JP4092159B2 - クッションおよびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばイス,ソファー,ベッド等のクッションを構成するエラストマー製のクッション部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ベッド等に使用されるクッションの中には、半硬質材からなる薄肉状の隔壁を平面視略格子状に並立させて構成したものがある(例えば実開昭52−15307号公報等)。
該従来のクッションは、上方から荷重がかかった際に、半硬質材からなる薄肉状の隔壁が側方へ傾斜することでクッション性(緩衝性)を発揮しようとするものであり、大きな荷重に対しては所望のクッション性を発揮するが、小さな荷重に対するクッション性に欠け、使用者が寝返りをうった際等に隔壁の硬さを感じるという不具合があった。また、格子状に並立する隔壁の十字状交差部の中心では柔軟性が発揮されず、部分的に柱が立ち上がるような反発力が発生し、使用者が横たわった際に違和感を感じる場合もあった。
【0003】
一方、本願発明者等は、上述した不具合を解消するクッションとして、弾性を有する薄肉状の縦横の隔壁が平面視格子状に並立するよう一体成形したエラストマー製のクッションを先に提案している(特願2000-244554号、特願2001-181364号等)。
このクッションは、上記隔壁を熱可塑性エラストマーやゴム等のエラストマーにて成形することにより、荷重が加わった際に夫々の隔壁が適度にたわんで、使用時において底つき感がなく、且つ適宜なクッション性を長期に亘り維持することを可能としたものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
処で、上記した先提案のクッションは、弾性を有する薄肉状の縦横の隔壁101が平面視格子状に並立するよう一体成形されたものであって、その縦横の隔壁101で囲まれる部分の底部102は解放されており、クッション100と該クッションを載置する面110とは縦横の隔壁の下端面103のみで接触し、その接触面積が小さいことから、荷重が加わって夫々の隔壁がたわんだ際、クッション100自体の安定性が崩れる虞れがあった(図8参照)。
【0005】
特に、本願発明者等が特願2001-172386号等で先に提案したように、所定の大きさに成形した所要数のクッション同士を連結してベッド用の大きなクッションを構成した場合、使用者の頭部、腰部、臀部等の比較的大きな荷重がかかる部位に配設されたクッションは、夫々の隔壁が大きくたわむので、隣り合わせるクッションとの連結が外れる虞れがあった。
【0006】
本発明は上述したような従来事情に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、弾性を有する薄肉状の縦横の隔壁が平面視格子状に並立するよう一体成形したクッションにおいて、比較的大きな荷重がかかって夫々の隔壁が大きくたわんだとしても、クッション自体の安定性が大きく崩れるようなことがなく、隣り合わせるクッション同士の連結が外れてしまうような虞れのない新規なクッションを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
以上の目的を達成するために、本発明のクッションは請求項1記載のように、弾性を有する薄肉状の縦横の隔壁が平面視格子状に並立すると共に、前記隔壁で外周を囲んで外周面を構成するよう一体成形されたエラストマー製のクッションであって、前記隔壁の上端が開放されて前記縦横の隔壁で囲まれた部分の上端に開口が形成されており、前記縦横の隔壁で囲まれる部分の底部に、該縦横の隔壁の下端から張り出す張り出し部が形成されていることを特徴とする。
【0008】
このように、縦横の隔壁で囲まれる部分の底部に張り出し部を形成することで、クッションはクッション載置面に対し、縦横の隔壁の下端面と張り出し部の下面とが接触する状態で支持されるようになる。よって、縦横の隔壁の下端面のみで支持される従来のクッションに比べ、載置面に対する接触面積が拡大され、荷重が加わって夫々の隔壁がたわんだ際のクッション自体の安定性が向上する。
【0009】
ここで、クッション自体の安定性だけを向上させるのであれば、縦横の隔壁で囲まれる部分の底を底部膜で塞いで前記接触面積を大幅に拡大することも考えられるが、その場合、クッション自体の保形性が大きくなりすぎ、荷重が加わった際に夫々の隔壁のたわみ変形量が小さくなる虞れがある。これに対し、本発明のように、縦横の隔壁で囲まれる部分の底部を完全に塞ぐのではなく、張り出し部を設けることで、前記接触面積を適宜に拡大してクッションの安定性を向上しながら、縦横の隔壁のたわみ変形は従来のクッションと同程度に維持して、適宜なクッション性を得ることができる。
【0010】
上記張り出し部は、縦横の隔壁で囲まれる部分に、三角形,四角形,五角形以上の多角形,円形,楕円形等の各種形状の開口が、一または複数開口するよう形成することが可能であるが、該張り出し部にかかる荷重応力が張り出し部の全域に均一に分散されて、長期にわたり安定性を適度に保持できるようにすることを考慮すれば、請求項2のように、上記張り出し部が、上記縦横の隔壁で囲まれる部分の底部中心の円形状の開口を囲むよう形成されていることが好ましい。
また、請求項3のように、上記張り出し部が、上記縦横の隔壁で囲まれる部分の底部中心の正方形状の開口を囲むよう形成されている場合、張り出し部は、縦横の隔壁の下端に沿って、縦方向若しくは横方向に均一幅で延びるよう形成される。よって、クッションを縦方向若しくは横方向に収縮させ易くなり、収縮した状態(畳んだ状態)での箱詰め、梱包が可能になる。
【0011】
また請求項4のように、上記張り出し部の面積、換言すれば、縦横の隔壁の下端からの張り出し寸法を任意に設定することで、上記縦横の隔壁のたわみ度合いを、要求されるクッションの硬さに応じて任意に設定することができる。
すなわち、上記張り出し部の面積(隔壁下端からの張り出し寸法)を大きくした場合は、縦横の隔壁のたわみ度合いが小さくなり、比較的硬いクッションを得ることができ、上記張り出し部の面積を小さくした場合は、縦横の隔壁のたわみ度合いが大きくなり、比較的柔らかいクッションを得ることができる。
【0012】
請求項1〜4のいずれかに記載のクッションを得るための好ましい製造方法として、請求項5記載のように、弾性を有する薄肉状の縦横の隔壁が平面視格子状に並立すると共に、前記隔壁で外周を囲んで外周面を構成し、且つ前記隔壁の上端が開放されて前記縦横の隔壁で囲まれた部分の上端に開口が形成されており、前記縦横の隔壁で囲まれる部分の底部が該縦横の隔壁の下端に連続する底部膜で塞がれるよう一体成形されたエラストマー製のクッション基材を得た後、前記底部膜を所定形状に打ち抜いて、前記縦横の隔壁で囲まれる部分の底部に、該縦横の隔壁の下端から張り出す張り出し部を形成する製造方法を挙げることができる。
【0013】
処で、本発明のクッションを構成するクッション部材は前述したように、隔壁をエラストマーにて成形することにより、荷重が加わった際に夫々の隔壁が適度にたわんで、使用時において底つき感がなく、且つ適宜なクッション性を長期に亘り維持することを可能としたものである。
ここで、エラストマーについては、天然ゴム又は合成ゴム等のゴムの架橋物(架橋ゴム)と、熱可塑性エラストマーのどちらでも構わないが、底つき感がなく、柔軟で小さな荷重に対しても緩衝性が良く、またヘタリが少ない耐久性の良いクッション部材の提供を可能にするには、前記クッション部材を架橋ゴムで構成することが好ましい。
【0014】
すなわち、上記クッション部材が、天然ゴム及び合成ゴムから選ばれた少なくとも1種以上のゴムの架橋物(架橋ゴム)からなり、且つ該クッション部材における夫々の隔壁はショアA20〜40の硬度を有するものであることが好ましい。
上記のゴムは、ポリブタジエンゴム10〜20質量%を含むゴム混合物が好ましい。特に、ゴムが、天然ゴム40〜80質量%、ポリイソプレンゴム10〜40質量%及びポリブタジエンゴム10〜20質量%(三者の合計100質量%)からなるゴム混合物であることが好ましい。
また、上記の架橋ゴムには、軟化剤を配合することが好ましい。軟化剤は液状ポリイソプレンゴムが好ましい。
また、上記の架橋ゴムには、補強剤を配合することが好ましい。補強剤はホワイトカーボンが好ましい。
さらに、上記の架橋ゴムには、ブルーミング防止剤を配合することが好ましい。ブルーミング防止剤は高分子量脂肪族カルボン酸の複合化エステルが好ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態の一例を図面を参照して説明する。
図1において、aは所要数のクッション1を接着、ホッチキス止め、ホック部材などの所望の連結手段により連結して所定の大きさに構成したベッド用クッション、bはこのベッド用クッションaを収容する所定寸法の枠体を表している。
【0016】
クッション1は、図2,図3に示すように、所定の高さを有する薄肉状の隔壁1a,1bを横方向と縦方向に並べて平面視格子状に並立させ、且つその外周は前記横方向と縦方向の隔壁1a,1bで囲んで外周面1cを構成すると共に、夫々の隔壁1a,1bが、上方から荷重がかかると適度にたわんで所望のクッション性を発揮するよう、エラストマーを用いて一体成形されている。
【0017】
また、クッション1は、隔壁1a,1bの上端が開放されて縦横の隔壁1a,1bで囲まれた部分の上端に開口が形成されており、縦横の隔壁1a,1bで囲まれる部分の底部に、該縦横の隔壁1a,1bの下端に連続する張り出し部1dが形成されており、枠体bの内底面(クッション載置面)b1に対し、縦横の隔壁1a,1bの下端面と前記張り出し部1dの下面とが接触する状態で支持されるようになる。よって、縦横の隔壁1a,1bの下端面のみで支持される従来のクッションに比べ、前記内底面b1に対する接触面積が拡大され、隔壁1a,1bの上端に荷重が加わって夫々の隔壁1a,1bがたわんだ際のクッション1自体の安定性が向上する。
【0018】
また本例では、縦横の隔壁1a,1bで囲まれる部分の底部中心の円形状の開口1eを囲むように(張り出し部1dの内周縁で囲まれる開口1eが円形になるように)張り出し部1dを形成しており、これにより、荷重応力が張り出し部1dの全域に均一に分散されて、長期にわたり前述の安定性を適度に保持できるようになっている。
【0019】
一方、図4に示すように、縦横の隔壁1a,1bで囲まれる部分の底部中心の正方形状の開口1e’を囲むように(張り出し部1dの内周縁で囲まれる開口1e’が円形になるように)張り出し部1dを形成しても良い。この場合も、クッション1は上記内底面b1に対し、縦横の隔壁1a,1bの下端面と前記張り出し部1dの下面とが接触する状態で支持されるので、荷重が加わって夫々の隔壁1a,1bがたわんだ際のクッション1自体の安定性が向上する。加えて、張り出し部1dは、縦横の隔壁1a,1bの下端に沿って、縦方向若しくは横方向に均一幅で延びるよう形成されるので、図5に示すように、クッション1を縦方向若しくは横方向に収縮させ易くなり、収縮した状態(畳んだ状態)での箱詰め、梱包が可能になる。
【0020】
上記張り出し部1dの面積(隔壁1a,1b下端からの張り出し寸法)は、要求されるクッション1の硬さに応じた縦横の隔壁1a,1bのたわみ度合いを得られるよう、任意に設定されている。
【0021】
上記クッション1の製造方法の一例を述べれば、例えば、まず図6に示すように、下型c1,上型c2,型枠c3からなる組立て,分解可能な成形型cを組み立てて、そのキャビティ内にエラストマーの原料を充填し、弾性を有する薄肉状の縦横の隔壁1a,1bが平面視格子状に並立すると共に、それら隔壁1a,1bで外周を囲んで外周面1cを構成し、且つ縦横の隔壁1a,1bで囲まれる部分の底部が該縦横の隔壁1a,1bの下端に連続する底部膜1fで塞がれるよう一体成形されたエラストマー製のクッション基材1’を一体成形する。ここで用いるエラストマーとしては、後に詳述するが、天然ゴム又は合成ゴム等のゴムの架橋物(架橋ゴム)と、熱可塑性エラストマーとの何れであっても良い。
【0022】
上記クッション基材1’を得た後、図示を省略するが、夫々の底部膜1fの中心を抜き型により所定の大きさの円形状若しくは正方形状に打ち抜いて、該底部膜1fの周囲に、縦横の隔壁1a,1bの下端に連続する張り出し部1dを残して、該張り出し部1dの内周縁で囲まれる円形の底部開口1e若しくは正方形の底部開口1e’を形成する。
【0023】
これにより得られた熱可塑性エラストマー製のクッション1は、単独でイスやソファー等のクッションとして用いることもできるが、本例では、ベッド用のクッションとして使用するものであるため、所要数のクッション1を連結して、シングルベッドサイズ,セミダブルベッドサイズ,ダブルベッドサイズなどの所定の大きさのベッド用クッションaを作製する。
【0024】
このベッド用クッションaは、木製の板等で形成した枠体bを有するベッド基台に収容すると共に、同ベッド用クッションaの外縁部分を構成する各クッション1の外周面1cを、適宜な止着手段で枠体bの内周面に固定し、さらにその上にベッドパッドを敷いたりカバーを被せるなどして、ベッドを構成することができる。
このようにして構成されたベッド用クッションaは、夫々のクッション1において、縦横の隔壁1a,1bで囲まれる部分の底部に張り出し部1dを一体に備えているので、荷重が加わって隔壁1a,1bがたわんでも、各クッション1自体は安定性良く枠体b内に載置される。よって、使用者の頭部、腰部、臀部等の比較的大きな荷重がかかる部位に位置するクッション1において、隔壁1a,1bが大きくたわんだとしても、隣り合わせるクッション1との連結状態が外れたり、反転するような虞れはない(図7参照)。
また、縦横の隔壁1a,1bで囲まれる部分の底部は底部膜1fで完全に塞がれるのではなく、所定の寸法で張り出す張り出し部1dにより安定性を向上させているので、縦横の隔壁1a,1bのたわみ変形は従来のクッションと同程度に維持して、適宜なクッション性を得ることができる。
【0025】
ちなみに、上述したクッション1を構成する隔壁1a,1bの成形寸法は、例えば隔壁の高さ30〜300mm、幅30〜100mm程度に設定すると良い。また、隔壁の厚さは0.5〜5mm、好ましくは1.0〜3mm程度である。また、円形状の底部開口1eを形成する場合、その直径は18〜80mmとすることが良く、正方形状の底部開口1e’を形成する場合、該開口1e’の一辺の長さは18〜80mm程度とすることが好ましい。張り出し部1dの張り出し寸法は6〜10mm程度であることが好ましい。
【0026】
また、ベッドの横方向(短手方向)に沿う隔壁1aと、ベッドの縦方向(長手方向)に沿う隔壁1bとの比をほぼ同一とし、前記隔壁1a,1bで構成される格子形状がほぼ正方形状になるよう形成すると良い。
【0027】
以下、上述したクッション1を成形するために用いるエラストマーについて詳述すれば、本発明で用いるエラストマーは、熱可塑性エラストマー、架橋ゴムの何れであっても良いが、前述したように、架橋ゴムを用いる方が好ましい。
【0028】
本発明で用いる架橋ゴムの原料ゴムとしては、天然ゴム及び/又は合成ゴムが用いられる。合成ゴムとしてはポリブタジエンゴム、ポリクロロプレンゴム、ポリイソプレンゴム、ブタジエンスチレンゴム、ブタジエンアクリロニトリルゴム、イソブチレンイソプレンゴムなどが挙げられる。クッション1の硬度(柔らかさ)、ヘタリの防止、耐久性、変形追従性などの性質を考慮して1種又は2種以上のゴムを混合して使用する。
【0029】
本発明で用いる架橋ゴムの原料ゴムは、ポリブタジエンゴムを配合したゴム混合物が、架橋ゴムに弾性を付与する点から好ましい。その配合量は、原料ゴムの10〜20質量%が好ましい。特に好ましい原料ゴムは、天然ゴム、ポリイソプレンゴム及びポリブタジエンゴムの混合物であり、その好ましい配合割合は、天然ゴム40〜80質量%、ポリイソプレンゴム10〜40質量%及びポリブタジエンゴム10〜20質量%(三者の合計100質量%)である。これらのゴムは、クッション構造体に成形する時に、加硫剤で加硫され架橋ゴムとなる。加硫剤は、通常用いられる硫黄、有機含硫黄化合物などが使用できる。また、加硫の際には、通常用いられる加硫促進剤、有機系加硫促進助剤及び/又は無機系加硫促進助剤を使用するのが好ましい。
【0030】
上記架橋ゴムは、硬度がショアAで20〜40、好ましくは30〜40のものが良い。クッション1をこのような硬度の架橋ゴムで構成した場合、荷重がかかると隔壁1a,1bが座屈するようにたわみ変形し、底つき感がなく、柔軟で小さな荷重に対しても緩衝性が良いクッション1が得られる。また、クッション1のヘタリは、隔壁1a,1bを構成する架橋ゴムの永久伸び、圧縮永久歪みに関係し、そしてこれらの値が小さいほどヘタリが少ない。クッション1の永久伸びは5%以下、圧縮永久歪みは50%以下(JIS K 6262に準拠)が好ましい。
【0031】
また、本発明においては、架橋ゴムに、軟化剤を配合するのが好ましい。軟化剤は反応性部位を有する可塑剤であり、この反応部位は炭素−炭素二重結合、末端活性水素基、化学修飾反応性官能基などがあるが、本発明ではゴムと架橋するものが好ましく、その観点から、反応部位が炭素−炭素二重の軟化剤が好ましい。そして、本発明において、軟化剤は架橋ゴムに柔らかさを付与し、所定の硬度を保持する目的で配合する。そのため、SP値の低いジエン系の軟化剤が好ましく、イソプレン系、ブタジエン系、イソプレン−ブタジエン系などが用いられ、これらの分子量は10,000〜100,000程度が好ましい。分子量が小さいと未反応物がブリードして、クッション1に荷重がかかったとき音鳴り、貼り付きの原因となる可能性があり、また分子量が大きいと半固体となり扱いにくく、クッション1の柔軟性が不足する。好ましい分子量は20,000〜50,000である。軟化剤は架橋(加硫)前の原料ゴムに配合する。軟化剤の配合量は原料ゴムに対し5〜20質量%が好ましい。軟化剤としては、例えば、クラプレンLIR−30、クラプレンLIR−50(いずれも、株式会社クラレ製の液状ポリイソプレンゴム:商標名)が挙げられる。
【0032】
また、本発明においては、架橋ゴムに補強剤を配合するのが好ましい。補強剤はクッション1のヘタリ防止性を向上させ、強度を高める。補強剤としては炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、カーボンブラック、クレーなどが用いられる。特に、架橋ゴムのヘタリの改善及び強度向上の点からホワイトカーボンが好ましい。配合量は原料ゴムに対し1〜20質量%が好ましい。また、架橋ゴムにブルーミング防止剤を配合するのが好ましい。ブルーミング防止剤は高分子量脂肪族カルボン酸の複合化エステルが、ブルーミングを防止すると共に、架橋ゴムの軟化剤の作用をなし、架橋ゴムに柔らかさを付与するので好ましい。この複合化エステルとしては、例えばシンコー技研株式会社製「BLOOM STOPPER(ブルームストッパー)-HR」(商標名)が挙げられる。配合量は原料ゴムに対し2〜10質量%が好ましい。
【0033】
架橋ゴム製のクッション1は、所定の配合ゴムに、加硫剤、加硫促進剤、必要に応じて軟化剤、補強剤、ブルーミング防止剤などを配合し、混練し、この混練物をプレス成形法や射出成形法で成形し、加熱加硫して製造するのが好ましい。
【0034】
一方、本発明で用いる熱可塑性エラストマーは、常温ではゴム状弾性体として挙動するが、温度上昇によって塑性変形する物質である。熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、1,2−ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、フッ素ゴム系熱可塑性エラストマー、塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマー、動的架橋系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。
【0035】
スチレン系熱可塑性エラストマーは、分子中のハードセグメントとしてポリスチレン、ソフトセグメントとしてポリブタジエンやポリイソプレンなどのポリジエンを用いたブロックコポリマーである。例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(SBS)・スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(SIS)、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SEBS)、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロックコポリマー(SEPS)などであり、また、スチレン−ブタジエンブロック共重合体の水素添加物とポリプロピレンとの混合物などが挙げられる。
【0036】
また、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、EPDM、イソブチレンイソプレンゴムのようなオレフィン系ゴムとポリオレフィン樹脂の機械的ブレンド物(ブレンド型)、オレフィン系ゴムとポリオレフィン樹脂を有機過酸化物の存在下で混練してゴム相を部分架橋させたブレンド物(部分架橋ブレンド型)、ポリプロピレンを連続相とし、架橋EPDMを分散相とする複合体(完全架橋ブレンド型)などが用いられる。
ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマーとしては、ポリ塩化ビニルとニトリルゴム又は部分架橋ニトリルゴムとのブレンド物などが挙げられる。
【0037】
ポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、テレフタル酸ジメチル、1,4ブタンジオール及ぴポリテトラメチレンエーテルグリコールを原料とし、エステル交換・重縮合反応させて製造したポリエステル・ポリエーテル型エラストマー、テレフタル酸ジメチル、1,4ブタンジオール及びε−カプロラクトンを原料とし、エステル交換、開環反応させて製造したポリエステル・ポリエステル型エラストマーが挙げられる。ポリウレタン系熱可塑性エラストマーとしては、末端活性水素を有する長鎖ジオールと短鎖ジオールとジイソシアナートを反応させてハードセグメントとソフトセグメントを形成させたエラストマーなどが挙げられる。また、ポリアミド系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ラウリルラクタム、ジカルボン酸、及びポリエーテルジオールを原料とし、開環反応、縮合反応して製造したエラストマーなどが挙げられる。
【0038】
これら熱可塑性エラストマーの中では、特にスチレン系熱可塑性エラストマーが、柔軟性に富み、耐久性が良いので良好な特性のクッションを構成できる。
本発明で用いる熱可塑性エラストマーは、硬度がショアAで15〜40、好ましくは15〜35のものが良い。クッション1をこのような硬度の熱可塑性エラストマーで構成した場合、荷重がかかると隔壁1a,1bが座屈するようにたわみ変形し、使用時において底つき感がなく、柔軟であり、小さな荷重に対しても緩衝性が良い。さらに、耐久性にも富んでいる。
【0039】
上述したように、本発明に用いる熱可塑性エラストマーは、スチレン系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリエステル系、ポリアミド系等を用いるが、これらの熱可塑性エラストマーにプロセスオイル等の軟化剤を添加して硬度を調節してもよい。プロセスオイルの添加量によっては、クッションのへたり、べたつき等を生じる可能性があるので、オイルの添加量は、エラストマー100重量部に対して0〜30重量部の範囲が好ましい。
【0040】
以上、本発明に係るクッションの実施形態の一例を図面を参照して説明したが、本発明は図示例に限定されるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に記載される技術的思想の範疇において、種々の変更が可能であることは言うまでも無い。
【0041】
【発明の効果】
本発明に係るクッションは以上説明したように構成したので、下記の効果を奏する。
(請求項1)
縦横の隔壁で囲まれる部分の底部に形成した張り出し部により、載置面に対するクッションの接触面積が拡大されるので、荷重が加わって夫々の隔壁がたわんだ際のクッション自体の安定性を向上させることができる。よって、例えば所要数のクッション同士を連結してベッド用の大きなクッションを構成した場合、使用者の頭部、腰部、臀部等の比較的大きな荷重がかかる部位に配設されたクッションにおいて、夫々の隔壁が大きくたわんだとしても、該部位のクッションが全体に大きく変形して、隣り合わせるクッションとの連結が外れたり反転するような虞れがない。また、上記張り出し部により接触面積を適宜に拡大したので、前述の如くクッション自体の安定性を向上しながら、縦横の隔壁のたわみ変形は従来のクッションと同程度に維持することができる。
【0042】
(請求項2)
張り出し部の内周縁で囲まれる底部開口が円形になるので、張り出し部にかかる荷重応力が張り出し部の全域にわたり均一に分散される。よって、張り出し部や縦横の隔壁に亀裂が入るような虞れがなく、前述した安定性を長期にわたって維持することができる。
【0043】
(請求項3)
張り出し部の内周縁で囲まれる底部開口が正方形になり、張り出し部は、縦横の隔壁の下端に沿って、縦方向若しくは横方向に均一幅で延びるよう形成されるので、クッションを縦方向若しくは横方向に収縮させ易くなる。よって、収縮した状態(畳んだ状態)での箱詰め,梱包が容易に行えるようになり、保管時や運搬時のスペースを縮小することができる。
【0044】
(請求項4)
張り出し部の面積を任意に設定することで、縦横の隔壁のたわみ度合いを、要求されるクッションの硬さに応じて任意に設定することができる。
【0045】
(請求項5)
縦横の隔壁で囲まれる部分の底部が底部膜で塞がれるよう一体成形されたエラストマー製のクッション基材を得た後、その底部膜を所定形状に打ち抜いて張り出し部を形成する方法としたので、底部膜をカッターなどで一つずつ切断して所定形状の張り出し部を形成するような方法に比べ、簡単且つ低コストにて、上述の効果を奏するクッションを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るクッションを所要数連結してなるベッド用クッションの斜視図で、一部省略して示す。
【図2】本発明に係るクッションの拡大斜視図で、一部切欠して示す。
【図3】図2の(x)−(x)線に沿う拡大断面図。
【図4】底部開口が正方形である例を示すクッションの拡大斜視図で、一部切欠して表す。
【図5】図4に示すクッションを収縮させて箱詰めした状態を示す平面図。
【図6】本発明に係るクッションの成形方法の一例を示す斜視図。
【図7】本発明に係るクッションに荷重が加わった際の状態を示す断面図。
【図8】従来のクッションに荷重が加わった際の状態を示す断面図。
【符号の説明】
a:ベッド用クッション
b:枠体
1:クッション
1a,1b:隔壁
1c:外周面
1d:張り出し部
1e,1e’:底部開口
1f:底部膜
c:成形型

Claims (5)

  1. 弾性を有する薄肉状の縦横の隔壁が平面視格子状に並立すると共に、前記隔壁で外周を囲んで外周面を構成するよう一体成形されたエラストマー製のクッションであって、前記隔壁の上端が開放されて前記縦横の隔壁で囲まれた部分の上端に開口が形成されており、前記縦横の隔壁で囲まれる部分の底部に、該縦横の隔壁の下端から張り出す張り出し部が形成されていることを特徴とするクッション。
  2. 上記張り出し部が、上記縦横の隔壁で囲まれる部分の底部中心の円形状の開口を囲むよう形成されていることを特徴とする請求項1記載のクッション。
  3. 上記張り出し部が、上記縦横の隔壁で囲まれる部分の底部中心の正方形状の開口を囲むよう形成されていることを特徴とする請求項1記載のクッション。
  4. 上記張り出し部の面積を任意に設定して、上記縦横の隔壁のたわみ度合いを調整したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のクッション。
  5. 弾性を有する薄肉状の縦横の隔壁が平面視格子状に並立すると共に、前記隔壁で外周を囲んで外周面を構成し、且つ前記隔壁の上端が開放されて前記縦横の隔壁で囲まれた部分の上端に開口が形成されており、前記縦横の隔壁で囲まれる部分の底部が該縦横の隔壁の下端に連続する底部膜で塞がれるよう一体成形されたエラストマー製のクッション基材を得た後、前記底部膜を所定形状に打ち抜いて、前記縦横の隔壁で囲まれる部分の底部に、該縦横の隔壁の下端から張り出す張り出し部を形成することを特徴とするクッションの製造方法。
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