JP4096328B2 - 放射性廃棄物埋設用充填材 - Google Patents

放射性廃棄物埋設用充填材 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、使用済核燃料の再処理工程において生じる放射性廃棄物などを地下深部に埋設するいわゆる地層処分に関連し、特にこの地層処分に際して使用される埋め戻し材および緩衝材に関するものである。なお、本発明の説明において、便宜上、埋め戻し材と緩衝材を含めて充填材と云う。
【0002】
【従来の技術】
使用済核燃料の再処理工程から発生する高レベル放射性廃棄物の処分方法として、廃棄物をガラスに溶融してガラス固化体とし、これを地下深部に埋設して処分する計画が進められている。現在考えられている高レベル放射性廃棄物処分場は地上施設と地下施設によって構成されている。地上施設と地下施設は立坑や斜坑などによって接続され、地下施設には処分坑道が掘削されており、この坑道に放射性廃棄物が埋設される。廃棄物の定置方式としては坑道横置き方式と処分孔縦置き方式があり、処分後は坑道を埋め戻して地下施設を閉鎖する。
【0003】
上記廃棄物を安全に隔離するための埋設方法として、放射性廃棄物のガラス固化体をキャニスターで囲んで金属製収納容器(オーバパック)に封入し、さらにこの収納容器を緩衝材で包んで人工バリアを形成し、坑道は埋め戻し材によって充填し、これを地下深部の地層が囲む天然バリアからなる多重バリアシステムを構築している。
【0004】
これらの緩衝材および埋め戻し材は、地下水の侵入を抑止する止水機能と、将来、放射性核種が地下水中に漏洩したときに核種を吸着してその移行を阻止する吸着機能を有することが要求され、現在、緩衝材としては珪砂を混合したベントナイトが提唱されており、また埋め戻し材としてはベントナイトと掘削土の混合材が有力視され、それらの改良も進められている(例えば、特開平7−270597号公報など)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来のベントナイトを用いた緩衝材や埋め戻しは、ベントナイトの主成分であるスメクタイトが熱によってイライトに変質し、その性能が劣化する可能性がある。また、大量のベントナイトを必要とするので、これに代わる材料を確保できれば材料の選択範囲を広げることができる。本発明はベントナイトを主体とした緩衝材、およびこれを用いた埋め戻し材について、従来の上記問題を解決したものであり、ベントナイトの代替材料として火山ガラスに注目し、これをベントナイトに混合して用いることによって優れた放射性廃棄物埋設用充填材を達成したものである。
【0006】
【課題を解決する手段】
本発明によれば以下の構成からなる放射性廃棄物埋設用充填材が提供される。
〔1〕 放射性廃棄物を地下に埋設する際に用いる緩衝材または埋め戻し材(これらを充填材と略称する)であって、陽イオン交換性の膨張型粘土鉱物と、水砕処理して微細なクラックを形成した火山ガラスとを混合してなることを特徴とする放射性廃棄物埋設用充填材。
〔2〕陽イオン交換性膨張型粘土鉱物がベントナイトであり、火山ガラスが溶結凝灰岩粉であっる上記[1]に記載する放射性廃棄物埋設用充填材。
〔3〕ベントナイトに対する火山ガラスの重量比が50〜600%である上記[1]または上記[2]に記載する放射性廃棄物埋設用充填材。
〔4〕火山ガラスと共に鉱物質微粉末を含有し、鉱物質微粉末がフライアッシュである上記[1]〜上記[3]の何れかに記載する放射性廃棄物埋設用充填材。
〔5〕陽イオン交換性膨張型粘土鉱物と、水砕処理して微細なクラックを形成した火山ガラスと共に、掘削残土を混合してなる上記[1]〜上記[4]の何れかに記載する放射性廃棄物埋設用充填材。
〔6〕掘削残土に対するベントナイトと火山ガラスの混合材の重量比が25〜46%である上記[5]に記載する放射性廃棄物埋設用充填材。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明する。
本発明の放射性廃棄物埋設用充填材は、陽イオン交換性の膨張型粘土鉱物と微細なクラックを有する火山ガラスとを混合してなることを特徴とするものであり、また、この混合材料を掘削残土に混合してなることを特徴とするものである。陽イオン交換性の膨張型粘土鉱物と火山ガラスを混合した混合材料は緩衝材として好適であり、この混合材料を掘削残土に混合したものは埋め戻し材として好適である。
【0008】
本発明の充填材において、陽イオン交換性膨張型粘土鉱物とはベントナイトに代表される粘土鉱物である。この粘土鉱物は地下水等を吸収して膨張し、埋設環境の隙間を塞いで止水機能を発揮する。さらに、その陽イオン交換性によって放射性核種を吸着し、その拡散を防止する。この粘土鉱物はベントナイトを単独に用いてもよく、他の同種の粘土鉱物や焼成したバーミキュウライトなどを混合して使用してもよい。
【0009】
本発明の充填材は上記粘土鉱物と共に火山ガラスを含有する。ここで云う火山ガラスとは地熱を受けてスメクタイトを主成分とする変質鉱物を生成する鉱物である。従って、通常の火山ガラスのほかに上記粘土鉱物を生成する鉱物を含む。この火山ガラスを多く含む岩石として火砕流堆積物、火砕岩、泥岩、溶結凝灰岩などが挙げられる。火山ガラスは平均粒径0.1mm以下、好ましくは200メッシュ以下の微粉が適当であり、さらに、本発明の火山ガラスは微細なクラックを有するものである。微細なクラックを有することにより、地熱を受けて変質鉱物を生じやすく、充填材としての効果が向上する。微細なクラックを有するように火山ガラスを水冷破砕等の方法によってクラッシュして用いると良い。
【0010】
火山ガラスのベントナイト等の粘土鉱物に対する量比は50〜600%が適当である。火山ガラスの混合量がこの範囲より少ないと火山ガラスを用いた効果が不十分であり、一方、火山ガラスをこの範囲より多く混合すると相対的にベントナイト等の量が少なくなるので、埋設初期に火山ガラスが粘土鉱物に変質するまでの間、充填材の透水係数がやや大きくなる。
【0011】
火山ガラスと共に鉱物質微粉末を混合しても良い。鉱物質微粉末としてはフライアッシュ等を用いることができる。フライアッシュ等の混合量は火山ガラスに対し重量比で50〜200%が好ましい。フライアッシュ等の混合量がこれより多いと火山ガラスを用いた効果が低下するので適当ではない。フライアッシュを混合することによって充填材(緩衝材ないし埋め戻し材)を増量することができ、しかも止水機能等は実施的に低下しないので施工範囲を広げることができる。
【0012】
ベントナイト等と火山ガラスを混合したもの(火山ガラス混合材料)は緩衝材として好適であり、さらに、この火山ガラス混合材料を掘削残土に混合したものは埋め戻し材として好適である。この埋め戻し材の場合、掘削残土に対する火山ガラス混合材料の重量比は25〜46%が適当である。火山ガラス混合材料の量がこれより多いと経済的でない。また、火山ガラス混合材の量がこれより少ないと止水機構や吸着機能が不十分になる。
【0013】
【実施例】
〔実施例1〕火山ガラスの調製
二種類の火山ガラス(試料A、試料B)を用意した。試料Aは流紋岩質溶結凝灰岩中の暗緑色の火山ガラス(SiO2含有比71%)であり、試料Bはデイサイト質溶結凝灰岩中の黒色の火山ガラス(SiO2含有比65%)である。これらの溶結凝灰岩をハンマーで粉砕し、火山ガラスのみを選別した。選別した火山ガラスを200メッシュ程度に粉砕した。更に、これら試料の一部を水冷破砕処理した。水冷破砕法は、まず試料を金属容器に封入し、オーブンで900℃に加熱し、3時間その温度を維持した。これを15℃の水槽に入れて急冷した。次に、これらの試料を200メッシュの篩にかけて粒度調整を行った。水冷破砕処理した火山ガラス(No.A-1、No.B-1)と水冷破砕処理しないもの(No.A-0、No.B-0)を顕微鏡で観察したところ、水冷破砕処理したものには微細な魚鱗状の多数のクラックが形成されていることが確認された。
【0014】
〔実施例2〕火山ガラスの変質処理
実施例1で得た4種類の火山ガラス(No.A-1、No.A-1、No.B-0、No.B-1)を100℃に加熱して変質を確認した。試験方法は、まず火山ガラス100gと脱イオン処理した蒸留水100mlとをテフロン製反応容器に密封し、100℃に加熱して所定日数(30日、60日、90日、120日、150日、180日)保持し、水熱反応を行わせた。各試料のX線回折試験によって生成鉱物を同定し、ベントナイトの主要成分であるスメクタイトの生成を確認した。この結果を反応期間と共に表1に示した。何れの試料も90日後には粘土化してスメクタイトが生成しており、水冷破砕処理によって微細なクラックを形成したものはさらに早く60日経過後からスメクタイトが生成していることが確認された。この粘土化は岩質による明瞭な差は認められなかった。
【0015】
【表1】
Figure 0004096328
【0016】
〔実施例3〕埋め戻し材の調製
A種火山ガラスについて、破砕処理せずに変質していないもの(No.A-0-0)、破砕処理して変質していないもの(No.A-1-0)、破砕処理して変質しているもの(No.A-1-1)の3種類、B種火山ガラスについて、破砕処理せずに変質していないもの(No.B-0-0)、破砕処理して変質していないもの(No.B-1-0)、破砕処理して変質しているもの(No.B-1-1)の3種類を用い、これらの火山ガラスと、模擬掘削残土、およびベントナイトをそれぞれ表2に示す割合で混合して模擬埋め戻し材を調製した。掘削残土は礫(JISA 5005の砕石)と珪砂を等量混合したものを使用した。ベントナイトはクニゲルV1(商品名)を用いた。これらの試料をカラムに充填して透水試験に供した。透水試験は、カラムの乾燥密度を1.6g/cm3とし、このカラムに蒸留水が自然に浸透するまで加えてビニールで密封し、100℃の温度条件下で120日間放置した。次に、調製した混合物(模擬埋め戻し材)をカラムに乾燥密度1.6g/cm3で充填し、このカラムに大気圧中で蒸留水を流し、規格(JIS A 1218-1977)に規定される変水位透水試験法により透水係数を測定した。その結果を表2に示した。
【0017】
表2の結果から明らかなように、火山ガラスを混合した試料(No.1〜10)は何れも従来のベントナイトのみの火山ガラス未混合の比較試料(No.11)に比べて透水係数が同程度であり、従来の埋め戻し材と同等の止水性能を有することが確認された。また、水冷破砕処理によって微細なクラックを形成した試料は、破砕処理せずにクラックの無い試料に比べて何れも止水性能が向上しており、さらに水熱反応によってベントナイトの主要成分であるスメクタイトが生成しているものは止水性能がいっそう向上していることが確認された。また、火山ガラスの混合量は5〜30重量%が好ましく、ベントナイトの混合量は5〜10重量%が適当であることが判る。
【0018】
【表2】
Figure 0004096328
【0019】
〔実施例4〕埋め戻し材の調製
実施例3と同様の火山ガラス、模擬掘削残土、ベントナイト、およびフライアッシュを表3に示す量比に従って混合し、埋め戻し材を調製した。この透水性を測定して表3に示した。表3の結果から明らかなように、フライアッシュを混合したものはフライアッシュ未混合のものと同等の透水性を有しており、埋め戻し材として好適であることが確認された。
【0020】
【表3】
Figure 0004096328
【0021】
〔実施例5〕模擬埋め戻し材によるCsの吸着比較試験
表4に示す3種の埋め戻し材について、放射性廃棄物中に含まれている放射性核種の代表的核種である137Csの分配係数を次式(1)に従って測定した。
分配係数=固相中のCs濃度/液相中のCs濃度・・・(1)
まず、137Cs濃度が500Bq/mlおよび塩化カルシウム濃度0.1モル/lの溶液を用意し、この溶液に塩酸と水酸化カルシウムを適宜添加し、pH2・7・12に調製した。これらのpHの異なる4種類の溶液10mlに対して表4に示す埋め戻し材試料1gを接触させ、24時間経過後に固液分離し、液中の137Cs濃度を測定し、次式(2)に従って分配係数を算出した。式中、Kdは埋め戻し材試料の分配係数、Coは137Csの初期濃度(cpm/ml)、Ctは24時間経過後の液中の137Cs濃度(cpm/ml)、Vは液相の体積(ml)、Sは固相の重さ(g)である。この結果を表4に示した。また、表1の比較試料(No.11)についても同様の測定を行った。表4から明らかなように、火山ガラスを含む試料はこれを含まない試料と同等の137Cs吸着性能を有することが確認された。
Kd={(C0−Ct)/S}/(Ct/V)・・・・・(2)
【0022】
【表4】
Figure 0004096328
【0023】
【発明の効果】
本発明の放射性廃棄物埋設用充填材は、ベントナイトに代表される陽イオン交換性膨張型粘土鉱物に火山ガラスを混合したものであり、またこの混合物を掘削残土に混合したものである。放射性廃棄物を埋設した処分場は人工地熱系環境下にあると考えられ、一例として、埋設場所の地熱が数十年で100℃程度に上昇し、その後、次第に低下して一万年後には50℃程度になると考えられている。この処分場が深部地下水によって冠水すると廃棄物の放熱によって地下水が加熱されて熱水になる。本発明の充填材は、埋設後にこの地熱によって充填材の火山ガラスがスメクタイトを主体とする変質鉱物を生成して変質帯バリアを形成し、これが人工バリアと天然バリアの多重バリアを補強するので、放射性廃棄物埋設用充填材として高い信頼性を有する。

Claims (6)

  1. 放射性廃棄物を地下に埋設する際に用いる緩衝材または埋め戻し材(これらを充填材と略称する)であって、陽イオン交換性の膨張型粘土鉱物と、水砕処理して微細なクラックを形成した火山ガラスとを混合してなることを特徴とする放射性廃棄物埋設用充填材。
  2. 陽イオン交換性膨張型粘土鉱物がベントナイトであり、火山ガラスが溶結凝灰岩粉であっる請求項1に記載する放射性廃棄物埋設用充填材。
  3. ベントナイトに対する火山ガラスの重量比が50〜600%である請求項1または請求項2に記載する放射性廃棄物埋設用充填材。
  4. 火山ガラスと共に鉱物質微粉末を含有し、鉱物質微粉末がフライアッシュである請求項1〜請求項3の何れかに記載する放射性廃棄物埋設用充填材。
  5. 陽イオン交換性膨張型粘土鉱物と、水砕処理して微細なクラックを形成した火山ガラスと共に、掘削残土を混合してなる請求項1〜請求項4の何れかに記載する放射性廃棄物埋設用充填材。
  6. 掘削残土に対するベントナイトと火山ガラスの混合材の重量比が25〜46%である請求項5に記載する放射性廃棄物埋設用充填材。
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