JP4085424B2 - 振幅制限状態監視方式 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、CDMA方式を用いた移動通信システムの基地局に配備される送信装置における振幅制限状態監視方式に関する。
【0002】
【従来の技術】
同一周波数を複数のユーザーが利用するCDMA方式を用いた移動通信システムの基地局に配備される送信装置では、各ユーザーデータをそれぞれ拡散部にてコーディング処理を行った後、加算合成部にて多重処理を行い、D/A変換後、送信に必要な周波数、および電力に処理され、アンテナより送信される。
【0003】
その際、加算合成部から出力される多重データは合成されるデータによって高いピーク電力を持つことから、アナログデータへの変換後の高出力アンプでの歪等を考慮し、加算合成部から出力される多重データに対して、しきい値以上の振幅を制限(ピーククリッピング)する振幅制限回路を設け、無線周波数部(RF部)に入力される信号レベルを送信電力増幅部のダイナミックレンジ以下に抑えることが、例えば特許文献1〜2に開示されている。
【0004】
このように、従来、基地局装置では、高出力AMPでの歪を考慮し高いピーク電力に対しクリップ処理を施し、ピーク値を制限するピーククリッピングという方法が用いられ、加算合成部から出力される多重データに対して、そのしきい値以上の振幅を制限(ピーククリッピング)することにより、RF部における歪を抑制しているが、各チャネルの電力およびチャネル数は常に変動しており、全チャネルの総電力が増幅器の能力を超えた状態が継続すると振幅制限状態が継続し、増幅器の歪成分の劣化、RF信号の劣化を生ずる。
【0005】
そのため、特許文献2では、振幅制限回路により設定された瞬時振幅(瞬時電力)以上の信号を制限するとともに、さらに、振幅制限動作が行われるごとに振幅制限情報を出力して設定された値以上の瞬時電力の発生確率を検出し、発生確率があるしきい値を超えた場合には各チャネル(ユーザーデータ)の電力を制限することにより、多重時の瞬時電力または平均電力の増加による増幅器の歪の増加を防いでいる。
【0006】
【特許文献1】
特開平9−18451号公報
【特許文献2】
特開2001−36502号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献2に開示された発明では、振幅制限回路における振幅制限の回数をカウントすることにより、設定された値以上の瞬時電力の発生確率により制御を行っているため、振幅制限を受ける瞬時電力のレベル情報については判定できないという問題がある。
【0008】
また、振幅制限回路における振幅制限の回数をカウントし、そのカウント値が予め設定された値を超えたとき、各チャネルの電力を制限することにより加算合成部から出力される多重データの出力を制御して、多重時の平均電力が過電力とならないようにしているため、各チャネルの送信データ出力が加算合成部で多重されるチャネル数により変動し易くなり、通話品質に悪影響を及ぼす虞がある。
【0009】
本発明の目的は、ユーザーデータ制御部より割り当てられたユーザーデータの多重データに対し、振幅制限によって生じる必要以上の変調精度の劣化を防止し、高品質の信号送信を確保することが可能な新規な振幅制限状態監視手段を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の振幅制限状態監視方式は、ユーザーデータ制御部と、該ユーザーデータ制御部により割り当てられた複数のユーザーデータを多重化して無線による送受信を行う送受信部とからなり、前記送受信部が、前記ユーザーデータ制御部により割り当てられた複数のユーザーデータをそれぞれ互いに異なる符号でコーディング処理する複数の拡散部と、該複数の拡散部から出力される複数の拡散データを多重化する加算合成部と、該多重されたデータをピーククリップ処理して無線送信部へ出力する振幅制限部と、該振幅制限部による振幅制限前の前記多重データと振幅制限後の前記多重データの各平均電力を一定周期で監視し、両者の平均利得差に応じて前記ユーザーデータ制御部による前記送受信部に対するユーザーデータの割り当てを制御するための監視情報を出力する比較計算回路部を備えていることを特徴とする。
【0011】
通常は、あるモデルにおいて変調精度を満たす値を制限値として用いるが、変調方式の変更や振幅制限方法に対し全てに対応することは困難である。そこで本発明では、高いピークを多数持つ拡散データの組み合わせ時には、割り当てられるユーザーデータを制御し、電力を抑えることにより、振幅制限によって制限される電力を軽減することで変調精度の劣化を抑える。
【0012】
本発明によれば、振幅制限前後でのある区間の平均利得差を一定周期監視して平均利得差を求め、その値から変調精度の劣化を推測することによって、希望変調精度以下に劣化しないようユーザーデータの割り当てを制御しているので、振幅制限によって生じる必要以上の変調精度の劣化を防止し、ピークの発生確率を考慮したユーザーの割り当てと高品質の信号送信を確保することが可能となる。
【0013】
本発明では、ユーザーデータ制御部より出力された各ユーザーデータは、それぞれ送受信部の拡散部に入力され、拡散処理後、加算合成部にて多重処理され、振幅制限部にて閾値以上の振幅をクリップ処理後、無線周波数部(RF部)へ入力され、アンテナより出力される。また、比較計算回路では、加算合成部からのある区間Tの平均データと振幅制限部からのある区間Tの平均データとの比較を行い、その差に応じてユーザーデータ制御部を調整し、各送受信部に割り当てられるユーザーデータの調整を行う。以上の制御により、振幅制限によって生じる変調精度の劣化を監視し、ピークの発生確率を考慮したユーザーの割り当てと、高品質の信号送信を確保することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施形態の全体ブロック構成を示しており、ユーザーデータ制御部1、およびそれにつながるn台の送受信部21〜2nのブロックにより構成される。
【0015】
ユーザーデータ制御部1は、n台の送受信部21〜2nに割り当てるユーザーデータの数を制御するとともに、割り当てたユーザーデータ11a〜1naを、各送受信部21〜2nへ出力する。各送受信部21〜2nからユーザーデータ制御部1に対して監視情報21a〜2naが出力され、ユーザーデータ制御部1はこの監視情報21a〜2naにより、各送受信部21〜2nへのユーザーデータの割り当てを制御する。
【0016】
図2は、本実施形態のn台ある送受信部21〜2nの内の1台(21)を示すブロック図であり、拡散部31〜3n、加算合成部4、振幅制限部5、RF部6、比較計算回路部7を備えている。
【0017】
ユーザーデータ制御部1より入力された各ユーザーデータ(111〜11n)は、それぞれ拡散部31〜3nに入力されて互いに異なる符号でスペクトル拡散され、拡散データ(31a〜3na)として出力後、加算合成部4にて多重される。多重されたデータ(4a)は、振幅制限部5により設定された制限値にてピーク制限が行われ、RF部6にてアナログデータに変換後、送信に必要な周波数帯にアップコンバートされる。
【0018】
本発明の特徴とする比較計算回路部7は、加算合成回路部4からのある区間Tの多重データ(4b)と、振幅制限部5からのある区間Tのクリップデータ(5b)を比較し、比較結果を監視情報(21a)としてユーザーデータ制御部1に報告する機能を有する。ユーザーデータ制御部1は比較計算回路部7からの監視情報(21a)に基づいて当該送受信部21に割り当てるユーザーデータの数を制御する。
【0019】
図3は、図2の比較計算回路部7の構成を示すブロック図であり、比較処理部8と監視部9を備えている。
【0020】
比較計算回路部7は、加算合成回路部4からの多重データ(4b)と振幅制限部5からのクリップデータ(5b)を比較処理部8に入力し、比較処理部8にて2つのデータを比較することにより得られる劣化推定値(8a)を監視部9へ出力し、監視部9から、ユーザーデータ制御部1を制御するための監視情報(21a)を出力する。
【0021】
図4は、比較計算回路部7内の比較処理部8の構成を示すブロック図であり、遅延回路81,82、平均化回路83,84、劣化推定テーブル85を備えている。
【0022】
比較処理部8は、加算合成部4からのある区間Tの平均データ(83a)と、振幅制限部5からのある区間Tの平均データ(84a)を比較し、利得差(83b)を、劣化推定テーブル85により監視部9にて監視するための劣化推定値(8a)に変換する機能を有する。ここで、遅延回路81,82および平均化回路83,84は、伝搬遅延や計算処理時間により生じる比較器に入力される信号の時間差や振幅差の変動を吸収する回路である。
【0023】
図5〜図8は、本実施形態の動作を説明するための図である。以下、本実施形態の動作について、図1〜8を参照して説明する。
【0024】
図1中のユーザーデータ制御部1では、送信される各ユーザーのデータを各送受信部21〜2nに割り当てる機能と、各送受信21〜2nからの監視情報(21a〜2na)をもとに各送受信21〜2nへの割り当てユーザーを制御する機能を有する。
【0025】
本実施形態ではCDMAのように同一周波数を複数のユーザーが利用するようなシステムを考える。CDMAでは、周波数の利用効率を上げるために複数の信号を多重するなどの制御が行われる。図2の送受信部21では、ユーザーデータ制御部1により割り当てられた各ユーザーデータ(111〜11n)をそれぞれ拡散部31〜3nにて受け、コーディング処理を行った後、加算合成部4にて多重処理を行う。
【0026】
加算合成部4にて多重されたデータ(4a)は、振幅制限部5を通りRF部6に入力され、D/A変換後、送信に必要な周波数、および電力に処理され、アンテナより送信される。その際、出力される多重データ(4a)は合成されるデータによって高いピーク電力を持つことから、アナログデータへの変換後の高出力アンプでの歪等を考慮し、ディジタル部分にて振幅制限が行われる。
【0027】
ところが、振幅制限処理により、データの一部が欠如するために電力の低下や変調精度の劣化が生じる。また、ピークレベル及びピークの発生確率は、コーディングされたデータの組み合わせによって異なることから特定することは困難であるため、適度な振幅設定値を選択する必要がある。通常、振幅制限値を決定する際はあるデータモデルを用い、適度なマージンを考慮して決定される。そのため、将来予想される新たな変調方式や振幅制限方法によりピークの状態が変わる際に値を見直す可能性が生じる。
【0028】
図5に示すように、加算合成部4で生成される多重データ(4b)のある時間T1での平均電力がV1で与えられ、一方、振幅制限部5で生成されるクリップデータ(5b)の上記と同時間T’1で平均化した電力がV2で与えられるとすると、V2は振幅制限処理された分だけV1より電力が小さくなる。このV1とV2の利得差が振幅制限によって失われた電力になるが、この差が大きいと送信される信号の品質を示す変調精度が劣化するため、適切な振幅制限を保たないと通信品質に大きな影響を及ぼすことになる。
【0029】
しかし、CDMA方式において、将来様々な変調方式や振幅制限方法が適用された場合、全ての変調波の出力パターンに対応した適切な振幅制限値を考慮することは困難であることから、本発明では図2中の比較計算回路7内で、振幅制限部5によって生じる利得差を監視することにより、ユーザーデータ制御部1により各送受信部21〜2nに割り当てられるユーザーデータを制御し、加算合成部4にて生成される多重データ(4a)のピーク値を抑制する。
【0030】
ここで、図3〜図8により比較計算回路部7の動作についてさらに詳述する。
【0031】
比較計算回路部7内の比較処理部8は、加算合成部4からの多重データ(4b)と振幅制限部5からのクリップデータ(5b)を入力して双方のデータをそれぞれある区間Tで平均化し、該平均化した電力V1とV2とを比較する。
【0032】
振幅制限部5での処理方法の一例としては、図6に示すように多重データ(4b)に対しある一定の電力値を振幅制限値として設定し、これを越えるものに関しては振幅制限値を抑え込む処理を施す。これにより、振幅制限部5から出力されるクリップデータ(5b)は、振幅制限値以上の電力が抑え込まれた分、ある区間Tでの平均電力が低下する。
【0033】
両者の差を比較処理部8で検出して、劣化推定値(8a)に変換する。比較処理部8の詳細については後述する。監視部9では、比較処理部8からの劣化推定値(8a)を常に監視しており、判定基準(監視時間、許容閾値など)を設定しておくことで劣化状態に応じて、ユーザーデータ制御部1におけるユーザーデータの割り当てを制御するための監視情報21aを出力する。
【0034】
比較処理部8では、図4に示すように、入力される双方のデータ(4b),(5b)に対して伝搬および計算等の遅延差を考慮した遅延回路81,82を通すことにより、双方の比較タイミングを合わせたデータ(81a),(82a)が作成され、平均化回路83,84により任意の区間Tで平均化処理を行なうことで平均利得値(83a),(84a)を得る。これらのデータを差動処理することで利得差データ(83b)を求め、劣化推定テーブル85により監視部9にて監視するための劣化推定値(8a)に変換する。
【0035】
図8は、平均化回路83,84での処理方法の一例を示している。各平均化回路83,84には、加算合成部4、振幅制限部5からのデータが離散値で入力される。各平均化回路83,84に入力されるある時間tの離散データに対して任意の区間Tでそれぞれの平均電力値Vを算出し、求められたV1,V2に対する差動処理により利得差データ(83b)を得る。また、平均電力値データ(83a),(84a)の比較条件として、データの形式が対数換算であれば双方とも対数形式で比較し、直線換算であれば双方とも直線形式で比較する必要がある。
【0036】
また、比較処理部8は図7に示されているような劣化推定テーブル85を有しており、事前に取得された変換テーブルにより得られる利得差データ(83b)より変調精度の劣化分を推定し、劣化推定値(8a)に変換する。例えば、差動処理により得られる利得差データ(83b)が0.4dB(振幅制限による電力が0.4dB劣化)の時には、劣化推定値(8a)は0.8%(変調精度が希望値より0.8%劣化)に変換され、これが図3の監視部9に与えられる。監視部9は、判定基準を持っており入力される劣化推定値(8a)を用いて監視を行う。
【0037】
上記判定基準および監視方法としては、ユーザーデータ制御部1が、各送受信部21〜2nから監視情報(21a〜2na)を常時受信し、その情報により各送受信部21〜2nに対するユーザーデータ(11a〜1na)を効率よく割り当てるようにする。
【0038】
具体的には、判定基準として監視時間:5T、許容閾値1.0%を与えると、五回連続で監視部9に入力される劣化推定値(8a)が1.0%を超えると監視情報(21a)により、ユーザーデータ制御部1に対して送受信部21への設定の割り当てを制限し、他の監視情報(22a〜2na)をもとに送受信部22〜2nのいずれかへ割り当てる。
【0039】
あるいは、判定基準の許容閾値を何段階かに分け、段階に応じて割り当てるユーザーデータ(11a〜1na)の変調方式や電力を制限する方法を採用することも可能である。
【0040】
【発明の効果】
本発明は、ユーザーデータ制御部より割り当てられるユーザーデータに対し、比較処理部において、振幅制限部での制限値によって生じる変調精度の劣化を推測し、該推測結果に基づいてユーザーデータの割り当てを制御しているので、高品質の信号送信を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を示す全体ブロック図である。
【図2】図1における1番目の送受信部21の構成を示す図である。
【図3】図1における比較計算回路部7の回路構成を示す図である。
【図4】図3における比較処理部8の回路構成を示す図である。
【図5】図4における平均化回路83,84による平均電力例を示す図である。
【図6】図2における振幅制限方法の1例を示す図である。
【図7】図4における劣化推定テーブル85の変換方法例を示す図である。
【図8】図4における比較処理部での比較方法を示す図である。
【符号の説明】
1 ユーザーデータ制御部
2 送受信部
3 拡散部
4 加算合成部
5 振幅制限部
6 無線周波数部 (RF部)
7 比較計算回路部
8 比較処理部
9 監視部
21〜2n n番目の送受信部
31〜3n n番目の拡散部
81,82 遅延回路
83,84 平均化回路
85 劣化推定テーブル
Claims (5)
- ユーザーデータ制御部と、該ユーザーデータ制御部により割り当てられた複数のユーザーデータを多重化して無線による送受信を行う送受信部とからなり、前記送受信部が、前記ユーザーデータ制御部により割り当てられた複数のユーザーデータをそれぞれ互いに異なる符号でコーディング処理する複数の拡散部と、該複数の拡散部から出力される複数の拡散データを多重化する加算合成回路部と、該多重されたデータをピーククリップ処理して無線送信部へ出力する振幅制限部と、該振幅制限部による振幅制限前の前記多重データと振幅制限後の前記多重データの各平均電力を一定周期で監視し、両者の利得差に応じて前記ユーザーデータ制御部による前記送受信部に対するユーザーデータの割り当てを制御するための監視情報を出力する比較計算回路部を備えていることを特徴とする振幅制限状態監視方式。
- 前記ユーザーデータ制御部に対して、複数の前記送受信部が接続され、前記ユーザーデータ制御部は、前記複数の送受信部からの監視情報に基づいて、前記複数の送受信部間において前記ユーザーデータの割り当てを制御することを特徴とする請求項1に記載の振幅制限状態監視方式。
- 前記比較計算回路部は、前記加算合成回路部からの多重データと前記振幅制限部からのクリップデータを比較することにより劣化推定値を出力する比較処理部と、前記劣化推定値を入力して多重データの劣化状態を監視し、前記ユーザーデータ制御部を制御するための監視情報を出力する監視部とを備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の振幅制限状態監視方式。
- 前記比較処理部は、比較計算回路部に入力される前記加算合成回路部からの多重データと前記振幅制限部からのクリップデータの伝搬遅延や計算処理時間差をそれぞれ吸収する遅延回路と、該遅延回路から出力される前記多重データとクリップデータの所定区間毎の平均データをそれぞれ出力する平均化回路と、該平均化回路から出力される各平均データを比較して利得差データとして出力する回路を備えていることを特徴とする請求項3に記載の振幅制限状態監視方式。
- 変調精度劣化推定テーブルを備え、前記利得差データを、前記監視部にて監視するための劣化推定値に変換する手段を備えていることを特徴とする請求項4に記載の振幅制限状態監視方式。
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