JP4088380B2 - 汚染土壌の浄化方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、土壌から各種汚染物質を除去する浄化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
土壌に蓄積した各種汚染物質(有害物質)に対処するための処置としては、従来、
(1)汚染土壌の周囲にコンクリート層による遮断壁、シート、鋼矢板等による遮水工を行い、汚染物質を封じ込める。
【0003】
(2)汚染された土壌に汚染物質を固化あるいは不溶化するための薬剤を注入し、汚染物質の拡散を防止する。
【0004】
(3)汚染された土壌にガスあるいは地下水を抽出するための孔を形成し、この孔から負圧によりガスあるいは地下水とともに汚染物質を抽出し、抽出された汚染物質に活性炭吸着あるいは曝気等の無害化処理を行う。
【0005】
(4)汚染された土壌を掘り出し、この汚染土壌を地上で焼却、低温加熱、風乾等の方法により無害化する。
【0006】
等の方法が採られていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記(1)、(2)の方法では、有害汚染物質は隔離処理がなされただけであって、この有害汚染物質を隔離した土壌部分は利用することができず、また依然として有害汚染物質の漏出の恐れは完全に除去されたとはいえないので、問題の根本的な解決とはなっていない。また、上記(3)の方法では、汚染物質の土壌への吸着、結合の程度が大きい場合には、有害汚染物質を取り出すのが困難な場合がある。さらに、上記(4)の方法では、エネルギーを大量に消費することになり、また汚染物質の種類によっては除去できないものもある。本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、土壌に蓄積した各種汚染物質を低コストで確実に除去しうる土壌の浄化方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
第1の発明では、汚染土壌へヒドロキシラジカルを注入し、土壌中に蓄積した汚染物質を土壌から遊離させまたは分解して、汚染物質を汚染土壌から除去する汚染土壌の浄化方法において、土壌の汚染物質が蓄積した部分に適切な間隔で注入井を形成し、この注入井の周囲に抽出井を形成し、前記注入井にヒドロキシラジカルを含む溶媒を注入し、このヒドロキシラジカルの作用により土壌中に蓄積した汚染物質を土壌から遊離させまたは分解するととともに、この汚染物質が土壌から遊離した溶脱汚染物質および汚染物質が分解された分解生成物を含む気体または液体を前記抽出井から抽出し、前記注入井は地表から汚染土壌が存在する深さに渡って削孔された縦孔に、外周の全長、全周に渡って複数の穴が開口した管体をはめ込んで形成されるとともに、前記注入井へのヒドロキシラジカルを含む溶媒の注入に際しては、管体外周の穴を溶媒を貫通させない閉鎖部材で塞いでおき、注入井内部に前記溶媒が充填されたところで前記閉鎖部材を取り外すようにする。
【0009】
第2の発明では、前記注入井へのヒドロキシラジカルを含む溶媒の注入に際しては、前記管体内部に充填した前記溶媒に圧力をかけて前記管体外周の穴から汚染土壌中に噴出させる。
【0010】
【発明の作用および効果】
本発明によれば、汚染土壌中に注入されたヒドロキシラジカルを用いて汚染土壌を掘り起こさずに浄化処理が行えるので、汚染土壌を掘り起こすためのコストが削減できる。
【0011】
また、ヒドロキシラジカルを含む溶媒は、注入井内に充填された後、管体の総ての穴から汚染土壌に浸透していくので、ヒドロキシラジカルを汚染土壌全体にまんべんなく行き渡らせることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施の形態について説明する。
【0013】
図1には、本発明の第1の実施の形態を示す。
【0014】
図示されるように、有害汚染物質(例えば、有機塩素化合物(例えばダイオキシン等)、PCB(ポリ塩化ビフェニール)、農薬、重質油、重金属等)が蓄積した汚染土壌1の内部には、複数の注入井2が適切な間隔で配置される。また、これらの各注入井2を取り囲むようにして、複数の抽出井3が設けられる。
【0015】
ここで、注入井2は、ヒドロキシラジカル(OH)の注入部となるもので、地表4から汚染土壌1が存在する深さに渡って削孔された縦孔に、管体をはめ込んで形成される。この管体には、外周の全長、全周に渡って複数の穴が開口しており、ヒドロキシラジカルはこれらの孔から汚染物質1に浸透させられる。また、抽出井3は、ヒドロキシラジカルの作用で土壌から遊離した汚染物質を抽出するための縦孔である。
【0016】
地上にはヒドロキシラジカル発生器5が設置され、ヒドロキシラジカルが生成される。具体的に、ヒドロキシラジカルの生成方法としては、例えば
(A)ph7以上の溶液とオゾンとを混合する
(B)オゾンを溶解した溶液と過酸化水素とを混合する
(C)オゾンを溶解した溶液に紫外線を照射する
(D)オゾンを溶解した溶液と過酸化水素を混合するとともに紫外線を照射する(E)過酸化水素水に紫外線を照射する
等の方法、あるいはこれら(A)〜(E)を組み合わせた方法が考えられる。
【0017】
このようにして生成されたヒドロキシラジカルは、溶媒(気体、あるいは液体、あるいは気体と液体の混合体)中に混合され、このヒドロキシラジカルを含む溶媒が、圧入ポンプ6によって注入井2内部に注入される。この溶媒注入に際しては、管体外周の穴は溶媒を貫通させない閉鎖部材(例えばビニールシート、鋼管等)で塞いでおく。そして、注入井2内部に溶媒が充填されたところでシートを取り外すようにする。これにより、管体の総ての穴から、注入井2内のヒドロキシラジカルを含む溶媒が汚染土壌1に浸透していき、この結果、ヒドロキシラジカルを汚染土壌1全体にまんべんなく行き渡らせることができる。また、この場合に、ヒドロキシラジカルを含む溶媒に圧力をかけて汚染土壌1中に噴出させるようにすれば、ちょうど汚染物質が土壌に進入した経路を通ってヒドロキシラジカルを汚染土壌1内に注入でき、汚染土壌1へのヒドロキシラジカルの浸透を確実なものとできる。
【0018】
汚染土壌1に浸透したヒドロキシラジカルは、汚染土壌1中の各種汚染物質に作用し、土粒子に吸着あるいは結合している汚染物質の吸着エネルギーを低下させる。これにより、汚染物質と土粒子との物理的化学的結合が切断され、汚染物質は土壌から遊離する。また、ヒドロキシラジカルは、汚染土壌1中の汚染物質と反応して、汚染物質を化学的に分解するようにも作用する。そして、このようにして汚染土壌1から溶脱した溶脱汚染物質および汚染物質が分解された分解生成物を含む気体および液体は、注入井2周囲の抽出井3へ浸透し、これらの抽出井3から抽出、収集されることとなる。
【0019】
なお、この場合のヒドロキシラジカルの必要量(最適量)は、汚染土壌1の性質によって異なってくるので、土質試験等の結果に基づいて決定する。この場合、土壌の性質を決定づける要因としては、例えば、土壌を構成する土(粘土、腐植土、岩石、砂質土)の種類、構成比、絶対量や、土壌中水溶液の種類、構成比、絶対量や、その他土壌に含まれる各種物質の種類、構成比、絶対量等が考えられる。
【0020】
また、この場合、地表4の抽出井3の開口部分には、抽出井3の開口を覆うように捕集手段7(例えば、気密性のある囲い)を設ける。これにより、抽出井3の開口から揮散してくる溶脱汚染物質および分解生成物を含む気体を捕集して、大気中への拡散を防止することができる。このように抽出、収集された溶脱汚染物質および分解生成物を含む気体および液体は、気密容器8内の追加処理容器9に移送され、必要に応じてヒドロキシラジカルによる再処理、あるいはその他の無害化処理が施されることになる。
【0021】
図2には、本発明の第2の実施の形態を示す。
【0022】
図示されるように、この実施の形態では、汚染土壌11は掘り起こされ、気密性のあるプラント12内に移送されることにより、このプラント12内で浄化処理される(プラント処理)。
【0023】
詳しく説明すると、プラント12内の汚染土壌11には、適切な間隔をもって複数の注入井13が配設されるとともに、これらの各注入井13の周囲を取り囲むように図示されない複数の抽出井が設けられる。そして、各注入井13には、ヒドロキシラジカル発生器14で生成されたヒドロキシラジカルを含む溶媒が圧入ポンプ15により注入される。ここで、注入井13、抽出井、ヒドロキシラジカル発生器14、圧入ポンプ15は、それぞれ上記第1の実施の形態における注入井2、抽出井3、ヒドロキシラジカル発生器4、圧入ポンプ6と同様のものである。
【0024】
このようにして汚染土壌11内に注入されたヒドロキシラジカルは、第1の実施の形態と同様に汚染土壌11内の汚染物質に作用し、汚染物質を汚染土壌11から溶脱させ、また汚染物質を分解する。このようにして発生した溶脱汚染物質および分解生成物を含む気体は、抽出井を介してプラント12内に揮散し、プラント12内で捕集される。また、溶脱汚染物質および分解生成物を含む液体は、汚染土壌11から集水装置16へと流下し、収集される。このように収集された溶脱汚染物質および分解生成物を含む気体および液体は、気密容器17内の追加処理装置18に移送されることにより、必要に応じてヒドロキシラジカルによる再処理、あるいは他の種類の無害化処理がなされる。
【0025】
なお、上記集水装置16は、例えばメッシュ状の金網と受け皿からなるもので、金網上に配置した汚染土壌11から流下してくる溶脱汚染物質および分解生成物を含む液体を受け皿内に収集できるようにしたものである。
【0026】
以上のように、本発明によれば、汚染土壌に注入されたヒドロキシラジカルの作用により汚染土壌内の汚染物質は汚染土壌から遊離されるか、分解されるかしたうえで抽出されるので、様々な種類の汚染物質(例えば有機塩素化合物、PCB、農薬、重質油、重金属等)を、高い確実性をもって抽出できる。したがって、浄化処理の質が向上し、浄化処理がなされた土壌は有効に再利用することができる。
【0027】
また、浄化処理のための設備も比較的小規模で済み、低コストで浄化処理実行できる。特に、上記第1の実施の形態のように汚染土壌を掘り起こさずに注入井および抽出井を形成する(原位置処理)ようにすれば、汚染土壌を掘り起こすコストも削減でき、処理コストを著しく低減できる。
【0028】
なお、上記の各実施の形態では、複数の注入井および抽出井を設けるようにしたが、本発明はこのような形態に限られるものではなく、注入井および抽出性の数は実施状況に応じて単数としてもよく、特に個数は限定されない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施の形態を示す説明図である。
【図2】 本発明の第2の実施の形態を示す説明図である。
【符号の説明】
1、11 汚染土壌
2、13 注入井
3 抽出井
5、14 ヒドロキシラジカル発生器
7 捕集手段
9、17 追加処理装置
Claims (2)
- 汚染土壌へヒドロキシラジカルを注入し、土壌中に蓄積した汚染物質を土壌から遊離させまたは分解して、汚染物質を汚染土壌から除去する汚染土壌の浄化方法において、
土壌の汚染物質が蓄積した部分に適切な間隔で注入井を形成し、この注入井の周囲に抽出井を形成し、前記注入井にヒドロキシラジカルを含む溶媒を注入し、このヒドロキシラジカルの作用により土壌中に蓄積した汚染物質を土壌から遊離させまたは分解するととともに、この汚染物質が土壌から遊離した溶脱汚染物質および汚染物質が分解された分解生成物を含む気体または液体を前記抽出井から抽出し、
前記注入井は地表から汚染土壌が存在する深さに渡って削孔された縦孔に、外周の全長、全周に渡って複数の穴が開口した管体をはめ込んで形成されるとともに、前記注入井へのヒドロキシラジカルを含む溶媒の注入に際しては、管体外周の穴を溶媒を貫通させない閉鎖部材で塞いでおき、注入井内部に前記溶媒が充填されたところで前記閉鎖部材を取り外すようにすることを特徴とする汚染土壌の浄化方法。 - 前記注入井へのヒドロキシラジカルを含む溶媒の注入に際しては、前記管体内部に充填した前記溶媒に圧力をかけて前記管体外周の穴から汚染土壌中に噴出させることを特徴とする請求項1に記載の汚染土壌の浄化方法。
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