JP4082260B2 - フロート式選択取水設備 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、取水水深を任意に選択できるフロート式選択取水設備に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、ダム湖の夏季水温成層は、図4に示すように、水温の高い表水層(約2〜5m深さ程度)と、水温が急激に変わる水温躍層(約3〜10m深さ程度)と、水温の低い深水層とに区分される。
そして、灌漑用水の取水時には、農作物の生育に適当な水温を確保するために、水温の高い表水層から取水して放流する必要がある。
また、大雨や洪水で微細な粘度質のシルト(長石やパラフィンなど)を含んだ濁水がダム湖に流れ込むと、濁水が水温躍層に長期間にわたって留まりながらシルトが徐々に深水層をへて湖底に沈澱するから、大雨や洪水が終わって数週間から数カ月たっても濁水が放流されることがあるので、清澄な表水層から取水して放流する必要がある。
さらに、最近では水質保全のために、ダム湖上流の河川と同じ水温レベルの密度流を取水して放流する必要が生じてきており、この場合、水温躍層若しくはその直下から取水して放流する必要がある。
【0003】
そこで、従来の選択取水設備を用いる場合には、ダムの堰堤に深さの異なる取水口を多段で形成して、各取水口のゲートを開閉することで取水水深を選択するか、あるいは底部若しくは堰堤に固定されたテレスコープで上下できるシリンダー若しくは半円筒ゲートで必要な取水水深から取水を行うようにしたものが採用されている。
【0004】
しかしながら、ダム湖の水位は常に変動するため、その変化に自動的に追随して、表層部や水温躍層若しくはその直下から有効に取水して放流するには煩雑な操作が多いという問題がある。さらに、既存のダムに新たに選択取水設備を設置するには、仮締切を設けるなど大掛りな工事となったり、土木の大幅な変更を伴うばかりか、放流の一時停止、ときにはダム湖をドライにしなければならないから、施工が困難であるという問題がある。
【0005】
上記従来の問題を解決するために、「フロート式選択取水設備」が創案され出願されている(特許文献1)。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−275865号公報
【0007】
このフロート式選択取水設備は、図5に示すように、堰堤1に形成された取水口2aに対して、水位に応じて昇降するフロート5が設けられ、このフロート5に取付けた昇降機8で昇降可能な水中フロート6A〜6Eが設けられ、この水中フロート6A〜6Eに、取水口2aの周囲および下側を遮水可能な遮水カーテン7A〜7Eが設けられているものである。なおこの図で、2は取水塔である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述した先行出願の設備には以下の問題点があった。
(1)ダム湖表層の清澄水を取水するため、取水を行う表層部を除く全てを遮水カーテンで仕切る必要がある。そのため、遮水カーテンをダム湖底に届くまで張り巡らすことになり、コストがかかるばかりでなく、最下段の遮水カーテン(遮水膜)の膜裾は堆積物の干渉を受けざるを得ない。その結果、遮水カーテンと堆積物の間からの洩水が生じるだけでなく、遮水カーテンの寿命が短くなり、メンテナンスを頻繁に行う必要が生じ、稼動率が低下すると共にランニングコストが高くなる。
(2)取水中、遮水カーテン7A〜7E(遮水膜)の内側の水圧は外側の水圧に比べ低くなり、遮水カーテンは内側に吸い寄せられ水中フロート6A〜6Eおよび内側に位置する別の遮水カーテンに張り付く。そのため、昇降機8で水中フロート6A〜6Eを昇降させる際に抵抗が大きくなるばかりでなく、水中で各水中フロート6A〜6Eが水平に昇降できなくなるおそれもある。
【0009】
本発明はかかる問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、水位変動に自動的に追随して有効に取水できるとともに、土木構造物との取り合いを最小限に減らして施工を簡素化でき、かつ遮水カーテンをダム湖底に届くまで張り巡らす必要がなく、これにより湖底堆積物の干渉を受けず、製造コストとメンテナンスコストを低減でき、さらに遮水カーテンと水中フロートおよび内側に位置する別の遮水カーテンとの張付現象を本質的に低減でき、これにより昇降抵抗を低減することができるフロート式選択取水設備を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、堰堤(1)に形成された取水口(2a)を囲み水位に応じて浮力により昇降する水上フロート(5)と、当該水上フロートに取付けられた昇降機(8)と、当該昇降機で水中を昇降可能でありかつ所定の間隔(H)を保持するように上下多段に設けられた複数の水中フロート(6A〜6E)と、当該水中フロートに上端が固定され下端が下側の水中フロートにオーバーラップして設けられている遮水可能な複数の遮水カーテン(7A〜7D)と、前記堰堤(1)に固定され遮水カーテンの内側を水平に仕切る水平遮水部材(12)と、当該水平遮水部材より下方の堰堤に固定され、下降した水中フロートを支持する固定支持部材(14)とを備え、
前記水平遮水部材(12)は、堰堤(1)に固定されたフレーム(12a)と、フレームに固定された水平遮水膜(13a)及び鉛直遮水膜(13b)とからなり、鉛直遮水膜(13b)は、複数の水中フロート(6A〜6E)から水平方向内側に所定の間隔(ΔR)を隔てて位置しかつ複数の水中フロートの所定の間隔(H)と同等以上の高さ(L)を有し、
前記複数の水中フロート(6A〜6E)のうち少なくとも2つの隣接する前記水中フロートは、前記鉛直遮水膜(13b)との間をシールする可撓性の止水シール(16)を有する、ことを特徴とするフロート式選択取水設備が提供される。前記水中フロートの前記所定の間隔(H)は、前記2つの隣接する水中フロートの最大間隔(H)である。
【0011】
本発明の構成によれば、水上フロート(5)が水位に応じて浮力により昇降するので、水位変動に自動的に追随して水上フロート(5)の高さを常に水面位置に位置決めすることができる。
また、水上フロートに取付けられた昇降機(8)により、水中フロート(6A〜6D)を昇降させることにより、複数の水中フロート(6A〜6E)は所定の間隔Hを保持するように上下多段に位置し、その間は、複数の遮水カーテン(7A〜7D)により水が通過できないように遮水され、かつ遮水カーテンの内側下方は水平遮水部材(12)で遮水されるので、最上段の水中フロート(6A)と水上フロート(5)との間の隙間からのみ遮水カーテン内に水が流入して取水口(2a)から取水される。従って、最上段の水中フロート(6A)の位置により、最上段の水中フロート(6A)の上側から、表水層のみ、水温躍層以上、深水層以上に区分して取水することができる。
さらに、遮水カーテン(7A〜7D)の内側を水平に仕切る水平遮水部材(12)と、水平遮水部材より下方の堰堤に固定され、下降した水中フロートを支持する固定支持部材(14)を備えるので、遮水カーテンの内側下方からの取水を水平遮水部材(12)で遮水できるとともに、遮水カーテンをダム湖底に届くまで張り巡らす必要がなく、これにより湖底堆積物の干渉を受けず、製造コストとメンテナンスコストを低減できる。
また、水平遮水部材(12)をフレーム(12a)、水平遮水膜(13a)及び鉛直遮水膜(13b)で構成することにより、水平遮水部材(12)を軽量化し、安価かつ容易に設置できる。なお、水平および鉛直遮水膜は、フレームに固定し、その全体構造は、取水時の内外水圧差、地震時動水圧等に耐えられるものとする。また、鉛直遮水膜(13b)と複数の水中フロート(6A〜6E)との水平方向の隙間を所定の間隔ΔRに設定することにより、水中フロート昇降時の抵抗を低減するとともにその隙間からの漏水を抑制することができる。さらに、止水シール(16)により、鉛直遮水膜(13b)と水中フロートの隙間から漏水を最小限に抑えることができる。
【0012】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記固定支持部材(14)は、その上下を連通する開口(15)を有する。
この構成により、水平遮水部材(12)と固定支持部材(14)の間は、開口(15)を介して遮水カーテン(7A〜7D)の外側と連通しているため、水平遮水部材(12)より下側に位置する遮水カーテンには内外水圧差が作用しない。また、水中フロート(6A〜6E)に取り付けられた遮水カーテン(7A〜7D)は、昇降の際その裾部分(下端)は水平遮水部材(12)より下側に位置する。従って、水平遮水部材(12)の下側の圧力を開放し内外水圧差を無くしたことにより、遮水カーテンが固定支持部材(14)および内側の遮水カーテンへの張付現象を本質的に無くすことができ、これにより昇降抵抗を低減することができる。
【0013】
前記固定支持部材(14)の比重が1より大きい。この構成により、固定支持部材(14)の浮き上がりを防ぎ、かつ設置を容易にできる。
【0014】
なお、参考例では、前記水平遮水部材(12)は、堰堤(1)に固定されたフレーム(12a)と、フレームに固定された水平遮水膜(13a)及び鉛直遮水膜(13b)とからなり、鉛直遮水膜(13b)は、複数の水中フロート(6A〜6E)から水平方向内側に所定の間隔ΔRを隔てて位置しかつ複数の水中フロートの所定の間隔Hより短い高さLを有する。
【0016】
参考例では、鉛直遮水膜(13b)の高さを水中フロートの所定の間隔Hより短い高さLに設定することにより、水中フロートの所定の間隔Hを連結するチェーンを水平遮水部材(12)の下側にスムースに収納することができる。
【0018】
参考例では、前記水中フロート(6A〜6E)の少なくとも一部が、前記鉛直遮水膜(13b)とオーバーラップするように、昇降機(8)を制御する位置制御装置(18)を備える。
鉛直遮水膜(13b)の高さを水中フロートの所定の間隔Hより短い高さLに設定することにより、昇降中の水中フロートが鉛直遮水膜(13b)から外れるとその間に隙間ができ漏水が増大する。従って、位置制御装置(18)により水中フロート(6A〜6E)の少なくとも一部を、前記鉛直遮水膜(13b)とオーバーラップさせることにより、水中フロートの止水シール(16)により、漏水を防止することができる。
【0019】
前記遮水カーテン(7A〜7D)の下端には遮水カーテンのまくれ上がりを防止する錘り(25)が取付けられている。
この錘り(25)により、遮水カーテンのまくれ上がりを防止し、漏水を低減できる。
【0020】
前記水中フロート(6A〜6E)を堰堤(1)に沿って上下方向に案内するガイドレール(4)を備える。
このガイドレール(4)に沿って、水上フロート(5)、水中フロート(6A〜6E)を昇降させることにより、水平方向位置を常に一定位置に保持することができる。また、固定支持部材(14)もこのガイドレール(4)に沿って下降させて設置することができ、既設のダム湖への適用が容易となる。
【0021】
前記水中フロート(6A〜6E)は、内部に浮力材を充填した金属ボックス、または内部に空気及び水を注入した金属チューブである。
この構成により、水中フロート(6A〜6E)の浮力を任意に設定できる。水中フロートと遮水カーテンを組み合わせた全体の比重は1よりわずかに大きく、水上フロート(5)に作用する下向きの力を小さくするように設定する。
【0022】
前記遮水カーテン(7A〜7D)は、フレキシビリティを有する合成ゴム若しくは合成樹脂製、あるいは布製である。
これらの遮水カーテンを用いることにより、遮水カーテンを軽量化し、水上フロート(5)に作用する下向きの力を小さくすることができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下本発明の好ましい実施形態について、図面を参照して説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0024】
図1は本発明のフロート式選択取水設備の全体斜視図である。この図において、ダムの堰堤1には、ダム湖上流側に突出し、水面下に鉛直に延びる取水塔2が設けられ、この取水塔2の下部には取水口2aが形成されている。また、取水塔2の前面には流木等のゴミが取水口2aに入るのを阻止するバースクリーン3が取り付けられている。取水塔2の水平断面形状は例えば堰堤1の内面を底辺とする半円形または多角形となっている。
【0025】
堰堤1の取水塔2の両側には、堰堤に沿って上下方向に延び、互いに平行な1対のガイドレール4が敷設されている。このガイドレール4は例えばH型鋼製であり、後述する水上フロート5及び水中フロート6A〜6Eを堰堤1に沿って上下方向に案内するようになっている。
【0026】
図2は、図1の縦断面図である。なお、この図は、図1とは左右が逆であり、図1の対岸側から見た断面図である。
【0027】
図1及び図2において、本発明のフロート式選択取水設備10は、水上フロート5、昇降機8、複数の水中フロート6A〜6E、複数の遮水カーテン7A〜7D、水平遮水部材12及び固定支持部材14を備える。
【0028】
水上フロート5は、取水塔2を間隔を隔てて囲むように形成された水平断面形状が半円形又は多角形状のフロート部材である。この水上フロート5は、金属製の外殻とその内部に充填された浮力材(例えば発泡ウレタン)または気体(例えば空気)とからなり、平面堰堤1に形成された取水塔2に沿って水位に応じて浮力により水上に位置するようになっている。この水上フロート5の浮力は大きいほど好ましく、少なくとも下方に吊り下げられる水中フロート6A〜6E及び遮水カーテン7A〜7Dの重さで水没しない大きさに設定する。
【0029】
昇降機8は、この例では3台が水上フロート5に取付けられ、下方に吊り下げられたワイヤ22の下端が最上段の水中フロート6Aの上部に固定されている。昇降機8は、例えば電動ウインチであり、図示しない電力ケーブルで堰堤1から電力が供給され、制御装置18により複数の昇降機8が同期してワイヤ22の巻き上げ/巻き戻しを行い、最上段の水中フロート6Aを水平を保持したまま昇降させるようになっている。
【0030】
複数(この例では5台)の水中フロート6A〜6Eは、内部に浮力材を充填した金属ボックス、または内部に空気及び水を注入した金属チューブであり、水中フロート6A〜6Eと遮水カーテン7A〜7Dを組み合わせた全体の比重が1よりわずかに大きく、水上フロート5に作用する下向きの力を小さくするように設定されている。
また、水中フロート6A〜6Eのそれぞれの間は、一定の長さのチェーン又はワイヤ23で、順に直列に連結され、昇降機8で最上段の水中フロート6Aを昇降させると所定の間隔Hを保持しながら上下多段になって水中を昇降するようになっている。
【0031】
複数(この例では4枚)の遮水カーテン7A〜7Dは、フレキシビリティを有する合成ゴム若しくは合成樹脂製、あるいは布製であり、水中フロート6A〜6Dに上端が固定され下端が下側の水中フロート6B〜6Eにオーバーラップして設けられている。なおこの例では、最下段の水中フロート6Eには遮水カーテンは不要なため設けられていない。
【0032】
また。各遮水カーテン7A〜7Dの下端には、錘り25が取付けられ、遮水カーテンが波などでまくれ上がらないようにしている。
【0033】
図3は図1の作動説明図である。この図において、(A)は全縮時、(B)は中間時、(C)は全伸時の水平遮水部材近傍の図2と同様の図である。
水平遮水部材12は、堰堤1に固定され、遮水カーテン7A〜7Dの内側を水平に仕切る機能を有する。図3において、この水平遮水部材12は、堰堤1に固定されたフレーム12aと、フレーム12aに固定された水平遮水膜13a及び鉛直遮水膜13bとからなる。
フレーム12aは、中空管のトラス構造で形成され、その全体構造は、取水時の内外水圧差、地震時動水圧等に耐えられ剛性を有する。水平遮水膜13a及び鉛直遮水膜13bは、遮水カーテンと同様に遮水性を有する合成ゴム若しくは合成樹脂製、あるいは布製である。
【0034】
水平遮水膜13aは、フレーム12aの上面全面(又は下面全面)に取付けられており、その間を取水が例えば下から上に向かって流れるのを阻止している。また、鉛直遮水膜13bは、フレーム12aの外周面に取付けられており、水中フロート6B〜6Eとの重なり長さを長くしている。
【0035】
鉛直遮水膜13bは、複数の水中フロート6A〜6Eから水平方向内側に所定の間隔ΔRを隔てて位置する。参考例では、水中フロート6A〜6Eの所定の間隔Hを連結するチェーン23を水平遮水部材12の下側にスムースに収納するように、複数の水中フロートの間隔Hより短い高さLを有している。本発明では、鉛直遮水膜13bの高さLを水中フロートの間隔Hと同等以上にする。
また、水中フロート6A〜6Eの少なくとも一部は、可撓性の止水シール16を有し、鉛直遮水膜13bとの間をシールする。
【0036】
図1及び図2において、固定支持部材14は、水平遮水部材12より下方の堰堤1に固定され、下降した水中フロート6A〜6Eを支持する機能を有する。固定支持部材14は、常に湖底よりは高い位置に位置するように、比重が1より大きく、図示しないロック機構により、ガイドレール4に固定されるのがよい。
また固定支持部材14は、その上下を連通する開口15を有し、その上下に差圧が生じないようになっている。
【0037】
参考例では、図2において、位置制御装置18は、鉛直遮水膜13bの高さが水中フロートの間隔Hより短い場合に、水中フロート6A〜6Eの少なくとも一部が、鉛直遮水膜13bとオーバーラップするように、昇降機8を制御する。
本発明では、鉛直遮水膜13bの高さLを水中フロートの間隔Hと同等以上にするので、この制御は不要である。
【0038】
上述した本発明の構成によれば、図1に示すように、水上フロート5が水位に応じて浮力により昇降するので、水位変動に自動的に追随して水上フロート5の高さを常に水面位置に位置決めすることができる。
また、水上フロート5に取付けられた昇降機8により、水中フロート6A〜6Dを昇降させることにより、複数の水中フロート6A〜6Eが所定の間隔Hを保持するように上下多段に位置し、その間は、複数の遮水カーテン7A〜7Dにより水が通過できないように遮水され、かつ遮水カーテンの内側下方は水平遮水部材12で遮水されるので、最上段の水中フロート6Aと水上フロート5との間の隙間からのみ遮水カーテン内に水が流入して取水口2aから取水される。
【0039】
従って、最上段の水中フロート6Aの位置調整により、最上段の水中フロート6Aの上側から、表水層のみ、水温躍層以上、深水層以上に区分して取水することができる。
さらに、遮水カーテン7A〜7Dの内側を水平に仕切る水平遮水部材12と、水平遮水部材より下方の堰堤に固定され下降した水中フロートを支持する固定支持部材14を備えるので、遮水カーテンの内側下方からの取水を水平遮水部材12で遮水できるとともに、遮水カーテンをダム湖底に届くまで張り巡らす必要がなく、これにより湖底堆積物の干渉を受けず、製造コストとメンテナンスコストを低減できる。
【0040】
また、固定支持部材14は、その上下を連通する開口15を有するので、図3に示すように、水平遮水部材12と固定支持部材14の間は、開口15を介して遮水カーテン7A〜7Dの外側と連通しているため、水平遮水部材12より下側に位置する遮水カーテンには内外水圧差が作用しない。また、水中フロート6A〜6Eに取り付けられた遮水カーテン7A〜7Dは、昇降の際その裾部分(下端)は水平遮水部材12より下側に位置する。従って、水平遮水部材12の下側の圧力を開放し内外水圧差を無くしたことにより、遮水カーテンが固定支持部材14および内側の遮水カーテンへの張付現象を本質的に無くすことができ、これにより昇降抵抗を低減することができる。
【0041】
なお、本発明は上述した実施形態及び実施例に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々に変更できることは勿論である。
【0042】
【発明の効果】
上述したように本発明のフロート式選択取水設備は、以下の特徴を有する。
(1)設備中段に水平遮水膜(水平遮水部材12)を設置して底部からの流入を防止することにより、遮水カーテンは、水平遮水膜の位置まであれば十分であり、湖底に届くまで延ばす必要は無い。よって、ダム湖底の堆積物の干渉が問題になることはない。
(2)遮水カーテンを水平遮水膜の位置までとすることにより、水平遮水膜下の圧力が開放されるため、遮水カーテンは支持フロートに張り付くことがなくなり、膜昇降時の抵抗を低減できる。
(3)遮水カーテンと水平遮水膜との間の隙間をフロートが通り抜けるので、水平遮水膜周囲にフロートピッチ以下の高さを有する鉛直遮水膜を張り、隙間が常に最小となるようにし、漏水が許容値以下になるように抑えることができる。
【0043】
従って、本発明のフロート式選択取水設備は、水位変動に自動的に追随して有効に取水できるとともに、土木構造物との取り合いを最小限に減らして施工を簡素化でき、かつ遮水カーテンをダム湖底に届くまで張り巡らす必要がなく、これにより湖底堆積物の干渉を受けず、製造コストとメンテナンスコストを低減でき、さらに遮水カーテンと水中フロートおよび内側に位置する別の遮水カーテンとの張付現象を本質的に低減でき、これにより昇降抵抗を低減することができる、等の優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のフロート式選択取水設備の全体斜視図である。
【図2】図1の縦断面図である。
【図3】図1の作動説明図である。
【図4】ダム湖の夏季水温成層の模式図である。
【図5】先行出願のフロート式選択取水設備の全体斜視図である。
【符号の説明】
1 堰堤、2 取水塔、2a 取水口、4 ガイドレール、
5 フロート(水上フロート)、6A〜6E 水中フロート、
7A〜7E 遮水カーテン、8 昇降機、
10 フロート式選択取水設備、12 水平遮水部材、
12a フレーム、13a 水平遮水膜、13b 鉛直遮水膜、
14 固定支持部材、15 開口、16 止水シール、
18 位置制御装置、22 ワイヤ、
23 チェーン又はワイヤ、25 錘り
Claims (8)
- 堰堤(1)に形成された取水口(2a)を囲み水位に応じて浮力により昇降する水上フロート(5)と、当該水上フロートに取付けられた昇降機(8)と、当該昇降機で水中を昇降可能でありかつ所定の間隔(H)を保持するように上下多段に設けられた複数の水中フロート(6A〜6E)と、当該水中フロートに上端が固定され下端が下側の水中フロートにオーバーラップして設けられている遮水可能な複数の遮水カーテン(7A〜7D)と、前記堰堤(1)に固定され遮水カーテンの内側を水平に仕切る水平遮水部材(12)と、当該水平遮水部材より下方の堰堤に固定され、下降した水中フロートを支持する固定支持部材(14)とを備え、
前記水平遮水部材(12)は、堰堤(1)に固定されたフレーム(12a)と、フレームに固定された水平遮水膜(13a)及び鉛直遮水膜(13b)とからなり、鉛直遮水膜(13b)は、複数の水中フロート(6A〜6E)から水平方向内側に所定の間隔(ΔR)を隔てて位置しかつ複数の水中フロートの所定の間隔(H)と同等以上の高さ(L)を有し、
前記複数の水中フロート(6A〜6E)のうち少なくとも2つの隣接する前記水中フロートは、前記鉛直遮水膜(13b)との間をシールする可撓性の止水シール(16)を有する、ことを特徴とするフロート式選択取水設備。 - 前記水中フロートの前記所定の間隔(H)は、前記2つの隣接する水中フロートの最大間隔(H)である、ことを特徴とする請求項1に記載のフロート式選択取水設備。
- 前記固定支持部材(14)は、その上下を連通する開口(15)を有する、ことを特徴とする請求項1または2に記載のフロート式選択取水設備。
- 前記固定支持部材(14)の比重が1より大きい、ことを特徴とする請求項1または2に記載のフロート式選択取水設備。
- 前記遮水カーテン(7A〜7D)の下端には遮水カーテンのまくれ上がりを防止する錘り(25)が取付けられている、ことを特徴とする請求項1または2に記載のフロート式選択取水設備。
- 前記水中フロート(6A〜6E)を堰堤(1)に沿って上下方向に案内するガイドレール(4)を備える、ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のフロート式選択取水設備。
- 前記水中フロート(6A〜6E)は、内部に浮力材を充填した金属ボックス、または内部に空気及び水を注入した金属チューブである、ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のフロート式選択取水設備。
- 前記遮水カーテン(7A〜7D)は、フレキシビリティを有する合成ゴム若しくは合成樹脂製、あるいは布製である、ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のフロート式選択取水設備。
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