JP4069133B2 - 生物試料に含まれる目的遺伝子を増幅する方法 - Google Patents

生物試料に含まれる目的遺伝子を増幅する方法 Download PDF

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本発明は、生物試料に含まれる目的遺伝子を増幅する方法に関する。特に本発明は、細胞1個からでも、mRNAの抽出、精製をおこなうことなく、効率良く目的遺伝子を増幅することができる方法に関する。特に、本発明は、抗体遺伝子や抗原受容体遺伝子、中でも、抗体遺伝子や抗原受容体遺伝子の可変領域を増幅する方法として有用である。
抗体遺伝子の可変領域は非常に多様性に富んでいるため、1組のプライマーセットだけでは全ての可変領域を網羅することができない。そのため、抗体遺伝子の可変領域を増幅するには、可変領域に由来する数種類のプライマーを混合して用いたPCRが行われてきた。
抗体遺伝子を増幅するための手法は、ワン(Wang)らが1個のB細胞から抗体遺伝子を増幅する方法を報告している(非特許文献1)。この方法では、可変領域の5'側に設計したプライマーと定常領域の5'側に設計したプライマーとの間でPCRによる増幅を行う。しかしながら、抗体遺伝子の可変領域には幾つかのファミリーが存在しており、ワン(Wang)らはそれぞれのファミリーに対応したプライマーをそれぞれ設計し、それらを1つのPCR反応液に混ぜて使用している。そのためPCRの反応液中に多種多量のプライマーが存在する事から、増幅効率は低く、非特異的産物の増幅も多いという欠点があった。さらに、それぞれのファミリーに対応したプライマーを設計して用いても、実際には、全ての可変領域を網羅することはできず、網羅されなかった抗体遺伝子は増幅しないという欠点もあった。
5'RACE法はフローマン(FROHMAN)らによって確立され(非特許文献2)、今日までに遺伝子を単離する1つの方法として定着している。しかしながら、従来、5'RACE法はmRNAを抽出、精製してから行われており、1個の細胞から遺伝子を単離する場合にはmRNA が微量であることから、5'RACE法が1個の細胞からの遺伝子の単離に適用されたことはなかった。
Xiaowei Wang, B. David Stollar, Human immunoglobulin variable region gene analysis by single cell RT-PCR, Journal of Immunological Methods 244 (2000) 217-225 MICHAEL A. FROHMAN, MICHAEL K. DUSH, AND GAIL R. MARTIN, Rapid production of full-length cDNAs from rare transcripts: Amplification using a single gene-specific oligonucleotide primer, Proc. Nati. Acad. Sci. USA 85 (1988) 8998-9002
抗体医薬等の免疫系の診断や治療の分野では、1つの細胞に由来する特定の抗体遺伝子や抗原受容体遺伝子を単離、増幅したい、という希望があるが、上述のように、ワン(Wang)らの方法では、種々の問題があった。
そこで、本発明の目的は、1つの細胞から、抗体遺伝子や抗原受容体遺伝子を、煩雑な操作を必要とせず、かつ効率よく、単離、増幅する方法を提供することにある。
上述のように、5'RACE法は、遺伝子を単離する方法として優れた方法であるが、mRNAを抽出、精製する工程が必須であり、1つの細胞から目的遺伝子を単離、増幅するには不向きであり、実際に、1つの細胞から目的遺伝子を単離、増幅するために使用された例は報告がない。
本発明者らは、5'RACE法の利点を生かしつつ、1つの細胞からでも、目的遺伝子を単離、増幅することができる方法について種々検討を重ねた結果、本発明に到達した。
[1](1)生物試料をジチオスレイトールの存在下、逆転写反応に供し、RNA-DNA複合体を調製し、
(2)得られたRNA-DNA複合体のDNA鎖の3'端にポリGを形成するテーリング反応を、マグネシウムイオンを含有するTris-HClバッファー中で行い、
(3)ポリG を形成したRNA-DNA複合体のDNA鎖を鋳型とし、かつオリゴ-dCアダプター(オリゴ-dCアダプターは、オリゴ-dC部と(4)におけるPCRのプライマーの少なくとも一部と同一の配列を有するアダプター部とを含む)を一方のプライマーとして2本鎖DNA合成を行い、
(4)得られた2本鎖DNA 中のオリゴ-dCアダプターを含んでいる1本鎖DNAを鋳型とし、かつ上記アダプターに含まれる配列を一方のプライマーとしてさらにPCRを行うことを含み、さらに
(1)において、上記抗体遺伝子H鎖のMu及びGamma、L鎖のLambda及びKappaの定常領域に設計した4つのプライマーの混合物を用い、
(1)において調製したRNA-DNA複合体を、逆転写反応の基質と分離することを含む精製をすることなしに(2)においてテーリング反応を行い、かつ
(2)におけるテーリング反応は、反応液中のdGTP濃度をdATP、dCTP及びdTTPの濃度より2倍以上高くする、
ことを含む、1つのB細胞に含まれる抗体遺伝子のH鎖およびL鎖の両方を増幅する方法。
[2](1)生物試料をジチオスレイトールの存在下、逆転写反応に供し、RNA-DNA複合体を調製し、
(2)得られたRNA-DNA複合体のDNA鎖の3'端にポリGを形成するテーリング反応を、マグネシウムイオンを含有するTris-HClバッファー中で行い、
(3)ポリG を形成したRNA-DNA複合体のDNA鎖を鋳型とし、かつオリゴ-dCアダプター(オリゴ-dCアダプターは、オリゴ-dC部と(4)におけるPCRのプライマーの少なくとも一部と同一の配列を有するアダプター部とを含む)を一方のプライマーとして2本鎖DNA合成を行い、
(4)得られた2本鎖DNA 中のオリゴ-dCアダプターを含んでいる1本鎖DNAを鋳型とし、かつ上記アダプターに含まれる配列を一方のプライマーとしてさらにPCRを行う
ことを含み、さらに
(1)において、上記抗原受容体遺伝子のα鎖及びβ鎖の定常領域に設計した2つのプライマーの混合物を用い、
(1)において調製したRNA-DNA複合体を、逆転写反応の基質と分離することを含む精製をすることなしに(2)においてテーリング反応を行い、かつ
(2)におけるテーリング反応は、反応液中のdGTP濃度をdATP、dCTP及びdTTPの濃度より2倍以上高くする、
ことを含む、
1つのT細胞に含まれる抗原受容体遺伝子のα鎖およびβ鎖の両方を増幅する方法。
[3](1)〜(3)の反応は、1つの容器で、反応用試薬及び酵素を前記容器に順次追加することで行う、[1]または[2]に記載の方法。
[4](3)における2本鎖DNA合成は、ポリG鎖を形成したdGTPの濃度を、それ以外のdNTPの濃度の10倍以下にして行う[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[5](4)におけるPCRは、ポリ鎖を形成したdGTPの濃度を、それ以外のdNTPの濃度の5倍以下にして行う[1]〜[4]のいずれかに記載の方法。
[6](4)のPCRの後に、(5)ネステッドPCRを行う[1]〜[5]のいずれかに記載の方法。
[7](1)〜(4)または(1)〜(5)の反応をマグネシウムイオンの存在下で行う請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
[8](1)における逆転写反応の反応溶液の容量を1〜5μlの範囲とし、
(3)における2本鎖DNA合成の反応溶液の容量を25〜100μlの範囲とする[1]〜[7]のいずれかに記載の方法。
本発明の方法は、1個の細胞からでも5'RACEが行えるという、新しい手法である。従来、ワン(Wang)らの方法では、可変領域に設計した多種のプライマーをPCRの反応液中に入れる必要があった。しかし、本発明の方法では、可変領域に設計するプライマーの代わりにアダプタープライマーを用い、それと定常領域に設計したプライマーと併せて2種類のプライマーのみで抗体遺伝子をPCR法を用いて増幅させることが可能である。
さらに、従来の5'RACE法ではmRNAを抽出、精製する。さらに、そこから5'RACE用の鋳型を作成するまでの各段階で精製を行う必要があった。しかし、本発明の方法では、逆転写反応液に細胞を直接入れ、その同じチューブを用いて途中の精製を行わないで5'RACE用の鋳型を作成することができる。また実施例では1個の細胞から目的遺伝子を増幅させているが、1個以上の細胞でも同様に実施できることは確認している。
本発明は、生物試料に含まれる目的遺伝子を増幅する方法に関し、少なくとも(1)逆転写反応、(2)テーリング反応、(3) 2本鎖DNA合成、(4)PCRの工程を含む。本発明の方法の説明図を図1に示す。尚、後述するように、図2は、(1)逆転写反応におけるプライマーとしてポリTを用いる場合(参考例)であり、図1は、ポリTの代りにGSP-RT(増幅したい遺伝子に特異的なプライマー)を(1)逆転写反応におけるプライマーとして用いる場合(本発明)である。
(1)逆転写反応
工程(1)では、生物試料を逆転写反応に供し、RNA-DNA複合体を調製する。
生物試料は、特に制限はないが、例えば、リンパ球、受精卵、癌細胞、胚性幹細胞(ES細胞)、 または神経細胞等であることができる。さらに、生物試料は、1つの細胞であることができ、本発明の方法は、1つの細胞からでも生物試料に含まれる目的遺伝子を増幅することができる。
生物試料とそこに含まれる目的遺伝子の例としては、例えば、生物試料がリンパ球の場合、目的遺伝子の例としては、抗体遺伝子及びT細胞受容体遺伝子を挙げることができる。即ち、生物試料がB細胞であれば、目的遺伝子は抗体遺伝子であり、生物試料がT細胞であれば、目的遺伝子は抗原受容体遺伝子である。生物試料が癌細胞の場合、目的遺伝子の例としては、癌遺伝子及び腫瘍抑制遺伝子を挙げることができる。生物試料が受精卵の場合、目的遺伝子の例としては、分化、発生に関わる遺伝子を挙げることができる。生物試料が神経細胞の場合、目的遺伝子の例としては、分化、受容体、回路、シナプスに関わる遺伝子を挙げることができる。生物試料が胚性幹細胞(ES細胞)の場合、目的遺伝子の例としては、胚性幹細胞に含まれる全ての遺伝子を挙げることができる。
逆転写反応は、常法によって行うことができる。具体的には、逆転写酵素として、例えば、SuperScriptIIIを用いることができる。但し、SuperScriptIII以外の逆転写酵素を用いることもできる。
逆転写反応のプロトコルは、後述の実施例において具体的に記載する。逆転写反応に用いる各試薬は、以下の通りである。
通常の逆転写反応は、全てのmRNAに共通するポリAの相補的配列であるポリTがプライマーとして用いられる(図2、参考例)。但し、本発明では、ポリTの代りに、GSP-RTをプライマーとして用いる (図1)。ポリTの代りにGSP-RTを用いることで、増幅効率が上昇する。
5x 1st strand Buffer(Invitrogen)は、375mMのKClならびに、15mMのMgCl2を含む250mMのTris-HCl pH8.3バッファーである。5x 1st strand Buffer以外に、市販の逆転写酵素用のバッファーも適宜利用できる。
dNTP量は、逆転写酵素に添付されている説明書の記載等を考慮して、適宜決定できる。例えば、0.2〜0.5mMの範囲とすることができる。具体的には、2.5mM dNTPの溶液を用意し、これを適当量添加して、濃度調整することができる。
NP40は、界面活性剤であり、細胞を溶解させてRNAを抽出することを目的として添加する。NP40量は、細胞を溶解してRNAを抽出できる量であること等を考慮して、適宜決定できる。例えば、0.1〜1%の範囲とすることができる。具体的には、2.5% NP40の溶液を用意し、これを適当量添加することができる。
BSAは、酵素の安定化を目的として添加する。BSA量は酵素が安定化できる量等を考慮して、適宜決定でき、一般には、0.1mg/ml程度で、酵素を安定化できる。従って、例えば、1mg/ml BSAの溶液を用意し、これを適当量添加することができる。
DTT(ジチオスレイトール) は、逆転写酵素とRNase阻害剤の安定化を目的として添加する。DTT量は逆転写酵素に添付されている説明書の記載等を考慮して、適宜決定できる。ジチオスレイトールは抗酸化剤で、酵素やその他のスルフヒドリル基を含むタンパク質の安定化に用いられる。DTTが存在しないと、逆転写酵素やRNase阻害剤(RNaseOUTなど)の活性が著しく落ちる場合がある。本発明では、10mM前後を添加することが好ましい。例えば、0.1M DTT の溶液を用意し、これを適当量添加することができる。
RNaseOUT(Invitrogen)は、RNaseの働きを抑え、RNAが分解するのを防ぐことを目的として添加する。RNaseOUT量は添付の説明書の記載等を考慮して、適宜決定できる。RNaseOUTを加えるのは、どの試薬にもRNaseが含まれている可能性が僅かでもあり、また、細胞の中にもRNaseが含まれているからである。細胞をNP40で溶解させた場合、結果的に反応溶液にRNaseが混入するため、それらRNaseの働きを抑えるために加える。例えば、RNaseOUT (40Unit/μl)の溶液を用意し、これを適当量添加することができる。
SuperScriptIII(Invitrogen)量は、添付の説明書の記載等を考慮して、適宜決定できる。例えば、SuperScriptIII (200Unit/μl)の溶液を用意し、これを適当量添加することができる。
最後に、DEPC (Dietyl Pyrocarbonate)-H2O [RNaseの不活性処理を行ったH20を適当量加える。DEPC-H2O の添加量は、反応液の全体量等を考慮して、適宜決定できる。
逆転写反応の温度及び時間は、逆転写酵素の添付の説明書の記載等を考慮して、適宜決定できる。実施例においては、55℃で1時間行った。
(2)テーリング反応
工程(2)では、(1)で得られたRNA-DNA複合体のDNA鎖の3'端にポリGを形成するテーリング反応を行う。工程(2)では、(1)において調製したRNA-DNA複合体を、逆転写反応の基質と分離することを含む精製をすることなしに、テーリング反応を行う。
(2)におけるテーリング反応は、ポリ鎖を形成するdNTPの濃度を、それ以外の各dNTPの濃度の2倍以上とする。dNTPはdGTPを示す。但し、テーリング反応は、ポリ鎖がポリGである場合には、反応液中のdGTP濃度をdATP、dCTP及びdTTPのいずれのdNTPの濃度より2倍以上高くする。
従来の5'RACE法ではmRNAを抽出、精製し、またそこから5'RACE用の鋳型を作成するまでの各段階で精製を行う必要があった。従来の5'RACE法では、逆転写反応の基質であるdNTPから逆転写生成物を分離し、その後、テーリング反応を行う。しかしながら、本発明の方法では、逆転写反応液に細胞を入れ、逆転写反応後、そのままの反応液を用いて、精製を行わないでテーリング反応を行う。精製を行わないでテーリング反応を行えるのは、上記のように、ポリ鎖を形成するdNTPの濃度を、それ以外のdNTPの濃度の2倍以上とするからである。
テーリング反応のプロトコルは、後述の実施例において具体的に記載する。テーリング反応に用いる各試薬は、以下の通りである。
10xL Bufferは、100mMのMgCl2ならびに、10mMのDTTを含む100mMのTris-HCl pH 7.5バッファーであり、テーリング反応に用いるバッファーである。このバッファーはテーリング反応に必要な金属イオン(マグネシウムイオン)を含んでいる。
dNTP は、どの塩基のポリ鎖を形成するのかに応じて適宜決定し、例えば、ポリGを形成する場合、dNTP としては、dGTPを用いる。図1及び2には、ポリGを形成した例が記載されている。また、dNTPの濃度は、上述のように、ポリ鎖を形成するdNTPの濃度を、それ以外のdNTPの濃度の2倍以上とする。
TdT(Terminal deoxynucleotidyl transferase)の量は、添付の説明書の記載等を考慮して、適宜決定できる。例えば、TdT (15Unit/μl)の溶液を用意し、これを適当量添加することができる。
TdTによるテーリング反応の温度及び時間は、TdTの添付の説明書の記載等を考慮して、適宜決定できる。実施例においては、37℃で1時間行った。尚、本発明において、テーリング反応は、(1)で得られたRNA-DNA複合体をそのまま用いて行うことができる。但し、(1)で得られたRNA-DNA複合体をRNaseHで処理して、RNAを分解した後に、テーリング反応を行うこともできる。
(3)2本鎖DNA合成
(3)の2本鎖DNA合成は、ポリGを形成したRNA-DNA複合体のDNA鎖を鋳型とし、かつオリゴ-dNアダプターを一方のプライマーとして行う。オリゴ-dNアダプターのdNのNはCを示す。また、オリゴ-dNアダプターは、オリゴ-dN部と(4)におけるPCRのプライマーの少なくとも一部と同一の配列を有するアダプター部とを含む。オリゴ-dN部の塩基は、テーリング反応において形成したポリ鎖に相補的な塩基を選ぶ。図1及び2では、ポリ鎖がポリGであるから、オリゴ-dN部は、ポリCである。また、アダプター部の配列は、PCRによる増幅が容易であり、かつ非特異的産物が増幅しないように配列を決定する。アダプターの配列については、Ozawa et al., J Hum Genet 49:102-105, 2004及びOzawa et al., J Hum Genet 49:154-165, 2004を参照することができる。
オリゴ-dNアダプターは、前述の非特許文献2に記載の5'RACE法において、既に、知られたものであり、本発明においては、オリゴ-dN部の塩基及びアダプター部の配列を、適宜変更して、用いることができる。また、2本鎖DNA合成自体は、PCR法によって行うことができる。
(3)における2本鎖DNA合成のためのPCRは、常法により行うことができる。但し、ポリ鎖を形成したdNTPの濃度が、それ以外のdNTPの濃度の10倍以下になるように、dNTPを添加して行うことが、PCR法をスムーズに行うという観点から、好ましい。
2本鎖DNAを合成する際には、(2)においてテーリング反応させて得られた反応液にプライマーとしてオリゴdN-アダプターのみを加え、その後、PCRを行うことができる。但し、オリゴdN-アダプターに加えて、GSP1を反応液に加えて増幅することもできる。但し、オリゴdN-アダプターを反応液に加える方法の方が、最終的に増幅効率が良い傾向がある。
本発明の方法では、上記(1)〜(3)の反応は、1つの容器で、反応用試薬及び酵素を前記容器に順次追加することで行うことができる。即ち、各反応生成物を精製することなく、逐次実施することができる。
(4)PCR
(4)のPCRは、(3)で得られた2本鎖DNA 中のオリゴ-dNアダプターを含んでいる1本鎖DNAを鋳型とし、かつオリゴ-dNアダプターに含まれる配列の少なくとも一部を一方のプライマーとしてさらに行う。オリゴ-dNアダプターに含まれる配列を一方のプライマーとしてPCRを行うことで、5'側のプライマーを設計する必要がないという利点がある。図1及び2においては、オリゴ-dNアダプターに含まれる配列の一部を含むプライマーはAP1及びAP2で示され、他方のプライマーはGSP1及びGSP2として示される。GSP1及びGSP2の配列は、増幅したい遺伝子を考慮して選択される。抗体遺伝子の可変領域を増幅する場合、抗体遺伝子の定常領域の配列の相補鎖をプライマーとする。また、AP1及びAP2は、アダプターの一部または全部の配列と同一の配列を有する。
(4)におけるPCRは、常法により行うことができる。但し、ポリ鎖を形成したdNTPの濃度を、それ以外のdNTPの濃度の5倍以下になるように、dNTPを添加して行うことが、PCR法をスムーズに行うという観点から、好ましい。
(5)ネステッドPCR
本発明の方法では、(4)のPCRの後に、ネステッドPCRを行うことが好ましい。ネステッドPCRは、(4)のPCRで用いたプライマーより内側になるようにデザインされたプライマーを用いて行われる。ネステッドPCRを行うことで、非特異的に増幅した配列を排除することができ、非特異的断片の混入がより排除された目的遺伝子を増幅することができる。ネステッドPCRは、常法により行うことができる。
(1)〜(4)または(1)〜(5)の反応は、マグネシウムイオンの存在下で行うことが好ましい。(1)に使用する逆転写酵素、(2)に使用するTdT(Terminal deoxynucleotidyl transferase)、(3)〜(5)に使用するDNAポリメラーゼは、金属イオンにより活性化の程度が相違する。また、金属イオンは、種類によっては、RNAに対する分解性も有する。本発明の方法は、好ましくは、(1)〜(3)の反応は、1つの容器で、反応用試薬及び酵素を前記容器に順次追加することで行うが、金属イオンとして、マグネシウムイオンを用いれば、逆転写酵素、TdT及びDNAポリメラーゼが所定の活性を示し、RNAが分解されて、目的遺伝子が得られない、という事態も回避できる、という利点がある。
マグネシウムイオンの濃度は、TdTの添付説明書や過去の論文を考慮し、テーリング反応に最適な濃度を考慮し、適宜決定できる。カタログには、Mg2+の濃度は、一般に8〜10mMで用いていると記載されており、また10xL Bufferを用いる場合にもMg2+の濃度は、10mMになるように用いる。従って、Mg2+の濃度は、10mM前後に設定することが適当である。
本発明の方法では、生物試料が1つの細胞であっても、目的遺伝子を増幅することができ、さらに、(1)〜(3)の反応は、1つの容器で行うことができる。この場合、(1)における逆転写反応の反応溶液の容量を、例えば、1〜5μlの範囲とし、(3)における2本鎖DNA合成の反応溶液の容量が25〜100μlの範囲となるように、各工程における試薬の濃度及び添加量を調整することが好ましい。
上記(4)または(5)の後、目的遺伝子は、反応液から分離され、必要により精製される。目的遺伝子の分離及び精製は、常法により行うことができる。目的遺伝子の分離及び精製としては、例えば、ゲル抽出やカラム精製等を挙げることができる。ゲル抽出は、PCRを行いアガロースゲル電気泳動後に目的DNAの部位を切り出し、ゲルを溶解させてDNAを抽出する方法である。カラム精製は、PCRを行いセファデックス等のスピンカラムを用いて精製する方法である。いずれも未反応、未使用のdNTPとプライマーを除くため、またゲル抽出では複数の増幅産物があった場合に目的の産物だけを得るために行うことができる。
分離及び精製された目的遺伝子は、例えば、塩基配列の決定、発現ベクターへ組み込み、目的遺伝子の機能解析などに利用することができる。目的遺伝子の塩基配列決定は、プラスミドベクターに組み込んだ後に行うか、PCR産物をプラスミドベクターに組み込まないで直接PCR産物のまま行うかの、2通りの方法で行うことができる。ベクターに組み込んだ方が正確で綺麗に読めるが、目的クローンを得るのに時間がかかる。反面、ベクターに組み込まないと短時間で塩基配列が決定できるが、単一のPCR産物でないと、塩基配列は読めない。したがって、これらの点を考慮して、何れの方法を採用するか決定することができる。分離及び精製された目的遺伝子は、発現ベクターへ組み込み細胞などに発現させ、タンパク質を得、さらに、得られたタンパク質の機能解析を行うことができる。目的遺伝子が抗体遺伝子の場合、単離した抗体(タンパク質)が、目的の抗原に結合するか、調べることができる。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
以下に、実施例において用いた、本発明の方法の各工程の基本条件を示す。
(1)逆転写反応
B cell 〜0.075 μl
GSPmix (0.5 pmol-each/μl) 0.5 μl
5x 1st strand Buffer 0.5 μl (Invitrogen)
2.5mM dNTP 0.1 μl
2.5 % NP40 0.25 μl
1mg/ml BSA 0.25 μl
0.1M DTT 0.25 μl
RNaseOUT (40Unit/μl) 0.0375 μl (Invitrogen)
SuperScriptIII (200Unit/μl) 0.0375 μl (Invitrogen)
DEPC-H 2 O 0.5 μl
total 2.5 μl
上記反応液を用いて、55℃で1hr逆転写反応を行った。尚、ここでGSPmixは抗体遺伝子の定常領域に設計したプライマー4つを混ぜた物である。
(2)テーリング反応
反応液(1) 2.5 μl
10xL Buffer 1 μl (ToYoBo)
10mM dGTP 2.0 μl
TdT (15 unit/μ) 0.5 μl (Invitrogen)
dH 2 0 4 μl
total 10 μl
上記反応液を用いて、37℃で1hr、TdTによるテーリング反応を行った。反応液(1)は、(1)の逆転写反応で得られた反応液である。
(3)2本鎖DNA合成
反応液(2) 10 μl
2xLA Taq Buffer II 25 μl (TaKaRa)
2.5mM dNTP 4 μl
Oligo-dC-アダプター (50pmol/μl) 0.5 μl
LA Taq (5 unit/μl) 0.25 μl (TaKaRa)
dH 2 O 10.75 μl
total 50 μl
上記反応液を用いて、下記条件でPCR反応を行い、2本鎖DNA合成を行った。反応液(2)は、(2)のテーリング反応で得られた反応液である。
94℃で3minの後
94℃で30sec、60℃で30sec、72℃で3minを20cycle
72℃で4min
(4)PCR反応
反応液(3) 5 μl
2xLA Taq Buffer I 5 μl (TaKaRa)
2.5mM dNTP 1.2 μl
AP1 (10pmol/μl) 0.45 μl
GSP1 (10pmol/μl) 0.45 μl
LA Taq (5 unit/μl) 0.075 μl (TaKaRa)
dH 2 0 2.825 μl
total 15 μl
上記反応液を用いて、下記条件でPCR反応を行った。反応液(3)は、(3)の2本鎖DNA合成で得られた反応液である。
94℃で3minの後
94℃で30sec、60℃で30sec、72℃で2minを25cycle
72℃で3min
(5)ネステッドPCR
50倍に希釈した反応液(4) 2 μl
2xLA Taq Buffer I 7.5 μl (TaKaRa)
2.5mM dNTP 1.2 μl
AP2 (10pmol/μl) 0.45 μl
GSP2 (10pmol/μl) 0.45 μl
LA Taq (5 unit/μl) 0.075 μl (TaKaRa)
dH 2 0 3.325 μl
total 15 μl
上記反応液を用いて、下記条件でPCR反応(ネステッドPCR)を行った。反応液(4)は、(4)のPCR反応で得られた反応液である。
94℃で3minの後
94℃で30sec、60℃で30sec、で72℃で2minを30cycle
72℃で3min
用いたプライマーの配列は以下の表1に示す通りである。
表1に示す配列中のDはA または G または Tであり、NはA または G または T または Cであり、YはCまたは Tであり、RはA または Gである。
最初のh-はヒト、m-はマウスの抗体遺伝子を指す。
逆転写反応時に用いたGSPmixはRTと付いているプライマーをそれぞれ0.5 pmol/μlずつになるように混ぜたものである。
Oligo-dC-アダプターは、2本鎖DNA合成(2nd strandの合成)に用いた。
AP1と1stと付いているプライマーは、(4)のPCR(1stPCR)で用いた。
AP2とNestと付いているプライマーは、特異性を高めるために、ネステッドPCRで用い、gammaは抗体遺伝子重鎖のガンマ、kappaは抗体遺伝子軽鎖のカッパ、lambdaは抗体遺伝子軽鎖のラムダ、muは抗体遺伝子重鎖のミュー
のそれぞれの定常領域に由来するプライマーである。
例えば、ヒト抗体遺伝子軽鎖のカッパを増やすときは、1stPCRにAP1とh-kappa-1stを用い、ネステッドPCRにAP2とh-kappa-Nestを用いた。
実施例1
[ヒト抗体重鎖遺伝子の実施例]
1個のヒトBリンパ球をチューブに移し、本発明の5'RACEを適応して反応を行った。すなわち、上記条件で(1)逆転写反応、(2)テーリング反応、(3)2本鎖DNA合成、(4)PCR反応及び(5)ネステッドPCRを行った。尚、PCRにはヒト抗体重鎖遺伝子の定常領域の塩基配列に由来するプライマーを用いた(h-mu-1stを1st PCR、h-mu-NestをNested-PCRに用いた)。
5個のリンパ球について反応を行い、PCR産物をアガロースゲルにて電気泳動した結果を図3に示す。図3では、2,4,5において増幅産物が観察された。これらをプラスミドベクターに組み込み、塩基配列を決定したところ、確かにヒト抗体重鎖遺伝子の可変領域に由来する塩基配列であった。そのなかでも4,5は、ワン(Wang)らが用いた1回目のPCRに用いているプライマーよりも上流の塩基配列を得ることができたことから、確かにこの方法は抗体遺伝子の可変領域にプライマーを設計せずに、可変領域を効率よく増幅する事ができることが、明かとなった。
実施例2
[テーリング反応の基質濃度を変化させた時の実施例]
上記の実施例と比べて(2)テーリング反応及び(3) 2本鎖DNA合成(2nd strandを合成)する際のアダプター(AとT、GとCがそれぞれペアになるようにしている)が異なっている。
テーリング反応は、以下の条件に代えた。
反応液(1) 2.5 μl
10xL Buffer 1 μl (ToYoBo)
基質* 2.0 μl
TdT (15 unit/μl) 0.5 μl (Invitrogen)
dH 2 0 4 μl
total 10 μl

37℃で1hr、TdTによるテーリング反応を行った。
*ここで基質に、
10mM、3.3mM、1.1mM、0.37mM、2.5mM、0.63mM、0.16mM、または0.04mMのdGTP
10mM、2.5mM、0.63mM、0.16mM、または0.04mMのdCTP
10mM、2.5mM、または0.63mMのdATP
10mM、2.5mM、または0.63mMのdTTP
の基質、もしくは基質の代わりにdH20を2 μl加えた。
また用いたアダプターの塩基配列は、以下の表2に示す。
表2に示す配列中、BはG または Tまたは Cであり、HはA または Tまたは Cであり、VはAまたは G または Cであり、NはA または G または T または Cである。
実施例2-1
[dGTPを用いた実施例]
1個のヒトBリンパ球をチューブに移し、本発明の方法を実施した。テーリング反応の際基質となるdGTPは、10mMのdGTP、2.5mMのdGTP、0.63mMのdGTP、0.16mMのdGTP、もしくは0.04mMのdGTPをそれぞれ2 μlずつ加えた。それぞれの濃度の反応はduplicateで行った。PCRにはヒト抗体軽鎖遺伝子の定常領域の塩基配列に由来するプライマーを用いた(h-kappa-1stとh-lambda-1stを混ぜたものを1st PCR、h-kappa-Nestとh-lambda-Nestを混ぜたものをNested-PCRに用いた)。それぞれのリンパ球について反応を行い、PCR産物をアガロースゲルにて電気泳動した結果を図4に示す。図4では、1から8は増幅産物が観察されたが、9,10ではスメアとなり特異的な増幅産物を得ることができなかったことから、テーリング反応時に加えたdGTP量が少なすぎて反応が進行しないことが明かとなった。この結果から、dGTP濃度は、他のdNTP濃度の2倍以上であることが、良好なテーリング反応を行うという観点から好ましいことが分かる。
実施例2-2
[dCTPを用いた実施例]
1個のマウスBリンパ球チューブに移し、本発明案の5'RACEを適応して反応を行った。テーリング反応の際基質となるdCTPは、10mMのdCTP、2.5mMのdCTP、0.63mMのdCTP、0.16mMのdCTP、もしくは0.04mMのdCTPをそれぞれ2 μlずつ加えた。それぞれの濃度の反応はtriplicateで行った。PCRにはマウス抗体軽鎖遺伝子の定常領域の塩基配列に由来するプライマーを用いた(m-kappa-1stとm-lambda-1stを混ぜたものを1st PCR、m-kappa-Nestとm-lambda-Nestを混ぜたものをNested-PCRに用いた)。それぞれのリンパ球について反応を行い、PCR産物をアガロースゲルにて電気泳動した結果を図5に示す。図5では、16,17,18ではスメアとなりdGTPの時と同様特異的な増幅産物を得ることができなかった。この結果から、dCTP濃度は、他のdNTP濃度の2倍以上であることが、良好なテーリング反応を行うという観点から好ましいことが分かる。
実施例2-3
[dATPを用いた実施例]
1個のマウスBリンパ球チューブに移し、本発明案の5'RACEを適応して反応を行った。テーリング反応の際基質となるdATPは、10mMのdATP、2.5mMのdATP、もしくは0.63mMのdATPをそれぞれ2μlずつ加えた。それぞれの濃度の反応はtriplicateで行った。PCRにはマウス抗体軽鎖遺伝子の定常領域の塩基配列に由来するプライマーを用いた(m-kappa-1stとm-lambda-1stを混ぜたものを1st PCR、m-kappa-Nestとm-lambda-Nestを混ぜたものをNested-PCRに用いた)。それぞれのリンパ球について反応を行い、PCR産物をアガロースゲルにて電気泳動した結果を図6に示す。図6では、7,8,9ではスメアとなりdGTPの時と同様特異的な増幅産物を得ることができなかった。この結果から、dATP濃度は、他のdNTP濃度の6倍以上であることが、良好なテーリング反応を行うという観点から好ましいことが分かる。
実施例2-4
[dTTPを用いた実施例]
1個のマウスBリンパ球チューブに移し、本発明案の5'RACEを適応して反応を行った。テーリング反応の際基質となるdTTPは、10mMのdTTP、2.5mMのdTTP、もしくは0.63mMのdTTPをそれぞれ2μlずつ加えた。それぞれの濃度の反応はtriplicateで行った。PCRにはマウス抗体軽鎖遺伝子の定常領域の塩基配列に由来するプライマーを用いた(m-kappa-1stとm-lambda-1stを混ぜたものを1st PCR、m-kappa-Nestとm-lambda-Nestを混ぜたものをNested-PCRに用いた)。それぞれのリンパ球について反応を行い、PCR産物をアガロースゲルにて電気泳動した結果を図7に示す。図7では、7,8,9ではスメアとなりまた、4,5,6は増幅産物も認められたが、全体的にスメアになっていることから、dGTPの時と同様特異的な増幅産物を得ることができなかった。この結果から、dTTP濃度は、他のdNTP濃度の21倍以上であることが、良好なテーリング反応を行うという観点から好ましいことが分かる。
実施例3
新たに合計43個のB細胞について上記実施例1と同じ方法で抗体遺伝子の増幅を行った。その結果、43個のB細胞より23個のH鎖、28個のL鎖が増幅し、19個のB細胞についてはH鎖、L鎖ともに増幅し、結果を図8に示す。
具体的には、健常人ボランティアより採血をし、Ficollを用いたリンパ球分離を行った(Jelinek, D.F. and P.E. Lipsky. 1987. Comparative activation requirements of human peripheral blood, spleen, and lymph node B cells. J Immunol 139:1005-1013.の方法)。分離したリンパ球にCD2,CD14,CD16,glycophorin Aのマイクロビーズを付け、Automated Magnetic Cell Sortingを用いてB細胞以外(先のビーズがついたもの)とB細胞 (先のビーズがついていないもの)に分離し、上記43個のB細胞を得た。これらのB細胞について、実施例1と同様の方法で、(1)逆転写反応、(2)テーリング反応、(3)2本鎖DNA合成反応、(4)PCR反応及び(5)ネステッドPCR反応を行い得られた増幅産物について電気泳動を行い、43個のB細胞について結果(H鎖(上段)、L鎖(下段))を図8に示す。
図8に示した43サンプルのうち、23サンプルでH鎖が増幅し(53.4%)、28サンプルでL鎖が増幅(65.1%)し、そのうち、H鎖、L鎖の両方増幅したのが19サンプル(44.2%)であった。合計43サンプルの50%前後でH鎖および/またはL鎖が増幅した。
原理的に言うと全てのB細胞はH鎖およびL鎖の遺伝子を含んでいる。しかしながら単一のB細胞由来の非常に僅かなmRNAを用いている事から、必ずしもすべてのB細胞について、H鎖およびL鎖の遺伝子が増幅する訳ではない。従来の方法(非特許文献1のワン(Wang)らの方法)を用いた場合、本発明者らの検討結果では、H鎖、L鎖それぞれの増幅効率は40〜50%程度であり、H鎖とL鎖がいずれも増幅する増幅効率は30〜40%程度である。(一方が増えていた場合、他方が増える確率は高いので、単純に50%×50%=25%とはならない。)
ワンらの方法では可変領域にプライマーを設計するので、たくさんある可変領域の全てを調べて、それに合うプライマーを設計しなくてはならず、可変領域を全て網羅する事は難しい。それに対して、本発明の方法では、共通のプライマーを用い、個別のプライマーを設計及び用意することなしに上記従来法と同等以上の増幅効率が得られ、非常に優れた方法であるといえる。このように、本発明の方法は、全ての可変領域を網羅してそれらの遺伝子の増幅を従来法と同程度以上の増幅効率で行え、かつその増幅は、遺伝子の5'末端まで行えるという利点がある。
実施例4
[ヒトT細胞受容体遺伝子の実施例]
1個のヒトTリンパ球をチューブに移し、本発明の5'RACEを適応して反応を行った。
即ち、健常人ボランティアより採血をし、Ficollを用いたリンパ球分離を行い、さらにAutoMACSを用いてTリンパ球を分離した(Jelinek, D.F. and P.E. Lipsky. 1987. Comparative activation requirements of human peripheral blood, spleen, and lymph node B cells. J Immunol 139:1005-1013.の方法)。得られたTリンパ球について、実施例1と同様の方法で、(1)逆転写反応、(2)テーリング反応、(3)2本鎖DNA合成反応、(4)PCR反応及び(5)ネステッドPCR反応を行った。
ただし、PCRにはヒトT細胞受容体遺伝子の定常領域の塩基配列に由来するプライマーを用いた(TCR-alpha-1st及びTCR-beta-1stを1st PCR、TCR-alpha-Nest及びTCR-beta-NestをNested-PCRに用いた)。
用いたプライマーの塩基配列は以下の通りである。ただし、2本鎖DNA合成に用いるOligo-dC-adaptorと1st,NestPCRに用いるAP1,AP2は表1に示したものである。
T細胞受容体遺伝子を増幅する際の逆転写反応時に用いたGSPmixは、RTと付いているプライマーをそれぞれ0.5pmol/mlずつになるように混ぜたものである。
例えば、T細胞受容体遺伝子alpha鎖を増やすときには、1stPCRにAP1とTCR-alpha-1stを用い、Nested-PCRにAP2とTCR-alpha-Nestを用いた。
16個のリンパ球について反応を行い、PCR産物をアガロースゲルにて電気泳動した結果を図9に示す。図9では3、4、16においてα鎖、4、10、12、13、16においてβ鎖の増幅産物が観察された。これをプラスミドベクターに組み込み、塩基配列を決定したところ、確かにヒトT細胞受容体遺伝子の可変領域に由来する塩基配列であった。
従来抗原特異的T細胞受容体を同定するために、細胞の株化が行われてきたが、株化は時間がかかり、網羅的なレパートリー解析には不適であった。しかしながら本方法を用いる事で迅速に効率よくT細胞受容体遺伝子を解析することが可能となった。
本発明の方法は、例えば、抗体遺伝子や抗原受容体遺伝子を、1個の細胞からでも増幅して、抗体や抗原受容体の作成(発現)に利用することが可能になる。
逆転写反応に、増幅したい遺伝子に特異的なプライマーGSP-RTを用いた本発明の方法の説明図。 逆転写反応に、オリゴdTプライマーを用いた本発明の方法の説明図。 実施例1におけるヒト抗体重鎖遺伝子の増幅結果(電気泳動)。 dGTPを用いた実施例2-1の電気泳動結果。 dCTPを用いた実施例2-2の電気泳動結果。 dATPを用いた実施例2-3の電気泳動結果。 dTTPを用いた実施例2-4の電気泳動結果。 実施例3における遺伝子(H鎖(上段)及びL鎖(下段))の増幅結果(電気泳動)。 実施例4における遺伝子(α鎖及びβ鎖)の増幅結果(電気泳動)。

Claims (8)

  1. (1)生物試料をジチオスレイトールの存在下、逆転写反応に供し、RNA-DNA複合体を調製し、
    (2)得られたRNA-DNA複合体のDNA鎖の3'端にポリGを形成するテーリング反応を、マグネシウムイオンを含有するTris-HClバッファー中で行い、
    (3)ポリG を形成したRNA-DNA複合体のDNA鎖を鋳型とし、かつオリゴ-dCアダプター(オリゴ-dCアダプターは、オリゴ-dC部と(4)におけるPCRのプライマーの少なくとも一部と同一の配列を有するアダプター部とを含む)を一方のプライマーとして2本鎖DNA合成を行い、
    (4)得られた2本鎖DNA 中のオリゴ-dCアダプターを含んでいる1本鎖DNAを鋳型とし、かつ上記アダプターに含まれる配列を一方のプライマーとしてさらにPCRを行うことを含み、さらに
    (1)において、上記抗体遺伝子H鎖のMu及びGamma、L鎖のLambda及びKappaの定常領域に設計した4つのプライマーの混合物を用い、
    (1)において調製したRNA-DNA複合体を、逆転写反応の基質と分離することを含む精製をすることなしに(2)においてテーリング反応を行い、かつ
    (2)におけるテーリング反応は、反応液中のdGTP濃度をdATP、dCTP及びdTTPの濃度より2倍以上高くする、
    ことを含む、1つのB細胞に含まれる抗体遺伝子のH鎖およびL鎖の両方を増幅する方法。
  2. (1)生物試料をジチオスレイトールの存在下、逆転写反応に供し、RNA-DNA複合体を調製し、
    (2)得られたRNA-DNA複合体のDNA鎖の3'端にポリGを形成するテーリング反応を、マグネシウムイオンを含有するTris-HClバッファー中で行い、
    (3)ポリG を形成したRNA-DNA複合体のDNA鎖を鋳型とし、かつオリゴ-dCアダプター(オリゴ-dCアダプターは、オリゴ-dC部と(4)におけるPCRのプライマーの少なくとも一部と同一の配列を有するアダプター部とを含む)を一方のプライマーとして2本鎖DNA合成を行い、
    (4)得られた2本鎖DNA 中のオリゴ-dCアダプターを含んでいる1本鎖DNAを鋳型とし、かつ上記アダプターに含まれる配列を一方のプライマーとしてさらにPCRを行う
    ことを含み、さらに
    (1)において、上記抗原受容体遺伝子のα鎖及びβ鎖の定常領域に設計した2つのプライマーの混合物を用い、
    (1)において調製したRNA-DNA複合体を、逆転写反応の基質と分離することを含む精製をすることなしに(2)においてテーリング反応を行い、かつ
    (2)におけるテーリング反応は、反応液中のdGTP濃度をdATP、dCTP及びdTTPの濃度より2倍以上高くする、
    ことを含む、
    1つのT細胞に含まれる抗原受容体遺伝子のα鎖およびβ鎖の両方を増幅する方法。
  3. (1)〜(3)の反応は、1つの容器で、反応用試薬及び酵素を前記容器に順次追加することで行う、請求項1または2に記載の方法。
  4. (3)における2本鎖DNA合成は、ポリ鎖を形成したdNTPの濃度を、それ以外のdNTPの濃度の10倍以下にして行う請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. (4)におけるPCRは、ポリ鎖を形成したdNTPの濃度を、それ以外のdNTPの濃度の5倍以下にして行う請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. (4)のPCRの後に、(5)ネステッドPCRを行う請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. (1)〜(4)または(1)〜(5)の反応をマグネシウムイオンの存在下で行う請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. (1)における逆転写反応の反応溶液の容量を1〜5μlの範囲とし、
    (3)における2本鎖DNA合成の反応溶液の容量を25〜100μlの範囲とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
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