JP4088677B2 - 生態ポテンシャル評価方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、土地利用計画したときの、土地利用計画対象領域の生態ポテンシャル評価方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
都市化の進行とそれに伴う緑地の減少によって、かつては何処にでも見られた身近な生き物である昆虫や野鳥等が姿を消しつつある。都市周辺の緑地や都市内に残され点在する緑地は、こうした小動物のすみかとして貴重な場所となっている。
【0003】
このため、自然環境に配慮した土地利用計画及び環境共生建物計画を実践する際に、対象とする土地利用計画領域内に残された緑地が、小動物の生息環境として周辺の緑地とどのような関係にあるかを把握することが重要である。こうした視点からの環境の質の表現の情報源として、例えば「現存植生図」等を用いるようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、「現在植生図」等を用いることによって、植物群集としての評価を行ってはいるものの、動物群集としての評価はほとんど着手されていないのが現状であり、対象とする土地利用計画領域とその周辺の生態環境の関係性を把握し、生態環境への影響を最小限に抑えるため、さらにはより豊かな生態環境を創出するための土地利用計画方法が望まれていた。
【0005】
また、緑地整備計画の目的は、修景若しくは遮音,目隠し等の機能植栽が主流であって、近年環境重視の計画が求められる中で、周辺生態系に配慮した計画との主張はあるものの、どのような根拠に基づいて配慮を行ったかは不明であることが多い。
【0006】
そこで、この発明は上記従来の問題点に着目してなされたものであり、さらに豊かな生態環境を得ることができると共に、緑地整備計画に生態環境面からの根拠を提供することの可能な土地利用計画対象領域自然環境保全状態予測方法を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に係る土地利用計画対象領域含む調査対象領域全体の生態ポテンシャルを評価する生態ポテンシャル評価方法は、土地利用計画対象領域を含む調査対象領域を所定サイズのメッシュに分割し、この各メッシュについて、土地被覆カテゴリーの面積構成割合を計算して土地被覆情報を得る第1の準備工程と、 前記メッシュのうち、特徴的な土地被覆条件をもつメッシュをサンプルメッシュとして選択して現地調査を行い、鳥種の出現−非出現パターンをマトリクスとして得た鳥相情報を得る第2の準備工程と、前記土地被覆情報と前記鳥相情報をもとに、数量化III類を用いて鳥類及び前記特徴的な土地被覆条件をもつサンプルメッシュのそれぞれについて類似性を解析し、該解析結果から得られたカテゴリスコアとサンプルスコアとをもとにクラスター分析を行い、鳥種を環境選好に従い分類するとともに、鳥種の各クラスターを構成する鳥種の環境選好から、サンプルメッシュの各クラスターの意味する生態環境特性を抽出して土地被覆を分類する第1の工程と、前記土地被覆条件を分類して作成した土地被覆分類と、鳥類の選好生態環境特性との相関関係を解析し、これらの関係を表す鳥類生態環境構造モデルを作成する第2の工程と、前記サンプルメッシュについて、前記土地被覆分類及びそれぞれの構成割合を説明変数、メッシュクラスターを目的変数として数量化II類による解析を行った結果得られる判別式と、前記調査対象領域全体の土地被覆条件とをもとに、該領域全体について生態ポテンシャルを推測する第3の工程と、を含み、前記第1、2の準備工程を順に実施した後、前記第1乃至第3の工程を順に実施することを特徴としている。
【0008】
この発明では、土地利用計画対象領域を含む周辺領域を調査対象領域とし、この調査対象領域の土地被覆状態と、そこに生息する生物とに基づき、これらの関係を表す生態環境特性が抽出される。つまり、例えば、調査対象領域に生息する鳥類等の種類と土地被覆状態とから、鳥類の種類と土地被覆状態との関係を表す生態環境特性が抽出される。
【0009】
また、土地利用計画対象領域の緑地植生指標等に基づく緑の豊かさと、ここには、どのような種類の生物が生息しているかといった生物の生息状況とを重ね合わせて指標化した自然活性度が検出される。
【0010】
そして、自然活性度の低い領域を開発し、自然活性度の高い領域は、この領域に対応する生態環境特性を保全するように計画され、例えばその周辺の領域の生態環境特性との連続性を考慮しながら、生態環境特性に応じて緑地化を進めるよう計画される。これによって、生態的豊かさを損なうことなく土地利用計画が行われると共に、根拠をもって緑地整備計画が行われることになる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明による土地利用計画方法を適用した土地利用計画装置の一例であって、例えば、キーボード等の入力装置1と、CRTディスプレイ,プリンタ等の出力装置2と、入力装置1からの入力データをもとに、所定の土地利用計画処理を実行し、計画結果を出力装置2に出力する演算処理装置3とから構成されている。
【0012】
そして、演算処理装置3では、入力装置1から入力される、土地利用計画対象領域を含む周辺領域からなる調査対象領域の土地被覆情報及び鳥相情報をもとに、例えば鳥類の目からみた生態環境特性を表す生態ポテンシャルを評価すると共に、入力装置1から入力される土地利用計画対象領域の緑の豊かさを表す緑地活性度情報と土地利用計画対象領域の生息生物情報とをもとに、これらを重ね合わせて評価するための指標である自然活性度を求め、自然活性度の低い領域を開発し、自然活性度の高い領域は生態ポテンシャルに基づき特定される生態環境特性を保全するように、例えば植樹等を行う地域として計画する。
【0013】
図2は、演算処理装置3で実行される土地利用計画処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、この土地利用計画処理の処理プログラムは、図示しない、ROM,フレキシブルディスク,コンパクトディスク或いはハードディスク等の記憶媒体に電子的に格納されており、演算処理装置3では、その記憶媒体から土地利用計画処理の処理プログラムを読み出してこれを実施するようになっている。
【0014】
前記演算処理装置3では、図2に示すように、まず、ステップS1で、入力装置1から入力される、調査対象領域つまり、土地利用計画対象領域を含む周辺領域の土地被覆情報及び鳥相情報と、土地利用計画対象領域の緑地活性度情報及び生息生物情報とを読み込む。
【0015】
前記土地被覆情報は、例えば国土地理院発行の1/25000の土地利用図及び1/10000の空中写真を用いて、調査対象領域を例えば最小500m四方のメッシュに分割し、この各メッシュについて、土地被覆カテゴリーの面積構成割合を計算したものである。前記土地被覆カテゴリーは、例えば業務・商業地域,低層住宅地域,中高層住宅地域,樹林地,草地,耕地,裸地,人工被覆平坦地等である。
【0016】
前記鳥相情報は、調査対象領域の全メッシュのうち、特徴的な土地被覆条件をもつメッシュをサンプルメッシュとして選択して、現地調査を行い、例えば、鳥類の繁殖期及び越冬期の鳥種の出現−非出現パターンをマトリクスとして得たものである。このマトリクスは、サンプルメッシュ毎に出現する鳥種を示すものである。
【0017】
前記緑地活性度情報は、人工衛星が観測したリモートセンシングデータを利用することによって、土地利用計画対象領域に残された緑地植生指標(NVI)を求めたものである。また、前記生息生物情報は、土地利用計画対象領域の生息動物種数を求めたものである。
【0018】
次いで、ステップS2に移行し、ステップS1で入力した土地被覆情報と鳥相情報をもとに、数量化/クラスター分析処理を行う。つまり、鳥類の出現−非出現パターンが類似したメッシュ群は、そこに出現した鳥類群から同様の環境を有すると評価されたメッシュ群であると考えることができる。そこで、例えば数量化 III類を用いて鳥類及び特徴的な土地被覆条件をもつサンプルメッシュのそれぞれについて類似性を解析する。
【0019】
さらに、数量化 III類の結果から得られたカテゴリスコアとサンプルスコアとをもとに、クラスター分析を行い、類似性に基づくクラスタリングを行い、鳥種を環境選好に従い分類するとともに、鳥種の各クラスターを構成する鳥種の環境選好から、サンプルメッシュの各クラスターの意味する生態環境特性を抽出して土地被覆を分類する。
【0020】
次いで、ステップS3に移行して、土地被覆分類と、鳥類の選好生態環境特性との相関関係を解析する。具体的には、各鳥種クラスターが、メッシュクラスターのいずれに反応しているかを解析し、これらの関係を表す例えば図3に示す鳥類生態環境構造モデルを作成する。図3は、土地被覆条件として、樹林地メッシュ,草地・樹林地モザイクメッシュ,樹林点在メッシュ,草地点在メッシュ,市街地メッシュに分類し、また、鳥類の環境選好として、普遍種クラスター,モザイク環境選好種クラスター,点在樹林選好種クラスター,樹林環境好種クラスター,草本環境選好種クラスターに分類し、これらの間の相関関係を表したものである。
【0021】
次いで、ステップS4に移行して、サンプルメッシュについて、土地被覆分類及びそれぞれの構成割合を説明変数,メッシュクラスターを目的変数として数量化II類による解析を行った結果得られる判別式と、調査対象領域全体について、メッシュ毎の土地被覆条件とをもとに、調査対象領域全体について生態環境特性を推測し、これを例えば図4に示す生態ポテンシャルマップとして生成する。
【0022】
この生態ポテンシャルは、調査対象領域の土地被覆条件やそこに生息する生物の多様性等から評価した生態環境の潜在力を表す指標であって、本発明は、点在する緑地の生態環境を解析することを目的とするため、ここでは、飛翔能力を有する鳥類を評価指標物として設定し、調査対象領域に飛来する鳥種の組成(鳥相)と土地被覆条件との関係性を解析し、鳥類の目からみた生態環境特性を表している。
【0023】
次いで、ステップS5に移行し、ステップS4で得られた生態ポテンシャルのうち、土地利用計画対象領域に対応する生態ポテンシャルを抽出し、土地利用計画対象領域の周辺生態環境との連続性等を考慮しながら、土地利用計画対象領域の、目標とすべき生態ポテンシャル(以下、計画目標生態ポテンシャルという。)を設定する。
【0024】
次いで、ステップS6に移行し、ステップS5で設定した、計画目標生態ポテンシャルを実現するための生態環境を創出可能な土地被覆分類及びそれぞれの構成割合を、ステップS4の数量化II類による解析を行った結果得られる判別式に基づいて設定する。つまり、判別式に基づいて設定される生態環境特性が、計画目標生態ポテンシャルとなり得る、土地被覆分類とその構成割合とを検討する。
【0025】
次いで、ステップS7に移行し、入力装置1から入力された生息生物情報をもとに例えば生息動物種数を指標化し、これと緑地活性度とを合わせて指標化して対象区域の生態的活力を分級評価した自然活性度を、土地利用計画対象領域全体について求める。
【0026】
次いで、ステップS8に移行し、ステップS6で検討した土地被覆分類及びそれぞれの構成割合とステップS7で検出した自然活性度とをもとに、土地利用計画対象領域のうち、自然活性度の低い領域を開発地とし、自然活性度の高い領域はステップS6で検討した土地被覆分類及びそれぞれの構成割合に基づいて緑地として整備するよう計画する。そして、このようにして得た土地利用計画対象領域の計画案を出力装置2に出力し、処理を終了する。
【0027】
次に、上記実施の形態の動作を説明する。例えば、第3次地域区画が縦横10個ずつ含まれる約10km四方を土地利用計画対象領域を含む周辺領域である調査対象領域とし、各第3次地域区画を四分割した約500m四方のメッシュを最小単位とする。
【0028】
オペレータは、まず、国土地理院発行の1/25000土地利用図及び1/10000空中写真を用いて、前記各メッシュに対応する領域について、土地被覆カテゴリー(業務・商業地域,低層住宅地域,中高層住宅地域,樹林地,草地,耕地,裸地,人工被覆平坦地)の面積構成割合を計算する。
【0029】
また、調査対象領域の全メッシュのうち、特徴的な土地被覆条件をもつメッシュをサンプルメッシュとして、この領域を現地調査し、鳥類の繁殖期及び越冬期における、鳥類の出現−非出現パターンをマトリクスとして得る。ここでは、繁殖期データをもとに行った場合を説明する。なお、多変量解析の結果を歪めないため、解析対象メッシュは2種類以上の鳥類が記録されているメッシュを、解析対象鳥類は2メッシュ以上で出現している種を対象とした。
【0030】
また、人工衛星が観測したリモートセンシングデータを利用し、土地利用計画対象領域に残された緑地植生指標を求め、また、土地利用計画対象領域の生息動物種数を求める。この生息動物種数として、例えば鳥類についてその種類と可能な場合にはその数とを求める。
【0031】
そして、このようにして検出した各種情報を、入力装置1から入力すると(ステップS1)、演算処理装置3では、まず、鳥相情報をもとに、数量化/クラスタ分析処理を行い(ステップS2)、鳥類の出現−非出現マトリクスに対して数量化 III類を適用し、鳥種及びメッシュの類似性を解析する。
【0032】
そして、数量化 III類により得られたカテゴリースコアとサンプルスコアとをもとにクラスター分析を行い、類似性に基づくクラスタリングを行う。これにより、各クラスターを構成する鳥種の環境選好が解釈されて、クラスターの意味する生態環境特性が抽出される。
【0033】
そして、この生態環境特性と土地被覆条件とをもとにこれらの相関関係が解析され(ステップS3)、これらの解析結果をもとに、鳥類とメッシュとの関係を表す鳥類生態環境構造モデルが、例えば図3に示すように作成される。図3に示す鳥類生態環境構造モデルでは、メッシュクラスターは樹林地メッシュ,草地・樹林地モザイクメッシュ,樹林点在メッシュ,草地点在メッシュ,市街地メッシュの5つに類型化され、また、鳥類クラスターは普遍種,モザイク環境選好種,点在樹林選好種,樹林環境選好種,草本環境選好種の5つに類型化されている。
【0034】
次いで、サンプルメッシュについて、土地被覆分類とそれぞれの構成割合とを説明変数,メッシュクラスターを目的変数として数量化II類による解析を行った結果得られる判別式と、調査対象領域全体の土地被覆条件とをもとに、調査対象領域全体について生態環境特性が判別され(ステップS4)、例えば図4に示すように、土地利用計画対象領域を含む調査対象領域の生態ポテンシャルマップが生成される。なお、図4は、土地被覆条件から、該当メッシュの少ないクラスター(草地点在クラスター)を除いた4タイプについて、メッシュ毎の生態環境特性を生態ポテンシャルとして判別している。
【0035】
次に、この生態ポテンシャルマップのうち、土地利用計画対象領域の生態ポテンシャルを抽出し、周囲との連続性等を考慮しつつ、土地利用計画対象領域において目標とする計画目標生態ポテンシャルを設定する(ステップS5)。さらに、数量化II類で得られた判別式を用い、ステップS5で設定された計画目標生態ポテンシャルを得ることの可能な、土地被覆分類及びそれぞれの構成割合の設定を行う(ステップS6)。
【0036】
次に、入力装置1から入力された土地利用計画対象領域の生息生物情報、この場合鳥類の生息種及びその数と、緑地活性度とをもとに、これらを合わせて指標化した自然活性度を求め(ステップS7)、求めた自然活性度及び、ステップS6で設定した土地被覆分類及びそれぞれの構成割合に基づいて土地利用計画をたてる(ステップS8)。つまり、自然活性度の低い所は、緑地活性度が低く、つまり緑地の質が低く量が少なく、また、そこに生息する生物種或いは生物数も少ないとみなすことができるから、土地利用計画対象領域のうち自然活性度の低い領域を宅地等として開発可能な領域として設定する。逆に、自然活性度の高い所は緑地活性度が高く、つまり緑地の質が高く量が多く、また、そこに生息する生物種或いは生物数も多いとみなすことができるから、自然活性度の高い領域は緑地保全領域として設定し、土地被覆分類及びそれぞれの構成割合に基づいて緑地整備を行う。
【0037】
よって、自然活性度が低い領域を開発領域として設定し、自然活性度が高い領域は緑地として保全するよう土地利用計画をたてるようにしているため、生態環境への影響を最小限に抑えることができる。
【0038】
また、自然活性度を用いることにより、土地の生態的豊かさを定量的に示すことができると共に、この自然活性度に基づいて土地利用計画をたてることによって、例えば自然活性度が低い領域、つまり、生態的に豊かでない領域を緑地として保全するような無駄な計画をたてることなく、緑地整備を無駄なく有効に行うことができる。
【0039】
また、自然活性度の高い領域を緑地として保全すると共に、生態ポテンシャルマップに基づいて設定した計画目標生態ポテンシャルを得るための土地被覆分類及びそれぞれの構成割合に基づいて緑地整備を行うようにしているから、自然活性度の高い領域がそこに生息する鳥類の生息環境とどのような関係にあるのかを考慮した上で、その生態環境特性に適した樹木が植林されることになり、現在の生態環境特性を損なうことのない、利用計画をたてることができる。また、緑地として保全する領域が、生態系の中でどういう意味を持っているかを明確にし、この土地が周辺との関係性において持っている生態的特徴をそのままに整備することによって、生態的豊かさを保全することができる。また、緑地計画を根拠をもってたてることができる。
【0040】
図5は、リモートセンシングデータを用いて解析したニュータウン建設計画地の工事前の緑地活性度の分布状況を表した図である。また、図6は、図5の緑地活性度の分布状況と計画地の生息動物種数とを合わせて評価した自然活性度の解析結果をもとに、自然活性度の低い場所を宅地化及び利用型の公園緑地等とし、自然活性度の高い場所を緑地として保全するよう、計画目標生態ポテンシャルを設定して周辺植生に合わせて補植を行うように土地利用を図り、これに基づき工事を行った場合に予測される緑地活性度の分布状況を表したものである。また、図5及び図6の各緑地活性度の分布状況を数値的に表したものが図7である。この図7に示すように、宅地等の造成等により全体の緑地面積は減少するが、計画地全体の緑地活性度は損なわれないと予測することができる。なお、図5及び図6中の黒塗り部分は池を表している。
【0041】
また、この計画地について、工事前後の鳥類の生息調査を実施したところ、鳥相内優先度(ある種の個体数が出現した鳥種の総個体数に示す割合)には変化があったものの、出現鳥種及びその総個体数には大きな変化は見られないことが確認できた。つまり、鳥類の生息環境としてふさわしい生態的豊かさを損なわず、土地利用が行われたものと考えることができる。
【0042】
なお、上記実施の形態においては、生物生息情報として鳥類を適用した場合について説明したが、これに限らず、地這い性の両生類,哺乳類,昆虫類を適用することも可能である。
【0043】
また、上記実施の形態においては、宅地等に土地利用する場合について説明したが、これに限らず例えば大型建築の周辺敷地の造園計画,エコキャンパス(環境配慮型の学校施設)等の緑地計画等に適用することも可能である。
【0044】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る生態ポテンシャル評価方法によれば、土地利用計画対象領域を含む周辺領域の土地被覆状態とそこに生息する生物の多様性等から評価した生態環境の潜在力を表す指標を得ることができる。
また、土地利用計画対象領域の緑の豊かさと生息種状況とを重ね合わせて指標化した自然活性度を求め、自然活性度の低い領域を開発し、自然活性度の高い領域は、その生態環境特性を保全するように計画するようにしたから、生態的豊かさを損なうことなく土地利用計画を行うことができると共に、根拠をもって緑地整備計画を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した土地利用計画装置の一例を示す構成図である。
【図2】土地利用計画処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図3】鳥類生態環境構造モデルの一例である。
【図4】生態ポテンシャルマップの一例である。
【図5】本発明による土地利用計画方法に基づき工事を行う場合の、工事前の緑地活性度の分布状況を表す説明図である。
【図6】工事後の予測される緑地活性度の分布状況を表す説明図である。
【図7】図5及び図6を数値的に表したものである。
【符号の説明】
1 入力装置
2 出力装置
3 演算処理装置
Claims (1)
- 土地利用計画対象領域を含む調査対象領域全体の生態ポテンシャルを評価する生態ポテンシャル評価方法であって、
該方法は、
土地利用計画対象領域を含む調査対象領域を所定サイズのメッシュに分割し、この各メッシュについて、土地被覆カテゴリーの面積構成割合を計算して土地被覆情報を得る第1の準備工程と、
前記メッシュのうち、特徴的な土地被覆条件をもつメッシュをサンプルメッシュとして選択して現地調査を行い、鳥種の出現−非出現パターンをマトリクスとして得た鳥相情報を得る第2の準備工程と、
前記土地被覆情報と前記鳥相情報をもとに、数量化III類を用いて鳥類及び前記特徴的な土地被覆条件をもつサンプルメッシュのそれぞれについて類似性を解析し、該解析結果から得られたカテゴリスコアとサンプルスコアとをもとにクラスター分析を行い、鳥種を環境選好に従い分類するとともに、鳥種の各クラスターを構成する鳥種の環境選好から、サンプルメッシュの各クラスターの意味する生態環境特性を抽出して土地被覆を分類する第1の工程と、
前記土地被覆条件を分類して作成した土地被覆分類と、鳥類の選好生態環境特性との相関関係を解析し、これらの関係を表す鳥類生態環境構造モデルを作成する第2の工程と、
前記サンプルメッシュについて、前記土地被覆分類及びそれぞれの構成割合を説明変数、メッシュクラスターを目的変数として数量化II類による解析を行った結果得られる判別式と、前記調査対象領域全体の土地被覆条件とをもとに、該領域全体について生態ポテンシャルを推測する第3の工程と、
を含み、前記第1、2の準備工程を順に実施した後、前記第1乃至第3の工程を順に実施する、
土地利用計画対象領域を含む調査対象領域全体の生態ポテンシャル評価方法。
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