JP4096242B2 - 表面プラズモン共鳴測定装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、少量のサンプルでKinetics測定可能な表面プラズモン共鳴装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
光学的なセンサー技術として表面プラズモン共鳴(SPR)が知られている。SPRは金属薄膜に光を照射して反射光をモニターし、金属薄膜上の屈折率の変化を検出する方法である。SPRはバイオ分野、環境分野、工業分野へ応用されており、表面に固定化した生体分子の相互作用解析、抗原抗体反応モニター、糖度モニターなどに用いられている。
【0003】
最近はバイオ分野の生体分子相互作用解析に注目が集まっており、SPRによるラベルフリーかつリアルタイム解析からKineticsデータを得る試みがなされている。平衡状態を評価するだけでなく、結合、解離、反応などの速度を解析したKineticsデータは生体分子の機能を明らかにする上で非常に有用な情報となる。
【0004】
サンプル中の測定対象物質が、金属表面上に固定化された物質と結合すると、表面近傍の測定対象物質の濃度が薄くなり、濃度勾配が生じる。Kineticsデータ測定においては、測定対象物質が吸着飽和するまで、表面に吸着する速度を経時的に測定する。その場合、表面の測定対象物質の濃度は一定である必要がある。表面の濃度が変動すると、正確なKineticsデータを得られないため好ましくない。
【0005】
濃度勾配を極力低減させる方法として、サンプル液を流し続ける方法や、攪拌する方法が一般的である。長時間にわたる測定の場合、サンプルを流し続けると、サンプルが多量に必要となる。
【0006】
今までにSPRの分析に必要なサンプル量を減らす努力がなされており、マイクロフルイディクス(微小流路)技術を導入し、シリンジポンプで低流速にてサンプルを注入する工夫がされている。それでも30分以上のKinetics測定にはたくさんのサンプル量が必要になる。
【0007】
また、サンプル液を往復させるオシレーションも効果的な手法である。しかし、流速方向を切り替える際の圧力変化がSPRシグナルに悪影響を与えるデメリットがある。
【0008】
攪拌する方法は機械的に複雑であり、攪拌の振動がSPRシグナルに悪影響を与える危険性が高い。また、サンプルの切り替え操作は煩雑かつ、サンプル量を減らすのは難しい。
【0009】
サンプルを循環させることで、一定量のサンプル液を流し続けることが可能であるが、一般的なSPRに用いられているサンプルインジェクト用のポンプはシリンジポンプであり、循環には適さない。
【0010】
現時点ではSPR装置によって長時間にわたるKineticsを測定するには、サンプルをできる限りゆっくり流すしか方法はない。しかし、極めて微小量の液を流すことのできるポンプは非常に高価であり、流速が遅すぎると形成される濃度勾配を破壊することができずKinetics測定には向かない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、少ないサンプル量で長時間Kinetics測定が可能なSPR装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討した結果、以下に示す手段により、上記課題を解決できることを見出した。
【0013】
1.Kinetics測定の可能な表面プラズモン共鳴(SPR)イメージング測定装置であって、サンプル入口からプランジャー径3.2mm以下の脈流抑制型シングルプランジャーポンプとフローセルを経て、出口までの総液量が73μl以上200μl以下であり、サンプルが該ポンプによって循環できることを特徴としたSPRイメージング測定装置。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。表面プラズモン共鳴(SPR)は金属に照射する偏光光束によってエバネッセント波が生じて表面ににじみだし、表面波である表面プラズモンを励起し、光のエネルギーを消費して反射光強度を低下させる。
【0019】
反射光強度が著しく低下する共鳴角は金属の表面に形成される層の厚みによって変化する。よって、金属の表面に調べられるべき物質あるいは物質の集合体を固定化し、サンプル中の物質あるいは物質の集合体との相互作用を共鳴角の変化、あるいはある角度での反射光強度の変化で検出可能である。SPRはラベル不要でリアルタイム評価が可能な定量法であり、主にバイオ分野において物質の機能や活性を評価する手法に興味が集まっており、Kineticsデータを得る試みがなされている。
【0020】
すなわち、SPRによって平衡状態を評価するだけでなく、結合、解離、反応などの速度を解析したKineticsデータを得て、生体分子の活性・機能に関する情報を得ることは非常に有用である。
【0021】
本発明は、少ないサンプル量で長時間Kinetics測定が可能なSPR装置を開示するものである。バイオ研究においては極微量のサンプル量しか確保できない場合が多く、できるだけ少ないサンプル量で、SPRによって有用な情報を得る必要がある。そのためには、SPR装置がサンプル入口から送液ポンプとフローセルを経て、出口までの総液量が200μl以下であることが好ましい。
【0022】
内部の容量を少なくすることで、微量のサンプルを循環できるようになる。内部容量よりわずかに多いサンプル量があれば、循環によって比較的高い流速にて、長時間にわたるKinetics測定が可能となる。
【0023】
蛋白質の場合、通常のKinetics測定ではSPRにインジェクトするサンプルの濃度は1μg/mlあるいはそれ以下であり、200μlのサンプル量は0.2μgに相当する。よって、1μgもあれば5回以上測定可能である。
【0024】
内部容量を減らす手段としてはデッドボリュームの少ない送液ポンプを使用する必要がある。ポンプとしてシングルプランジャーポンプ、マイクロギアポンプ、マイクロトロコイドポンプなどが挙げられるが、流量制御の安定性、価格の安さからシングルプランジャーポンプが好ましい。デッドボリュームの少ないシングルプランジャーポンプを得るためにはプランジャー径を小さくする技術が必要である。具体的にはプランジャー径が3.2mm以下であることが好ましい。
【0025】
また、通常のシングルプランジャーポンプは脈流があり、SPRシグナルに悪影響を与える。ダブルプランジャーポンプは無脈流を実現できるが、ポンプ内のデッドボリュームがシングルプランジャーポンプの2倍となる。そこで、脈流抑制機構のついたプランジャー径の小さいシングルプランジャーポンプが、デッドボリュームが少なく、脈流は軽微である。ここで言う脈流抑制機構は、プランジャーの動作を制御して、液を押し出すときは与えられた流量で押し出し、液を吸い込むときは一瞬で吸い込む機構である。
【0026】
また、この技術はSPRイメージングに特に有効である。SPRイメージングは金属表面全体に偏光光束を照射し、その反射像をモニターする方法であり、広い範囲にサンプル液を流す必要があるため、フローセル内の容量を極限まで減らすのが難しい。よって、速い流速でサンプル切り替えを迅速に行い、長時間のKineticsを測定するにはサンプルの循環が不可欠である。
本発明により、SPRイメージング測定において従来困難であった少量のサンプルによるKineticsの測定が可能となり、また、正確な測定値が得られるようになった。
【0027】
【実施例】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0028】
[実施例]
SPR装置としてSPRimager(GWC instruments社製)を用いた。送液ポンプにはプランジャー径2mmの脈流抑制機構付きシングルプランジャーポンプ022(フロム社製)を用いた。これらを内径0.067mmの1/16“PEEKチューブで接続した。
この場合のサンプル入口から送液ポンプとフローセルを経て、出口までの総液量を測定した。
【0029】
SPR像を観察しながら、8M尿素溶液を流量80μl/minで流し、屈折率の違いによるSPR像の変化を観察した。尿素溶液がフローセル内に到達してフローセル内が完全に尿素で満たされるまでに55秒を要した。よって総液量は73μlと計算でき、200μlよりも少ない。サンプル量が100〜150μlあれば、この回路内を循環させることができる。しかも流速は任意に取れ、100μl/minで長時間のKinetics測定も可能であり、少ないサンプルでより正確なKinetics値を得ることができる。
【0030】
また、SPR測定のアフィニティカーブの一例を図1に示す。この場合のSPRシグナルのノイズは、20程度であり、脈流による影響はほとんどないと思われた。
【0031】
[比較例]
SPR装置としてSPRimager(GWC instruments社製)を用いた。送液ポンプにはペリスターポンプP625/275(Instech社製)を用い、内径0.17mmの1/16“テフゼルチューブで接続した。
【0032】
この場合の総液量を実施例同様に測定したところ、流量200μl/minで1分45秒を要した。総液量は350μlで計算される。循環して測定するには400μlはサンプル量が必要である。
【0033】
この場合のSPR測定からの結果を図2に示す。SPRシグナルのノイズは100以上あり、脈流の影響を強く受けていると思われた。
【0034】
【発明の効果】
本発明により、ノイズが少なく長時間のKinetics測定も可能であり、少ないサンプルでより正確なKinetics値を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】脈流抑制型シングルプランジャーポンプを用いた場合のアフィニティカーブ(実施例)
【図2】ペリスターポンプを用いた場合のアフィニティカーブ(比較例)
Claims (1)
- Kinetics測定の可能な表面プラズモン共鳴(SPR)イメージング測定装置であって、サンプル入口からプランジャー径3.2mm以下の脈流抑制型シングルプランジャーポンプとフローセルを経て、出口までの総液量が73μl以上200μl以下であり、サンプルが該ポンプによって循環できることを特徴としたSPRイメージング測定装置。
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