JP4087228B2 - スイッチトキャパシタ増幅回路および電子機器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、オフセット電圧をキャンセルするスイッチトキャパシタ増幅回路およびそれを利用した電子機器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のオフセットキャンセル型スイッチトキャパシタ増幅回路は、オペアンプの持っているオフセット電圧を容量に蓄えることで、オフセット電圧を出力に生じないように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
米国特許第4543534号明細書(第1−3項、第1図)
従来のオフセットキャンセル型スイッチトキャパシタ増幅回路の回路構成の例を図4に示す。
【0004】
リセットフェーズf1においてスイッチ回路123、124、125、128、129、132が閉じる。このとき容量101、102、103、104は、スイッチ回路123、124、125、129を通じて放電される。一定の時間の後、スイッチ回路123、124、125、128、129、132が開いて、リセットフェーズf1が終了する。
【0005】
次にサンプリングフェーズf2に移る。スイッチ回路121、122、126、130、128、132が閉じる。入力端子141の電圧は容量101に、入力端子142の電圧は容量102に電荷として蓄えられる。容量101の電荷の変化分に等しいだけ容量103の電荷が変化する。同時に容量102の電荷の変化分に等しいだけ容量104の電荷が変化する。これによって、出力端子151の電圧が変化する。出力端子151の電圧は、式(1)で与えられる。
【0006】
Vout= −(C1/C2)*(Vin1-Vin2)・・・(1)
オペアンプの持っている入力オフセット電圧はリセットフェーズf1において容量101、102に蓄えられる。サンプリングフェーズf2のときの容量101の両端間の電位の変化分は入力端子141の電圧とスイッチ123に与えられる基準電圧の差となる。同様にサンプリングフェーズf2のときの容量102の両端間の電位の変化分は入力端子142の電圧とスイッチ124に与えられる基準電圧の差となる。したがって、容量101、102の両端間に蓄えられる電圧の変化分は、入力電圧と基準電圧の差となり、オフセット電圧は含まれない。そのため、オペアンプの持つオフセット電圧は増幅されず、キャンセルされる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし従来のスイッチトキャパシタ増幅回路では、オペアンプの持つオフセット電圧はキャンセルできるものの、入力電圧それ自身がオフセット電圧をもつとき、そのオフセット電圧を増幅して出力してしまうという欠点を有していた。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記問題点を解決するために、この発明は、基準電圧の他に参照電圧を用い、これら参照電圧と基準電圧の差を制御することによって、入力電圧のもつオフセット電圧をキャンセルできる構成とした。上記のように構成されたスイッチトキャパシタ増幅回路では、入力電圧のもつオフセット電圧がキャンセルされるため、出力にオフセットによる誤差を生じない。
【0009】
また、2つの参照電圧を設けて、それら参照電圧の差が入力電圧のもつオフセット電圧と等しくなるような構成にしても、出力にオフセットによる誤差を生じない。
【0010】
【発明の実施の形態】
スイッチトキャパシタ増幅回路は、第1の入力信号が入力される第1の入力端子と、第2の入力信号が入力される第2の入力端子と、前記第1の入力端子の出力に基づいた信号が入力される第1の容量と、前記第2の入力端子の出力に基づいた信号が入力される第2の容量と、を有する。さらに、前記第1の容量の出力に基づいた信号と前記第2の出力に基づいた信号を比較し、信号を出力する演算増幅器と、前記第1の容量に電荷を供給する第1の参照電圧が印加される第1の参照電圧端子と、前記第2の容量に電荷を供給する第1の参照電圧が印加される第2の参照電圧端子と、を有する。そして、前記第1の参照電圧と第2の参照電圧の電圧値の差が、前記第1の入力端子と前記第2の入力端子間のオフセット電圧に一致するように、前記第1の参照電圧の一方又は両方を調整することを特徴とする。
【0011】
さらに、本願発明にかかるスイッチトキャパシタ増幅回路において、前記第1の参照電圧は温度特性を有し、前記第1の入力端子と前記第2の入力端子間のオフセット電圧が温度特性を有する場合に、前記第1の参照電圧と第2の参照電圧の電圧値の差が、前記第1の入力端子と前記第2の入力端子間のオフセット電圧に一致するように、前記第1の参照電圧は温度特性を設定することを特徴とする。
【0012】
本願発明の電子機器は、スイッチトキャパシタ増幅回路を有することを特徴とする。
【0013】
【実施例】
以下に、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1は、この発明によるスイッチトキャパシタ増幅回路の構成図の一例である。
【0014】
リセットフェーズf1においてスイッチ回路123が閉じ、容量101は参照電圧111に接続され、スイッチ回路124が閉じ、容量102は参照電圧112に接続される。同時にスイッチ回路125、129が閉じ容量103、104は電荷が放電される。一定の時間の後、スイッチ回路123、124、125、129が開いて、リセットフェーズf1が終了する。
【0015】
リセットフェーズf1の間に、容量101に蓄えられた電荷は、式(2)で与えられる。
【0016】
q=C1*VREF1・・・(2)
また、容量102に蓄えられた電荷は、式(3)で与えられる。
【0017】
q=C1*VREF2・・・(3)
次に、サンプリングフェーズf2に移る。スイッチ回路121、122、126、130、128、132が閉じる。入力端子141の電圧は容量101に、入力端子142の電圧は容量102に電荷として蓄えられる。容量101の電荷の変化分に等しいだけ容量103の電荷が変化する。同時に容量102の電荷の変化分に等しいだけ容量104の電荷が変化する。これによって、出力端子151の電圧が変化する。
【0018】
サンプリングフェーズf2において容量101に蓄えられた電荷は、式(4)で与えられる。
【0019】
q=C1*Vin1・・・(4)
また、容量102に蓄えられた電荷は、式(5)で与えられる。
【0020】
q=C1*Vin2・・・(5)
したがって、リセットフェーズf1からサンプリングフェーズf2に変わった後の容量101の電荷量の変化分は、式(6)で与えられる。
【0021】
Δq=C1*(Vin1-VREF1)・・・(6)
さらに、容量102の電荷量の変化分は、式(7)で与えられる。
【0022】
Δq=C1*(Vin2-VREF2)・・・(7)
入力端子141の電圧Vin1が、信号電圧Vinpとオフセット電圧Vosから成り、入力端子142の電圧Vin2が信号電圧Vinnのみから成るとき、出力端子151の電圧は、
で与えられる。
【0023】
Vos= VREF1−VREF2となるように、VREF1、VREF2を調整することで、
Vout = −(C1/C2)*(Vinp−Vinn)・・・(9)
となり、入力信号Vin1のもつオフセット電圧Vosをキャンセルすることができる。
このように本発明の回路方式では、入力電圧の持つオフセット電圧をキャンセルして、信号成分のみを増幅することができる。この例では、2つの参照電圧111、112を用いているが、図2、図3に示すように2つの参照電圧のうちの1つを基準電圧に置き換えて、1つの参照電圧と、基準電圧の差を用いて入力電圧の持つオフセット電圧をキャンセルすることが可能である。
【0024】
たとえば、図3の例では、出力端子151の電圧は、式(10)で表される。
【0025】
Vout = −(C1/C2)*{(Vinp−Vinn)+ (Vos−VREF)}・・・(10)
参照電圧111をVosと等しくなるように調整することで、式(11)のようになる。
【0026】
Vout = −(C1/C2)*(Vinp−Vinn)・・・(11)
これにより、入力信号Vin1のもつオフセット電圧Vosをキャンセルすることができる。ここで言う基準電圧は、通常アナロググラウンドと呼ばれるものであり、他のスイッチにも接続されている。出力電圧はこの基準電圧を中心にして、振幅する。上述した例では、説明を簡単にするため、基準電圧を0Vとして計算を行っている。
【0027】
図1のように2つの参照電圧を持つことの利点を以下に示す。たとえば、参照電圧の1つを、温度特性をもたない参照電圧とし、他の参照電圧を、温度特性をもつ参照電圧とする。このようにすることで、入力電圧のオフセット電圧が温度特性をもつ場合、温度特性をもつ参照電圧を用いて、入力電圧のオフセット電圧が温度特性をキャンセルし、温度特性をもたない参照電圧を用いて、入力電圧のオフセット電圧の絶対値を合わせこむことができるようになる。
【0028】
図5は、本発明のスイッチトキャパシタ増幅回路の構成図である。図1と差動増幅器100の構成が異なる以外は同様の動作をする。このように、図5に示すような2入力2出力を持つ完全差動回路においても、実施することができる。
【0029】
図6の回路は、スイッチトキャパシタ増幅回路を2段構成にし、2段目でオフセットキャンセルを行っている例である。出力端子152が、図1の入力端子Vin1に相当し、出力端子153が、図1の入力端子Vin2に相当する。出力端子152、153以降の信号の伝達は、図1と同様である。これにより、スイッチトキャパシタ増幅回路が2段構成であっても、有効に入力信号に含まれたオフセット電圧の影響を低減できる。
【0030】
また、この実施例に示した回路はスイッチトキャパシタ増幅回路の一例であり、他の形式のスイッチトキャパシタ増幅回路においても、実施することが可能である。
【0031】
入力電圧に含まれるオフセット電圧の値があらかじめわかっており、一定の場合は参照電圧は、固定電圧でもよいが、入力電圧に含まれるオフセット電圧の値が不明の場合は、参照電圧を入力電圧のオフセット電圧に合わせて調整できる可変電圧とすることで、出力電圧を見ながらオフセット電圧の調整を行うことが可能である。
【0032】
本願発明にかかる電子機器は、以上のような、スイッチトキャパシタ回路を有することにより、より有効な動作が可能となる。
【0033】
【発明の効果】
入力電圧の持つオフセット電圧をキャンセルして、信号成分のみを増幅することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のスイッチトキャパシタ増幅回路の構成図である。
【図2】本発明のスイッチトキャパシタ増幅回路の構成図である。
【図3】本発明のスイッチトキャパシタ増幅回路の構成図である。
【図4】従来のスイッチトキャパシタ増幅回路の構成図である。
【図5】本発明のスイッチトキャパシタ増幅回路の構成図である。
【図6】 本発明のスイッチトキャパシタ増幅回路の構成図である。
【符号の説明】
100 演算増幅器
101、102、103、104、105、106 容量
111、112 参照電圧
121、122、123、124、125、126、127 スイッチ回路
128、129、130、131、132 スイッチ回路
141、142 入力端子
151、152、153 出力端子
Claims (5)
- 演算増幅器と、
前記演算増幅器の第1の入力端子に一端がそれぞれ接続される第1、第2の容量及び第1のスイッチ回路と、
前記演算増幅器の第2の入力端子に一端がそれぞれ接続される第3、第4の容量及び第2のスイッチ回路と、
前記第1の容量の他端に、一端が接続される第3、第4のスイッチ回路と、
前記第3の容量の他端に、一端が接続される第5、第6のスイッチ回路と、
前記第3のスイッチ回路の他端に接続される第 1 の参照電圧と、
前記第5のスイッチ回路の他端に接続される第2の参照電圧と、
前記第2の容量の他端に、一端が接続される第7、第8のスイッチ回路と、
前記第4の容量の他端に、一端が接続される第9、第10のスイッチ回路と、
前記第1のスイッチ回路の他端に接続される第11のスイッチ回路及び第5の容量と、
前記第2のスイッチ回路の他端に接続される第12のスイッチ回路及び第6の容量と、を有し、
前記第5の容量の他端と前記第7のスイッチ回路の他端は前記演算増幅器の出力端子に接続され、
前記第8、9、10、11及び12のスイッチ回路の他端は接地され、
前記第4及び第6のスイッチ回路の他端を入力端子とすることを特徴とするスイッチトキャパシタ増幅回路。 - 前記第1の参照電圧は接地電圧であることを特徴とする請求項1に記載のスイッチトキャパシタ増幅回路。
- 前記第2の参照電圧は接地電圧であることを特徴とする請求項1に記載のスイッチトキャパシタ増幅回路。
- 前記第1の参照電圧または前記第2の参照電圧は温度特性を有し、
前記第1の入力端子と前記第2の入力端子間のオフセット電圧が温度特性を有する場合に、前記第1の参照電圧と第2の参照電圧の電圧値の差が、前記第1の入力端子と前記第2の入力端子間のオフセット電圧に一致するように、前記第1の参照電圧または前記第2の参照電圧は温度特性を設定することを特徴とする請求項1に記載のスイッチトキャパシタ増幅回路。 - 請求項1から4のいずれかに記載のスイッチトキャパシタ増幅回路を有することを特徴とする電子機器。
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