JP4090847B2 - Pcbの分析法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、PCBの分析法に関し、特に前処理が困難である絶縁油中等、炭化水素による妨害が多量に混在する被検試料においても前処理が簡便且つ安価にPCBの定量分析ができる方法に関する。本明細書で、絶縁油等とは、本来の絶縁油の他に各種鉱物油を含む広い概念である。また油性液体とは、鉱物油、植物・動物油、合成油等を含む概念である。
【0002】
本発明のPCB分析法は、絶縁油ばかりでなく、絶縁油以外の油性液体中、及び、排水中、土壌溶出液、土壌成分中、排ガス中、さらには大気中等に含まれるPCB分析にも適用できるものである。
【0003】
【従来の技術】
PCBの公知の分析法として、JIS K0093に規定されている工場排水中のポリ塩化ビフェニル(PCB)の試験方法がある。この方法はシリカゲル、フロリジルなどの順相系充填剤を使用したカラムクロマトグラフィーにより試料を精製し、電子捕獲形検出器付きガスクロマトグラフィーにより測定する方法である。しかし、この方法では低塩素化PCB、例えば1塩化物に対する感度が低く、また絶縁油中のPCBに対してはクリーンアップの効果が充分でないこと等の問題点がある。
【0004】
また、こうした問題点を解決した方法として、ダイオキシン等の分析に用いられているジメチルスルホキシドによる液液分配と多層シリカゲルカラムを組み合わせた前処理を行ない、高分解能質量分析器付きガスクロマトグラフ(ガスクロマトグラフ質量分析計)による方法がある。しかし、この方法の場合、▲1▼前処理に数日から1週間程度の膨大な時間を要する、▲2▼前処理操作者の熟練を要する、▲3▼大量の有機溶剤を使用しなければならない、▲4▼高価で複雑な操作を要する高分解能質量分析器付きガスクロマトグラフを使用しなければならない等の問題点がある。
【0005】
PCBの化学的分解処理方法は、化学反応によりPCBを脱塩素化するものである。したがって、処理前には反応条件を設定するためPCB濃度の決定を行なう必要があり、反応後にはPCBが分解されたことを確認するためにPCB濃度の測定を迅速に行なう必要がある。しかし、絶縁油中に混入したPCBの分析は上記の通り、従来法では困難である。
【0006】
上記、化学的分解処理において、日常管理を目的にPCBの迅速分析とされる分析法があるが、電子捕獲形検出器付きガスクロマトグラフィーを用いるため、低塩素化物の感度が低い、また、絶縁油成分とPCBの分離、PCBの濃縮にシリカゲル、フロリジル、逆相系充填剤を用いたカラムクロマトグラフィーを用いるため、分析後の充填剤が廃棄物になる等の問題点がある。
【0007】
なお、本発明の発明性に影響を与えるものではないが、本発明に使用するのと同様な、四重極形のガスクロマトグラフ質量分析計を用いて、選択イオン検出法で測定する技術が特許文献1に開示されている。しかし、当該方法は、下記のような面倒な前処理を必要とするものである。
【0008】
「極性溶媒を用いて被験試料である絶縁油中からPCBを抽出し、PCBを抽出した極性溶媒を固相抽出器に通してPCB画分を分離し、該PCB画分からPCBを揮発性溶媒に転溶する前処理」
【0009】
【特許文献1】
特開2000−88825公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上記の如く、従来では、感度が良く、分離、濃縮にカラムクロマトグラフィーを用いない、絶縁油中等のPCBを分析する技術は、本発明者らが知る限りにおいては見出されていなかった。
【0011】
本発明は、上記した従来技術の問題点を解消し、短時間で簡便且つ安価な前処理により、絶縁油中等の妨害物質が多量に混在する被検試料中のPCBの定量分析を可能とするPCBの分析法を提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明のPCB分析法は、絶縁油ばかりでなく、絶縁油以外の油性液体中、及び排水中、土壌溶出液、土壌成分中、排ガス中、さらには大気中等に含まれるPCB分析においても、煩雑で、前処理操作者の熟練を要す、カラムクロマトグラフィー等の前処理操作を省略することができるPCBの分析法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題
(目的)を下記の手段により解決するものである。
【0014】
PCBを含有する絶縁油、植物・動物油、合成油等の油性液体を被検試料として、ガスクロマトグラフ質量分析計を用いてPCBの質量分析をする方法において、
被検試料を、揮発性を有する非極性ないし極性有機溶媒で希釈ないし定容して測定試料とし、測定試料をガスクロマトグラフに導入してPCBの各成分に分離後、質量分析器におけるイオン化として負化学イオン化(NCI)を選定し選択イオン検出(SIM)により測定することを特徴とする。又は、
PCB含有体を被検試料として、ガスクロマトグラフ質量分析計を用いてPCBの質量分析をする方法において、
被検試料を、抽出操作等を経て、揮発性を有する有機溶媒で定容して測定試料とし、該測定試料をガスクロマトグラフに導入してPCBの各成分に分離後、質量分析器におけるイオン化として負化学イオン化(NCI)を選定し選択イオン検出(SIM)により測定することを特徴とする。
【0015】
本発明者らは、質量分析器のイオン化の方法としてNCIを選定することにより、絶縁油等被検試料に含まれる炭化水素等成分の感度を実質的に無くすることができることを見出した。その結果、PCBを含有する被検試料を、必要により抽出操作等の前処理を行い、非極性・極性溶媒(有機溶媒)で適宜濃度に希釈ないし定容する前処理のみで、PCBが高感度で検出することが可能となった。
【0016】
すなわち、被検試料が(1)絶縁油等の油性液体試料の場合は、該被検試料を抽出操作を経ずにそのまま、(2)排水、土壌溶出液等の水性液体試料の場合は、抽出操作により得た抽出液に、必要により、脱水操作(抽出液に水を含む場合)及び/又は濃縮操作(PCBが低濃度の場合)を加えるだけで、(3)土壌等の固体試料の場合は、抽出操作により得た抽出液を、必要により、脱水操作及び/又は濃縮操作を加えるだけで、(4)排ガス、大気等から採取した捕集試料である場合は、各捕集試料を抽出操作により得た抽出液を合わせたものを、必要により、脱水操作及び/又は濃縮操作を加えるだけで、それぞれ、揮発性を有する非極性・極性溶媒(有機溶媒)で希釈ないし定容して測定試料とすることができ、後述の実施例で示す如く、従来法(精密法や公定法等)に比して前処理時間を削減できる。
【0017】
従って、従来、カラムクロマトグラフを用いなければ、PCBとの分離ができず、PCBの分析に影響してPCBの分析が困難であった問題点を解決できた。
【0018】
上記非極性溶媒又は有機溶媒は、特に限定されないが、炭素数5〜10の脂肪族炭化水素を使用することが望ましい。
【0019】
例えば、被検試料が油性液体の場合は、希釈濃度(被検試料の重量/非極性溶媒又は極性溶媒の容量)は、PCBの濃度にもよるが、通常、10g/L〜1mg/Lとする。
【0020】
PCBは、塩素化化合物類であるため、SIMにおける選択イオンである塩素の特定質量(質量/電荷数:m/z)=約35又は約37を設定することにより、感度良好に分析が可能となる。
【0021】
さらに上記構成において、定量法として内標準法を用い、非極性溶媒ないし極性溶媒又は有機溶媒に溶解するハロゲン化合物、具体的にはジブロモナフタレンを内標準物質として導入することが望ましい。分析精度を向上させることができるためである。
【0022】
内標準物質としてジブロモナフタレンを使用するときは、内標準物質の選択イオンである臭素の特定質量(m/z)として約79又は約81を選定する。
【0023】
そして、質量分析器付きガスクロマトグラフィーとしては、通常、四重極形質量分析器を使用することが望ましい。取り扱いが容易で、本発明の方法の目的である迅速且つ簡便な分析を担保しやすくなる。
【0024】
さらに、上記PCBの分析法において、内標準法で補正した係数法を用いて2〜9の塩素化物の濃度を、また、内標準法で補正した検量線を用いて1・10塩素化物の濃度をそれぞれ算出することにより、従来法である精密分析法に比して、容易に、1〜10塩素化物の組成を定量することが可能となる。
【0025】
また、上記内標準法で補正したパターン合わせ法を用いることにより、容易に、総PCBを精度良好に定量可能となる。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明におけるPCBの分析法を、従来法では前処理が困難な絶縁油中のPCB分析法を主として例に採り、さらに詳しく説明するが、本発明はこれに限定されない。すなわち、本発明のPCB分析法は、液体(油性・水性)、固体、気体の各種形態のPCB含有体の被検試料にも、後述の実施例で示す如く適用できるものである。
【0027】
本発明は、基本的には、ガスクロマトグラフ質量分析計を用いてPCBの定量分析をする方法である。なお、以下の説明で用語及びそれらの説明は、▲1▼JISK0093−1995「工場排水中のポリ塩化ビフェニル(PCB)の試験方法」、▲2▼JIS K0114−2000「ガスクロマトグラフ分析通則」及び▲3▼JIS K 0123−1995「ガスクロマトグラフ質量分析通則」を引用又は参照したものである。以下、参照するときは、それぞれ「JIS▲1▼」、「JIS▲2▼」、「JIS▲3▼」と記す。
【0028】
ガスクロマトグラフ質量分析計の装置構成は、例えば、図1に示すような構成を備え(JIS▲3▼p.2)、また、本実施形態では、図2に示すような「四重極形装置」を使用する(同p.3)。
【0029】
本実施形態の分析法は、基本的には、被検試料(被験試料)を、揮発性を有する非極性溶媒で希釈して測定試料とし、該測定試料をガスクロマトグラフに導入してPCBの各成分に分離後、質量分析器におけるイオン化として負化学イオン化(NCI)とし選択イオン検出(SIM)により測定することを特徴とするものである。
【0030】
ここで、非極性溶媒は、被検試料である絶縁油を溶解可能で揮発性(カラム温度(180〜250℃)で完全にガス化可能である必要がある。)を有するものなら特に限定されない。被検試料がPCBを含有する絶縁油の場合、炭素数5〜10の炭化水素類が使用可能である。炭化水素類としては、キシレン、トルエン等の芳香族、シクロヘキサン等の脂環式でもよいが、脂肪族系、特に飽和脂肪族系炭化水素が入手しやすく、揮発性が良好なものが多いため望ましい。具体的には、ペンタン(C5)、ヘキサン(C6)、ヘプタン(C7)、オクタン(C8)、ノナン(C9)等を挙げることができる。これらの炭化水素類は、絶縁油およびPCBを良く溶解し、且つ、ガスクロマトグラフに効率的に導入できるためである。
【0031】
希釈は、通常、被検試料であるPCBを含有した絶縁油を小型メスフラスコまたは小型試験管(たとえば、10mL)に直接、秤量し、非極性溶媒を加えて絶縁油のPCBの各濃度に対応させて約10g/L〜1mg/Lの濃度に希釈して測定試料とする。具体的には、
の各濃度に希釈する。
【0032】
そして、本発明では、質量分析器のイオン化の方法として負化学イオン化(NCI)を選定することを最大特徴とする。以下、負化学イオン化及び電子衝撃イオン化(EI)によるガスクロマトグラフ質量分析を、それぞれ、「GC/MS−NCI」及び「GC/MS−EI」と略号表記する。
【0033】
イオン化法として、電子衝撃イオン化(EI)と化学イオン化(CI)があるが、EIでは、また、CIでも正イオン化(PCI)では、絶縁油の主成分である炭化水素がPCBのピークに重なって、PCBの正確な測定(分析)ができない。
【0034】
これに対して、NCIでは、ガスクロマトグラフで分画(分離)されたPCBの各成分をイオン化部でイオン化させて四重極などの質量分離部へ導入する、選定(選択)イオンである塩素イオン、内標準物質として臭化化合物を非極性溶媒に添加した場合は、塩素イオンに加えて臭素イオンのみが検出部へ導入される。塩素イオン及び臭素イオン以外のイオンは検出部に導入されない。
【0035】
したがって、絶縁油の主成分である炭化水素がPCBに重なることなく、PCBの正確な測定ができる。
【0036】
また、NCIに際しての、イオン源温度は、高い方が、イオン化部で発生する塩素イオン、臭素イオンのイオン量が増大して感度が高くなって望ましい。したがって、通常、質量分析器の最高温度である250℃近くである、200〜250℃の温度の範囲で設定する。
【0037】
GC/MS−NCIによる測定時のガス量は、多量に流したほうが、感度が高い。しかし、多量に流すと質量分析部の真空度が低下するため、安定して測定できる量、例えば、1.5〜2.3mL/min、望ましくは、2.3mL/min前後とする。
【0038】
また、測定の方法として選択イオン検出(SIM)を用いるのは、塩素イオン又は内標準物質として臭素化合物を添加した場合は、塩素イオンに加えて臭素イオンのみを検出部に導入するためであり、塩素イオン又は臭素イオンの選択性を向上させ、S/N比(シグナルとノイズの比)高くすることで感度が良好となるためである。
【0039】
そして、その際の選択イオンである塩素の特定質量(m/z)として、通常、35又は37を選定するが、分析に使用するガスクロマトグラフ質量分析計の分解能に応じて、約35(35前後)又は約37(37前後)であってもよい。また、内標準物質として後述の如く、ジブロモナフタレン等の臭素化化合物を使用する場合はさらに選択イオンである臭素の特定質量(m/z)として、通常、79又は81を選定するが、前述の理由により、約79(79前後)又は約81(81前後)であってもよい。
【0040】
定量法としては、絶対検量線法又は内標準法のいずれでもよい(JIS▲2▼p16・17)。これらの内で、内標準法が、質量分析器の感度変動を補正することが容易であるため望ましい。
【0041】
そして、内標準法を選定する場合、内標準物質としては、非極性溶媒に溶解可能で、且つ、塩素化合物以外のハロゲン化合物(選択イオン検出において分離でき、PCBのピークと重ならない。)を使用する。具体的には、ジブロモナフタレン(通常、1,4−ジブロモナフタレン)等が好適に使用できる。
【0042】
分析に使用するガスクロマトグラフ質量分析計としては、特に限定されないが、前述の如く、四重極形装置が、取り扱いが容易で、本発明の方法の特徴である迅速かつ簡便である利点がより生かされるため、好ましい。
【0043】
そして、本実施形態の定量分析におけるPCBの2〜9塩素化物を個別定量する場合は、測定値の算出は、通常、内標準法で補正した係数法により行なう(前記JIS▲1▼p5〜8)。
【0044】
このとき各ピーク値のCB0(%)は、本実施形態では、GC/MS−NCIで分析を行なうため、本発明者らは、下記方法によってCB0(%)を求めた。
【0045】
すなわち、GC/MS−NCIでは、各PCBの分析を行なうと、塩素化数が同じでも、塩素の配位位置が異なると、感度が異なることを、本発明者らは見出した。
【0046】
図3に示すように、同じ塩素数の塩素化物で、同じ濃度のものであっても、塩素の配位位置が異なるとピークの高さ及び面積の強度(感度)が異なる。例えば6塩素化の場合、2,2',3,4,5,5'−と2,2',4,4',5,5'−は、同一濃度であるにもかかわらず、高さ及び面積の強度(感度)が異なる。そして、感度が異なると、PCB異性体(全209種類)の標準物質を用意する必要があり非常に面倒である。
【0047】
このため、PCB混合標準液(JIS▲1▼p5(3.2.2.1)*)を用意し、該PCB混合標準液における2〜9塩素化物の組成を、被検試料の分析条件(分離カラム・温度等)と同じにして四重極形の質量分析計を用いて電子衝撃法(EI)を選定し測定し、2〜9塩素化物の成分割合:CB0(%)を求めた。ここで、GC/MS−EIを使用するのは、各ピークの塩素原子数を知るためとともに、塩素の配位位置により感度が違わないためである。
【0048】
*)PCB混合標準液とは、JIS▲1▼p5(3.2.2.1)に記載されている、KC−300、KC−400、KC−500、KC−600を、1:1:1:1の重量比(質量比)にはかりとり、ヘキサンを加えて溶解したのち、PCBの合計の濃度が1mg/Lとなるようにヘキサンを加えたものをいう。
【0049】
上記で求めたCB0(%)を表1に示す。なお、重なったピークは、CB0(%)が高い成分の塩素化数とし、各ピークのリテンションタイム(保持時間)は、標準試料(PCB混合標準液)をGC/MS−NCIで分析時のそれに合わせた。標準試料について、GC/MS−NCIで得たクロマトグラムを図4に示す。
【0050】
次に、被検試料の分析及びPCBの個別濃度の算出方法について説明をする。
【0051】
標準試料(PCB混合標準液において無添加絶縁油(新油)が10g/Lの濃度(10000ppm)となるようにしたもの)について、GC/MS−NCIに定容注入し、得られたクロマトグラムから、表1のピーク番号ごとにピーク面積(H1)を読み取り、K値を式▲1▼で求める。
【0052】
K=CB0(%)/H1・・・▲1▼
次に、測定試料についても同一条件で、GC/MS−NCIに注入して得られたクロマトグラムからピーク面積(H2)を読み取り(S/N=3以上のピーク)、各ピーク面積からM値を式▲2▼で求める。
【0053】
M=K×H2・・・▲2▼
そして、式▲3▼又は内標準補正をする場合は式▲4▼に基づいて測定試料の各塩素化物PCB濃度又は合計PCB濃度(2〜9塩素化物)を算出する。
【0054】
但し、A:標準試料の内標準ピーク強度
B:測定試料の内標準ピーク強度
1・10塩素化物の個別濃度を求める場合は、別に用意した1塩素化物(3異性体)及び10塩素化物について、GC/MS−NCIを用いて、内標準法で補正して検量線法(前記JIS▲2▼、p15)で検量線を作成し、当該検量線に基づいて、1・10塩素化物の濃度を算出する。
【0055】
さらに、塩素化数別の定量が必要でなく合計PCB濃度を求める場合は、係数法より簡便な定量法である内標準法で補正したパターン合わせ法(検量線法)(JIS▲1▼、p5)で、求めることも可能である。
【0056】
【表1】
上記においては、被検試料としてPCBを含有する絶縁油(鉱物油)を例にとったが、この技術は、図5に示す如く、油性液(絶縁油等を除く。)、排水中、底質中、土壌中、排ガス中、大気中、作業環境中から採取したものを、揮発性を有する有機溶媒(非極性溶媒ないし極性溶媒)で希釈又は抽出した各液(通常、内標準物質を添加する。)を定容し測定試料としてガスクロマトグラフに導入してPCBの各成分に分離後、質量分析器におけるイオン化として負化学イオン化(NCI)を選定し、選択イオン検出(SIM)により測定することも可能である。
【0057】
すなわち、油性液(絶縁油等を除く。)の場合は、その油性液を溶解する有機溶媒(非極性溶媒(例えば、ヘキサン)あるいは極性溶媒(たとえば、アルコール類))で希釈定容をし、さらに内標準物質を添加して測定試料とする。
【0058】
排水中の場合は、排水中に有機溶媒(たとえば、ヘキサン)を添加し、PCBを有機溶媒中に抽出し、その抽出液を濃縮後、内標準物質を添加して測定試料とする。
【0059】
底質中および土壌中の場合は、測定形態が成分と溶出液があり、成分中においては、底質試料または土壌試料に有機溶媒(たとえば、ヘキサン)を添加し、排水中同様にPCBを有機溶媒中に抽出し、その抽出液をろ過後、内標準物質を添加して測定試料とする。
【0060】
溶出液は、底質試料または土壌試料に水を加えて振とうし、溶出液を作成後、その溶出液に有機溶媒(たとえば、ヘキサン)を添加し、排水中同様にPCBを有機溶媒中に抽出し、その抽出液を濃縮後、内標準物質を添加して測定試料とする。
【0061】
排ガス中は、吸収液と吸着剤を用いて採取し、吸収液および吸着剤から、PCBを有機溶媒(非極性溶媒(たとえば、ヘキサン)あるいは極性溶媒(たとえば、アルコール類))を用いて、抽出を行ない、内標準物質を添加して測定試料とする。
【0062】
大気中および作業環境中は、ろ紙と吸着剤を用いて採取し、ろ紙と吸着剤からPCBを有機溶媒(非極性溶媒(たとえば、ヘキサン)あるいは極性溶媒(たとえば、アルコール類))を用いて、抽出を行ない、内標準物質を添加して測定試料とする。
【0063】
図6に排水中から、図7に土壌中からそれぞれ採取してGC/MS−NCI分析をする場合における概念流れ図を示す。
【0064】
【発明の効果】
本発明において絶縁油中に混入したPCB等、前処理に膨大な時間を要す被検試料においても、ガスクロマトグラフィーによる分析に支障がない状態に希釈することで、短時間且つ簡易に測定することができる。また、高分解能質量分析器付きガスクロマトグラフィーを必要とせず、四重極形質量分析器付きガスクロマトグラフィーで簡易に分析することができる。
【0065】
本発明者らは、本発明の方法で絶縁油中のPCBの定量下限値は、0.3mg/kg・絶縁油であり、前処理から質量分析器付きガスクロマトグラフィーによる測定時間を合わせても、前処理15分、分析25分、データ処理20分と合計約60分(1時間)以内に結果を得ることができることを確認している。
【0066】
また、本発明の分析法におけるGC−MS/NCI法は、後述の実施例で示す如く、被検試料中の塩素以外に感度がないため、絶縁油に限らず植物油等の他の油性被検試料中、さらには、排水中、土壌成分中、土壌溶出液、排ガス中および大気中等の各種液体・固体・気体被検試料中に含まれるPCB等においても、公定法等に記載されている煩雑な前処理であるアルカリ分解やシリカゲルカラム等による分離操作を省略でき、短時間且つ簡易に測定することができる。さらには、絶縁油の場合と同様に四重極形質量分析器付きガスクロマトグラフィーで簡易に分析することができる。
【0067】
【実施例】
以下、各種被検試料について行なったPCB分析法の各実施例について説明をする。なお、本発明のPCB分析法は、これらの実施例における被検試料に限定されるものではない。
【0068】
<実施例1>
本実施例は、絶縁油(油性試料)を被検試料とするPCB分析法の実施例である。
【0069】
本実施例のフローシートを、図8に示す。
【0070】
10mLメスフラスコに被検試料を0.1g精秤する。次いで、内標準物質のジブロモナフタレン(0.5mg/L:n−ヘキサン溶液)を1mL添加し、n−ヘキサンで10mLに定容して測定試料とした。
【0071】
なお、被検試料の希釈濃度は、10g/Lとなる。
【0072】
2〜9塩素化物の標準試料は、別の10mLメスフラスコにPCB混合標準液(KC−300、KC−400、KC−500、KC−600を1:1:1:1の重量比にはかりとり、n−へキサンを加えて溶解したのち、PCBの合計の濃度が20mg/Lとなるようにn−ヘキサンを加えて調製したもの)を0.5mLと新油0.1gを添加し、ついで内標準物質のジブロモナフタレン(0.5mg/L:n−ヘキサン溶液)を1mL添加し、n−ヘキサンで10mLに定容して調製した。
【0073】
また、1・10塩素化物の標準試料は、1塩素化物(3異性体)及び10塩素化物混合標準液(1塩素化物(3異性体)及び10塩素化物を各10mgはかりとり、n−ヘキサンを加えて溶解したのち、各濃度が0.1mg/Lとなるようにn−ヘキサンを加えて調製したもの)を0.1mL、0.5mL、1.0mL、5.0mLを各10mLメスフラスコに加え、また、その各メスフラスコに新油0.1gと内標準物質のジブロモナフタレン(0.5mg/L:n−ヘキサン溶液)を1mL添加し、n−ヘキサンで10mLに定容して調製した。
【0074】
上記、測定試料と各標準試料(2〜9塩素化物と1・10塩素化物)について、各3μLをGC/MS−NCI(四重極形のガスクロマトグラフ質量分析計(Hewlett Packard社 HP6890MSD))を用いて、選択イオン検出法(SIM)により測定して各クロマトグラムを得た。
【0075】
SIMの質量/電荷数(m/z)は、PCBについてm/z;35、内標準物質についてm/z;81で行った。他の具体的条件は、表2に示すとおりとした。
【0076】
そして、各塩素化物のPCB濃度の算出は、前述の方法、すなわち、2〜9塩素化物については係数法により、1・10塩素化物については検量線法により、それぞれ行なった。
【0077】
また比較のために、この被検試料についてジメチルスルホキシドによる液液分配と多層シリカゲルカラムを組み合わせた前処理を行ない、高分解能質量分析器付きガスクロマトグラフィーにより測定した(精密法)。
【0078】
そして、本発明法(本実施例)と精密法とで得られたPCB濃度測定結果の二つの例(サンプルA・B)を示す表3は、本発明の分析法により充分に確からしい測定結果を得ることができたことを示している。
【0079】
図9に本発明法と精密法のPCB濃度測定結果の相関関係図を示す。相関係数(R)は、0.9966(n=18)と非常に良好であることが分かる。
【0080】
【表2】
【0081】
【表3】
<実施例2>
また、総PCBの定量には、1〜10塩素化物を個別に定量することにより、簡便な定量法であるパターン合わせ法(検量線法)についても、分析精度の確認を行った。
【0082】
10mLメスフラスコに前述のPCB混合標準液と内標準物質のジブロモナフタレン(0.5mg/L:n−ヘキサン溶液)を1mL、ついで新油0.1gを添加し、PCB濃度が対絶縁油(新油)0.5、1.0、5.0、10、50、100mg/kgとなるようにn−ヘキサンで定容・調製した標準試料を段階的にGC/MS−NCIに導入して得たクロマトグラムからピーク面積を算出して図10に示す検量線を得た。
【0083】
そして、当該検量線を用いて被検試料のPCB合計濃度を定量した。
【0084】
同じ被検試料について、前述と同様高分解能質量分析器付きガスクロマトグラフィーにより定量した結果、本発明法と精密法とで得られたPCB濃度を比較したところ、本発明の定量法により充分確からしい測定結果を得ることができた。
【0085】
以上のことから、本発明のGC/MS−NCIを用いた絶縁油中のPCB定量法は、1〜10塩素化物の個別定量とパターン合わせ法ともに精密法とよく一致しており、充分確からしい測定結果を得ることができることを確認できた。
【0086】
<実施例3>
本実施例は、植物油(油性試料)を被検試料とするPCB分析法の実施例である。
【0087】
本実施例のフローシートは、図8に示す絶縁油中のPCB分析法と同様である。
【0088】
測定試料の調製方法は、実施例1同様に、10mLメスフラスコに被検試料を0.1g精秤して、次いで、内標準物質のジブロモナフタレン(0.5mg/L:n−ヘキサン溶液)を1mL添加し、n−ヘキサンで10mLに定容して行なった。
【0089】
標準試料の調製も実施例1と同様に行ない、GC/MS−NCIを用いて、SIMにより測定して各クロマトグラムを得た。
【0090】
SIMの質量数/電荷数(m/z)は、PCBについてm/z;35、内標準物質についてm/z;81で行った。他の具体的条件は、表2に示すものとした。
【0091】
そして、各塩素化物のPCB濃度の算出は、2〜9塩素化物については係数法により、1・10塩素化物については検量線により、それぞれ行った。
【0092】
また比較のために、この被検試料についてジメチルスルホキシドによる液液分配と多層シリカゲルカラムを組み合わせた前処理を行ない、高分解能質量分析器付きガスクロマトグラフィーにより測定した(精密法)。
【0093】
本発明法(本実施例)と精密法とでそれぞれ得られた植物油中PCB濃度の測定結果を示す表4は、本発明の分析法により充分に確からしい測定結果を得ることができたことを示している。
【0094】
【表4】
<実施例4>
本実施例は、排水を被検試料とするPCB分析法の実施例である。
【0095】
本実施例のフローシートを図11に示す。
【0096】
2L分液ロートに排水1Lを注入する。次いで、アセトン,n−ヘキサンを各50mL加え、振とう器で10min振とう抽出をする。この抽出操作を2回繰り返す。抽出液(ヘキサン層)を合わせて無水硫酸ナトリウムを用いて脱水する。
【0097】
次いで、ロータリーエバポレータを用いて80mLまで濃縮後、内標準物質のジブロモナフタレン(5mg/L:n−ヘキサン溶液)を1mL添加し、n−ヘキサンを用い100mLに定容して測定試料とした。
【0098】
GC−MS/NCI法は、測定試料中の塩素以外の炭化水素に感度がないため、JIS K0093−1995「工場排水中のポリ塩化ビフェニル(PCB)の試験方法」(JIS▲1▼)に記載されている水酸化カリウムのエタノール溶液(1mol/L)によるアルカリ分解およびシリカゲルカラムによる分離操作を省略できる。
【0099】
排水から測定試料の調製における前処理時間は、本発明法(本実施例)では2h要したが、JIS▲1▼による公定法では5h要した。
【0100】
2〜9塩素化物の標準試料は、10mLメスフラスコにPCB混合標準液(KC−300、KC−400、KC−500、KC−600を1:1:1:1の重量比にはかりとり、n−ヘキサンを加えて溶解したのち、PCBの合計濃度が20mg/Lとなるようにn−ヘキサンを加えて調製したもの)を0.5mL添加し、ついで内標準物質のジブロモナフタレン(0.5mg/L:n−ヘキサン溶液)を1mL添加し、n−ヘキサンで10mLに定容して調製した。
【0101】
また、1・10塩素化物の標準試料は、1塩素化物(3異性体)及び10塩素化物混合標準液(1塩素化物(3異性体)及び10塩素化物を各10mgはかりとり、n−ヘキサンを加えて溶解したのち、各濃度が0.1mg/Lとなるようにn−ヘキサンを加えて調製したもの)を0.1mL、0.5mL、1.0mL、5.0mLを各10mLメスフラスコに添加し、ついで内標準物質のジブロモナフタレン(0.5mg/L:n−ヘキサン溶液)を1mL添加し、n−ヘキサンで10mLに定容して調製した。
【0102】
上記、測定試料と標準試料(2〜9塩素化物と1・10塩素化物)について、各3μLをGC/MS−NCI(四重極形のガスクロマトグラフ質量分析計(Hewlett Packard社 HP6890MSD)を用いて、選択イオン検出法(SIM)により測定して各クロマトグラムを得た。
【0103】
SIMの質量/電荷数(m/z)は、PCBについてm/z;35、内標準物質についてm/z;81で行った。他の具体的条件は、表−2に示すものとした。
【0104】
各塩素化物のPCB濃度の算出は、前述の方法、すなわち、2〜9塩素化物については係数法により、1・10塩素化物については検量線法により、それぞれ行った。
【0105】
また比較のために、この被検試料についてJIS▲1▼による公定法の前処理を行ない、電子捕獲形検出器付きガスクロマトグラフィーにより測定した(公定法)。
【0106】
本実施例と公定法とでそれぞれ得られた排水中PCB濃度の測定結果を示す表5は、本発明の分析法により充分に確からしい測定結果を得ることができたことを示している。
【0107】
【表5】
<実施例5>
本実施例は、土壌成分を被検試料とするPCB分析法の実施例である。
【0108】
本実施例の流れ図を図12に示す。
【0109】
100mLガラスビーカに土壌1gを精秤する。次いで、アセトン、n−ヘキサンを各10mL加え、超音波洗浄器で超音波を15分間照射する。上澄み液(抽出液:ヘキサン層)を別のビーカに移し入れる。
【0110】
再度、アセトン、n−ヘキサンを加えて同様に超音波照射を行ない、土壌中からPCBを抽出した。抽出液を合わせて、無水硫酸ナトリウムを用い脱水する。
【0111】
次いで、内標準物質のジブロモナフタレン(5mg/L:n−ヘキサン溶液)を1mL添加し、n−ヘキサンを用い100mLに定容して測定試料とした。
【0112】
GC−MS/NCI法は、測定試料中の塩素以外の炭化水素に感度がないため、底質調査方法(昭和63年環水管127号)に記載されている水酸化カリウムのエタノール溶液(1mol/L)によるアルカリ分解およびシリカゲルカラムによる分離操作を省略できる。
【0113】
土壌から測定試料の調製における前処理時間は、本実施例では1h要したが、底質調査方法による公定法では8h要した。
【0114】
また、実施例に用いた被検試料は、土壌であるが、底質も同様な前処理操作で測定できる。
【0115】
2〜9塩素化物の標準試料は、排水中のPCB分析法の実施例と同様に調製した。
【0116】
また、1・10塩素化物の標準試料も、排水中のPCB分析法の実施例と同様にして調製した。
【0117】
上記、測定試料と標準試料(2〜9塩素化物と1・10塩素化物)について、排水中のPCB分析法の実施例同様、GC−MS/NCIを用いて各クロマトグラムを得た。
【0118】
そして、各塩素化物のPCB濃度の算出は、前述の方法、すなわち、2〜9塩素化物については係数法により、1・10塩素化物については検量線法により、それぞれ行った。
【0119】
また比較のために、この被検試料について底質調査方法による公定法の前処理を行ない、電子捕獲形検出器付きガスクロマトグラフィーにより測定した(公定法)。
【0120】
本発明法(本実施例)と公定法とでそれぞれ得られた土壌成分中PCB濃度の測定結果を示す表6は、本発明の分析法により充分に確からしい測定結果を得ることができたことを示している。
【0121】
【表6】
<実施例6>
本実施例は、土壌溶出液を被検試料とするPCB分析法の実施例である。
【0122】
本実施例の流れ図を図13に示す。
【0123】
土壌からの溶出方法は、環境庁告示46号(土壌の汚染に係わる環境基準)に規定されている方法で行った。
【0124】
土壌100gを入れた容器に純水1L加え(重量体積比10%)、振とう器で6h振とうする。次いで、30min静置後、遠心分離機を用い3000rpmで20min遠心分離後、上澄み液を孔径0.45μmのメンブランフィルターでろ過して、溶出液を得る。
【0125】
溶出液を分液ロートに移し、容器をアセトン、n−ヘキサン各50mLで洗浄し、分液ロートに加える。
【0126】
分液ロートを振とう器で10min振とう抽出する。水層を別の分液ロートに移し、n−ヘキサン50mLを加える。再度、振とう器を用い10min振とう抽出を行なう。
【0127】
抽出液を合わせて無水硫酸ナトリウムを用い脱水する。次いで、ロータリーエバポレータを用い80mLまで濃縮後、内標準物質のジブロモナフタレン(5mg/L:n−ヘキサン溶液)を1mL添加し、n−ヘキサンで100mLに定容して測定試料とした。
【0128】
GC−MS/NCI法は、前述同様、測定試料中の塩素以外の炭化水素に感度がないため、公定法に記載されているアルカリ分解およびシリカゲルカラムによる分離操作が省略できる。
【0129】
土壌から純水中に溶出する時間は、本実施例と公定法とは同じ6hであるが、純水中からPCBを抽出する時間は、本実施例では、2h要したのに対して、公定法では5h要した。
【0130】
2〜9塩素化物の標準試料は、排水中のPCB分析法の実施例4と同様にして調製した。
【0131】
また、1・10塩素化物の標準試料も、排水中のPCB分析法の実施例4と同様にして調製した。
【0132】
上記、測定試料と標準試料(2〜9塩素化物と1・10塩素化物)について、排水中のPCB分析法の実施例4同様にして、GC−MS/NCIを用いて各クロマトグラムを得た。
【0133】
そして、各塩素化物のPCB濃度の算出は、前述の方法、すなわち、2〜9塩素化物については係数法により、1・10塩素化物については検量線法により,それぞれ行った。
また比較のために、この被検試料について環境庁告示46号による公定法の前処理を行ない、電子捕獲形検出器付きガスクロマトグラフィーにより測定をした(公定法)。
【0134】
本発明法(本実施例)と公定法とでそれぞれ得られた土壌溶出液中PCB濃度の測定結果を示す表7は、本発明の分析法により充分に確からしい測定結果を得ることができたことを示している。
【0135】
【表7】
<実施例7>
本実施例は、排ガスを被検試料とするPCB分析法の実施例である。
【0136】
本実施例のフローシートを図14に示す。
【0137】
排ガス試料の採取は、JIS K0311−1999「排ガス中のダイオキシン類及びコプラナーPCBの測定法」に準拠して実施した。
【0138】
ただし、JIS中に記載されている内標準物質の添加(サンプリングスパイク)は行なわなかった。
【0139】
排ガスを乾きガス量で3m3N吸引して、そのジエチレングリコール吸収液と XAD−2樹脂吸着剤カラムに吸収又は吸着されたPCBを抽出してGC−MS/NCIで測定した。
【0140】
前処理法は、ジエチレングリコール吸収液と水,ドレン水は、2L分液ロートに移し、トルエン、アセトンを用い吸収容器および排ガス採取プローブ等をその2L分液ロート中に洗い出した。
【0141】
振とう器を用い、30min振とうして、液液抽出を行った。そして、別の2L分液ロートに抽出した抽出液を移し、再度、トルエン、アセトン各50mLを吸収液等の入った2L分液ロートに加えて、振とう器で振とうし、液液抽出を合計3回行なった。
【0142】
XAD−2樹脂と円筒ろ紙は、トルエンを用い16hソックスレー抽出を行った。
【0143】
そして、液液抽出した抽出液とソックスレー抽出した抽出液を合わせて、無水硫酸ナトリウムを用い脱水した。
【0144】
次いで、ロータリーエバポレータを用い、5mLまで濃縮後、内標準物質のジブロモナフタレン(5mg/L:n−ヘキサン溶液)を1mL添加し、n−ヘキサンを用い100mLに定容して測定試料とした。
【0145】
GC−MS/NCI法は、測定試料中の塩素以外の炭化水素に感度がないため、JIS K0311−1999「排ガス中のダイオキシン類及びコプラナーPCBの測定法」に記載されている多層シリカゲルカラムおよびアルミナカラムによるクロマト分離操作を省略できる。
【0146】
前処理時間は、本実施例では2day要したのに対し、公定法では4day要した。
【0147】
2〜9塩素化物および1・10塩素化物の各標準試料は、排水中のPCB分析法の実施例と同様にしてそれぞれ調製した。
【0148】
上記、測定試料と標準試料(2〜9塩素化物と1・10塩素化物)について、排水中のPCB分析法の実施例同様、GC−MS/NCIを用いて各クロマトグラムを得た。
【0149】
そして、各塩素化物のPCB濃度の算出は、前述の方法、すなわち、2〜9塩素化物については係数法により、1・10塩素化物については検量線法により,それぞれ行なった。
【0150】
また比較のために、この被検試料についてJIS K0311−1999「排ガス中のダイオキシン類及びコプラナーPCBの測定法」による前処理を行ない、高分解能質量分析器付きガスクロマトグラフィーにより測定した(精密法)。
【0151】
本発明法と精密法とでそれぞれ得られた排ガス中PCB濃度の測定結果を示す表8は、本発明の分析法により充分に確からしい測定結果を得ることができたことを示している。
【0152】
【表8】
<実施例8>
本実施例は、大気(空気)を被検試料とするPCB分析法の実施例である。
【0153】
本実施例の流れ図を図15に示す。
【0154】
大気試料の採取は、環境庁環境保健部環境安全課「平成8年度化学物質分析法開発調査報告書(平成9年6月)」記載の方法に準拠した。
【0155】
ただし、内標準物質の添加(サンプリングスパイク)は行なわなかった。
【0156】
大気を1000m3吸引して、そのろ紙とポリウレタンフォームに吸着されたPCBを抽出してGC−MS/NCIで測定をした。
【0157】
ろ紙の前処理法は、トルエンを用い16hソックスレー抽出を行った。ポリウレタンフォームの前処理法は、アセトンを用い16hソックスレー抽出を行った。
【0158】
ろ紙とポリウレタンフォームの抽出液を合わせて、無水硫酸ナトリウムを用い脱水した。
【0159】
次いで、ロータリーエバポレータを用い、5mLまで濃縮後、内標準物質のジブロモナフタレン(5mg/L:n−ヘキサン溶液)を1mL添加した。
【0160】
GC−MS/NCI法の測定精度を確認するために、大気暫定環境基準の1/10である0.05μg/m3相当と0.5μg/m3相当にPCB(KC300、KC400、KC500、KC600(1:1:1:1)混合標準液)を添加後、n−ヘキサンを用い100mLに定容した。
【0161】
GC−MS/NCI法は、測定試料中の塩素以外の炭化水素に感度がないため、環境庁環境保健部環境安全課「平成8年度化学物質分析法開発調査報告書(平成9年6月)」に記載されている多層シリカゲルカラムおよびアルミナカラムによるクロマト分離操作を省略できる。
【0162】
前処理時間は、本実施例では2day要したの対し、基準法は4day要した。
【0163】
2〜9塩素化物および1・10塩素化物の各標準試料は、排水中のPCB分析法の実施例3と同様にしてそれぞれ調製した。
【0164】
上記、測定試料と標準試料(2〜9塩素化物と1・10塩素化物)について、排水中のPCB分析法の実施例3同様、GC−MS/NCIを用いて各クロマトグラムを得た。
【0165】
そして、各塩素化物のPCB濃度の算出は、前述の方法、すなわち、2〜9塩素化物については係数法により、1・10塩素化物については検量線法により、それぞれ行った。
【0166】
本実施例の測定結果を示す表9は、GC−MS/NCIによるPCB濃度測定結果は、添加したPCB濃度を精度良く測定でき、本実施例は充分確からしい測定結果を得ることができたことを示している。
【0167】
【表9】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で使用するガスクロマトグラフ質量分析計の代表例を示す構成図
【図2】同じく四重極形装置の概念斜視図
【図3】PCBにおける各塩素化物のクロマトグラム
【図4】測定標準液についてGC/MS−NCIで得たクロマトグラム
【図5】本発明を各種被検試料に適用した場合の概念流れ図(フローシート)
【図6】被検試料を排水中から採取した場合の概念流れ図
【図7】被検試料を土壌中から採取した場合の概念流れ図
【図8】油性液中(実施例1〜3)のPCB濃度測定の流れ図
【図9】実施例1における分析法と従来の精密法との相関関係図
【図10】パターン合わせ法による内標準補正を行った場合の面積検量線
【図11】排水中(実施例4)のPCB濃度測定の流れ図
【図12】土壌成分中(実施例5)のPCB濃度測定の流れ図
【図13】土壌溶出液中(実施例6)のPCB濃度測定の流れ図
【図14】排ガス中(実施例7)のPCB濃度測定の流れ図
【図15】大気中(実施例8)のPCB濃度測定の流れ図
Claims (13)
- PCBを含有する油性液体を被検試料として、ガスクロマトグラフ質量分析計を用いて前記PCBの質量分析をする方法において、
前記被検試料を抽出操作を経ずにそのまま、揮発性を有する非極性溶媒ないしは極性溶媒で希釈したものをガスクロマトグラフに導入してPCBの各成分に分離後、質量分析器におけるイオン化として負化学イオン化(NCI)を選定し選択イオン検出(SIM)により測定することを特徴とするPCBの分析法。 - 前記非極性溶媒又は前記有機溶媒が、炭素数5〜10の炭化水素類の群から選択される1種又は2種以上からなることを特徴とする請求項1記載のPCBの分析法。
- 前記非極性溶媒又は前記有機溶媒が、炭素数5〜10の飽和脂肪族炭化水素の群から選択される1種又は2種以上からなることを特徴とする請求項2記載のPCBの分析法。
- 前記非極性溶媒ないしは極性溶媒による希釈濃度が、10g/L〜1mg/Lであることを特徴とする請求項1記載のPCBの分析法。
- 前記SIMにおける被検試料の選択イオンである塩素の特定質量(質量/電荷数:m/z)として約35又は約37を選定することを特徴とする請求項1記載のPCBの分析法。
- 定量の方法として内標準法を用い、該内標準法における内標準物質として前記非極性溶媒ないしは極性溶媒又は前記有機溶媒に溶解可能なハロゲン化化合物(塩素化化合物を除く。)を導入することを特徴とする請求項1記載のPCBの分析法。
- 前記内標準物質がジブロモナフタレンであることを特徴とする請求項6記載のPCBの分析法。
- 前記SIMにおける内標準物質の選択イオンである臭素の特定質量(質量/電荷数:m/z)として約79又は約81を選定することを特徴とする請求項7記載のPCBの分析法。
- 前記ガスクロマトグラフ質量分析計が四重極形装置であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のPCBの分析法。
- 内標準法で補正した係数法(JIS K0093−1995:以下同じ)を用いて2〜9塩素化物の濃度を、内標準法で補正した検量線法(JIS K0114−2000:以下同じ)を用いて1塩素化物と10塩素化物(以下、本明細書では「1・10塩素化物」という。)の濃度をそれぞれ算出して、1〜10塩素化物の組成を定量することを特徴とする請求項9記載のPCBの分析法。
- 内標準法で補正したパターン合わせ法(JIS K0093−1995:以下同じ)を用いて、合計PCBの濃度を定量することを特徴とする請求項9記載のPCBの分析法。
- 内標準法で補正した係数法を用いて2〜9塩素化物の濃度を、内標準法で補正した検量線法を用いて1・10塩素化物の濃度をそれぞれ算出して、1〜10塩素化物の組成を定量することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のPCBの分析法。
- 内標準法で補正したパターン合わせ法で合計PCBの濃度を定量することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のPCBの分析法。
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