JP4101191B2 - 温度応答性ペプチドコポリマーゲルを用いた液中物質捕集材料 - Google Patents

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Description

本発明は、疎水性ポリマー鎖および親水性ポリマー鎖を有する両親媒性コポリマーを含んで成る液中物質捕集材料に関し、詳しくは、親水性ポリマー鎖としてのポリアルキレングリコールの少なくとも一方の末端に疎水性ポリマー鎖としてのポリアミノ酸を有する両親媒性コポリマーから構成される温度応答性高分子ゲルを用いた液中物質捕集材料に関し、とりわけ、不純物質または有用物質のような目的物質を含有する液中から同物質を捕集するために適した液中物質捕集材料並びに液中物質捕集方法に関する。
産業廃液或いは下水または海水或いは湖水等の水質を改善するなどの目的で、これらの液中に含まれる不純物質を除去することが行われている。
従来、浄水場などのように処理スケールが大きい場合は、対象の液中に凝集剤を添加して目的物質を沈澱させる沈澱法が用いられている(例えば、特開2002−361279号公報、特開2002−126758号公報、特開2001−9498号公報、特開平09−52092を参照)。
また、処理スケールが中程度の場合は、吸着剤を詰めたカラムの中に対象の液体を通過させ、目的物質をカラムへ吸着させて液中から除去するカラム法が実用的である(例えば、特開2003−53353号公報、特開平10−323509号公報、特開平10−118644号公報、持開平7−328434号公報を参照)。
しかし、どちらの場合においても専用の設備が必要であり、小規模での実施には適していなかった。その上、カラム中には充填剤同士の間に隙間が存在し、その部分の体積に物質が残存して蓄積されることが原因となって効率が大きく悪化するという欠点もあった。
ところで、前記の液中には不純物質と共に有用物質や未反応の原料など再利用可能な物質が含まれていることもあり、このような物質を同液中から捕集することは有益である。例えば、ビスフェノールAはエポキシ樹脂、ポリカーボネート、防カビ剤、抗酸化剤、染料などに用いられる有用な化学物質である。
しかし、近年、ビスフェノールAが内分泌撹乱化学物質の一つであり、生体内の内分泌系の情報伝達を撹乱するのみならず、免疫系や神経系の正常な機能にも影響を与えることが指摘されており、ビスフェノールAを含む溶液等から高効率に同物質を除去する技術の開発が望まれている。
一方、両親媒性物質を磁気共鳴画像法(MRI)に利用することは、例えば特表第2001−501977号公報(特許文献1参照)に知られている。
また、線状分枝の両末端に生体親和性基が導入されたポリロタキサンヒドロゲルを整形外科などの医療分野で用いられる組織再生用基材として使用することが知られている(例えば、特許文献2参照)。更に、生体分解性を有するトリブロックポリマーを組織癒着防止膜等として使用することも知られている(例えば、特許文献3参照)。
一方、生分解性のヒドロゲルを薬剤デリバリーのために使用することも知られている(例えば、特許文献4、5参照)。
特表第2001−501977号公報 再公表特許第WO02/2159号公報 再公表特許第WO02/71602号公報 特開平8−319231号公報 再公表特許第WO02/71602号公報
しかし、特定の両親媒性コポリマーを液中物質捕集材料として使用することに関しては、従来何らの知見も存在しなかった。
従って、本発明の課題は、目的とする物質を取り込んだり、捕集後の物質捕集材料を再生したりする過程をいかに容易に成し遂げるか、という物質捕集材料を設計する上で最も重要な要素に取り組み、不純物質または有用物質のような目的物質を含有する液中から同物質を捕集するために適した液中物質捕集材料並びに液中物質捕集方法を提供することである。
また、液中物質捕集材料は環境への負荷が皆無か軽微なものであるべきとの要請から、そのような材料として生分解性を有するものが望ましい。従って、本発明は、生分解性の成分からなる温度応答性のポリマーゲルを用いた水溶液中の物質捕集材料を提供することもまた目的とするものである。
本発明の前記課題は、疎水性ポリマー鎖Aおよび親水性ポリマー鎖Bを有する両親媒性コポリマーを含んで成り、該両親媒性コポリマーの有機溶媒への溶液は温度によるゾル−ゲル相転移を示すものであって、被処理水中の目的物質を該ゾル−ゲル相転移を経て分離するための液中物質捕集材料によって達成される。
本発明は、液中物質捕集材料に特定の両親媒性コポリマーを用いることによって、温度の上昇・下降によって引き起こされるゾルーゲル相転移を溶液中の物質捕集に利用することをその要旨とするものである。
また本発明は、このような液中物質捕集材料を使用し、撹拌および温度の変更を利用して被処理液中の目的物質を捕集する液中物質捕集方法を包含する。
本発明に係る温度応答性ペプチドコポリマーゲルは、温度の上下に応じてゾルーゲル相転移を起こすことから、非常に簡便な、温度コントロールと撹拌のみによって溶液中(特に、水系溶液中)の不純物質や有用物質の捕集材料のために有利に利用し得る。すなわち、温度応答性のゲルに対し、温度の上下をトラップ&リリースのスイッチとして用いることができる。
本発明において、両親媒性コポリマーは疎水性ポリマー鎖Aおよび親水性ポリマー鎖Bを有する。これらの成分を同時に有することにより、液中物質捕集材料としての性能を発揮する。
ここで、両親媒性とは、極性基および非極性基の両方を含む性質をいう。両親媒性コポリマーの成分として、適宜好適な疎水性ポリマー鎖Aおよび親水性ポリマー鎖Bを選択し、その組成を調整することにより、液中物質捕集材料としての所望の性能を得ることができる。
本発明における疎水性ポリマー鎖Aには、例えば、一般式(I):
Figure 0004101191
[式中、R、R、RおよびRは、互いに独立して、水素原子、または、炭素数1〜15の分枝状、線状或いは環状のアルキル基、もしくは水酸基、カルボキシル基、カルボニル基、アミノ基、チオール基、フェニル基、エーテル基、エステル結合およびアミド結合よりなる群から選ばれる少なくとも1つの基或いは結合を含む炭素数1〜30の分枝状、線状或いは環状のアルキル基であり、xは1以上の整数である]
で表されるビニルポリマー、
また一般式(II):
Figure 0004101191
[式中、RおよびRは、互いに独立して、水素原子、または、炭素数1〜6の分枝状、線状或いは環状のアルキル基、もしくは水酸基、カルボキシル基、カルボニル基、アミノ基、チオール基、フェニル基、エーテル基、エステル結合およびアミド結合よりなる群から選ばれる少なくとも1つの基或いは結合を含む炭素数1〜30の分枝状、線状或いは環状のアルキル基であり、xは1または2以上の整数である]
或いは一般式(III):
Figure 0004101191
[式中、R、R、RおよびR10は、互いに独立して、水素原子、または、炭素数1〜6の分枝状、線状或いは環状のアルキル基、もしくは水酸基、カルボキシル基、カルボニル基、アミノ基、チオール基、フェニル基、エーテル基、エステル結合およびアミド結合よりなる群から選ばれる少なくとも1つの基或いは結合を含む炭素数1〜30の分枝状、線状或いは環状のアルキル基であり、xは1または2以上の整数である]
で表されるポリアミド(ポリペプチド)、
および一般式(IV):
Figure 0004101191
[式中、R11およびR12は、互いに独立して、水素原子、または、分枝状、線状或いは環状のアルキル基であり、nは1〜10の整数であり、xは1または2以上の整数である]
で表されるポリエステルを含んで成るポリマー鎖が包含される。
このようなものの具体例としては、例えばポリエチレン、ナイロン、ポリカプロラクトンなどが挙げられる。
中でも生分解性を有する成分が、環境負荷が極めて小さい点で好ましく用いられ、このような成分にはポリアミノ酸が含まれる。本発明の目的から好ましいポリアミノ酸としては、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、メチオニン、システイン、セリン、トレオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒスチジン、リシン、アルギニン、アスパラギン、およびグルタミンよりなる群から選択される少なくとも1種のアミノ酸を構成単位とするポリアミノ酸を挙げることができる。
とりわけ数平均分子量が150〜200000、より好ましくは数平均分子量が300〜5000のポリアミノ酸が捕集効率の点から好ましい。このような疎水性ポリマー鎖には、本発明の目的に反しない限り、1種または2種以上の構成単位を用いてよい。
親水性ポリマー鎖Bには、例えば、一般式(V):
Figure 0004101191
[式中、R13、R14、R15およびR16は、互いに独立して、水素原子、または、下記(1)〜(3):
(1)炭素数1〜6の分枝状、線状或いは環状のアルキル基、
(2)カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基およびアミノ基よりなる群から選ばれる少なくとも1つの基を有する炭素数1〜30の分枝状、線状或いは環状のアルキル基、
(3)カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基およびアミノ基よりなる群から選ばれる少なくとも1つの基を有するフェニル基
よりなる群から選ばれる基であり(但し、R13、R14、R15およびR16の少なくとも1つは、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基およびアミノ基よりなる群から選ばれる少なくとも1つの基を有する)、xは1または2以上の整数である]
で表される高分子電解質類、
また一般式(VI):
Figure 0004101191
[式中、R17、R18、R19およびR20は、互いに独立して、水素原子、または、炭素数1〜6の分枝状、線状或いは環状のアルキル基、もしくは水酸基を有する炭素数1〜30の分枝状、線状或いは環状のアルキル基であり(但し、R17、R18、R19およびR20の少なくとも1つは水酸基を有する)、xは1または2以上の整数である]
で表されるポリビニルアルコール類、
また一般式(VII):
Figure 0004101191
[式中、R21、R22、R23およびR24は、互いに独立して、水素原子、または、炭素数1〜6の分枝状、線状或いは環状のアルキル基、もしくはエーテル結合を有する炭素数1〜30の分枝状、線状或いは環状のアルキル基であり(但し、R21、R22、R23およびR24の少なくとも1つはエーテル結合を有する)、xは1または2以上の整数である]
で表されるポリビニルエーテル類、
および一般式(VIII):
Figure 0004101191
[式中、R25は、分枝状、線状或いは環状のアルキル基であり、xは1または2以上の整数である]
で表されるポリアルキレングリコールが包含される。
このようなものの具体例としては、例えばポリビニルアルコール、ポリアクリル酸などが挙げられる。
中でも水溶性のポリアルキレングリコールが、液中物質捕集材料に適したゲルを形成し得る点で好ましく、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールが含まれる。
とりわけ数平均分子量が500〜100000、より好ましくは数平均分子量が1000〜20000のポリエチレングリコールが捕集効率の点から好ましい。このような親水性ポリマー鎖には、本発明の目的に反しない限り、1種または2種以上の構成単位を用いてよい。
前記の各成分、すなわち疎水性ポリマー鎖Aおよび親水性ポリマー鎖Bは、液中物質捕集材料に適したゲルを形成し得る限り、両親媒性コポリマー中でランダム型、交替型、ブロック型、グラフト型等いかなる配置にて存在してもよいが、ブロック型および/またはグラフト型が、液中物質捕集材料に適したゲルを形成し得る点で好ましい。なかでも両親媒性コポリマーが、親水性ポリマー鎖Bの少なくとも一方の末端に疎水性ポリマー鎖Aを有するブロックコポリマーであると、優れた捕集効率を示す液中物質捕集材料が得られるため好ましい。
疎水性ポリマー鎖Aと親水性ポリマー鎖Bの組成は、モル比において10:90〜90:10であることが、親水性と疎水性のバランスに応じて引き起こされる溶液中での超分子構造形成(例えば、ゲル化など)の点から好ましい。両親媒性コポリマーが、親水性ポリマー鎖Bの少なくとも一方の末端に疎水性ポリマー鎖Aを有するブロックコポリマーである場合、両者の前記モル比が20:80〜50:50、好ましくは25:75〜50:50であると、室温付近にゾル−ゲル相転移の転移点が存在するため好ましい。
本発明における液中物質捕集材料に適した好ましい両親媒性コポリマーは、ゲルを形成するポリマーであって、該コポリマーは転移点より高温ではゾル状態、転移点より低温ではゲル状態をそれぞれ示す。この物質捕集材料のゾル−ゲル相転移の転移点は、被処理液体や捕集対象物質の種類に応じ、疎水性ポリマー鎖Aと親水性ポリマー鎖Bの種類、分子量を調節することにより任意に変更が可能である。
以下に、疎水性ポリマー鎖Aおよび親水性ポリマー鎖Bを有する両親媒性コポリマーを調製するために適した方法について述べる。
両親媒性コポリマーを合成する場合、少なくとも一方の末端に官能基を有する親水性ポリマー鎖Bを開始剤として用いることが好ましい。より好ましくは、少なくとも一方の末端にアミノ基を有するポリエチレングリコール(アミノ−PEG)を用いることが、生体適合性、開始剤としての安定性を有するため好ましい。
疎水性ポリマー鎖Aは、官能基を末端に持つ親水性ポリマー鎖Bを開始剤として、その官能基からモノマーを重合することにより得ることができる。とりわけ、生体適合性、物質捕集能力の点から、アミノ酸をモノマーとして選択することが好ましい。また、アミノ酸をモノマーとして用いる際には、重合反応の反応性を高めるために、トリホスゲンを用いたFuchs−Farthing法に従って、アミノ酸のアミノ基とカルボキシル基を環状酸無水物に転換して用いることが好ましい。
両親媒性コポリマーの重合は、不活性ガス雰囲気下において、開始剤として作用する末端に官能基を持つ親水性ポリマー鎖Bと、疎水性ポリマー鎖Aを構成するモノマーを溶媒に溶解させ、得られた溶液を容器内で撹拌することによって行なう。用いる溶媒は、親水性ポリマー鎖B、モノマー、重合後に得られた両親媒性コポリマーのそれぞれが溶解することができるものが好ましいが、必ずしも3成分全てを溶解させる溶媒である必要はない。
このような溶媒としては、例えばベンゼン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン(THF)が挙げられる。
前記のような方法により得られる両親媒性コポリマーを適当な溶剤中へ溶解し、液中物質捕集材料としての溶液を調製する。両親媒性コポリマーを溶解するための適当な溶剤は、捕集対象物質が溶解している溶媒と非相溶で、かつ比重が異なり、加えてコポリマーが可溶であるという性質を有するものである。例えばジメチルホルムアミド、ベンゼンやクロロホルムが挙げられる。中でもクロロホルムを用いると、水を含めて多くの溶媒に対して比重の差が大きく、その結果、捕集後の分離が容易となるため好ましい。
次に、得られた両親媒性コポリマーを液中物質捕集材料用に使用する実施形態の一例として、ビスフェノールAを含む水系から、ポリエチレングリコールの両末端にポリアミノ酸が共重合されたABA型の両親媒性ブロックコポリマーを溶剤中へ溶解させ、本発明の物質捕集材料として用いてビスフェノールAを除去する方法につき、図1に基づいて以下に説明する。
図1において、液中物質捕集の実施容器1は、温度調節機構を備え、撹拌機構としてのプロペラ4またはマグネット式撹拌子が装備されている。実施容器1中へ、目的物質であるビスフェノールAを含む水相2と、両親媒性ブロックコポリマーを溶剤としてのクロロホルムへ溶解させた有機相3を投入すると、図1に示すように実施容器1中で2つの相がその比重の相違により分離する。
次に、温度調節機構を用いて有機相がゾル状態となる所定温度へ系内を加熱し、その状態で撹拌機構を用いて系内を激しく撹拌し、有機相と水相との接触面積を増やす。その結果、水相に含まれていた目的物質としてのビスフェノールAは効率よく有機相へ移動する。
次いで、撹拌を停止し、一定時間系内を静置すると、水相と有機相が分離する。分離がある程度完了したら、系内をゾル−ゲル相転移の転移点以下の温度まで冷却し、目的物質としてのビスフェノールA、両親媒性ブロックコポリマー、クロロホルムを含む有機相をゲル化させる。ゲル化が完了した後、水相と有機相を分離する。この際、有機相は固形物として固まっているので、水相の取り出しは、ポンプアップや容器を傾けるだけで、極めて容易に行なうことが可能である。
本発明における両親媒性コポリマーの有機溶媒への溶液は、その温度をゾル−ゲル相転移の転移点以上に加熱するとゾル状態(液体状態)となり、転移点以下に冷却すると速やかにゲル化する。再び転移点以上まで加熱するとゾル状態になり、この転移は何度でも繰り返すことが可能である。
本発明における両親媒性コポリマーを水不溶性の有機溶媒に溶かした溶液は、ゾル状態では撹拌により水相に懸濁し、水溶液中の捕集しようとする目的物質を水相から有機相に取り込む。その後、冷却して得られたゲル状態では固形となり水相と容易に分離することが可能となる。
また、本発明における両親媒性コポリマーを、水溶性高分子であるポリエチレングリコールと、生分解性を有するポリアミノ酸から構成する場合、環境への負荷が極めて小さい、液中物質捕集材料を得ることができる。
以下、実施例によって、本発明をさらに具体的に説明する。実施例中の各特性の分析は、下記方法に従って行なった。

[化学特性および熱特性の分析方法]
(1)重合度
重合度は、400MHzH−NMR(JEOL、JMN−LA400)を用いてd−クロロホルム中で測定した。
(2)ポリマーの分子量および分子量分布
ゲル透過クロマトグラフィ(GPC)測定は、島津製作所(株)製液体クロマトグラフィ装置を用いて、クロロホルム中、40℃で行なった(流速:1.0mL/分)。ポリマーの分子量および分子量分布(Mw/Mn)は、市販の標準ポリスチレンと比較したクロマトグラフから算出した。
(3)ゾルーゲル相転移の転移点
ゾルーゲル相転移は目視により観察できる。コポリマーを濃度が約5重量%となるようにクロロホルム中へ溶解し、次いでその溶液を試験管中で様々な温度で観察した。溶液が透明となる温度から徐々に降温すると溶液に濁りが生じる。示差走査熱量(DSC)測定を、DSC−8230(理学(株)製)を用いて40℃〜0℃(降温速度:2℃/分)で実施し、ゲル化に伴う発熱ピークが観測される温度をもって転移点とした。
(4)ビスフェノールAの濃度
ビスフェノールAの濃度は、紫外可視吸収分光光度計(日立U‐3000)を用いて測定した。この装置を用いると、0.1ppmのオーダーまで検出することが可能である。
実施例1
ポリ(L−ロイシン)−ポリ(エチレングリコール)−ポリ(L−ロイシン)ブロック共重合体(PLL−PEG−PLL)の調製
トリホスゲンを用い、Fuchs-Farthing法に従って、L−ロイシン N−カルボキシ無水物(Leu−NCA)を合成した。
まず、L−ロイシン2gをTHF中に懸濁させ、この懸濁液中へ、THF中に3重量%の濃度で溶解させたトリホスゲン3gを添加し、混合物を50℃で30分間、撹拌した。反応終了後、減圧下で溶媒を除去した。得られたLeu−NCAをTHF/n−ヘキサン混合系で3回再結晶させ、真空乾燥した。
得られたLeu−NCAの2gをDMF25ml中に溶解させ、この溶液中へ、DMF25ml中に溶解させたアミノ−PEG(すなわち、O,O’−ビス(2−アミノエチル)ポリエチレングリコール)0.59gを添加した。ここでは、アミノ−PEGをNCA開環重合用の開始剤として使用した。末端アミノ基はNCA環のカルボニル炭素を攻撃し、重合がリビング的に進行する。
重合の完了はIRスペクトル法により評価した。得られた生成物を濃度10重量%になるように溶解させたクロロホルム溶液を、300mlのジエチルエーテル中に撹拌しながら滴下することによってポリマーを再沈殿させた。次いで、濾過、減圧乾燥の後、白色粉末を得た。
以上の結果、数平均分子量1000のポリロイシンを両末端に有する数平均分子量3500のコポリマーが得られた。
表1に示すように得られたコポリマーの分子量分布は十分小さかった。NMR測定の結果から、コポリマーの各末端におけるロイシン単位数を測定した。NMRの結果はGPC測定結果と良く整合している。特性の評価結果を表1にまとめる。
この両親媒性コポリマーを1重量%の濃度でクロロホルムに溶解させ、液中物質捕集材料とした。この溶液系におけるゾルーゲル相転移の転移点は約30℃であった。
液中物質の捕集
ビスフェノールAの飽和水溶液(0.12g/L)中に、40℃に加熱した前記コポリマーのクロロホルム溶液(濃度1重量%)を加えた。その後、系全体を40℃に加温した。有機相と水相との接触面積を増やすため、その状態で系を激しく撹拌して有機相を水相へ懸濁させた。その結果、水相に含まれていたビスフェノールAは効率良く有機相に移動する。
その後、撹拌を停め、静置し、水相と有機相の分離を待つ。分離がある程度完了したら、系の温度を転移点以下の20℃へ冷却し、有機相をゲル化させた。ゲル化が完了した後、水相と有機相を分離した。この際、有機相は固形物として固まっているので、容器を傾けるだけで、極めて容易に水相を取り出すことができた。
取り出した水相に含まれるビスフェノールAの濃度を確認したところ、表2のように1サイクルの捕集で濃度は6分の1以下まで減少し、3サイクル後では検出できないほどまで減少した。
実施例2
重合反応開始時に投入したLeu−NCAの量、およびアミノ−PEGの分子量と投入量を変更すること以外は実施例1と同様にして、両親媒性コポリマーを調製した。得られたコポリマーの特性値を表1にまとめる。
得られた両親媒性コポリマーを用い、実施例1と同様にして液中物質捕集材料を形成した。また、初期濃度を変更すること以外は実施例1と同様にして、水中に溶解させたフタル酸ジメチル(DMP)およびフタル酸ジエチル(DEP)の捕集を行った(表2)。DMPおよびDEPは、環境ホルモンとしての可能性が示唆されている物質である。
この結果から、本発明の液中物質捕集材料は良好な捕集効率を示すことがわかる。
比較例1
液中物質捕集材料を使用する代わりにクロロホルムのみを使用すること以外は実施例1と同様にして、水中に溶解させたビスフェノールAの捕集を行った(表2)。
この結果から、液中物質捕集材料を使用した場合より捕集効率が低いことがわかる。従って、本発明による液中物質捕集材料の有効性が証明された。
Figure 0004101191
Figure 0004101191
本発明の実施態様の一例としての水溶液中物質捕集装置の断面図
符号の説明
1 液中物質捕集の実施容器
2 捕集しようとする目的物質を含む水相
3 両親媒性ブロックコポリマーのクロロホルム溶液
4 プロペラ(撹拌装置)

Claims (8)

  1. 疎水性ポリマー鎖Aおよび親水性ポリマー鎖Bを有する両親媒性コポリマーを含んで成り、該両親媒性コポリマーの有機溶媒への溶液は温度によるゾル−ゲル相転移を示すものであって、被処理水中の目的物質を該ゾル−ゲル相転移を経て分離するための液中物質捕集材料。
  2. 前記疎水性ポリマー鎖Aがポリアミノ酸であり、前記親水性ポリマー鎖Bがポリアルキレングリコールである請求項1に記載の液中物質捕集材料。
  3. 前記両親媒性コポリマーが、親水性ポリマー鎖Bの少なくとも一方の末端に疎水性ポリマー鎖Aを有するブロックコポリマーである請求項1または2に記載の液中物質捕集材料。
  4. 前記親水性ポリマー鎖Bが数平均分子量1000〜20000のポリエチレングリコールである請求項1〜3のいずれかに記載の液中物質捕集材料。
  5. 前記疎水性ポリマー鎖Aがグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、メチオニン、システイン、セリン、トレオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒスチジン、リシン、アルギニン、アスパラギン、およびグルタミンよりなる群から選択される少なくとも1種のアミノ酸を構成単位とする数平均分子量300〜5000のポリアミノ酸である請求項1〜4のいずれかに記載の液中物質捕集材料。
  6. 前記両親媒性コポリマーの有機溶媒への溶液は、転移点より高温ではゾル状態、転移点より低温ではゲル状態をそれぞれ示す、請求項1〜5のいずれかに記載の液中物質捕集材料。
  7. 請求項1〜5のいずれかに記載の液中物質捕集材料を使用し、撹拌および温度の変更を利用して被処理液中の目的物質を捕集する液中物質捕集方法。
  8. 有機溶媒を含んでなる請求項1〜5のいずれかに記載の液中物質捕集材料を
    目的物質を含有する被処理と混合し、
    該液中物質捕集材料がゾル状態となる転移点以上の温度まで加熱し、
    該混合物を撹拌して懸濁状態とし、
    撹拌を停止し、系内の相が分離するまで静置し、
    系内を転移点以下の温度まで該液中物質捕集材料を冷却してゲル化させ、
    得られたゲルを分離する
    ことを含んで成る液中物質捕集方法。
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