JP4076707B2 - ガスタービン - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はガスタービンに係わり、特に圧縮機吐出流体を冷却器とブースト圧縮機によりそれぞれ冷却および昇圧して冷媒とし、エンドウォール部も含め静翼を冷却し、冷却後の冷媒を燃焼器に回収するように形成されているガスタービンに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来一般に採用されているこの種のガスタービンは、圧縮機で圧縮した作動流体に燃料を加えて燃焼し、高温高圧の作動流体を得てタービンを駆動するように構成されている。駆動されたタービンの回転エネルギーは、通常、タービンに結合されている発電機により電気エネルギーに変換される。
【0003】
最近においては、ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせたコンバインドサイクルの効率向上に大きな期待が寄せられており、その一手段として作動流体の温度のより高温および高圧力比化が図られている。また、高温化と併せてこれまで主流ガス中に放出してきたガスタービン高温部の冷却媒体を,例えば燃焼器入口等に回収することにより、熱エネルギーを有効に利用してさらに効率向上を図るクローズド冷却方式を採用したガスタービンの開発も進んでいる。
【0004】
一般に、冷媒の回収を前提とするクローズド冷却方式を採用するガスタービンの場合、その静翼および静翼周辺の構造は、クローズド冷却媒体を外部に漏らさないようシール性を上げなければならない。このシール構成の点で、冷媒を主流ガス中に放出するオープン冷却方式の構造とは大きく異なってくる。
【0005】
例えば、第2段静翼のように内周側のディスクロータスペーサとの間にダイヤフラムを配置するような構造では、ガスタービンの運転上、静翼より内周側に位置する回転体であるディスクホイールに主流ガス,すなわち高温のガスが進入しないようシール媒体を供給する必要があるため、翼内にはクローズド冷却媒体による冷却流路の他にシール媒体となるオープン冷却媒体の供給通路も必要となり、クローズド冷却流路とオープン冷却流路が交錯して複雑な構造となる。
【0006】
例えば、特開平10−317908号公報には、翼内のクローズド冷却流路内にベロー構造を有して熱伸びを吸収するオープン空気用チューブを通した構造が示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
第2段静翼内に供給される冷媒としては、圧縮機から吐出された流体を冷却器とブースト圧縮機により冷却かつ昇圧した冷媒と、圧縮機から吐出あるいは圧縮機から抽気した流体を用いる冷媒との2つの冷媒があり、通常、前者はクローズド冷却媒体として、また後者はオープン冷却媒体として用いられている。
【0008】
前者のクローズド冷却媒体は、第2段静翼の冷却を終えた後にガスタービンケーシング内の配管を通して燃焼器入口に供給され、最終的には圧縮機吐出流体に合流する。一方、後者のオープン冷却媒体は、静翼の一部を冷却し、最終的には主流ガス中に放出される。なお、このオープン冷却媒体の場合、そのオープン冷却媒体の一部は、静翼の内周側に配置されるダイヤフラムへ導かれ、ホイールスペース用シール媒体として用いられる。すなわち、このシール媒体がダイヤフラム周囲に主流ガスが進入して雰囲気温度が上昇するのを防ぐ役割を果たす。
【0009】
オープン冷却媒体の供給流路は、ホイールスペースシール媒体供給圧力を維持するために流路面積をある程度大きくとり、流路内での圧力損失を抑えなければならない。また同時に、ホイールスペースシール媒体供給温度は、ディスクロータを許容温度以上に上昇させないために、ある一定温度以下でなければならなく、すなわち比較的熱負荷の小さい流路を選択し、温度上昇を抑えなくてはならない。これらの制約から流路面積を大きくとれない翼後縁冷却流路や熱負荷の比較的高い前縁冷却流路を除いた翼プロファイル中央の流路を通す必要がある。
【0010】
オープン冷却媒体供給流路を確保する方法としては、翼部冷却流路の一部をオープン冷却媒体専用流路としてクローズド冷却媒体流路と分けて設けるか、あるいはクローズド冷却媒体流路の中にオープン冷却媒体を通すチューブ等を挿入するなどがある。ここで、クローズド冷却媒体は、前にも述べたように昇圧されて翼に供給されるため、オープン冷却媒体に比べ高圧であり、クローズド冷却媒体の流路とオープン冷却媒体の流路は完全に分離かつそれぞれシールされていなければ、クローズド冷却媒体がオープン冷却媒体の流路に進入し漏れ出す。
【0011】
クローズド冷却媒体は、たとえ微量であっても本来の経路より漏れ出すと冷却器とブースト圧縮機に消費した仕事を損失してしまうため、クローズド冷却による効果を損ない、プラント効率の低下につながる等の問題がある。クローズド冷却媒体流路にオープン冷却媒体用のチューブ通す方法では、それぞれの流路の分離とシールのために溶接箇所が多くなる傾向があり、工数が増えるとともに溶接の不具合発生の確率も高くなり、信頼性を損なう可能性がある。
【0012】
また、クローズド冷却を採用する際に留意しなければならないこととして、過冷却の防止がある。クローズド冷却媒体は、冷却器により冷却されて供給され、オープン冷却媒体に比べ供給温度が一段と低く冷却能力が高いため、翼外表面をある一定温度以下に冷却しようとしたとき、翼外表面と冷却面との間に大きな温度差すなわち大きな熱勾配が生じる。
【0013】
ここで、例えば翼冷却流路間パーティションのような両面からのクローズド冷却媒体により冷却されるような箇所では翼の他の部分と比べ一層温度が低くなり過冷却が発生し易くなる。過冷却が発生するとその大きな熱勾配のために過大な熱応力が発生し、特に熱応力緩和のための冷却媒体流路の分離部の構成が複雑となりがちであり、溶接部においては亀裂や破損が生じ易く翼の寿命を下げガスタービンの信頼性を損なう可能性がある。
【0014】
本発明はこれに鑑みなされたもので、その目的とするところは、クローズド冷却媒体流路とオープン冷却媒体流路の分離部の構成簡単にして、冷媒のリークおよび翼部の過冷却を充分防止することが可能なこの種のガスタービンを提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、タービン静翼の内部に冷却媒体流通パスを有するとともに、この冷却媒体流通パスに冷却媒体が流通されて静翼が冷却され、かつ静翼冷却後の冷却媒体が、一部は回収され、かつ一部は主流ガス中に放出されるように形成されているガスタービンにおいて、前記静翼に複数の冷却媒体流通パスを設けるとともに、この冷却媒体流通パスの内少なくとも一つの冷却媒体流通パスは、外部より供給された冷却媒体が流通して静翼を冷却し、冷却後は再び外部に回収され、かつ他の冷却媒体流通パスは、外部より供給された冷却媒体が流通して静翼を冷却し、冷却後はその一部の冷却媒体が前記主流ガス中に放出され、かつ残部の冷却媒体は静翼の内周側に配置されている回転部にシール媒体として供給するように形成し所期の目的を達成するようにしたものである。
【0016】
また、この場合、前記静翼に設けられた複数の冷却媒体流通パスを、翼の前縁から後縁にかけて順次並設して設けるとともに、前記翼の最前縁および最後縁の冷却媒体流通パスを除く冷却媒体流通パスに、前記主流ガス中に放出される冷却媒体を流通させるように形成したものである。また、前記静翼に設けられた複数の冷却媒体流通パスを、翼の前縁から後縁にかけて順次並設して設けるとともに、前記翼の前縁側から第二番目の冷却媒体流通パスに、前記主流ガス中に放出される冷却媒体を流通させるように形成したものである。
【0017】
また、前記静翼に設けられた複数の冷却媒体流通パスを、翼の前縁から後縁にかけて順次並設して設けるとともに、前記翼の最前縁側の冷却媒体流通パスおよび翼の前縁側から第三番目およびそれ以降の冷却媒体流通パスを、前記冷却後に回収される冷却媒体の流通路となし、かつ翼の前縁側から第二番目の冷却媒体流通パスを、前記主流ガス中に放出される冷却媒体の流通路となし、かつ前記それぞれの冷却媒体流通パス部にインピンジメント冷却手段を設けるようにしたものである。
【0018】
また本発明は、タービン静翼の内部に冷却媒体流通パスを有するとともに、この冷却媒体流通パスに冷却媒体が流通されて静翼が冷却され、かつ静翼冷却後の冷却媒体が、一部は回収され、かつ一部は主流ガス中に放出されるように形成されているガスタービンにおいて、前記静翼に、翼の前縁から後縁にかけて順次並設されている複数の冷却媒体流通パスを設けるとともに、前記回収される冷却媒体が、翼の前縁側から第一番目の冷却媒体流通パスに供給され、翼前縁部をインピンジメント冷却した後翼の内周側エンドウォール部で、第二番目の冷却流路をバイパスして、第三番目の冷却流路へと導かれ、第三番目以降の冷却流路を通った後後縁冷却流路より翼外部に回収され、かつ前記主流ガス中に放出される冷却媒体が翼の前縁側から第二番目の冷却媒体流通パスに供給され、翼部をインピンジメント冷却し、かつ一部を前記二番目の冷却流路の冷却に使用せずに、静翼内周側のシール部に直接導くように形成したものである。
【0019】
また、この場合、前記静翼冷却後回収される冷却媒体が流通する冷却媒体流通パスの回収口を、静翼の外周側に設けられている外周側エンドウォール上の翼プロファイル外周側延長中央付近に設け、かつ前記外周側エンドウォール上に、後縁冷却流路から前記回収口までを接続する流路を設けるようにしたものである。また、前記外周側エンドウォールをカバーで密閉するとともに、前記回収される冷却媒体が流通する冷却媒体流通パスの供給口を、前記カバー上に設け、かつ供給された冷却媒体で外周側エンドウォールをインピンジメント冷却した後に翼部前縁冷却流路に供給するようにしたものである。また、前記翼の内周側に設けられている内周側エンドウォールに導かれたオープン冷却媒体で、前記内周側エンドウォールの一部をインピンジメント冷却し、さらに前記内周側エンドウォールの上流側と下流側に配置された対流冷却孔を通して主流ガス中に放出することにより、前記内周側エンドウォールを冷却するようにしたものである。
【0020】
すなわちこのように形成されたガスタービンであると、主流ガス中に放出する冷却媒体流路,すなわちオープン冷却媒体供給流路が、外部熱負荷が低く、翼形状上流路断面積が比較的大きくとれる位置に配置されているため、冷却流路内におけるオープン冷却媒体の温度上昇と圧力損失が抑えられ、良好なシール冷却媒体としてダイヤフラムに供給されるのである。
【0021】
また、熱負荷の比較的高い前縁冷却流路に冷却能力の高いクローズド冷却媒体が供給され、前縁より第二番目の冷却流路には冷却能力の低いオープン冷却媒体が供給され、さらに第三番目の冷却流路には前縁冷却流路から第二冷却流路をバイパスしてきたクローズド冷却媒体が供給されることにより、冷却流路間パーティションのような両側から冷却されるような部分の過冷却を低減することが可能となるのである。
【0022】
さらに、特に過冷却の程度が大きい前縁冷却流路と第二番目の冷却流路間パーティションの過冷却を低減するために、前縁冷却流路と前縁から第二番目の冷却流路に熱負荷の調節が可能なインピンジメント冷却を採用することにより過冷却の低減効果をさらに上げることができるのである。また、前縁冷却流路および前縁より第三番目の冷却流路から後縁冷却流路までをクローズド冷却媒体流通パスに、前縁より第二番目の冷却流路をオープン冷却媒体流通パスとしているため、クローズド冷却媒体流路内にチューブを介してオープン冷却媒体を通すような場合と比べて、溶接箇所を削減でき、さらにガスタービン運転時のチューブや溶接部の破損によりクローズド冷却媒体がオープン冷却媒体流路にリークするようなことも防止できるのである。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下図示した実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。図1には、そのガスタービンの要部(翼段落部)が断面で示されている。図中矢印20が、主流ガスの流れ方向を示しており、1が第1段静翼、3が第2段静翼、また2が第1段動翼、4が第2段動翼、5が第2段静翼ダイヤフラム、6がディスタントピース、7が第1段動翼ロータディスク、8がディスクスペーサ、9が第2段動翼ロータディスクである。
【0024】
第1段動翼2はロータディスク7に、また第2段動翼4はロータディスク9にそれぞれ固定され、ディスタントピース6とロータディスク7,ディスクスペーサ8,ロータディスク9は、スタブシャフト10により一体に固定され回転体を形成している。
【0025】
このように構成されたガスタービンの作動原理について簡単に説明すると、圧縮機と燃焼器により高温・高圧となった作動流体,すなわち主流ガス20は、静翼1および2によりその高圧のエネルギーを流速のエネルギーに変換し、動翼2および3を回転させる。その回転エネルギーで発電機を回して電気を得るが、一部の回転エネルギーは圧縮機駆動にも用いられる。主流ガス温度は、翼材の許容温度以上であるから高温のガスにさらされる翼部は冷却されなければならない。
【0026】
ここで、第2段静翼3を例に取ってみると、第2段静翼の冷却媒体には、圧縮機吐出流体を冷却器とブースト圧縮機によりそれぞれ冷却および昇圧された冷媒と圧縮途中段抽気流体の2つがあり、前者がクローズド冷却媒体、後者がオープン冷却媒体である。前者のクローズド冷却媒体22は、第2段静翼3の外周側に配置された配管30により供給され、第2段静翼3の冷却を終えた後、外周側の配管31に回収され、ガスタービンケーシング11内を通して最終的には燃焼器入口に供給され圧縮機吐出流体に合流する。
【0027】
一方、後者のオープン冷却媒体23は、外部配管により第2段静翼3の外周とケーシング11で形成されるキャビティ12に供給され、さらにキャビティ12より静翼3の冷却流路に供給され、静翼3の一部を冷却した後、最終的には主流ガス中に放出されるが、そのオープン冷却媒体23の一部は、静翼3の内周側に配置されるダイヤフラム5へ導かれ、第1段動翼2のシャンク部13とダイヤフラム5との隙間14に放出される。
【0028】
すなわち、ホイールスペース用シール媒体23bとして用いられ、この隙間14に主流ガス20が進入してくるのを防ぐ。万が一、この隙間14に高温の主流ガス20が進入して雰囲気温度を上昇させるようなことがあると動翼シャンク部13やダイヤフラム5が高温ガスにより損傷を受けるばかりでなく、ロータディスク7および9やディスクスペーサ8に過剰な熱負荷がかかり、それによる熱応力で寿命の低下を招き、さらには熱変形の発生によりガスタービンの運転を妨げる可能性がある。
【0029】
図2に静翼3を外周側から見た斜視図が示されている。本実施例の静翼は、外周エンドウォール41と内周側エンドウォール48の間に2枚の翼部90aおよび90bを配置する2連翼を採用し、ケーシング内配管本数を削減するために、各翼セグメント当りクローズド冷却媒体供給配管30は1本、クローズド冷却媒体回収配管31は2本で構成される。
【0030】
図3に静翼3の軸方向断面図を示し、さらに詳細な構造が示されている。静翼3の外周側エンドウォール40の部分には、このエンドウォール40とカバー41とでキャビティ42が形成され、そのキャビティ42内には複数のインピンジメント冷却孔を有するインピンジプレート58が外周側エンドウォール冷却面40aとの間に一定の距離を保って配置されている。
【0031】
一方、内周側エンドウォール48の部分には、このエンドウォール48とカバー49とでキャビティ50が形成され、そのキャビティ50内には複数のインピンジメント冷却孔を有するインピンジプレート51が内周側エンドウォール冷却面48aとの間に一定の距離を保って配置されている。
【0032】
また、内周側エンドウォールの部分には、キャビティ50と主流ガスパスとを連通する対流冷却孔52および53が設けられている。第二冷却流路44は外周側エンドウォールカバー41の外側と内周側エンドウォールキャビティ50とを連通するように形成されており、第五流路47の出口91は外周側エンドウォールカバー41の外側まで延長流路56により延長され、冷却媒体回収配管31にスムーズに接続できるよう翼プロファイル外周側延長中央付近おいてクローズド冷却媒体回収配管31に接続されている。
【0033】
さらに、第一冷却流路43と第三冷却流路45は、内周側斜視の図4に示されているように内周側エンドウォール48で、第二冷却流路44には接続しないで、第二冷却流路44を飛び越す様に形成されたバイパス流路54により互いに接続されている。内周側エンドウォールカバー49には、ホイールスペースシール媒体供給接続配管55と接続するベンド95が設けられている。
【0034】
また、第一冷却流路43と第二冷却流路44には、複数のインピンジメント冷却孔を有するコアプラグ60および61が挿入され、第三冷却流路45と第四冷却流路46の冷却面には乱流促進リブ62が、第五冷却流路47にはピンフィン63がそれぞれ配置される。
【0035】
次に、このように構成された第2段静翼3の作動原理を説明すると、クローズド冷却媒体22は、供給配管30により外周側エンドウォールキャビティ42に供給され、インピンジプレート58により外周側エンドウォールをインピンジメント冷却する。外周側エンドウォール冷却の後、クローズド冷却媒体22aは、翼部第一冷却流路43内に配置されたコアプラグ60に導かれ、第一冷却流路43をインピンジメント冷却する。
【0036】
第一冷却流路43を冷却し終えたクローズド冷却媒体22bは、内周側エンドウォール48に設けられたバイパス流路54を通り第三冷却流路45へと導かれる。第三冷却流路45と第四冷却流路46を乱流促進リブ62により対流冷却し、第五冷却流路をピンフィン63により対流冷却した後、クローズド冷却媒体22cは延長流路56を通り、回収配管31に回収される。
【0037】
一方、オープン冷却媒体23は、第二冷却流路44に挿入されているコアプラグ内に供給され、第二冷却流路44をインピンジメント冷却する。第二冷却流路44を冷却し終えた冷却媒体23aは、内周側エンドウォールキャビティ50に導かれる。内周側エンドウォールキャビティ内の一部の冷却媒体23bは、インピンジプレート51により、内周側エンドウォール48をインピンジメント冷却し、さらには内周側エンドウォール48の対流冷却孔52および53により内周側エンドウォール48を冷却し、最終的には主流ガス中に放出される。また、内周側エンドウォールキャビティ内の一部の冷却媒体23cはシール媒体として、ベンド95およびホイールスペースシール媒体供給接続配管55を通り、ダイヤフラム5の上流側に供給される。
【0038】
以上本発明のガスタービン静翼の冷却動作原理について説明してきた。ここで、翼をクローズド冷却する際に留意しなければならないこととして、過冷却の防止がある。クローズド冷却媒体は、翼冷却後に回収配管を通して燃焼器入口に供給され圧縮機吐出媒体と合流するため、ガスタービン効率向上のために翼冷却後の回収温度は圧縮機吐出媒体温度以上、回収配管許容温度以下にする必要があり、その回収温度は一般にオープン冷却媒体の翼冷却後の温度に比べて低い。そのため、前にも述べたように、クローズド冷却媒体は冷却器により冷却されて翼に供給されるため、オープン冷却媒体に比べ供給温度が一段と低く冷却能力が高い。それゆえ、翼外表面をある一定温度以下に冷却しようとした時、翼外表面と冷却面との間に大きな温度差すなわち大きな熱勾配が生じやすくなり、例えば翼冷却流路間パーティションのような両側からクローズド冷却媒体により冷却されてしまうような箇所では翼の他の部分と比べ一層温度が低くなり過冷却が発生しやすくなる。
【0039】
過冷却が発生するとその大きな熱勾配のため過大な熱応力が発生し翼全体の寿命を下げ信頼性を損ないかねない。そこで、本発明では、図5に翼断面構造を示すように、前縁側の熱負荷の高い第一冷却流路43を冷却能力の高いクローズド冷却媒体22により冷却し、冷却方法は冷却したい部分のみインピンジ孔を密に配置して集中的に冷却が可能で、かつ冷却したくない部分にはインピンジ孔を設けないことで冷却能力の調整が可能なインピンジメント冷却を採用している。
【0040】
一方、熱負荷が比較的低く、さらにシール媒体を通すのに温度上昇を抑えることが可能かつ冷却流路面積を比較的大きく確保して圧力損失を小さくできる第二冷却流路44には、オープン冷却媒体23を用いて前記同様の理由で冷却能力の調整が可能なインピンジメント冷却を採用している。ここで、タービン翼の断面は一般に円弧状の前縁から後縁にいくにしたがって翼の厚みは減少する形状を持つ。したがって、各翼冷却流路間を仕切るパーティションは前縁側では長く、後縁側では短くなる。そのため、第一冷却流路43と第二冷却流路44とを仕切るパーティション93や、第二冷却流路44と第三冷却流路45を仕切るパーティション94は細長い形状を持ち、パーティション部は両側に冷却媒体が通り過熱面すなわち翼表面からは遠いためにこの種のパーティション中央部93aや94bでは他の翼部と比べ特に温度が低くなる傾向があるが、本構造では前にも述べたように第一冷却流路43と第二冷却流路44にインピンジメント冷却を採用し、コアプラグ60および61にはこの部分を冷却するようなインピンジメント孔は配置されないため、過冷却が防げられる。
【0041】
また、冷媒供給温度に関して、前にも述べたようにクローズド冷却媒体22の供給温度はオープン冷却媒体23の供給温度に比べ低い。本構造の場合、パーティション93については、第一冷却流路43側はクローズド冷却媒体22が通り、第二冷却流路44側はオープン冷却媒体23が通るように冷却パスが構成されているため、両側を冷却能力が高いクローズド冷却媒体が通る場合に比べさらに過冷却を防止することができる。また、パーティション94についても同様で、第二冷却流路44側はオープン冷却媒体、第三冷却流路側45側はクローズド冷却媒体のため、パーティション93同様に過冷却は防止される。
【0042】
以上説明してきたようにこのようなガスタービンであると、クローズド冷却媒体流路とオープン冷却媒体流路を翼冷却要求に合わせて合理的に形成することが可能で、安定してダイヤフラムにシール媒体を供給できるとともに、翼冷却流路間パーティション部に発生する過冷却防止ができるため翼の温度をより均一にでき、すなわち熱応力の低減が可能で、延いては翼の寿命低下を防止することができる。また、クローズド冷却媒体流路中にオープン冷却媒体を通すチューブ等を挿入するような方式はとらずに済むため、チューブ周りの溶接が無くなり工数が減るとともにクローズド冷却媒体とオープン冷却媒体はそれぞれ冷却流路で完全に分離されているため、クローズド冷却媒体がオープン冷却媒体流路に進入したりしてクローズド冷却の効果を損なうことを防止できる。
【0043】
なお、本発明の構造は2連翼に限らず、単翼、3連翼、4連翼等外周および内周エンドウォール内に翼をいくつ配置するものでも効果に変わりは無く、特に制限されるものではない。
【0044】
次に図6に示した本発明の変形例について説明する。この図は、静翼の要部を断面した図で、第二冷却流路44冷却後の冷却媒体23cの温度がシール媒体として供給するには温度が高すぎる場合には、第二冷却流路44内のコアプラグ61の下端にシール媒体供給孔96を設け、供給孔96を内周側エンドウォールカバー49を超えてベンド95内に差し込むように延長して構成する。
【0045】
このように構成された構造においては、第二冷却流路44冷却後の冷却媒体23cは内周側エンドウォール48のみに使用され、シール媒体としては、コアプラグ61内の翼のインピンジ冷却に使用されなかったすなわち翼冷却により温度上昇していないオープン冷却媒体23dが供給孔96からベンド95に供給され、問題を解決することができる。
【0046】
以上本発明の実施例を説明してきたが、本発明の構造は第2段静翼にかかわらず、他の段の静翼にも適用可能かつ適用効果があり、いずれの場合においても、本発明の構造を用いれば、クローズド冷却媒体冷却流路とオープン冷却媒体冷却流路のパスを複雑な手段を用いず、かつ多くの溶接個所を施すことなく分離でき、適切なパス構成および冷却方法により翼の過冷却を防止してクローズド冷却を実施した利点を損なうことが無い信頼性の高いガスタービンとすることができるのである。
【0047】
【発明の効果】
以上説明してきたように本発明によれば、クローズド冷却媒体流路とオープン冷却媒体流路の分離部の構成が簡単で、冷媒のリークおよび翼部の過冷却を充分防止することが可能なこの種のガスタービンを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の静翼を搭載したガスタービンの一実施例を示す要部断面図である。
【図2】本発明のガスタービン静翼の外周側から見た斜視図である。
【図3】本発明のガスタービン静翼の断面図である。
【図4】本発明のガスタービン静翼を内周側から見た斜視図である。
【図5】本発明のガスタービン静翼の断面図である。
【図6】本発明のガスタービン静翼の変形例を示す要部斜視図である。
【符号の説明】
1…第1段静翼、2…第1段動翼、3…第2段静翼、4…第2段動翼、5…第2段静翼ダイヤフラム、6…ディスタントピース、7…第1段動翼ロータディスク、8…ディスクスペーサ、9…第2段動翼ロータディスク、10…スタブシャフト、11…ガスタービンケーシング、12…キャビティ、13…第1段動翼シャンク部、14…隙間、20…主流ガス、22…クローズド冷却媒体、23…オープン冷却媒体、23b…ホイールスペース用シール媒体、30…クローズ冷却媒体供給配管、31…クローズド冷却媒体回収配管、40…外周側エンドウォール、40a…外周側エンドウォール冷却面、41…外周側エンドウォールカバー、42…外周側キャビティ、43…第一冷却流路、44…第二冷却流路、45…第三冷却流路、46…第四冷却流路、47…第五冷却流路、48…内周エンドウォール、49…内周側エンドウォールカバー、50…内周側キャビティ、51…内周側インピンジプレート、52,53…内周側エンドウォール対流冷却孔、54…バイパス流路、55…接続配管、56…延長流路、58…外周側インピンジプレート、60…第一流路コアプラグ、61…第二流路コアプラグ、62…乱流促進リブ、63…ピンフィン、90a,90b…翼部、91…第五流路出口、93,93a…第一冷却流路と第二冷却流路間のパーティション、94,94b…第二冷却流路と第三冷却流路間のパーティション、95…ベンド、96…第二流路コアプラグ下端のシール媒体供給孔。

Claims (7)

  1. タービン静翼の内部に冷却媒体流通パスを有するとともに、この冷却媒体流通パスに冷却媒体が流通されて静翼が冷却され、かつ静翼冷却後の冷却媒体が、一部は回収され、かつ一部は主流ガス中に放出されるように形成されているガスタービンにおいて、
    前記静翼に複数の冷却媒体流通パスを翼の前縁から後縁にかけて順次並設して設け、前記翼の最前縁および最後縁の冷却媒体流通パスを除く冷却媒体流通パスに、前記主流ガス中に放出される冷却媒体を流通させるように形成するとともに、該冷却媒体流通パスの内少なくとも一つの冷却媒体流通パスは、外部より供給された冷却媒体が流通して静翼を冷却し、冷却後は再び外部に回収され、かつ他の冷却媒体流通パスは、外部より供給された冷却媒体が流通して静翼を冷却し、冷却後はその一部の冷却媒体が前記主流ガス中に放出され、かつ残部の冷却媒体は静翼の内周側に配置されている回転部にシール媒体として供給するように形成したことを特徴とするガスタービン。
  2. タービン静翼の内部に冷却媒体流通パスを有するとともに、この冷却媒体流通パスに冷却媒体が流通されて静翼が冷却され、かつ静翼冷却後の冷却媒体が、一部は回収され、かつ一部は主流ガス中に放出されるように形成されているガスタービンにおいて、
    前記静翼に複数の冷却媒体流通パスを翼の前縁から後縁にかけて順次並設して設け、前記翼の前縁側から第二番目の冷却媒体流通パスに、前記主流ガス中に放出される冷却媒体を流通させるように形成するとともに、該冷却媒体流通パスの内少なくとも一つの冷却媒体流通パスは、外部より供給された冷却媒体が流通して静翼を冷却し、冷却後は再び外部に回収され、かつ他の冷却媒体流通パスは、外部より供給された冷却媒体が流通して静翼を冷却し、冷却後はその一部の冷却媒体が前記主流ガス中に放出され、かつ残部の冷却媒体は静翼の内周側に配置されている回転部にシール媒体として供給するように形成したことを特徴とするガスタービン。
  3. タービン静翼の内部に冷却媒体流通パスを有するとともに、この冷却媒体流通パスに冷却媒体が流通されて静翼が冷却され、かつ静翼冷却後の冷却媒体が、一部は回収され、かつ一部は主流ガス中に放出されるように形成されているガスタービンにおいて、
    前記静翼に複数の冷却媒体流通パスを翼の前縁から後縁にかけて順次並設して設け、前記翼の最前縁側の冷却媒体流通パスおよび翼の前縁側から第三番目およびそれ以降の冷却媒体流通パスを、前記冷却後に回収される冷却媒体の流通路となし、かつ翼の前縁側から第二番目の冷却媒体流通パスを、前記主流ガス中に放出される冷却媒体の流通路となし、かつ前記それぞれの冷却媒体流通パス部にインピンジメント冷却手段を設けるとともに、該冷却媒体流通パスの内少なくとも一つの冷却媒体流通パスは、外部より供給された冷却媒体が流通して静翼を冷却し、冷却後は再び外部に回収され、かつ他の冷却媒体流通パスは、外部より供給された冷却媒体が流通して静翼を冷却し、冷却後はその一部の冷却媒体が前記主流ガス中に放出され、かつ残部の冷却媒体は静翼の内周側に配置されている回転部にシール媒体として供給するように形成したことを特徴とするガスタービン。
  4. タービン静翼の内部に冷却媒体流通パスを有するとともに、この冷却媒体流通パスに冷却媒体が流通されて静翼が冷却され、かつ静翼冷却後の冷却媒体が、一部は回収され、かつ一部は主流ガス中に放出されるように形成されているガスタービンにおいて、
    前記静翼に、翼の前縁から後縁にかけて順次並設されている複数の冷却媒体流通パスを設けるとともに、前記回収される冷却媒体が、翼の前縁側から第一番目の冷却媒体流通パスに供給され、翼前縁部をインピンジメント冷却した後翼の内周側エンドウォール部で、第二番目の冷却流路をバイパスして、第三番目の冷却流路へと導かれ、第三番目以降の冷却流路を通った後後縁冷却流路より翼外部に回収され、かつ前記主流ガス中に放出される冷却媒体が翼の前縁側から第二番目の冷却媒体流通パスに供給され、翼部をインピンジメント冷却し、かつ一部を前記第二番目の冷却流路の冷却に使用せずに、静翼内周部のシール部に直接導くように形成したことを特徴とするガスタービン。
  5. 前記静翼冷却後回収される冷却媒体が流通する冷却媒体流通パスの回収口が、静翼の外周側に設けられている外周側エンドウォール上の翼プロファイル外周側延長中央付近に設けられ、かつ前記外周側エンドウォール上に、後縁冷却流路から前記回収口までを接続する流路が設けられたものである請求項1,2,3または4記載のガスタービン。
  6. 前記外周側エンドウォールをカバーで密閉するとともに、前記回収される冷却媒体が流通する冷却媒体流通パスの供給口を、前記カバー上に設け、かつ供給された冷却媒体で外周側エンドウォールをインピンジメント冷却した後に翼部前縁冷却流路に供給するようにしたものである請求項3,4または5記載のガスタービン。
  7. 前記翼の内周側に設けられている内周側エンドウォールに導かれたオープン冷却媒体で、前記内周側エンドウォールの一部をインピンジメント冷却し、さらに前記内周側エンドウォールの上流側と下流側に配置された対流冷却孔を通して主流ガス中に放出することにより、前記内周側エンドウォールを冷却するようにしたものである請求項3,4,5または6記載のガスタービン。
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