JP4093761B2 - モルタル用ドリルねじ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、モルタル用ドリルねじに関し、詳しくは少なくとも裏面に木質層を有したモルタル層の表面に壁面構成用部材を止着する場合に使用されるモルタル用ドリルねじに関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、モルタル壁ないしは繊維補強セメント製板材で形成された無機質壁面を更生する場合に、その工法として、図10に示すように、既設壁面1の表面に胴縁2を固定し、その胴縁2に新規無機質壁板3を貼りつけて行き、老朽化した壁面1を除去することなくそのままにして壁面を更生する工法がある。
【0003】
この工法を実施する場合、既設壁面1の表面に固定される胴縁2は、既設壁面1のモルタル層あるいはセメント層のみに釘やビスなどの止着具を係止したのでは止着力が得られず、既設壁面1のモルタル層を支持しているその下地層まで止着具を到達させて係止力を確実化する必要がある。
【0004】
そのための従来工法としては、胴縁2から既設壁面1を支持している下地材までねじ孔をドリルで穿孔し、次いでねじ孔に止着具をねじ込むか打込むことにより止着する方法が採られるが、この工法の場合、穿孔と止着作業の二種の作業が必要となり、しかも、通常このような止着箇所は、一軒の家屋建築で1000箇所を超えることは普通であるから、施工に非常に手間が掛かる問題があった。
【0005】
このような問題を解消するため、例えば、特開平8−247125号公報、特開2001−304218号公報などに開示されているように、ドリルねじが提案されているが、これらはいずれも直接モルタル層に打ちこむには好都合でも、木質の胴縁2表面から打込む場合に使用が困難となる問題があった。
【0006】
即ち、これらドリルねじはいずれも図11に示すようにドリル先端角が鈍角とされているので、木質材に対しては、切込み性能が非常に悪く、ドリル先端が木質材に切込み始めるまではドリル先端が振回るので、打込み開始時のドリルねじの位置合わせが困難となり、ドリル工具の支持に特別な配慮を要するなど施工が面倒となる問題があった。
【0007】
また、胴縁2の木質部を貫通した後、図11に示すように、ドリルねじ6の先端7が既設壁面1のモルタル層に貫入し、同時にドリルねじ6のねじ部8が胴縁2部分に掛かると、ドリルねじ6の前記モルタル層に対する切りこみ速度と、その回転によるねじ部8のねじ送り量とが一致しないことに起因して、胴縁2がねじ送り作用によって矢印方向へ浮き上がり、胴縁2の固定位置に狂いが生じることがある問題があった。
【0008】
また、胴縁2が既設壁面1のモルタル層を突きぬけたドリルねじ6でしっかりと固定されたとしても、図12に示すように、既設壁面1のモルタル層に、ドリルねじ先端7に続いてねじ部8が通過するときに、先端のドリル部7の穿孔速度とねじ部8のねじ送り量の不一致のために、今度は、既設壁面1のモルタル層がねじ筋で削られて、貫通孔9の内径が拡大化されやすく、壁面更生後、この貫通孔9の内面とドリルねじ6外周の隙間10を伝って点線で示すように壁面裏面へと雨水が流入することがあるといった問題があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、以上の問題を解消し、最初が木質材、次はモルタル材、そして最後が再び木質材とされた複合層に対して一回の打ち込み作業で最外層の木質材が確実に止着できるモルタル用ドリルねじを得ることを課題としてなされたものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1のモルタル用ドリルねじは、先端部が木質状部材の表面に容易に打込める尖った角錐部をなし、角錐部と同軸に設けたねじロッド部と、角錐部の基部からねじロッド部に至る径小テーパ部を備え、ねじロッド部のねじ外径d 1 と角錐部の稜線先端が描く最大直径DとがD=0.8d 1 〜1.1d 1 の関係を有し、モルタル層の表面に配する木質状部材からモルタル層を貫通して裏面の木質層に達する軸方向全体長さを有し、ねじロッド部が木質層に食い込むものである。
【0011】
したがって、木質状部材に対して容易に打ち込めるので最初の打ち込みが容易に行え、その後、先端が木質状部材からモルタル層へと穿孔していくに従って、角錐部の周囲が摩擦で磨耗していくので、最初の木質状部材に対する穿孔径に対し、角錐部による後の穿孔径が小さくなり、その分裏面の木質層に対するねじロッド部のねじ嵌合力が強くなり、表面の木質状部材のねじによる相対的な浮き上がりが防止できると同時に確実な止着力が得られる。
【0012】
ねじの外径d1と角錐部の稜線先端が描く最大直径Dとの関係をD=0.8d1〜1.1d1とするのは、上記の作用のためで、角錐部の稜線先端が描く最大直径Dをねじの外径d1の80%より小さくすると最初の木質状部材に対するねじロッドのねじの効きが良すぎて打ち込み中、木質状部材をなす胴縁の浮きが生じるのを防止できず、逆に、角錐部の稜線先端が描く最大直径Dをねじの外径d1の110%より大きくすると、最初の木質状部材に対するねじロッドのねじの効きを無くす点では好都合だが、裏面の木質層での角錐部の穿孔する釘孔径もねじの外径より大きくなってしまって、壁板を最終的に固定する時のネジの効きがわるくなってしまう弊害が生じるからである。
【0013】
なお、上記において木質状部材とは、木材と同様な材質の建材を意味し、文字通り木材のほか、合成樹脂、発泡コンクリート製の建材などを意味する。
【0015】
請求項2のモルタル用ドリルねじは、角錐部の周方向に隣接する斜面の一方が平面をなし、他方が中心軸方向に陥没形成したすくい面をなすものである。
【0016】
従って、すくい面に切り粉が入りこむので穿孔がスムースに行われる。
請求項3のモルタル用ドリルねじは、角錐部の基部からねじロッドのねじ筋にかけて、外周に切り粉排出用の溝を刻設してなり、前記溝の周辺に臨んでねじ筋の端面を形成したものである。
【0017】
従って、切り進みに従って、切り粉が溝を介して順次排出されるので穿孔がスムーズに行われる。さらに、被締結部材組織に対してねじ筋の切断面がほぼ直角に対面して行くので、タッピング機能が確実に発揮され、確実なねじ嵌合力が得られる。
【0018】
【発明の実施の形態】
次にこの発明の実施の形態であるモルタル用ドリルねじについて説明する。
実施の形態1
図1は、この発明の実施の形態1であるモルタル用ドリルねじの正面図、図2以下は止着状態を示す断面図である。
【0019】
図1において、モルタル用ドリルねじ11は、先端の尖った角錐部12と、この角錐部12の基部に続く径小テーパ部13と、ねじロッド部14及び頭部15から構成されている。
【0020】
上記角錐部12は、図1に示すように先端角θが25°〜35°の尖った角度とされ、木材、硬質合成樹脂、発泡コンクリート、石膏ボードなどの木質状の材質とされた建材に容易に打ち込むことができるようにされている。
【0021】
また、図示例の角錐部12は、四角錐とされた場合を示したが、三角錐、五角錐、六角錐など他の複数角錐であっても良い。
角錐部12の稜線先端が描く円周の最大径Dと、モルタル用ドリルねじ11の軸14の径d2とはD>d2とされ具体的にはD=1.2d2〜1.5d2とされている。
そして、角錐部12の最大径部17からねじロッド部14の径に至る部分が径小テーパ部13とされている。
【0022】
この径小テーパ部13は角錐部12の最大径部17の後側に段が出来ない限り軸方向長さが出来るだけ短くされ、好ましくは図示例のようにねじロッド部14に形成されるねじ筋18の1ピッチ程度の長さとされる。
【0023】
ねじロッド部14は、外周にねじ筋18が形成され、このねじ筋18が部材の止着用として機能する。
また、このねじロッド部14のねじ筋18の外径d1と、角錐部12の稜線先端が描く円周の最大径Dの関係はD=0.8d1〜1.1d1とされ、図示例の場合はD=d1、即ち同等の径とされている。
【0024】
頭部15は、図示例は皿型の十字穴の場合を示すがこれ以外のなべ型、六角型などとしても良い。
上記モルタル用ドリルねじ11の材質は、通常の鋼鉄、ステンレス鋼が使用される。
【0025】
次に、このモルタル用ドリルねじの使用状態を説明する。図2に示すように、更生しようとする既設壁面1の表面に新規壁板の支持部材となる木質状部材の胴縁2をあてがい、その上からモルタル用ドリルねじ11を金槌で打ちこむか、あるいは頭部15にドリル工具(図示せず)を取りつけ、ドリル工具を支持してモルタル用ドリルねじ11の角錐部12先端を胴縁2に押しこむ。
【0026】
モルタル用ドリルねじ11の先端は、尖った角錐部12とされているので容易に胴縁2表面に突き刺さり、仮固定ができる。
そのように仮固定した後、図3に示すように頭部15に取りつけたドリル工具(図示せず)を操作して、モルタル用ドリルねじ11を軸周囲に回転駆動する。
【0027】
すると、先端の角錐部12は、錐のように木製の胴縁2を穿孔していき、やがて先端は既設壁板1のモルタル層へと進んで行く。このとき、胴縁2に穿孔される貫通孔9の内径は、先端の角錐部12が殆ど磨耗していないので、この実施の形態の場合、角錐部12の最大径と同等となる。この結果、貫通孔9の内径は、ねじ筋18の外径と同大となり、ねじ筋18の引っかかりが無いか、又は生じても小さく、従って図3に示すようにモルタル用ドリルねじ11が切り進んで既設壁板1のモルタル層に掛かっても胴縁2が浮き上がってしまうこともない。
【0028】
なお、このねじ筋18の外径d1と、角錐部12の稜線先端が描く最大直径Dの関係をD=1.0d1〜1.1d1となるようにした場合は、胴縁2に穿孔される貫通孔9の内径はねじ筋18より確実に大きくなり、浮き上がりが確実に防止される。
【0029】
また、D=0.8d1〜1.0d1となるようにした場合は、胴縁2に穿孔される貫通孔9の内径はねじ筋18の外径よりやや小さくなるが、材に対する食い込み量が少ないので浮き上がり力も小さくなり、さしたる弊害は生じない。
【0030】
既設壁面1を貫通したモルタル用ドリルねじ11は、さらに裏面の木質層5へと穿孔していくが、既設壁面1のモルタル層を通過する際、モルタル層との摩擦により角錐部12の最大径は磨耗し、ねじ筋18の径d1よりかなり小さくなっている。
【0031】
従って、木質層5では、胴縁2と異なってねじ筋18は木質層5にしっかりと食い込み、最後まで締めつければ、胴縁2は確実に既設壁面1上に固定されるのである。
【0032】
その後図5に示すように固定された胴縁2上に適宜取りつけ金具(図示せず)を介して新規壁板を取り付けていくのである。
このとき、新規壁板3を支える胴縁2とモルタル用ドリルねじ11外面との間には隙間20が出来るが、モルタル層1とモルタル用ドリルねじ11外面との間は、角錐部12の磨耗により穿孔径が小さくなっていることからねじ筋18が既設壁面1のモルタル層に食い込み、伝って流れる雨水が侵入することはない。
【0033】
従って、施工が一回で済み、しかも止着強度や耐水性なども良いなどの効果がある。
実施の形態2
図6は、この発明の実施の形態2のモルタル用ドリルねじの正面図を示し、図7、図8はその止着状態を示す断面図である。
【0034】
この実施の形態2のモルタル用ドリルねじ11は、実施の形態1に対し、角錐部12に続く径小テーパ部13に、角錐部12の最大径部17の外径Dに対し120%±10%となる羽根部19、19(図示例の場合は125%)が、径方向に延出成形されている点が異なるだけで、他は実施の形態1と同じであるので、同一部分に同一符号を付すだけで詳細な説明を省略する。
【0035】
この実施の形態2の羽根部19、19は、径小テーパ部13に鍛造などで一体成形される。
そして、この羽根部は図7に示すように胴縁2に切り込ませたとき、角錐部12が形成した貫通孔9内面をさらに研削して拡径するので、貫通孔9内径はねじ筋18の外径より確実に大きくなり、実施の形態1でねじ筋18の外径と、角錐部12の稜線先端が描く最大直径DとについてD=0.8d1〜1.0d1とした場合であっても穿孔される貫通孔の内径はねじ筋の外径より大きくなり、ねじ筋18の胴縁2に対する掛かり合いが確実に防止される。
【0036】
従って、既設壁面1のモルタル層に先端の角錐部12が切り込んで行っても胴縁2の浮き上がりは確実に防止される。
一方、この羽根部19は、貫通孔9との摩擦接触により胴縁2を貫通する時点では脱落し、既設壁面1のモルタル層に切り込みはじめた以後は、角錐部12の磨耗も始まるので、穿設される貫通孔の径は最大直径Dより小さくなり、さらに磨耗は続くので穿設される貫通孔9の径は図7、図8に示すように次第に小さくなっていく。
【0037】
従って、下地層5へ切り進んだころは、ねじ筋18の外径より小さい径の貫通孔となり、図8に示すように、ねじ込みによりしっかりとした止着力が得られる。
【0038】
なお、図6〜図8において、20は、切り粉排出用の溝を示し、角錐部12が切り進んでいったときに発生する切り粉をこの溝から排出するようにされたものである。
【0039】
また、この溝20を形成する際、図9に示すように、溝20の周辺に臨むねじ筋18の端面21が、ねじ込まれる被締結部材、例えば胴縁や既設壁面1のモルタル層などの組織に対してほぼ直角に対面するようにされている。
【0040】
このように形成することで、切り込み時の作業性がよくなり、また、排出用の溝20に臨まされたねじ筋18の端面21によりねじ切り効果も発揮されるので、確実な止着力が得られる。
【0041】
また、実施の形態1、2において、角錐部12に図9に示すように、周方向に隣接する斜面22、23の一方22を平面、他方23を中心軸方向に陥没形成させ、この陥没面をすくい面としても良い。
【0042】
このようにすることにより角錐部12の穿孔効率が良くなり迅速な穿孔ができる。
【0043】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明のモルタル用ドリルねじによれば、既設壁面の表面に胴縁などをあてがい、直接打込めば、そのまま壁面の下地面に達し、しっかりと胴縁を固定できる。
【0044】
また、穿孔する際、先端角錐部あるいは羽根部によって胴縁に対しては大きな径の貫通孔が形成され、ねじ筋の食い込みが無いようにされる一方、既設壁面のモルタル層あるいは下地層に行くに従い、角錐部による穿孔径が小径となっていくので、ねじ筋の掛かり合いが良くなり強い係止力が得られる。
【0045】
また、既設壁面のモルタル層に貫通孔を穿設する場合に、ねじ筋がこの部分の内面に食い込む状態となるのでモルタル層からの雨水流入といったことも防げる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態1であるモルタル用ドリルねじの正面図である。
【図2】この発明の実施の形態1であるモルタル用ドリルねじの使用状態を示す断面図である。
【図3】この発明の実施の形態1であるモルタル用ドリルねじの使用状態を示す断面図である。
【図4】この発明の実施の形態1であるモルタル用ドリルねじの使用状態を示す断面図である。
【図5】この発明の実施の形態1であるモルタル用ドリルねじの使用状態を示す断面図である。
【図6】この発明の実施の形態2であるモルタル用ドリルねじの正面図である。
【図7】この発明の実施の形態2であるモルタル用ドリルねじの使用状態を示す断面図である。
【図8】この発明の実施の形態2であるモルタル用ドリルねじの使用状態を示す断面図である。
【図9】図1、図6のX−X線矢視断面図である。
【図10】壁面更生工法の説明斜視図である。
【図11】従来のモルタル用ドリルねじの説明断面図である。
【図12】従来のモルタル用ドリルねじの説明断面図である。
【符号の説明】
1 既設壁面
2 胴縁
3 新規壁板
9 貫通孔
11 モルタル用ドリルねじ
12 角錐部
13 径小テーパ部
14 ねじロッド部
15 頭部
17 最大径部
18 ねじ筋
19 羽根部
20 切り粉排出用溝
Claims (3)
- 先端部が木質状部材の表面に容易に打込める尖った角錐部をなし、角錐部と同軸に設けたねじロッド部と、角錐部の基部からねじロッド部に至る径小テーパ部を備え、ねじロッド部のねじ外径d 1 と角錐部の稜線先端が描く最大直径DとがD=0.8d 1 〜1.1d 1 の関係を有し、モルタル層の表面に配する木質状部材からモルタル層を貫通して裏面の木質層に達する軸方向全体長さを有し、ねじロッド部が木質層に食い込むことを特徴とするモルタル用ドリルねじ。
- 角錐部の周方向に隣接する斜面の一方が平面をなし、他方が中心軸方向に陥没形成したすくい面をなすことを特徴とする請求項1に記載のモルタル用ドリルねじ。
- 角錐部の基部からねじロッドのねじ筋にかけて、外周に切り粉排出用の溝を刻設してなり、前記溝の周辺に臨んでねじ筋の端面を形成したことを特徴とする請求項1または2に記載のモルタル用ドリルねじ。
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