JP4069541B2 - 電力系統情報の表示方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種電力系統の系統状態表示装置、電力系統状態のシミュレーション結果の表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電力系統状態の表示は、系統監視制御システムにおける表示、電力系統計算における結果表示などさまざまな目的で行われているが、通常は、CRTに電力系統構成設備を線分などで表し、これを組合せた2次元の表現方法(電力系統図)が採られている。
この方法は、電力系統の系統構成、接続状態などの把握を迅速に行うことが可能である。しかし、電力系統に付随する潮流、電圧などの物理量の表現には不向きである。現状の電力系統状態表示における物理量の表示は、大きく分けて以下の2通りの方法が行われている。
【0003】
(1)電力系統図上に、文字(数値)情報を併記する方法。
(2)電力系統図とは別の画面に、各物理量ごとの専用画面を設け、数値表示、またはグラフなどの図形表示を行う方法。
また、最近では、3次元表示により各種物理量を表現する方法も検討され始めている。これらの方法は、主としてシミュレーション結果の可視化が目的であり、通常、運用者が見慣れている電力系統図の表現方法とは全く異なることから、迅速な状況把握は到底不可能である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このように従来の数値による表示方法または別画面で表示する方法は、電力系統状態の迅速な把握が困難である。
すなわち、数値表示の方法は、数値情報、文字情報の特徴として厳密な値の把握は可能であるが、直感的な把握には不向きであり、しかも、複数箇所の物理量の比較も迅速には行うことができなかった。また、別画面による表示方法は、系統構成と同時に物理量の把握を行うことができなかった。
【0005】
実際の系統監視制御システムなどにおける表示装置では、上記2つの方法が組み合わされているが、電力系統図の表示と物理量の表示に異なる要素を用いていることが、迅速な状況把握の妨げになっていた。また、電力系統運用においては、物理量だけでなく、その方向や増減傾向の把握も重要であるが、従来の表示方法では、それらを表示すると表示する情報量が増えすぎてしまい、実用的な表示方法の実現は困難であった。
【0006】
また、電力系統の物理量だけでなく、電力系統に事故が発生した場合の緊急時制御においては、第一に事故区間の認識と把握、第二に停電区間への速やかな電力供給が要求される。このような事故時においては、通常は事故によって動作した保護リレーや供給支障量などの情報が数値情報や文字情報として表示されるだけである。特に動作する保護リレー数は一般的に非常に多いため、これらの情報を運用者が把握しやすい形でわかりやすく表現することが望まれていた。
【0007】
さらには、電力系統において、数値計算結果を表示する場合に、計算結果の理解を助けることができるような表示方法が実現できれば、初学者においても大変に有益である。また、系統監視制御システムでは、系統運用の信頼性、安全性、経済性の全ての面において、系統状態の迅速な把握が非常に重要である。このような系統運用、系統制御の自動化レベルを考えると(機器制御以外はほとんど運用者が介在する)、系統状態の迅速な把握の重要性は明らかである。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、電力系統構成と各種物理量を同時に表現し、様々な系統状態の迅速な把握を可能とする電力系統情報視覚化方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
そこで上記課題を解決するために、請求項1の発明では、3次元空間内に表示した電力系統図における表示方法として、ノード電圧、またはノード電圧基準値との偏差を電力系統図平面の上方、または下方に配置した円柱体を用いて表現し、当該ノード電圧、またはノード電圧基準値との偏差の増減傾向に応じて、その円柱体の上面と下面の円の大きさを変更し、円柱体の形状を変更する。
表示方法は以下の通りである。
【0009】
(1)増減傾向の判断
ノード電圧、またはノード電圧基準値との偏差の増減傾向は本表示システムへの入力として与えられる。増減傾向の判断は本発明の要旨ではないので詳細は省略するが、一例として以下の計算式で増減傾向を判断する。
時刻tにおけるノード電圧、またはノード電圧基準値との偏差をV(t)とすると、増減量△V(t)は、下式で表される。なお、n=1の場合は、1ステップ前との差となる。
【0010】
【数1】
【0011】
増減傾向として一定と判断する幅をaとすると、一定傾向の場合は、−a<△V(t)<aとなり、増加傾向の場合は、a≦△V(t)となり、減少傾向の場合は、−a≧△V(t)となる。
(2)一定傾向表示
一定傾向の表示は、3次元表示した電力系統の空間内で、各ノードごとに上向きまたは下向きに円柱体を配置するとともに、当該ノードにおける電圧またはノード電圧基準値との偏差を円柱体の高さにより表示する。これは本出願人による特願平10−209544号と同一の表示である。
【0012】
(3)増加傾向
増加傾向の表示は、ノードに配置された、ノード電圧、またはノード電圧と系統基準電圧との偏差を表す円柱体の上面(ノードに接していない面)の円の半径を増加量に応じて小さくして表示する。
(4)減少傾向表示
減少傾向の表示は、ノードに配置された、ノード電圧、またはノード電圧と系統基準電圧との偏差を表す円柱体の下面(ノードに接している面)の円の半径を減少量に応じて小さくして表示する。
(5)増減の度合い
増加傾向、減少傾向ともに、増減量が大きくなるに伴って円柱体が円錐体の形状に近くなってくるため、増加・減少の判断とともに増減の度合いの判断も可能となる。
【0013】
次に、請求項2の発明では、3次元空間内に表示した電力系統図における表示方法として、ノード電圧、またはノード電圧基準値との偏差を電力系統図平面の上方、または下方に配置した円柱体を用いて表現し、当該ノード電圧、またはノード電圧基準値との偏差の増減傾向に応じて、あらかじめ設定した規則に従いその円柱体の表示色を変更する。
表示方法は以下の通りである。
【0014】
(1)増減傾向の判断
これは請求項1の発明における増減傾向の判断と同一であるので説明を省略する。
(2)一定傾向表示
一定傾向の表示は、3次元表示した電力系統の空間内で、各ノードごとに上向きまたは下向きに円柱体を配置するとともに、当該ノードにおける電圧またはノード電圧基準値との偏差を円柱体の高さにより表示する。これは本出願人による特願平10−209544号と同一の表示である。
なお、ノードに配置された、ノード電圧、またはノード電圧と系統基準電圧との偏差を表す円柱体の表示色は例えば黄色で表現する。
【0015】
(3)増加傾向表示
増加傾向の表示は、ノードに配置された、ノード電圧、またはノード電圧と系統基準電圧との偏差を表す円柱体の表示色を、増加量に応じて赤色に変更する。表示色の変更はRGBの比率を連続的に変化させることにより、基準色(この場合は黄色)から増加色(この場合は赤色)に徐々に連続的に変化する。
(4)減少傾向表示
減少傾向の表示は、ノードに配置された、ノード電圧、またはノード電圧と系統基準電圧との偏差を表す円柱体の表示色を、減少量に応じて青色に変更する。表示色の変更はRGBの比率を連続的に変化させることにより、基準色(この場合は黄色)から減少色(この場合は青色)に徐々に連続的に変更する。
【0016】
(5)増減の度合い
増加傾向、減少傾向ともに、増減量が大きくなるに伴って円柱体の表示色が黄色から徐々に赤色、または青色に連続的に変更されるため、増加・減少の判断とともに増減の度合いの判断も可能となる。
【0017】
次に、請求項3の発明では、3次元空間内に表示した電力系統図における表示方法として、ノード有効電力、ノード無効電力を電力系統図平面の上方、または下方に配置した球体を用いて表現し、その球体を透過色で表示し、さらにその内部にもう一つの球体を配置し、増減傾向の大きさに応じて内部の球体の大きさを変更することで当該ノードの有効電力、無効電力の増減傾向を表現する。
表示方法は以下の通りである。
【0018】
(1)増減傾向の判断
これは請求項1の発明における増減傾向の判断を、ノード電圧、偏差からノード有効電力、ノード無効電力に置き換えたものであり、判断の手順は同一であるのでその説明を省略する。
(2)一定傾向表示
一定傾向の表示は、内部の球体の直径を外側の球体の直径の50%として表示する。
【0019】
(3)増加傾向表示
増加傾向の表示は、内部の球体の直径を増加量に応じて徐々に大きく表示する。ただし、最大で外側の球体の直径の80%程度とする。
(4)減少傾向表示
減少傾向の表示は、内部の球体の直径を減少量に応じて徐々に小さく表示する。ただし、最小で外側の球体の直径の20%程度とする。
(5)増減の度合い
増加傾向、減少傾向ともに、増減量が大きくなるに伴って内部の球体の大きさが連続的に変更されるため、増加・減少の判断とともに増減の度合いの判断も可能となる。
【0020】
次に、請求項4の発明では、3次元表示した電力系統の空間内で、各ノードごとにその上方または下方に球体を配置するとともに、当該ノードにおける有効電力または無効電力の大きさを球体の直径により表示し、かつ有効電力または無効電力が増大または減少傾向にある場合に球体を予め設定されている表示色に変更して表示する。
表示方法は、請求項2の発明における電圧を有効電力、無効電力に置き換えるとともに円柱体を球体に置き換えたものであるので説明を省略する。
【0021】
次に、請求項5の発明では、3次元空間内に表示した電力系統図における表示方法として、ブランチ有効電力潮流、ブランチ無効電力潮流を電力系統図平面上に配置した円柱体を用いて表現し、その円柱体の形状を、円柱体の両端から中心に向かって直径を連続的に変更することで、当該ブランチの有効電力潮流、無効電力潮流の増減傾向を表現する。
表示方法は以下の通りである。
【0022】
(1)増減傾向の判断
これは請求項1の発明における増減傾向の判断を、ノード電圧からブランチ有効電力潮流、ブランチ無効電力潮流に置き換えたものであるので説明を省略する。
(2)一定傾向表示
一定傾向の表示は、3次元表示した電力系統の空間内で、各ブランチごとに水平方向に円柱体を配置するとともに、当該ブランチにおける有効電力潮流または無効電力潮流の大きさを、円柱体の直径により表示する。これは本出願人による特願平10−209544号と同一の表示である。
【0023】
(3)増加傾向表示
増加傾向の表示は、ブランチの円柱体の直径を、両端から中央部に向かって増加量に応じて徐々に大きく、中央になるにしたがって太くなるように表示する。
(4)減少傾向表示
減少傾向の表示は、ブランチの円柱体の直径を、両端から中央部に向かって減少量に応じて徐々に小さく、くびれた形状に表示する。
(5)増減の度合い
増加傾向、減少傾向ともに、増減量が大きくなるに伴って円柱体の中央部の膨らみとくびれが連続的に大きくなるため、増加・減少の判断とともに増減の度合いの判断も可能となる。
【0024】
次に、請求項6の発明では、3次元空間内に表示した電力系統図における表示方法として、各ブランチごとに水平方向に円柱体を配置するとともに、当該ブランチにおける有効電力潮流または無効電力潮流の大きさを、円柱体の直径により表示し、かつ有効電力潮流または無効電力潮流が増大または減少傾向にある場合に円柱体を予め設定されている表示色に変更して表示する。
表示方法は、請求項2の発明における電圧をブランチにおける有効電力潮流または無効電力潮流に置き換えるとともに上下方向の円柱体を水平方向の円柱体に置き換えたものであるので説明を省略する。
【0025】
次に、請求項7の発明では、ノード電圧位相を表現する方法として、任意に選択した基準ノードの電圧位相と、任意に選択した複数のノードの電圧位相とを正弦波カーブにより表現し、基準ノードの位相に対する位相差を視覚的に表現する。
(1)任意の基準ノードの設定電圧系統運用においては、無停電系統切り替えを行なう時に系統分離点となる遮断器の両端のノードの電圧位相角を比較し、その差が小さい場合には切り替え可能、差が大きい場合には切り替え不能という判断が行われる。
【0026】
このため、本発明では、まず比較対象となる任意の基準ノードを選択する。
(2)任意の比較ノードの設定
(1)で設定した基準ノードと比べたい比較ノードを選択する。
(3)ノード電圧位相の表示
(1)、(2)で選択した表示対象ノードについて、それぞれの位相を重ね合わせて正弦波図形でグラフを表示する。複数ノード間の位相差を瞬時に把握することができる。
【0027】
次に、請求項8の発明では、平面的に広がる電力系統を3次元空間内に表示させるために、通常は表示の基準となる基準平面上にノード、ブランチを配置するが、本発明では、表示対象系統の一部分系統、または、任意のノード、ブランチなどの電力系統設備ごとに表示する基準平面を変更する。
具体的な方法を図1を参照しつつ以下に示す。
(1)基準平面
まず、3次元空間1の基準平面2を(x、y、z0)と表す。高さを表すz軸方向を一定(z0)とし、x方向、y方向には任意の位置に配置可能であることを表す。
【0028】
(2)個別基準平面
表示対象系統の一部分系統、または、任意のノード、ブランチなどの電力系統設備ごとに表示する個別基準平面3を(x、y、z1)〜(x、y、zn)とする。基準系統の任意の属性に対する部分系統、または、任意のノード、ブランチなどの電力系統設備の任意の属性値の差をn、またnを3次元空間のz座標軸の基準値z0との差に変換する式をf(n)とすると、個別基準平面は、下式で算出される。
【0029】
【数2】
(x、y、zn)=(x、y、z0)+(0、0、f(n))
【0030】
更に、請求項8の発明は、電力系統に事故が発生した場合に停電区間への電力供給を行うための部分系統の供給力の大きさにより、表示位置を高さ方向に変更し、供給力が大きいほど高い位置に表示するようにしたものである。具体的には、以下のようになる。
【0031】
(1)基準平面
3次元系統図の表示を行なう基準平面を(x、y、z0)と表す。高さを表すz軸方向を一定(z0)とし、x方向、y方向には任意の位置に配置可能であることを表す。基準平面に表示する部分はいろいろと考えられるが、ここでは、一例として停電区間を表示することとする。
【0032】
(2)供給余力の算出
電力系統の事故が発生した場合は、保護装置(保護リレー)により事故を検出し遮断器をトリップさせる。このため、電力系統には、充電されている充電区間と、停電した停電区間が発生する。停電区間の中には、事故が起こった事故区間(○○送電線など)と事故区間ではないが停電している波及停電区間がある。
電力系統の運用者は、迅速に停電区間へ充電区間から電力供給を行なうために、電力系統の接続構成を切り替える必要がある。
【0033】
一般的に二次系統の場合は、放射状系統となっているため、停電区間への電力供給個所を切り替えることにより、復旧させることができる。充電区間であっても、事故前から供給していた区間があるため、どのくらいの供給余力があるのかを把握する必要がある。本発明では、この供給余力を視覚化する方法を提供する。
供給余力は以下の方法で算出する。
【0034】
▲1▼供給可能な充電区間の選定
停電区間に隣接する充電区間(常時は開状態の遮断器で電気的に接続されていない)を調べる。調べる方法については本発明の要旨ではないので省略するが、一般的には停電区間と充電区間を分離している常時開の遮断器から系統接続状態を探索し、当該充電区間の一次バンクに達し、かつ、電気的に接続された区間を全て網羅するように行なわれる。探索の際には、探索のスタート地点から一次バンクに達するまでの経路が記録される。
【0035】
図2の例では、A変電所母線5の事故により、母線保護リレー(BP)が動作し、遮断器(CB)がトリップしている。その結果、送電線AB−1L、送電線AB−2L、B変電所母線6、D変電所、E変電所が波及停電区間となっている。充電区間は送電線BC−1L、送電線BC−2L、C変電所母線7、C変電所一次バンク8、F変電所、G変電所である。停電区間に隣接する充電区間の探索では、常時開の遮断器から送電線BC−1L、送電線BC−2L、C変電所母線7、C変電所一次バンク8に達する経路が記録される。
【0036】
▲2▼充電区間の供給余力の算出
供給余力の算出方法については本発明の要旨ではないが、一例としては、▲1▼の処理により選定された充電区間について、スタート地点から一次バンクまでの経路上(復旧可能経路)で、送電線、一次バンクの抽出を行なう。抽出された設備の設備容量、運用限度値など、送電可能な量を表す指標の値から、現在、送電している潮流量を除くと、復旧可能経路上の送電線、一次バンクの供給余力が算出される。この中の最小値、またはいずれかの値を当該充電区間の供給余力とする。
【0037】
図2の例では、C変電所一次バンク8の容量は100MW、C変電所一次バンク8から現在送電している潮流量はF変電所負荷(20MW)、G変電所負荷(20MW)である。従ってC変電所一次バンク8における充電区間の供給余力は100−(20+20)=60MWである。
(3)充電区間の表示位置の算出
充電区間を表示する個別基準平面を(x、y、z1)〜(x、y、zn)とする。上述の各充電区間の供給余力をa1〜an、a1〜anを3次元空間のz座標値の基準値z0との差に変換する式をf(an)とすると、個別基準平面は、下式で算出される。
【0038】
【数3】
(x、y、zn)=(x、y、z0)+(0、0、f(an))
【0039】
図3の例では、A変電所母線、AB−1L、AB−2L、B変電所母線、D変電所、E変電所を3次元空間1内の基準平面2(x、y、z0)上に配置し、BC−1L、BC−2L、C変電所母線、C変電所一次バンク、F変電所、G変電所を個別基準平面3(x、y、zn)上に配置する。
【0040】
次に、請求項9の発明は、電力系統に事故が発生した場合に、電力系統内の設備に事故が発生した可能性や確度を表す量の大きさにより、表示位置を高さ方向に変更し、事故の可能性や確度が高いほど高い位置、または低い位置に表示する。具体的には、以下のようになる。
【0041】
(1)基準平面
3次元系統図の表示を行なう基準平面を(x、y、z0)と表す。高さを表すz軸方向を一定(z0)とし、x方向、y方向には任意の位置に配置可能であることを表す。基準平面に表示する部分はいろいろと考えられるが、ここでは、一例として事故が無い区間を表示することとする。
【0042】
(2)事故確度の算出
電力系統の事故が発生した場合は、保護装置(保護リレー)により事故を検出し遮断器をトリップさせる。この時、動作したリレーが複数ある場合、各リレーの保護範囲が重なっている区間ほど事故の可能性が高いと判断できる。一般的に、事故区間判定エキスパートシステムなどでは、保護リレーの保護範囲をデータベース化しており、例えば「保護リレーAは、送電線方向に4区間を保護する」というように表現されている。
【0043】
本発明では、動作した保護リレーの保護範囲の重なり数を事故確度と定義する。また、事故確度が1以上となった区間を事故候補区間とする。
図4の例では、送電線BC−1Lに短絡永久事故が発生し、B変電所のBC−1L端で50Sリレー動作、C変電所のBC−1L端で50Sリレー動作が動作したが、B変電所BC−1L端にCBが誤不動作のため、B変電所のBC−1L端では44S2リレーも動作する。しかし、CB誤不動作により事故遮断ができないため、A変電所AB−1L、AB−2L端の44S2リレーの後備保護動作により事故遮断する。
【0044】
一般的に50Sリレーの保護範囲は1区間(例えば、B変電所BC−1L端の50SではBC−1L)、44S2リレーの保護範囲は4区間(例えば、A変電所AB−1Lの保護範囲は、AB−1L、B変電所母線、BC−1L、BC−2L、D変電所母線までとなる。なお、BC−1L、BC−2Lは1区間と数える)である。通常、動作リレーの保護範囲に含まれる区間を事故候補区間と呼ぶが、このケースの事故候補区間は、AB−1L、AB−2L、D変電所、B変電所母線、BC−1L、BC−2L、C変電所母線となる。
【0045】
それぞれの設備を保護範囲とする動作リレーとその数(事故確度)は以下となる。
【0046】
(3)事故候補区間の表示位置の算出
事故候補区間を表示する個別基準平面を(x、y、z1)〜(x、y、zn)とする。上述の各事故区間の事故確度をa1〜an、a1〜anを3次元空間のz座標値の基準値z0との差に変換する式をf(an)とすると、個別基準平面は、下式で算出される。
【0047】
【数4】
(x、y、zn)=(x、y、z0)+(0、0、f(an))
【0048】
図4の例では、以下のようになる。
(x、y、z0)平面に配置する設備:A変電所母線5とその電源側区間(図の左側)
(x、y、z1)平面に配置する設備:AB−1L、AB−2L、D変電所
(x、y、z2)平面に配置する設備:B変電所母線6、BC−2L
(x、y、z3)平面に配置する設備:C変電所母線7
(x、y、z4)平面に配置する設備:無し
(x、y、z5)平面に配置する設備:BC−1L
【0049】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を説明する。
請求項1の発明については、ノード電圧の変動傾向に関する表現方法の実施例を以下に示す。
図5、図6において、10はCRT表示装置の表示画面であり、11は3次元表示された電力系統の空間に相当する。12は直方体(ほぼ角棒状)で表現されたノードであり、このノード12におけるノード電圧は円柱体13によって表示され、その軸方向の高さが電圧の大きさを示している。これにより、電力系統全体や各ノードにおけるノード電圧分布、大小比較が容易になる。下記実施例は、ノードに限定して本発明の表現方法を実現したものである。
【0050】
ノード電圧を表す円柱体13は、ノードを表す横置きの直方体12の上に配置されており、電圧傾向が一定であれば、円柱体13は一様な太さであるが、電圧が減少傾向にある場合は、図5の実施例のようにノードに接している側がすぼまった形となり、電圧がノードに吸い込まれていくようなイメージ、すなわち減少していくイメージを直感的に把握しやすい。
電圧が増加傾向にある場合は、図6の実施例のようにノードに接していない側の上面14がすぼまった形となり、電圧が上昇していくようなイメージを直感的に把握しやすい。
【0051】
請求項5の発明については、実施例2として、ブランチ有効電力潮流、無効電力潮流の変動傾向に関する表現方法を以下に示す。
下記実施例では、ブランチに限定して本発明による表現方法を実現したものである。図7、図8おいて、ブランチ有効電力潮流は横置きの円柱体15で表現されており、図5、図6と同様に電力系統の空間11内に表示されている。潮流が減少傾向にある場合は、図7に示されるように、潮流量を表す円柱体15の中央部を細く表示することで潮流が少なくなっている様子を直感的に把握できる。
【0052】
また、潮流が増加傾向にある場合は、図8に示すように円柱体15の中央部を太く表示することで潮流が増加傾向にあることが直感的に把握できる。なお、有効電力潮流の大きさは、円柱体15の直径によって表現され、また、円柱体15の一端には、円錐体16が付加されて潮流方向を示している。さらに、円柱体15の外側には透過色からなる円柱体17が同心状に表示されており、この円柱体17の直径がブランチの設備容量の大きさを表現している。
【0053】
次に、請求項7の発明についての実施例3について説明する。この実施例3は、ノード電圧位相について表現した例であり、図9がその表示例である。図では、表示画面20上に、2つのノードの電圧位相を正弦波21,22として表示したものである。図では、基準ノード名としてNormal Node51、比較ノード名としてNormal Node41としており、それぞれの電圧位相角は、-15.56度、-24.53度であり、二つのノードの位相角差は、-8.96度である。すなわち、Normal Node41は、Normal Node51に対して、8.96度の遅れがあることになる。このように、複数のノード間の位相差を交流波形の形状である正弦波の形状で表現することにより、イメージが把握しやすくなる。
【0054】
【発明の効果】
以上述べたように、請求項1、請求項2の発明は、ノード電圧の変動傾向の表現方法に関するものである。また、請求項3、請求項4の発明は、ノード有効電力、ノード無効電力の変動傾向に関するものである、請求項5、請求項6の発明は、ブランチの潮流の変動傾向に関するものである。
現状の表示方法では、系統図上に矢印などの図形を付加して各種物理量の変動傾向を表示して表示が複雑になるため、実際には表示装置に増減傾向が表示されている例はほとんど無い。
【0055】
しかし、系統運用においては、電圧、潮流、負荷などの変動傾向を知ることは非常に重要である。例えば、事故時の停電個所復旧の例では、他系統から停電個所を復旧する場合に、切り替え先の系統の供給力が若干少な目であるが、現在負荷が減少中であり、これから更に少なくなることが判断できれば、切り替えを実施することができる。
【0056】
これに対して本発明では、物理量を表現している図形の大きさ(円柱体の高さ、直径、球体の直径など)により物理量の大きさを表現し、形状、表示色により変動傾向を表現しているため、電力系統図に新たな表示図形要素を追加する必要が無い。また、大きさの増減傾向を運用者が持つ定性的なイメージを表現しているため、直感的な把握が可能となる。
【0057】
また、請求項7の発明は、ノード電圧位相の表現方法に関するものである。現状の表示方法によれば、ノード電圧位相角は、電力系統図の母線(ノード)近くに数値表示されている。または、専用画面での一覧表示である。このような方法では、ノード間の位相差を知りたい場合に直感的に分かりにくい。これに対して本発明では、位相差を正弦波形状のグラフ表示とすることにより、直感的に把握することが可能となる。
【0058】
請求項8の発明は、電力系統内の属性値の違いにより、電力系統図を表示する高さを可変とすることで、電力系統の状態把握を可能とするものである。2次元での表現では平面上にすべての情報を表現しなければならないため、表現できる情報量に限界がある。また、ある程度以上の量の情報を表現すると、表示が困難となり視認性が著しく悪化してしまう。
これに対して、3次元での表現では平面的な情報に加えて高さ方向の表現を加えることにより表現する情報量を視認性良く増加させることが可能となる。
【0059】
すなわち、本発明では、上記の考え方を電力系統事故時の系統状態把握に適用して視覚化する。事故時の復旧は運用者が経験的に判断を行ない、どこから停電個所へ送電するか等を決定している。しかし、現状の系統状況の表示システムでは、上述のような判断は非常に熟練した運用者でなければ正しい判断は困難である。本発明による表現方法では、停電区間に電力を供給するための余力を直ちに確認できるため、事故時の復旧に対して非常に有効な補助情報を提供することが可能となる。
【0060】
請求項9の発明も同様に、上記請求項8の考え方を電力系統事故時の系統状態把握に適用して視覚化したものである。事故時には、上述のようにまず、停電区間の迅速な復旧が要求され、続いて、事故の可能性がある事故候補区間の中から本当に事故が起きた事故区間を見つけださなければならない。一般的に、事故の発生により各種保護リレーが数多く動作し、遮断器をトリップさせるため、事故区間を判定することは非常に困難である。特に、多重事故(複数個所に同時に事故が発生した場合)や保護リレー、遮断器の誤動作、誤不動作などの可能性もあるため、熟練運用者でも容易な作業ではない。
【0061】
また、エキスパートシステム技術などを適用した事故区間判定システムの実用化例もあるが、推論速度が遅い、推論結果が多数出力され候補を絞り込めないなの問題があり、より迅速に概略の判断ができるシステムが望まれている。
これに対して、本発明では、事故の無い充電されている区間より、低い位置、または高い位置に事故候補区間を表示する。事故候補区間の中で事故の可能性が高い区間ほど、低くまたは高く表示することで、最も低い位置、または最も高い位置に表示されている区間が最も事故の可能性が高い区間となる。このように、直感的に電力系統の事故の状態を把握することが可能となり、事故時の系統運用にとって非常に有益となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】請求項8の発明の表示の概念を示す図である。
【図2】請求項8の発明が適用される事故系統例を示す図である。
【図3】請求項8の発明の表示の概念を示す図である。
【図4】請求項9の発明が適用される事故系統例を示す図である。
【図5】請求項1の発明の電圧減少時の表示例を示す図である。
【図6】請求項1の発明の電圧増加時の表示例を示す図である。
【図7】請求項5の発明の潮流減少時の表示例を示す図である。
【図8】請求項5の発明の潮流増加時の表示例を示す図である。
【図9】請求項7の発明の表示例を示す図である。
【符号の説明】
1 3次元空間
2 基準平面
3 個別基準平面
4 一次バンク
5〜7 母線
8 一次バンク
10 表示画面
11 電力系統空間
12 ノード
13 円柱体
14 上面
15 円柱体
16 円錐体
17 円柱体
Claims (9)
- 電子計算機システムにより電力系統の構成及び電力系統の物理量を表示装置の画面上に表示する電力系統情報の表示方法において、
3次元表示した電力系統の空間内で、各ノードごとに上向きまたは下向きに円柱体を配置するとともに、当該ノードにおける電圧またはノード電圧基準値との偏差を円柱体の高さにより表示し、かつ電圧またはノード電圧基準値との偏差が増大または減少傾向にある場合に円柱体の一方の端面の径を他方の端面の径よりも拡大または縮小して表示することを特徴とした電力系統情報の表示方法。 - 電子計算機システムにより電力系統の構成及び電力系統の物理量を表示装置の画面上に表示する電力系統情報の表示方法において、
3次元表示した電力系統の空間内で、各ノードごとに上向きまたは下向きに円柱体を配置するとともに、当該ノードにおける電圧またはノード電圧基準値との偏差を円柱体の高さにより表示し、かつ電圧またはノード電圧基準値との偏差が増大または減少傾向にある場合に円柱体を予め設定されている表示色に変更して表示することを特徴とした電力系統情報の表示方法。 - 電子計算機システムにより電力系統の構成及び電力系統の物理量を表示装置の画面上に表示する電力系統情報の表示方法において、
3次元表示した電力系統の空間内で、各ノードごとにその上方または下方に透過色により表示される外部球体とその内側に包含される内部球体とを配置するとともに、当該ノードにおける有効電力または無効電力の大きさを外部球体の直径により表示し、かつ有効電力または無効電力が増大または減少傾向にある場合に内部球体の径を拡大または縮小して表示することを特徴とした電力系統情報の表示方法。 - 電子計算機システムにより電力系統の構成及び電力系統の物理量を表示装置の画面上に表示する電力系統情報の表示方法において、
3次元表示した電力系統の空間内で、各ノードごとにその上方または下方に球体を配置するとともに、当該ノードにおける有効電力または無効電力の大きさを球体の直径により表示し、かつ有効電力または無効電力が増大または減少傾向にある場合に球体を予め設定されている表示色に変更して表示することを特徴とした電力系統情報の表示方法。 - 電子計算機システムにより電力系統の構成及び電力系統の物理量を表示装置の画面上に表示する電力系統情報の表示方法において、
3次元表示した電力系統の空間内で、各ブランチごとに水平方向に円柱体を配置するとともに、当該ブランチにおける有効電力潮流または無効電力潮流の大きさを円柱体の直径により表示し、かつ有効電力潮流または無効電力潮流が増大または減少傾向にある場合に円柱体の中央部分の径を両端よりも拡大または縮小して表示することを特徴とした電力系統情報の表示方法。 - 電子計算機システムにより電力系統の構成及び電力系統の物理量を表示装置の画面上に表示する電力系統情報の表示方法において、
3次元表示した電力系統の空間内で、各ブランチごとに水平方向に円柱体を配置するとともに、当該ブランチにおける有効電力潮流または無効電力潮流の大きさを円柱体の直径により表示し、かつ有効電力潮流または無効電力潮流が増大または減少傾向にある場合に円柱体を予め設定されている表示色に変更して表示することを特徴とした電力系統情報の表示方法。 - 電子計算機システムにより電力系統の構成及び電力系統の物理量を表示装置の画面上に表示する電力系統情報の表示方法において、
選択された互いに異なる2つのノードの一方を基準ノードして他方を比較ノードとして両者の電圧位相を正弦波図形として重畳表示することを特徴とした電力系統情報の表示方法。 - 電子計算機システムにより電力系統の構成及び電力系統の物理量を表示装置の画面上に表示する電力系統情報の表示方法において、
3次元表示した電力系統の空間内で、電力系統図を構成する要素を部分系統とし、当該部分系統を、電力系統に事故が発生した場合の部分系統から停電区間への電力供給の余力の大きさに応じて異なる高さに配置することを特徴とする電力系統情報の表示方法。 - 電子計算機システムにより電力系統の構成及び電力系統の物理量を表示装置の画面上に表示する電力系統情報の表示方法において、
3次元表示した電力系統の空間内で、電力系統図を構成する各要素を、電力系統に事故が発生した場合に電力系統内の設備の事故の可能性または確度を表す量に応じて異なる高さに配置することを特徴とする電力系統情報の表示方法。
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