、光エレクトレット、沿面放電により発生させたイオンに対して電界を作用させてイオンを移動させて繊維シートにイオンを注入する方法、繊維シート又は繊維ウエブに対して水流を衝突させる方法、などを挙げることができる。なお、これらのエレクトレット化処理は常温又は加熱した状態で実施することができるし、大気圧下又は大気圧よりも高い圧力下で実施することができる。
【0033】
このようにして製造できるエレクトレット濾過材は一般的にシート状であるが、エレクトレット化処理を施す前の繊維シートを所望形態に成形した後にエレクトレット化処理を実施しても良いし、エレクトレット化処理を実施した後に、所望形態に成形することもできる。例えば、(1)繊維シート又はエレクトレット化した繊維シートをジグザグ状に襞折り加工して板状としたり、(2)繊維シート又はエレクトレット化した繊維シートをジグザグ状に襞折り加工して板状とした後、更に湾曲させて円筒状としたり、(3)繊維シート又はエレクトレット化した繊維シートを縫製するなどして袋状としたり、(4)繊維シート又はエレクトレット化した繊維シートを成形(例えば、熱成形)して、お椀状とすることができる。
【0034】
本発明のエアフィルタは上述のようなエレクトレット濾過材を枠材で固定するなどした、上述のようなエレクトレット濾過材を備えたものであるため、濾過効率、圧力損失、及び電荷寿命の点で優れている。
【0035】
より具体的には、平板状のエレクトレット濾過材を枠材で固定した平板状フィルタ、袋状のエレクトレット濾過材1つ以上を枠材で固定した袋状フィルタ、或いはジグザグ状に襞折り加工した板状のエレクトレット濾過材を枠材で固定した襞折フィルタ、などを挙げることができる。
【0036】
なお、枠材は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス、或いは各種樹脂で構成することができる。また、エレクトレット濾過材の枠材による固定は、例えば、ポリ酢酸ビニルなどの熱可塑性ホットメルト樹脂を枠材とエレクトレット濾過材との間に介在させることにより実施することができる。
【0037】
本発明のエレクトレット濾過材及びエアフィルタは上述のように、濾過効率、圧力損失、及び電荷寿命の点で優れているため、空気清浄機、マスクなどの用途に好適に使用することができ、より具体的には、自動車室内用空気清浄フィルタ、自動車エンジン用空気浄化フィルタ、ビル又は居住用空気清浄フィルタ、エアコン用空気清浄フィルタ、防塵用マスクなどとして好適に使用できる。
【0038】
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0039】
【実施例】
(実施例1)
ポリアミンとして、下記構造式(II)で表される繰り返し構造を有するポリアミン(数平均分子量:約20,000、融点:約160℃)を1mass%添加したポリプロピレン(MI=500)を用意した。
【化4】
(式中、R1〜R8はすべて水素、nは0、R9はヘキサメチレン基)
【0040】
次いで、このポリプロピレンを用い、常法のメルトブロー法により不織布(目付=45g/m2、厚さ=0.7mm、平均繊維径:約3μm)を製造した。
【0041】
他方、長方形状ステンレス板(=誘起電極、大きさ:200mm×300mm)の片面に、厚さが1mmとなるようにアルミナ溶射を実施し、次いで、アルミナ溶射面に、アルミナ接着剤を用いて、タングステンワイヤー(線径:50μm)を10mm間隔で固定して、放電用電極を作製した。また、この放電用電極に対向して配置される対向電極として、ステンレス板(大きさ:300mm×300mm)を用意した。
【0042】
次いで、放電用電極のタングステンワイヤーと対向電極とが対向するように、タングステンワイヤーと対向電極の対向表面とを5cmだけ離して配置した後、対向電極上に前記メルトブロー不織布を載置した。
【0043】
その後、放電用電極のステンレス板とタングステンワイヤー間に交流高電圧(周波数:25kHz、電力:100W)を印加して、イオンを発生させるとともに、放電用電極と対向電極との間に直流高電圧(電圧:20,000V)を、常温、常圧下で印加して、前記イオンをメルトブロー不織布に注入する、エレクトレット化処理を10秒間実施して、エレクトレット化メルトブロー不織布、つまりシート状のエレクトレット濾過材を製造した。
【0044】
(実施例2)
実施例1と全く同様にして、メルトブロー不織布を製造した。
【0045】
次いで、このメルトブロー不織布を100メッシュのネット(支持体)により支持し、10m/min.の速度で搬送しながら、このメルトブロー不織布の片面に対して、ノズルプレート(ノズル径=0.13mm、ノズルピッチ=0.6mm)から1MPaで噴出させた水流を、常温、常圧下で衝突させた後、室温で乾燥させるエレクトレット化処理を実施して、エレクトレット化メルトブロー不織布、つまりシート状のエレクトレット濾過材を製造した。
【0046】
(実施例3)
ポリアミンとして、下記構造式(III)で表される繰り返し構造を有するポリアミン(数平均分子量:約20,000、融点:約145℃)を1mass%添加したポリプロピレン(MI=500)を使用したこと以外は、実施例1と全く同様にして、メルトブロー不織布(目付=45g/m2、厚さ=0.7mm、平均繊維径:約3μm)を製造し、このメルトブロー不織布を実施例1と同様にしてエレクトレット化処理を実施して、エレクトレット化メルトブロー不織布、つまりシート状のエレクトレット濾過材を製造した。
【化5】
(式中、R1、R3〜R4、及びR6〜R8は水素、R2及びR5はメチル基、nは0、R9はヘキサメチレン基)
【0047】
(実施例4)
ポリアミンとして、下記構造式(IV)で表される繰り返し構造を有するポリアミン(数平均分子量:約8,000、融点:約290℃)を1mass%添加したポリプロピレン(MI=500)を使用したこと以外は、実施例1と全く同様にして、メルトブロー不織布(目付=45g/m2、厚さ=0.7mm、平均繊維径:約3μm)を製造し、このメルトブロー不織布を実施例1と同様にしてエレクトレット化処理を実施して、エレクトレット化メルトブロー不織布、つまりシート状のエレクトレット濾過材を製造した。
【化6】
(式中、R1〜R8は水素、nは1、R9及びR10はメチレン基、Aはp−フェニレン基)
【0048】
(比較例1)
実施例1のポリアミンに替えて、ヒンダードアミン系光安定剤(登録商標:キマソープ944、チバスペシャリティケミカル社製)を1mass%添加したポリプロピレン(MI=500)を使用したこと以外は実施例1と全く同様にして、メルトブロー不織布(目付=45g/m2、厚さ=0.7mm、平均繊維径=約3μm)を製造した。次いで、実施例1と全く同様にしてメルトブロー不織布のエレクトレット化処理を実施して、シート状のエレクトレット濾過材を製造した。
【0049】
(比較例2)
実施例1のポリアミンを添加していないポリプロピレン(MI=500)を使用したこと以外は実施例1と全く同様にして、メルトブロー不織布(目付=45g/m2、厚さ=0.8mm、平均繊維径=約3μm)を製造した。次いで、実施例1と全く同様にしてメルトブロー不織布のエレクトレット化処理を実施して、シート状のエレクトレット濾過材を製造した。
【0050】
(比較例3)
比較例2と全く同様にして製造したメルトブロー不織布に対して、実施例2と全く同様にエレクトレット化処理を実施して、シート状のエレクトレット濾過材を製造した。
【0051】
(集塵性能の評価及び圧力損失の測定)
実施例1〜4及び比較例1〜3のそれぞれのエレクトレット濾過材に対して、風速10cm/sec.で大気塵(粒子径:0.3〜0.5μm)を負荷し、エレクトレット濾過材通過前後における塵埃数を計測し、次の式により捕集効率を算出した。
(捕集効率)=(B−A)/B
ここで、Aは濾過材通過後の塵埃数を意味し、Bは濾過材通過前の塵埃数を意味する。
【0052】
また、この時のエレクトレット濾過材前後における差圧を計測し、圧力損失を求めた。
【0053】
次いで、この捕集効率と圧力損失をもとに、次式に従って100γ値を算出し、この100γ値を集塵性能の指標とした。この100γ値が大きい程、集塵性能に優れている。この結果は表1に示す通りであった。
(100γ)=−100Log(1−(捕集効率))/(圧力損失)
【0054】
(熱安定性の評価)
実施例1〜4及び比較例1〜3のそれぞれのエレクトレット濾過材を、温度110℃に設定した乾燥機中に、6時間及び24時間放置した。その後、上記(集塵性能の評価及び圧力損失の測定)に記載の方法により各エレクトレット濾過材の100γ値を算出した。この結果は表1に示す通りであった。
【表1】
【0055】
表1の結果から明らかなように、本発明のエレクトレット濾過材は濾過効率、圧力損失、及び電荷寿命の点で優れていることがわかった。
【0056】
【発明の効果】
本発明のエレクトレット濾過材は、濾過効率、圧力損失、及び電荷寿命の点で優れている。
【0057】
本発明のエアフィルタは濾過効率、圧力損失、及び電荷寿命の点で優れている。
Claims (8)
- 前記一般式(I)で表される繰り返し構造を有するポリアミンのR1〜R8がすべて水素原子であるか、あるいは、R1、R3、R4、R6〜R8が水素原子であり、R2及びR5がメチル基である、請求項1記載のエレクトレット濾過材。
- 前記一般式(I)で表される繰り返し構造を有するポリアミンのR1〜R8がすべて水素原子である、請求項1記載のエレクトレット濾過材。
- 前記一般式(I)で表わされる繰り返し構造を有するポリアミンの含有量が、樹脂材料全体の0.01〜5mass%である、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のエレクトレット濾過材。
- 前記樹脂材料がポリオレフィン系樹脂からなる、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のエレクトレット濾過材。
- 前記成形体が繊維シートからなる、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載のエレクトレット濾過材。
- 前記成形体がメルトブロー不織布からなる、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載のエレクトレット濾過材。
- 請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載のエレクトレット濾過材を備えているエアフィルタ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002031266A JP4105444B2 (ja) | 2002-02-07 | 2002-02-07 | エレクトレット濾過材及びこれを用いたエアフィルタ |
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