JP4095202B2 - 振幅変調送信装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ディジタル信号処理による安定な振幅変調が行えるような振幅変調送信装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
振幅変調送信装置には、ディジタル信号処理により直接振幅変調電力を発生させる方式の振幅変調送信装置があり、例えば搬送波の周波数が531〜1602KHzの中波ラジオ放送機等によく用いられている。
【0003】
かかる中波ラジオ放送機に用いられている振幅変調送信装置では、まず、アナログ音声信号をローパスフィルタを通して入力してディジタル音声信号にA/D(アナログ−ディジタル)変換し、このディジタル音声信号により複数の電力増幅器を出力の重みづけに応じて切り換え、電力増幅器毎にディジタル音声信号により搬送波の振幅を制御し、各電力増幅器から出力された搬送波を合成し、高調波成分を取り除いてから最終的に合成された振幅変調波を出力する。
【0004】
この振幅変調波の出力電力及び変調度を適正なレベルにするためには、調整が必要であり、従来の装置では、A/D変換器の前のアナログ信号のDCバイアスを調整し、同時に変調度を適正に設定するためには入力アナログ信号レベルを変更する必要があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、かかる従来の振幅変調送信装置では、以下のような不都合な点がある。
【0006】
まず、第1に、入力されたアナログ音声信号の信号レベルが2つのディジタル値の変わり目になったとき、ディジタル値の1ビット分が確定せず、これがディジタル雑音となって現れる。このディジタル雑音の出現確率は、アナログ音声信号に微少な雑音が重畳している場合に、より高くなる。
【0007】
ローパスフィルタの出力側に雑音が発生すると、この雑音は、音声周波数以上の周波数成分を含むため、各電力増幅器は、高い周波数の雑音で制御されることになる。このため、各電力増幅器は、過渡応答の悪い領域での動作を強いられることとなる。このような状態で、例えばA/D変換器の出力が、16進数で7FFから800への変化点では、12ビットの全てのビットに雑音の影響が現れる。ここで、過渡応答の悪い領域で多数の電力増幅器が切り換えられることになる。このため、本来の雑音による影響と、過渡応答による影響とが加わり、信号対雑音比の低下を招く。
【0008】
第2に、出力の調整と、変調度の調整とは別になっている。そのため、出力電力の調整を行う毎に変調度の調整を行わなければならない。即ち、出力電力を調整する手段として、A/D変換器の入力または、基準電圧入力に直流電圧を加算する方法では、例えば、前記A/D変換器が12ビットであり、前記A/D変換器の入力電圧が5Vのときに前記A/D変換器の出力ディジタル値が最大の4095であり、無変調時の出力電力が100Wに相当する前記A/D変換器の出力ディジタル値を1850とした場合、出力101Wのディジタル値は、(√101/√100)×1850=1859となり、100W付近で1WあたりのA/D変換器入力換算電圧は、5/4095×(1859−1850)=約11mVとなり、非常に微小電圧となる。このため、DCバイアスは温度に対して電圧が変化しない安定度の良いものにするとともに、外部要因による変動を極力押さえる必要がある。また、出力電力の変化カーブは一義的にDCバイアス電圧の発生に依存するため、変化カーブの設定の自由度が少ないという問題があった。
【0009】
また、DCバイアスは音声信号の振幅電圧とは独立して動作するため、前記DCバイアス電圧を変えると、出力における振幅変調波の変調度が変化してしまうという欠点がある。例えば、図2は100W出力時に100%振幅変調をしたときの変調波形を示す説明図であり、図3は出力が50WになるようにDCバイアスを調整したときの振幅変調波の波形を示す説明図である。
このとき、出力電力を変えるためDCバイアスを調整すると変調度が変化してしまい、図3の例では過変調の状態になっていることを示している。したがって、DCバイアスを調整することによる出力電力調整では、そのたびに変調度を一定にするため、音声信号の入力レベルを調整しなければならないという問題があった。
【0010】
第3に、上述のように、電源電圧の変動による出力電力変動を吸収する手段として、A/D変換器の入力または、基準電圧入力に電源電圧の変動を加減算する方法では、電源電圧の変動が音声信号の振幅電圧とは独立しているため、出力における振幅変調波の変調度が変化してしまうという問題がある。例えば、図4は定常電源電圧時における100%振幅変調の変調波形であり、図5は電源電圧を+10%上昇させ、出力電力補償をしないときの100%振幅変調波形である。図5の波形の電圧成分は図4に比べて10%増加しているので、出力電力では電圧の二乗比例であるから21%増加してしまう。図6は図5の状態を従来方法により出力電力補償をした場合の変調波形であり、変調度が変化し、過変調状態になってしまうことを示している。
【0011】
また、複数の電力増幅器に供給する電圧が例えば、200V非安定電源と15V安定化電源から供給されている場合、入力電源電圧の変動は非安定電源の200Vにのみ影響をする。そのため、従来方式のものでは、電源電圧の変動と振幅変調出力が完全な比例関係にはならず、変調波形歪みが発生する。
【0012】
図7は、このことを示す説明図である。
この図7に示すように非安定電源の電圧が変動すると、出力された振幅変調波に歪みが生じている。
従って、所定の変調度及び出力電力が得られるように安定した振幅変調が行えるようにするためには、これらの不都合な点を解消する必要がある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は以上の課題を解決するため、次の構成を採用する。
〈構成1〉
請求項1の発明に係る振幅変調送信装置は、音声信号をディジタル化するA/D変換器と搬送波を所定出力に増幅する複数の電力増幅器と前記電力増幅器出力を合成する合成手段とを備え、前記A/D変換器の出力ディジタルデータに応じて、前記電力増幅器の個数あるいは出力を切り換えて、前記合成出力に振幅変調電力を得る振幅変調送信装置において、前記A/D変換器の出力ディジタルデータから、A/D変換に伴う不確定な雑音を取り除く雑音除去手段を備えるようにした。
【0014】
〈構成2〉
請求項2の発明に係る振幅変調送信装置では、前記雑音除去手段が、前記A/D変換器の出力ディジタルデータの現データと前データとの差分の大きさをディジタルデータの変化量として算出する変化量算出手段と、該変化量算出手段により算出された変化量を所定値と比較し、変化量が所定値を超えているときは信号成分の変化と判定し、変化量が所定値以下の場合は雑音と判定する判定手段と、
該判定手段が信号成分の変化と判定したときは上記現データを出力し、前記判定手段が雑音と判定したときは上記前データによって現データを置き換える、出力選択手段と、を備えて構成されている。
【0015】
〈構成3〉
請求項3の発明に係る振幅変調送信装置は、音声信号をディジタル化するA/D変換器と搬送波を所定出力に増幅する複数の電力増幅器と前記電力増幅器出力を合成する合成手段とを備え、前記A/D変換器の出力ディジタルデータに応じて、前記電力増幅器の個数あるいは出力を切り換えて、前記合成出力に振幅変調電力を得る振幅変調送信装置において、ディジタルデータを入力して前記振幅変調電力の平均値を設定する出力設定手段と、該出力設定手段のディジタルデータに対応して前記A/D変換器の出力ディジタルデータを変換するデータ変換手段とを備え、前記出力設定手段の設定値と前記振幅変調電力の平均値の関係を任意の出力設定カーブで設定するようにした。
【0016】
〈構成4〉
請求項4の発明に係る振幅変調送信装置は、音声信号をディジタル化するA/D変換器と搬送波を所定出力に増幅する複数の電力増幅器と前記電力増幅器出力を合成する合成手段と、前記複数の電力増幅器に所定の電圧を供給する電源とを備え、前記A/D変換器の出力ディジタルデータに応じて、前記電力増幅器の個数あるいは出力を切り換えて、前記合成出力に振幅変調電力を得る振幅変調送信装置において、前記電源電圧の変動にかかわらず振幅変調波の変調度及び平均電力を一定に保つように出力電力の補償を行う電力補償手段を備えるようにした。
【0017】
〈構成5〉
請求項5の発明に係る振幅変調送信装置では、前記電力補償手段が、前記電源の電圧をディジタル化する第2のA/D変換器と、該第2のA/D変換器によりディジタル化された電源電圧データに基づいて、該電源電圧の定格電圧に対する変動量を演算する変動量演算手段と、該変動量演算手段により演算された電源電圧の変動量に基づいて、前記第1のA/D変換器によりディジタル化されたデータを、所定の平均出力電力及び所定の変調度の振幅変調波を得る関係に変換するデータ変換手段と、を備えて構成されている。
【0018】
〈構成6〉
請求項6の発明に係る振幅変調送信装置では、前記電源が、異なる電圧を有する複数の電源によって構成され、前記第2のA/D変換器、変動量演算手段及びデータ変換手段を各電源毎に備えるようにように構成されている。
【0019】
〈構成7〉
請求項7の発明に係る振幅変調送信装置では、前記電源が、安定化電源と非安定な電源とが混在した複数の電源によって構成され、前記第2のA/D変換器、変動量演算手段及びデータ変換手段を非安定な電源毎に備えるように構成されている。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を具体例を用いて説明する。
〈具体例1〉
具体例1は、振幅変調送信装置において、アナログ音声信号のA/D変換に伴うディジタル雑音を取り除くようにしたものである。
【0021】
図1は、本発明に係る振幅変調送信装置の具体例1の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、入力端子INから出力端子OUTまで順次、ローパスフィルタ(以後、「LPF」と記す)11、A/D変換器12、雑音遮断器13、切換器14、電力増幅部15、合成器16及びバンドパスフィルタ(以後、「BPF」と記す)17が接続されている。
【0022】
かかる振幅変調送信装置は、中波ラジオ放送機等に用いられ、以下の具体例では、その場合について説明する。但し、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0023】
以下、各構成について説明する。
電力増幅部15は、搬送波をディジタル信号処理方式により処理して振幅変調電力を発生させるものである。n(n≧1)個の電力増幅器15−1〜15−nは、それぞれ別々に、切換器からの信号に応じて制御され、搬送波信号で励振されて高能率電力増幅する。各電力増幅器出力は、それぞれの重み付けにしたがって、次段の合成器16によって直列加算されるように構成されている。
【0024】
なお、振幅変調送信装置には、例えば200V、100V、15Vというように、電力増幅器15−1〜15−nの出力レベルに応じて異なる電圧の電源(図示せず)が備えられ、この電源電圧が出力レベルに応じてそれぞれ、各電力増幅器15−1〜15−nに印加される。
【0025】
LPF11は、アナログ音声信号の音声周波数以上をカットして音声周波数帯の信号のみを通過させるフィルタである。
A/D変換器12、雑音遮断器13及び切換器14には、搬送波に同期したサンプリング信号が入力される。
【0026】
A/D変換器12は、サンプリング信号の周期でアナログ音声信号をサンプリングし、ディジタル音声信号に変換する。
雑音遮断器13は、A/D変換器12によってA/D変換されたディジタル音声信号から不確定なディジタル雑音を取り除く雑音除去手段であり、その構成については後述する。
【0027】
切換器14は、サンプリング信号の周期で雑音遮断器13から出力されたディジタル値に基づいて電力増幅器15−1〜15−nに対する切換制御信号を生成するものである。
【0028】
合成器16は、各電力増幅器15−1〜15−nによって高能率電力増幅された各電力増幅器からの電力を重み付け合成し、合成出力として振幅変調電力を得る合成手段である。
BPF17は、合成器16により加算合成された振幅変調波から高調波成分を取り除き、最終的に送信する振幅変調波を出力するものである。
【0029】
次に雑音遮断器13の構成について説明する。
図8は、雑音遮断器13の構成を示すブロック図である。
A/D変換器12には、D型フリップフロップ(以後、「DFF」と記す。)21,22が順次接続されている。このDFF21,22は、サンプリング信号が入力されてディジタル音声信号をラッチし、次のサンプリング信号が入力されたときに、ラッチしたディジタル音声信号を出力する。DFF21,22から出力されたディジタル音声信号が、それぞれ現データ、前データとなる。
【0030】
減算器23は、DFF21及びDFF22から出力されたディジタル音声信号の現データと前データとを入力し、その差を演算する。
絶対値演算器24は、減算器23に接続され、減算器23によって演算された現データと前データとの差の絶対値をディジタル音声信号の変化量として演算する。
この減算器23と絶対値演算器24とが変化量算出手段に相当する。
【0031】
比較器25は、所定値及び絶対値演算器24によって演算された現データと前データとの差の絶対値を入力し、このディジタル音声信号の差の絶対値(ディジタル音声信号の変化量)と所定値とを比較してこのディジタル音声信号の変化が信号成分の変化なのか、A/D変換に伴う不確定なディジタル雑音なのかを判定する判定手段である。なお、この所定値は、ディジタル雑音を判別できるように、ディジタル雑音のピーク値を予想して予め設定された値である。比較器25は、ディジタル音声信号の変化量が所定値を超えたときは信号成分の変化と判定してデータ「0」(ローレベル)を出力し、超えなかったときはディジタル雑音と判定してデータ「1」(ハイレベル)を出力する。
【0032】
インバータ26はサンプリング信号を反転出力するものであり、ANDゲート27は、比較器25の比較結果に基づいてサンプリング信号の反転信号のDFF22への入力を制御するゲートである。
【0033】
セレクタ28は、比較器25の比較結果に応じてDFF21又はDFF22から出力されたディジタル音声信号を選択出力する出力選択手段であり、比較結果が「0」のときはDFF21の出力値、即ちディジタル音声信号の現データを、「1」のときはDFF22の出力値、即ちディジタル音声信号の前データを選択出力する。
【0034】
〈動作〉
入力端子INから入力されたアナログ音声信号の音声周波数以上はLPF11によって遮断され、音声周波数帯のアナログ音声信号がA/D変換器12に入力される。このアナログ音声信号はサンプリング信号がA/D変換器12に入力される毎にA/D変換器12によってサンプリングされ、ディジタル音声信号に変換され、雑音遮断器13に入力される。
【0035】
なお、データの飛び越しを考慮してA/D変換器12、雑音遮断器13及び切換器14に入力されるサンプリング信号の周波数をアナログ音声信号と比較して十分に高く設定しておく。
【0036】
一般的な中波ラジオ放送機において用いられる音声信号は、50Hz〜7.5KHzとして規定され、搬送波の帯域は531KHz〜1602KHzとなっている。
【0037】
例えば50Hz程度の低い周波数では、変化がなだらかな変調の“山”あるいは“谷”で予想したディジタル雑音のピーク値に相当する値の分だけ、データの飛び越しが発生するが、サンプリング信号の周波数を音声信号と比較して十分高く設定しておけば、音声信号の周波数が低いときほど、一周期のサンプリング数が多くなり、データの飛び越しによる変調ひずみの影響は微小になる。
【0038】
また、音声信号の周波数が高くなれば、逆に一周期のサンプリング数が少なくなり、変調の“山”あるいは“谷”におけるデータの変化量が大きくなるため、データの飛び越しは発生しない。
【0039】
雑音遮断器13では、サンプリング信号が入力される毎に、A/D変換器12によってサンプリングされたディジタル音声信号がDFF21によってラッチされる。このDFF21によってラッチされたディジタル音声信号は、その後、ANDゲート27から「1」が出力されたときにDFF22によってラッチされる。
【0040】
DFF21及びDFF22から出力されたディジタル音声信号は、減算器23に入力され、ディジタル音声信号の現データと前データとの差が演算され、さらに絶対値演算器24によりその絶対値が演算され、これによりディジタル音声信号の変化量が検出される。
【0041】
このディジタル音声信号の変化量は、比較器25により所定値と比較され、ディジタル音声信号の変化が信号成分の変化か、ディジタル雑音かが判定される。
前述のようにこの所定値は、ディジタル雑音のピーク値を予想して予め設定され、比較器25による比較の結果、ディジタル音声信号の変化量が所定値を超えているときは、信号成分の変化と判定されて比較器25から「0」が出力される。
このときは、DFF21から出力されたディジタル音声信号の現データがセレクタ28により選択されて出力される。
【0042】
次にアナログ音声信号が、A/D変換するディジタル値のちょうど切り換わりレベルである場合、A/D変換されたディジタル値の1ビットが不確定となり、この1ビットがディジタル雑音となって現れる。ディジタル音声信号の変化がディジタル雑音によるものであるときは、ディジタル音声信号の変化量は所定値を超えなくなる。
【0043】
ディジタル音声信号の変化量が所定値を超えなかったときは、比較器25から「1」が出力され、セレクタ28はDFF22側に切り換えられる。そして、DFF22によってラッチされたディジタル音声信号の前データがセレクタ28により選択されて出力される。
【0044】
なお、比較器25から「0」が出力されたとき、インバータ26の出力が「1」になってもANDゲート27の出力は「0」となるので、DFF21から出力されたデータはDFF22によってラッチされない。即ち、ディジタル雑音がDFF22にラッチされることはなく、DFF22には信号成分のみがラッチされる。従って、比較器25から「0」が出力されている間、DFF22からは信号成分のみがディジタル音声信号の前データとして継続して出力されることになる。
【0045】
雑音遮断器13から出力されたディジタル音声信号は切換器14に入力され、このディジタル音声信号に基づいてサンプリング周期で切換制御信号が生成され、出力の重みづけに従ってこの切換制御信号により各電力増幅器15−1〜15−nの出力搬送波電力が切り換えられる。ディジタル音声データに応じて選択された電力増幅器の出力には、そのデータに応じた振幅の搬送波電力が出力され、切換え制御されたすべての電力増幅器の出力を合成器16によって合成加算することにより合成出力として振幅変調電力が得られる。さらにBPF17により高調波成分がカットされ、出力端子OUTから最終的な振幅変調波が出力される。
【0046】
〈具体例1の効果〉
以上説明したように具体例1によれば、A/D変換されたディジタル値の変化が小さいときは、A/D変換に伴う不確定なディジタル雑音と判定してその出力が遮断され、ディジタル音声信号の前データが出力されるので、ディジタル雑音を効果的に除去することができる。
【0047】
また、中波ラジオ放送機にこの振幅変調送信装置を用いた場合、この装置内での信号対雑音比の劣化を防止できる。
さらに雑音遮断器13において、ディジタル雑音と判定されたときは、DFF22によってラッチされたデータが更新されないようになっているので、ディジタル雑音ではないと判定されるまで継続してディジタル音声信号の前データを出力することができる。
【0048】
〈具体例2〉
具体例2は、A/D変換されたディジタル音声信号を、予め設定された振幅変調波の出力電力ラインに従って変換するようにしたものである。
【0049】
図9は、具体例2の構成を示すブロック図である。
具体例2では、A/D変換器と切換部との間に出力調整器31を接続する。なお、具体例1と同一要素については同一符号を付して説明は省略する。
【0050】
この出力調整器31は予め設定された振幅変調波の出力電力ラインに従ってディジタル音声信号を変換する出力調整手段である。そして、この出力調整器31に例えばディジタル出力のロータリースイッチを接続し、ロータリースイッチからこの出力調整器31に出力電力設定値をディジタル値で入力する。
【0051】
図10は出力調整器31の構成を示す図である。
この図10に示すように、出力調整器31は電力に応じて出力を調整するための変換テーブルを記憶したROM(リード・オンリー・メモリ)32によって構成されている。
【0052】
そして、ROM32への入力を上位アドレスと下位アドレスとに分け、ロータリースイッチからの出力電力設定値をROM32の上位アドレスとして入力し、A/D変換器12からのディジタル音声信号を下位アドレスとして入力する。
【0053】
図11はROM32に記憶されている変換テーブルの一例を示す説明図である。
図中、上欄はロータリースイッチから入力された出力電力設定値を示し、右欄はA/D変換器12から入力されたディジタル音声信号を示し、変換テーブル内の数値は変換後のディジタル音声信号を示す。
なお、具体例2では、ディジタル音声信号を12ビットのオフセットバイナリデータ、出力電力設定値を5ビットのバイナリデータとして説明する。
【0054】
〈動作〉
アナログ音声信号は、A/D変換器12により12ビットのディジタル音声信号に変換され、このディジタル音声信号は、出力調整器31のROM32に下位アドレスとして入力される。また、出力電力設定値は、ロータリースイッチからROM32に上位アドレスとして5ビットのバイナリデータで入力される。
そしてディジタル音声信号に対して、図11に示すような変換テーブルに基づいて出力の調整が行われる。
【0055】
ディジタル音声信号は12ビットなので、図11に示すように下位アドレスは4096ステップとなる。従って、ディジタル音声信号の中央値“2047”が無信号時の入力値となり、ディジタル音声信号はこの中央値“2047”を中心としてディジタル値“0”から“4095”の範囲内で変化する。
【0056】
また、出力電力設定値は5ビットなので、0〜31までの32ステップとなる。
このROM32の変換テーブルは、例えば100W出力時の出力電力設定値を“31”としてこの出力電力設定値に対し、変換後のディジタル値が比例するように設定される。
【0057】
この変換テーブルに基づいて、出力電力を100Wに設定するときは、ロータリースイッチを回して外部から出力調整器31に出力電力設定値“31”を入力する。
【0058】
この出力電力設定値“31”が入力されたとき、ディジタル音声信号の中央値“2047”は“1850”に変換され、100%振幅変調時の最大値は“3700”となり、最小値は“0”となる。これにより、ディジタル音声信号は“0”から“3700”の範囲で振幅することになる。
【0059】
同様に、100W出力時の出力電力設定値を“31”として出力電力設定値が“10”に設定されたとき、ディジタル音声信号の中央値“2047”は“1000”に変換され、100%振幅変調時の最大値は“2000”となり、最小値は“0”となる。
【0060】
ここで、出力電力はこのディジタル値の2乗に比例するから、変換されたディジタル値が“1000”のときの出力電力Wは、
になる。
【0061】
このように、ディジタル音声信号の中央値の変換は無変調時の出力電力の決定を意味し、従来技術におけるA/D変換器の入力にバイアス電圧を加算したのと同じになる。
また、出力電力設定値に対して、変換するディジタル値が比例するように変換テーブルが設定されているので、出力電力を変えても変調度は変化しない。
【0062】
このように出力調整されたディジタル音声信号は出力調整器31から切換器14に入力され、具体例1と同様に切換器14により制御信号に変換され、電力増幅部15において、高能率増幅によって制御信号に応じた搬送波電力を出力し、合成器16による重み付け直列加算され、BPF17によって高調波成分がカットされたのち、最終的な振幅変調波が出力端子OUTから出力される。
【0063】
〈具体例2の効果〉
以上説明したように具体例2によれば、A/D変換されたディジタル音声信号を出力電力設定値に基づいて変換し、出力調整するようにしたので、所望の出力電力に調整することができる。
【0064】
また、調整に起因する変調度の変化をなくすこともできる。
このため、特にかかる振幅変調送信装置を中波ラジオ放送機に用いた場合、調整が簡便となるとともに、温度、外部要因等に対し、出力を安定化させることができる。
【0065】
また、出力電力設定値をディジタル出力のロータリースイッチを用いて入力するようにしたので、所望の出力電力設定値を遠隔操作により容易に設定することができる。
【0066】
また、どの出力電力設定値に設定しても、ディジタル音声信号に対して変換値が比例するように変換テーブルを設定したので、変調度を変化させずに出力電力を変えることもできる。
【0067】
なお、所望のカーブに従って出力電力設定値を設定することもできる。
図12は、出力電力設定値の設定例を示す説明図である。
図12に示すように出力電力設定値を5ビットで設定すると、出力電力設定値はこの変換カーブに従って“0”から“31”の数値範囲で設定される。
【0068】
〈具体例3〉
具体例3は、ディジタル音声信号を所定の電源電圧に応じて出力レベルを調整するようにしたものである。
【0069】
図13は、具体例3の構成を示すブロック図である。
具体例3では、図13に示すようにA/D変換器12と切換器14との間に電力補償手段としての電力補償部41を介装し、電力補償部41に電源電圧を入力する。
【0070】
図14は電力補償部41の構成を示すブロック図である。
A/D変換器42は、電力増幅部15の電源電圧を入力してこの電源電圧をディジタル値に変換するものである。なお、A/D変換器12,42がそれぞれ第1のA/D変換器、第2のA/D変換器に相当する。
【0071】
演算器43は、A/D変換器42によってA/D変換された電源電圧に基づいて電源電圧の変動量を演算する変動量演算手段である。
ROM44は、A/D変換器42からディジタル音声信号を下位アドレスとして入力し、A/D変換器42から電源電圧の変動分を上位アドレスとして入力し、出力電力の補償を行うための制御信号を出力するデータ変換手段である。
【0072】
図15は、ROM44に記憶されている変換テーブルの一例を示す説明図である。
図中、上欄は電源電圧の変動量のディジタル値を示し、左欄はA/D変換器12から入力されたディジタル音声信号を示し、変換テーブル内の数値は変換後のディジタル音声信号を示す。具体例3では、具体例2と同様にディジタル音声信号を12ビットのオフセットバイナリデータとして説明する。その変換内容については後述する。
なお、具体例1と同一要素については同一符号を付して説明は省略する。
【0073】
〈動作〉
電力増幅部15の電源電圧はA/D変換器42によってA/D変換され、このディジタル化された電源電圧に基づいて定格電圧に対する変動量が演算器43により演算される。
【0074】
具体例3では、電源電圧が200V±20V(10%)であって、この電源電圧の変動量を7ビットのバイナリデータに変換するものとする。即ち、電源電圧が200V±20Vであるときは、その最大変動量は±20Vとなり、電源電圧が180Vのとき、その変動量は“0”、電源電圧が220Vのときは、その変動量は“127”として演算される。即ち、実際の電源電圧の変動量は0〜127の範囲内のディジタル値で表される。
【0075】
電源電圧の変動量のディジタル値1ステップあたりの出力電力Vstepは、電源電圧の最大変動量が40Vとなるから、
Vstep=40V/127=約0.315V
となり、これにより約0.315Vステップで出力電力の補償が行われる。
【0076】
また、電源電圧200Vで100W付近における1ステップあたりの電力Wstepは、
となる。
【0077】
電源電圧が定格電圧200Vのときは、電源電圧の変動量は“63”となる。このとき、ディジタル音声信号の中央値“2047”はデータ“B2047”に変換される。
電源電圧が180Vのときは、電源電圧の変動量は“0”となる。このとき、ディジタル音声信号の中央値“2047”はデータ“A2047”が変換される。
同様にして電源電圧が220Vのときは、電源電圧の変動量は“127”となり、ディジタル音声信号の中央値“2047”はデータ“C2047”に変換される。
【0078】
このように変換されたデータは電力補償部41から切換器14に出力され、このデータに基づいて切換器14により各電力増幅器15−1〜15−nが切り換えられる。
【0079】
そして、例えばデータが“B2047”のときは、電源電圧が200Vで変調度が変わることなく、しかも100%変調時の出力電力100Wが得られるように各電力増幅器15−1〜15−nが切り換えられる。
【0080】
同様にしてデータが“A2047”のときは、このデータ“A2047”によって100Wの出力が得られるような後段の電力増幅器15−1〜15−nの組み合わせが指示され、電源電圧が180Vであっても変調度及び出力電力が一定の変調波が得られるようになる。
【0081】
同様にしてデータが“C2047”のときは、電源電圧が220V時、変調度及び出力電力を一定に保ったままで振幅変調波が得られるように各電力増幅器15−1〜15−nが切り換えられる。
【0082】
そして具体例1と同様に電力増幅部15において、高能率増幅によって制御信号に応じた搬送波電力を出力し、合成器16による重み付け直列加算され、BPF17によって高調波成分がカットされたのち、最終的な振幅変調波が出力端子OUTから出力される。
【0083】
〈具体例3の効果〉
以上説明したように具体例3によれば、電源電圧の変動量に基づいて、振幅変調波の出力補償を行うようにしたので、電源電圧が変化しても変調度を変化させずに出力電力を一定に保つことができ、特に中波ラジオ放送機として本装置を用いれば、中波ラジオ放送機の性能が向上する。
【0084】
なお、具体例3では、200Vの電源電圧に対して電力補償を行う場合について説明したが、振幅変調送信装置では、前述のように複数の電源電圧が混在しており、この場合、各電源電圧に対してこのような電力補償を行うようにすればよい。
【0085】
例えば、15V、100V、200Vの電源が混在している場合、15V、100V、200Vの電源電圧に対し、電力補償部を備えるようにする。
このうち、15Vの電源が安定化電源であり、100V、200Vの電源が非安定の電源である場合、100V、200Vの電源電圧に対してこのような電力補償を行うこともできる。
【0086】
このように構成すれば、非安定な電源の電圧に変動があった場合でも、変調直線性を損なわないように補償することが可能となり、かつ各電源電圧が独立に変動しても、変調度及び出力電力を一定に保つことができるので、このような電源の電圧変動に起因する波形歪みを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る振幅変調送信装置の具体例1の構成を示すブロック図である。
【図2】従来の100W/100%変調時の変調波形を示す説明図である。
【図3】従来の50W/100%変調時の変調波形を示す説明図である。
【図4】定常電源電圧における100%変調時の変調波形を示す説明図である。
【図5】従来の電源電圧+10%上昇時における100%変調時の変調波形を示す説明図である。
【図6】電源電圧が定常電圧よりも10%上昇したときに従来の方法により出力電力補償をした場合の100%振幅変調時の変調波の波形を示す説明図である。
【図7】非安定電源が混在している場合に、電源電圧が変動したときの振幅変調波の出力を説明するための説明図である。
【図8】具体例1の雑音遮断器の構成を示すブロック図である。
【図9】本発明に係る振幅変調送信装置の具体例2の構成を示すブロック図である。
【図10】具体例2の出力調整器の構成を示すブロック図である。
【図11】具体例2のROMに記憶されている変換テーブルの一例を示す説明図である。
【図12】具体例2の出力電力設定値の設定例を説明するための説明図である。
【図13】本発明に係る振幅変調送信装置の具体例3の構成を示すブロック図である。
【図14】具体例3の電力補償部の構成を示すブロック図である。
【図15】具体例3のROMに記憶されている変換テーブルの一例を示す説明図である。
【符号の説明】
12,42 A/D変換器
13 雑音遮断器
15 電力増幅部
23 減算器
24 絶対値演算器
25 比較器
28 セレクタ
31 出力調整器
32,44 ROM
41 電力補償部
43 演算器
Claims (5)
- 音声信号をディジタル化するアナログ・ディジタル変換器(以下、A/D変換器という)と搬送波を所定出力に増幅する複数の電力増幅器と前記電力増幅器出力を合成する合成手段とを備え、前記A/D変換器の出力ディジタルデータに応じて、前記電力増幅器の個数あるいは出力を切り換えて、前記合成出力に振幅変調電力を得る振幅変調送信装置において、
前記A/D変換器の出力ディジタルデータから、A/D変換に伴う不確定な雑音を取り除く雑音除去手段を備え、
前記雑音除去手段は、前記A/D変換器の出力ディジタルデータの現データと前データとの差分の大きさをディジタルデータの変化量として算出する変化量算出手段と、
該変化量算出手段により算出された変化量を所定値と比較し、変化量が所定値を超えているときは信号成分の変化と判定し、変化量が所定値以下の場合は雑音と判定する判定手段と、
該判定手段が信号成分の変化と判定したときは上記現データを出力し、前記判定手段が雑音と判定したときは上記前データによって現データを置き換える、出力選択手段と、を備えて構成されたことを特徴とする振幅変調送信装置。 - 音声信号をディジタル化するアナログ・ディジタル変換器(以下、A/D変換器という)と搬送波を所定出力に増幅する複数の電力増幅器と前記電力増幅器出力を合成する合成手段とを備え、前記A/D変換器の出力ディジタルデータに応じて、前記電力増幅器の個数あるいは出力を切り換えて、前記合成出力に振幅変調電力を得る振幅変調送信装置において、
前記A/D変換器から出力されるディジタル音声信号を前記振幅変調電力の設定出力値に従って調整する出力調整手段を備え、
前記出力調整手段は、任意の出力設定カーブに基づく前記振幅変調電力の設定出力値と出力調整量との対応関係を示す変換テーブルを備え、前記振幅変調電力の設定出力値に対応する出力調整量で前記ディジタル音声信号の出力を調整することを特徴とする振幅変調送信装置。 - 音声信号をディジタル化する第1のアナログ・ディジタル変換器(以下、A/D変換器という)と搬送波を所定出力に増幅する複数の電力増幅器と前記電力増幅器出力を合成する合成手段と、前記複数の電力増幅器に所定の電圧を供給する電源とを備え、前記A/D変換器の出力ディジタルデータに応じて、前記電力増幅器の個数あるいは出力を切り換えて、前記合成出力に振幅変調電力を得る振幅変調送信装置において、
前記電源電圧の変動にかかわらず振幅変調波の変調度及び平均電力を一定に保つように出力電力の補償を行う電力補償手段を備え、
前記電力補償手段は、前記電源の電圧をディジタル化する第2のA/D変換器と、
該第2のA/D変換器によりディジタル化された電源電圧データに基づいて、該電源電圧の定格電圧に対する変動量を演算する変動量演算手段と、
該変動量演算手段により演算された電源電圧の変動量に基づいて、前記第1のA/D変換器によりディジタル化されたデータを、所定の平均出力電力及び所定の変調度の振幅変調波を得る関係に変換するデータ変換手段と、を備えて構成されたことを特徴とする振幅変調送信装置。 - 前記電源は、異なる電圧を有する複数の電源によって構成され、前記第2のA/D変換器、変動量演算手段及びデータ変換手段を前記電源毎に備えるように構成されたことを特徴とする請求項3に記載の振幅変調送信装置。
- 前記電源は、安定化電源と非安定な電源とが混在した複数の電源によって構成され、前記第2のA/D変換器、変動量演算手段及びデータ変換手段を非安定な電源毎に備えるように構成されたことを特徴とする請求項3に記載の振幅変調送信装置。
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- 1999-05-27 JP JP14742299A patent/JP4095202B2/ja not_active Expired - Lifetime
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