JP4079703B2 - 室内タイヤ耐久試験方法 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、室内タイヤ耐久試験方法に関し、さらに詳しくは、室内タイヤ耐久試験機を用いて市場でのタイヤ故障を精度良く再現して評価することを可能にした室内タイヤ耐久試験方法に関する。
【０００２】
【従来の技術】
従来、室内タイヤ耐久試験機を用いてタイヤの耐久試験を実施する場合、試験室温を一定に保つようにしているが、試験室の走行環境は市場での走行環境に比べて空冷効果が大きく異なるため、特に高速走行条件でのタイヤ内部温度が市場に比べて大きく異なっている。
【０００３】
これに対して、市場でのタイヤ故障は、機械的な破壊要因と、内部温度の上昇による熱的な破壊要因との複合によってもたらされる場合が殆どである。そのため、室内タイヤ耐久試験機を用いて市場でのタイヤ故障を再現するに際し、室内試験時のタイヤ内部温度が市場走行時のタイヤ内部温度よりも高いことが障害となり、市場でのタイヤ故障を精度良く再現することができないという問題があった。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、室内タイヤ耐久試験機を用いて市場でのタイヤ故障を精度良く再現して評価することを可能にした室内タイヤ耐久試験方法を提供するものである。
【０００５】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明の室内タイヤ耐久試験方法は、 任意のタイヤについて実車による市場走行時のタイヤ内部温度を計測し、その後、室内タイヤ耐久試験機を用いて前記タイヤと実質的に同一構造を有するタイヤを市場走行時の速度荷重条件に相当する条件で走行させて室内試験時のタイヤ内部温度を計測し、これら計測された市場走行時のタイヤ内部温度と室内試験時のタイヤ内部温度との差に基づいて室内試験時の試験室温を市場走行時の気温よりも下げることによって、室内試験時のタイヤ内部温度を市場走行時のタイヤ内部温度に合わせた状態でタイヤ耐久試験を実施することを特徴とするものである。
【０００６】
ここで、前記室内試験時の試験室温を市場走行時の気温よりも下げることに加えて、その試験室温よりも更に低い温度に制御された冷風をタイヤに当てることによって、室内試験時のタイヤ内部温度を市場走行時のタイヤ内部温度に合わせた状態でタイヤ耐久試験を実施する。また、室温を空調装置によって制御する恒温室を備えた室内タイヤ耐久試験機を使用し、その恒温室内でタイヤ耐久試験を実施する。更に、室内試験時に、タイヤにスリップ角及びキャンバ角を付与してタイヤ耐久試験を実施するものである。
また、室内試験時に、市場走行環境を再現する複数の走行モードを設定し、これら走行モードを繰り返しながらタイヤ耐久試験を実施するものである。
【０００７】
このように実車による市場走行時のタイヤ内部温度を計測した上で、室内試験時の試験室温を調整することで、室内試験時のタイヤ内部温度を市場走行時のタイヤ内部温度に合わせるので、室内タイヤ耐久試験機を用いて市場でのタイヤ故障を精度良く再現して評価することができる。
【０００８】
本発明において、必要に応じて、室内試験時の試験室温を市場走行時の気温よりも下げることに加えて、その試験室温よりも更に低い温度に制御された冷風をタイヤに当てることによって、室内試験時のタイヤ内部温度を市場走行時のタイヤ内部温度に合わせることが好ましい。また、室温を空調装置によって制御する恒温室を備えた室内試験機を使用し、その恒温室内でタイヤ耐久試験を実施することが好ましい。
【０００９】
市場走行環境を再現するために、室内試験時に、タイヤにスリップ角及びキャンバ角を付与してタイヤ耐久試験を実施すると良い。また、室内試験時に、市場走行環境を再現する複数の走行モードを設定し、これら走行モードを繰り返しながらタイヤ耐久試験を実施すると良い。
【００１０】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の構成につき添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【００１１】
図１は本発明の室内タイヤ耐久試験方法を実施するための室内タイヤ耐久試験機を示すものである。図１に示すように、本実施形態の室内タイヤ耐久試験機は、室温を空調装置１によって制御する恒温室２を備えている。この恒温室２内には、支持台３が配設されている。支持台３上には、モータ４と、ベルト５を介してモータ４によって駆動されるドラム６と、タイヤＴを回転自在に支持するタイヤ支持部を備えた台車７とが搭載されている。台車７は、ドラム６の回転軸に対して直交する方向に移動自在であると共に、重量体８を有する試験荷重負荷部９からの荷重を受けてタイヤＴをドラム６の外周面に押し付けるようになっている。また、タイヤＴの近傍には、試験室温よりも更に低い温度に制御された冷風をタイヤＴのトレッド面に吹きつける冷風供給装置１０が配置されている。
【００１２】
上記室内タイヤ耐久試験機を用いてタイヤ耐久試験を実施する場合、重量体８の重量に基づいてタイヤＴへの荷重を設定し、モータ４の回転速度に基づいてタイヤＴの走行速度を設定し、空調装置１により恒温室２内の試験室温を設定するのである。必要であれば、冷風供給装置１０を用いてタイヤＴのトレッド面に冷風を吹きつけるようにしても良い。また、タイヤＴの支持軸の角度を調整することにより、タイヤＴに所望のスリップ角及びキャンバ角を付与するのである。
【００１３】
次に、本発明の室内タイヤ耐久試験方法について説明する。本発明では、室内試験に先駆けて、試験すべき任意のタイヤについて、実車による市場走行時のタイヤ内部温度を計測する。その後、室内タイヤ耐久試験機を用いて上記タイヤと実質的に同一構造を有するタイヤを市場走行時の速度荷重条件に相当する条件で走行させて室内試験時のタイヤ内部温度を計測する。
【００１４】
ここで、市場とは、そのタイヤが主として使用される地域であり、例えば、国や大陸などによって区分される。また、市場走行時に使用したタイヤと実質的に同一構造を有するタイヤとは、実際に市場走行時に使用したタイヤであっても良く、或いは、それと実質的に同じ構造を有する他のタイヤであっても良い。なお、発熱特性に実質的な影響を与えない程度であれば、実際に市場走行時に使用したタイヤの構造と、室内タイヤ耐久試験に供するタイヤの構造とが相違していても良い。例えば、トレッドパターンの僅かな変更は発熱特性に殆ど影響を与えない。室内試験時の走行条件としては、市場走行時の速度と荷重をそのまま選択しても良いが、タイヤ内部温度が速度と荷重の積の関数で表されることを考慮し、その関数に基づいて室内試験時の速度と荷重を調整するようにすれば、タイヤ耐久試験を効率良く行うことができる。
【００１５】
耐久試験を実施するに際しては、上記のように計測された市場走行時のタイヤ内部温度と室内試験時のタイヤ内部温度との差に基づいて室内試験時の試験室温を市場走行時の気温よりも下げることによって、室内試験時のタイヤ内部温度を市場走行時のタイヤ内部温度に合わせた状態でタイヤ耐久試験を実施する。つまり、走行条件を共通にした場合、室内試験時のタイヤ内部温度は市場走行時のタイヤ内部温度よりも高くなってしまうので、その温度上昇分だけ室内試験時の試験室温を下げるのである。
【００１６】
このように室内試験時の試験室温を下げた場合、その温度降下分がタイヤ内部温度に反映され、室内試験時のタイヤ内部温度と市場走行時のタイヤ内部温度とが略一致することになる。その結果、室内タイヤ耐久試験機を用いて市場でのタイヤ故障を精度良く再現して評価することができる。
【００１７】
タイヤ内部温度の測定箇所は、特に限定されるものではなく、耐久性を評価したい部分の温度を測定すれば良く、例えば、タイヤ内に充填された空気の温度を使用しても良い。
【００１８】
上記のように室内試験時の試験室温を市場走行時の気温よりも下げることに加えて、その試験室温よりも更に低い温度に制御された冷風をタイヤに当てるようにすれば、市場でのタイヤ故障をより精度良く再現することが可能になる。また、室内試験時に、タイヤにスリップ角及びキャンバ角を付与してタイヤ耐久試験を実施すれば、市場走行環境を再現し、市場でのタイヤ故障をより精度良く再現することが可能になる。室内試験時に、市場走行環境を再現する複数の走行モードを設定し、これら走行モードを繰り返しながらタイヤ耐久試験を実施すれば、市場でのタイヤ故障をより精度良く再現することが可能になる。複数の走行モードにおける変動要因としては、キャンバ角、スリップ角、速度などを挙げることができ、例えば、増速と減速との繰り返し、制動と駆動との繰り返し、直線走行とコーナリング走行との繰り返しを実行すれば良い。
【００１９】
本発明によれば、特定の気温で市場を走行した場合のタイヤ故障を再現することが可能であるが、その特定の気温によって市場が限定されるものではない。市場走行時の気温としては、タイヤにとって最も過酷な季節、つまり使用を想定する地域の夏（７，８月）の平均気温を選択することが好ましい。
【００２０】
また、実車による通常の走行は、厳密には速度が一定ではないし、加速や減速や停止を伴うものである。しかしながら、タイヤ耐久性能にとって厳しい条件とは、略一定の速度で連続走行することである。そのため、本発明では、タイヤ耐久試験をより精度良く行うために、実車による市場走行において略一定の速度で連続走行を行うことが望ましい。
【００２１】
【実施例】
タイヤサイズ１１Ｒ２２．５の空気入りタイヤについて、本発明の室内タイヤ耐久試験方法を実施した。
【００２２】
（１）実車試験
試験タイヤを実車に装着し、空気圧７００ｋＰａ、荷重２５００ｋｇの条件で、市場において種々異なる速度で実車走行を行い、２時間走行後のタイヤ内部温度（タイヤ内部に充填された空気の温度）を計測し、その結果を表１に示した。市場走行時の気温は２８℃であった。
【００２３】
（２）室内試験（仮試験）
試験タイヤを室内タイヤ耐久試験機に装着し、空気圧７００ｋＰａ、荷重２５００ｋｇの条件で、種々異なる速度で室内試験を行い、２時間走行後のタイヤ内部温度（タイヤ内部に充填された空気の温度）を計測し、その結果を表１に示した。そして、市場走行時のタイヤ内部温度と室内タイヤ耐久試験機を用いた仮試験でのタイヤ内部温度との温度差を求め、これを表１に併せて示した。但し、試験室温は３８℃とした。
【００２４】
【表１】

（３）室内試験（本試験）
試験タイヤを室内タイヤ耐久試験機に装着し、空気圧７００ｋＰａ、荷重２５００ｋｇの条件で、種々異なる速度で室内試験を行い、２時間走行後のタイヤ内部温度（タイヤ内部に充填された空気の温度）を計測し、その結果を表２に示した。このとき、試験室温を仮試験で得られた温度差に基づいて試験速度毎に異ならせた。そして、市場走行時のタイヤ内部温度と室内タイヤ耐久試験機を用いた本試験でのタイヤ内部温度との温度差を求め、これを表２に併せて示した。
【００２５】
【表２】

この表２から判るように、室内タイヤ耐久試験機を用いた本試験で得られたタイヤ内部温度は、実車による市場走行時のタイヤ内部温度と略同じであった。従って、市場でのタイヤ故障を精度良く再現可能であることが明らかである。
【００２６】
なお、室内試験時のタイヤ内部温度を実車による市場走行時のタイヤ内部温度に更に正確に合わせるために、表１に示す温度差をそのまま室温から減じるのではなく、両者のタイヤ内部温度がより正確に一致するような室温を選択することが望ましい。
【００２７】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、任意のタイヤについて実車による市場走行時のタイヤ内部温度を計測し、その後、室内タイヤ耐久試験機を用いて前記タイヤと実質的に同一構造を有するタイヤを市場走行時の速度荷重条件に相当する条件で走行させて室内試験時のタイヤ内部温度を計測し、これら計測された市場走行時のタイヤ内部温度と室内試験時のタイヤ内部温度との差に基づいて室内試験時の試験室温を市場走行時の気温よりも下げることによって、室内試験時のタイヤ内部温度を市場走行時のタイヤ内部温度に合わせた状態でタイヤ耐久試験を実施することによって、室内試験時のタイヤ内部温度を市場走行時のタイヤ内部温度に合わせた状態でタイヤ耐久試験を実施するから、室内タイヤ耐久試験機を用いて市場でのタイヤ故障を精度良く再現して評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の室内タイヤ耐久試験方法を実施するための室内タイヤ耐久試験機を示す側面図である。
【符号の説明】
１ 空調装置
２ 恒温室
３ 支持台
４ モータ
５ ベルト
６ ドラム
７ 台車
８ 重量体
９ 試験荷重負荷部
１０ 冷風供給装置
Ｔ タイヤ

Claims (5)

1. 任意のタイヤについて実車による市場走行時のタイヤ内部温度を計測し、その後、室内タイヤ耐久試験機を用いて前記タイヤと実質的に同一構造を有するタイヤを市場走行時の速度荷重条件に相当する条件で走行させて室内試験時のタイヤ内部温度を計測し、これら計測された市場走行時のタイヤ内部温度と室内試験時のタイヤ内部温度との差に基づいて室内試験時の試験室温を市場走行時の気温よりも下げることによって、室内試験時のタイヤ内部温度を市場走行時のタイヤ内部温度に合わせた状態でタイヤ耐久試験を実施する室内タイヤ耐久試験方法。
2. 前記室内試験時の試験室温を市場走行時の気温よりも下げることに加えて、その試験室温よりも更に低い温度に制御された冷風をタイヤに当てることによって、室内試験時のタイヤ内部温度を市場走行時のタイヤ内部温度に合わせた状態でタイヤ耐久試験を実施する請求項１に記載の室内タイヤ耐久試験方法。
3. 室温を空調装置によって制御する恒温室を備えた室内タイヤ耐久試験機を使用し、その恒温室内でタイヤ耐久試験を実施する請求項１または２に記載の室内タイヤ耐久試験方法。
4. 室内試験時に、タイヤにスリップ角及びキャンバ角を付与してタイヤ耐久試験を実施する請求項１，２または３に記載の室内タイヤ耐久試験方法。
5. 室内試験時に、市場走行環境を再現する複数の走行モードを設定し、これら走行モードを繰り返しながらタイヤ耐久試験を実施する請求項１，２，３または４に記載の室内タイヤ耐久試験方法。

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