JP4097007B2 - 水中投入形混入剤溶液の供給器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、浴槽、洗面器、洗面台、その他魚飼育水槽などに張った湯又は水中に投入され、この湯や水に、塩素中和剤や芳香剤・酸化剤・アルカリ剤・皮膚化粧水・入浴剤・保湿剤などのような浄化剤・改質剤等の混入剤を適量供給して水質を浄化・改良するようにした水中投入形混入剤溶液の供給器に関する
【0002】
【従来の技術】
例えば、水道水には雑菌を滅菌消毒するため塩素の混合が義務付けられているが、水道水に含まれる残留塩素(特に次亜塩素酸HOClなどの遊離残留塩素)は人の肌や毛髪に悪影響を及ぼし、このような残留塩素を多く含んだ風呂に入るのは健康によくないといわれている。
このようなことから、特開平4−256490号には、浴槽に浮かべて使用する簡易浄水器が提案されている。このものは、浴槽に張った水(湯)に浮かべる容器に内外を貫通する多数の孔を設け、この容器内に水を浄化するための浄化用粒体を充填して構成したものである。このような浄水器は、浴槽に浮かべると多数の小孔を通じて水が出入りし、この水が浄化用粉体に触れて浴槽の水を浄化するとされている。
上記公報の場合、塩素除去(中和)剤としてバイオセラミックスが記載されており、このバイオセラミックスに水が接触すると水に混在されている遊離残留塩素が除去されるとされている。しかしながら、このものでは、浄水器に出入りする水だけがバイオセラミックスに接触するので、浴槽全体の水の塩素を中和するのに時間が掛かるという問題がある。
【0003】
これに対し、塩素中和剤として水溶性粉末や顆粒のもの、又は溶液タイプのものが考えられる。水溶性粉末や顆粒又は溶液タイプの塩素中和剤を用いれば、これに水が接触すると塩素中和剤が水に溶けて拡散し、浴槽全体に拡がるので全水量に対し短時間に塩素を中和することができる。このような塩素中和剤としては、L−アスコルビン酸(ビタミンC)、L−アスコルビン酸ナトリウム、亜硫酸カルシウム、亜硫酸ナトリウムなどが知られている。中でも、L−アスコルビン酸及びL−アスコルビン酸ナトリウムは、食品添加剤としても広く知られているので安全性が高く、しかも化粧水などに用いられて美容効果などを奏するので使用に好適する。
したがって、前記公報の浄水器にL−アスコルビン酸及び/又はL−アスコルビン酸ナトリウムを用いると、迅速に円滑な塩素中和作用が期待できる。
【0004】
ところで、L−アスコルビン酸やL−アスコルビン酸ナトリウムを、風呂に浮かべる浄水器に収容して塩素中和剤として使用する場合、以下のような問題がある。
すなわち、L−アスコルビン酸(以下、単にアスコルビン酸と言う)は吸湿性に優れ、潮解性があり、水に触れると瞬時に溶解する。しかし、アスコルビン酸の飽和溶解度は約25%程度といわれている。したがって、上記公報に記載の浄水器にアスコルビン酸の粉末又は顆粒をネット状シートに包んで収容すると、アスコルビン酸が容器の小孔から流入する水によって瞬時に溶け、この容器に進入した水に対し溶解度25%に達するまで溶けてしまう。アスコルビン酸粉末が残ったとしても、水が入れ替わることにより残りのアスコルビン酸粉末又は顆粒が順次溶解する。したがって、容器に詰めたアスコルビン酸は1回の使用により全て溶けてしまい、2回目以降の使用はできなくなる。
【0005】
一方、アスコルビン酸(化学式C6H8O6、分子量176)は遊離残留塩素の主体である次亜塩素酸(化学式HOCl、分子量52.45)と、以下の化学反応を生じるといわれている。
C6H8O6+HOCl → C6H6O6+HCl+H2O
すなわち、アスコルビン酸1モルと次亜塩素酸1モルが反応して、デヒドロアスコルビン酸(C6H6O6)1モルと、塩素酸(HCl)1モルおよび水(H2O)1モルを生成する。つまり、アスコルビン酸176gは次亜塩素酸52.45gと化学反応を生じ、言い換えると次亜塩素酸1gを無害な塩素酸に変換するにはアスコルビン酸が3.35g必要となる。
したがって、例えば浴槽内の水の量が200リットル、その残留塩素の主体である次亜塩素酸の濃度が1.0ppmであるとすると、この残留塩素を化学的に完全に中和するにはアスコルビン酸が0.67g必要になる。逆に言えば、お風呂1杯分の塩素を中和するにはアスコルビン酸をわずか0.67g投入すればよい。これを25%飽和水溶液にすると、アスコルビン酸の水溶液は約2mlあればよく、アスコルビン酸をこれ以上供給すると、アスコルビン酸の無用な消費が増える。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、1回の使用量でアスコルビン酸をわずかに0.67g、水溶液にした場合約2mlだけを供給するのは、その供給量が極めて少ないので放出の制御が難しいという問題がある。
この種の浄水器は、何回も使用できることが望ましく、そのためにはアスコルビン酸を予め容器内に多量に充填しておき、使用する度に1回の使用分に応じた量を徐放することが望まれる。したがって、多量に収容したアスコルビン酸を1回分づつ小出しに供給することが望ましいが、上記したように1回ずつ少量のアスコルビン酸を供給するのは難しいという課題があった。
また、このような浄水器は、不使用時に浴槽から引き上げておくようになっているが、このときアスコルビン酸が漏出するとアスコルビン酸が無駄になり、アスコルビン酸を頻繁に補充しなければならないとともに、アスコルビン酸の水溶液が金属物を酸化させるなどの不具合が発生する。
【0007】
本発明はこのような事情にもとづきなされたもので、その目的とするところは、浴槽や洗面器、洗面台又は各種水槽などに張られた水の量に見合った適切な量で混入剤溶液を放出することができ、さらに不使用時には混入剤溶液の漏れを防止することができる水中投入形混入剤溶液の供給器を提供しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため請求項1の発明は、水中に投入し及び水中から引き上げ可能であり、浮力発生手段又は重錘を備え、水中にある場合にこの浮力発生手段又は重錘により上下方向に所定の姿勢が保たれるとともに、水中から引き上げられた場合に上下が逆転する姿勢で使用される供給器本体と、
上記供給器本体に設けられ、複数回使用できる量の混入剤及び水が収容されて比重が1より大きな混入剤水溶液を作る密封された混入剤収容室と、
この混入剤収容室に連通し、水中から引き上げられて上下が逆転した場合に混入剤収容室で作られた混入剤水溶液が導かれて所定量貯える密封された水溶液計量室と、
上記供給器本体が水中に投入されて上下が所定の姿勢の場合に水面より下に位置するとともに上記水溶液計量室の上端から下がった所定の位置で水溶液計量室に開口され、この水溶液計量室の混入剤水溶液と外部の水とが入れ替わって上記水溶液計量室の水溶液を水中に放出し、上記供給器本体が空中にある場合は水溶液計量室内番に生じる負圧の作用で混入剤水溶液の漏出を防止する大きさに形成された放出孔と、
を具備したこと特徴とする水中投入形混入剤溶液の供給器、である。
【0009】
上記請求項1の発明によれば、この供給器を浴槽、洗面器、洗面台、その他水槽などに張ったお湯又は水に投入すると、供給器本体に設けた浮力発生手段又は重錘の作用で供給器本体は所定の上下方向の姿勢を保つようになり、水溶液計量室に連なる放出孔が必ず水中に浸漬するようになり、計量室内の水溶液と外の水が相互に接するようになる。このため計量室内の水溶液と外の水とが比重差の影響で相互に入れ替わる。よって、計量室に貯えられていた水溶液が外に放出され、外の水に混ざる。この放出量は水溶液計量室における放出孔よりも上に位置する領域に貯まっていた分に相当し、よってこの容量を1回の放出分に設定しておけば、1回ごとに必要な最適量の混入剤を供給することができる。したがって、水溶液の放出量を高精度に制御することができる。
一方、上記のような入れ替わりによって水溶液計量室では外部から水が入ることにより水溶液の濃度が低下するが、水溶液計量室は混入剤収容室と連通しているから、水中から引き上げて上下逆転した状態にすれば混入剤収容室内の濃い水溶液が比重差により計量室に流入し、よって次回に使用する分の水溶液を計量室に貯えることができる。
そして、水中から引き上げた場合、放出孔が大気に臨むようになる。この場合、放出孔の大きさを規制してあり、放出孔から内部の水溶液が漏れ出そうとしても、計量室及び混入剤収容室は密閉構造でありかつ水溶液が満たされているので放出孔から水溶液が出ようとすると内部が負圧になるので、この負圧により水溶液の漏出を防止し、加えて混入剤水溶液の空気に臨む表面に表面張力が作用し、よって水溶液の漏出を防止する。
【0010】
本発明の他の態様として、混入剤収容室に多数回使用する分の混入剤を収容しておき、これの一部を水で溶解し、1回分の水溶液を放出したら、未溶解の混入剤を順次溶解させて水溶液を作るようにするのが望まれる。この場合、混入剤収容室には未溶解の混入剤が残留されるから、上記混入剤収容室又は放出孔にこの未溶解の混入剤が放出孔に進入するのを防止する通水性の混入剤阻止部材を備えることが好ましい。
これにより、未溶解の混入剤が直接放出孔より放出されるのを防止することができる。
【0011】
また、混入剤が、水道水に含まれる残留塩素を中和する塩素中和剤、例えばL−アスコルビン酸(ビタミンC)、L−アスコルビン酸ナトリウム、亜硫酸カルシウム、亜硫酸ナトリウムなどであると、本発明の供給器を塩素中和用の浄水器として利用できる。
【0012】
更に本発明の好ましい態様は、混入剤収容室の少なくとも一部は、外から内部に残っている未溶解混入剤の残量が見えるようになっていることが望ましい。
このような場合、混入剤の残量が外から確認できるので、使用可能であるか否か、残りどの位の使用が可能か、又は交換時期などを判断することができる。
なお、この場合、外から見える状態とは、透明、着色透明、または半透明などが実施可能である。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下本発明について、浴槽に張った水(湯)の残留塩素を中和する浴槽用の水中投入形簡易浄水器に適用した一実施例を図面にもとづき説明する。図1は浄水器を浴槽の水面に浮かべた状態の断面図、図2は浴槽から引き上げて浴槽の縁などに置いた状態の断面図、図3及び図4はそれぞれ主要部の拡大した断面図、図5は浄水器を浴槽18に浮かべて使用する状態の全体の図である。
【0014】
図において1は、本発明の供給器本体に該当する浄水器本体であり、この浄水器本体1は例えばABS樹脂、ポリプロピレンなどのような耐熱性をもつ合成樹脂からなり、本例の場合、透明に形成されている。この浄水器本体1は外形が半球形をなしており、内部に混入剤収容室2を形成してある。
本例の場合、混入剤収容室2は、混入剤溶解室3と水溶液貯まり室4とに区画されている。混入剤溶解室3は、この浄水器本体1を図1に示すように水面に浮かべた姿勢において、上記浄水器本体1の底部に位置する箇所に形成され、大容積を有している。この溶解室3には、本発明の混入剤に相当する塩素中和剤としてアスコルビン酸(ビタミンC)が粉末又は顆粒5の形態で収容されている。この混入剤溶解室3の中央上方に位置し、この混入剤溶解室3に連続して上記水溶液貯まり室4形成されている。
【0015】
そして、これら混入剤溶解室3と水溶液貯まり室4は、相互に通水可能に連通しており、これらの間に混入剤の通過を阻止する通水性の部材、例えば不織布、メッシュシート6が設けられている。このメッシュシート6は、混入剤溶解室3のアスコルビン酸顆粒5が水溶液貯まり室4に進入しないように阻止するものであり、しかしながらアスコルビン酸の水溶液は自由に通過できるようになっている。なお、メッシュシート6は、後述する放出孔10の内側の開口に取り付け、アスコルビン酸顆粒5が放出孔から外に出ないように阻止するようにしてもよい。
上記混入剤溶解室3及び水溶液貯まり室4の少なくとも一方、本例の場合は両室に、それぞれ空気抜き孔が形成されており、これら空気抜き孔は栓7及び8により気液密に密封されるようになっている。
【0016】
また、浄水器本体1には中央部に位置して上下に延びるパイプで構成された放出通路9が形成されている。この放出通路9は混入剤溶解室3及び水溶液貯まり室4を貫通しており、上下端はそれぞれ開放されている。そして、上記水溶液貯まり室4には、上記放出通路9に臨んで放出孔10が形成されている。この放出孔10は水溶液貯まり室4と放出通路9を相互に連通させており、これにより水溶液貯まり室4内の水溶液を放出通路9に供給するものである。
この場合、放出孔10の開口位置は、図3に示す通り、水溶液貯まり室4の上端から所定寸法Sだけ下がった位置に形成されており、この放出孔10の開口位置よりも上部に位置する上記水溶液貯まり室は水溶液計量室11となっている。この水溶液計量室11は、放出孔10の開口位置よりも上部に位置しているので、放出孔10より上の部分の容積は、アスコルビン酸水溶液を浴槽20に張った水に1回供給する量に見合うように設定してある。計量室11の容量は、例えば2ないし5ml程度が適当である。
また、この放出孔10の大きさは、上記1回の使用分のアスコルビン酸水溶液が数分以内に放出できるとともに、空気中にあるときはアスコルビン酸水溶液の表面張力で水溶液が漏れ出ないような大きさに設定してあり、例えば直径5mm以下となっている。
【0017】
このような半球形の浄水器本体1にはキャップ12が被せられている。このキャップ12は半球形をなしており、上記浄水器本体1に被着した場合、浄水器全体が球形をなすように構成されている。このキャップ12の内部には浮力発生手段としてのフロート13が設けられている。フロート13はキャップ12に気密な空気室を形成してもよいが、本例の場合、比重が1よりも小さな浮体をキャップ12に固定してある。なお、フロート13は浄水器本体1の上部に取り付けてもよい。
また、フロート13に代わり、浄水器本体1の底部に重錘を取り付けるようにしてもよい。いずれの場合であっても、浄水器本体1を水中に投入した場合、図1に示すように、混入剤溶解室3が下になり、水溶液計量室11が上を向く姿勢になればよい。
上記浄水器本体1とキャップ12との間には内部空間14が形成されており、この内部空間14は例えば浄水器本体1の側面に形成した複数の通水孔15を介して外部に連通している。そして、このような浄水器を水中に投下すると、上記フロート13の浮力作用で図1に示すように上部の一部が水面より露出した状態で浮くようになっており、この場合、内部空間14には通水孔15を通じて水が進入する。上記フロート13の浮力は、上記内部空間14の水面が少なくとも上記放出孔10の位置よりも上の位置となるように設定してある。そして、本例の場合放出通路9の上端は上記内部空間14に開放されている。なお、放出通路9の上端は、キャップ12の上面に開口していてもよい。
【0018】
上記構成の一実施例の浄水器について、作用を説明する。
使用する前に空気抜き孔の栓7を開け、ここから混入剤溶解室3にアスコルビン酸の顆粒5を詰める。この顆粒5の充填量は、この浄水器を数10又は100数回使用できる量であることが望ましい。そして、この空気抜き孔より混入剤溶解室3に水を注入する。水を注入する場合、空気抜き孔を上に向けて浄水器本体1を水面下に沈めると、この空気抜き孔から混入剤溶解室3内の空気が浮上して外に逃げ、これと同時にこの空気抜き孔を通じて外の水が混入剤溶解室3に流入する。混入剤溶解室3から気泡が出なくなると、栓7で空気抜き孔を塞ぎ、混入剤溶解室3の気液密を保つ。
これと同様にして、栓8を開いて水溶液貯まり室4の空気を抜き、この水溶液貯まり室4に水を注入する。水溶液貯まり室4の空気が除去されると栓8をし、この水溶液貯まり室4の気液密を保つ。
なお、栓7,8はいずれか一方であってもよく、また図示しないフロート式自動空気抜き弁などを設けて、浄化器本体1を水に沈めたとき自動的に空気が抜け、代わりに水が注入されるようにしてもよい。要するに混入剤溶解室3及び水溶液貯まり室4の両室に空気が残らないようにし、これら両室を水で満たせばよく、空気が残らないことが大事である。
【0019】
このようにして混入剤収容室2の全体に水が注入されると、混入剤溶解室3に収容したアスコルビン酸の顆粒5が溶解する。すなわち、アスコルビン酸は吸水性、潮解性があるから水に混ぜると瞬時に溶解する。しかしながら、アスコルビン酸の溶解度はほぼ25%程度であるから、水溶液の濃度がほぼ25%に達すると、飽和状態に達してそれ以上は溶解しない。したがって、混入剤溶解室3に収容したアスコルビン酸は飽和濃度に達するまでは水に溶けるが、それ以上の溶解は進まず、よって残りの顆粒5は溶解せずに顆粒状態で残る。
一方、アスコルビン酸の水溶液は、飽和濃度の場合の比重がほぼ1.1程度である。このため、濃度差が発生すると、濃い水溶液が下に沈む性質がある。したがって、上記水を注入した後の浄水器は、空気中に引き上げ、図2に示すように、上下逆さにして例えば浴槽18の縁などに置いておくことが好ましい。この場合、図2に示すような受け皿19を用意しておき、この受け皿19に載せておけば球形をした浄水器が安定した姿勢を保つ。
【0020】
上記のように浄水器を上下逆にすると、混入剤溶解室3が水溶液貯まり室4よりも上になるから、混入剤溶解室3で溶解しているアスコルビン酸水溶液は比重差によりメッシュシート6を透過して水溶液貯まり室4に流れ込む。よって、この水溶液貯まり室4内の水溶液が高濃度になる。なお、この濃度も飽和濃度に近い。
また、このとき混入剤溶解室3に残っている顆粒5はメッシュシート6により通過が阻止されるから、水溶液貯まり室4に流入するのが防止される。
一方、高濃度の水溶液が流入した水溶液貯まり室4では、それまで存在していた水又は濃度の低い水溶液が濃度の高い水溶液と入れ替わり、水又は濃度の低い水溶液は混入剤溶解室3に流れ込む。これにより混入剤溶解室3内の顆粒5を飽和溶解度に達するまで溶かす。
【0021】
上記のように浄水器が空気中にあるときは、内部空間14及び放出通路9内に水が存在せず、放出通路9内には空気が存在する。このため、図4に示す通り、放出孔10では放出通路9側が空気層に面する。この状態では、混入剤収容室2が水溶液で満たされて気液密が保たれており、仮に放出孔10から水溶液が漏出しようとすると混入剤収容室2内が負圧になろうとし、よって内外の圧力差で水溶液の漏洩を阻止する。これと同時に放出孔10内ではアスコルビン酸水溶液と空気との界面で水溶液の表面張力が発生し、水溶液貯まり室4から水溶液が放出通路9に漏れ出るのが防止される。つまり、放出孔10の大きさは、上記表面張力によって水溶液が流れ出すのを防止するのに適した大きさとしてある。
これにより、浄水器を空中に引き上げたときには、水溶液が流出しない。
【0022】
次に、浄水器を図5に示すように、浴槽18に張った水に投入する。すると、図1に拡大して示すように、浄水器の中央部に形成した放出通路9内に水が進入するとともに、浄水器本体1の側面に形成した通水孔15を通じて内部空間14にも水が進入する。しかし、キャップ12に設けたフロート13の作用で浄水器は水中に浮かぶ。このとき水中で浮かんだ姿勢は必ずや混入剤溶解室3が底になる姿勢となり、つまり、図1に示す通り上下方向が定まる。
そして、浄水器の吃水線はフロート13の浮力によって定まるが、この場合放出孔10の位置が必ず水面より所定高さH分下となるように設定されている。
このように浄水器が水面に浮くと、放出通路9内に水が入り、放出孔10の水溶液が放出通路9内の水に接する。すなわち、図3に示す通り、水溶液貯まり室4内のアスコルビン酸水溶液と放出通路9内の水が連通するようになる。この状態では、アスコルビン酸水溶液の比重が水より大きいので、水溶液貯まり室4における上記放出孔10よりも上部に位置する部分、つまり計量室11内の水溶液は重力の作用によって下降しようとし、計量室11の下部位置にある放出孔10から放出通路9に流れ出す。このとき、水溶液の流出に代わって、放出通路9内の水が計量室12に流入する。このようにアスコルビン酸水溶液の流出と水の流入は同時に起こり、水溶液と水が入れ替わる。この入れ替わりにより混入剤収容室2の全体の水量が減ることはない。これは拡散作用も影響しているものと考えられる。
そして、放出通路9に流れ出したアスコルビン酸水溶液は、依然として比重が大きいので放出通路9中を下に向かって流れ、この放出通路9の下端開放口から浴槽18内の水に放出される。この水を掻き混ぜてやれば、アスコルビン酸が浴槽全体に拡がり、水に含まれる遊離残留塩素と反応し、これを中和することになる。
【0023】
上記放出孔10から放出されるアスコルビン酸水溶液は、比重差により流れ出すことから、放出孔10よりも上に位置する領域、すなわち計量室11に貯まっていた量の水溶液が流出する。計量室3内の水溶液が流れ出してしまうと、放出孔10の内外では濃度差及び比重差が無くなる、又は小さくなるので水の入れ替わりが止まる。これによりアスコルビン酸水溶液の放出が終わる。
このことから1回の使用分は、計量室11内の容積に相当することになり、この容積を規制すれば1回の使用分に見合うアスコルビン酸の放出量を制御することができる。
【0024】
上記のようにアスコルビン酸の供給が終わると、浄水器を引き上げ、図2に示すように、浴槽18の縁に置いた受け皿19に載せておけばよい。このとき、浄水器を上下逆さにしておけば、前記したように、混入剤溶解室3が水溶液貯まり室4よりも上位置になるから、混入剤溶解室3内の高濃度の水溶液が水溶液貯まり室4に流れ込み、計量室114内の水溶液が高濃度になる。したがって、計量室11では次回に放出される分が補充される。また、高濃度の水溶液と入れ替わって混入剤溶解室3に流れ込んだ水又は濃度の低い水溶液は、混入剤溶解室3内に残っている未溶解の顆粒5を溶かし、飽和溶解度に達するまで溶かす。よって、1回使用した分の顆粒が溶解されることになる。
【0025】
なお、上記のように、浄水器を水中にある場合と水中から引き上げた場合とで上下逆転させるようにすれば、混入剤収容室2内の収容物も上下反転されるので、水溶液は撹拌されることになる。このため、比重差により高濃度な水溶液が下に沈もうとする性質があっても、使用の度に撹拌されるから水溶液の濃度を一様にすることができ、放出する水溶液の濃度ばらつきを防止することができる。
また、混入剤溶解室3内に残留している未溶解のアスコルビン酸顆粒5は比重が大きいので下に沈もうとし、混入剤溶解室3の底に堆積しようとする性質がある。これに対し浄水器を水中にある場合と水中から引き上げた場合とで上下逆転させるようにすれば、図1及び図2を比較して判る通り、未溶解の顆粒5は上下に移動する。このためこの顆粒5も撹拌され、よって一カ所に堆積するのが防止される。
【0026】
上記のような構成の浄水器であれば、1回使用する毎にアスコルビン酸の溶解及びその水溶液の放出を繰り返すことになるから、混入剤収容室3に収容したアスコルビン酸の顆粒5がなくなるまで、多数回使用することができる。
このようなことから、浴槽18に張った水道水に含まれる残留塩素を中和するのに必要かつ充分な量のアスコルビン酸を精度良く供給することができる。よって、混入剤溶解室3に収容したアスコルビン酸の量を有効に使うことができ、給水器を長期間に亘り使用することが可能になる。
また、このような浄水器においては、混入剤収容室2が透明になっているから外から内部に残っている未溶解の顆粒5を透視可能である。よって、外部からアスコルビン酸の残量を視認でき、残量が無くなれば交換すればよい。
【0027】
前記実施例では、浄水器本体1の外形をそれぞれ球形にしたが、この形状は自由に変更でき、例えば鳥、魚、鯨などの動物、船、その他種々の形が採用可能である。
また、本発明の構成において、各部材の材料は合成樹脂に限らず、必要により金属を用いてもよい
【0028】
【発明の効果】
以上説明した通り本発明によれば、水中にあるときに水溶液計量室内の所定量の水溶液が放出孔を通じて放出され、また水中から引き上げられた場合にはその供給が停止されるので、1回使用する毎に必要量の水溶液を放出することができる。しかも、混入剤収容室に収容した混入剤がなくなるまで、繰り返して多数回使用することができる。このようなことから、浴槽、洗面器、その他水槽などに貯えた水に混入剤を供給する場合、必要かつ充分な量の混入剤を精度良く供給できることになり、混入剤収容室に収容した混入剤を有効に使うことができ、供給器を長期間に亘り使用することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施例を示し、浴槽用水中投入形浄水器を水面に浮かべた状態の断面図
【図2】 同実施例における浄水器を水中から引き上げて浴槽の縁に置いた状態の断面図
【図3】 同実施例において、主要部が水中にある場合の断面図
【図4】 同じく、上記主要部が水中から引き上げられている場合の断面図
【図5】 同実施例において、浄水器を浴槽に浮かべて使用する状態を示す全体の図
【符号の説明】
1…浄水器本体
2…混入剤収容室
3…混入剤溶解室
4…水溶液貯まり室
5…アスコルビン酸顆粒
10…放出孔
11…水溶液計量室
13…フロート
Claims (4)
- 水中に投入し及び水中から引き上げ可能であり、浮力発生手段又は重錘を備え、水中にある場合にこの浮力発生手段又は重錘により上下方向に所定の姿勢が保たれるとともに、水中から引き上げられた場合に上下が逆転する姿勢で使用される供給器本体と、
上記供給器本体に設けられ、複数回使用できる量の混入剤及び水が収容されて比重が1より大きな混入剤水溶液を作る密封された混入剤収容室と、
この混入剤収容室に連通し、水中から引き上げられて上下が逆転した場合に混入剤収容室で作られた混入剤水溶液が導かれて所定量貯える密封された水溶液計量室と、
上記供給器本体が水中に投入されて上下が所定の姿勢の場合に水面より下に位置するとともに上記水溶液計量室の上端から下がった所定の位置で水溶液計量室に開口され、この水溶液計量室の混入剤水溶液と外部の水とが入れ替わって上記水溶液計量室の水溶液を水中に放出し、上記供給器本体が空中にある場合は水溶液計量室内に生じる負圧の作用で混入剤水溶液の漏出を防止する大きさに形成された放出孔と、
を具備したこと特徴とする水中投入形混入剤溶液の供給器。 - 上記混入剤収容室には未溶解の混入剤が残留されており、上記混入剤収容室又は放出孔に、この未溶解の混入剤が放出孔を通じて外部に流出するのを防止する通水性の混入剤阻止部材を備えたことを特徴とする請求項1に記載の水中投入形混入剤溶液の供給器。
- 混入剤は水道水に含まれる残留塩素を中和する塩素中和剤であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の水中投入形混入剤溶液の供給器。
- 上記混入剤収容室の少なくとも一部は、外から内部に残っている未溶解混入剤の残量が見えるようになっていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一に記載の水中投入形混入剤溶液の供給器。
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