JP4078026B2 - 重質液体燃料燃焼装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、発電用あるいは工場用等の蒸気発生を行うボイラに適用される重質液体燃料燃焼装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、たとえばアスファルトのように固い重質液体燃料を燃焼させることにより、発電用の蒸気や工場で使用する蒸気などを発生させるボイラが運転されている。そこで、このような重質液体燃料を燃焼させる従来の重質液体燃料燃焼装置について、その概要の一例を図11ないし図13に示して説明する。
図11ないし図13において、図中の符号1はボイラ火炉本体、2はバーナ風箱、2aはコンパートメント、3はバーナガン、3aはアトマイザ、3bは連結金物、4は液体燃料流路、5はアトマイズ流体流路、6は空気ノズル、7は液体燃料供給ライン、8はアトマイズ流体供給ライン、9は液体燃料弁、10はアトマイズ流体弁、11は燃焼ガス、12は蒸気加熱管群、13は排ガスライン、14は空気予熱器、15は燃焼用空気ライン、16は重質液体燃料、17はアトマイズ流体、18は燃焼用空気、19は火炉内、20は仮想円、21は火炎、22は旋回燃焼火炎(ファイアボルテックス)を示す。
【0003】
図11において、燃焼用空気18は、図示されてない送風設備から燃焼用空気ライン15を通して空気予熱器14へ送り込まれ、排ガスライン13を通して別途送り込まれてくる燃焼ガス11との熱交換により所定の温度に加熱された後、ボイラ火炉本体1に設置されたバーナ風箱2へ送り込まれる。
バーナ風箱2は、通常四角筒状としたボイラ火炉本体1中心の高さよりも下方側火炉断面上のコーナ部、あるいは壁面に複数個設置されている。また、バーナ風箱2は、図12に示すように、ボイラ火炉本体1の水平断面上中心部に仮想円20を設定し、燃焼用空気18及び重質液体燃料16を当該仮想円20に対して接線方向に吹き込むよう設置されている。
【0004】
バーナ風箱2内は、高さ方向に複数段(図示の例では3段)のコンパートメント2aに区切られ、各コンパーメント2aには火炉内19へ燃焼用空気18を吹き込むための空気ノズル6が装着され、各空気ノズル6の中心部にはそれぞれバーナガン3が装着されている。また、バーナ風箱2については、前述したように複数段のコンパートメント2aを有するものの他にも、1個のバーナ風箱2に対して1個のコンパートメント2aからなるもの(図示省略)もある。
バーナガン3は、図13に示すように、入口部に重質液体燃料16とアトマイズ流体17とを導入するために取り付けられた連結金物3b、先端部に送り込まれてきた重質液体燃料16を火炉内19へ噴霧するために取り付けられたアトマイザ3a、さらに、これらアトマイザ3a,連結金物3bを連絡して液体燃料通路4及びアトマイズ流体通路5を構成するために取付けられた外管3c及び内管3dを具備してなる。
【0005】
アトマイザ3aには、複数の噴孔3eが放射状に貫通して設けられている。この噴孔3eは、アトマイズ流体通路5と連絡して同心で放射状にアトマイザ3aを貫通して設けられたアトマイズ孔3fとミキシング孔3g、さらに、液体燃料通路4と連絡してミキシング孔3gに合流するように設けられた液体燃料孔3hに連通している。
重質液体燃料16は、図示されてない液体燃料供給装置において噴霧燃焼に適した粘度と圧力に調整され、液体燃料供給ライン7を通してバーナガン3へ圧送される。また、蒸気あるいは圧縮空気からなるアトマイズ流体17は、図示されてないアトマイズ流体供給装置からアトマイズ流体供給ライン8を通してバーナガン3へ圧送される。
【0006】
バーナ風箱2へ送り込まれてきた燃焼用空気18は、図示されてない流量調整用ダンパによって各コンパートメント2aへ分流された後、空気ノズル6から火炉内19の中心部に設定した仮想円20に対して接線方向に吹込まれる(図12参照)。
バーナガン3の液体燃料通路4からアトマイザ3aへ送り込まれた重質液体燃料16は、アトマイズ流体通路5を通してアトマイザ3aへ送り込まれてきたアトマイズ流体17によって、アトマイザ3aに設けられた複数の噴孔3eから火炉内19の中心部に設定された仮想円20に対して接線方向に吹込まれた燃焼用空気18中へ噴霧される。
【0007】
火炉内19の同一平面上に設けられた複数のバーナガン3から噴霧された重質液体燃料16は、図示されてない着火源によって着火し、それぞれが火炎21を形成して仮想円20を基準として旋回燃焼し、旋回燃焼火炎22を形成する。こうして形成された旋回燃焼火炎22の外周直径は仮想円20より大きく、普通は火炉内19の壁面近くにまで広がる。
重質液体燃料16の燃焼は、ボイラ化炉本体1の下方から蒸気加熱管群12の入口近傍までの間で完了させ、発生した燃焼ガス11は、蒸気加熱管群12を通過する際に同管群12の管内を通って送り込まれてくる蒸気を加熱し、さらに、図示されてない節炭器等と熱交換した後、排ガスライン13に送り込まれる。さらに、この燃焼ガス11は、排ガスライン13に設置された空気予熱器14において別途送り込まれてくる燃焼用空気18と熱交換した後、図示されてない脱硝装置、脱硫装置、電気集塵器等で浄化され、大気放出される。
【0008】
上述した従来の重質液体燃料燃焼装置においては、重質液体燃料16の燃焼を行う場合、燃焼に適した噴霧が得られるよう高い温度に加熱して燃料の粘度を下げてからバーナガン3へ送り込み、アトマイザ3aから火炉内19へ噴霧して旋回燃焼させ、旋回燃焼火炎22を形成するが、このような燃焼方法は、旋回燃焼することによって燃焼ガス11の火炉内19への滞留時間が長くなるので、(1)燃焼効率が向上して未燃分の発生を防止できること、そして、(2)旋回燃焼火炎22の形成により火炉内19全体の火炎21の安定燃焼が確保される、といった利点を有している。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の重質液体燃料燃焼装置においては、複数の火炎21の旋回燃焼により形成される旋回燃焼火炎22の外周部直径が大きいため、時には火炎21が火炉内19の壁面に接触することがある。アスファルトのような重質液体燃料16は、所定温度に加熱されてあっても残留炭素分や不溶成分が多いので、燃焼完結に要する時間が長くなる。このため、火炎21の燃焼反応が進行中に火炉内19の壁面に接触すると、この火炎21が急冷されて燃焼反応を停止する部分が生じるので、多量の未燃分を発生するという問題がある。
また、火炉内19の壁面への接触が起らない場合であっても、旋回燃焼火炎22の外周部に位置する火炎21は火炉内19の壁面によって冷却されるので、燃焼劣化が生じる原因となる。
【0010】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、燃焼劣化を防止し、未燃分を残すことなく重質液体燃料を燃焼させるようにした重質液体燃料燃焼装置の提供を目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用した。
請求項1に記載の重質液体燃料燃焼装置は、筒状としたボイラ火炉の側壁面またはコーナ部にほぼ横向きに設けられ、前記ボイラ火炉と同軸の仮想円筒面に中心軸の延長線が接する複数のバーナ風箱と、該バーナ風箱内に装着された複数の空気ノズルと、該空気ノズルを貫通して同心に装着されアトマイズ流体と共に液体燃料を噴霧するバーナガンとを具え、前記空気ノズル及び前記バーナガンから前記仮想円筒面に接して吹込まれる燃焼用空気及び液体燃料噴霧の燃焼によって生じる複数の火炎を互いに旋回燃焼させて前記ボイラ火炉内に旋回燃焼火炎を形成する重質液体燃料燃焼装置において、
液体燃料供給ラインに送り込まれてきた重質液体燃料を比重差により複数の液体燃料に分離させる重質液体燃料分離手段を設け、前記バーナガンにアトマイズ流体流路及び前記重質液体燃料分離手段で分離した複数の液体燃料毎に専用の液体燃料流路を形成すると共に前記複数の液体燃料毎にそれぞれ専用の噴霧ノズルを設けたアトマイザを取り付け、前記噴霧ノズルが比重の高い液体燃料を噴霧するもの程ボイラ火炉の中央寄りを向くように配列したことを特徴とするものである。
【0012】
上述した請求項1に記載の重質液体燃料燃焼装置によれば、重質液体燃料分離手段において重質液体燃料を比重差により複数の液体燃料に分離し、比重の大きい高重質液体燃料程ボイラ火炉の中心寄りに向けて噴霧するように噴霧ノズルを配列する構成としたので、高粘度で難燃性の傾向にある高重質液体燃料を旋回燃焼火炎の内側近傍に吹き込み、低粘度で比較的燃焼しやすい軽質液体燃料が旋回燃焼火炎の外側近傍へ吹き込むことができる。このため、未燃分の生じやすい高重質液体燃料を常に高温下で燃焼させることができるようになり、未燃分の大幅な低減が可能となる。
【0013】
請求項2に記載の重質液体燃料燃焼装置は、筒状としたボイラ火炉の側壁面またはコーナ部にほぼ横向きに設けられ、前記ボイラ火炉と同軸の仮想円筒面に中心軸の延長線が接する複数のバーナ風箱と、該バーナ風箱内に装着された複数の空気ノズルと、該空気ノズルを貫通して同心に装着されアトマイズ流体と共に液体燃料を噴霧するバーナガンとを具え、前記空気ノズル及び前記バーナガンから前記仮想円筒面に接して吹込まれる燃焼用空気及び液体燃料噴霧の燃焼によって生じる複数の火炎を互いに旋回燃焼させて前記ボイラ火炉内に旋回燃焼火炎を形成する重質液体燃料燃焼装置において、
重質液体燃料流路及びアトマイザ流体流路を具えたバーナガンに、液体燃料供給ラインから前記重質液体燃料流路に送り込まれた重質液体燃料を旋回させる環状の旋回室と、該旋回室に対し接線方向に連通して複数設けられた旋回溝と、前記旋回室の後流側に前記旋回溝と連通して設けられた複数の同心環状溝とを具備してなる重質液体燃料分離手段を組み込んで設けると共に、分離した複数の液体燃料毎にそれぞれ専用の噴霧ノズルを設けたアトマイザを取り付け、前記噴霧ノズルが比重の高い液体燃料を噴霧するもの程ボイラ火炉の中央寄りを向くように配列したことを特徴とするものである。
【0014】
上述した請求項2に記載の重質液体燃料燃焼装置によれば、重質液体燃料分離手段において重質液体燃料を比重差により複数の液体燃料に分離し、比重の大きい高重質液体燃料程ボイラ火炉の中心寄りに向けて噴霧するように噴霧ノズルを配列する構成としたので、高粘度で難燃性の傾向にある高重質液体燃料を旋回燃焼火炎の内側近傍に吹き込み、低粘度で比較的燃焼しやすい軽質液体燃料が旋回燃焼火炎の外側近傍へ吹き込むことができる。このため、未燃分の生じやすい高重質液体燃料を常に高温下で燃焼させることができるようになり、未燃分の大幅な低減が可能となる。
【0015】
請求項3に記載の重質液体燃料燃焼装置は、筒状のボイラ火炉の側壁面またはコーナ部にほぼ横向きに設けられ、前記ボイラ火炉と同軸の仮想円筒面に中心軸の延長線が接する複数のバーナ風箱と、該バーナ風箱内に装着された複数の空気ノズルと、該空気ノズルを貫通して同心に装着されアトマイズ流体と共に液体燃料を噴霧するバーナガンとを具え、前記空気ノズル及び前記バーナガンから前記仮想円筒面に接して吹込まれる燃焼用空気及び液体燃料噴霧の燃焼によって生じる複数の火炎を互いに旋回燃焼させて前記ボイラ火炉内に旋回燃焼火炎を形成する重質液体燃料燃焼装置において、
液体燃料供給ラインに送り込まれてきた重質液体燃料を比重差により複数の液体燃料に分離する重質液体燃料分離手段を設け、該重質液体燃料分離手段で分離した液体燃料毎にそれぞれ専用のバーナガンを設けると共に、比重の高い液体燃料を噴霧するバーナガン程ボイラ火炉の中央寄りを向くように配列したことを特徴とするものである。
【0016】
上述した請求項3に記載の重質液体燃料燃焼装置によれば、重質液体燃料分離手段において重質液体燃料を比重差により複数の液体燃料に分離し、比重の大きい高重質液体燃料を噴霧するバーナガン程ボイラ火炉の中心寄りに向けて配列する構成としたので、高粘度で難燃性の傾向にある高重質液体燃料を旋回燃焼火炎の内側近傍に吹き込み、低粘度で比較的燃焼しやすい軽質液体燃料が旋回燃焼火炎の外側近傍へ吹き込むことができる。このため、未燃分の生じやすい高重質液体燃料を常に高温下で燃焼させることができるようになり、未燃分の大幅な低減が可能となる。
【0017】
上述した請求項1から3に記載の重質液体燃料燃焼装置においては、前記重質液体燃料分離手段が、高重質液体燃料及び軽質液体燃料よりなる二種類の液体燃料に分離することが好ましく、シンプルな装置構成で未燃分の発生を低減した重質液体燃料の燃焼が可能となる。
そして、上述した請求項1から4に記載の重質液体燃料燃焼装置においては、前記アトマイズ流体の流量を比重の高い液体燃料ほど大きく設定するのが好ましく、これにより、高粘度で霧化が困難となる高重質液体燃料の微粒化特性を向上させることができるので、未燃分の低減に有効である。
【0018】
上述した請求項3または4に記載の重質液体燃料燃焼装置においては、前記バーナガンの配置は、比重の小さい液体燃料を噴霧するものを上段側に纏め、比重の大きい液体燃料を噴霧するものを下段側に纏めるのが好ましく、これにより、燃焼しにくい高重質液体燃料のボイラ火炉内での滞留時間が長くなるので、未燃分を低減させることができる。
また、上述した請求項3または4に記載の重質液体燃料燃焼装置においては、前記バーナガンの配置を、比重の小さい液体燃料を噴霧するものから比重の大きい液体燃料を噴霧するものへ順次上段側から下段側へ並べる配置を1サイクルとして繰り返してもよく、このようにしても燃焼しにくい高重質液体燃料のボイラ火炉内での滞留時間が長くなるので、未燃分を低減させることができる。
【0019】
上述した請求項1,3から7のいずれかに記載の重質液体燃料燃焼装置においては、前記重質液体燃料分離手段として遠心分離器を用いることが好ましく、この場合、前記旋回燃焼の燃焼状態または前記重質液体燃料の粘度の少なくとも一方を監視し、前記遠心分離器による重質液体燃料の分離をフィードバック制御することで、未燃分の低減を図ることができる。すなわち、一酸化炭素(CO)の排出量などから燃焼状態を判断したり、あるいは重質液体燃料の粘度から燃焼状態を予測して、好ましい燃焼状態が得られないと判断した場合には、遠心分離器に送出する重質液体燃料の入口流速を増したり、遠心分離器の回転速度を増すなどして、より一層の分離促進を図ればよい。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る重質液体燃料燃焼装置の一実施形態を図面に基づいて説明する。
[第1の実施形態]
本発明に係る重質液体燃料装置の第1の実施形態を図1、図2、図3及び図4に示す。なお、図1ないし図4において、上述した従来例と同一部分には同じ符号を付してある。
【0021】
図1ないし図4において、四角筒状としたボイラ火炉本体1に設置されたバーナ風箱2は、その内部が高さ方向に複数段(図示の例では3段)のコンパートメント2aに区切られ、各コンパートメント2aには燃焼用空気18を火炉内19へ吹き込むための空気ノズル6が装着されている。
燃焼用空気18は、図示されてない送風設備から燃焼用空気ライン15を通して空気予熱器14へ送り込まれ、排ガスライン13を通して別途送り込まれてくる燃焼ガス11との熱交換により所定の温度に加熱されてから空気ノズル6に送り込まれる。
なお、バーナ風箱2は、ボイラ火炉本体1の中心高さよりも下方側火炉断面上のコーナ部、あるいは壁面に複数個設置されている。
【0022】
符号の101は重質液体燃料16を比重差により分離する重質液体燃料分離手段として液体燃料供給ライン7に設けた重質液体燃料分離器であり、該重質液体燃料分離器101を通過した重質液体燃料16は、比重の異なる2種類の液体燃料、すなわち図中に矢印で示した高重質液体燃料102と軽質液体燃料103とに分離する。一方の高重質液体燃料102は、高重質液体燃料供給ライン102aを通り、他方の軽質液体燃料103は軽質液体燃料供給ライン103aを通って3流路型バーナガン104に導かれる。この3流路型バーナガン104は、各空気ノズル6の中心部にそれぞれ装着されている。
【0023】
また、図中の符号105は高重質液体燃料供給ライン102aに設けられた高重質液体燃料弁、106は軽質液体燃料供給ライン103aに設けられた軽質液体燃料弁であり、3流路型バーナガン104の先端部には3ノズル型アトマイザ107が取り付けられている。この3ノズル型アトマイザ107には、高重質液体燃料ミキシングノズル107a、軽質液体燃料ミキシングノズル107b、高重質液体燃料用アトマイズ流体ノズル107c、軽質液体燃料用アトマイズ流体ノズル107d、高重質液体燃料ノズル107e、軽質液体燃料ノズル107fが設けられている。
なお、図中の符号108は連結金物であり、3流路型バーナガン104の軸中心に設けられたアトマイズ流体流路5の外周側には、高重質液体燃料流路109及び軽質液体燃料流路110がそれぞれ環状に設けられている。
【0024】
図示した構成の重質液体燃料燃焼装置において、図示省略の液体燃料供給装置から液体燃料供給ライン7を通して送り込まれてきた重質液体燃料16は、当該液体燃料供給ライン7内に設けられた重質液体燃料分離器101に入り、高重質液体燃料102と軽質液体燃料103とに分離される。この重質液体燃料分離器101としては、たとえば比重差を利用して液/液分離を行うサイクロン型の遠心分離器(第1実施例)があり、以下その構成例を図2及び図3に示して簡単に説明する。
【0025】
重質液体燃料分離器101では、円筒内上部の接線方向から所定値以上の流速で重質液体燃料16を流入させることにより、円筒内周面に沿った旋回流となって円筒内を流れる重質液体燃料16は、遠心力の作用を受けて比重差により分離するので、比重の大きい高重質液体燃料102が外側に集まり、そして比重の小さい軽質液体燃料103が内側に集まることで、比重差のある2種類の液体燃料に分離される。遠心力で分離した2種類の液体燃料は、底面の外周部及び中央部に分かれて落下し、外周部側から高重質液体燃料供給ライン102aに高重質液体燃料102が流出し、中央部側から軽質液体燃料供給ライン103aに軽質液体燃料130が流出する。
【0026】
こうして分離された高重質液体燃料102及び軽質液体燃料103は、3流路型バーナガン104へ送り込まれる。3流路型バーナガン104は、図4に示すように、1本のバーナガンに高重質液体燃料流路109、軽質液体燃料流路110、アトマイズ流体流路5の3流路を有するものである。この3流路型バーナガン104は、一端に連結金物108が接続され、他端に3ノズル型アトマイザ107が取り付けられている。
連結金物108は、その入口側にアトマイズ流体供給ライン8、高重質液体燃料供給ライン102a及び軽質液体燃料供給ライン103aを接続する接続口を具えており、各ラインから供給されるアトマイズ流体及び液体燃料をそれぞれアトマイズ流体流路5、高重質液体燃料流路109及び軽質液体燃料流路110に導くようになっている。
【0027】
一方、燃焼用空気18は、バーナ風箱2に設けられた空気ノズル6から火炉内19の中心部に設定した仮想円20(図12参照)に対して接線方向に吹込まれる。3流路型バーナガン104は、上述した空気ノズル6内の中心部に装着され、かつ、その吹込み方向中心軸は空気ノズル6と同一の仮想円20に向かって設定されている。
【0028】
3ノズル型アトマイザ107は、図4及び図5に示すように、1個のアトマイザから高重質液体燃料102と軽質液体燃料103とを同時に噴霧するために、それぞれが独立した2組の噴孔を設けたものである。
一方の高重質液体燃料102を噴霧する噴孔は、高重質液体燃料ミキシングノズル107a、高重質液体燃料用アトマイズ流体ノズル107c及び高重質液体燃料ノズル107eからなり、他方の軽質液体燃料103を噴霧する噴孔は、軽質液体燃料ミキシングノズル107b、軽質液体燃料用アトマイズ流体ノズル107d及び軽質液体燃料ノズル107fからなっている。
【0029】
そして、図5(b)に示すように、高重質液体燃料ミキシングノズル107a及び軽質液体燃料用ミキシングノズル107bは、3ノズル型アトマイザ107の噴孔を正面から見た場合、縦中心軸線Cの左右に分割して配置されている。
なお、図示の例では同一円周上に合計8個の噴孔が等ピッチで配列され、右側の4個がいずれも高重質液体燃料ミキシングノズル107aであり、左側の4個がいずれも軽質液体燃料用ミキシングノズル107bとなる。
【0030】
上述した構成の3流路型バーナガン104へ送り込まれてきた高重質液体燃料102及び軽質液体燃料103は、それぞれ高重質液体燃料流路109及び軽質液体燃料流路110を通って3ノズル型アトマイザ107へ導かれる。同様にして、蒸気あるいは圧縮空気からなるアトマイズ流体17が図示省略のアトマイズ流体供給装置からアトマイズ流体供給ライン8を通って3流路型バーナガン104へ送り込まれ、同バーナガン104内のアトマイズ流体流路5を通って3ノズル型アトマイザ107へ導かれる。
【0031】
高重質液体燃料102は、高重質液体燃料ノズル107eから高重質液体燃料ミキシングノズル107aへ吹き込まれ、別途高重質液体燃料用アトマイズ流体ノズル107cから高重質液体燃料ミキシングノズル107aに吹き込まれるアトマイズ流体17によって火炉内19へ噴霧される。
軽質液体燃料103もまた同様に、軽質液体燃料ノズル107fから軽質液体燃料ミキシングノズル107bへ吹き込まれ、別途軽質液体燃料用アトマイズ流体ノズル107dから軽質液体燃料ミキシングノズル107bに吹込まれる軽質液体燃料用アトマイズ流体17によって火炉内19へ噴霧される。
【0032】
高重質液体燃料用アトマイズ流体ノズル107cは、高粘度で霧化が難しい高重質液体燃料102の噴霧の微粒化特性を高めるため、その直径を軽質液体燃料用アトマイズ流体ノズル107dの直径よりも大きくして、「アトマイズ流体17量/高重質液体燃料102量」比が大きくなるようにしてある。すなわち、高重質液体燃料102側に吹き込まれるアトマイズ流体17の分配量を多くして、高重質液体燃料102の微粒化を促進している。
【0033】
こうして3ノズル型アトマイザ107から火炉内19へ噴霧された両液体燃料102,103は、図示省略の着火源によって着火して火炎21を形成し、複数の火炎21の旋回燃焼により旋回燃焼火炎22が形成される。
この時、3ノズル型アトマイザ107の取り付けに当って、高重質液体燃料ミキシングノズル107aを旋回燃焼によって形成される旋回燃焼火炎22の上流側へ位置するよう取り付けることにより、高重質液体燃料102の噴霧側の火炎21は火炉内19の中心部側へ、軽質液体燃料103噴霧側の火炎21は火炉内19の壁面側へ形成されることになる。
【0034】
上述した構成の重質液体燃料燃焼装置としたことにより、重質液体燃料16を比重差により高重質液体燃料102と軽質液体燃料103とに分割し、粘度が高く燃焼しにくい高重質液体燃料102を旋回燃焼火炎22の内側へ向けて噴霧すると共に、当初の重質液体燃料16より高重質成分が分離除去されて軽質化した軽質液体燃料103を旋回燃焼火炎22の外側近傍へ向けて噴霧することが可能になる。
このため、難燃性の高重質液体燃料102は、火炉内19の壁面に接触して温度低下するようなことはなく、常に旋回燃焼火炎22の内側において高温の雰囲気下で燃焼することができるので、良好な燃焼条件が維持されて未燃分の発生が大幅に低減する。また、軽質液体燃料103については、旋回燃焼火炎22の外側近傍へ向けて噴霧されるため火炎21が火炉内19の壁面に近づき気味になっても、燃料自体が軽質化して燃焼性が向上しているので、充分に良好な燃焼を維持することができる。従って、重質液体燃料16全体としての燃焼性が向上することになり、未燃分として残る燃料を大幅に低減してクリーンで効率のよい燃焼が可能な重質液体燃料燃焼装置となる。
【0035】
ところで、上述した第1の実施形態においては、重質液体燃料分離手段の第1実施例としてサイクロン型の重質液体燃料分離器101を採用したが、重質液体燃料16を比重差により液/液分離する重質液体燃料分離手段としては、他の型式の遠心分離器を適用することも可能である。
そこで、重質液体燃料分離手段の第2実施例として、分離板型の遠心分離器を図6に示して簡単に説明する。この重質液体分離器101Aは、図示省略の駆動源で旋回する分離板101aに重質液体燃料16を投入し、遠心力で外側に移動する高重質液体燃料102と内側の軽質液体燃料103とを分離させて、それぞれ異なる流路から回収するものである。
このような分離板型の遠心分離器の他にも、たとえばノズル排出型の遠心分離器などを適用することも可能である。
【0036】
また、上述したようなサイクロン型や分離板型などの遠心分離器を用いた場合には、たとえば一酸化炭素の排出量や重質液体燃料16の粘度などを適宜検出することで旋回燃焼の燃焼状態を監視または予測し、燃焼状態に応じて重質液体燃料16の分離をフィードバック制御することで、未燃分の低減を図ることができる。すなわち、排出される一酸化炭素の排出量が増加すれば燃焼温度が低下するなど燃焼状態に問題があると判断でき、また、重質液体燃料16の粘度が大きくなれば難燃性の燃料となって未燃分が発生しやすくなると予測できるので、燃焼状態が好ましくないと判断または予測される場合には、遠心分離器における高重質/軽質の分離を促進する方向にフィードバック制御すればよい。
【0037】
具体的には、サイクロン型の遠心分離器では、重質液体燃料16の入口流速を増すことでより一層の分離促進を図ることができ、駆動源を具えた分離板型の遠心分離器などでは、遠心分離器の回転速度を上げるなどして容易に分離促進を図ることができる。
なお、サイクロン型の遠心分離器等における重質液体燃料16の入口流速の調整は、たとえばバタフライ弁等のように開度調整可能な弁を重質液体燃料供給ライン7に配設することで容易に可能となり、燃焼状態が好ましくないと判断または予測される場合に弁の開度を絞り、流路を狭めることで重質液体燃料16の入口流速を上げればよい。
【0038】
[第2の実施形態]
続いて、本発明の第2の実施形態を図7及び図8に示して説明する。なお、ここでは上述した第1の実施形態及び従来技術と同一の部分には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
図7及び図8において、符号の111は高重質液体燃料用バーナガン(以下、高重質バーナガンと呼ぶ)、111aは高重質液体燃料用アトマイザ(以下、高重質アトマイザと呼ぶ)、111bは連結金物、112は軽質液体燃料用バーナガン(以下、軽質バーナガンと呼ぶ)、112aは軽質液体燃料用アトマイザ(以下、軽質アトマイザと呼ぶ)、112bは連結金物、113は高重質液体燃料用コンパートメント(以下、高重質コンパートメントと呼ぶ)、114は軽質液体燃料用コンパートメント(以下、軽質コンパートメントと呼ぶ)、115は仮想円A、116は仮想円B、117は高重質液体燃料火炎の中心(以下、高重質火炎と呼ぶ)、118は軽質液体燃料火炎の中心(以下、軽質火炎と呼ぶ)を示す。
【0039】
この実施形態では、上述した第1の実施形態とは異なり、重質液体燃料分離器101で分離された高重質液体燃料102及び軽質液体燃料103のそれぞれに独立した専用のバーナガンを設けてある。すなわち、ここで使用するバーナガンは、基本的に従来技術のものと同様であり、高重質液体燃料102及び軽質液体燃料103に分離した分だけ数が増している。
【0040】
バーナ風箱2内は、図7に示すように、上段側の軽質コンパートメント114と下段側の高重質コンパートメント113とを1セット(サイクル)として、複数セット(2セット)配設したものである。すなわち、上段側から順に軽質コンパートメント114、高重質コンパートメント113、軽質コンパートメント114、高重質コンパートメント113というように4段のコンパートメントを交互に配置したものである。
なお、上段側に軽質コンパートメント114のみを複数段纏めて配置し、下段側に高重質コンパートメント113のみを複数段纏めて配置することも可能である。
【0041】
各高重質コンパートメント113には、それぞれ空気ノズル6と高重質バーナガン111とが装着されている。また、各軽質コンパートメント114には、それぞれ空気ノズル6と軽質バーナガン112とが装着されている。高重質バーナガン111及び軽質バーナガン112は、図13に示した従来型バーナガン3と同構造であり、液体燃料流路4及びアトマイズ流体流路5を具えている。
両コンパートメント113,114からの燃焼用空気18及び両液体燃料102,103噴霧の火炉内19への吹き込みは、ボイラ火炉本体1の水平断面上の中心部に同心で大小2種類の仮想円を設定して行う。
【0042】
高重質コンパートメント113からの燃焼用空気18及び高重質液体燃料102噴霧は、図8に示すように、小直径の仮想円A115に対して接線方向に吹き込むように空気ノズル6及び高重質バーナガン111を装着し、軽質コンパートメント114からの燃焼用空気18及び軽質液体燃料103噴霧は、大直径の仮想円B116に対して接線方向に吹き込むように設定してある。すなわち、高重質液体燃料102噴霧の中心は高重質液体燃料火炎の中心117と一致し、そして、軽質液体燃料103噴霧の中心は軽質液体燃料火炎の中心118と一致することとなる。
【0043】
重質液体燃料分離器101へ送り込まれてきた重質液体燃料16は、高重質液体燃料102及び軽質液体燃料103の二つの液体燃料に分離され、それぞれ高重質液体燃料供給ライン102a及び軽質液体燃料供給ライン103aを通って高重質バーナガン111及び軽質バーナガン112へ送り込まれる。この後、高重質液体燃料102及び軽質液体燃料103は、高重質バーナガン111及び軽質バーナガン112の先端にそれぞれ装着された高重質アトマイザ111a及び軽質アトマイザ112aから、別途空気ノズル6より吹き込まれる燃焼用空気18中へ噴霧される。
この時、難燃性の高重質液体燃料102噴霧は、火炉内19水平断面上の中心部へ同心に設定された大小2種類の仮想円のうち小直径仮想円A115に対して接線方向に吹き込まれる燃焼用空気18中へ吹き込み、燃焼容易な軽質液体燃料103噴霧は、大直径の仮想円B116に対して接線方向に吹き込まれる燃焼用空気18へ吹き込んで旋回燃焼を行い、旋回燃焼火炎22を形成する。
【0044】
このような構成としても、重質液体燃料16を比重差により高重質液体燃料102と軽質液体燃料103とに分割し、粘度が高く燃焼しにくい高重質液体燃料102を旋回燃焼火炎22の内側へ向けて噴霧すると共に、当初の重質液体燃料16より高重質成分が分離除去されて軽質化した軽質液体燃料103を旋回燃焼火炎22の外側近傍へ向けて噴霧することが可能になる。
このため、難燃性の高重質液体燃料102は、火炉内19の壁面に接触して温度低下するようなことはなく、常に旋回燃焼火炎22の内側において高温の雰囲気下で燃焼することができるので、良好な燃焼条件が維持されて未燃分の発生が大幅に低減する。また、軽質液体燃料103については、旋回燃焼火炎22の外側近傍へ向けて噴霧されるため火炎21が火炉内19の壁面に近づき気味になっても、燃料自体が軽質化して燃焼性が向上しているので、充分に良好な燃焼を維持することができる。従って、重質液体燃料16全体としての燃焼性が向上することになり、未燃分として残る燃料を大幅に低減してクリーンで効率のよい燃焼が可能な重質液体燃料燃焼装置となる。
【0045】
また、燃焼しやすい軽質液体燃料103を火炉内19の上部に噴霧し、難燃性の高重質液体燃料102を火炉内19の下部に噴霧するようにしたので、難燃性の燃料分が下部から上部へ上昇して燃焼することにより火炉内19への滞留時間が長くなり、結果として未燃分を低減することができる。
なお、上述した第1の実施形態で説明したように高重質液体燃料102側のアトマイズ流体量を増して微粒化を促進したり、あるいは、燃焼状態を監視して重質液体燃料分離器101における分離を制御するといったことは、ここで説明した第2の実施形態にも適宜適用可能なことはいうまでもない。
【0046】
[第3の実施形態]
続いて、本発明の第3の実施形態を図9及び図10に示して説明す。なお、この実施形態が上述した従来技術及び第1の実施形態と異なるのは重質液体燃料分離手段を組み込んだバーナガンの構造であり、以下ではこの構成について詳細に説明する。
図9及び図10において、図中の符号119は重質液体燃料分離機構、120は分離プレート、120aは旋回溝、120bは旋回室、121はバックプレートを示す。
【0047】
この実施形態では、重質液体燃料流路4及びアトマイズ流体流路5を具えたバーナガン3Aに重質液体燃料分離手段となる重質液体燃料分離機構119を内蔵させている。この重質液体燃料分離機構119は、バーナガン3Aに組み込まれた分離プレート120の内部に形成されており、液体燃料供給ライン7から重質液体燃料流路4に送り込まれた重質液体燃料を比重差により分離させる機能を有している。なお、重質液体燃料分離機構119を具えた分離プレート120の下流側には、第1の実施形態で説明したものと同様に構成された3ノズル型アトマイザ107を取り付けてある。
【0048】
上述した分離プレート120は、中央にアトマイズ流体流路5となる円形断面通路が形成された円筒状の部材であり、バーナガン3Aに形成された重質液体燃料流路4と連結される円筒の厚肉部分に、重質液体燃料分離機構119が形成されている。
この重質液体燃料分離機構119は、重質液体燃料通路4に連結される環状液体燃料室120aと、該環状液体燃料室120aの後流側に形成された環状の旋回室120bと、環状液体燃料室120aと旋回室120bとの間を連結し一端が旋回室120bに対し接線方向に連通するよう複数(図示の例では4本)設けられた旋回溝120cと、旋回室120bの後流側に旋回溝120cと連通して設けられた内外2段の同心環状溝120d,120eとを具備して構成される。そして、上述した内外2段の同心環状溝120d,120eは、分離した液体燃料毎の通路が形成されたバックプレート121を介して、3ノズル型アトマイザ107に接続される。
なお、この場合の3ノズル型アトマイザ107についても、上述した第1の実施形態と同様に、比重の高い液体燃料を噴霧するもの程火炉内19の中央寄りを向くように配列してある。
【0049】
上述した構成のバーナガン3Aは、従来例として示した図11の全体構成の系統において、バーナガン3に代えて用いられる。
バーナガン3Aに送り込まれてきた重質液体燃料16は、分離プレート120に形成された重質液体燃料分離機構119を通過することにより、比重差のある高重質液体燃料102と軽質液体燃料103とに分離される。
【0050】
以下、この分離について詳細に説明する。
重質液体燃料流路4を流れる重質液体燃料16は、分離プレート120に到達して環状液体燃料室120aから4本の旋回溝120cへ流れ込む。この旋回溝120cは、旋回室120bに対し接線方向に連通しているため、旋回室120b内では重質液体燃料16が旋回流となって流れる。このため、重質液体燃料16の旋回流には遠心力が作用し、比重の大きい高重質液体燃料102は外側に、そして比重の小さい軽質液体燃料103は内側に分離される。
【0051】
こうして分離された高重質液体燃料102は、外側の同心環状溝120eを通って3ノズル型アトマイザ107の高重質液体燃料ノズル107eに導かれる。また、軽質液体燃料103は、内側の同心環状溝120dを通って3ノズル型アトマイザ107の軽質液体燃料ノズル107fに導かれる。
なお、高重質液体燃料102及び軽質液体燃料103の以後の流れは、上述した第1の実施形態と同様である。すなわち、第1の実施形態では重質液体燃料分離器101で分離たものを3流路型バーナガン104及び3ノズル型アトマイザ107へ供給していたが、本実施例では、重質液体燃料分離器101の機能をバーナガン3A内の重質液体燃料分離機構119にもたせたものである。換言すれば、サイクロン型の遠心分離器をバーナガン3Aに内蔵して重質液体燃料16を分離させる構成となっている。
【0052】
このような構成としても、上述した第1の実施形態と同様に、重質液体燃料16を比重差により高重質液体燃料102と軽質液体燃料103とに分割し、粘度が高く燃焼しにくい高重質液体燃料102を旋回燃焼火炎22の内側へ向けて噴霧すると共に、当初の重質液体燃料16より高重質成分が分離除去されて軽質化した軽質液体燃料103を旋回燃焼火炎22の外側近傍へ向けて噴霧することが可能になる。
このため、難燃性の高重質液体燃料102は、火炉内19の壁面に接触して温度低下するようなことはなく、常に旋回燃焼火炎22の内側において高温の雰囲気下で燃焼することができるので、良好な燃焼条件が維持されて未燃分の発生が大幅に低減する。また、軽質液体燃料103については、旋回燃焼火炎22の外側近傍へ向けて噴霧されるため火炎21が火炉内19の壁面に近づき気味になっても、燃料自体が軽質化して燃焼性が向上しているので、充分に良好な燃焼を維持することができる。従って、重質液体燃料16全体としての燃焼性が向上することになり、未燃分として残る燃料を大幅に低減してクリーンで効率のよい燃焼が可能な重質液体燃料燃焼装置となる。
【0053】
上述したように、本発明の重質液体燃料燃焼装置においては、(1)バーナガン上流の液体燃料供給ライン7に遠心分離器等の重質液体燃料分離手段を設け、重質液体燃料16を高重質液体燃料102と軽質液体燃料103との二つに分離させるようにしたこと、(2)バーナガン内に重質液体燃料分離手段を設け、重質液体燃料16を高重質液体燃料102と軽質液体燃料103との二つに分離させるようにしたこと、(3)一つのアトマイザから高重質液体燃料102と軽質液体燃料103とを別々に噴霧できるようにしたしたこと、(4)高重質液体燃料102については、そのアトマイズ流体17量を多くして噴霧粒子の微粒化を図り、しかも、噴霧粒子群を常に旋回燃焼火炎22の中心部側へ噴霧するようにして、火炉内19の壁面からの影響を受けないようにしたことにより、高重質液体燃料16の良好な燃焼を促進し、未燃分の発生を大幅に低減することが可能になった。
【0054】
また、上記各実施形態において、ボイラ化炉本体1の形状、コンパートメント2aの配置や段数及び重質液体燃料16を分離させる数等については何ら限定するものではなく、たとえば重質液体燃料16を高重質液体燃料、中軽質液体燃料及び軽質液体燃料の3種類に分離させてそれぞれに対応する噴出ルートを形成するなど適宜他の構成とすることが可能である。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない範囲内であれば、いかなる構成を採用してもよく、また上記したような構成を適宜選択的に組み合わせたものとしてもよいのは言うまでもない。
【0055】
【発明の効果】
本発明の重質液体燃料燃焼装置によれば、重質液体燃料を、たとえば高重質液体燃料及び軽質液体燃料というように複数に分離し、高粘度で難燃性の傾向にある高重質液体燃料を旋回燃焼火炎の内側近傍へ吹き込んで、常に高温雰囲気下で燃焼を行わせることにより、未燃分の発生を激減させることができる。
また、軽質液体燃料は、分離前の重質液体燃料と比較して軽質化しているため燃焼性が向上しており、従って、軽質液体燃料噴霧を旋回燃焼火炎の外側近傍へ吹込んで火炎が火炉内の壁面へ近寄り気味となっても、充分に良好な燃焼を維持できる。
特に、重質液体燃料を高重質液体燃料及び軽質液体燃料の両極端に分離して燃焼させる行う本発明の燃焼方法は、従来の重質液体燃料単味の燃焼方法に比べ、未燃分の発生を防止するのに格段な効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による重質液体燃料燃焼装置の第1の実施形態に係る全体系統を示す図である。
【図2】 図1の重質液体燃料燃焼装置における重質液体燃料分離手段の第1実施例として、サイクロン型の遠心分離器の構成例を示す縦断面図である。
【図3】 図2に示した重質液体燃料分離器のA−A断面図である。
【図4】 図1の重質液体燃料燃焼装置における3流路型バーナガンの構成例を示す断面図である。
【図5】 図4に示した3流路型バーナガンに取り付けられる3ノズル型アトマイザ構成例を示す図で、(a)は断面図、(b)は噴霧方向から見た正面図である。
【図6】 図1の重質液体燃料燃焼装置における重質液体燃料分離手段の第2実施例として、分離板型遠心分離器の構成例を示す縦断面図である。
【図7】 本発明による重質液体燃料燃焼装置の第2の実施形態に係る全体系統を示す図である。
【図8】 図7に示した本発明の第2の実施形態において、ボイラ火炉内への噴霧方向を説明する水平断面図である。
【図9】 本発明による重質液体燃料燃焼装置の第3の実施形態に係る分離機構内蔵ノズルの構成例を示す断面図である。
【図10】 図9に示した分離器高内蔵ノズルにおける分離プレートの構成例を示す図で、(a)は入口側を示す図9のB−B断面図、(b)は出口側を示す図9のC−C断面図である。
【図11】 従来の重質液体燃料燃焼装置に係る全体系統を示す図である。
【図12】 図11に示した従来装置におけるボイラ火炉内の燃焼状態を示す水平断面図である。
【図13】 図11に示した従来装置におけるバーナガンの構成例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 ボイラ火炉本体
2 バーナ風箱
3,3A バーナガン
6 空気ノズル
16 重質液体燃料
17 アトマイズ流体
18 燃焼用空気
19 火炉内
22 旋回燃焼火炎
101 重質液体燃料分離器(重質液体燃料分離手段)
102 高重質液体燃料
103 軽質液体燃料
104 3流路型バーナガン
107 3ノズル型アトマイザ
111 高重質液体燃料用バーナガン(高重質バーナガン)
112 軽質液体燃料用バーナガン(軽質バーナガン)
119 重質液体燃料分離機構(重質液体燃料分離手段)
Claims (9)
- 筒状としたボイラ火炉の側壁面またはコーナ部にほぼ横向きに設けられ、前記ボイラ火炉と同軸の仮想円筒面に中心軸の延長線が接する複数のバーナ風箱と、該バーナ風箱内に装着された複数の空気ノズルと、該空気ノズルを貫通して同心に装着されアトマイズ流体と共に液体燃料を噴霧するバーナガンとを具え、前記空気ノズル及び前記バーナガンから前記仮想円筒面に接して吹込まれる燃焼用空気及び液体燃料噴霧の燃焼によって生じる複数の火炎を互いに旋回燃焼させて前記ボイラ火炉内に旋回燃焼火炎を形成する重質液体燃料燃焼装置において、
液体燃料供給ラインに送り込まれてきた重質液体燃料を比重差により複数の液体燃料に分離させる重質液体燃料分離手段を設け、前記バーナガンにアトマイズ流体流路及び前記重質液体燃料分離手段で分離した複数の液体燃料毎に専用の液体燃料流路を形成すると共に前記複数の液体燃料毎にそれぞれ専用の噴霧ノズルを設けたアトマイザを取り付け、前記噴霧ノズルが比重の高い液体燃料を噴霧するもの程ボイラ火炉の中央寄りを向くように配列したことを特徴とする重質液体燃料燃焼装置。 - 筒状としたボイラ火炉の側壁面またはコーナ部にほぼ横向きに設けられ、前記ボイラ火炉と同軸の仮想円筒面に中心軸の延長線が接する複数のバーナ風箱と、該バーナ風箱内に装着された複数の空気ノズルと、該空気ノズルを貫通して同心に装着されアトマイズ流体と共に液体燃料を噴霧するバーナガンとを具え、前記空気ノズル及び前記バーナガンから前記仮想円筒面に接して吹込まれる燃焼用空気及び液体燃料噴霧の燃焼によって生じる複数の火炎を互いに旋回燃焼させて前記ボイラ火炉内に旋回燃焼火炎を形成する重質液体燃料燃焼装置において、
重質液体燃料流路及びアトマイザ流体流路を具えたバーナガンに、液体燃料供給ラインから前記重質液体燃料流路に送り込まれた重質液体燃料を旋回させる環状の旋回室と、該旋回室に対し接線方向に連通して複数設けられた旋回溝と、前記旋回室の後流側に前記旋回溝と連通して設けられた複数の同心環状溝とを具備してなる重質液体燃料分離手段を組み込んで設けると共に、分離した複数の液体燃料毎にそれぞれ専用の噴霧ノズルを設けたアトマイザを取り付け、前記噴霧ノズルが比重の高い液体燃料を噴霧するもの程ボイラ火炉の中央寄りを向くように配列したことを特徴とする重質液体燃料燃焼装置。 - 筒状のボイラ火炉の側壁面またはコーナ部にほぼ横向きに設けられ、前記ボイラ火炉と同軸の仮想円筒面に中心軸の延長線が接する複数のバーナ風箱と、該バーナ風箱内に装着された複数の空気ノズルと、該空気ノズルを貫通して同心に装着されアトマイズ流体と共に液体燃料を噴霧するバーナガンとを具え、前記空気ノズル及び前記バーナガンから前記仮想円筒面に接して吹込まれる燃焼用空気及び液体燃料噴霧の燃焼によって生じる複数の火炎を互いに旋回燃焼させて前記ボイラ火炉内に旋回燃焼火炎を形成する重質液体燃料燃焼装置において、
液体燃料供給ラインに送り込まれてきた重質液体燃料を比重差により複数の液体燃料に分離する重質液体燃料分離手段を設け、該重質液体燃料分離手段で分離した液体燃料毎にそれぞれ専用のバーナガンを設けると共に、比重の高い液体燃料を噴霧するバーナガン程ボイラ火炉の中央寄りを向くように配列したことを特徴とする重質液体燃料燃焼装置。 - 前記重質液体燃料分離手段が、高重質液体燃料及び軽質液体燃料よりなる二種類の液体燃料に分離することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の重質液体燃料燃焼装置。
- 前記アトマイズ流体の流量を、比重の高い液体燃料ほど大きくしたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の重質液体燃料燃焼装置。
- 前記バーナガンは、比重の小さい液体燃料を噴霧するものを上段側に纏め、比重の大きい液体燃料を噴霧するものを下段側に纏めて配置したことを特徴とする請求項3または4に記載の重質液体燃料燃焼装置。
- 前記バーナガンは、比重の小さい液体燃料を噴霧するものから比重の大きい液体燃料を噴霧するものへ順次上段側から下段側へ並べる配置を1サイクルとして繰り返したことを特徴とする請求項3または4に記載の重質液体燃料燃焼装置。
- 前記重質液体燃料分離手段が遠心分離器であることを特徴とする請求項1,3から7のいずれかに記載の重質液体燃料燃焼装置。
- 前記旋回燃焼の燃焼状態または前記重質液体燃料の粘度の少なくとも一方を監視し、前記遠心分離器による重質液体燃料の分離をフィードバック制御することを特徴とする請求項8に記載の重質液体燃料燃焼装置。
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