JP4091754B2 - 環状多段式加熱炉 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の温度で加熱処理できる一体形の環状多段式加熱炉に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、被処理物を加熱処理する場合は、所定の温度に設定された加熱室内に収納して行う加熱炉が一般的である。被熱処理物を連続して加熱処理する場合には、被熱処理物をベルトコンベアなどの移送手段に載せて一定の温度に保持された加熱室内を移行させるか、加熱温度を変えるために一旦加熱炉から取りだし別の加熱炉に移すなどの方法がおこなわれている。これらの加熱処理炉の場合は、比較的温度が低い場合が多く、熱効率に関しては特に考慮されていない。しかし、被熱処理物を低温から高温へと2段階以上で加熱する場合は、一つの加熱炉内で連続して被熱処理物を加熱することが熱効率の面でも望ましい。また、高温側の加熱熱源を活用することが好ましい。例えば魚骨を焼成して焼成骨粉を製造する場合などでは、水洗魚骨に付着する有機物を低温加熱で熱分解させて除去した後、高温で加熱焼成することができるような多段式の加熱炉の提案が望まれている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、高温加熱側の熱源を利用して低温側の加熱室を加熱するとともに、被加熱物を同一炉内で低温側から高温へ連続して加熱移動させることで、熱効率を高めた加熱炉を提案することを課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明の焼成骨粉用の環状多段式加熱炉(以下、単に環状多段式加熱炉ともいう)は、被加熱物である魚骨を焼成して焼成骨粉を製造し、炉外に取り出す焼成骨粉用の加熱炉であって、
上段側に設けられ魚骨に付着する有機物を熱分解させる低温加熱室と、該低温加熱室の下段側に隔壁を介して設けられ高温で加熱焼成する高温加熱室と、
前記低温加熱室と前記高温加熱室とを連絡すると共に前記低温加熱室から前記高温加熱室に前記被加熱物を移行させる開口とを有し、
前記低温加熱室は、環状空間と、被加熱物を搬送するエンドレス状の上方移送手段と、
前記高温加熱室は、前記低温加熱室の下段側に設けられた環状空間と、該環状空間に火炎ガスを吹き込むバーナと、被加熱物を搬送するエンドレス状の下方移送手段とを有し、
前記低温加熱室は、該高温加熱室からの熱で加熱されることを特徴とする。被加熱物は魚骨である。
【0005】
前記バーナは、前記環状空間に連通した燃焼室に設けることが好ましい。
【0006】
前記燃焼室は、前記環状空間の側面に複数設け高温加熱室内に火炎ガスを吹き込み高温の加熱領域を形成することが好ましい。
【0007】
前記低温加熱室は、前記高温加熱室からの熱風と炉床全域に設けられた隔壁を介しての加熱で低温の加熱領域を形成することが好ましい。
【0008】
前記被加熱物は、前記低温加熱室で加熱された後、連続して前記高温加熱室で加熱されることが好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の環状多段加熱炉は、炉内で被加熱物を低温加熱室から高温加熱室へ連続して搬送して加熱することを目的とするものである。すなわち、この環状多段加熱炉は、環状空間の低温加熱室と高温加熱室を重ねて多段構造とし、被加熱物を上方の低温加熱室から下方の高温加熱室に向けあるいはその逆に搬送し、低温加熱室内および高温加熱室内に設けた所定温度の加熱領域を通過させて連続して加熱処理できる。したがって、被加熱物が処理工程の途中で加熱炉の外に取り出すことなく加熱処理することが可能となる。このため、被加熱物の熱が外気に放散されることが少なくなり、熱効率を高めて加熱処理することが可能となる。
【0010】
また、環状多段加熱炉は、炉内がエンドレス構成であるため、円形状のみでなく、楕円形状あるいは両端部を円弧状にした長方形状としてもよい。
【0011】
本発明の環状多段式加熱炉は、加熱炉内の上段側に低温加熱室を、該低温加熱室の下段側に隔壁を介して順次高温となる高温側加熱室を、複数設けることができる。
【0012】
低温加熱室は、周囲を炉壁で囲まれた直方体形状の環状空間を有し、被加熱物を収納もしくは載置した容器をエンドレス状で搬送する上方移送手段を有する。この上方移送手段としては、例えばリフト、ベルトコンベアまたは台車などが利用できる。
【0013】
低温加熱室内では、被加熱物は、高温加熱室から送られる熱風あるいは高温加熱室から熱伝導される熱により加熱される。低温加熱室での加熱は、高温加熱室から送られてきた熱風の送風口と排気口を設けて、環状空間内の熱風の送風口と排気口との間の領域を特定温度の加熱領域となるように設定するのが好ましい。低温の加熱領域は大きさは、被加熱物への伝熱や加熱処理温度、上方移送手段での被加熱物が移動に要する時間などを勘案して調整することが好ましい。
【0014】
低温加熱室の下方に設けた高温加熱室は、周囲を炉壁で囲まれた直方体形状の環状空間を有し、被加熱物を収納もしくは載置してエンドレス状に搬送する下方移送手段を有する。下方移送手段としては、上方移動手段と同じものが利用できるが、前者より温度が高いことを考慮して選択するのが好ましい。
【0015】
高温加熱室の加熱は、バーナによる火炎ガスを環状空間に吹き込んで加熱する。環状空間に吹き込まれる火炎ガスの熱は、高温加熱室の室内を所定の温度に保持すると共に、さらに熱を保持して低温加熱室を所望の温度に加熱する。このために燃焼用のバーナを配置し、高温加熱室の環状空間との間に連通窓を設けた燃焼室を、高温加熱室の側面に複数個設けることが好ましい。
【0016】
上記燃焼室で形成される火炎ガスの熱は、連通窓から高温加熱室に送り込まれ環状空間を所定の温度に加熱する。高温加熱室に吹き込まれる熱は、環状空間の特定領域に集中させて、高温の加熱領域を形成することが好ましい。この高温の加熱領域を形成するには、燃焼室を近接して複数個を設けて、火炎ガスを吹き込むことで環状空間内に高温の加熱領域が形成できる。高温の加熱領域は、被加熱物が搬送されている間に充分な加熱処理を受けることができるような大きさの領域とすることが好ましい。この条件を考慮して燃焼室の位置および数が設定される。
【0017】
また、高温の加熱領域は、吹き込まれた熱を低温加熱室に送風されるので、燃焼室から吹き込まれる火炎ガスの熱と低温加熱室に送風される熱量とのバランスを調整することが求められる。このために、高温加熱室の側面に設ける燃焼室の数および位置は、所定の温度で充分加熱できる充分な大きさの高温の加熱領域の大きさを考慮して、燃焼バーナの能力や、燃焼室の位置および数を適宜選択するのが好ましい。具体的には、高温加熱室の両側に対称位置に一対ずつ一定の間隔を置いて3個以上設けるのが望ましい。
【0018】
燃焼室内のバーナが着火されて形成された火炎ガスの熱は、燃焼室に送風される空気などを利用して燃焼室の連通窓から高温加熱室に吹き込まれる。複数のバーナから送り込まれる火炎ガスの熱は、高温の加熱領域を形成すると共に、高温領域に設けた排気口からパイプと送風フアンを介して、高温加熱室の加熱領域の温度を低下させないように調節して低温加熱室に送られる。低温加熱室では送り込まれた熱で環状空間内に低温の加熱領域が形成される。また、高温加熱室との隔壁を介しての熱でも低温加熱室は加熱を受ける。
【0019】
高温の加熱領域で捕集されて低温加熱室へ送り込まれる熱風の開口端の位置は、所定温度の加熱領域が充分に形成できるならば、特に特定されるものではない。加熱領域は、低温加熱室および高温加熱室共に送風パイプなどの長さなどを考慮すれば上下の同じ位置付近に設定するのが好ましい。また、低温加熱室および高温加熱室の環状空間内にそれぞれ被加熱物が充分に加熱を受けられる加熱領域が形成されておれば、環状空間内の全体を同じ温度に保持しなくても良い。
【0020】
なお、低温加熱室は、高温室からの熱風のみでは熱量が不足するときは補助用の熱源から熱を導入しても良い。さらに、低温加熱室から排出される排気熱は、燃焼室の火炎ガス熱を高温加熱室に導入する気流の加熱、または低温加熱室に再導入して熱を有効に利用することもできる。
【0021】
低温加熱室は、高温加熱室の上に1段だけでなく複数段設けて、同様に下段側の熱を送風するようにして加熱すること多段加熱室を構成することができる。
【0022】
低温加熱室の加熱は、高温加熱室からの温風による加熱を主体とし、下方に設ける高温加熱室の炉壁からの伝熱および低温加熱室から排出される可燃ガスを燃焼で生じる熱等を補助的に使用することができる。
【0023】
また、加熱炉内の雰囲気の制御には、複雑な炉体構造と機構が必要で、かつ制御のためには高価な不活性ガスを多量に必要である。本発明の環状多段加熱炉の場合は、低温側の加熱室と高温側の加熱室が全域にわたり隔壁によって完全に遮断されているため、低温加熱室と高温加熱室とを全く異なった雰囲気、たとえば酸化、還元雰囲気に保っての加熱が容易に経済的に行うことが可能である。
【0024】
被加熱物は、加熱炉の上面に設けた導入口から加熱炉内に取り込まれ、低温加熱室内を周回し終わった位置で、下方の高温加熱室に自動的に移行させるリフトなどの移行手段が設けると共に、高温加熱加熱室を周回を終えた後、炉外に取り出す開口を設けて置くのが好ましい。
【0025】
【実施例】
以下、図面を参照して本発明に係る加熱炉の一例に基づいて説明する。
【0026】
この加熱炉Aは図1の断面図に示すように架台の上に載置され周囲を断熱用の炉壁で囲まれ、下段に高温加熱室30がその上段には隔壁を介して低温加熱室31が載置されている。高温加熱室30の高温の加熱領域を形成する部位の環状空間には、側面に加熱バーナ32を備えた一対の燃焼室33が適宜の間隔で設けられている。燃焼室33の高温加熱室30側は、連通窓43が設けられ火炎ガスの熱を風圧を介して燃焼室33から加熱室30に導入して、所定温度の加熱領域を形成する。
【0027】
高温加熱室30の床面側には、室内をエンドレス状に移動する下方移送手段34を構成するレールと台車が設けてある。高温加熱室30の上段には、隔壁で高温加熱室30から仕切られた低温加熱室31が周囲を断熱材で覆い熱の飛散を防いだ環状空間を形成している。低温加熱室31の天井部には被加熱物の収納容器を吊ってエンドレス状に移動可能な上方移送手段35のリフト用のレールが設けてある。
【0028】
図2は加熱炉Aの上面部を示すもので、加熱炉Aは全体が環状構造であり、その環状構造の中心部位に位置番号1から24で一巡する各ステージを持つ環状空間の高温加熱室30と低温加熱室31が下段と上段に配置されている。加熱炉Aの上面部には被加熱物の導入口36と高温加熱室30から低温加熱室31内へ熱風を送風する送風用のパイプ37および送風ファン38が配置されている。
【0029】
低温加熱室30の位置番号23位には、低温加熱室31を加熱した排熱ガスの排出口39が設けられパイプを介してで導かれて排気ガス処理部40に導かれる。排気ガス処理部40では発生した熱分解ガスなどの排ガスの焼却処理を行う。この排ガス処理で生じた熱は、低温加熱室31に戻すパイプが設けてある。
【0030】
図3は図2に示した加熱炉Aの環状空間の中心部位の1位と24位との間を切断して展開した側断面の展開図である。この図3の下方には加熱炉Aの中心部位の1位から24位における高温加熱室30内および低温加熱室31内の温度分布の状況の一例を示すグラフが示してある。
【0031】
加熱バーナ32は環状構造の加熱炉Aの図2に示した環状空間の中心部位の位置番号8、12、15と16の間、18、20の5箇所の両側位置に設けた燃焼室33内に配置されている。燃焼バーナ32に供給される燃料で形成された火炎ガスの熱が燃焼室33へ外部より導入される空気により連通窓43を通して高温の熱風が高温加熱室30内に導入される。この熱風で高温加熱室内に高温の加熱領域が形成される。図2の位置に示した上記の5箇所にバーナが配置された場合は、温度分布のグラフが示すように高温加熱室30内の位置番号12位から20位までが高温の加熱領域40となり、1000℃〜1200℃(耐火炉材の使用によってはそれ以上)の高温度の加熱領域40が形成できる。
【0032】
高温燃焼室30の高温領域40に設けられた開口を持つ送風用のパイプ43と循環ファン44を介して高温加熱室30の熱風が低温加熱室31の位置番号14位付近に吹き出し、低温加熱室31内の位置番号11位から22位付近の領域が図3の温度グラフに示した低温加熱室内の加熱領域41が形成され、およそ500℃の温度に保持した加熱領域41となる。
【0033】
低温加熱室31の位置番号23位には、排気口を設け加熱に使用された導入風を排気して低温加熱室31内の気圧を常圧に保持するように調整する。そして、加熱処理時に生じた可燃物を含む排気ガスの場合には、排気ガスを燃焼させる燃焼炉を設けて処理する。その際生じる熱は再度低温加熱室31に送風して低温加熱室31の温度低下を防いでも良い。また、低温加熱室31の加熱領域は41は、高温加熱室30との遮蔽壁の伝熱性を高めて、伝熱による熱を活用することもできる。
【0034】
被加熱物は、環状構造の加熱室内での位置を示す番号4位に設けた低温加熱室31の上面側の導入口36から導入され、前記のエンドレス状の移動手段35のリフトで吊り下げられて低温加熱室31内を円弧を描いて一周して導入口36に近い位置番号2の位置に到着した時点で、下方の高温加熱室30と連絡した開口から下方の高温加熱室内に移行してエンドレス状の下方移動手段36の台車に載せられて周回する。
【0035】
加熱炉Aの上段側に設けた導入口36から低温加熱室31に導入された被加熱物は、加熱室内に設けたエンドレス状の上方移送手段35により低温加熱室31内を一巡する間に位置番号11から22位の加熱領域41の温度で加熱処理を受ける。加熱処理を受けた被加熱物が低温加熱室31の位置番号1に達すると、次の位置番号2位で下段側の高温加熱室30に移される。高温加熱室に30に移された被加熱物は、下方移送手段34により高温加熱室30内を一巡する間に位置番号9から20位の加熱領域40で所定の熱履歴を受ける。その後、加熱処理済みの被加熱物は、位置番号1位に到達した段階で炉外に取り出される。したがって、被加熱物は、加熱工程を通じて炉外に取り出されることなく、連続的に所定の低温から高温に加熱され多段階の熱処理を受けることができる。
【0036】
【発明の効果】
本発明の環状多段加熱炉によれば、被加熱物を低温側から順次高温に連続して加熱することができる。このため被加熱物が外気により冷却されることなく、その予熱を保持したまま高温に加熱することができるので熱効率を高めた加熱炉である。そしてこの高温加熱室は1000℃〜1200℃(耐火炉材の使用によってはそれ以上)の温度で加熱することができる多段式の加熱炉である。
【0037】
さらに、低温加熱室と高温加熱室とを連続させて一体化し上下二段に配置することができ、加熱炉を設置する場所空間の節約もでき高温加熱室の熱風を利用して低温加熱室の加熱を行うので熱効率の面でも効果を高めた加熱炉である。
【0038】
本発明の環状多段加熱炉は、高温加熱室へ熱風を送風して炉内に加熱領域を形成して温度を制御するので加熱室全体を特定に温度にする必要がないので加熱温度の制御が容易となる利点を持つ。さらに、低温側の加熱室と高温側の加熱室が全域にわたり隔壁によって完全に遮断されているため、低温加熱室と高温加熱室とを全く異なった雰囲気、たとえば酸化、還元雰囲気に保っての加熱が容易に経済的に行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例で用いた加熱炉の断面図である。
【図2】本発明の実施例で用いた加熱炉の上面側の説明図である。
【図3】本発明の実施例で用いた加熱炉の側断面説明図である。
【符号の説明】
A:加熱炉、 30:高温加熱室、 31:低温加熱室、
32;燃焼バーナ、 33:燃焼室、 34:下方移送手段、
35:上方移動手段、 36:被処理物の導入口、 40:高温の加熱領域、
41:低温の加熱領域、
Claims (5)
- 被加熱物である魚骨を焼成して焼成骨粉を製造し、炉外に取り出す焼成骨粉用の加熱炉であって、
上段側に設けられ魚骨に付着する有機物を熱分解させる低温加熱室と、該低温加熱室の下段側に隔壁を介して設けられ高温で加熱焼成する高温加熱室と、
前記低温加熱室と前記高温加熱室とを連絡すると共に前記低温加熱室から前記高温加熱室に前記被加熱物を移行させる開口とを有し、
前記低温加熱室は、環状空間と、被加熱物を搬送するエンドレス状の上方移送手段と、
前記高温加熱室は、前記低温加熱室の下段側に設けられた環状空間と、該環状空間に火炎ガスを吹き込むバーナと、被加熱物を搬送するエンドレス状の下方移送手段とを有し、
前記低温加熱室は、該高温加熱室からの熱で加熱されることを特徴とする焼成骨粉用の環状多段式加熱炉。 - 前記バーナは、前記環状空間に連通した燃焼室に設けられた請求項1に記載の焼成骨粉用の環状多段加熱炉。
- 前記燃焼室は、前記環状空間の側面に複数設けられ高温加熱室内に火炎ガスを吹き込み高温の加熱領域を形成する請求項2に記載の焼成骨粉用の環状多段加熱炉。
- 前記低温加熱室は、前記高温加熱室からの熱風と炉床全域に設けられた隔壁を介しての加熱で低温の加熱領域を形成する請求項1に記載の焼成骨粉用の環状多段加熱炉。
- 前記被加熱物は、前記低温加熱室で加熱された後、連続して前記高温加熱室で加熱される請求項1に記載の焼成骨粉用の環状多段式加熱炉。
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