JP4100733B2 - 高調波発生方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、イットリウム・カルシウム・オキシボレート結晶波長変換素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】
光技術の発展にともなって、加工用等の産業への利用においては、より短波長光を発生することのできる波長変換素子の提供が求められている。
このような波長変換素子としての利用のために、無機酸化物系結晶が様々に検討されてきており、たとえば、三酸化ホウ素(BO3 )を基本構造に持つものとして、1991年にはT.N.Khamaganova らによって新しい化合物Ca8 Sm2 2 (BO3 6 が報告され、また、その置換体として、1992年には、R.Norrestam らによってGdCOB(GdCa4 O(BO3 3 )が報告されている。
【0003】
その後、1996年G.Aka らによって、このGdCOBの非線形光学特性が報告された。しかしながら、この結晶はNd:YAGレーザーの第2高調波発生用としては優れているが複屈折率が小さいため第3高調波発生は不可能であることがわかった。
三酸化ホウ素(BO3 )を基本構造に持つ化合物の結晶は、このような背景からも注目されるものであったが、残念ながら、現状においてはより短波長まで位相整合が可能であって、Nd:YAGレーザーの第3高調波発生をも可能とする結晶素子は実現されていないのが実状である。
【0004】
そこで、この出願の発明は、以上のような背景を踏まえ、短波長光を発生可能な、三酸化ホウ素(BO3 )を基本構造に持つ新しい結晶素子を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、YCa4O(BO33で表わされるイットリウム・カルシウム・オキシボレート結晶に波長1064nmのレーザ光と、その第2高調波である532nm光とを同時に入射し、和周波混合によって第3高調波(355nm)を発生させることを特徴とする高調波発生方法を提供する。
【0006】
また、この出願の発明は、イットリウム・カルシウム・オキシボレート結晶は、可視域では透明で、波長吸収端は200nmであり、二倍高調波の発生限界波長が720nmである上記の高調波発生方法、並びにイットリウム・カルシウム・オキシボレート結晶は、チョクラルスキー法によりメルトより直接成長させたものである上記の高調波発生方法等をもその態様として提供する。
【0007】
【発明の実施の形態】
この出願の発明は、従来の三酸化ホウ素(BO3 )を基本構造に持つ化合物結晶について探索を行った結果、GdCa4 O(BO3 3 のガドリニウム(Gd)をルテチウム(Lu)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、イットリウム(Y)、ネオジウム(Nd)、サマリウム(Sm)、ランタン(La)で置換した結晶の構造が同じであり、Nd:YAGレーザーの第2高調波発生が可能であることがわかったことと、これらのうち、イットリウムで置換した単結晶(YCa4 O(BO3 3 );略称YCOB)はGdCOBよりも短波長まで位相整合可能であり、Nd:YAGレーザーの第3高調波発生が可能であることがわかったことを踏まえて完成されている。
【0008】
YCa4 O(BO3 3 で表わされるこの発明のイットリウム・カルシウム・オキシボレート結晶は、チョクラルスキー法によってメルトより直接成長させることができ、たとえば数時間で直径2cm、長さ3cm程度にまで育成することができる。
結晶は、機能的、化学的、そして熱的性質に優れており、たとえば可視域では透明で、その波長吸収端は200nmである。そして、二倍高調波の発生限界波長は、たとえば720nmである。
【0009】
以下、実施例を示し、さらに詳しくこの発明の波長変換素子について説明する。
【0010】
【実施例】
YCOB結晶の育成
YCOB(Ca4 YO(BO3 3 )結晶を高周波誘導加熱型チョクラルスキー(Czochralski;Cz)法で育成を行った。用いたるつぼはイリジウム(Ir)製で外径50mm、高さ50mm、肉厚1.5mmの円筒形のものを用いた。用いた原料は純度99.99%の炭酸カルシウム(CaCO3 ),酸化イットリウム(Y2 3 ),99.95%の酸化ホウ素(B2 3 )であり、これらを8:1:3の比で混合し、1100℃で24時間焼結したものをるつぼに充填した。イリジウムるつぼは約800度以上の高温では酸素と反応し、揮発するため、アルゴンガス雰囲気中で育成を行った。引き上げ速度は7mm/h、回転数は20rpm、育成温度は1480℃とした。
【0011】
クラックの発生の全くないYCOB結晶を得た。
光学特性
育成したYCOB結晶の線形光学特性として、透過スペクトル、屈折率を測定した。非線形光学特性として、QスイッチNd:YAGレーザーの第二高調波発生を行い、その角度・温度許容幅、実効非線形光学定数の測定を行った。
(a)透過率
育成した結晶の透過スペクトルを測定した。測定結果を図1に示した。透過カットオフは約200nmであったが、紫外領域の吸収線は存在しないことがわかった。Nd:YAGレーザーの発振波長である1.06μmとその第2高調波の0.53μmにおいても吸収がないことがわかった。
(b)屈折率
育成した結晶の屈折率を測定した。測定法は同様にプリズム法によって行った。得られた屈折率分散を図2に示した。複屈折率Δn(=nz −nx )は波長1064nmにおいて0.041、532nmにおいて0.0433であり、GdCOB結晶の0.034に比べて大きいことがわかった。これらの屈折率から第二高調波発生限界波長は約720nmと、約120nmも短波長であることがわかった。また、Nd:YAGレーザーの第3高調波発生(THG)が可能であることがわかった。SHGとTHGの位相整合角の計算値を図3および図4に示した。
(c)第2、第3高調波発生特性
QスイッチNd:YAGレーザーのSHG実験を行った。用いたレーザー(Spectra Physics社;Model GCR−190)のビーム径は4mm、パルス幅7−9nSであった。YCOB結晶はtype−Iの位相整合角にカット、研磨したものを用いた。結晶長は2.8mmであった。SHG出力特性を同じ長さのGdCOBと比較した。この結果からYCOBの実効非線形光学定数(deff )を見積もった。YCOBのdeff はGdCOBの0.68倍であることがわかった。YCOBのdeff は1.23pm/Vと見積もることができた。結晶粉末のSHG強度は全く同じであったことからこれは位相整合角が異なることによるものであると考えられる。deff にcosθの項が含まれており、GdCOBの位相整合角がθ=20度であるのに対してYCOBのそれは30度であることによるものと思われる。YCOB結晶は短波長ほど位相整合角のθが小さくなるため、def f が大きくなると思われる。
【0012】
次に角度・温度許容幅の測定を行った。角度許容幅は1.3mrad・cmであった。この値はType−II位相整合のKDP結晶の0.65倍であった。温度許容幅は65℃・cmであった。この値はKDP結晶の5.6倍、KTP結晶の2.6倍と非常に大きいことがわかった。これらの線形・非線形光学特性を表1に示した。
【0013】
同様のレーザーを用いて、type−Iの位相整合角にカットしたYCOB結晶において、第3高調波発生を確認した。
【0014】
【表1】
Figure 0004100733
【0015】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この出願の発明により提供される非線形光学結晶YCOB結晶素子は、メルトからの結晶育成が可能なため、大型結晶が短時間で育成でき、機械的、化学的特性に優れている。そして、このYCOB結晶素子はNd:YAGレーザーの第3高調波発生が可能であるため、短波長光発生用の、紫外光発生用非線形光学結晶として有用なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】結晶の透過スペクトルを示した図である。
【図2】結晶の屈折率分散を示した図である。
【図3】Nd:YAGレーザーのSHG位相整合角を示した図である。
【図4】Nd:YAGレーザーのTHG位相整合角を示した図である。

Claims (3)

  1. YCa4O(BO33で表わされるイットリウム・カルシウム・オキシボレート結晶に波長1064nmのレーザ光と、その第2高調波である532nm光とを同時に入射し、和周波混合によって第3高調波(355nm)を発生させることを特徴とする高調波発生方法。
  2. イットリウム・カルシウム・オキシボレート結晶は、可視域では透明で、波長吸収端は200nmであり、二倍高調波の発生限界波長が720nmである請求項1の高調波発生方法。
  3. イットリウム・カルシウム・オキシボレート結晶は、チョクラルスキーによりメルトより直接成長させたものである請求項1または2の高調波発生方法。
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