JP4088447B2 - 自動車用冷却水の再生方法及び再生用添加剤 - Google Patents
自動車用冷却水の再生方法及び再生用添加剤 Download PDFInfo
- Publication number
- JP4088447B2 JP4088447B2 JP2002007853A JP2002007853A JP4088447B2 JP 4088447 B2 JP4088447 B2 JP 4088447B2 JP 2002007853 A JP2002007853 A JP 2002007853A JP 2002007853 A JP2002007853 A JP 2002007853A JP 4088447 B2 JP4088447 B2 JP 4088447B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- cooling water
- weight
- terms
- regeneration
- phosphate
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Lifetime
Links
Images
Landscapes
- Preventing Corrosion Or Incrustation Of Metals (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車の冷却水を再生してリサイクルする方法と、その再生時に用いられる添加剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車エンジンの冷却水には、アルコール類やグリコール類などの融点降下剤を主成分とする冷却液が添加され、冬季の凍結が防止されている。ところがアルコール類やグリコール類には防錆作用が全くないばかりか、高温で循環中に酸素と接触することにより酸化され、生成した酸化物が冷却水流路を構成する金属の腐食を促進するという不具合がある。
【0003】
そこで冷却液には一般に、リン酸塩,ホウ酸塩,炭酸塩,硫酸塩,硝酸塩,モリブデン酸塩,安息香酸塩,ケイ酸塩,ベンゾトリアゾール,メルカプトベンゾチアゾールのナトリウム塩,トリルトリアゾール,トリエタノールアミン塩などから選ばれる防錆剤が添加され、使用時における各種金属の腐食が防止されている。
【0004】
ところが冷却水中の上記防錆剤のうち、経時的に濃度が減少するものがあり、防錆性能が経時で劣化することが避けられない。また防錆剤の濃度バランスが崩れることによって、冷却水流路を構成する金属に腐食が生じたり、冷却水中に沈殿が生じる場合もある。このように劣化した冷却水を使用し続けることは好ましくないので、従来より、劣化した冷却水を新品の冷却水と車検毎などに交換することが行われている。
【0005】
しかし回収された劣化冷却水は、そのまま河川などに廃棄することは環境汚染につながるため、一般には焼却により処理されているのが現状である。しかしながら、劣化冷却水は大部分が水であるために、焼却のエネルギーは大部分が水を蒸発させるだけのために消費されることになり、焼却処理は省エネルギーの観点からは好ましくない処理方法である。
【0006】
そこで例えば特開2000-93937号公報には、劣化冷却水にエチレングリコール及び水の少なくとも一方と防錆剤とを添加することで、冷却水を再生する装置が開示されている。この再生装置によれば、冷却水中のエチレングリコール濃度と防錆力をそれぞれ検出し、エチレングリコール及び水の少なくとも一方を添加することでエチレングリコール濃度を最適にするとともに、防錆力を高めるために防錆剤を添加することで所期の防錆力が回復する。したがって冷却水を抜き取る必要なくオンサイトで再生処理することができ、かつ廃棄冷却水の発生も抑制できる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが上記公報に開示の技術では、冷却水の酸化還元電位を測定して防錆力の指標としているだけであり、防錆力が低下していると判断された場合でも適切な防錆剤の種類と量の判断が難しい。そのため上記公報には、添加すべき適切な防錆剤の種類と量は開示されていない。このため、防錆剤の種類に応じた精微な再生を行うことが困難であり、防錆剤の濃度バランスが崩れるという問題がある。
【0008】
例えばアルミニウムに対する防錆剤であるケイ酸塩を過剰に添加した場合には、冷却水中にゲル状の沈殿が生成する場合がある。また鉄に対して優れた防錆剤である硼酸塩に対してケイ酸塩の量が極端に少なくなると、アルミニウム部材が腐食する場合がある。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、防錆剤の種類に応じた適切な再生処理を行い、劣化冷却水を新品冷却水とほぼ同等の性能にまで容易に再生することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の自動車用冷却水の再生方法の特徴は、再生すべき冷却水中に、アゾール類と、リン酸又はリン酸塩の少なくとも一方とを添加するとともに、冷却水中の濃度が、 2- ホスホノブタン -1,2,4 トリカルボン酸 0.001 〜 0.1 重量%、カルシウム化合物が金属カルシウム換算で 0.00006 〜 0.006 重量%、マグネシウム化合物が金属マグネシウム換算で 0.00012 〜 0.0120 重量%、となるようにさらに添加し、生成した沈殿物を除去することにある。
【0011】
冷却水中の濃度が、アゾール類 0.001〜 0.5重量%、リン酸又はリン酸塩の少なくとも一方が金属リン換算で0.01〜0.15重量%、となるように添加されることが望ましい。
【0012】
また冷却水中の濃度が、2-ホスホノブタン-1,2,4トリカルボン酸 0.001〜 0.1重量%、カルシウム化合物が金属カルシウム換算で 0.00006〜 0.006重量%、マグネシウム化合物が金属マグネシウム換算で 0.00012〜0.0120重量%、となるようにさらに添加することも望ましい。この場合、沈殿物を濾過後の冷却水のpHが11.0以下となるようにアルカリ金属水酸化物をさらに添加することが望ましい。
【0013】
そして本発明の再生方法に用いられる再生用添加剤の特徴は、アゾール類とリン酸又はリン酸塩の少なくとも一方とを含み、重量比でアゾール類 0.001〜 0.5に対して、リン酸又はリン酸塩の少なくとも一方が金属リン換算で0.01〜0.15となるように含み、 2- ホスホノブタン -1,2,4 トリカルボン酸 0.001 〜 0.1 重量%、カルシウム化合物が金属カルシウム換算で 0.00006 〜 0.006 重量%、マグネシウム化合物が金属マグネシウム換算で 0.00012 〜 0.0120 重量%、をさらに含むことにある。
【0015】
【発明の実施の形態】
本願発明者らは、現在利用されている冷却水中の各種成分を詳細に調べ、経時的に濃度が変化する成分の種類とその濃度の変化程度を知見した。そして自動車の冷却水中に含まれる主要な防錆剤は、リン酸又はリン酸塩,トリアゾール類、チアゾール類、硝酸塩、モリブデン酸塩,安息香酸塩などの有機酸塩、モリブデン酸塩であることがわかった。さらにこれらの防錆剤のうち経時的に減少していくものは、リン酸又はリン酸塩、トリアゾール類及びチアゾール類などのアゾール類、2-ホスホノブタン-1,2,4トリカルボン酸、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンであることが明らかとなった。
【0016】
また劣化冷却水中には、異物発生の原因となる金属イオンが溶解しているが、上記した各種防錆剤は、冷却水中で異物の原因となる金属イオンと即効で反応し、金属イオンを不溶化して沈殿を生成する。したがってこれらの防錆剤の添加によって生成した沈殿を単純に除去するだけで、冷却水中から金属イオンを除去することができる。
【0017】
そこで本発明では、再生すべき冷却水中にアゾール類とリン酸又はリン酸塩の少なくとも一方とを添加することとした。これにより減少した防錆剤を補充することができ、かつ冷却水中に溶解している金属イオンを沈殿として容易に除去することができる。
【0018】
再生すべき冷却水としては、各種防錆剤及びエチレングリコールなどのグリコール類が既に添加されている自動車用の冷却水を用いることができる。既に添加されている防錆剤としては、リン酸,リン酸塩,トリエタノールアミン塩などのアミン塩,ケイ酸塩,ホウ酸塩,炭酸塩,硫酸塩,硝酸塩,亜硝酸塩,アルケニルコハク酸又はそのアルカリ金属塩,モリブデン酸塩,タングステン酸塩,安息香酸,安息香酸誘導体,安息香酸又は安息香酸誘導体のアルカリ金属塩,水酸化マグネシウム,酸化マグネシウムなどのマグネシウム化合物,ベンゾトリアゾール,トリルトリアゾール,メルカプトベンゾチアゾール又はそのアルカリ金属塩など、特に制限されない。なお再生すべき冷却水としては、2年間使用された冷却水を想定しているが、通常の使用条件で1〜3年使用された冷却水であれば再生することができる。
【0019】
再生すべき冷却水中に添加されるアゾール類としては、チアゾール類及びトリアゾール類が代表的なものであり、チアゾール類とトリアゾール類の少なくとも一方、好ましくはその両方を添加することが望ましい。チアゾール類としてはベンゾチアゾール、メルカプトベンゾチアゾールのアルカリ金属塩などが例示され、トリアゾール類としてはベンゾトリアゾール、トリルトリアゾールなどが例示される。
【0020】
リン酸塩としては、リン酸ナトリウム、リン酸カリウムなどのアルカリ金属塩が特に好ましい。
【0021】
アゾール類は、再生すべき冷却水中に 0.001〜 0.5重量%の濃度となるように添加することが望ましい。チアゾール類及びトリアゾール類の両方を添加する場合には、両者の合計量がこの範囲となるようにする。またリン酸又はリン酸塩の少なくとも一方は、再生すべき冷却水中に金属リン換算で0.01〜0.15重量%となるように添加することが望ましい。
【0022】
この場合、沈殿物を濾過後の冷却水のpHが 9.5以下となるようにアルカリ金属水酸化物をさらに添加することが望ましい。再生すべき劣化冷却水のpHは、初期値 7.0〜 7.8に比べて 0.5以下程度低下していることがわかっている。このようなpHの低下は金属の腐食につながるので、再生するためには沈殿物を濾過後の冷却水のpHが 9.5以下となるように調整することが望ましい。pHの上限が 9.5を超えると、冷却系に存在するアルミニウムのアルカリ腐食が引き起こされるので好ましくない。このpH調整は、沈殿物の濾過前あるいは濾過後の冷却水中に水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ物質を添加して行えばよい。
【0023】
また2-ホスホノブタン-1,2,4トリカルボン酸 0.001〜 0.1重量%、カルシウム化合物が金属カルシウム換算で 0.00006〜 0.006重量%、マグネシウム化合物が金属マグネシウム換算で 0.00012〜0.0120重量%、となるようにさらに添加することが望ましい。これらの防錆剤をさらに添加することにより、冷却水中の金属イオンの除去能力が向上し、長期間の使用により著しく劣化した冷却水中に多量に存在する金属イオンの除去が可能となる。またさらに高いpHとしても防食できるため、鉄系金属の腐食を一層防止することができる。
【0024】
そこでこれらの防錆剤をさらに添加する場合には、沈殿物を濾過後の冷却水のpHが11.0以下となるようにアルカリ金属水酸化物をさらに添加することが望ましい。pHを11.0と高くしても、これらの防錆剤の共存によってシリンダヘッドなどのアルミニウムの腐食を防止することができるため、鉄系金属の腐食をさらに防止することができる。
【0025】
カルシウム化合物及びマグネシウム化合物としては、それぞれ、酸化物、水酸化物、過マンガン酸塩、クエオム酸塩、フッ化物、ヨウ化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、チタン酸塩、タングステン酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、リン酸第二水素塩、ギ酸塩、酢酸塩。プロピオン酸塩、酪酸塩、吉草酸塩、ラウリン酸塩、ステアリン酸塩、オレイン酸塩、グルタミン酸塩、乳酸塩、コハク酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、セバシン酸塩、安息香酸塩、フタル酸塩、サリチル酸塩、マンデル酸塩などを用いることができる。
【0026】
本発明で添加される防錆剤は経時的に減少する成分であり、これらの防錆剤のみを選択して適切な上記添加量で添加することで、新品同様の冷却水品質まで防錆性能を回復させることが可能となり、防錆剤のバランスが崩れることによる腐食などの異常を防止することができる。さらにこれらの防錆剤は、冷却水中に溶解している金属イオンと即効で反応して不溶化するため、単純な濾過によって冷却水から除去することができる。
【0027】
なおこれらの防錆剤の添加量は、車両冷却系金属部品の防食性、部材への影響、成分の安定性などを考慮して最適範囲を決定している。既に使用されている冷却水に添加した場合、この範囲で添加することで防食性能を維持することができるとともに、部材に悪影響を与えるまでには至らず、添加剤バランスを最適に保ことができる。
【0028】
そして本発明の再生用添加剤は、アゾール類とリン酸又はリン酸塩の少なくとも一方とを含み、重量比でアゾール類 0.001〜 0.5に対して、リン酸又はリン酸塩の少なくとも一方が金属リン換算で0.01〜0.15となるように含むことを特徴とし、2-ホスホノブタン-1,2,4トリカルボン酸 0.001〜 0.1重量%、カルシウム化合物が金属カルシウム換算で 0.00006〜 0.006重量%、マグネシウム化合物が金属マグネシウム換算で 0.00012〜0.0120重量%、をさらに含むことが望ましい。
【0029】
本発明の再生用添加剤は、再生すべき冷却水に対して所定量添加するだけで、アゾール類とリン酸又はリン酸塩の少なくとも一方とを、また好ましくは2-ホスホノブタン-1,2,4トリカルボン酸とカルシウム化合物及びマグネシウム化合物を最適な比率として添加することができる。
【0030】
本発明の再生用添加剤は、無溶媒とすることも可能であるが、再生すべき冷却水に容易に均一混合するために、溶媒に溶解した状態とすることが望ましい。溶媒としては水のみでもよいが、凍結温度の上昇を防止するために、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールなどのグリコール類を含むことが望ましく、グリコール類を水に対して30体積%以上の割合で含む溶媒とすることが望ましい。
【0031】
また本発明の再生用添加剤にアルカリ金属水酸化物を予め添加して、pHを高くしておくことも好ましい。このようにすれば、再生処理と同時にpH調整を行うことができ、便利である。
【0032】
そして上記した防錆剤の添加により、再生すべき冷却水中の金属イオンが即効で反応して析出・沈殿するので、本発明の再生方法では生成した沈殿を除去する。この除去は、フィルターを用いた通常の単純な濾過により容易に行うことができる。
【0033】
【実施例】
以下、参考例、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明する。
【0034】
参考例1〜6、実施例1及び比較例1〜7では、市販されている廉価なLLCを2年間使用した自動車の冷却水を再生すべき冷却水として用い、実施例2〜4及び比較例8〜11では、新車時に充填されたLLCを20万km走行使用したタクシーの冷却水を再生すべき冷却水として用いている。その成分組成を比較例1及び比較例8として表4に示す。
【0035】
2年間使用された冷却水中には、硝酸ナトリウムが 0.015重量%、ベンゾトリアゾール(以下BTと略記する)が 0.005重量%未満、メルカプトベンゾチアゾールのナトリウム塩(以下SMBTと略記する)が 0.005重量%未満、モリブデン酸ナトリウムが 0.066重量%、リン酸が金属リン換算で 0.005重量%未満の組成で含まれ、そのpHは7.40であった。また20万km走行使用された冷却水中には、硝酸ナトリウムが0.12重量%、BTが0.47重量%、SMBTが 0.005重量%未満、モリブデン酸ナトリウムが0.15重量%、リン酸が金属リン換算で0.12重量%未満の組成で含まれ、そのpHは6.40であった。
【0036】
図1に本実施例で用いた再生装置を示す。この再生装置1は、自動車の冷却系2に連結して用いられる。冷却系2は、エンジン20と、エンジン20によって駆動される冷却ポンプ21と、ラジエータ22とからなり、冷却ポンプ21の駆動によって冷却水がエンジン20の周囲とラジエータ22の間を循環する。
【0037】
そして再生装置1は、ポンプ10と、ポンプ10からラジエータ22に冷却水を供給する入管11と、ラジエータ22からポンプ10に冷却水を供給する出管12と、出管12の途中に設けられ出管12内に連通する投入部13と、出管12の途中に設けられ出管12内を流れる冷却水を濾過してポンプ10に供給するフィルタ14と、ポンプ10の駆動を制御する制御部15とから構成されている。入管11と出管12は二重管構造とされ、省スペース化が図られている。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
(参考例1)
表1の参考例1に示す組成となるように各原料を混合し、 KOHでpHを 8.7に調整して、再生用添加剤を調製した。なおリン酸の添加量は金属リン換算の重量%である。そして冷却ポンプ21とポンプ10を駆動して冷却水を冷却系2及び再生装置1の間で循環させた状態とし、この添加剤を投入部13から出管12内を流れる比較例1に示す組成の冷却水に投入した。投入量は、冷却水9Lに対して添加剤1Lの割合である。
【0041】
この状態で冷却ポンプ21とポンプ10を10分間駆動する再生処理を行い、停止後に、再生装置1内に残留する冷却水をラジエータ22に戻した。そして再生処理後の冷却水の組成を分析するとともに、JIS K2234 に規定された金属腐食試験と、ASTM D4340に規定された伝熱面腐食試験(Test Method for Corrosion of Cast Aluminum Alloys in Engine Coolants under the Heat-Rejecting Surface )を行って、それぞれの腐食量を測定した。なお添加剤が添加され再生された冷却水の貯蔵安定性試験も行った。貯蔵安定性試験は、再生された冷却水をガラス容器に入れて50℃で 168時間加熱し、生成する沈殿の量を JIS K2503の4.(沈殿価評価方法)に基づいて測定した。それぞれの試験結果と、再生処理後の冷却水の組成及びpHを表3に示す。
【0042】
(参考例2〜6、実施例1〜4)
表1に示す組成となるように各原料を混合して調製された添加剤を用いたこと以外は、参考例1と同様にして再生処理を行い、再生処理後の冷却水について同様にして組成の分析と試験を行った。それぞれの試験結果と、再生処理後の冷却水の組成及びpHを表3に示す。なおCaは硝酸カルシウム四水和物を用い、金属Ca換算濃度で示している。またMgは硝酸マグネシウム六水和物を用い、金属Mg換算濃度で示している。PBTCは、2-ホスホノブタン-1,2,4トリカルボン酸を意味している。
【0043】
(比較例1,8)
上記した2年間使用された自動車の冷却水及び20万km走行使用された冷却水をそのまま用い、参考例1と同様にして組成の分析と試験を行った。それぞれの試験結果と、冷却水の組成及びpHを表4に示す。
【0044】
(比較例2〜11)
表2に示す組成となるように各原料を混合して調製された添加剤を用いたこと以外は、参考例1と同様にして再生処理を行い、再生処理後の冷却水について同様に組成の分析と試験を行った。それぞれの試験結果と、再生処理後の冷却水の組成及びpHを表4に示す。
【0045】
<評価>
【0046】
【表3】
【0047】
【表4】
【0048】
比較例1における再生処理を行わなかった冷却水では、BT,SMBT及びリンがほとんど検出されず、使用中にこれらの成分量が大きく減少したことがわかる。そのため、BT,SMBTの消耗によって黄銅の防食性とアルミニウム伝熱面の防食性が悪化し、リンの減少によって鉄の防食性も悪化している。さらに金属の腐食に伴い、Cu,Fe,Zn,Alの溶解が発生している。
【0049】
しかし参考例1〜6の再生処理を行うことにより、 JIS及びASTMの規格を満足する性能まで防食性が回復するとともに、貯蔵安定性も良好であり、さらに溶解した金属イオンが除去されていることもわかる。
【0050】
そして参考例3と参考例4の結果からわかるように、添加剤にBT及びSMBTのいずれか一方を含まなくても、金属イオンを除去できることが明らかである。
【0051】
一方、pHが10.0となった比較例2では、アルミニウム伝熱面に対する防食性に劣り、参考例6との比較から、再生処理後の冷却水のpHは 9.5以下が望ましいことがわかる。また比較例4では金属イオンの除去ができていないが、参考例1では金属イオンの除去ができていることから、アゾール類を 0.001重量%以上、かつリン酸を金属リン換算で0.01重量%以上とすることが必要であることがわかる。
【0052】
さらに参考例5と比較例5〜7の比較から明らかなように、BT,SMBT及びリンのいずれか一つでも本発明の範囲より濃度が高くなると黄銅の防食性が低下し、リンの濃度が高い場合はアルミニウム伝熱面の防食性が低下する。そして参考例1と比較例4の比較から、各成分の濃度が本発明の範囲より少ないと、金属イオンの除去が困難となることがわかり、冷却水中の濃度を本発明の範囲とすることによって初めて金属イオンを除去できることが明らかである。
【0053】
参考例6と実施例1との比較、及び比較例2と比較例3との比較より、PBTC,Ca,及びMgをさらに添加することで、アルミニウム伝熱面に対するアルカリ腐食の防食性が向上していることがわかる。また実施例1と比較例3との比較より、PBTC,Ca,及びMgをさらに添加しても、pHが高くなるとアルミニウム伝熱面に対するアルカリ腐食の防食性が低下していることも明らかである。
【0054】
比較例8の著しく劣化した冷却水では、鉄系及び銅系を中心に防食性能が低下し、銅イオンの著しい溶解が認められる。このような冷却水では、比較例9に示すようにBT,SMBT及びリンを添加することによって防食性の回復は可能であるものの、銅イオンを十分に除去することが困難である。しかしPBTC,Ca,及びMgをさらに添加した実施例3では、防食性が回復するとともに銅イオンも除去されている。
【0055】
また比較例10に示すようにPBTC,Ca,及びMgが本発明の範囲より少ないと銅イオンの除去が困難となり、比較例11に示すようにPBTC,Ca,及びMgが本発明の範囲より多くなると貯蔵安定性が悪化して沈殿が発生してしまう。しかしPBTC,Ca,及びMgの添加量を実施例3〜4に示す範囲とすることにより、いずれの評価試験においても良好な結果を示している。
【0056】
すなわちPBTC,Ca,及びMgを本発明の範囲内の濃度となるようにさらに添加することで、pHが11.0までアルミニウム鋳物伝熱面の防食性が確保され、多量に金属イオンが溶解している冷却水であっても金属イオンを除去することができることが明らかである。
【0057】
したがって各実施例の添加剤を添加して再生処理することにより、劣化した冷却水を再生して再び使用することができるので、焼却などの廃液処理が不要となり省資源・省エネルギーとなる。
【0058】
さらに本実施例で用いた再生装置によれば、冷却水を自動車の冷却系から抜き取るような手間が不要となり、小さなスペースで冷却水を容易にかつ手早く再生することができる。
【0059】
【発明の効果】
すなわち本発明の再生方法によれば、焼却などの廃液処理が不要となり省資源・省エネルギーとなるとともに環境汚染を防止することができる。そして本発明の再生用添加剤によれば、再生すべき冷却水中に所定量混合し、沈殿物を除去するだけで冷却水を再生することができるので、難しい操作が不要となり、冷却水をきわめて容易に再生することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例で用いた再生装置の構成を示す説明図である。
【符号の説明】
1:再生装置 2:冷却系 10:ポンプ
13:投入部 14:フィルタ 15:制御部
20:エンジン 21:冷却ポンプ 22:ラジエータ
Claims (4)
- 再生すべき冷却水中に、アゾール類と、リン酸又はリン酸塩の少なくとも一方とを添加するとともに、冷却水中の濃度が、 2- ホスホノブタン -1,2,4 トリカルボン酸 0.001 〜 0.1 重量%、カルシウム化合物が金属カルシウム換算で 0.00006 〜 0.006 重量%、マグネシウム化合物が金属マグネシウム換算で 0.00012 〜 0.0120 重量%、となるようにさらに添加し、生成した沈殿物を除去することを特徴とする自動車用冷却水の再生方法。
- 冷却水中の濃度が、アゾール類 0.001〜 0.5重量%、リン酸又はリン酸塩の少なくとも一方が金属リン換算で0.01〜0.15重量%、となるように添加される請求項1に記載の自動車用冷却水の再生方法。
- 沈殿物を濾過後の冷却水のpHが11.0以下となるようにアルカリ金属水酸化物をさらに添加する請求項1に記載の自動車用冷却水の再生方法。
- アゾール類とリン酸又はリン酸塩の少なくとも一方とを含み、重量比でアゾール類 0.001 〜 0.5 に対して、リン酸又はリン酸塩の少なくとも一方が金属リン換算で 0.01 〜 0.15 となるように含み、 2- ホスホノブタン -1,2,4 トリカルボン酸 0.001 〜 0.1 重量%、カルシウム化合物が金属カルシウム換算で 0.00006 〜 0.006 重量%、マグネシウム化合物が金属マグネシウム換算で 0.00012 〜 0.0120 重量%、をさらに含むことを特徴とする冷却水再生用添加剤。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002007853A JP4088447B2 (ja) | 2002-01-16 | 2002-01-16 | 自動車用冷却水の再生方法及び再生用添加剤 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002007853A JP4088447B2 (ja) | 2002-01-16 | 2002-01-16 | 自動車用冷却水の再生方法及び再生用添加剤 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2003213465A JP2003213465A (ja) | 2003-07-30 |
JP4088447B2 true JP4088447B2 (ja) | 2008-05-21 |
Family
ID=27646264
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002007853A Expired - Lifetime JP4088447B2 (ja) | 2002-01-16 | 2002-01-16 | 自動車用冷却水の再生方法及び再生用添加剤 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP4088447B2 (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN109252938A (zh) * | 2018-10-25 | 2019-01-22 | 广州文冲船厂有限责任公司 | 一种淡水冷却加药系统 |
Families Citing this family (9)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
AU2003248060A1 (en) | 2003-07-11 | 2005-01-28 | Shishiai-Kabushikigaisha | Cooling fluid composition for fuel battery |
CN100584919C (zh) | 2003-10-01 | 2010-01-27 | Cci株式会社 | 冷却液组合物 |
AU2003296105A1 (en) * | 2003-10-16 | 2005-05-05 | Shishiai-Kabushikigaisha | Cooling fluid composition |
JPWO2005037950A1 (ja) * | 2003-10-16 | 2006-12-28 | シーシーアイ株式会社 | 冷却液組成物 |
JPWO2005054396A1 (ja) * | 2003-12-01 | 2007-06-28 | シーシーアイ株式会社 | 冷却液組成物 |
AU2003296134A1 (en) * | 2003-12-25 | 2005-07-21 | Shishiai-Kabushikigaisha | Cooling fluid composition |
JP5700374B2 (ja) * | 2011-09-14 | 2015-04-15 | 羽成 将 | エンジン再生用修復剤注入装置 |
US8617416B1 (en) * | 2012-09-07 | 2013-12-31 | Prestone Products Corporation | Heat transfer fluids and corrosion inhibitor formulations for use thereof |
US9994755B2 (en) | 2012-09-07 | 2018-06-12 | Prestone Products Corporation | Heat transfer fluids and corrosion inhibitor formulations for use thereof |
-
2002
- 2002-01-16 JP JP2002007853A patent/JP4088447B2/ja not_active Expired - Lifetime
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN109252938A (zh) * | 2018-10-25 | 2019-01-22 | 广州文冲船厂有限责任公司 | 一种淡水冷却加药系统 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2003213465A (ja) | 2003-07-30 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
CA1310486C (en) | Corrosion-inhibited antifreeze formulation | |
JP4980534B2 (ja) | ジカルボン酸、モリブデン酸塩およびトリアゾールまたはチアゾールを基礎とする凍結防止剤濃縮物ならびにこの凍結防止剤濃縮物を含有する冷媒組成物 | |
JP4088447B2 (ja) | 自動車用冷却水の再生方法及び再生用添加剤 | |
BG65318B1 (bg) | Инхибитори на корозията и синергитични инхибиторни комбинации за защита на леки метали в топлопренасящи флуиди и моторни охлаждащи системи | |
ZA200502912B (en) | Method for cooling high temperature engines | |
EP3374463B1 (de) | Silikathaltiges kühlmittelkonzentrat | |
CA2171013C (en) | Nonaqueous heat transfer fluid | |
AU8598598A (en) | Method of inhibiting corrosion of flux-treated metal surfaces | |
CA2308195C (en) | Silicate free antifreeze composition | |
EP1634937A1 (de) | Silikatfreie Kühlflüssigkeiten auf Basis organischer Säuren und Carbamaten mit verbesserten Korrosionseigenschaften | |
AU2010254443A1 (en) | Hot test fluid containing vapor phase inhibition | |
JP2902554B2 (ja) | 冷却液組成物 | |
JP2958690B2 (ja) | 冷却不凍液組成物 | |
JP4119622B2 (ja) | 冷却液組成物 | |
KR20090037142A (ko) | 장수명 부동액 조성물 | |
JP2006316670A (ja) | エンジンテストに使用するエンジン冷却液及びテスト済みエンジンの保管方法 | |
JP4474142B2 (ja) | 内燃機関用冷却液及びその再生方法 | |
JP2884336B2 (ja) | 冷却液組成物 | |
JP2004068155A (ja) | 不凍液 | |
CA2307621A1 (en) | Cooling composition for use with magnesium materials | |
JPWO2005037951A1 (ja) | 冷却液組成物 | |
Wrathall | Inhibition of Corrosion of Ferrous Metals in Glycol-Water Mixtures | |
WO2005063917A1 (ja) | 冷却液組成物 | |
MXPA98007443A (en) | Refrigerated inhibitor concentrate | |
JPH01311099A (ja) | 不凍液 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20041025 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20070405 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20070522 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20070723 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20080219 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20080225 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110228 Year of fee payment: 3 |
|
R151 | Written notification of patent or utility model registration |
Ref document number: 4088447 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110228 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120229 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120229 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130228 Year of fee payment: 5 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140228 Year of fee payment: 6 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
EXPY | Cancellation because of completion of term |