JP4068933B2 - 熱現像感光材料 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は熱現像感光材料に関し、特にヨウ化銀含量の高いハロゲン化銀乳剤を用いた熱現像感光材料に関するものであり、感度が大幅に改善され、かつ低かぶりで現像処理後の画像保存性が優れた熱現像感光材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、医療分野や印刷製版分野において環境保全、省スペースの観点から写真現像処理のドライ化が強く望まれている。これらの分野では、デジタル化が進展し、画像情報をコンピューターに取り込み、保存、そして必要な場合には加工し、通信によって必要な場所で、レーザー・イメージセッターまたはレーザー・イメージャーにより感光材料に出力し、現像して画像をその場で作成するシステムが急速に広がってきている。感光材料としては、高い照度のレーザー露光で記録することができ、高解像度および鮮鋭さを有する鮮明な黒色画像を形成することがが必要とされている。このようなデジタル・イメージング記録材料としては、インクジェットプリンター、電子写真など顔料、染料を利用した各種ハードコピーシステムが一般画像形成システムとして流通しているが、医療用画像のように診断能力を決定する画質(鮮鋭度、粒状性、階調、色調)の点、記録スピード(感度)の点で、不満足であり、従来の湿式現像の医療用銀塩フィルムを代替できるレベルに到達していない。
【0003】
一方、有機銀塩を利用した熱画像形成システムが知られている(例えば、非特許文献1、特許文献1、2参照。)。 特に、熱現像感光材料は、一般に、感光性ハロゲン化銀、還元剤、還元可能な銀塩(例、有機銀塩)、必要により銀の色調を制御する色調剤を、バインダーのマトリックス中に分散した感光性層を有している。
【0004】
熱現像感光材料は、画像露光後、高温(例えば80℃以上)に加熱し、ハロゲン化銀あるいは還元可能な銀塩(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応により、黒色の銀画像を形成する。酸化還元反応は、露光で発生したハロゲン化銀の潜像の触媒作用により促進される。その結果、露光領域に黒色の銀画像が形成される。熱現像感光材料は、米国特許2910377号、特公昭43-4924号をはじめとする多くの文献に開示され、また、実用的には医療用画像形成システムとして富士メディカルドライイメージャーFM−DP Lが発売された。
【0005】
この様な有機銀塩を利用した画像形成システムは、定着工程がないため現像処理後の画像保存性、特に光が当たったときのプリントアウトの悪化が大きな問題であった。このプリントアウトを改良する手段として有機銀塩をコンバージョンすることによって形成したヨウ化銀を利用する方法がUS-6143488号、EP0922995号に開示されている。しかしながらここで開示されたような有機銀塩をヨードでコンバージョンする方法では十分な感度を得ることが出来ず現実のシステムを組むことは困難であった。その他ヨウ化銀を利用した感材としてはWO97-48014号、WO48015号、US-6165705号、特開平8-297345号、特許第2785129号等に記載があるが、いずれも十分な感度・かぶりレベルを達成できておらず、レーザー露光感材としての実用に耐えるものではなかった。
【0006】
ヨウ化銀写真乳剤の感度を増加させる手段としては、亜硝酸ナトリウム、ピロガロール、ハイドロキノンなどのハロゲン受容体や硝酸銀水溶液への浸漬や、pAg7.5で硫黄増感することなどにより、増感することが知られていた(例えば、非特許文献1,2,3参照。)。 しかし、本発明の実施例に示した様にこれらのハロゲン受容体の増感効果は、本発明が対象とする熱現像感光材料においてはその効果は非常に小さく極めて不十分であった。そのために、高ヨウ化銀を用いた熱現像感光材料において大幅に感度が増加できる技術の開発が熱望されてきた。
【0007】
液体現像処理のハロゲン化銀感光材料では、1光子で2電子を発生させる化合物を用いて増感する方法が知られている(例えば、特許文献3〜6参照。)。
【0008】
しかしながら、液体現像処理のハロゲン化銀感光材料は、ハロゲン化銀を一般には液体処理液中に含まれている現像薬(還元剤)で還元して銀像を形成するか、あるいは副生する現像薬の酸化体を利用してカラー画像を形成するものであり、基本反応はハロゲン化銀の現像薬による還元である。一方、熱現像感光材料においては、ハロゲン化銀は露光によって潜像を形成するだけであって、ハロゲン化銀自体は還元剤によっては還元されず、還元されるのは非感光性有機銀塩より供給される銀イオンである。還元剤も液体現像処理の場合は、ヒドロキノンやp−フェニレンジアミン類などのイオン性還元剤であるのに対して、熱現像感光材料の場合は、一般にはラジカル反応剤として知られているヒンダードフェノール誘導体である。
【0009】
このように、液体現像処理感光材料と熱現像感光材料では、現像反応(還元反応)の機構は全く異なり、用いられる化合物も全く系統を異にする。従って、液体現像処理で有効であった化合物が、そのまま熱現像感光材料に有効であるとはとても言えない。前述の米国特許群に記載の化合物についても、熱現像感光材料に適用することで、同じ効果が得られるのか、あるいは全く別の効果が期待できるのか、全く予想できない。ましてや高ヨウ化銀乳剤を用いた熱現像感光材料に適用することも全く想起できず、その効果を推測することも不可能であった。
【0010】
【非特許文献1】
B.シェリー(Shely) 著「熱によって処理される銀システム(Thermally Processed Silver Systems)」(イメージング・プロセッシーズ・アンド・マテリアルズ(Imaging Processes and Materials)Neblette 第8版、スタージ(Sturge)、V.ウオールワース(Walworth)、A.シェップ(Shepp) 編集、第2頁、1996年)
【非特許文献2】
P.B.ギルマン著、フォトグラフィック サイエンス アンド エンジニアリング 18巻(5)、475頁(1974年発行)
【非特許文献3】
W.L.ガードナー著、フォトグラフィック サイエンス アンド エンジニアリング 21巻(6)、325頁(1977年発行)
【非特許文献3】
T.H.ジェームス著、フォトグラフィック サイエンス アンド エンジニアリング 5巻、216頁(1961年発行)
【特許文献1】
米国特許第3152904号明細書
【特許文献2】
米国特許第3457075号明細書
【特許文献3】
米国特許第5747235号明細書
【特許文献4】
米国特許第5747236号明細書
【特許文献5】
米国特許第6054260号明細書
【特許文献6】
米国特許第5994051号明細書
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、高ヨウ化銀を用いた熱現像感光材料において高感度で低かぶりの画像保存性の優れた熱現像感光材料を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記課題は、下記の手段によって達成された。
(1) 支持体の一方面上に、少なくとも、感光性ハロゲン化銀、非感光性有機銀塩、銀イオンのための還元剤、及びバインダーを含有する熱現像感光材料において、1)前記感光性ハロゲン化銀がヨウ化銀含有率が40モル%以上100モル%以下であり、2)下記のタイプ1〜タイプ4の化合物より選ばれる1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、後続反応によってさらに1電子もしくはそれ以上の電子を放出しうる化合物を含有することを特徴とする熱現像感光材料。
タイプ1の化合物:1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合開裂反応を伴ってさらに2電子以上の電子を放出し得る化合物であって、かつ同じ分子内にハロゲン化銀への吸着性基を有する化合物である
タイプ2の化合物:1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合開裂反応を伴ってさらにもう1電子を放出し得る化合物であって、かつ同じ分子内にハロゲン化銀への吸着性基を2つ以上有する化合物である。
タイプ3の化合物:1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く炭素−炭素、炭素−窒素、炭素−硫黄、もしくは炭素−酸素の原子間結合形成過程を経た後に、さらに1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物であって、かつ同じ分子内にハロゲン化銀への吸着性基を有する化合物である
タイプ4の化合物:1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く分子内の環開裂反応を経た後に、さらに1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物であって、かつ同じ分子内にハロゲン化銀への吸着性基を有する化合物である
前記タイプ1〜4の化合物において、前記ハロゲン化銀への吸着性基は、メルカプト置換含窒素ヘテロ環基、またはイミノ銀を形成しうる−NH−基をヘテロ環の部分構造として有する含窒素ヘテロ環基である。
下記一般式(D)で表される水素結合性化合物を含有することを特徴とする(1)に記載の熱現像感光材料。
【化1】
(一般式(D)においてR 21 ないしR 23 は各々独立にアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基またはヘテロ環基を表し、これらの基は無置換であっても置換基を有していてもよい。)
下記一般式(1)または下記一般式(2)で表される現像促進剤を含有することを特徴とする(1)又は(2)に記載の熱現像感光材料。
−NHNH−R 一般式(1)
(一般式(1)において、Qは炭素原子でNHNH−Rと結合する5〜7員の不飽和環を表し、Rはカルバモイル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルホニル基、またはスルファモイル基を表す。ただし、Rがプロピルカルバモイル基を表すとき、Qが2,3,5,6−テトラクロロ−4−シアノフェニル基であることはない。)
【化2】
(一般式(2)において、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。X〜Xはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。ただし、X〜Xで表される置換基はヒドロキシ基であることはなく、X〜Xで表される置換基が窒素原子でフェノール環に連結しているとき、X〜Xは含窒素複素環基または−NH−C(=O)−Rで表される基を表し、Rは炭素数8〜40の置換基を表す。R、RおよびX〜Xで表される置換基は互いに結合して環を形成してもよい。)
)ハロゲン化銀乳剤がカルコゲン増感、金増感、還元増感の少なくとも1つで化学増感されている(1)〜(のいずれかに記載の熱現像感光材料。
)カルコゲン増感がテルル増感、セレン増感、および硫黄増感であり、好ましくはテルル増感とセレン増感、更に好ましくはテルル増感である(1)〜(4)のいずれかに記載の熱現像感光材料。
)ハロゲン化銀写真乳剤のヨウ化銀含有率が好ましくは80モル%以上100モル%以下、さらに好ましくは85モル%以上100モル%以下、より好ましくは90モル%以上100モル%以下である(1)〜(5)のいずれかに記載の熱現像感光材料。
)ハロゲン化銀粒子の粒子サイズが0.1μm以下、好ましくは0.09μm以下、とくには55nm以下および5nm以上である(1)〜(のいずれかに記載の熱現像感光材料。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
1.熱現像感光材料
本発明の熱現像感光材料は、支持体の少なくとも一方面上に感光性ハロゲン化銀、非感光性有機銀塩、還元剤、及びバインダーを含有する画像形成層を有している。また、好ましくは画像形成層の上に表面保護層、あるいはその反対面にバック層やバック保護層などを有してもよい。
これらの各層の構成、およびその好ましい成分について詳しく説明する。
【0014】
1−1.画像形成層
1−1−1.1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、後続反応によってさらに1電子もしくはそれ以上の電子を放出しうる化合物
本発明の1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、後続反応によってさらに1電子もしくはそれ以上の電子を放出しうる化合物について説明する。
本発明の1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、後続反応によってさらに1電子もしくはそれ以上の電子を放出しうる化合物は、タイプ1〜4で表される化合物より選ばれる化合物である。
【0015】
本発明のタイプ1〜4の化合物について詳細に説明する。
タイプ1〜5の化合物について詳細に説明する。
タイプ1の化合物において「結合開裂反応」とは具体的に炭素−炭素、炭素−ケイ素、炭素−水素、炭素−ホウ素、炭素−スズ、炭素−ゲルマニウムの各元素間の結合の開裂を意味し、炭素−水素結合の開裂がさらにこれらに付随してもよい。
タイプ1の化合物は1電子酸化されて1電子酸化体となった後に、初めて結合開裂反応を伴って、さらに2電子以上(好ましくは3電子以上)の電子を放出し得る化合物である。言いかえればさらに2電子以上(好ましくは3電子以上)酸化され得る化合物である。
【0016】
タイプ1の化合物のうち好ましい化合物は一般式(A)、一般式(B)、一般式(1)、一般式(2)または一般式(3)で表される。
【0017】
一般式(A)
【化1】
【0018】
一般式(B)
【化2】
【0019】
一般式(A)においてRED11は1電子酸化され得る還元性基を表し、L11は脱離基を表す。
112は水素原子または置換基を表す。
111は炭素原子(C)およびRED11と共に、特定の5員もしくは6員の環状構造を形成し得る非金属原子団を表す。
ここに特定の5員もしくは6員の環状構造とは、5員もしくは6員の芳香族環(芳香族ヘテロ環を含む)のテトラヒドロ体、ヘキサヒドロ体、もしくはオクタヒドロ体に相当する環構造を意味する。
【0020】
一般式(B)においてRED12は1電子酸化され得る還元性基を表し、L12は、脱離基を表す。
121およびR122は、それぞれ水素原子または置換基を表す。ED12は電子供与性基を表す。
一般式(B)においてR121とRED12、R121とR122、またはED12とRED12とは、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
【0021】
これら化合物は一般式(A)または一般式(B)の、RED11またはRED12で表される還元性基が1電子酸化された後、自発的にL11またはL12を結合開裂反応により離脱することで、即ちC(炭素原子)−L11結合またはC(炭素原子)−L12結合が開裂することで、これに伴いさらに電子を2つ以上、好ましくは3つ以上放出し得る化合物である。
【0022】
一般式(1)、一般式(2)、一般式(3)
【化3】
【0023】
一般式(1)においてZ1は窒素原子およびベンゼン環の2つの炭素原子と共に6員環を形成し得る原子団を表し、R1、R2、RN1はそれぞれ水素原子または置換基を表し、X1はベンゼン環に置換可能な置換基を表し、m1は0〜3の整数を表し、L1は脱離基を表す。
一般式(2)においてED21は電子供与性基を表し、R11、R12、RN21、R13、R14はそれぞれ水素原子または置換基を表し、X21はベンゼン環に置換可能な置換基を表し、m21は0〜3の整数を表し、L21は脱離基を表す。
N21、R13、R14、X21およびED21は、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
一般式(3)においてR32、R33、R31、RN31、Ra、Rbはそれぞれ水素原子または置換基を表し、L31は脱離基を表す。
但し、RN31がアリール基以外の基を表す時、RaおよびRbは互いに結合して芳香族環を形成する。
【0024】
これら化合物は1電子酸化された後、自発的にL1、L21、またはL31を結合開裂反応により離脱することで、即ちC(炭素原子)−L1結合、C(炭素原子)−L21結合、またはC(炭素原子)−L31結合が開裂することで、これに伴いさらに電子を2つ以上、好ましくは3つ以上放出し得る化合物である。
【0025】
以下、先ず一般式(A)で表される化合物について詳しく説明する。
一般式(A)においてRED11で表される1電子酸化され得る還元性基は、後述するR111と結合して特定の環形成をし得る基であり、具体的には次の1価基から環形成をするのに適切な箇所の水素原子1個を除いた2価基が挙げられる。
例えば、アルキルアミノ基、アリールアミノ基(アニリノ基、ナフチルアミノ基等)、ヘテロ環アミノ基(ベンズチアゾリルアミノ基、ピロリルアミノ基等)、アルキルチオ基、アリールチオ基(フェニルチオ基等)、ヘテロ環チオ基、アルコキシ基、アリールオキシ基(フェノキシ基等)、ヘテロ環オキシ基、アリール基(フェニル基、ナフチル基、アントラニル基等)、芳香族または非芳香族のヘテロ環基(5員〜7員の、単環もしくは縮合環の、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、セレン原子のうち少なくとも1つのヘテロ原子を含むヘテロ環で、その具体例としては、例えばテトラヒドロキノリン環、テトラヒドロイソキノリン環、テトラヒドロキノキサリン環、テトラヒドロキナゾリン環、インドリン環、インドール環、インダゾール環、カルバゾール環、フェノキサジン環、フェノチアジン環、ベンゾチアゾリン環、ピロール環、イミダゾール環、チアゾリン環、ピペリジン環、ピロリジン環、モルホリン環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾイミダゾリン環、ベンゾオキサゾリン環、メチレンジオキシフェニル環等が挙げられる)である(以後、便宜上RED11は1価基名として記述する)。
これらは置換基を有していてもよい。
【0026】
置換基としては、例えばハロゲン原子、アルキル基(アラルキル基、シクロアルキル基、活性メチン基等を含む)、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基(置換する位置は問わない)、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基(例えばピリジニオ基、イミダゾリオ基、キノリニオ基、イソキノリニオ基)、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、カルボキシ基またはその塩、スルホニルカルバモイル基、アシルカルバモイル基、スルファモイルカルバモイル基、カルバゾイル基、オキサリル基、オキサモイル基、シアノ基、カルボンイミドイル基、チオカルバモイル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基(エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基単位を繰り返し含む基を含む)、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、スルホニルオキシ基、アミノ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、イミド基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、セミカルバジド基、チオセミカルバジド基、ヒドラジノ基、アンモニオ基、オキサモイルアミノ基、(アルキルもしくはアリール)スルホニルウレイド基、アシルウレイド基、アシルスルファモイルアミノ基、ニトロ基、メルカプト基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)チオ基、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、(アルキルまたはアリール)スルフィニル基、スルホ基またはその塩、スルファモイル基、アシルスルファモイル基、スルホニルスルファモイル基またはその塩、リン酸アミドもしくはリン酸エステル構造を含む基、等が挙げられる。
これら置換基は、これら置換基でさらに置換されていてもよい。
【0027】
一般式(A)においてL11は、RED11で表される還元性基が1電子酸化された後に初めて結合開裂により脱離し得る脱離基を表し、具体的にはカルボキシ基もしくはその塩、シリル基、水素原子、トリアリールホウ素アニオン、トリアルキルスタニル基、トリアルキルゲルミル基、または−CRC1C2C3基を表す。
【0028】
11がカルボキシ基の塩を表すとき、塩を形成するカウンターイオンとしては具体的にアルカリ金属イオン(Li+、Na+、K+、Cs+)、アルカリ土類金属イオン(Mg2+、Ca2+、Ba2+)、重金属イオン(Ag+、Fe2+/3+)、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオンなどが挙げられる。
11がシリル基を表す時、シリル基とは具体的にトリアルキルシリル基、アリールジアルキルシリル基、トリアリールシリル基などを表し、ここにアルキル基とはメチル、エチル、ベンジル、t−ブチル基等が、またアリール基とはフェニル基などが挙げられる。
【0029】
11がトリアリールホウ素アニオンを表す時、アリール基として好ましくは、置換もしくは無置換のフェニル基で、置換基としてはRED11が有していても良い置換基と同じものが挙げられる。
11がトリアルキルスタニル基またはトリアルキルゲルミル基を表す時、ここにアルキル基とは炭素数1〜24の、直鎖、分岐、または環状のアルキル基で、置換基を有していてもよく、置換基としてはRED11が有していても良い置換基と同じものが挙げられる。
【0030】
11が−CRC1C2C3基を表す時、ここにRC1、RC2、RC3はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基を表し、これらが互いに結合して環状構造を形成していてもよく、さらに置換基を有していてもよい。
置換基としてはRED11が有していても良い置換基と同じものが挙げられる。
但し、RC1、RC2、RC3のうち1つが水素原子もしくはアルキル基を表す時、残る2つが水素原子またはアルキル基を表すことはない。
C1、RC2、RC3として好ましくは、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基(特にフェニル基)、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環基、アルコキシ基、ヒドロキシ基で、具体的にその例を挙げると、フェニル基、p−ジメチルアミノフェニル基、p−メトキシフェニル基、2,4−ジメトキシフェニル基、p−ヒドロキシフェニル基、メチルチオ基、フェニルチオ基、フェノキシ基、メトキシ基、エトキシ基、ジメチルアミノ基、N−メチルアニリノ基、ジフェニルアミノ基、モルホリノ基、チオモルホリノ基、ヒドロキシ基などが挙げられる。
またこれらが互いに結合して環状構造を形成する場合の例としては1,3−ジチオラン−2−イル基、1,3−ジチアン−2−イル基、N−メチル−1,3−チアゾリジン−2−イル基、N−ベンジル−ベンゾチアゾリジン−2−イル基などが挙げられる。
【0031】
−CRC1C2C3基として好ましくは、トリチル基、トリ−(p−ヒドロキシフェニル)メチル基、1,1−ジフェニル−1−(p−ジメチルアミノフェニル)メチル基、1,1−ジフェニル−1−(メチルチオ)メチル基、1−フェニル−1,1−(ジメチルチオ)メチル基、1,3−ジチオラン−2−イル基、2−フェニル−1,3−ジチオラン−2−イル基、1,3−ジチアン−2−イル基、2−フェニル−1,3−ジチアン−2−イル基、2−メチル−1,3−ジチアン−2−イル基、N−メチル−1,3−チアゾリジン−2−イル基、2−メチル−3−メチル−1,3−チアゾリジン−2−イル基、N−ベンジル−ベンゾチアゾリジン−2−イル基、1,1−ジフェニル−1−ジメチルアミノメチル基、1,1−ジフェニル−1−モルホリノメチル基等が挙げられる。
また、−CRC1C2C3基が、RC1、RC2、RC3についてそれぞれ上述した範囲内で選択された結果として、一般式(A)からL11を除いた残基と同じ基を表す場合もまた好ましい。
【0032】
一般式(A)においてR112は水素原子または炭素原子に置換可能な置換基を表す。R112が炭素原子に置換可能な置換基を表す時、ここに置換基とは具体的に、RED11が置換基を有する時の置換基の例と同じものが挙げられる。
但しR112がL11と同じ基を表すことはない。
【0033】
一般式(A)においてR111は炭素原子(C)およびRED11と共に、特定の5員もしくは6員の環状構造を形成し得る非金属原子団を表す。
ここにR111が形成する特定の5員もしくは6員の環状構造とは、5員もしくは6員の芳香族環(芳香族ヘテロ環を含む)のテトラヒドロ体、ヘキサヒドロ体もしくはオクタヒドロ体に相当する環構造を意味する。
ここにヒドロ体とは、芳香族環(芳香族ヘテロ環を含む)に内在する炭素−炭素2重結合(または炭素−窒素2重結合)が部分的に水素化された環構造を意味し、テトラヒドロ体とは2つの炭素−炭素2重結合(または炭素−窒素2重結合)が水素化された構造を意味し、ヘキサヒドロ体とは3つの炭素−炭素2重結合(または炭素−窒素2重結合)が水素化された構造を意味し、オクタヒドロ体とは4つの炭素−炭素2重結合(または炭素−窒素2重結合)が水素化された構造を意味する。水素化されることで芳香族環は、部分的に水素化された非芳香族の環構造となる。
【0034】
具体的には、単環の5員環の場合の例としてはピロール環、イミダゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環等の芳香族環のテトラヒドロ体に相当する、ピロリジン環、イミダゾリジン環、チアゾリジン環、ピラゾリジン環およびオキサゾリジン環等が挙げられる。
6員環の単環の場合の例としてはピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環等の芳香族環のテトラヒドロ体もしくはヘキサヒドロ体が挙げられ、例えばピペリジン環、テトラヒドロピリジン環、テトラヒドロピリミジン環、ピペラジン環等が挙げられる。
6員環の縮合環の場合の例としてはナフタレン環、キノリン環、イソキノリン環、キナゾリン環、キノキサリン環等の芳香族環のテトラヒドロ体に相当する、テトラリン環、テトラヒドロキノリン環、テトラヒドロイソキノリン環、テトラヒドロキナゾリン環、およびテトラヒドロキノキサリン環等が挙げられる。
3環性化合物の場合の例としてはカルバゾール環のテトラヒドロ体のテトラヒドロカルバゾール環やフェナントリジン環のオクタヒドロ体であるオクタヒドロフェナントリジン環等が挙げられる。
【0035】
これらの環構造はさらに置換されていてもよく、その置換基の例としてはRED11が有していてもよい置換基について説明したものと同じものが挙げられる。
これらの環構造の置換基どおしがさらに連結して環を形成していてもよく、ここに新たに形成される環は非芳香族の炭素環またはヘテロ環である。
【0036】
次に本発明の一般式(A)で表される化合物の好ましい範囲を説明する。
一般式(A)においてL11は、好ましくはカルボキシ基またはその塩、および水素原子である。より好ましくはカルボキシ基またはその塩である。
塩のカウンターイオンとして好ましくはアルカリ金属イオンまたはアンモニウムイオンであり、アルカリ金属イオン(特にLi+、Na+、K+イオン)が最も好ましい。
【0037】
11が水素原子を表す時、一般式(A)で表される化合物は、分子内に内在する塩基部位を有していることが好ましい。
この塩基部位の作用により、一般式(A)で表される化合物が酸化された後、L11で表される水素原子が脱プロトン化されて、ここからさらに電子が放出されるのである。
【0038】
ここに塩基とは、具体的に約1〜約10のpKaを示す酸の共役塩基である。
例えば含窒素ヘテロ環類(ピリジン類、イミダゾール類、ベンゾイミダゾール類、チアゾール類など)、アニリン類、トリアルキルアミン類、アミノ基、炭素酸類 (活性メチレンアニオンなど)、チオ酢酸アニオン、カルボキシレート(−COO-)、サルフェート(−SO3 -)、またはアミンオキシド(>N+(O-)−)などが挙げられる。
好ましくは約1〜約8のpKaを示す酸の共役塩基であり、カルボキシレート、サルフェート、またはアミンオキシドがより好ましく、カルボキシレートが特に好ましい。
これらの塩基がアニオンを有する時、対カチオンを有していてもよく、その例としてはアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、重金属イオン、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオンなどが挙げられる。
これら塩基は、任意の位置で一般式(A)で表される化合物に連結される。これら塩基部位が結合する位置としては、一般式(A)のRED11、R111、R112の何れでもよく、またこれらの基の置換基に連結していてもよい。
【0039】
L11が水素原子を表す時、該水素原子と塩基部位は8個以下の原子団で連結されていることが好ましい。さらには5個以上、8個以下の原子団で連結されていることがより好ましい。
ここで連結原子団としてカウントされるのは、塩基部位の中心的原子(すなわちアニオンを有する原子または孤立電子対を有する原子)と該水素原子とを共有結合で連結する原子団であり、例えばカルボキシレートの場合には−C−O-の2原子がカウントされ、サルフェートの場合にはS−O-の2原子がカウントされる。
また、一般式(A)のCで表される炭素原子も、その数に加えられる。
【0040】
一般式(A)において、L11が水素原子を表し、RED11がアニリン類を表し、かつその窒素原子がR111と6員の単環の飽和の環構造(ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、チオモルホリン環、セレノモルホリン環など)を形成する時、該化合物は分子内にハロゲン化銀への吸着性基を有することが好ましく、また同時に該化合物は分子内に内在する塩基部位を有し、その塩基部位と該水素原子とが8個以下の原子団で連結されていることがより好ましい。
【0041】
一般式(A)においてRED11は、好ましくはアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、アリール基、芳香族または非芳香族のヘテロ環基であり、このうちヘテロ環基に関してはテトラヒドロキノリニル基、テトラヒドロキノキサリニル基、テトラヒドロキナゾリニル基、インドリル基、インドレニル基、カルバゾリル基、フェノキサジニル基、フェノチアジニル基、ベンゾチアゾリニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、チアゾリジニル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾイミダゾリニル基、3,4-メチレンジオキシフェニル-1-イル基などが好ましい。
さらに好ましくはアリールアミノ基(特にアニリノ基)、アリール基(特にフェニル基)である。
ここでRED11がアリール基を表す時、アリール基は少なくとも1つの電子供与性基(電子供与性基の数は、好ましくは4つ以下であり、より好ましくは1〜3つ)を有していることが好ましい。
ここに電子供与性基とは即ち、ヒドロキシ基、アルコキシ基、メルカプト基、スルホンアミド基、アシルアミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、活性メチン基、電子過剰な芳香族ヘテロ環基(例えばインドリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ベンズイミダゾリル基、チアゾリル基、ベンズチアゾリル基、インダゾリル基など)、窒素原子で置換する非芳香族含窒素ヘテロ環基(ピロリジニル基、インドリニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルホリノ基など)である。
ここで活性メチン基とは2つの電子求引性基で置換されたメチン基を意味し、ここに電子求引性基とはアシル基、アルコシキカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、トリフルオロメチル基、シアノ基、ニトロ基、カルボンイミドイル基を意味する。ここで2つの電子求引性基は互いに結合して環状構造をとっていてもよい。
RED11がアリール基を表す時、そのアリール基の置換基としてより好ましくはアルキルアミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、メルカプト基、スルホンアミド基、活性メチン基、窒素原子で置換する非芳香族含窒素ヘテロ環基であり、さらに好ましくはアルキルアミノ基、ヒドロキシ基、活性メチン基、窒素原子で置換する非芳香族含窒素ヘテロ環基であり、最も好ましくはアルキルアミノ基、窒素原子で置換する非芳香族含窒素ヘテロ環基である。
【0042】
一般式(A)においてR112は好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基(フェニル基など)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、ベンジルオキシ基など)、ヒドロキシ基、アルキルチオ基(メチルチオ基、ブチルチオ基など)、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、フェニル基、アルキルアミノ基である。
【0043】
一般式(A)においてR111は好ましくは、炭素原子(C)およびRED11と共に、以下の特定の5員もしくは6員の環状構造を形成し得る非金属原子団である。即ち、単環の5員環の芳香族環であるピロール環、イミダゾール環のテトラヒドロ体に相当するピロリジン環、イミダゾリジン環等や、単環の6員環の芳香族環であるピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環のテトラヒドロ体もしくはヘキサヒドロ体(例えば、ピペリジン環、テトラヒドロピリジン環、テトラヒドロピリミジン環、ピペラジン環など)や、縮合環の6員環の芳香族環であるナフタレン環、キノリン環、イソキノリン環、キナゾリン環、キノキサリン環のテトラヒドロ体に相当する、テトラリン環、テトラヒドロキノリン環、テトラヒドロイソキノリン環、テトラヒドロキナゾリン環、およびテトラヒドロキノキサリン環などや、3環性の芳香族環であるカルバゾール環のテトラヒドロ体であるテトラヒドロカルバゾール環や、フェナントリジン環のオクタヒドロ体であるオクタヒドロフェナントリジン環などが挙げられる。
111が形成する環状構造としてさらに好ましくは、ピロリジン環、イミダゾリジン環、ピペリジン環、テトラヒドロピリジン環、テトラヒドロピリミジン環、ピペラジン環、テトラヒドロキノリン環、テトラヒドロキナゾリン環、テトラヒドロキノキサリン環、テトラヒドロカルバゾール環であり、特に好ましくは、ピロリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、テトラヒドロキノリン環、テトラヒドロキナゾリン環、テトラヒドロキノキサリン環、テトラヒドロカルバゾール環であり、最も好ましくはピロリジン環、ピペリジン環、テトラヒドロキノリン環である。
【0044】
次に一般式(B)について詳しく説明する。
一般式(B)においてRED12、L12は、それぞれ一般式(A)のRED11、L11に同義の基であり、その好ましい範囲もまた同じである。
但し、RED12は下記の環状構造を形成する場合以外は1価基であり、具体的にはRED11で記載した1価基名の基が挙げられる。
121およびR122は一般式(A)のR112に同義の基であり、その好ましい範囲もまた同じである。ED12は電子供与性基を表す。
121とRED12、R121とR122、またはED12とRED12とは、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
【0045】
一般式(B)においてED12で表される電子供与性基とは、ヒドロキシ基、アルコキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルホンアミド基、アシルアミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、活性メチン基、電子過剰な芳香族ヘテロ環基(例えばインドリル基、ピロリル基、インダゾリル基)、窒素原子で置換する非芳香族含窒素ヘテロ環基(ピロリジニル基、ピペリジニル基、インドリニル基、ピペラジニル基、モルホリノ基など)、およびこれら電子供与性基で置換されたアリール基(例えばp-ヒドロキシフェニル基、p-ジアルキルアミノフェニル基、o,p-ジアルコキシフェニル基、4-ヒドロキシナフチル基など)である。
ここで活性メチン基とは、RED11がアリール基を表すときの置換基として説明したものに同じである。
ED12として好ましくはヒドロキシ基、アルコキシ基、メルカプト基、スルホンアミド基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、活性メチン基、電子過剰な芳香族ヘテロ環基、窒素原子で置換する非芳香族含窒素ヘテロ環基、およびこれら電子供与性基で置換されたフェニル基であり、さらにヒドロキシ基、メルカプト基、スルホンアミド基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、活性メチン基、窒素原子で置換する非芳香族含窒素ヘテロ環基、およびこれら電子供与性基で置換されたフェニル基(例えばp-ヒドロキシフェニル基、p-ジアルキルアミノフェニル基、o,p-ジアルコキシフェニル基等)が好ましい。
【0046】
一般式(B)においてR121とRED12、R122とR121、またはED12とRED12とは、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
ここで形成される環状構造とは、非芳香族の炭素環もしくはヘテロ環であって、5員〜7員環の単環または縮合環で、置換もしくは無置換の環状構造である。R121とRED12とが環構造を形成するとき、その具体例としてはピロリジン環、ピロリン環、イミダゾリジン環、イミダゾリン環、チアゾリジン環、チアゾリン環、ピラゾリジン環、ピラゾリン環、オキサゾリジン環、オキサゾリン環、インダン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、テトラヒドロピリジン環、テトラヒドロピリミジン環、インドリン環、テトラリン環、テトラヒドロキノリン環、テトラヒドロイソキノリン環、テトラヒドロキノキサリン環、テトラヒドロ-1,4-オキサジン環、2,3-ジヒドロベンゾ-1,4-オキサジン環、テトラヒドロ-1,4-チアジン環、2, 3-ジヒドロベンゾ-1,4-チアジン環、2,3-ジヒドロベンゾフラン環、2,3-ジヒドロベンゾチオフェン環等が挙げられる。
ED12とRED12とが環構造を形成するとき、ED12は好ましくはアミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基を表し、形成される環構造の具体例としては、テトラヒドロピラジン環、ピペラジン環、テトラヒドロキノキサリン環、テトラヒドロイソキノリン環などが挙げられる。
122とR121とが環構造を形成するとき、その具体例としてはシクロヘキサン環、シクロペンタン環などが挙げられる。
【0047】
本発明の一般式(A)で表される化合物のうちさらに好ましいものは、以下の一般式(10)〜(12)で、また一般式(B)で表される化合物のうちさらに好ましいものは、以下の一般式(13)および(14)で表される。
【0048】
【化4】
【0049】
一般式(10)〜(14)において、L100、L101、L102、L103、L104は一般式(A)のL11に同義の基であり、その好ましい範囲もまた同じである。
1100とR1101、R1110とR1111、R1120とR1121、R1130とR1131、R1140とR1141は、それぞれ一般式(B)のR122とR121に同義の基であり、その好ましい範囲もまた同じである。
ED13、ED14はそれぞれ一般式(B)のED12と同義の基を表し、その好ましい範囲もまた同じである。
X10、X11、X12、X13、X14はそれぞれベンゼン環に置換可能な置換基を表し、m10、m11、m12、m13、m14はそれぞれ0〜3の整数を表し、これらが複数の時、複数のX10、X11、X12、X13、X14は同じでも異なっていてもよい。
12およびY14はアミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、窒素原子で置換する非芳香族の含窒素ヘテロ環基(ピロリル基、ピペリジニル基、インドリニル基、ピペラジノ基、モルホリノ基など)、ヒドロキシ基、アルコキシ基を表す。
【0050】
10、Z11、Z12は、特定の環構造を形成しうる非金属原子団を表す。
10が形成する特定の環構造とは、5員または6員の、単環もしくは縮合環の、含窒素芳香族ヘテロ環のテトラヒドロ体もしくはヘキサヒドロ体にあたる環構造で、具体的にはピロリジン環、イミダゾリジン環、チアゾリジン環、ピラゾリジン環、ピペリジン環、テトラヒドロピリジン環、テトラヒドロピリミジン環、ピペラジン環、テトラヒドロキノリン環、テトラヒドロイソキノリン環、テトラヒドロキナゾリン環、テトラヒドロキノキサリン環、などが例として挙げられる。
11が形成する特定の環構造とは、テトラヒドロキノリン環、テトラヒドロキノキサリン環である。
12が形成する特定の環構造とは、テトラリン環、テトラヒドロキノリン環、テトラヒドロイソキノリン環である。
【0051】
N11、RN13はそれぞれ水素原子、または窒素原子に置換可能な置換基である。
置換基としては具体的に、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、アシル基であり、好ましくはアルキル基、アリール基である。
【0052】
10、X11、X12、X13、X14で表されるベンゼン環に置換可能な置換基としては、一般式(A)のRED11が有していてもよい置換基の例と同じものが具体例として挙げられる。
好ましくは、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、シアノ基、アルコキシ基(エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基単位を繰り返し含む基を含む)、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、イミド基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルアミノ基、ニトロ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)チオ基、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、スルファモイル基等である。
10、m11、m12、m13、m14は好ましくは0〜2であり、さらに好ましくは0または1である。
【0053】
12およびY14は好ましくはアルキルアミノ基、アリールアミノ基、窒素原子で置換する非芳香族の含窒素ヘテロ環基、ヒドロキシ基、アルコキシ基であり、さらに好ましくはアルキルアミノ基、窒素原子で置換する5〜6員の非芳香族含窒素ヘテロ環基、ヒドロキシ基であり、最も好ましくはアルキルアミノ基(特にジアルキルアミノ基)または窒素原子で置換する5〜6員の非芳香族含窒素ヘテロ環基である。
【0054】
一般式(13)においてR1131とX13、R1131とRN13、R1130とX13、またはR1130とRN13とが結合して、環状構造を形成していてもよい。
また一般式(14)においてR1141とX14、R1141とR1140、ED14とX14、またはR1140とX14とが結合して、環状構造を形成していてもよい。
ここで形成される環状構造とは、非芳香族の炭素環もしくはヘテロ環であって、5員〜7員環の単環または縮合環で、置換もしくは無置換の環状構造である。一般式(13)においてR1131とX13とが結合して環状構造を形成する場合、およびR1131とRN13とが結合して環状構造を形成する場合は、環構造を形成しない場合と同様に、一般式(13)で表される化合物の好ましい例である。
一般式(13)においてR1131とX13とで形成される環構造としては具体的に、インドリン環(この場合、R1131は単結合を表すことになる)、テトラヒドロキノリン環、テトラヒドロキノキサリン環、2,3-ジヒドロベンゾ-1,4-オキサジン環、2,3-ジヒドロベンゾ-1,4-チアジン環、などが挙げられる。
特に好ましくはインドリン環、テトラヒドロキノリン環、テトラヒドロキノキサリン環である。
一般式(13)においてR1131とRN13とで形成される環構造としては具体的に、ピロリジン環、ピロリン環、イミダゾリジン環、イミダゾリン環、チアゾリジン環、チアゾリン環、ピラゾリジン環、ピラゾリン環、オキサゾリジン環、オキサゾリン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、テトラヒドロピリジン環、テトラヒドロピリミジン環、インドリン環、テトラヒドロキノリン環、テトラヒドロイソキノリン環、テトラヒドロキノキサリン環、テトラヒドロ-1,4-オキサジン環、2,3-ジヒドロベンゾ-1,4-オキサジン環、テトラヒドロ-1,4-チアジン環、2,3-ジヒドロベンゾ-1,4-チアジン環、2,3-ジヒドロベンゾフラン環、2,3-ジヒドロベンゾチオフェン環、等が挙げられる。
特に好ましくはピロリジン環、ピペリジン環、テトラヒドロキノリン環、テトラヒドロキノキサリン環である。
【0055】
一般式(14)においてR1141とX14とが結合して環状構造を形成する場合、およびED14とX14とが結合して環状構造を形成する場合は、環構造を形成しない場合と同様に、一般式(14)で表される化合物の好ましい例である。
一般式(14)においてR1141とX14とが結合して形成する環状構造としては、インダン環、テトラリン環、テトラヒドロキノリン環、テトラヒドロイソキノリン環、インドリン環などが挙げられる。
ED14とX14とが結合して形成する環状構造としては、テトラヒドロイソキノリン環、テトラヒドロシンノリン環などが挙げられる。
【0056】
次に一般式(1)〜(3)について説明する。
一般式(1)〜(3)において、R1、R2、R11、R12、R31はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、これらは一般式(A)のR112と同義の基であり、その好ましい範囲もまた同じである。
1、L21、L31はそれぞれ独立に脱離基を表し、これは一般式(A)のL11について説明した中で具体例として挙げた基と同じ基を表し、その好ましい範囲もまた同じである。
1、X21はベンゼン環に置換可能な置換基を表し、それぞれ独立に一般式(A)のRED11が置換基を有する時の置換基の例と同じものが挙げらる。
1、m21は0〜3の整数を表し、好ましくは0〜2であり、より好ましくは0または1である。
【0057】
N1、RN21、RN31は水素原子または窒素原子に置換可能な置換基を表し、置換基としてはアルキル基、アリール基、ヘテロ環基が好ましく、これらはさらに置換基を有していてもよく、その置換基としては一般式(A)のRED11が有していても良い置換基と同じものが挙げられる。
N1、RN21、RN31は水素原子、アルキル基またはアリール基が好ましく、水素原子またはアルキル基がより好ましい。
【0058】
13、R14、R32、R33、Ra、Rbはそれぞれ独立に水素原子または炭素原子に置換可能な置換基を表す。
置換基としては一般式(A)においてRED11が有していても良い置換基と同じものが挙げられる。
好ましくは、アルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、シアノ基、アルコキシ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基などである。
【0059】
一般式(1)においてZ1は窒素原子およびベンゼン環の2つの炭素原子と共に6員環を形成し得る原子団を表す。
1が形成する6員環は、一般式(1)のベンゼン環と縮合した非芳香族のヘテロ環であり、具体的には縮合するベンゼン環も含めた環構造としてテトラヒドロキノリン環、テトラヒドロキノキサリン環、テトラヒドロキナゾリン環であり、これらは置換基を有していてもよい。
置換基としては、一般式(A)のR112が置換基を表す時の例と同じものが挙げられ、その好ましい範囲もまた同じである。
【0060】
一般式(1)においてZ1は好ましくは窒素原子およびベンゼン環の2つの炭素原子と共にテトラヒドロキノリン環、テトラヒドロキノキサリン環を形成する原子団を表す。
【0061】
一般式(2)においてED21は電子供与性基を表し、これは一般式(B)のED12と同義の基であり、その好ましい範囲もまた同じである。
【0062】
一般式(2)においてRN21、R13、R14、X21およびED21のいずれか2つは、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
ここでRN21とX21が結合して形成される環状構造とは、好ましくはベンゼン環と縮合した5員〜7員の非芳香族の炭素環もしくはヘテロ環であって、その具体例としては、テトラヒドロキノリン環、テトラヒドロキノキサリン環、インドリン環、2,3−ジヒドロ−5,6−ベンゾ−1,4−チアジン環などが挙げられる。
好ましくはテトラヒドロキノリン環、テトラヒドロキノキサリン環、インドリン環である。
【0063】
一般式(3)においてRN31がアリール基以外の基を表す時、RaおよびRbは互いに結合して芳香族環を形成する。
ここに芳香族環とはアリール基(例えばフェニル基、ナフチル基)および芳香族ヘテロ環基(例えばピリジン環基、ピロール環基、キノリン環基、インドール環基など)であり、アリール基が好ましい。
該芳香族環基は置換基を有していてもよく、その置換基としては一般式(1)におけるX1が置換基を表す時に挙げた置換基と同じものが挙げられ、その好ましい範囲もまた同じである。
一般式(3)においてRaおよびRbは、互いに結合して芳香族環(特にフェニル基)を形成する場合が好ましい。
【0064】
一般式(3)においてR32は好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、ドロキシ基、アルコキシ基、メルカプト基、アミノ基などであり、ここにR32がヒドロキシ基を表す時、同時にR33が電子求引性基を表す場合も好ましい例の1つである。
ここに電子求引性基とは、アシル基、アルコシキカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、トリフルオロメチル基、シアノ基、ニトロ基、カルボンイミドイル基を意味し、アシル基、アルコシキカルボニル基、カルバモイル基、シアノ基が好ましい。
【0065】
次にタイプ2の化合物について説明する。
タイプ2の化合物は1電子酸化されて1電子酸化体となった後に、初めて結合開裂反応を伴なってさらにもう1電子を放出し、言いかえればさらに1電子酸化され得る化合物である。
ここに結合開裂反応とは炭素−炭素、炭素−ケイ素、炭素−水素、炭素−ホウ素、炭素−スズ、炭素−ゲルマニウムの各元素間の結合の開裂を意味し、炭素−水素結合の開裂がこれに付随してもよい。
【0066】
但し、タイプ2の化合物は分子内にハロゲン化銀への吸着性基を2つ以上(好ましくは2〜6つ、より好ましくは2〜4つ)有する化合物である。
より好ましくは2つ以上のメルカプト基で置換された含窒素ヘテロ環基を吸着性基として有する化合物である。
吸着性基の数は、好ましくは2〜6、さらに好ましくは2〜4が良い。吸着性基については後述する。
【0067】
タイプ2の化合物のうち好ましい化合物は一般式(C)で表される。
【0068】
一般式(C)
【化5】
【0069】
ここに一般式(C)で表される化合物は、RED2で表される還元性基が1電子酸化された後、自発的にL2を結合開裂反応により離脱することで、即ちC(炭素原子)−L2結合が開裂することで、これに伴いさらに電子を1つ放出し得る化合物である。
【0070】
一般式(C)においてRED2は一般式(B)のRED12と同義の基を表し、その好ましい範囲も同じである。
2は一般式(A)のL11について説明したのと同義の基を表し、その好ましい範囲も同じである。
なおL2がシリル基を表す時、該化合物は分子内に、2つ以上のメルカプト基で置換された含窒素ヘテロ環基を吸着性基として有する化合物である。
21、R22は水素原子または置換基を表し、これらは一般式(A)のR112と同義の基であり、その好ましい範囲も同じである。
RED2とR21とは互いに結合して環構造を形成していてもよい。
【0071】
ここで形成される環構造とは、5員〜7員の、単環もしくは縮合環の、非芳香族の炭素環またはヘテロ環であり、置換基を有していてもよい。
但し、該環構造が、芳香族環または芳香族ヘテロ環のテトラヒドロ体、ヘキサヒドロ体もしくはオクタヒドロ体に相当する環構造であることはない。
置換基としては一般式(A)のRED11が置換基を有する時の置換基の例と同じものが挙げられる。
環構造として好ましくは、芳香族環または芳香族ヘテロ環のジヒドロ体に相当する環構造で、その具体例としては、例えば2−ピロリン環、2−イミダゾリン環、2−チアゾリン環、1,2−ジヒドロピリジン環、1,4−ジヒドロピリジン環、インドリン環、ベンゾイミダゾリン環、ベンゾチアゾリン環、ベンゾオキサゾリン環、2,3−ジヒドロベンゾチオフェン環、2,3−ジヒドロベンゾフラン環、ベンゾ−α−ピラン環、1,2−ジヒドロキノリン環、1,2−ジヒドロキナゾリン環、1,2−ジヒドロキノキサリン環などが挙げられる。
【0072】
好ましくは、2−イミダゾリン環、2−チアゾリン環、インドリン環、ベンゾイミダゾリン環、ベンゾチアゾリン環、ベンゾオキサゾリン環、1,2−ジヒドロピリジン環、1,2−ジヒドロキノリン環、1,2−ジヒドロキナゾリン環、1,2−ジヒドロキノキサリン環などが挙げられ、インドリン環、ベンゾイミダゾリン環、ベンゾチアゾリン環、1,2−ジヒドロキノリン環がより好ましく、インドリン環が特に好ましい。
【0073】
次にタイプ3の化合物について説明する。
タイプ3の化合物は1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合形成過程を経た後に、さらに1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得ることを特徴とする化合物であり、ここに結合形成過程とは炭素−炭素、炭素−窒素、炭素−硫黄、炭素−酸素の原子間結合の形成を意味する。
【0074】
タイプ3の化合物は好ましくは、1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続いて分子内に共存する反応性基部位(炭素−炭素2重結合部位、炭素−炭素3重結合部位、芳香族基部位、またはベンゾ縮環の非芳香族ヘテロ環基部位)と反応して結合を形成した後に、さらに1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得ることを特徴とする化合物である。
【0075】
タイプ3の化合物が1電子酸化されて生成する1電子酸化体とはカチオンラジカル種であるが、そこからプロトンの脱離を伴って中性のラジカル種となる場合も在り得る。
この1電子酸化体(カチオンラジカル種もしくはラジカル種)が、同じ分子内に共存する炭素−炭素2重結合部位、炭素−炭素3重結合部位、芳香族基部位、またはベンゾ縮環の非芳香族ヘテロ環基部位と反応し、炭素−炭素、炭素−窒素、炭素−硫黄、炭素−酸素などの原子間結合を形成して、分子内に新たな環構造を形成する。
その際同時に、もしくはその後に、さらに1電子もしくはそれ以上の電子が放出される点にタイプ3の化合物の特徴がある。
【0076】
さらに詳細に述べるとタイプ3の化合物は、1電子酸化された後にこの結合形成反応により新たに環構造を有するラジカル種を生成するが、このラジカル種から直接もしくはプロトンの脱離を伴って、さらに2電子目の電子が放出され、酸化される特徴を有している。
【0077】
タイプ3の化合物にはさらに、そうして生成した2電子酸化体がその後、ある場合には加水分解反応を受けた後に、またある場合には直接、プロトンの異動に伴なう互変異性化反応を起して、そこからさらに1電子以上、通常2電子以上の電子を放出し、酸化される能力を有しているものが含まれる。
あるいはまたこうした互変異性化反応を経由せずに、直接その2電子酸化体から、さらに1電子以上、通常2電子以上の電子を放出し、酸化される能力を有しているものが含まれる。
【0078】
タイプ3の化合物は好ましくは、一般式(D)で表される。
【0079】
一般式(D)
【化6】
【0080】
一般式(D)においてRED3は1電子酸化され得る還元性基を表し、Y3はRED3が1電子酸化された後に反応する反応性基部位を表し、具体的には炭素−炭素2重結合部位、炭素−炭素3重結合部位、芳香族基部位、またはベンゾ縮環の非芳香族ヘテロ環基部位を含む有機基を表す。
3はRED3とY3とを連結する連結基を表す。
【0081】
一般式(D)においてRED3は、一般式(B)のRED12と同義の基を表す。
一般式(D)においてRED3は、好ましくはアリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリール基、芳香族または非芳香族のヘテロ環基(特に含窒素ヘテロ環基が好ましい)であり、さらに好ましくはアリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、アリール基、芳香族または非芳香族のヘテロ環基であり、このうちヘテロ環基に関しては、テトラヒドロキノリン環基、テトラヒドロキノキサリン環基、テトラヒドロキナゾリン環基、インドリン環基、インドール環基、カルバゾール環基、フェノキサジン環基、フェノチアジン環基、ベンゾチアゾリン環基、ピロール環基、イミダゾール環基、チアゾール環基、ベンゾイミダゾール環基、ベンゾイミダゾリン環基、ベンゾチアゾリン環基、3,4-メチレンジオキシフェニル-1-イル基などが好ましい。
RED3として特に好ましくはアリールアミノ基(特にアニリノ基)、アリール基(特にフェニル基)、芳香族または非芳香族のヘテロ環基である。
【0082】
ここでRED3がアリール基を表す時、アリール基は少なくとも1つの電子供与性基を有していることが好ましい。
ここに電子供与性基とは、即ち、ヒドロキシ基、アルコキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、スルホンアミド基、アシルアミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、活性メチン基、電子過剰な芳香族ヘテロ環基(例えばインドリル基、ピロリル基、インダゾリル基)、窒素原子で置換する非芳香族含窒素ヘテロ環基(ピロリジニル基、インドリニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルホリノ基、チオモルホリノ基など)である。
ここで活性メチン基とは、2つの電子求引性基で置換されたメチン基を意味し、ここに電子求引性基とはアシル基、アルコシキカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、トリフルオロメチル基、シアノ基、ニトロ基、カルボンイミドイル基を意味する。
ここで2つの電子求引性基は互いに結合して環状構造をとっていてもよい。
【0083】
RED3がアリール基を表す時、そのアリール基の置換基としてより好ましくはアルキルアミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、メルカプト基、スルホンアミド基、活性メチン基、窒素原子で置換する非芳香族含窒素ヘテロ環基であり、さらに好ましくはアルキルアミノ基、ヒドロキシ基、活性メチン基、窒素原子で置換する非芳香族含窒素ヘテロ環基であり、最も好ましくはアルキルアミノ基、窒素原子で置換する非芳香族含窒素ヘテロ環基である。
【0084】
一般式(D)においてY3で表される反応性基が置換基を有する炭素−炭素2重結合または炭素−炭素3重結合を含む有機基を表す時、その置換基として好ましくは、アルキル基(好ましくは炭素数1〜8)、アリール基(好ましくは炭素数6〜12)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜8)、カルバモイル基、アシル基、電子供与性基などである。
ここに電子供与性基とは、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜8)、ヒドロキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基(好ましくは炭素数1〜8)、アリールアミノ基(好ましくは炭素数6〜12)、ヘテロ環アミノ基(好ましくは炭素数2〜6)、スルホンアミド基、アシルアミノ基、活性メチン基、メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜8)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜12)、およびこれらの基を置換基に有するアリール基(アリール部分の炭素数は好ましくは6〜12)である。
ヒドロキシ基がシリル基で保護されていてもよく、例えばトリメチルシリルオキシ基、t-ブチルジメチルシリルオキシ基、トリフェニルシリルオキシ基、トリエチルシリルオキシ基、フェニルジメチルシリルオキシ基などが挙げられる。
炭素−炭素2重結合部位および炭素−炭素3重結合部位の例としては、ビニル基、エチニル基が挙げられる。
【0085】
3が置換基を有する炭素−炭素2重結合部位を含む有機基を表すとき、その置換基としてより好ましくは、アルキル基、フェニル基、アシル基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、電子供与基などであり、ここに電子供与性基として好ましくは、アルコキシ基、ヒドロキシ基(シリル基で保護されていてもよい)、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、スルホンアミド基、活性メチン基、メルカプト基、アルキルチオ基、およびこれら電子供与性基を置換基に有するフェニル基である。
【0086】
なおここで炭素−炭素2重結合部位を含む有機基が置換基としてヒドロキシ基を有する時、Y3は右記部分構造:>C1=C2(−OH)−を含むことになるが、これは互変異性化して右記部分構造:>C1H−C2(=O)−となっていても良い。
さらにこの場合に、該C1炭素に置換する置換基が電子求引性基である場合もまた好ましく、この場合Y3は「活性メチレン基」または「活性メチン基」の部分構造を有することになる。
このような活性メチレン基または活性メチン基の部分構造を与え得る電子求引性基とは、上述の「活性メチン基」の説明の中で説明したものと同じである。
【0087】
3が置換基を有する炭素−炭素3重結合部位を含む有機基を表すとき、その置換基としてはアルキル基、フェニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、電子供与基などが好ましく、ここに電子供与性基として好ましくは、アルコキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、スルホンアミド基、アシルアミノ基、活性メチン基、メルカプト基、アルキルチオ基、およびこれら電子供与性基を置換基に有するフェニル基である。
【0088】
3が芳香族基部位を含む有機基を表す時、芳香族基として好ましくは電子供与性基を置換基として有するアリール基(特にフェニル基が好ましい)またはインドール環基で、ここに電子供与性基として好ましくは、ヒドロキシ基(シリル基で保護ざれていてもよい)、アルコキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、活性メチン基、スルホンアミド基、メルカプト基である。
【0089】
3がベンゾ縮環の非芳香族ヘテロ環基部位を含む有機基を表す時、ベンゾ縮環の非芳香族ヘテロ環基として好ましくはアニリン構造を部分構造として内在するもので、例えば、インドリン環基、1,2,3,4−テトラヒドロキノリン環基、1,2,3,4−テトラヒドロキノキサリン環基、4−キノロン環基などが挙げられる。
【0090】
一般式(D)においてY3で表される反応性基としてより好ましくは、炭素−炭素2重結合部位、芳香族基部位、またはベンゾ縮環の非芳香族ヘテロ環基を含む有機基である。
さらに好ましくは、炭素−炭素2重結合部位、電子供与性基を置換基として有するフェニル基、インドール環基、アニリン構造を部分構造として内在するベンゾ縮環の非芳香族ヘテロ環基である。
ここに炭素−炭素2重結合部位は少なくとも1つの電子供与性基を置換基として有することがより好ましい。
【0091】
一般式(D)においてY3で表される反応性基が、これまでに説明した範囲から選択された結果として、一般式(D)においてRED3で表される還元性基と同じ部分構造を有する場合もまた、一般式(D)で表される化合物の好ましい例である。
【0092】
一般式(D)においてL3は、RED3とY3とを連結する連結基を表し、具体的には単結合、アルキレン基、アリーレン基、ヘテロ環基、−O−、−S−、−NRN−、−C(=O)−、−SO2−、−SO−、−P(=O)−の各基の単独、またはこれらの基の組み合わせからなる基を表す。
ここにRNは水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基を表す。
3で表される連結基は置換基を有していてもよい。
置換基としては、一般式(A)のRED11が有していてもよい置換基として説明したものと同じものが挙げられる。
3で表される連結基は、RED3およびY3で表される基の任意の位置で、それぞれの任意の1個の水素原子と置換する形で、連結され得る。
【0093】
一般式(D)のL3で表される基は、一般式(D)のRED3が酸化されて生成するカチオンラジカル種(X+・)、またはそこからプロトンの脱離を伴って生成するラジカル種(X・)と、一般式(D)のY3で表される反応性基とが反応して結合形成する際、これに関わる原子団が、L3を含めて3〜7員の環状構造を形成しうることが好ましい。
この為にはラジカル種(X+・またはX・)、Yで表される反応性基、およびLが、3〜7個の原子団で連結されていることが好ましい。
【0094】
3の好ましい例としては、単結合、アルキレン基(特にメチレン基、エチレン基、プロピレン基)、アリーレン基(特にフェニレン基)、−C(=O)−基、−O−基、−NH−基、−N(アルキル基)−基、およびこれらの基の組み合わせからなる2価の連結基が挙げられる。
【0095】
一般式(D)で表される化合物のうち、好ましい化合物は、以下の一般式(D−1)〜(D−4)によって表される。
【0096】
【化7】
【0097】
一般式(D−1)〜(D−4)においてA100、A200、A400はアリーレン基または2価のヘテロ環基を表し、A300はアリール基またはヘテロ環基を表わす。
これらの環基の好ましい範囲は一般式(D)のRED3の好ましい範囲と同じである。
301、L302、L303、L304は連結基を表し、これは一般式(D)のL3と同義の基を表し、その好ましい範囲もまた同じである。
100、Y200、Y300、Y400は反応性基を表し、これは一般式(D)のY3と同義の基を表し、その好ましい範囲もまた同じである。
3100、R3110、R3200、R3210、R3310は水素原子または置換基を表す。
3100、R3110は好ましくは水素原子、アルキル基またはアリール基である。
3200、R3310は好ましくは水素原子である。
3210は好ましくは置換基であり、置換基として好ましくはアルキル基またはアリール基である。
3110はA100と、R3210はA200と、R3310はA300と、それぞれ結合して環構造を形成していてもよい。
ここに形成される環構造として好ましくは、テトラリン環、インダン環、テトラヒドロキノリン環、インドリン環などである。
400はヒドロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基を表し、好ましくはヒドロキシ基、メルカプト基で、より好ましくはメルカプト基である。
【0098】
一般式(D−1)〜(D−4)のうち、より好ましい化合物は、一般式(D−2)、 (D−3)、(D−4)で表される化合物である。
さらに好ましくは一般式 (D−2)または(D−3)で表される化合物である。
【0099】
次にタイプ4の化合物について説明する。
タイプ4の化合物は還元性基の置換した環構造を有する化合物であり、該還元性基が1電子酸化された後、環構造の開裂反応を伴ってさらに1電子もしくはそれ以上の電子を放出しうる化合物である。
タイプ4の化合物は1電子酸化を受けた後に環構造が開裂する。ここで言う環の開裂反応は、下記で表される形式のものを指す。
【0100】
【化8】
【0101】
式中、化合物aはタイプ4の化合物を表す。
化合物a中、Dは還元性基を表し、X、Yは環構造中の1電子酸化後に開裂する結合を形成している原子を表す。
まず、化合物aが1電子酸化されて 1電子酸化体bを生成する。ここからD−Xの単結合が2重結合になると同時にX−Yの結合が切断され開環体cが生成する。あるいはまた1電子酸化体bからプロトンの脱離を伴ってラジカル中間体dが生成し、ここから同様に開環体eを生成する経路をとる場合もある。
このように生成した開環体cまたはeから、引き続きさらに1つ以上の電子が放出される点に本発明の化合物の特徴がある。
【0102】
タイプ4の化合物が有する環構造とは、3〜7員環の炭素環またはヘテロ環であり、単環もしくは縮環の、飽和もしくは不飽和の非芳香族の環を表す。
好ましくは飽和の環構造であり、より好ましくは3員環あるいは4員環である。好ましい環構造としてはシクロプロパン環、シクロブタン環、オキシラン環、オキセタン環、アジリジン環、アゼチジン環、エピスルフィド環、チエタン環が挙げられる。
より好ましくはシクロプロパン環、シクロブタン環、オキシラン環、オキセタン環、アゼチジン環であり、特に好ましくはシクロプロパン環、シクロブタン環、アゼチジン環である。
環構造は置換基を有していても良い。
【0103】
タイプ4の化合物は好ましくは一般式(E)または(F)で表される。
【0104】
一般式(E)
【化9】
【0105】
一般式(F)
【化10】
【0106】
一般式(E)および一般式(F)においてRED41およびRED42は、それぞれ一般式(B)のRED12と同義の基を表し、その好ましい範囲もまた同じである。R40〜R44およびR45〜R49は、それぞれ水素原子または置換基を表す。置換基とてはRED12が有していてもよい置換基と同じものが挙げられる。
一般式(F)においてZ42は、−CR420421−、−NR423−、または−O−を表す。ここにR420、R421は、それぞれ水素原子または置換基を表し、R423は水素原子、アルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。
【0107】
一般式(E)においてR40は、好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、カルバモイル基、シアノ基、スルファモイル基を表し、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、カルバモイル基であり、特に好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基である。
【0108】
41〜R44は、これらのうち少なくとも1つがドナー性基である場合と、R41とR42、あるいはR43とR44がともに電子求引性基である場合が好ましい。より好ましくはR41〜R44の少なくとも1つがドナー性基である場合である。さらに好ましくはR41〜R44の少なくとも1つがドナー性基であり且つ、R41〜R44の中でドナー性基でない基が水素原子またはアルキル基である場合である。
【0109】
ここで言うドナー性基とは、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、メルカプト基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、活性メチン基、あるいはRED41およびRED42として好ましい基の群から選ばれる基である。
ドナー性基として好ましくはアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、窒素原子を環内に1つ持つ5員環の芳香族ヘテロ環基(単環でも縮環でもよい)、窒素原子で置換する非芳香族含窒素ヘテロ環基、少なくとも1つの電子供与性基で置換されたフェニル基(ここでは電子供与性基はヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、または窒素原子で置換する非芳香族含窒素ヘテロ環基を表す)が用いられる。
より好ましくはアルキルアミノ基、アリールアミノ基、窒素原子を環内に1つ持つ5員環の芳香族ヘテロ環基(ここでは芳香族ヘテロ環はインドール環、ピロール環、カルバゾール環を表す)、電子供与性基で置換されたフェニル基(ここでは特に3つ以上のアルコキシ基で置換されたフェニル基、ヒドロキシ基またはアルキルアミノ基またはアリールアミノ基で置換されたフェニル基を表す)が用いられる。
特に好ましくはアリールアミノ基、窒素原子を環内に1つ持つ5員環の芳香族ヘテロ環基(ここでは3−インドリル基を表す)、電子供与性基で置換されたフェニル基(ここでは特にトリアルコキシフェニル基、アルキルアミノ基またはアリールアミノ基で置換されたフェニル基を表す)が用いられる。
電子求引性基は、既に活性メチン基についての説明の中で説明したものと同じである。
【0110】
一般式(F)においてR45の好ましい範囲は、上述の一般式(E)のR40のそれと同じである。
46〜R49として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、メルカプト基、アリールチオ基、アルキルチオ基、アシルアミノ基、スルホンアミノ基であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基である。
特に好ましいR46〜R49は、Z42が−CR420421−で表される基の場合には水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基であり、Z42が−NR423−を表す場合には水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基であり、Z42が−O−を表す場合には水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基である。
【0111】
42として好ましくは−CR420421−または−NR423−であり、より好ましくは−NR423−である。
420、R421は好ましくは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基、メルカプト基、アシルアミノ基、スルホンアミノ基であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アミノ基である。
423は好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、芳香族ヘテロ環基を表し、より好ましくはメチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、t-アミル基、ベンジル基、ジフェニルメチル基、アリル基、フェニル基、ナフチル基、2−ピリジル基、4−ピリジル基、2−チアゾリル基である。
【0112】
40〜R49およびR420、R421、R423の各基が置換基である場合にはそれぞれ総炭素数が40以下のものが好ましく、より好ましくは総炭素数30以下で、特に好ましくは総炭素数15以下である。
またこれらの置換基は互いに結合して、あるいは分子中の他の部位(RED41、RED42あるいはZ42)と結合して環を形成していても良い。
【0113】
発明のタイプ1、3、4の化合物は、「分子内にハロゲン化銀への吸着性基を有する化合物」である。
タイプ2の化合物は、「分子内にハロゲン化銀への吸着性基を2つ以上有する化合物」である。
タイプ1〜4の化合物はさらに好ましくは「2つ以上のメルカプト基で置換された含窒素ヘテロ環基を吸着性基として有する化合物」である。
【0114】
本発明のタイプ1〜4の化合物においてハロゲン化銀への吸着性基とは、ハロゲン化銀に直接吸着する基、またはハロゲン化銀への吸着を促進する基である。
但し、本発明のタイプ2の化合物においては、吸着性基としてスルフィド基は含まれない。
【0115】
吸着性基としてメルカプト基(またはその塩)とは、メルカプト基(またはその塩)そのものを意味すると同時に、より好ましくは、少なくとも1つのメルカプト基(またはその塩)の置換したヘテロ環基またはアリール基またはアルキル基を表す。
ここにヘテロ環基は、5員〜7員の、単環もしくは縮合環の、芳香族または非芳香族のヘテロ環基で、例えばイミダゾール環基、チアゾール環基、オキサゾール環基、ベンズイミダゾール環基、ベンズチアゾール環基、ベンズオキサゾール環基、トリアゾール環基、チアジアゾール環基、オキサジアゾール環基、テトラゾール環基、プリン環基、ピリジン環基、キノリン環基、イソキノリン環基、ピリミジン環基、トリアジン環基等が挙げられる。
また4級化された窒素原子を含むヘテロ環基でもよく、この場合、置換したメルカプト基が解離してメソイオンとなっていてもよく、この様なヘテロ環基の例としてはイミダゾリウム環基、ピラゾリウム環基、チアゾリウム環基、トリアゾリウム環基、テトラゾリウム環基、チアジアゾリウム環基、ピリジニウム環基、ピリミジニウム環基、トリアジニウム環基などが挙げられ、中でもトリアゾリウム環基(例えば1,2,4−トリアゾリウム−3−チオレート環基)が好ましい。アリール基としてはフェニル基またはナフチル基が挙げられる。
アルキル基としては炭素数1〜30の直鎖または分岐または環状のアルキル基が挙げられる。
メルカプト基が塩を形成するとき、対イオンとしてはアルカリ金属、アルカリ土類金属、重金属などのカチオン(Li+、Na+、K+、Mg2+、Ag+、Zn2+等)、アンモニウムイオン、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基、ホスホニウムイオンなどが挙げられる。
【0116】
吸着性基としてのメルカプト基はさらにまた、互変異性化してチオン基となっていてもよく、具体的にはチオアミド基(ここでは−C(=S)−NH−基)、および該チオアミド基の部分構造を含む基、すなわち、鎖状もしくは環状のチオアミド基、チオウレイド基、チオウレタン基、またはジチオカルバミン酸エステル基などが挙げられる。
ここで環状の例としてはチアゾリジン−2−チオン基、オキサゾリジン−2−チオン基、2−チオヒダントイン基、ローダニン基、イソローダニン基、チオバルビツール酸基、2−チオキソ−オキサゾリジン−4−オン基などが挙げられる。
【0117】
吸着性基としてチオン基とは、上述のメルカプト基が互変異性化してチオン基となった場合を含め、メルカプト基に互変異性化できない(チオン基のα位に水素原子を持たない)、鎖状もしくは環状のチオアミド基、チオウレイド基、チオウレタン基、またはジチオカルバミン酸エステル基も含まれる。
【0118】
吸着性基として窒素原子、硫黄原子、セレン原子およびテルル原子から選ばれる少なくとも1つの原子を含むヘテロ環基とは、イミノ銀(>NAg)を形成しうる−NH−基をヘテロ環の部分構造として有する含窒素ヘテロ環基で、ベンゾトリアゾール基、トリアゾール基、インダゾール基、ピラゾール基、テトラゾール基、ベンズイミダゾール基、イミダゾール基、プリン基などが挙げられる。
【0123】
本発明において吸着性基は、メルカプト置換含窒素ヘテロ環基(例えば2−メルカプトチアジアゾール基、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール基、5−メルカプトテトラゾール基、2−メルカプト−1,3,4−オキサジアゾール基、2−メルカプトベンズオキサゾール基、2−メルカプトベンズチアゾール基、1,5−ジメチル−1,2,4−トリアゾリウム−3−チオレート基など)、またはイミノ銀(>NAg)を形成しうる−NH−基をヘテロ環の部分構造として有する含窒素ヘテロ環基(例えば、ベンゾトリアゾール基、ベンズイミダゾール基、インダゾール基など)である。
特に好ましくは、5−メルカプトテトラゾール基、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール基、およびベンゾトリアゾール基であり、最も好ましいのは、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール基、および5−メルカプトテトラゾール基である。
【0124】
本発明の化合物のうち、分子内に2つ以上のメルカプト基を部分構造として有する化合物もまた特に好ましい化合物である。
ここにメルカプト基(−SH)は、互変異性化できる場合にはチオン基となっていてもよい。
この様な化合物の例としては、以上述べてきたメルカプト基もしくはチオン基を部分構造として有する吸着性基(例えば環形成チオアミド基、アルキルメルカプト基、アリールメルカプト基、ヘテロ環メルカプト基など)を分子内に2つ以上有する化合物であってもよいし、また吸着性基の中で、2つ以上のメルカプト基またはチオン基を部分構造として有する吸着性基(例えばジメルカプト置換含窒素テロ環基)を、1つ以上有していてもよい。
【0125】
2つ以上のメルカプト基を部分構造として有する吸着性基(ジメルカプト置換含窒素テロ環基など)の例としては、2,4−ジメルカプトピリミジン基、2,4−ジメルカプトトリアジン基、3,5−ジメルカプト−1,2,4−トリアゾール基、2,5−ジメルカプト−1,3−チアゾール基、2,5−ジメルカプト−1,3−オキサゾール基、2,7−ジメルカプト−5−メチル−s−トリアゾロ(1,5−A)−ピリミジン、2,6,8−トリメルカプトプリン、6,8−ジメルカプトプリン、3,5,7−トリメルカプト−s−トリアゾロトリアジン、4,6−ジメルカプトピラゾロピリミジン、2,5−ジメルカプトイミダゾールなどが挙げられ、2,4−ジメルカプトピリミジン基、2,4−ジメルカプトトリアジン基、3,5−ジメルカプト−1,2,4−トリアゾール基が特に好ましい。
【0126】
吸着性基は、一般式(A)〜(F)および一般式(1)〜(3)のどこに置換されていてもよいが、一般式(A)〜(D)においては、RED11、RED12、RED2、RED3に、一般式(E)、(F)においては、RED41、R41、RED42、R46〜R48に、一般式(1)〜(3)においては、R1、R2、R11、R12、R31、L1、L21、L31を除く任意の位置に置換されていることが好ましく、さらに、一般式(A)〜(F)全て、RED11〜RED42に置換されていることがより好ましい。
【0128】
本発明のタイプ1〜4の化合物は、その総炭素数が10〜60の範囲のものが好ましい。より好ましくは10〜50、さらに好ましくは11〜40であり、特に好ましくは12〜30である。
【0129】
本発明のタイプ1〜4の化合物は、これを用いたハロゲン化銀写真感光材料が露光されることを引き金に1電子酸化され、引き続く反応の後、さらに1電子、あるいはタイプによっては2電子以上の電子が放出され、酸化されるが、その1電子目の酸化電位は、約1.4V以下が好ましく、さらには1.0V以下が好ましい。
この酸化電位は好ましくは0Vより高く、より好ましくは0.3Vより高い。
従って酸化電位は好ましくは約0〜約1.4V、より好ましくは約0.3〜約1.0Vの範囲である。
【0130】
ここに酸化電位はサイクリックボルタンメトリーの技法で測定でき、具体的には試料をアセトニトリル:水(0.1Mの過塩素酸リチウムを含む)=80%:20%(容量%)の溶液に溶解し、10分間窒素ガスを通気した後、ガラス状のカーボンディスクを動作電極に用い、プラチナ線を対電極に用い、そしてカロメル電極(SCE)を参照電極に用いて、25℃で、0.1V/秒の電位走査速度で測定したものである。サイクリックボルタンメトリー波のピーク電位の時に酸化電位対SCEをとる。
【0131】
本発明のタイプ1〜4の化合物が1電子酸化され、引き続く反応の後、さらに1電子を放出する化合物である場合には、この後段の酸化電位は好ましくは−0.5V〜−2Vであり、より好ましくは−0.7V〜2Vであり、さらに好ましくは−0.9V〜−1.6Vである。
【0132】
本発明のタイプ1〜4の化合物が1電子酸化され、引き続く反応の後、さらに2電子以上の電子を放出し、酸化される化合物である場合には、この後段の酸化電位については特に制限はない。
2電子目の酸化電位と3電子目以降の酸化電位が明確に区別できない点で、これらを実際に正確に測定し区別することは困難な場合が多いためである。
【0133】
以下に本発明のタイプ1〜4の化合物の具体例を列挙するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0134】
【化11】
【0135】
【化12】
【0136】
【化13】
【0137】
【化14】
【0138】
【化15】
【0139】
【化16】
【0140】
【化17】
【0141】
本発明のタイプ1〜4の化合物は、それぞれ特願2002−192373号、特願2002−188537号、特願2002−188536号、特願2001−272137号において、詳細に説明した化合物と同じものである。
これら特許出願明細書に記載した具体的化合物例もまた、本発明のタイプ1〜4の化合物の具体例として挙げることができる。
また本発明のタイプ1〜4の化合物の合成例も、これら特許に記載したものと同じである。
【0142】
本発明のタイプ1〜4の化合物は、感光性ハロゲン化銀乳剤調製時、熱現像感光材料製造工程中のいかなる場合にも使用しても良い。例えば感光性ハロゲン化銀粒子形成時、脱塩工程、化学増感時、塗布前などである。またこれらの工程中の複数回に分けて添加することも出来る。添加位置として好ましくは、感光性ハロゲン化銀粒子形成終了時から脱塩工程の前、化学増感時(化学増感開始直前から終了直後)、塗布前であり、より好ましくは化学増感時から非感光性有機銀塩と混合される前までである。
【0143】
本発明のタイプ1〜4の化合物は、水、メタノール、エタノールなどの水可溶性溶媒またはこれらの混合溶媒に溶解して添加することが好ましい。
水に溶解する場合、pHを高くまたは低くした方が溶解度が上がる化合物については、pHを高くまたは低くして溶解し、これを添加しても良い。
【0144】
本発明のタイプ1〜4の化合物は、感光性ハロゲン化銀と非感光性有機銀塩を含有する画像形成層中に使用するのが好ましいが、画像形成層と共に表面保護層や中間層に添加しておき、塗布時に拡散させてもよい。
本発明の化合物の添加時期は増感色素の前後を問わず、それぞれ好ましくはハロゲン化銀1モル当り、1×10-9〜5×10-1モル、更に好ましくは1×10-8〜5×10-2モルの割合で感光性ハロゲン化銀乳剤を含有する層に含有する。
【0145】
1−1−2.感光性ハロゲン化銀
1)ハロゲン組成
本発明に用いられる感光性ハロゲン化銀は、ヨウ化銀含有率が40モル%以上、100モル%以下と高い組成のものであることが重要である。残りは特に制限はなく、塩化銀、臭化銀またはチオシアン酸銀や燐酸銀などの有機銀塩から選ぶことができるが、特に臭化銀、塩化銀であることが好ましい。この様なヨウ化銀含有率が高い組成のハロゲン化銀を用いることによって、現像処理後の画像保存性、特に光照射によるカブリの増加が著しく小さい好ましい熱現像感光材料が設計できる。
【0146】
さらに、ヨウ化銀含有率が80モル%以上100モル%以下であると好ましく、特に85モル%以上100モル%以下、ないし90モル%以上100モル%以下であることが処理後の光照射に対する画像保存性の観点では極めて好ましい。
【0147】
粒子内におけるハロゲン組成の分布は均一であってもよく、ハロゲン組成がステップ状に変化したものでもよく、或いは連続的に変化したものでもよい。また、コア/シェル構造を有するハロゲン化銀粒子も好ましく用いることができる。構造として好ましいものは2〜5重構造であり、より好ましくは2〜4重構造のコア/シェル粒子を用いることができる。コア部のヨウ化銀含有率が高いコア高ヨウ化銀構造、またはシェル部のヨウ化銀含有率が高いシェル高ヨウ化銀構造も好ましく用いることができる。また、粒子の表面にエピタキシャル部分とした塩化銀や臭化銀を局在させる技術も好ましく用いることができる。
【0148】
2)粒子サイズ
本発明に用いる高ヨウ化銀のハロゲン化銀については、粒子サイズは特に重要である。ハロゲン化銀のサイズが大きいと、必要な最高濃度を達成するために必要なハロゲン化銀の塗布量が増加する。本発明者は、本発明で好ましく用いられるヨウ化銀含有率の高い組成のハロゲン化銀は、その塗布量が多いと現像が著しく抑制され低感化するとともに現像の時間に対する濃度安定性が悪化し好ましくなく、そのため一定以上の粒子サイズでは所定の現像時間で最高濃度が得られないことを見出した。一方、その添加量を制限すればヨウ化銀ながら十分な現像性を有することを発見した。
【0149】
この様に高ヨウ化銀を用いた場合、十分な最高光学濃度を達成するためには、ハロゲン化銀粒子のサイズは従来の臭化銀や低ヨウド含量のヨウ臭化銀に比べて十分に小さいことが必要である。好ましいハロゲン化銀の粒子サイズは5nm以上70nm以下であり、さらに5nm以上55nm以下であることが好ましい。特に好ましくは10nm以上45nm以下である。ここでいう粒子サイズとは、電子顕微鏡により観察した投影面積と同面積の円像に換算したときの直径の平均をいう。
【0150】
3)塗布量
この様なハロゲン化銀粒子の塗布量は、後述する非感光性有機銀塩の銀1モルに対して0.5モル%以上15モル%以下、好ましくは0.5モル%以上12モル%以下、10モル%以下であることがさらに好ましい。1モル%以上9モル%以下であることがより好ましく、特に好ましくは1モル%以上7モル%以下である。本発明者の見出したヨウ化銀含有率の高い組成のハロゲン化銀による著しい現像抑制を押さえるためには、この添加量の選択は極めて重要である。
【0151】
4)粒子形成方法
感光性ハロゲン化銀の形成方法は当業界ではよく知られており、例えば、リサーチディスクロージャー1978年6月の第17029号、および米国特許第3,700,458号に記載されている方法を用いることができるが、具体的にはゼラチンあるいは他のポリマー溶液中に銀供給化合物及びハロゲン供給化合物を添加することにより感光性ハロゲン化銀を調製し、その後で有機銀塩と混合する方法を用いる。また、特開平11-119374号公報の段落番号0217〜0224に記載されている方法、特開平11-352627号、特願2000-42336号記載の方法も好ましい。
【0152】
5)粒子形状
ハロゲン化銀粒子の形状としては立方体粒子、八面体粒子、14面体粒子、12面体粒子、平板状粒子、球状粒子、棒状粒子、ジャガイモ状粒子等を挙げることができる。とくに、12面体粒子、14面体粒子、と平板状粒子が好ましい。本発明のヨウ化銀含有率の高い組成のハロゲン化銀は複雑な形態を取り得るが、好ましい形態は例えば、R.L.JENKINS etal. J of Phot. Sci. Vol.28 (1980)のp164-Fig1に示されているような接合粒子が挙げられる。同Fig.1に示されているような平板上粒子も好ましく用いられる。ハロゲン化銀粒子のコーナーが丸まった粒子も好ましく用いることができる。感光性ハロゲン化銀粒子の外表面の面指数(ミラー指数)については特に制限はないが、分光増感色素が吸着した場合の分光増感効率が高い[100]面の占める割合が高いことが好ましい。その割合としては50%以上が好ましく、65%以上がより好ましく、80%以上が更に好ましい。ミラー指数[100]面の比率は増感色素の吸着における[111]面と[100]面との吸着依存性を利用したT.Tani;J.Imaging Sci.,29、165(1985年)に記載の方法により求めることができる。
【0153】
6)重金属
本発明の感光性ハロゲン化銀粒子は、周期律表(第1〜18族までを示す)の第8族〜第10族の金属または金属錯体を含有することができる。周期律表の第8族〜第10族の金属または金属錯体の中心金属として好ましくは、ロジウム、ルテニウム、イリジウムである。これら金属錯体は1種類でもよいし、同種金属及び異種金属の錯体を2種以上併用してもよい。好ましい含有率は銀1モルに対し1×10-9モルから1×10-3モルの範囲が好ましい。これらの重金属や金属錯体及びそれらの添加法については特開平7-225449号、特開平11-65021号段落番号0018〜0024、特開平11-119374号段落番号0227〜0240に記載されている。
【0154】
本発明においては、六シアノ金属錯体を粒子最表面に存在させたハロゲン化銀粒子が好ましい。六シアノ金属錯体としては、[Fe(CN)6]4-、[Fe(CN)6]3-、[Ru(CN)6]4-、[Os(CN)6]4-、[Co(CN)6]3-、[Rh(CN)6]3-、[Ir (CN)6]3-、[Cr(CN)6]3-、[Re(CN)6]3-などが挙げられる。本発明においては六シアノFe錯体が好ましい。
【0155】
六シアノ金属錯体は、水溶液中でイオンの形で存在するので対陽イオンは重要ではないが、水と混和しやすく、ハロゲン化銀乳剤の沈澱操作に適合しているナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオンおよびリチウムイオン等のアルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、アルキルアンモニウムイオン(例えばテトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラプロピルアンモニウムイオン、テトラ(n-ブチル)アンモニウムイオン)を用いることが好ましい。
【0156】
六シアノ金属錯体は、水の他に水と混和しうる適当な有機溶媒(例えば、アルコール類、エーテル類、グリコール類、ケトン類、エステル類、アミド類等)との混合溶媒やゼラチンと混和して添加することができる。
【0157】
六シアノ金属錯体の添加量は、銀1モル当たり1×10-5モル以上1×10-2モル以下が好ましく、より好ましくは1×10-4モル以上1×10-3モル以下である。
【0158】
六シアノ金属錯体をハロゲン化銀粒子最表面に存在させるには、六シアノ金属錯体を、粒子形成に使用する硝酸銀水溶液を添加終了した後、硫黄増感、セレン増感およびテルル増感のカルコゲン増感や金増感等の貴金属増感を行う化学増感工程の前までの仕込工程終了前、水洗工程中、分散工程中、または化学増感工程前に直接添加する。ハロゲン化銀微粒子を成長させないためには、粒子形成後速やかに六シアノ金属錯体を添加することが好ましく、仕込工程終了前に添加することが好ましい。
【0159】
尚、六シアノ金属錯体の添加は、粒子形成をするために添加する硝酸銀の総量の96質量%を添加した後から開始してもよく、98質量%添加した後から開始するのがより好ましく、99質量%添加した後が特に好ましい。
これら六シアノ金属錯体を粒子形成の完了する直前の硝酸銀水溶液を添加した後に添加すると、ハロゲン化銀粒子最表面に吸着することができ、そのほとんどが粒子表面の銀イオンと難溶性の塩を形成する。この六シアノ鉄(II)の銀塩は、AgIよりも難溶性の塩であるため、微粒子による再溶解を防ぐことができ、粒子サイズが小さいハロゲン化銀微粒子を製造することが可能となった。
【0160】
さらに本発明に用いられるハロゲン化銀粒子に含有することのできる金属原子(例えば[Fe(CN)6]4-)、ハロゲン化銀乳剤の脱塩法や化学増感法については特開平11-84574号段落番号0046〜0050、特開平11-65021号段落番号0025〜0031、特開平11-119374号段落番号0242〜0250に記載されている。
【0161】
7)ゼラチン
本発明に用いる感光性ハロゲン化銀乳剤に含有されるゼラチンとしては、種々のゼラチンが使用することができる。感光性ハロゲン化銀乳剤の有機銀塩含有塗布液中での分散状態を良好に維持するために、分子量は、500〜60,000の低分子量ゼラチンを使用することが好ましい。これらの低分子量ゼラチンは粒子形成時あるいは脱塩処理後の分散時に使用してもよいが、脱塩処理後の分散時に使用することが好ましい。
【0162】
8)化学増感
本発明に用いられる感光性ハロゲン化銀は、未化学増感でもよいが、カルコゲン増感法、金増感法、還元増感法の少なくとも1つの方法で化学増感されるのが好ましい。カルコゲン増感法としては、硫黄増感法、セレン増感法およびテルル増感法が挙げられる。
【0163】
硫黄増感においては、不安定硫黄化合物を用い、P.Grafkides著、Chimie et Physique Photographique(Paul Momtel社刊、1987年、第5版)、Research Disclosure誌307巻307105号などに記載されている不安定硫黄化合物を用いる事が出来る。
具体的には、チオ硫酸塩(例えばハイポ)、チオ尿素類(例えば、ジフェニルチオ尿素、トリエチルチオ尿素、NーエチルーN´ー(4ーメチルー2ーチアゾリル)チオ尿素、カルボキシメチルトリメチルチオ尿素)、チオアミド類(例えば、チオアセトアミド)、ローダニン類(例えば、ジエチルローダニン、5ーベンジリデン−N−エチルローダニン)、フォスフィンスルフィド類(例えば、トリメチルフォスフィンスルフィド)、チオヒダントイン類、4ーオキソーオキサゾリジンー2ーチオン類、ジスルフィド類またはポリスルフィド類(例えば、ジモルフォリンジスルフィド、シスチン、ヘキサチオカンーチオン)、ポリチオン酸塩、元素状硫黄などの公知の硫黄化合物および活性ゼラチンなども用いることができる。特にチオ硫酸塩、チオ尿素類とローダニン類が好ましい。
【0164】
セレン増感においては、不安定セレン化合物を用い、特公昭43ー13489号、同44ー15748号、特開平4ー25832号、同4ー109340号、同4ー271341号、同5ー40324号、同5ー11385号、特願平4ー202415号、同4ー330495号、同4ー333030号、同5ー4203号、同5ー4204号、同5ー106977号、同5ー236538号、同5ー241642号、同5ー286916号などに記載されているセレン化合物を用いる事が出来る。
【0165】
具体的には、コロイド状金属セレン、セレノ尿素類(例えば、N,Nージメチルセレノ尿素、トリフルオルメチルカルボニルートリメチルセレノ尿素、アセチルートリメチルセレノ尿素)、セレノアミド類(例えば、セレノアミド,N,Nージエチルフェニルセレノアミド)、フォスフィンセレニド類(例えば、トリフェニルフォスフィンセレニド、ペンタフルオロフェニルートリフェニルフォスフィンセレニド)、セレノフォスフェート類(例えば、トリーp−トリルセレノフォスフェート、トリ−n−ブチルセレノフォスフェート)、セレノケトン類(例えば、セレノベンゾフェノン)、イソセレノシアネート類、セレノカルボン酸類、セレノエステル類、ジアシルセレニド類などを用いればよい。またさらに、特公昭46ー4553号、同52ー34492号などに記載の非不安定セレン化合物、例えば亜セレン酸、セレノシアン酸塩、セレナゾール類、セレニド類なども用いる事が出来る。特に、フォスフィンセレニド類、セレノ尿素類とセレノシアン酸塩が好ましい。
【0166】
テルル増感においては、不安定テルル化合物を用い、特開平4ー224595号、同4ー271341号、同4ー333043号、同5ー303157号、同6−27573号、同6−175258号、同6−180478号、同6−208186号、同6−208184号、同6−317867号、同7−140579号、同7−301879号、同7−301880号などに記載されている不安定テルル化合物を用いる事が出来る。
【0167】
具体的には、フォスフィンテルリド類(例えば、ブチルージイソプロピルフォスフィンテルリド、トリブチルフォスフィンテルリド、トリブトキシフォスフィンテルリド、エトキシージフェニルフォスフィンテルリド)、ジアシル(ジ)テルリド類(例えば、ビス(ジフェニルカルバモイル)ジテルリド、ビス(N−フェニルーN−メチルカルバモイル)ジテルリド、ビス(N−フェニルーNーメチルカルバモイル)テルリド、ビス(N−フェニルーNーベンジルカルバモイル)テルリド、ビス(エトキシカルボニル)テルリド)、テルロ尿素類(例えば、N,N´ージメチルエチレンテルロ尿素、N,N´ージフェニルエチレンテルロ尿素)テルロアミド類、テルロエステル類などを用いれば良い。特に、ジアシル(ジ)テルリド類とフォスフィンテルリド類が好ましく、特に特開平11-65021号段落番号0030に記載の文献に記載の化合物、特開平5-313284号中の一般式(II),(III),(IV)で示される化合物がより好ましい。
【0168】
特に本発明のカルコゲン増感においてはセレン増感とテルル増感が好ましく、特にテルル増感が好ましい。
【0169】
金増感においては、P.Grafkides著、Chimie et Physique Photographique(Paul Momtel社刊、1987年、第5版)、Research Disclosure誌307巻307105号に記載されている金増感剤を用いることができる。具体的には、塩化金酸、カリウムクロロオーレート、カリウムオーリチオシアネート、硫化金、金セレニドなどでありこれらにくわえて、米国特許第2642361号、同5049484号、同5049485号、同5169751号、同5252455号、ベルギー特許第691857などに記載の金化合物も用いることが出来る。またP.Grafkides著、Chimie et Physique Photographique(Paul Momtel社刊、1987年、第5版)、Research Disclosure誌307巻307105号に記載されている金以外の、白金、パラジュウム、イリジュウムなどの貴金属塩を用いる事も出来る。
【0170】
金増感は単独で用いることもできるが、前記のカルコゲン増感と組み合わせて用いることが好ましい。具体的には金硫黄増感、金セレン増感、金テルル増感、金硫黄セレン増感、金硫黄テルル増感、金セレンテルル増感、金硫黄セレンテルル増感である。
【0171】
本発明においては、化学増感は粒子形成後で塗布前であればいかなる時期でも可能であり、脱塩後、(1)分光増感前、(2)分光増感と同時、(3)分光増感後、(4)塗布直前等があり得る。
【0172】
本発明で用いられるカルコゲン増感剤の使用量は、使用するハロゲン化銀粒子、化学熟成条件等によって変わるが、ハロゲン化銀1モル当たり10-8〜10-1モル、好ましくは10-7〜10-2モル程度を用いる。
同様に、本発明で用いられる金増感剤の添加量は種々の条件により異なるが、目安としてはハロゲン化銀1モル当たり10-7モル〜10-2モル、より好ましくは10-6モル〜5×10-3モルである。この乳剤を化学増感する環境条件としてはいかなる条件でも選択可能ではあるが、pAgとしては8以下、好ましくは7.0以下より6.5以下、とくに6.0以下、およびpAgが1.5以上、好ましくは2.0以上、特に好ましくは2.5以上の条件であり、pHとしては3〜10、好ましくは4〜9、温度としては20〜95℃、好ましくは25〜80℃程度である。
【0173】
本発明においてカルコゲン増感や金増感に加えて、さらに還元増感も併用することができる。とくにカルコゲン増感と併用するのが好ましい。
還元増感法の具体的な化合物としてはアスコルビン酸、二酸化チオ尿素、ジメチルアミンボランが好ましく、その他に塩化第一スズ、アミノイミノメタンスルフィン酸、ヒドラジン誘導体、ボラン化合物、シラン化合物、ポリアミン化合物等を用いることが好ましい。還元増感剤の添加は、結晶成長から塗布直前の調製工程までの感光乳剤製造工程のどの過程でもよい。また、乳剤のpHを8以上またはpAgを4以下に保持して熟成することにより還元増感することも好ましく、粒子形成中に銀イオンのシングルアディション部分を導入することにより還元増感することも好ましい。
還元増感剤の添加量としては、同様に種々の条件により異なるが、目安としてはハロゲン化銀1モル当たり10-7モル〜10-1モル、より好ましくは10-6モル〜5×10-2モルである。
【0174】
本発明で用いるハロゲン化銀乳剤には、欧州特許公開第293,917号公報に示される方法により、チオスルフォン酸化合物を添加してもよい。
本発明における感光性ハロゲン化銀粒子は、金増感、カルコゲン増感、の少なくとも1つの方法で化学増感されていることが高感度の熱現像感光材料を設計する点から好ましい。
【0175】
9)増感色素
本発明に適用できる増感色素としてはハロゲン化銀粒子に吸着した際、所望の波長領域でハロゲン化銀粒子を分光増感できるもので、露光光源の分光特性に適した分光感度を有する増感色素を有利に選択することができる。本発明の熱現像感光材料は特に600nm以上900nm以下、または300nm以上500nm以下に分光感度ピークを持つように分光増感されていることが好ましい。増感色素及び添加法については、特開平11-65021号の段落番号0103〜0109、特開平10-186572号一般式(II)で表される化合物、特開平11-119374号の一般式(I) で表される色素及び段落番号0106、米国特許第5,510,236号、同第3,871,887号実施例5に記載の色素、特開平2-96131号、特開昭59-48753号に開示されている色素、欧州特許公開第0803764A1号の第19ページ第38行〜第20ページ第35行、特願2000-86865号、特願2000-102560号、特願2000-205399号等に記載されている。これらの増感色素は単独で用いてもよく、2種以上組合せて用いてもよい。
【0176】
本発明における増感色素の添加量は、感度やカブリの性能に合わせて所望の量にすることができるが、感光性層のハロゲン化銀1モル当たり10-6〜1モルが好ましく、さらに好ましくは10-4〜10-1モルである。
【0177】
本発明は分光増感効率を向上させるため、強色増感剤を用いることができる。本発明に用いる強色増感剤としては、欧州特許公開第587,338号、米国特許第3,877,943号、同第4,873,184号、特開平5-341432号、同11-109547号、同10-111543号等に記載の化合物が挙げられる。
【0178】
10)ハロゲン化銀の併用
本発明に用いられる熱現像感光材料中の感光性ハロゲン化銀乳剤は、一種だけでもよいし、二種以上(例えば、平均粒子サイズの異なるもの、ハロゲン組成の異なるもの、晶癖の異なるもの、化学増感の条件の異なるもの)併用してもよい。感度の異なる感光性ハロゲン化銀を複数種用いることで階調を調節することができる。これらに関する技術としては特開昭57-119341号、同53-106125号、同47-3929号、同48-55730号、同46-5187号、同50-73627号、同57-150841号などが挙げられる。感度差としてはそれぞれの乳剤で0.2logE以上の差を持たせることが好ましい。
【0179】
11)ハロゲン化銀と有機銀塩の混合
本発明の感光性ハロゲン化銀の粒子は、非感光性有機銀塩の存在しないところで形成され、化学増感されることが特に好ましい。有機銀塩に対してハロゲン化剤を添加することによってハロゲン化銀を形成する方法では十分な感度が達成できない場合があるからである。
ハロゲン化銀と有機銀塩を混合する方法としては、別々に調製した感光性ハロゲン化銀と有機銀塩を高速撹拌機やボールミル、サンドミル、コロイドミル、振動ミル、ホモジナイザー等で混合する方法や、あるいは有機銀塩の調製中のいずれかのタイミングで調製終了した感光性ハロゲン化銀を混合して有機銀塩を調製する方法等があげられる。いずれの方法でも本発明の効果を好ましく得ることができる。
【0180】
12)ハロゲン化銀の塗布液への混合
本発明のハロゲン化銀の画像形成層塗布液中への好ましい添加時期は、塗布する180分前から直前、好ましくは60分前から10秒前であるが、混合方法及び混合条件については本発明の効果が十分に現れる限りにおいては特に制限はない。具体的な混合方法としては添加流量とコーターへの送液量から計算した平均滞留時間を所望の時間となるようにしたタンクでの混合する方法やN.Harnby、M.F.Edwards、A.W.Nienow著、高橋幸司訳"液体混合技術"(日刊工業新聞社刊、1989年)の第8章等に記載されているスタチックミキサーなどを使用する方法がある。
【0181】
1−1−3.有機銀塩の説明
本発明に用いる非感光性有機銀塩は、光に対して比較的安定であるが、露光された感光性ハロゲン化銀及び還元剤の存在下で、80℃或いはそれ以上に加熱された場合に銀画像を形成する銀塩である。有機銀塩は銀イオンを還元できる源を含む任意の有機物質であってよい。このような非感光性の有機銀塩については、特開平10-62899号の段落番号0048〜0049、欧州特許公開第0803764A1号の第18ページ第24行〜第19ページ第37行、欧州特許公開第0962812A1号、特開平11-349591号、特開2000-7683号、同2000-72711号等に記載されている。有機酸の銀塩、特に(炭素数が10〜30、好ましくは15〜28の)長鎖脂肪族カルボン酸の銀塩が好ましい。有機銀塩の好ましい例としては、ベヘン酸銀、アラキジン酸銀、ステアリン酸銀、オレイン酸銀、ラウリン酸銀、カプロン酸銀、ミリスチン酸銀、パルミチン酸銀、これらの混合物などを含む。本発明においては、これら有機銀塩の中でも、ベヘン酸銀含有率50モル%以上100モル%以下の有機酸銀を用いることが好ましい。特にベヘン酸銀含有率は75モル%以上98モル%以下であることが好ましい。
【0182】
本発明に用いることができる有機銀塩の形状としては特に制限はなく、針状、棒状、平板状、りん片状でもよい。
本発明においてはりん片状の有機銀塩が好ましい。本明細書において、りん片状の有機銀塩とは、次のようにして定義する。有機銀塩を電子顕微鏡で観察し、有機銀塩粒子の形状を直方体と近似し、この直方体の辺を一番短かい方からa、b、cとした(cはbと同じであってもよい。)とき、短い方の数値a、bで計算し、次のようにしてxを求める。
x=b/a
【0183】
このようにして200個程度の粒子についてxを求め、その平均値x(平均)としたとき、x(平均)≧1.5の関係を満たすものをりん片状とする。好ましくは30≧x(平均)≧1.5、より好ましくは15≧x(平均)≧1.5である。因みに針状とは1≦x(平均)<1.5である。
【0184】
りん片状粒子において、aはbとcを辺とする面を主平面とした平板状粒子の厚さとみることができる。aの平均は0.01μm以上0.3μm以下が好ましく0.1μm以上0.23μm以下がより好ましい。c/bの平均は好ましくは1以上6以下、より好ましくは1以上4以下、さらに好ましくは1以上3以下、特に好ましくは1以上2以下である。
【0185】
有機銀塩の粒子サイズ分布は単分散であることが好ましい。単分散とは短軸、長軸それぞれの長さの標準偏差を短軸、長軸それぞれで割った値の100分率が好ましくは100%以下、より好ましくは80%以下、更に好ましくは50%以下であることを指す。有機銀塩の形状の測定方法としては有機銀塩分散物の透過型電子顕微鏡像より求めることができる。単分散性を測定する別の方法として、有機銀塩の体積加重平均直径の標準偏差から求める方法があり、体積加重平均直径で割った値の百分率(変動係数)が好ましくは100%以下、より好ましくは80%以下、更に好ましくは50%以下である。測定方法としては例えば液中に分散した有機銀塩にレーザー光を照射し、その散乱光のゆらぎの時間変化に対する自己相関関数を求めることにより得られた粒子サイズ(体積加重平均直径)から求めることができる。
【0186】
本発明に用いられる有機酸銀の製造及びその分散法は、公知の方法等を適用することができる。例えば上記の特開平10-62899号、欧州特許公開第0803763A1号、欧州特許公開第0962812A1号、特開平11-349591号、特開2000-7683号、同2000-72711号、特開2001-163827号、特開2001-163889〜90号、同11-203413号、特願2000-90093号、同2000-195621号、同2000-191226号、同2000-213813号、同2000-214155号、同2000-191226号等を参考にすることができる。
【0187】
本発明において有機銀塩水分散液と感光性銀塩水分散液を混合して感光材料を製造することが可能である。混合する際に2種以上の有機銀塩水分散液と2種以上の感光性銀塩水分散液を混合することは、写真特性の調節のために好ましく用いられる方法である。
【0188】
本発明の有機銀塩は所望の量で使用できるが、銀量として0.1〜5g/m2が好ましく、さらに好ましくは1〜3g/m2である。特に好ましく1.2〜2.5g/m2である。
【0189】
1−1−4.還元剤
本発明の熱現像感光材料は、有機銀塩のための還元剤を含む。該還元剤は、銀イオンを金属銀に還元できる任意の物質(好ましくは有機物)でよい。該還元剤の例は、特開平11―65021号、段落番号0043〜0045や、欧州特許0803764号、p.7、34行〜p.18、12行に記載されている。
【0190】
本発明に用いられる好ましい還元剤は、フェノール性水酸基のオルト位に置換基を有するいわゆるヒンダードフェノール系還元剤、あるいはビスフェノール系還元剤である。特に次の一般式(R)で表される化合物が好ましい。
【0191】
一般式(R)
【化18】
【0192】
一般式(R)においては、R11およびR11'は各々独立に炭素数1〜20のアルキル基を表す。R12およびR12'は各々独立に水素原子またはベンゼン環に置換可能な置換基を表す。Lは−S−基または−CHR13−基を表す。R13は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を表す。X1およびX1'は各々独立に水素原子またはベンゼン環に置換可能な基を表す。
【0193】
各置換基について詳細に説明する。
1)R11およびR11'
11およびR11'は各々独立に置換または無置換の炭素数1〜20のアルキル基であり、アルキル基の置換基は特に限定されることはないが、好ましくは、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、スルホニル基、ホスホリル基、アシル基、カルバモイル基、エステル基、ハロゲン原子等があげられる。
【0194】
2)R12およびR12'、X1およびX1'
12およびR12'は各々独立に水素原子またはベンゼン環に置換可能な基を表す。
1およびX1'は、各々独立に水素原子またはベンゼン環に置換可能な基を表す。それぞれベンゼン環に置換可能な基としては、好ましくはアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルアミノ基があげられる。
【0195】
3)L
Lは−S−基または−CHR13−基を表す。R13は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を表し、アルキル基は置換基を有していてもよい。
13の無置換のアルキル基の具体例はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘプチル基、ウンデシル基、イソプロピル基、1−エチルペンチル基、2,4,4−トリメチルペンチル基などがあげられる。
【0196】
アルキル基の置換基の例はR11の置換基と同様で、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、スルホニル基、ホスホリル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基などがあげられる。
【0197】
4)好ましい置換基
11およびR11'として好ましくは炭素数3〜15の2級または3級のアルキル基であり、具体的にはイソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、t−アミル基、t−オクチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−メチルシクロプロピル基などがあげられる。R11およびR11'としてより好ましくは炭素数4〜12の3級アルキル基で、その中でもt−ブチル基、t−アミル基、1−メチルシクロヘキシル基が更に好ましく、t−ブチル基が最も好ましい。
【0198】
12およびR12'として好ましくは炭素数1〜20のアルキル基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、t−アミル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロヘキシル基、ベンジル基、メトキシメチル基、メトキシエチル基などがあげられる。より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基である。
【0199】
1およびX1'は、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基で、より好ましくは水素原子である。
【0200】
Lは好ましくは−CHR13−基である。
【0201】
13として好ましくは水素原子または炭素数1〜15のアルキル基であり、アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、2,4,4−トリメチルペンチル基が好ましい。R13として特に好ましいのは水素原子、メチル基、プロピル基またはイソプロピル基である。
【0202】
13が水素原子である場合、R12およびR12'は好ましくは炭素数2〜5のアルキル基であり、エチル基、プロピル基がより好ましく、エチル基が最も好ましい。
【0203】
13が炭素数1〜8の1級または2級のアルキル基である場合、R12およびR12'はメチル基が好ましい。R13の炭素数1〜8の1級または2級のアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基がより好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基が更に好ましい。
【0204】
11、R11'およびR12、R12'とがいずれもメチル基である場合、R13は2級のアルキル基であることが好ましい。この場合、R13の2級アルキル基としてはイソプロピル基、イソブチル基、1−エチルペンチル基が好ましく、イソプロピル基がより好ましい。
【0205】
上記還元剤は、R11、R11'およびR12およびR12'、およびR13の組合せにより、種々の熱現像性能が異なる。2種以上の還元剤を種々の混合比率で併用することによってこれらの熱現像性能を調整することができるので、目的によっては還元剤を2種類以上組み合わせて使用することが好ましい。
【0206】
以下に本発明の一般式(R)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0207】
【化19】
【0208】
【化20】
【0209】
【化21】
【0210】
特に(R−1)〜(R−20)に示すような化合物であることが好ましい。
【0211】
本発明において還元剤の添加量は0.01〜5.0g/m2であることが好ましく、0.1〜3.0g/m2であることがより好ましく、画像形成層を有する面の銀1モルに対しては5〜50%モル含まれることが好ましく、10〜40モル%で含まれることがさらに好ましい。
【0212】
本発明の還元剤は、有機銀塩、および感光性ハロゲン化銀を含む画像形成層、およびその隣接層に添加することができるが、画像形成層に含有させることがより好ましい。
【0213】
本発明の還元剤は溶液形態、乳化分散形態、固体微粒子分散物形態など、いかなる方法で塗布液に含有せしめ、感光材料に含有させてもよい。
【0214】
よく知られている乳化分散法としては、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作製する方法が挙げられる。
【0215】
また、固体微粒子分散法としては、還元剤を水等の適当な溶媒中にボールミル、コロイドミル、振動ボールミル、サンドミル、ジェットミル、ローラーミルあるいは超音波によって分散し、固体分散物を作成する方法が挙げられる。好ましくは、サンドミルを使った分散方法である。尚、その際に保護コロイド(例えば、ポリビニルアルコール)、界面活性剤(例えばトリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム(3つのイソプロピル基の置換位置が異なるものの混合物)などのアニオン性界面活性剤)を用いてもよい。水分散物には防腐剤(例えばベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩)を含有させることができる。
【0216】
特に好ましいのは、還元剤の固体粒子分散法であり、平均粒子サイズ0.01μm〜10μm、好ましくは0.05μm〜5μm、より好ましくは0.1μm〜1μmの微粒子して添加するのが好ましい。本願においては他の固体分散物もこの範囲の粒子サイズに分散して用いるのが好ましい。
【0217】
2−1−3.現像促進剤
本発明の熱現像感光材料では、現像促進剤として特開2000−267222号や特開2000−330234号等に記載の一般式(A)で表されるスルホンアミドフェノール系の化合物、特開2001−92075号記載の一般式(II)で表されるヒンダードフェノール系の化合物、特開平10−62895号や特開平11−15116号等に記載の一般式(I)、特願2001−074278号(特開2002−278017号である)に記載の一般式(1)で表されるヒドラジン系の化合物、特願2000−76240号(特開2001−264929号である)に記載されている一般式(2)で表されるフェノール系またはナフトール系の化合物が好ましく用いられる。これらの現像促進剤は還元剤に対して0.1〜20モル%の範囲で使用され、好ましくは0.5〜10モル%の範囲で、より好ましくは1〜5モル%の範囲である。感材への導入方法は還元剤同様の方法があげられるが、特に固体分散物または乳化分散物として添加することが好ましい。乳化分散物として添加する場合、常温で固体である高沸点溶剤と低沸点の補助溶剤を使用して分散した乳化分散物として添加するか、もしくは高沸点溶剤を使用しない所謂オイルレス乳化分散物として添加することが好ましい。
【0218】
本発明においては上記現像促進剤の中でも、特開2002−278017号に記載の一般式(1)で表されるヒドラジン系の化合物および特開2001−264929号に記載されている一般式(2)で表されるフェノール系またはナフトール系の化合物が特に好ましい。
−NHNH−R 一般式(1)
(一般式(1)において、Q は炭素原子でNHNH−R と結合する5〜7員の不飽和環を表し、R はカルバモイル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルホニル基、またはスルファモイル基を表す。ただし、R がプロピルカルバモイル基を表すとき、Q が2,3,5,6−テトラクロロ−4−シアノフェニル基であることはない。)
【化2】
(一般式(2)において、R およびR はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。X 〜X はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。ただし、X 〜X で表される置換基はヒドロキシ基であることはなく、X 〜X で表される置換基が窒素原子でフェノール環に連結しているとき、X 〜X は含窒素複素環基または−NH−C(=O)−R で表される基を表し、R は炭素数8〜40の置換基を表す。R 、R およびX 〜X で表される置換基は互いに結合して環を形成してもよい。)
【0219】
以下、本発明の現像促進剤の好ましい具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0220】
【化22】
【0221】
2−1−4.水素結合性化合物
本発明では、還元剤の芳香族性の水酸基(−OH)と水素結合を形成することが可能な基を有する非還元性の化合物を併用することが好ましい。
【0222】
水素結合を形成しうる基としては、ホスホリル基、スルホキシド基、スルホニル基、カルボニル基、アミド基、エステル基、ウレタン基、ウレイド基、3級アミノ基、含窒素芳香族基などが挙げられる。その中でも好ましいのはホスホリル基、スルホキシド基、アミド基(但し、>N−H基を持たず、>N−Ra(RaはH以外の置換基)のようにブロックされている。)、ウレタン基(但し、>N−H基を持たず、>N−Ra(RaはH以外の置換基)のようにブロックされている。)、ウレイド基(但し、>N−H基を持たず、>N−Ra(RaはH以外の置換基)のようにブロックされている。)を有する化合物である。
【0223】
本発明で、特に好ましい水素結合性化合物は下記一般式(D)で表される化合物である。
【0224】
【化23】
【0225】
一般式(D)においてR21ないしR23は各々独立にアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基またはヘテロ環基を表し、これらの基は無置換であっても置換基を有していてもよい。
【0226】
21ないしR23が置換基を有する場合の置換基としてはハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アミノ基、アシル基、アシルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホンアミド基、アシルオキシ基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホニル基、ホスホリル基などがあげられ、置換基として好ましいのはアルキル基またはアリール基でたとえばメチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、t−オクチル基、フェニル基、4−アルコキシフェニル基、4−アシルオキシフェニル基などがあげられる。
【0227】
21ないしR23のアルキル基としては具体的にはメチル基、エチル基、ブチル基、オクチル基、ドデシル基、イソプロピル基、t−ブチル基、t−アミル基、t−オクチル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロヘキシル基、ベンジル基、フェネチル基、2−フェノキシプロピル基などがあげられる。
【0228】
アリール基としてはフェニル基、クレジル基、キシリル基、ナフチル基、4−t−ブチルフェニル基、4−t−オクチルフェニル基、4−アニシジル基、3,5−ジクロロフェニル基などが挙げられる。
【0229】
アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、3,5,5−トリメチルヘキシルオキシ基、ドデシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、4−メチルシクロヘキシルオキシ基、ベンジルオキシ基等が挙げられる。
【0230】
アリールオキシ基としてはフェノキシ基、クレジルオキシ基、イソプロピルフェノキシ基、4−t−ブチルフェノキシ基、ナフトキシ基、ビフェニルオキシ基等が挙げられる。
【0231】
アミノ基としてはジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジオクチルアミノ基、N−メチル−N−ヘキシルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ジフェニルアミノ基、N−メチル−N−フェニルアミノ基等が挙げられる。
【0232】
21ないしR23としてはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基が好ましい。本発明の効果の点ではR21ないしR23のうち少なくとも一つ以上がアルキル基またはアリール基であることが好ましく、二つ以上がアルキル基またはアリール基であることがより好ましい。また、安価に入手する事ができるという点ではR21ないしR23が同一の基である場合が好ましい。
【0233】
以下に本発明における一般式(D)の化合物をはじめとする水素結合性化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0234】
【化24】
【0235】
【化25】
【0236】
水素結合性化合物の具体例は上述の他に特願2000-192191号、同2000-194811号に記載のものがあげられる。
【0237】
本発明の水素結合性化合物は、還元剤と同様に溶液形態、乳化分散形態、固体分散微粒子分散物形態で塗布液に含有せしめ、感光材料中で使用することができる。本発明の化合物は、溶液状態でフェノール性水酸基を有する化合物と水素結合による錯体を形成しており、還元剤と本発明の一般式(A)の化合物との組み合わせによっては錯体として結晶状態で単離することができる。
【0238】
このようにして単離した結晶粉体を固体分散微粒子分散物として使用することは安定した性能を得る上で特に好ましい。また、還元剤と本発明の水素結合性化合物を粉体で混合し、適当な分散剤を使って、サンドグラインダーミル等で分散時に錯形成させる方法も好ましく用いることができる。
【0239】
本発明の水素結合性化合物は還元剤に対して、1〜200モル%の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは10〜150モル%の範囲で、さらに好ましくは30〜100モル%の範囲である。
【0240】
2−1−5.バインダー
本発明の有機銀塩含有層のバインダーはいかなるポリマーであってもよく、好適なバインダーは透明又は半透明で、一般に無色であり、天然樹脂やポリマー及びコポリマー、合成樹脂やポリマー及びコポリマー、その他フィルムを形成する媒体、例えば、ゼラチン類、ゴム類、ポリ(ビニルアルコール)類、ヒドロキシエチルセルロース類、セルロースアセテート類、セルロースアセテートブチレート類、ポリ(ビニルピロリドン)類、カゼイン、デンプン、ポリ(アクリル酸)類、ポリ(メチルメタクリル酸)類、ポリ(塩化ビニル)類、ポリ(メタクリル酸)類、スチレン−無水マレイン酸共重合体類、スチレン−アクリロニトリル共重合体類、スチレン−ブタジエン共重合体類、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)及びポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)類、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(酢酸ビニル)類、ポリ(オレフィン)類、セルロースエステル類、ポリ(アミド)類がある。バインダーは水又は有機溶媒またはエマルションから被覆形成してもよい。
【0241】
本発明では、有機銀塩を含有する層のバインダーのガラス転移温度は10℃以上80℃以下であることが好ましく、20℃〜70℃であることがより好ましく、23℃以上65℃以下であることが更に好ましい。
【0242】
なお、本明細書においてTgは下記の式で計算される。
1/Tg=Σ(Xi/Tgi)
【0243】
ここでは、ポリマーはi=1からnまでのn個のモノマー成分が共重合しているとする。Xiはi番目のモノマーの重量分率(ΣXi=1)、Tgiはi番目のモノマーの単独重合体のガラス転移温度(絶対温度)である。ただしΣはi=1からnまでの和をとる。
尚、各モノマーの単独重合体ガラスの転移温度の値(Tgi)はPolymer Handbook(3rd Edition)(J.Brandrup, E.H.Immergut著(Wiley-Interscience、1989))の値を採用した。
【0244】
バインダーとなるポリマーは単独種で用いてもよいし、必要に応じて2種以上を併用しても良い。また、ガラス転移温度が20℃以上のものとガラス転移温度が20℃未満のものを組み合わせて用いてもよい。Tgの異なるポリマーを2種以上ブレンドして使用する場合には、その重量平均Tgが上記の範囲に入ることが好ましい。
【0245】
本発明においては、有機銀塩含有層が溶媒の30質量%以上が水である塗布液を用いて塗布し、乾燥して形成される場合に、さらに有機銀塩含有層のバインダーが水系溶媒(水溶媒)に可溶または分散可能である場合に、特に25℃60%RHでの平衡含水率が2質量%以下のポリマーのラテックスからなる場合に性能が向上する。
最も好ましい形態は、イオン伝導度が2.5mS/cm以下になるように調製されたものであり、このような調製法としてポリマー合成後分離機能膜を用いて精製処理する方法が挙げられる。
【0246】
ここでいう前記ポリマーが可溶または分散可能である水系溶媒とは、水または水に70質量%以下の水混和性の有機溶媒を混合したものである。
水混和性の有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール等のアルコール系、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系、酢酸エチル、ジメチルホルミアミドなどを挙げることができる。
【0247】
また「25℃60%RHにおける平衡含水率」とは、25℃60%RHの雰囲気下で調湿平衡にあるポリマーの重量W1と25℃で絶乾状態にあるポリマーの重量W0を用いて以下のように表すことができる。
25℃60%RHにおける平衡含水率=[(W1−W0)/W0]×100(質量%)含水率の定義と測定法については、例えば高分子工学講座14、高分子材料試験法(高分子学会編、地人書館)を参考にすることができる。
【0248】
本発明のバインダーポリマーの25℃60%RHにおける平衡含水率は2質量%以下であることが好ましいが、より好ましくは0.01質量%以上1.5質量%以下、さらに好ましくは0.02質量%以上1質量%以下が望ましい。
【0249】
本発明のバインダーは水系溶媒に分散可能なポリマーが特に好ましい。分散状態の例としては、水不溶な疎水性ポリマーの微粒子が分散しているラテックスやポリマー分子が分子状態またはミセルを形成して分散しているものなどがあるが、いずれも好ましい。分散粒子の平均粒径は1〜50000nm、より好ましくは5〜1000nm程度の範囲が好ましい。分散粒子の粒径分布に関しては特に制限は無く、広い粒径分布を持つものでも単分散の粒径分布を持つものでもよい。
【0250】
本発明において水系溶媒に分散可能なポリマーの好ましい態様としては、アクリル系ポリマー、ポリ(エステル)類、ゴム類(例えばSBR樹脂)、ポリ(ウレタン)類、ポリ(塩化ビニル)類、ポリ(酢酸ビニル)類、ポリ(塩化ビニリデン)類、ポリ(オレフィン)類等の疎水性ポリマーを好ましく用いることができる。これらポリマーとしては直鎖のポリマーでも枝分かれしたポリマーでもまた架橋されたポリマーでもよいし、単一のモノマーが重合したいわゆるホモポリマーでもよいし、2種類以上のモノマーが重合したコポリマーでもよい。コポリマーの場合はランダムコポリマーでも、ブロックコポリマーでもよい。
【0251】
これらポリマーの分子量は数平均分子量で5000〜1000000、好ましくは10000〜200000がよい。分子量が小さすぎるものは乳剤層の力学強度が不十分であり、大きすぎるものは成膜性が悪く好ましくない。
【0252】
好ましいポリマーラテックスの具体例としては以下のものを挙げることができる。以下では原料モノマーを用いて表し、括弧内の数値は質量%、分子量は数平均分子量である。多官能モノマーを使用した場合は架橋構造を作るため分子量の概念が適用できないので架橋性と記載し、分子量の記載を省略した。Tgはガラス転移温度を表す。
【0253】
P-1;-MMA(70)-EA(27)-MAA(3)-のラテックス(分子量37000、Tg61℃)
P-2;-MMA(70)-2EHA(20)-St(5)-AA(5)-のラテックス(分子量40000、Tg59℃)
P-3;-St(50)-Bu(47)-MAA(3)-のラテックス(架橋性、Tg-17℃)
P-4;-St(68)-Bu(29)-AA(3)-のラテックス(架橋性、Tg17℃)
P-5;-St(71)-Bu(26)-AA(3)-のラテックス(架橋性,Tg24℃)
P-6;-St(70)-Bu(27)-IA(3)-のラテックス(架橋性)
P-7;-St(75)-Bu(24)-AA(1)-のラテックス(架橋性、Tg29℃)
P-8;-St(60)-Bu(35)-DVB(3)-MAA(2)-のラテックス(架橋性)
P-9;-St(70)-Bu(25)-DVB(2)-AA(3)-のラテックス(架橋性)
P-10;-VC(50)-MMA(20)-EA(20)-AN(5)-AA(5)-のラテックス(分子量80000)
P-11;-VDC(85)-MMA(5)-EA(5)-MAA(5)-のラテックス(分子量67000)
P-12;-Et(90)-MAA(10)-のラテックス(分子量12000)
P-13;-St(70)-2EHA(27)-AA(3)のラテックス(分子量130000、Tg43℃)
P-14;-MMA(63)-EA(35)- AA(2)のラテックス(分子量33000、Tg47℃)
P-15;-St(70.5)-Bu(26.5)-AA(3)-のラテックス(架橋性,Tg23℃)
P-16;-St(69.5)-Bu(27.5)-AA(3)-のラテックス(架橋性,Tg20.5℃)
【0254】
上記構造の略号は以下のモノマーを表す。MMA;メチルメタクリレート、EA;エチルアクリレート、MAA;メタクリル酸、2EHA;2-エチルヘキシルアクリレート、St;スチレン、Bu;ブタジエン、AA;アクリル酸、DVB;ジビニルベンゼン、VC;塩化ビニル、AN;アクリロニトリル、VDC;塩化ビニリデン、Et;エチレン、IA;イタコン酸。
【0255】
以上に記載したポリマーラテックスは市販もされていて、以下のようなポリマーが利用できる。アクリル系ポリマーの例としては、セビアンA-4635,4718,4601(以上ダイセル化学工業(株)製)、Nipol Lx811、814、821、820、857(以上日本ゼオン(株)製)など、ポリ(エステル)類の例としては、FINETEX ES650、611、675、850(以上大日本インキ化学(株)製)、WD-size、WMS(以上イーストマンケミカル製)など、ポリ(ウレタン)類の例としては、HYDRAN AP10、20、30、40(以上大日本インキ化学(株)製)など、ゴム類の例としては、LACSTAR 7310K、3307B、4700H、7132C(以上大日本インキ化学(株)製)、Nipol Lx416、410、438C、2507(以上日本ゼオン(株)製)など、ポリ(塩化ビニル)類の例としては、G351、G576(以上日本ゼオン(株)製)など、ポリ(塩化ビニリデン)類の例としては、L502、L513(以上旭化成工業(株)製)など、ポリ(オレフィン)類の例としては、ケミパールS120、SA100(以上三井石油化学(株)製)などを挙げることができる。
これらのポリマーラテックスは単独で用いてもよいし、必要に応じて2種以上ブレンドしてもよい。
【0256】
本発明に用いられるポリマーラテックスとしては、特に、スチレン−ブタジエン共重合体のラテックスが好ましい。スチレン−ブタジエン共重合体におけるスチレンのモノマー単位とブタジエンのモノマー単位との重量比は40:60〜95:5であることが好ましい。また、スチレンのモノマー単位とブタジエンのモノマー単位との共重合体に占める割合は60〜99質量%であることが好ましい。好ましい分子量の範囲は前記と同様である。
【0257】
本発明に用いることが好ましいスチレン−ブタジエン共重合体のラテックスとしては、前記のP-3〜P-8,14,15、市販品であるLACSTAR-3307B、7132C、Nipol Lx416等が挙げられる。
【0258】
本発明の感光材料の有機銀塩含有層には必要に応じてゼラチン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどの親水性ポリマーを添加してもよい。
【0259】
これらの親水性ポリマーの添加量は有機銀塩含有層の全バインダーの30質量%以下、より好ましくは20質量%以下が好ましい。
【0260】
本発明の有機銀塩含有層(即ち、画像形成層)は、ポリマーラテックスをバインダーに用いて形成されたものが好ましい。有機銀塩含有層のバインダーの量は、全バインダー/有機銀塩の重量比が1/10〜10/1、更には1/5〜4/1の範囲が好ましい。
【0261】
また、このような有機銀塩含有層は、通常、感光性銀塩である感光性ハロゲン化銀が含有された感光性層(乳剤層)でもあり、このような場合の、全バインダー/ハロゲン化銀の重量比は400〜5、より好ましくは200〜10の範囲が好ましい。
【0262】
本発明の画像形成層の全バインダー量は0.2〜30g/m2、より好ましくは1〜15g/m2の範囲が好ましい。本発明の画像形成層には架橋のための架橋剤、塗布性改良のための界面活性剤などを添加してもよい。
【0263】
本発明において感光材料の有機銀塩含有層塗布液の溶媒(ここでは簡単のため、溶媒と分散媒をあわせて溶媒と表す。)は、水を30質量%以上含む水系溶媒が好ましい。水以外の成分としてはメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド、酢酸エチルなど任意の水混和性有機溶媒を用いてよい。溶媒の水含有率は50質量%以上がより好ましく、さらに好ましくは70質量%以上が良い。
【0264】
好ましい溶媒組成の具体例を挙げると、水100の他、水/メチルアルコール=90/10、水/メチルアルコール=70/30、水/メチルアルコール/ジメチルホルムアミド=80/15/5、水/メチルアルコール/エチルセロソルブ=85/10/5、水/メチルアルコール/イソプロピルアルコール=85/10/5などがある(数値は質量%)。
【0265】
2−1−6.かぶり防止剤
本発明はカブリ防止剤として下記一般式(H)で表される化合物を含有するのが好ましい。
【0266】
一般式(H) Q−(Y)n−C(Z1)(Z2)X
【0267】
一般式(H)において、Qはアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、Yは2価の連結基を表し、nは0または1を表し、Z1およびZ2はハロゲン原子を表し、Xは水素原子または電子吸引性基を表す。
【0268】
Qは好ましくはハメットの置換基定数σpが正の値をとる電子吸引性基で置換されたフェニル基を表す。ハメットの置換基定数に関しては、Journal of Medicinal Chemistry,1973,Vol.16,No.11,1207-1216 等を参考にすることができる。
【0269】
このような電子吸引性基としては、例えばハロゲン原子(フッ素原子(σp値:0.06)、塩素原子(σp値:0.23)、臭素原子(σp値:0.23)、ヨウ素原子(σp値:0.18))、トリハロメチル基(トリブロモメチル(σp値:0.29)、トリクロロメチル(σp値:0.33)、トリフルオロメチル(σp値:0.54))、シアノ基(σp値:0.66)、ニトロ基(σp値:0.78)、脂肪族・アリールもしくは複素環スルホニル基(例えば、メタンスルホニル(σp値:0.72))、脂肪族・アリールもしくは複素環アシル基(例えば、アセチル(σp値:0.50)、ベンゾイル(σp値:0.43))、アルキニル基(例えば、C≡CH(σp値:0.23))、脂肪族・アリールもしくは複素環オキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル(σp値:0.45)、フェノキシカルボニル(σp値:0.44))、カルバモイル基(σp値:0.36)、スルファモイル基(σp値:0.57)、スルホキシド基、ヘテロ環基、ホスホリル基等があげられる。
σp値としては好ましくは0.2〜2.0の範囲で、より好ましくは0.4から1.0の範囲である。
【0270】
電子吸引性基として好ましいのは、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アルキルホスホリル基、カルボキシル基、アルキルまたはアリールカルボニル基、およびアリールスルホニル基であり、特に好ましくはカルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アルキルホスホリル基であり、カルバモイル基が最も好ましい。
【0271】
Xは、好ましくは電子吸引性基であり、より好ましくはハロゲン原子、脂肪族・アリールもしくは複素環スルホニル基、脂肪族・アリールもしくは複素環アシル基、脂肪族・アリールもしくは複素環オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基であり、特に好ましくはハロゲン原子である。
ハロゲン原子の中でも、好ましくは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であり、更に好ましくは塩素原子、臭素原子であり、特に好ましくは臭素原子である。
【0272】
Yは好ましくは−C(=O)−、−SO−または−SO2 −を表し、より好ましくは−C(=O)−、−SO2 −であり、特に好ましくは−SO2 −である。nは、0または1を表し、好ましくは1である。
【0273】
以下に本発明の一般式(H)の化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0274】
【化26】
【0275】
【化27】
【0276】
本発明の一般式(H)で表される化合物は画像形成層の非感光性銀塩1モル当たり、10-4〜0.8モルの範囲で使用することが好ましく、より好ましくは10-3〜0.1モルの範囲で、さらに好ましくは5×10-3〜0.05モルの範囲で使用することが好ましい。
特に、本発明のヨウ化銀含有率の高い組成のハロゲン化銀を用いた場合、十分なかぶり防止効果を得るためにはこの一般式(H)の化合物の添加量は重要であり、5×10-3〜0.03モルの範囲で使用することが最も好ましい。
【0277】
本発明において、一般式(H)で表される化合物を感光材料に含有せしめる方法としては、前記還元剤の含有方法に記載の方法が挙げられる。
【0278】
一般式(H)で表される化合物の融点は200℃以下であることが好ましく、さらに好ましくは170℃以下がよい。
【0279】
本発明に用いられるその他の有機ポリハロゲン化物として、特開平11-65021号の段落番号0111〜0112に記載の特許に開示されているものが挙げられる。特に特願平11-87297号の式(P)で表される有機ハロゲン化合物、特開平10-339934号の一般式(II)で表される有機ポリハロゲン化合物、特願平11-205330号に記載の有機ポリハロゲン化合物が好ましい。
【0280】
2−1−7.その他のかぶり防止剤
その他のカブリ防止剤としては特開平11-65021号段落番号0113の水銀(II)塩、同号段落番号0114の安息香酸類、特開2000-206642号のサリチル酸誘導体、特開2000-221634号の式(S)で表されるホルマリンスカベンジャー化合物、特開平11-352624号の請求項9に係るトリアジン化合物、特開平6-11791号の一般式(III)で表される化合物、4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン等が挙げられる。
【0281】
本発明に用いることのできるカブリ防止剤、安定剤および安定剤前駆体特開平10-62899号の段落番号0070、欧州特許0803764A1号の第20頁第57行〜第21頁第7行に記載の特許のもの、特開平9-281637号、同9-329864号記載の化合物が挙げられる。
【0282】
本発明における熱現像感光材料はカブリ防止を目的としてアゾリウム塩を含有しても良い。アゾリウム塩としては、特開昭59-193447号記載の一般式(XI)で表される化合物、特公昭55-12581号記載の化合物、特開昭60-153039号記載の一般式(II)で表される化合物が挙げられる。アゾリウム塩は感光材料のいかなる部位に添加しても良いが、添加層としては感光性層を有する面の層に添加することが好ましく、有機銀塩含有層に添加することがさらに好ましい。
【0283】
アゾリウム塩の添加時期としては塗布液調製のいかなる工程で行っても良く、有機銀塩含有層に添加する場合は有機銀塩調製時から塗布液調製時のいかなる工程でも良いが有機銀塩調製後から塗布直前が好ましい。アゾリウム塩の添加法としては粉末、溶液、微粒子分散物などいかなる方法で行っても良い。また、増感色素、還元剤、色調剤など他の添加物と混合した溶液として添加しても良い。
【0284】
本発明においてアゾリウム塩の添加量としてはいかなる量でも良いが、銀1モル当たり1×10-6モル以上2モル以下が好ましく、1×10-3モル以上0.5モル以下がさらに好ましい。
【0285】
2−1−8.その他の添加剤
1)メルカプト、ジスルフィド、およびチオン類
本発明には現像を抑制あるいは促進させ現像を制御するため、分光増感効率を向上させるため、現像前後の保存性を向上させるためなどにメルカプト化合物、ジスルフィド化合物、チオン化合物を含有させることができ、特開平10-62899号の段落番号0067〜0069、特開平10-186572号の一般式(I)で表される化合物及びその具体例として段落番号0033〜0052、欧州特許公開第0803764A1号の第20ページ第36〜56行、特願平11-273670号等に記載されている。中でもメルカプト置換複素芳香族化合物が好ましい。
【0286】
2)色調剤
本発明の熱現像感光材料では色調剤の添加が好ましく、色調剤については、特開平10−62899号の段落番号0054〜0055、欧州特許0803764A1号のp.21,23行〜48行、特開2000−356317号や特願2000−187298号に記載されており、特に、フタラジノン類(フタラジノン、フタラジノン誘導体もしくは金属塩;例えば4−(1−ナフチル)フタラジノン、6−クロロフタラジノン、5,7−ジメトキシフタラジノンおよび2,3−ジヒドロー1,4−フタラジンジオン);フタラジノン類とフタル酸類(例えば、フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸、フタル酸二アンモニウム、フタル酸ナトリウム、フタル酸カリウムおよびテトラクロロ無水フタル酸)の組み合わせ;フタラジン類(フタラジン、フタラジン誘導体もしくは金属塩;例えば4−(1−ナフチル)フタラジン、6−イソプロピルフタラジン、6−t−ブチルフタラジン、6−クロロフタラジン、5.7−ジメトキシフタラジン、および2,3−ジヒドロフタラジン)が好ましく、特に、ヨウ化銀含有率の高い組成のハロゲン化銀との組み合わせにおいては、フタラジン類とフタル酸類の組み合わせが好ましい。
【0287】
好ましいフタラジン類の添加量としては、有機銀塩1モル当たり0.01モル〜0.3モルであり、さらに好ましくは0.02〜0.2モル、特に好ましくは0.02〜0.1モルである。この添加量は、本発明のヨウ化銀含有率の高い組成のハロゲン化銀乳剤で課題である現像促進にとって重要な要因であり、適正な添加量の選択によって十分な現像性と低いかぶりの両立が可能となる。
【0288】
3)可塑剤、潤滑剤
本発明の感光性層に用いることのできる可塑剤および潤滑剤については特開平11-65021号段落番号0117に記載されている。滑り剤については特開平11-84573号段落番号0061〜0064や特願平11-106881号段落番号0049〜0062記載されている。
【0289】
4)染料、顔料
本発明の感光性層には色調改良、レーザー露光時の干渉縞発生防止、イラジエーション防止の観点から各種染料や顔料(例えばC.I.Pigment Blue 60、C.I.Pigment Blue 64、C.I.Pigment Blue 15:6)を用いることができる。これらについてはWO98/36322号、特開平10-268465号、同11-338098号等に詳細に記載されている。
【0290】
5)超硬調化剤
印刷製版用途に適した超硬調画像形成のためには、画像形成層に超硬調化剤を添加することが好ましい。超硬調化剤やその添加方法及び添加量については、同号公報段落番号0118、特開平11−223898号公報段落番号0136〜0193、特願平11−87297号明細書の式(H)、式(1)〜(3)、式(A)、(B)の化合物、特願平11−91652号明細書記載の一般式(III)〜(V)の化合物(具体的化合物:化21〜化24)、硬調化促進剤については特開平11−65021号公報段落番号0102、特開平11−223898号公報段落番号0194〜0195に記載されている。
【0291】
蟻酸や蟻酸塩を強いかぶらせ物質として用いるには、感光性ハロゲン化銀を含有する画像形成層を有する側に銀1モル当たり5ミリモル以下、さらには1ミリモル以下で含有させることが好ましい。
本発明の熱現像感光材料で超硬調化剤を用いる場合には五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩を併用して用いることが好ましい。五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩としては、メタリン酸(塩)、ピロリン酸(塩)、オルトリン酸(塩)、三リン酸(塩)、四リン酸(塩)、ヘキサメタリン酸(塩)などを挙げることができる。特に好ましく用いられる五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩としては、オルトリン酸(塩)、ヘキサメタリン酸(塩)を挙げることができる。具体的な塩としてはオルトリン酸ナトリウム、オルトリン酸二水素ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸アンモニウムなどが挙げられる。
五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩の使用量(感光材料1m2あたりの塗布量)は感度やカブリなどの性能に合わせて所望の量でよいが、0.1〜500mg/m2が好ましく、0.5〜100mg/m2がより好ましい。
【0292】
2−1−9.塗布液の調製および塗布
本発明の画像形成層塗布液の調製温度は30℃以上65℃以下がよく、さらに好ましい温度は35℃以上60℃未満、より好ましい温度は35℃以上55℃以下である。また、ポリマーラテックス添加直後の画像形成層塗布液の温度が30℃以上65℃以下で維持されることが好ましい。
【0293】
2−2.層構成
本発明の熱現像感光材料は、画像形成層に加えて非感光性層を有することができる。非感光性層は、その配置から(a)画像形成層の上(支持体よりも遠い側)に設けられる表面保護層、(b)複数の画像形成層の間や画像形成層と保護層の間に設けられる中間層、(c)画像形成層と支持体との間に設けられる下塗り層、(d)画像形成層の反対側に設けられるバック層に分類できる。
【0294】
また、光学フィルターとして作用する層を設けることができるが、(a)または(b)の層として設けられる。アンチハレーション層は、(c)または(d)の層として感光材料に設けられる。
【0295】
1)表面保護層
本発明における熱現像感光材料は画像形成層の付着防止などの目的で表面保護層を設けることができる。表面保護層は単層でもよいし、複数層であってもよい。表面保護層については、特開平11-65021号段落番号0119〜0120、特願2000-171936号に記載されている。
【0296】
本発明の表面保護層のバインダーとしてはゼラチンが好ましいがポリビニルアルコール(PVA)を用いる若しくは併用することも好ましい。ゼラチンとしてはイナートゼラチン(例えば新田ゼラチン750)、フタル化ゼラチン(例えば新田ゼラチン801)など使用することができる。
【0297】
PVAとしては、特開2000-171936号の段落番号0009〜0020に記載のものがあげられ、完全けん化物のPVA−105、部分けん化物のPVA−205,PVA−335、変性ポリビニルアルコールのMP−203(以上、クラレ(株)製の商品名)などが好ましく挙げられる。
【0298】
保護層(1層当たり)のポリビニルアルコール塗布量(支持体1m2当たり)としては0.3〜4.0g/m2が好ましく、0.3〜2.0g/m2がより好ましい。
【0299】
表面保護層(1層当たり)の全バインダー(水溶性ポリマー及びラテックスポリマーを含む)塗布量(支持体1m2当たり)としては0.3〜5.0g/m2が好ましく、0.3〜2.0g/m2がより好ましい。
【0300】
2)アンチハレーション層
本発明の熱現像感光材料においては、アンチハレーション層を感光性層に対して露光光源から遠い側に設けることができる。アンチハレーション層については特開平11-65021号段落番号0123〜0124、特開平11-223898号、同9-230531号、同10-36695号、同10-104779号、同11-231457号、同11-352625号、同11-352626号等に記載されている。
【0301】
アンチハレーション層には、露光波長に吸収を有するアンチハレーション染料を含有する。露光波長が赤外域にある場合には赤外線吸収染料を用いればよく、その場合には可視域に吸収を有しない染料が好ましい。
【0302】
可視域に吸収を有する染料を用いてハレーション防止を行う場合には、画像形成後には染料の色が実質的に残らないようにすることが好ましく、熱現像の熱により消色する手段を用いることが好ましく、特に非感光性層に熱消色染料と塩基プレカーサーとを添加してアンチハレーション層として機能させることが好ましい。これらの技術については特開平11-231457号等に記載されている。
【0303】
消色染料の添加量は、染料の用途により決定する。一般には、目的とする波長で測定したときの光学濃度(吸光度)が0.1を越える量で使用する。光学濃度は、0.2〜2であることが好ましい。このような光学濃度を得るための染料の使用量は、一般に0.001〜1g/m2程度である。
【0304】
なお、このように染料を消色すると、熱現像後の光学濃度を0.1以下に低下させることができる。二種類以上の消色染料を、熱消色型記録材料や熱現像感光材料において併用してもよい。同様に、二種類以上の塩基プレカーサーを併用してもよい。
【0305】
このような消色染料と塩基プレカーサーを用いる熱消色においては、特開平11-352626号に記載のような塩基プレカーサーと混合すると融点を3℃以上降下させる物質(例えば、ジフェニルスルホン、4−クロロフェニル(フェニル)スルホン)を併用することが熱消色性等の点で好ましい。
【0306】
3)バック層
本発明に適用することのできるバック層については特開平11-65021号段落番号0128〜0130に記載されている。
【0307】
本発明においては、銀色調、画像の経時変化を改良する目的で300〜450nmに吸収極大を有する着色剤を添加することができる。このような着色剤は、特開昭62-210458号、同63-104046号、同63-103235号、同63-208846号、同63-306436号、同63-314535号、特開平01-61745号、特願平11-276751号などに記載されている。このような着色剤は、通常、0.1mg/m2〜1g/m2の範囲で添加され、添加する層としては感光性層の反対側に設けられるバック層が好ましい。
【0308】
4)マット剤
本発明において、搬送性改良のためにマット剤を表面保護層、およびバック層に添加することが好ましい。マット剤については、特開平11-65021号段落番号0126〜0127に記載されている。
マット剤は感光材料1m2当たりの塗布量で示した場合、好ましくは1〜400mg/m2、より好ましくは5〜300mg/m2である。
【0309】
また、乳剤面のマット度は、画像部に小さな白抜けが生じ、光漏れが発生するいわゆる星屑故障が生じなければいかようでも良いが、ベック平滑度が30秒以上2000秒以下が好ましく、特に40秒以上1500秒以下が好ましい。ベック平滑度は、日本工業規格(JIS)P8119「紙および板紙のベック試験器による平滑度試験方法」およびTAPPI標準法T479により容易に求めることができる。
【0310】
本発明においてバック層のマット度としてはベック平滑度が1200秒以下10秒以上が好ましく、800秒以下20秒以上が好ましく、さらに好ましくは500秒以下40秒以上である。
【0311】
本発明において、マット剤は感光材料の最外表面層もしくは最外表面層として機能する層、あるいは外表面に近い層に含有されるのが好ましく、またいわゆる保護層として作用する層に含有されることが好ましい。
【0312】
5)ポリマーラテックス
本発明の表面保護層やバック層にポリマーラテックスを添加することができる。
このようなポリマーラテックスについては「合成樹脂エマルジョン(奥田平、稲垣寛編集、高分子刊行会発行(1978))」、「合成ラテックスの応用(杉村孝明、片岡靖男、鈴木聡一、笠原啓司編集、高分子刊行会発行(1993))」、「合成ラテックスの化学(室井宗一著、高分子刊行会発行(1970))」などにも記載され、具体的にはメチルメタクリレート(33.5質量%)/エチルアクリレート(50質量%)/メタクリル酸(16.5質量%)コポリマーのラテックス、メチルメタクリレート(47.5質量%)/ブタジエン(47.5質量%)/イタコン酸(5質量%)コポリマーのラテックス、エチルアクリレート/メタクリル酸のコポリマーのラテックス、メチルメタクリレート(58.9質量%)/2−エチルヘキシルアクリレート(25.4質量%)/スチレン(8.6質量%)/2−ヒドロキシエチルメタクリレート(5.1質量%)/アクリル酸(2.0質量%)コポリマーのラテックス、メチルメタクリレート(64.0質量%)/スチレン(9.0質量%) /ブチルアクリレート(20.0質量%)/2−ヒドロキシエチルメタクリレート(5.0質量%)/アクリル酸(2.0質量%)コポリマーのラテックスなどが挙げられる。
【0313】
ポリマーラテックスは、表面保護層、あるいはバック層の全バインダー(水溶性ポリマーおよびラテックスポリマーを含む)の10質量%〜90質量%用いるのが好ましく、特に20質量%〜80質量%が好ましい。
【0314】
6)膜面pH
本発明の熱現像感光材料は、熱現像処理前の膜面pHが7.0以下であることが好ましく、さらに好ましくは6.6以下である。その下限には特に制限はないが、3程度である。最も好ましいpH範囲は4〜6.2の範囲である。
【0315】
膜面pHの調節はフタル酸誘導体などの有機酸や硫酸などの不揮発性の酸、アンモニアなどの揮発性の塩基を用いることが、膜面pHを低減させるという観点から好ましい。特にアンモニアは揮発しやすく、塗布する工程や熱現像される前に除去できることから低膜面pHを達成する上で好ましい。
また、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム、水酸化リチウム等の不揮発性の塩基とアンモニアを併用することも好ましく用いられる。なお、膜面pHの測定方法は、特願平11-87297号明細書の段落番号0123に記載されている。
【0316】
7)硬膜剤
本発明の感光性層、保護層、バック層など各層には硬膜剤を用いても良い。
硬膜剤の例としてはT.H.James著"THE THEORY OF THE PHOTOGRAPHIC PROCESS FOURTH EDITION"(Macmillan Publishing Co., Inc.刊、1977年刊)77頁から87頁に記載の各方法があり、クロムみょうばん、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジンナトリウム塩、N,N−エチレンビス(ビニルスルフォンアセトアミド)、N,N−プロピレンビス(ビニルスルフォンアセトアミド)の他、同書78頁など記載の多価金属イオン、米国特許4,281,060号、特開平6-208193号などのポリイソシアネート類、米国特許4,791,042号などのエポキシ化合物類、特開昭62-89048号などのビニルスルホン系化合物類が好ましく用いられる。
【0317】
硬膜剤は溶液として添加され、この溶液の保護層塗布液中への添加時期は、塗布する180分前から直前、好ましくは60分前から10秒前であるが、混合方法及び混合条件については本発明の効果が十分に現れる限りにおいては特に制限はない。
【0318】
具体的な混合方法としては添加流量とコーターへの送液量から計算した平均滞留時間を所望の時間となるようにしたタンクでの混合する方法やN.Harnby、M.F.Edwards、A.W.Nienow著、高橋幸司訳"液体混合技術"(日刊工業新聞社刊、1989年)の第8章等に記載されているスタチックミキサーなどを使用する方法がある。
【0319】
8)界面活性剤
本発明に適用できる界面活性剤については特開平11-65021号段落番号0132に記載されている。
本発明ではフッ素系界面活性剤を使用することが好ましい。フッ素系界面活性剤の好ましい具体例は特開平10-197985号、特開2000-19680号、特開2000-214554号等に記載されている化合物が挙げられる。また、特開平9-281636号記載の高分子フッ素系界面活性剤も好ましく用いられる。本発明においては、特願2000-206560号記載のフッ素系界面活性剤の使用が特に好ましい。
【0320】
9)帯電防止剤
また、本発明では、公知の種々の金属酸化物あるいは導電性ポリマーなどを含む帯電防止層を有しても良い。帯電防止層は前述の下塗り層、バック層表面保護層などと兼ねても良く、また別途設けてもよい。帯電防止層については、特開平11-65021号段落番号0135、特開昭56-143430号、同56-143431号、同58-62646号、同56-120519号、特開平11-84573号の段落番号0040〜0051、米国特許第5,575,957号、特開平11-223898号の段落番号0078〜0084に記載の技術を適用することができる。
【0321】
10)支持体
透明支持体は二軸延伸時にフィルム中に残存する内部歪みを緩和させ、熱現像処理中に発生する熱収縮歪みをなくすために、130〜185℃の温度範囲で熱処理を施したポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートが好ましく用いられる。
【0322】
医療用の熱現像感光材料の場合、透明支持体は青色染料(例えば、特開平8-240877号実施例記載の染料-1)で着色されていてもよいし、無着色でもよい。
具体的な支持体の例は、特開平11-65021同号段落番号0134に記載されている。
【0323】
支持体には、特開平11-84574号の水溶性ポリエステル、同10-186565号のスチレンブタジエン共重合体、特開2000-39684号や特願平11-106881号段落番号0063〜0080の塩化ビニリデン共重合体などの下塗り技術を適用することが好ましい。
【0324】
11)その他の添加剤
熱現像感光材料には、さらに、酸化防止剤、安定化剤、可塑剤、紫外線吸収剤あるいは被覆助剤を添加してもよい。特開平11-65021号段落番号0133の記載の溶剤を添加しても良い。各種の添加剤は、感光性層あるいは非感光性層のいずれかに添加する。それらについてWO98/36322号、EP803764A1号、特開平10-186567号、同10-18568号等を参考にすることができる。
【0325】
12)塗布方式
本発明における熱現像感光材料はいかなる方法で塗布されても良い。具体的には、エクストルージョンコーティング、スライドコーティング、カーテンコーティング、浸漬コーティング、ナイフコーティング、フローコーティング、または米国特許第2,681,294号に記載の種類のホッパーを用いる押出コーティングを 含む種々のコーティング操作が用いられ、Stephen F. Kistler、Petert M. Schweizer著"LIQUID FILM COATING"(CHAPMAN & HALL社刊、1997年)399頁から536頁記載のエクストルージョンコーティング、またはスライドコーティング好ましく用いられ、特に好ましくはスライドコーティングが用いられる。
【0326】
スライドコーティングに使用されるスライドコーターの形状の例は同書427頁のFigure 11b.1に ある。また、所望により同書399頁から536頁記載の方法、米国特許第2,761,791 号および英国特許第837,095号に記載の方法により2層またはそれ以上の層を同時に被覆することができる。
【0327】
本発明における有機銀塩含有層塗布液は、いわゆるチキソトロピー流体であることが好ましい。この技術については特開平11-52509号を参考にすることができる。
本発明における有機銀塩含有層塗布液は剪断速度0.1S-1における粘度は400mPa・s以上100,000mPa・s以下が好ましく、さらに好ましくは500mPa・s以上20,000mPa・s以下である。
また、剪断速度1000S-1においては1mPa・s以上200mPa・s以下が好まく、さらに好ましくは5mPa・s以上80mPa・s以下である。
【0328】
13)包装材料
本発明の熱現像感光材料は、使用される前の保存時に写真性能の変質を防ぐため、あるいはロール状態の製品形態の場合にはカールしたり巻き癖が付くのを防ぐために、酸素透過率および/または水分透過率の低い包装材料で密閉包装するのが好ましい。酸素透過率は、25℃で50ml/atm/m2・day以下であることが好ましく、より好ましくは10ml/atm/m2・day以下であり、さらに好ましくは1.0ml/atm/m2・day以下である。水分透過率は、10g/atm/m2・day以下であることが好ましく、より好ましくは5g/atm/m2・day以下であり、さらに好ましくは1g/atm/m2・day以下である。酸素透過率および/または水分透過率の低い包装材料の具体例としては、例えば特開平8-254793号、特開2000-206653号に記載されているものを利用することができる。
【0329】
14)その他の利用できる技術
本発明の熱現像感光材料に用いることのできる技術としては、EP803764A1号、EP883022A1号、WO98/36322号、特開昭56-62648号、同58-62644号、特開平9-43766、同9-281637、同9-297367号、同9-304869号、同9-311405号、同9-329865号、同10-10669号、同10-62899号、同10-69023号、同10-186568号、同10-90823号、同10-171063号、同10-186565号、同10-186567号、同10-186569号〜同10-186572号、同10-197974号、同10-197982号、同10-197983号、同10-197985号〜同10-197987号、同10-207001号、同10-207004号、同10-221807号、同10-282601号、同10-288823号、同10-288824号、同10-307365号、同10-312038号、同10-339934号、同11-7100号、同11-15105号、同11-24200号、同11-24201号、同11-30832号、同11-84574号、同11-65021号、同11-109547号、同11-125880号、同11-129629号、同11-133536号〜同11-133539号、同11-133542号、同11-133543号、同11-223898号、同11-352627号、同11-305377号、同11-305378号、同11-305384号、同11-305380号、同11-316435号、同11-327076号、同11-338096号、同11-338098号、同11-338099号、同11-343420号、特願2000-187298号、同2000-10229号、同2000-47345号、同2000-206642号、同2000-98530号、同2000-98531号、同2000-112059号、同2000-112060号、同2000-112104号、同2000-112064号、同2000-171936号も挙げられる。
【0330】
15)カラー画像形成
多色カラー熱現像感光材料の構成は、各色についてこれらの二層の組合せを含んでよく、また、米国特許第4,708,928号に記載されているように単一層内に全ての成分を含んでいてもよい。
多色カラー熱現像感光材料の場合、各乳剤層は、一般に、米国特許第4,460,681号に記載されているように、各感光性層の間に官能性もしくは非官能性のバリアー層を使用することにより、互いに区別されて保持される。
【0331】
3.画像形成方法
3−1.露光
本発明の感光材料はいかなる方法で露光されても良いが、露光光源としてレーザー光が好ましい。本発明のようにヨウ化銀含有率の高いハロゲン化銀乳剤は、従来はその感度が低くて問題であった。しかし、レーザー光のような高照度で書き込むことで低感度の問題も解消され、しかもより少ないエネルギーで画像記録できることがわかった。このような強い光で短時間に書き込むことによって目標の感度を達成することができる。
【0332】
特に最高濃度(Dmax)を出すような露光量を与える場合、感光材料表面の好ましい光量は0.1W/mm2〜100W/mm2である。より好ましくは0.5W/mm2〜50W/mm2であり、最も好ましくは1W/mm2〜50W/mm2である。
【0333】
本発明によるレーザー光としては、ガスレーザー(Ar+,He−Ne,He−Cd)、YAGレーザー、色素レーザー、半導体レーザーなどが好ましい。また、半導体レーザーと第2高調波発生素子などを用いることもできる。好ましく用いられるレーザーは、熱現像感光材料の分光増感色素などの光吸収ピーク波長に対応して決まるが、赤〜赤外発光のHe−Neレーザー、赤色半導体レーザー、あるいは青〜緑発光のAr+,He−Ne,He−Cdレーザー、青色半導体レーザーである。 近年、特に、SHG(Second Hermonic Generator)素子と半導体レーザーを一体化したモジュールや青色半導体レーザーが開発されてきて、短波長領域のレーザー出力装置がクローズアップされてきた。青色半導体レーザーは、高精細の画像記録が可能であること、記録密度の増大、かつ長寿命で安定した出力が得られることから、今後需要が拡大していくことが期待されている。レーザー光のピーク波長は、青色の300nm〜500nm、好ましくは400nm〜500nm、赤〜近赤外の600nm〜900nm、好ましくは620nm〜850nmである。
【0334】
レーザー光は、高周波重畳などの方法によって縦マルチに発振していることも好ましく用いられる。
【0335】
3−2.熱現像
本発明の熱現像感光材料はいかなる方法で現像されても良いが、通常イメージワイズに露光した熱現像感光材料を昇温して現像される。好ましい現像温度としては80〜250℃であり、さらに好ましくは100〜140℃である。
現像時間としては1〜60秒が好ましく、5〜30秒がさらに好ましく、5〜20秒が特に好ましい。
【0336】
熱現像の方式としてはプレートヒーター方式が好ましい。プレートヒーター方式による熱現像方式とは特開平11-133572号に記載の方法が好ましく、潜像を形成した熱現像感光材料を熱現像部にて加熱手段に接触させることにより可視像を得る熱現像装置であって、前記加熱手段がプレートヒータからなり、かつ前記プレートヒータの一方の面に沿って複数個の押えローラが対向配設され、前記押えローラと前記プレートヒータとの間に前記熱現像感光材料を通過させて熱現像を行うことを特徴とする熱現像装置である。プレートヒータを2〜6段に分けて先端部については1〜10℃程度温度を下げることが好ましい。
【0337】
このような方法は特開昭54-30032号にも記載されており、熱現像感光材料に含有している水分や有機溶媒を系外に除外させることができ、また、急激に熱現像感光材料が加熱されることでの熱現像感光材料の支持体形状の変化を押さえることもできる。
【0338】
3−3.システム
露光部および熱現像部を備えた医療用レーザーイメージャーとして富士メディカルドライイメージャー−FM−DPLを挙げることができる。該システムは、Fuji Medical Review No.8,page39〜55に記載されており、それらの技術を利用することができる。また、DICOM規格に適合したネットワークシステムとして富士メディカル(株)が提案した「AD network」の中のレーザーイメージャー用の熱現像感光材料としても適用することができる。
【0339】
4.本発明の用途
本発明の高ヨウ化銀写真乳剤を用いた熱現像感光材料は、銀画像による黒白画像を形成し、医療診断用の熱現像感光材料、工業写真用熱現像感光材料、印刷用熱現像感光材料、COM用の熱現像感光材料として使用されることが好ましい。
【0340】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0341】
実施例1.
1.PET支持体の作成、および下塗り
1−1.製膜
【0342】
テレフタル酸とエチレングリコ−ルを用い、常法に従い固有粘度IV=0.66 (フェノ−ル/テトラクロルエタン=6/4(重量比)中25℃で測定)のPETを得た。これをペレット化した後130℃で4時間乾燥した。その後T型ダイから押し出して急冷し、熱固定後の膜厚が175μmになるような厚みの未延伸フィルムを作成した。
【0343】
これを、周速の異なるロ−ルを用い3.3倍に縦延伸、ついでテンタ−で4.5倍に横延伸を実施した。この時の温度はそれぞれ、110℃、130℃であった。この後、240℃で20秒間熱固定後これと同じ温度で横方向に4%緩和した。この後テンタ−のチャック部をスリットした後、両端にナ−ル加工を行い、4kg/cm2で巻き取り、厚み175μmのロ−ルを得た。
【0344】
1−2.表面コロナ処理
ピラー社製ソリッドステートコロナ処理機6KVAモデルを用い、支持体の両面を室温下において20m/分で処理した。この時の電流、電圧の読み取り値から、支持体には0.375kV・A・分/m2の処理がなされていることがわかった。この時の処理周波数は9.6kHz、電極と誘電体ロ−ルのギャップクリアランスは1.6mmであった。
【0345】
1−3.下塗り
1)下塗層塗布液の作成
処方▲1▼(感光層側下塗り層用)
高松油脂(株)製ペスレジンA-520(30質量%溶液) 59g
ポリエチレングリコールモノノニルフェニルエーテル 5.4g
(平均エチレンオキシド数=8.5) 10質量%溶液
綜研化学(株)製 MP-1000(ポリマー微粒子、平均粒径0.4μm) 0.91g
蒸留水 935ml
【0346】
処方▲2▼(バック面第1層用)
スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス 158g
(固形分40質量%、スチレン/ブタジエン重量比=68/32)
2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−S−トリアジンナトリウム塩
(8質量%水溶液) 20g
ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウムの1質量%水溶液 10ml
蒸留水 854ml
【0347】
処方▲3▼(バック面側第2層用)
SnO2/SbO (9/1質量比、平均粒径0.038μm、17質量%分散物) 84g
ゼラチン(10質量%水溶液) 89.2g
信越化学(株)製 メトローズTC-5(2質量%水溶液) 8.6g
綜研化学(株)製 MP-1000 0.01g
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの1質量%水溶液 10ml
NaOH(1質量%) 6ml
プロキセル(ICI社製) 1ml
蒸留水 805ml
【0348】
2)下塗り
上記厚さ175μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート支持体の両面それぞれに、上記コロナ放電処理を施した後、片面(感光性層面)に上記下塗り塗布液処方▲1▼をワイヤーバーでウエット塗布量が6.6ml/m2(片面当たり)になるように塗布して180℃で5分間乾燥し、ついでこの裏面(バック面)に上記下塗り塗布液処方▲2▼をワイヤーバーでウエット塗布量が5.7ml/m2になるように塗布して180℃で5分間乾燥し、更に裏面(バック面)に上記下塗り塗布液処方▲3▼をワイヤーバーでウエット塗布量が7.7ml/m2になるように塗布して180℃で6分間乾燥して下塗り支持体を作製した。
【0349】
2.バック層
2−1.バック層塗布液の調製
1)塩基プレカーサーの固体微粒子分散液(a)の調製
塩基プレカーサー化合物−1を64g、デモールN(商品名、花王(株))10g、ジフェニルスルホン28g、および蒸留水220mlを加えて混合し、混合液を1/4Gサンドグラインダーミル(アイメックス(株)製)にてビーズ分散し、平均粒子径0.2μmの塩基プレカーサー化合物の固体微粒子分散物(a)を得た。
【0350】
2)染料固体微粒子分散液(a)の調製
シアニン染料化合物―1を9.6g、p−ドデシルスルホン酸ナトリウム5.8g、および蒸留水305mlを混合して、混合液を1/4Gサンドグラインダーミル(アイメックス(株)製)にてビーズ分散し、平均粒子径0.2μmの占領固体微粒子分散物(a)を得た。
【0351】
3)ハレーション防止層塗布液の調製
ゼラチン17g、ポリアクリルアミド9.6g、上記の塩基プレカーサーの固体微粒子分散液(a)70g、上記の染料固体微粒子分散液(a)を56g、単分散ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒子サイズ8μm、粒径標準偏差0.4)1.5g、ベンゾイソチアゾリノン0.03g、ポリエチレンスルホン酸ナトリウム2.2g、青色染料化合物−1を0.2g、黄色染料化合物−1を3.9g、および水844mlを混合して、ハレーション防止層塗布液を調製した。
【0352】
4)バック面保護層塗布液の調製
容器を40℃に保温し、ゼラチン50g、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム0.2g、N、N−エチレンビス(ビニルスルホンアセトアミド)2.4g、t−オクチルフェノキシエトキシエタンスルホン酸ナトリウム1g、ベンゾイソチアゾリノン30mg、フッ素系界面活性剤(F−1)37mg、フッ素系界面活性剤(F−2)0.15g、フッ素系界面活性剤(F−3)64mg、フッ素系界面活性剤(F−4)32mg、アクリル酸/エチルアクリレート共重合体(共重合重量比5/95)8.8g、エアロゾールOT(アメリカンサイアナミド社製)0.6g、流動パラフィン乳化物を流動パラフィンとして1.8g、水を950ml混合してバック面保護層塗布液とした。
【0353】
2−2.バック層の塗布
上記下塗り支持体のバック面側に、ハレーション防止層塗布液を固体微粒子染料の塗布量が0.04g/m2となるように、またバック面保護層塗布液をゼラチン塗布量が1.7g/m2となるように同時重層塗布し、乾燥し、バック層を作成した。
【0354】
3.画像形成層、中間層、および表面保護層
3−1.塗布用材料の準備
1)ハロゲン化銀乳剤
【0355】
(ハロゲン化銀乳剤の調製)
蒸留水1420mlに1質量%ヨウ化カリウム溶液4.3mlを加え、さら0.5mol/L濃度の硫酸を3.5ml、フタル化ゼラチン36.7gを添加した液をステンレス製反応壺中で攪拌しながら、35℃に液温を保ち、硝酸銀22.22gに蒸留水を195.6mlに希釈した溶液Aとヨウ化カリウム21.8gを蒸留水にて容量219mlに希釈した溶液Bを一定流量で9分間かけて全量添加した。その後、3.5質量%の過酸化水素水溶液を10ml添加し、さらにベンゾイミダゾールの10質量%水溶液を10.8ml添加した。さらに、硝酸銀51.86gに蒸留水を加えて317.5mlに希釈した溶液Cとヨウ化カリウム60gを蒸留水にて容量600mlに希釈した溶液Dを、溶液Cは一定流量で120分間かけて全量添加し、溶液DはpAgを8.1に維持しながらコントロールドダブルジェット法で添加した。
【0356】
銀1モル当たり1×10-4モルになるよう六塩化イリジウム(III)酸カリウム塩を溶液Cおよび溶液Dを添加しはじめてから10分後に全量添加した。また、溶液Cの添加終了の5秒後に六シアン化鉄(II)カリウム水溶液を銀1モル当たり3×10-4モル全量添加した。0.5mol/L濃度の硫酸を用いてpHを3.8に調整し、攪拌を止め、沈降/脱塩/水洗工程をおこなった。1mol/L濃度の水酸化ナトリウムを用いてpH5.9に調整し、pAg8.0のハロゲン化銀分散物を作成した。調製できたハロゲン化銀乳剤中の粒子は、平均球相当径0.037μm、球相当径の変動係数17%の純ヨウ化銀粒子であった。粒子サイズ等は、電子顕微鏡を用い1000個の粒子の平均から求めた。
【0357】
上記ハロゲン化銀分散物を攪拌しながら38℃に維持して、0.34質量%の1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オンのメタノール溶液を5ml加え、40分後に分光増感色素Aと増感色素Bのモル比で1:1のメタノール溶液を銀1モル当たり増感色素AとBの合計として1.2×10-3モル加え、1分後に47℃に昇温した。昇温の20分後にベンゼンチオスルフォン酸ナトリウムをメタノール溶液で銀1モルに対して7.6×10-5モル加え、そのあとpAg5.5に調製したあと5分後にテルル増感剤(ビス(N―フェニル−N―メチルカルバモイル)テルリド)を5.1×10−4モル/モル銀を加えて84分間熟成した。乳剤のpAgを7.5に調製したあと、N,N'-ジヒドロキシ-N"-ジエチルメラミンの0.8質量%メタノール溶液1.3mlを加え、さらに4分後に、5-メチル-2-メルカプトベンヅイミダゾールをメタノール溶液で銀1モル当たり4.8×10-3モル及び1-フェニル-2-ヘプチル-5-メルカプト-1,3,4-トリアゾールをメタノール溶液で銀1モルに対して5.4×10-3モル添加して、ハロゲン化銀乳剤を作成した。
【0358】
(塗布液添加用乳剤1a〜1hの調製)
上記ハロゲン化銀乳剤を小分けして溶解し、それぞれに1−(3−メチルウレイド)フェニル−5−メルカプトテトラゾールを銀1モル当たり5×10-3モル添加し、さらに表1に示すように、タイプ1〜4の化合物をハロゲン化銀1モル当たり1×10-3モル添加した。その後、塗布液添加用乳剤1kgあたりハロゲン化銀の含有量が銀として38.2gとなるように加水した。
【0359】
【表1】
【0360】
2)脂肪酸銀分散物の調製
ヘンケル社製ベヘン酸(製品名Edenor C22-85R)87.6Kg、蒸留水423L、5mol/L濃度のNaOH水溶液49.2L、tert-ブタノール120Lを混合し、75℃にて1時間攪拌し反応させ、ベヘン酸ナトリウム溶液を得た。別に、硝酸銀40.4kgの水溶液206.2L(pH4.0)を用意し、10℃にて保温した。635Lの蒸留水と30Lのtert−ブタノールを入れた反応容器を30℃に保温し、十分に撹拌しながら先のベヘン酸ナトリウム溶液の全量と硝酸銀水溶液の全量を流量一定でそれぞれ93分15秒と90分かけて添加した。このとき、硝酸銀水溶液添加開始後11分間は硝酸銀水溶液のみが添加されるようにし、そのあとベヘン酸ナトリウム溶液を添加開始し、硝酸銀水溶液の添加終了後14分15秒間はベヘン酸ナトリウム溶液のみが添加されるようにした。このとき、反応容器内の温度は30℃とし、液温度が一定になるように外温コントロールした。また、ベヘン酸ナトリウム溶液の添加系の配管は、2重管の外側に温水を循環させる事により保温し、添加ノズル先端の出口の液温度が75℃になるよう調製した。また、硝酸銀水溶液の添加系の配管は、2重管の外側に冷水を循環させることにより保温した。ベヘン酸ナトリウム溶液の添加位置と硝酸銀水溶液の添加位置は撹拌軸を中心として対称的な配置とし、また反応液に接触しないような高さに調製した。
【0361】
ベヘン酸ナトリウム溶液を添加終了後、そのままの温度で20分間撹拌放置し、30分かけて35℃に昇温し、その後210分熟成を行った。熟成終了後直ちに、遠心濾過で固形分を濾別し、固形分を濾過水の伝導度が30μS/cmになるまで水洗した。こうして脂肪酸銀塩を得た。得られた固形分は、乾燥させないでウエットケーキとして保管した。
【0362】
得られたベヘン酸銀粒子の形態を電子顕微鏡撮影により評価したところ、平均値でa=0.14μm、b=0.4μm、c=0.6μm、平均アスペクト比5.2、平均球相当径0.52μm、球相当径の変動係数15%のりん片状の結晶であった。(a,b,cは本文の規定)
【0363】
乾燥固形分260kg相当のウエットケーキに対し、ポリビニルアルコール(商品名:PVA-217、クラレ(株))19.3kgおよび水を添加し、全体量を1000kgとしてからディゾルバー羽根でスラリー化し、更にパイプラインミキサー(みづほ工業製:PM−10型)で予備分散した。
【0364】
次に予備分散済みの原液を分散機(商品名:マイクロフルイダイザーM−610、マイクロフルイデックス・インターナショナル・コーポレーション製、Z型インタラクションチャンバー使用)の圧力を1260kg/cm2に調節して、三回処理し、ベヘン酸銀分散物を得た。冷却操作は蛇管式熱交換器をインタラクションチャンバーの前後に各々装着し、冷媒の温度を調節することで18℃の分散温度に設定した。
【0365】
3)還元剤分散物(a)の調製
還元剤錯体−1を10kg、トリフェニルホスフィンオキシド0.12kgおよび変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の10質量%水溶液16kgに、水7.2kgを添加して、よく混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて4時間30分分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて還元剤錯体の濃度が25質量%になるように調製し、還元剤分散物(a)を得た。こうして得た分散物に含まれる還元剤錯体粒子はメジアン径0.46μm、最大粒子径1.6μm以下であった。得られた還元剤錯体分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0366】
4)ポリハロゲン化合物の調製
(有機ポリハロゲン化合物分散物(a)の調製)
有機ポリハロゲン化合物−1を10kgと変性ポリビニルアルコールMP203の20質量%水溶液10kgと、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液0.4kgと、水14kgを添加して、よく混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミルUVM−2にて5時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて有機ポリハロゲン化合物の濃度が26質量%になるように調製し、有機ポリハロゲン化合物分散物(a)を得た。こうして得たポリハロゲン化合物分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子はメジアン径0.41μm、最大粒子径2.0μm以下であった。得られた有機ポリハロゲン化合物分散物は孔径10.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0367】
(有機ポリハロゲン化合物分散物(b)の調製
有機ポリハロゲン化合物−2を10kgと変性ポリビニルアルコールMP203の10質量%水溶液20kgと、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液0.4kgと、水8kgを添加して、よく混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミルUVM−2にて5時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて有機ポリハロゲン化合物の濃度が25質量%になるように調製した。この分散液を40℃で5時間加温し、有機ポリハロゲン化合物−3分散物を得た。こうして得たポリハロゲン化合物分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子はメジアン径0.36μm、最大粒子径1.5μm以下であった。得られた有機ポリハロゲン化合物分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0368】
6)フタラジン化合物−1溶液の調製
8kgの変性ポリビニルアルコールMP203を水174.57kgに溶解し、次いでトリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液3.15kgとフタラジン化合物−1(6-イソプロピルフタラジン)の70質量%水溶液14.28kgを添加し、フタラジン化合物−1の5質量%溶液を調製した。
【0369】
7)メルカプト化合物−1水溶液の調製
7gのメルカプト化合物−1を水993gに溶解し、0.7質量%の水溶液とした。
【0370】
8)顔料−1分散物の調製
C.I.Pigment Blue 60を64gと花王(株)製デモールNを6.4gに水250gを添加しよく混合してスラリーとした。平均直径0.5mmのジルコニアビーズ800gを用意してスラリーと一緒にベッセルに入れ、分散機(1/4Gサンドグラインダーミル:アイメックス(株)製)にて25時間分散した後、ベッセルより取出し、水で希釈して顔料濃度5質量%の顔料−1分散物を得た。こうして得た顔料分散物に含まれる顔料粒子は平均粒径0.21μmであった。
【0371】
9)SBRラテックス液の調製
Tg=23℃のSBRラテックスは以下により調整した。
重合開始剤として過硫酸アンモニウム、乳化剤としてアニオン界面活性剤を使用し、スチレン70.5質量部、ブタジエン26.5質量部およびアクリル酸3質量部を乳化重合させた後、80℃で8時間エージングを行った。その後40℃まで冷却し、アンモニア水によりpH7.0とし、さらに三洋化成(株)製サンデットBLを0.22%になるように添加した。次に5%水酸化ナトリウム水溶液を添加しpH8.3とし、さらにアンモニア水によりpH8.4になるように調整した。このとき使用したNa+イオンとNH4 +イオンのモル比は1:2.3であった。さらに、この液1kg対してベンゾイソチアゾリンノンナトリウム塩7%水溶液を0.15ml添加しSBRラテックス液を調製した。
【0372】
(SBRラテックス:-St(70.5)-Bu(26.5)-AA(3)-のラテックス)
Tg=23℃平均粒径0.1μm、濃度43質量%、25℃60%RHにおける平衡含水率0.6質量%、イオン伝導度4.2mS/cm(イオン伝導度の測定は東亜電波工業(株)製伝導度計CM-30S使用し、ラテックス原液(43質量%)を25℃にて測定)、pH8.4。
Tgの異なるSBRラテックスはスチレン、ブタジエンの比率を適宜変更し、同様の方法により調整した。
【0373】
3−2.塗布液の調製
1)画像形成層の塗布液の調製
上記で得た脂肪酸銀分散物1000g、水104ml、顔料−1分散物30g、有機ポリハロゲン化合分散物(a)6.3g、有機ポリハロゲン化合物分散物(b)20.7g、フタラジン化合物−1溶液173g、SBRラテックス(Tg:23℃)液1082g、還元剤分散物(a)258g、メルカプト化合物−1溶液9gを順次添加し、塗布直前に各塗布液添加用乳剤1a〜1hを有機酸銀に対する量が銀のモル比で6.6%になるように添加し、よく混合した画像形成層塗布液1a〜1hをそのままコーティングダイへ送液し、塗布した。
【0374】
2)中間層塗布液の調製
ポリビニルアルコールPVA-205(クラレ(株)製)の10質量%水溶液772g、顔料−1分散物5.3g、メチルメタクリレート/スチレン/ブチルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(共重合質量比64/9/20/5/2)ラテックス27.5質量%液226gにエアロゾールOTの5質量%水溶液を2ml、フタル酸二アンモニウム塩の20質量%水溶液を10.5ml、総量880gになるように水を加え、pHが7.5になるようにNaOHで調整して中間層塗布液とし、10ml/m2になるようにコーティングダイへ送液した。
塗布液の粘度はB型粘度計40℃(No.1ローター、60rpm)で65[mPa・s]であった。
【0375】
3)表面保護層第1層塗布液の調製
イナートゼラチン64gを水に溶解し、メチルメタクリレート/スチレン/ブチルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(共重合質量比64/9/20/5/2)ラテックス27.5質量%液80g、フタル酸の10質量%メタノール溶液を23ml、4-メチルフタル酸の10質量%水溶液23ml、0.5mol/L濃度の硫酸を28ml、エアロゾールOTの5質量%水溶液を5ml、フェノキシエタノール0.5g、ベンゾイソチアゾリノン0.1gを加え、総量750gになるように水を加えて塗布液とし、4質量%のクロムみょうばん26mlを塗布直前にスタチックミキサーで混合したものを18.6ml/m2になるようにコーティングダイへ送液した。
塗布液の粘度はB型粘度計40℃(No.1ローター、60rpm)で20[mPa・s]であった。
【0376】
4)表面保護層第2層塗布液の調製
イナートゼラチン80gを水に溶解し、メチルメタクリレート/スチレン/ブチルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(共重合質量比64/9/20/5/2)ラテックス27.5質量%液102g、フッ素系界面活性剤(F−1)の5質量%溶液を3.2ml、フッ素系界面活性剤(F−2)の2質量%水溶液を32ml、エアロゾールOTの5質量%溶液を23ml、ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒径0.7μm)4g、ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒径4.5μm)21g、4-メチルフタル酸1.6g、フタル酸4.8g、0.5mol/L濃度の硫酸44ml、ベンゾイソチアゾリノン10mgに総量650gとなるよう水を添加して、4質量%のクロムみょうばんと0.67質量%のフタル酸を含有する水溶液445mlを塗布直前にスタチックミキサーで混合したものを表面保護層第2層塗布液とし、8.3ml/m2になるようにコーティングダイへ送液した。
塗布液の粘度はB型粘度計40℃(No.1ローター,60rpm)で19[mPa・s]であった。
【0377】
3−3.熱現像感光材料の作成
【0378】
バック面と反対の面に、順に、画像形成層、中間層、表面保護層第1層、表面保護層第2層の順番でスライドビード塗布方式にて同時重層塗布し、熱現像感光材料の試料を作成した。このとき、画像形成層と中間層の塗布液は35℃に、表面保護層第1層は36℃に、表面保護層第2層は37℃に温度調整した。
画像形成層の各化合物の塗布量(g/m2)は以下の通りである。
【0379】
【0380】
塗布乾燥条件は以下のとおりである。
塗布はスピード160m/minで行い、コーティングダイ先端と支持体との間隙を0.10〜0.30mmとし、減圧室の圧力を大気圧に対して196〜882Pa低く設定した。支持体は塗布前にイオン風にて除電した。
引き続くチリングゾーンにて、乾球温度10〜20℃の風にて塗布液を冷却した後、無接触型搬送して、つるまき式無接触型乾燥装置にて、乾球温度23〜45℃、湿球温度15〜21℃の乾燥風で乾燥させた。このようにして塗布試料21から27を得た。
乾燥後、25℃で湿度40〜60%RHで調湿した後、膜面を70〜90℃になるように加熱した。加熱後、膜面を25℃まで冷却した。
【0381】
作製された熱現像感光材料のマット度はベック平滑度で画像形成層面側が550秒、バック面が130秒であった。また、画像形成層面側の膜面のpHを測定したところ6.0であった。
【0382】
4.写真性能の評価
(準備)
得られた試料は半切サイズに切断し、25℃50%の環境下で以下の包装材料に包装し、2週間常温下で保管した。
(包装材料)
PET10μm/PE12μm/アルミ箔9μm/Ny15μm/カーボン3%を含むポリエチレン50μm、酸素透過率:0.02ml/atm・m2・25℃・day、水分透過率:0.10g/atm・m2・25℃・day。
【0383】
上記の感光材料を以下のように評価を行った。
(感光材料の露光)
感光材料は以下の様にして露光処理を行った。
富士メディカルドライレーザーイメージャーFM−DPLを改造して露光・現像処理を行った。露光はFM−DPL搭載の最大60mW(IIIB)出力の660nm半導体レーザーを100μm×100μmに絞って感材を照射した。レーザーの露光量を段階的に変化させて露光を行った。現像は、FM−DPLの熱現像部を用いて、112℃−119℃−121℃−121℃に設定した4枚のパネルヒーターで、合計24秒であった。
【0384】
(試料の評価) 得られた画像をMacbeth濃度計で濃度測定し露光量の対数に対する濃度の特性曲線を作成した。
感度:カブリ+1.0の黒化濃度を与える露光量の逆数で感度を表し、試料No.1の感度を100としてそれに対する相対値で示した。値が大きいほど感度が高いことを示す。
Dmin:非画像部の濃度をマクベス濃度計により測定した。
画像保存性:熱現像した試料を半切サイズに切断し、30℃70%RHの環境下で、照度1000Luxの蛍光灯下で24時間保存した後、Dmin部のかぶり濃度の増加を評価した。
【0385】
得られた結果は表2に示す。この結果が示すように、タイプ1〜4の化合物によって本発明の熱現像感光材料は、約2〜3倍高感度になるが、驚くべきことにかぶり、および熱現像後のプリントアウト性能がほとんど悪化しなかった。特に本発明のヨウ化銀乳剤を用いた熱現像感光材料は、プリントアウト性能に極めて優れる上に、高感度化してもほとんど悪化しない点が特筆されるところである。
【0386】
【表2】
【0387】
(試料の保存安定性の評価)
本発明の試料の保存安定性を調べるために下記の強制試験(エージングテスト)を行った。
上記のように各試料を包装して60℃で3日間保存した後、常温に戻し、露光と熱現像を行い、写真性能を調べた。
△S = log(塗布直後の試料の感度/強制試験後の感度)
得られた写真性能を表3に示した。本発明の試料は減感が少なく、保存安定性に優れることがわかった。
以上のように、本発明の試料は、表3に示すように高感度で、かつ表3に示すように保存安定性にも優れる予想外の優れた性能を有することがわかった。
【0388】
【表3】
【0389】
実施例2
実施例1のハロゲン化銀乳剤と同様にして、但し増感色素AとBを添加しないでヨウ化銀乳剤を調製したあと、小分けして表4に示した化合物を添加し、その他は実施例1と同様にして塗布試料21から29を得た。そのあと405nmの青色レーザー光を用いる以外は実施例1と同様に処理を行い、表4の結果を得た。なお、相対感度は試料21を100として相対比で示した。
【0390】
【表4】
【0391】
表4から明らかなように、実施例1と同様にタイプ1〜4の化合物によって本発明の熱現像感光材料は、低かぶり、および優れたプリントアウト性能を維持しつつ高感度であった。
【0392】
実施例3
実施例2において、還元剤錯体―1の代わりに還元剤―2を用い、さらに水素結合性化合物―1、現像促進剤―1、―2、および―3、および色調調整剤―1を以下のように用いて、実施例2と同様にして塗布試料を作成した。これらの化合物は、いずれもそれぞれの固体分散物を調製して添加した。
【0393】
ベヘン酸銀 5.55(脂肪酸銀量として)
顔料―1:C.I.Pigment Blue 60 0.036
有機ポリハロゲン化合物−1 0.12
有機ポリハロゲン化合物−2 0.37
フタラジン化合物−1 0.19
SBRラテックス 9.67
還元剤−2 0.81
水素結合性化合物−1 0.30
現像促進剤−1 0.024
現像促進剤−2 0.010
現像促進剤−3 0.015
色調調整剤−1 0.010
一般式(1)〜(4)の化合物 ハロゲン化銀1モル当たり1×10-3モル
メルカプト化合物−2 0.002
ハロゲン化銀(Agとして) 0.091
【0394】
得られた試料を実施例2と同様に405nmの青色レーザー光を用いて露光した後、実施例1の現像条件で熱現像時間を14秒にして現像処理を行った。その結果、実施例2と同様に、本発明の試料は良好な結果を示した。
【0395】
以下に本発明の実施例で用いた化合物の化学構造を示す。
【0396】
【化28】
【0397】
【化29】
【0398】
【化30】
【0399】
【化31】
【0400】
【化32】
【0401】
【発明の効果】
本発明により、熱現像処理後の画像のプリントアウト性能に優れ、かつ高感度で低いDminの熱現像感光材料が得られる。

Claims (3)

  1. 支持体の一方面上に、少なくとも、感光性ハロゲン化銀、非感光性有機銀塩、銀イオンのための還元剤、及びバインダーを含有する熱現像感光材料において、
    1)前記感光性ハロゲン化銀がヨウ化銀含有率が40モル%以上100モル%以下であり、2)下記のタイプ1〜タイプ4の化合物より選ばれる1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、後続反応によってさらに1電子もしくはそれ以上の電子を放出しうる化合物を含有することを特徴とする熱現像感光材料。
    タイプ1の化合物:1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合開裂反応を伴ってさらに2電子以上の電子を放出し得る化合物であって、かつ同じ分子内にハロゲン化銀への吸着性基を有する化合物である
    タイプ2の化合物:1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合開裂反応を伴ってさらにもう1電子を放出し得る化合物であって、かつ同じ分子内にハロゲン化銀への吸着性基を2つ以上有する化合物である。
    タイプ3の化合物:1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く炭素−炭素、炭素−窒素、炭素−硫黄、もしくは炭素−酸素の原子間結合形成過程を経た後に、さらに1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物であって、かつ同じ分子内にハロゲン化銀への吸着性基を有する化合物である
    タイプ4の化合物:1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く分子内の環開裂反応を経た後に、さらに1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物であって、かつ同じ分子内にハロゲン化銀への吸着性基を有する化合物である
    前記タイプ1〜4の化合物において、前記ハロゲン化銀への吸着性基は、メルカプト置換含窒素ヘテロ環基、またはイミノ銀を形成しうる−NH−基をヘテロ環の部分構造として有する含窒素ヘテロ環基である。
  2. 下記一般式(D)で表される水素結合性化合物を含有することを特徴とする請求項1に記載の熱現像感光材料。
    (一般式(D)においてR 21 ないしR 23 は各々独立にアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基またはヘテロ環基を表し、これらの基は無置換であっても置換基を有していてもよい。)
  3. 下記一般式(1)または下記一般式(2)で表される現像促進剤を含有することを特徴とする請求項1又は請求項に記載の熱現像感光材料。
    −NHNH−R 一般式(1)
    一般式(1)において、Q は炭素原子でNHNH−R と結合する5〜7員の不飽和環を表し、R はカルバモイル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルホニル基、またはスルファモイル基を表す。ただし、R がプロピルカルバモイル基を表すとき、Q が2,3,5,6−テトラクロロ−4−シアノフェニル基であることはない。)
    (一般式(2)において、R およびR はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。X 〜X はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。ただし、X 〜X で表さ れる置換基はヒドロキシ基であることはなく、X 〜X で表される置換基が窒素原子でフェノール環に連結しているとき、X 〜X は含窒素複素環基または−NH−C(=O)−R で表される基を表し、R は炭素数8〜40の置換基を表す。R 、R およびX 〜X で表される置換基は互いに結合して環を形成してもよい。)
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