JP4083039B2 - 熱現像感光材料 - Google Patents

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  • Non-Silver Salt Photosensitive Materials And Non-Silver Salt Photography (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱現像感光材料に関し、特にヨウ化銀含量の高いハロゲン化銀乳剤を用いた熱現像感光材料に関する。さらに、感度、特に分光感度が大幅に改善され、かつ低いDmin、高いDmaxを有し、現像処理後の画像保存性が優れた熱現像感光材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、医療分野や印刷製版分野において環境保全、省スペースの観点から写真現像処理のドライ化が強く望まれている。これらの分野では、デジタル化が進展し、画像情報をコンピューターに取り込み、保存、そして必要な場合には加工し、通信によって必要な場所で、レーザー・イメージセッターまたはレーザー・イメージャーにより感光材料に出力し、現像して画像をその場で作成するシステムが急速に広がってきている。感光材料としては、高い照度のレーザー露光で記録することができ、高解像度および鮮鋭さを有する鮮明な黒色画像を形成することがが必要とされている。このようなデジタル・イメージング記録材料としては、インクジェットプリンター、電子写真など顔料、染料を利用した各種ハードコピーシステムが一般画像形成システムとして流通しているが、医療用画像のように診断能力を決定する画質(鮮鋭度、粒状性、階調、色調)の点、記録スピード(感度)の点で、不満足であり、従来の湿式現像の医療用銀塩フィルムを代替できるレベルに到達していない。
【0003】
一方、有機銀塩を利用した熱画像形成システムが知られている(例えば、非特許文献1参照。)。特に、熱現像感光材料は、一般に、感光性ハロゲン化銀、還元剤、還元可能な銀塩(例、有機銀塩)、必要により銀の色調を制御する色調剤を、バインダーのマトリックス中に分散した感光性層を有している。熱現像感光材料は、画像露光後、高温(例えば80℃以上)に加熱し、ハロゲン化銀あるいは還元可能な銀塩(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応により、黒色の銀画像を形成する。酸化還元反応は、露光で発生したハロゲン化銀の潜像の触媒作用により促進される。その結果、露光領域に黒色の銀画像が形成される。熱現像感光材料は、米国特許2910377号、特公昭43-4924号をはじめとする多くの文献に開示され、また、実用的には医療用画像形成システムとして富士メディカルドライイメージャーFM−DPLが発売された。
【0004】
この様な有機銀塩を利用した画像形成システムは、定着工程がないため現像処理後の画像保存性、特に光が当たったときのプリントアウトの悪化が大きな問題であった。このプリントアウトを改良する手段として有機銀塩をコンバージョンすることによって形成したヨウ化銀を利用する方法が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。しかしながらここで開示されたような有機銀塩をヨードでコンバージョンする方法では十分な感度を得ることが出来ず現実のシステムを組むことは困難であった。その他のヨウ化銀を利用した感材が特許文献に記載されているが、いずれも十分な感度・かぶりレベルを達成できておらず、レーザー露光感材としての実用に耐えるものではなかった(特許文献3、4、および5参照)。
【0005】
ヨウ化銀写真乳剤の感度を増加させる手段としては、いくつかの学術文献に報告されているが、pAgの調整、亜硝酸ナトリウム、ピロガロール、ハイドロキノンなどのハロゲン受容体や硝酸銀水溶液への浸漬や、pAg7.5で硫黄増感することなどにより、増感することが知られていた(例えば、非特許文献2〜4参照。)。しかし、これらのハロゲン受容体の増感効果は、本発明が対象とする熱現像感光材料においてはその効果は非常に小さく極めて不十分であった。そのために、高ヨウ化銀を用いた熱現像感光材料において大幅に感度が増加できる技術の開発が熱望されてきた。
【0006】
特開平8−272024号には、ハロゲン化銀への吸着基と還元基を有する化合物またはその前駆体を用いることにより、液体現像処理を行うカラーネガ乳剤やX−レイ乳剤に用いられるヨウ化銀含量の低いヨウ化銀乳剤を高感度にする技術が開示されていた。
【0007】
しかしながら、液体現像処理のハロゲン化銀感光材料は、ハロゲン化銀を一般には液体処理液中に含まれている現像薬(還元剤)で還元して銀像を形成するか、あるいは副生する現像薬の酸化体を利用してカラー画像を形成するものであり、基本反応はハロゲン化銀の現像薬による還元である。一方、熱現像感光材料においては、ハロゲン化銀は露光によって潜像を形成するだけであって、ハロゲン化銀自体は還元剤によっては還元されず、還元されるのは非感光性有機銀塩より供給される銀イオンである。還元剤も液体現像処理の場合は、ヒドロキノンやp−フェニレンジアミン類などのイオン性還元剤であるのに対して、熱現像感光材料の場合は、一般にはラジカル反応剤として知られているヒンダードフェノール誘導体である。
【0008】
このように、液体現像処理感光材料と熱現像感光材料では、現像反応(還元反応)の機構は全く異なり、用いられる化合物も全く系統を異にする。従って、液体現像処理で有効であった化合物が、そのまま熱現像感光材料に有効であるとはとても言えない。先の特開平8−272024号に記載の化合物についても、熱現像感光材料に適用することで、同じ効果が得られるのか、あるいは全く別の効果が期待できるのか、全く予想できない。ましてや高ヨウ化銀乳剤を用いた熱現像感光材料に適用することも全く想起できず、その効果を推測することも不可能であった。
【0009】
また、超硬調画像を形成するための超硬調化剤として吸着基を有するアシルヒドラジン類が知られている、熱現像感光材料においても吸着基を有するアシルヒドラジン類が超硬調化作用を有することが知られている。これはアシルヒドラジン類による伝染現像作用によるものであり、超硬調画像ではあるが画像の粒状が荒れるため、印刷製版用途には適するが医療診断用途には全く不向きである。従って、吸着基を有するアシルヒドラジン類では、高ヨウ化銀を感光性ハロゲン化銀として用いた時に良好な画像品質を保って高感度かを果たす目的には適さない。
【0010】
一方、高ヨウ化銀の分光増感に関する報告は、非常に少ない。具体的報告としては、pAgを下げれば分光増感でき、pAg6では分光増感色素から見たヨウ化銀の伝導帯の底のエネルギー準位は臭化銀のそれと変わらないとの報告(例えば、非特許文献2)、シアニン色素の吸着は臭化銀よりもヨウ化銀に対しての方が強いとの報告(例えば、非特許文献3)アニオン型シアニン、特にJバンド型アニオンシアニンによる沃化銀での分光増感の開示(例えば、特許文献6)、及び高ヨウ化銀ではポーラログラフ半波酸化電位(以下、Eoxと記述する)が1.0V vs SCEよりも貴で且つEoxとポーラログラフ半波還元電位(以下、Eredと記述する)との差が2.0V vs SCEよりも大きい増感色素が良く分光増感するとの開示(例えば、特許文献7)があるに過ぎない。
しかも、これらの手段を用いても高沃化銀写真乳剤では、分光増感は出来ても、臭化銀乳剤などで得られた感度に比べはるかに低く、実用的に有用なレベルには遠く及ばなかった。
【0011】
【特許文献1】
米国特許第6143488号公報
【特許文献2】
欧州特許第0922995号公報
【特許文献3】
米国特許第6165705号公報
【特許文献4】
特開平8−297345号公報
【特許文献5】
特許第2785129号公報
【特許文献6】
特開昭56−164338号公報;請求の範囲、p.2〜p.3。
【特許文献7】
特開昭49−17719号公報;p.3の一般式(I)〜(IV)、p.7の化合物(1)〜(23)。
【非特許文献1】
D.H.クロスターベール、「熱によって処理される銀システム(Thermally Processed Silver Systems)」(イメージング・プロセッシーズ・アンド・マテリアルズ(Imaging Processes and Materials)Neblette 第8版、スタージ(Sturge)、V.ウオールワース(Walworth)、A.シェップ(Shepp) 編集、第9章、第279頁、1989年)
【非特許文献2】
P.B.ギルマン、フォトグラフィック サイエンス アンド エンジニアリング、18巻(5)、475頁(1974年発行)
【非特許文献3】
W.L.ガードナー、フォトグラフィック サイエンス アンド エンジニアリング、21巻(6)、325頁(1977年発行)
【非特許文献4】
T.H.ジェームス、フォトグラフィック サイエンス アンド エンジニアリング、5巻、216頁(1961年発行)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、高ヨウ化銀を用いた熱現像感光材料に於いて高感度、特に分光感度が高く、低いDminと高いDmaxを持つ熱現像感光材料を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記課題は、下記の手段によって達成された。
<1> 支持体上に少なくとも非感光性有機銀塩、感光性ハロゲン化銀、還元剤およびバインダーを含む画像形成層を有する熱現像感光材料であって、1)該ハロゲン化銀の沃化銀含有率が80モル%以上100モル%以下であり、2)該ハロゲン化銀がポーラログラフ半波還元電位が−1.1 V vs SCE より卑で且つ Log Pが0.7以上であるシアニン色素と、ポーラログラフ半波酸化電位が、該シアニン色素のポーラログラフ半波酸化電位よりも0.2 V vs SCE 以上卑であるアミノ置換スチリルアゾール誘導体化合物とにより分光増感を施され、3)下記一般式(I)で表される化合物、その前駆体、および下記のタイプ1〜4より選ばれる FED 化合物よりなる群より選ばれ、77°Kにおける高沃化銀含有相に由来する発光強度を10%以上低減させることが出来る物質を含有することを特徴とする熱現像感光材料
一般式(I)A1− (W )n 1−B1
(式中、A1は、ハロゲン化銀に吸着可能な基を含む原子群を表し、W1は2価の連結基を表し、n1は0または1を表し、B1は還元基を表す。);
(タイプ1) 1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合開裂反応を伴って、さらに2電子以上の電子を放出し得る化合物;
(タイプ2) 1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合開裂反応を伴って、さらにもう1電子を放出し得る化合物で、かつ同じ分子内にハロゲン化銀への吸着性基を2つ以上有する化合物;
(タイプ3) 1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合形成過程を経た後に、さらに1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物;
(タイプ4) 1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く分子内の環開裂反応を経た後に、さらに1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物
【0015】
> 前記一般式(I)の吸着基が、メルカプト基、チオン基、およびイミノ銀を生成する基よりなる群より選ばれる少なくとも1種である<>に記載の熱現像感光材料。
> 前記一般式(I)の吸着基が、メルカプト基である<>または<>に記載の熱現像感光材料。
> 前記一般式(I)の還元基が、ホルミル基、アミノ基、3重結合基、アルキルまたはアリールメルカプト基、ヒドロキシアミン含有基、レダクトン類含有基、フェノール類含有基、ナフトール類含有基、フェニレンジアミン類含有基、および1−フェニル−3−ピラゾリドン類含有基よりなる群より選ばれる少なくとも1種である<>〜<>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
> 前記一般式(I)の前駆体となる化合物が、チアゾリウム類、チアゾリン類、チアゾリジン類、およびジスルフィド類を含有する化合物よりなる群より選ばれる少なくとも1種である<>に記載の熱現像感光材料。
【0016】
> 前記感光性ハロゲン化銀の平均粒子サイズが5nm〜55nmである<1>〜<>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
> 前記感光性ハロゲン化銀を前記非感光性有機銀塩1モルに対して、1モル%〜7モル%含有する<1>〜<>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
> レーザー光で露光されることを特徴とする<1>〜<>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
<11> 前記一般式(I)の化合物またはその前駆体を、該高ヨウ化銀1モルあたり10-5モル以上、1モル以下含有する<3>〜<10>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
10>前記一般式(I)の化合物またはその前駆体を、該高ヨウ化銀1モルあたり10-5モル以上、0.1モル以下含有する<>〜<>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
11>前記一般式(I)の化合物またはその前駆体を、該高ヨウ化銀1モルあたり10-5モル以上、0.05モル以下含有する<>〜<10>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
【0017】
12> 前記感光性ハロゲン化銀が、カルコゲン増感、金増感、および還元増感の少なくとも1つで化学増感されている<1>〜<11>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
13> 前記カルコゲン増感が、テルル増感、セレン増感、および硫黄増感の少なくとも1つである<12>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
14> 前記カルコゲン増感が、テルル増感である<12>または<13>に記載の熱現像感光材料。
【0018】
15> 前記感光性ハロゲン化銀が、エピタキシャル形成された部分を有する<1>〜<14>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
16> 前記エピタキシャル形成された部分が少なくとも臭化銀または塩化銀を含む<15>に記載の熱現像感光材料。
17> 前記感光性ハロゲン化銀が、少なくとも転位線または格子欠陥を含む<1>〜<16>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
18> 前記感光性ハロゲン化銀が、Fe、Ir、Ru、Rh、Osより選ばれる8族金属を含む<1>〜<17>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
19> 前記8族金属が、無機または有機の4ないし6配位錯体である<18>に記載の熱現像感光材料。
20> 前記感光性ハロゲン化銀が、前記有機銀塩の存在しない状態で調製され、化学増感されてなる<1>〜<19>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
21> 前記レーザー光のピーク波長が450nm以上900nm以下である<>に記載の熱現像感光材料。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の熱現像感光材料は、支持体の少なくとも一方面上に分光増感を施された感光性ハロゲン化銀、非感光性有機銀塩、還元剤、77°Kにおける高ヨウ化銀相に由来する430nm〜435nmに発光極大を持つ発光強度を10%以上低減させる事ができる化合物、及びバインダーを含有する画像形成層を有している。また、好ましくは画像形成層上に中間層、表面保護層、あるいはその反対面にバック層やバック保護層などを有してもよい。
これらの各層の構成、およびその好ましい成分について詳しく説明する。
【0020】
1.感光性ハロゲン化銀
1)ハロゲン組成
本発明に用いられる感光性ハロゲン化銀のハロゲン組成は、ヨウ化銀含有率が80モル%以上、100モル%以下と高い組成のものであることが好ましい。残りは特に制限はなく、塩化銀、臭化銀またはチオシアン酸銀や燐酸銀などの有機銀塩から選ぶことができるが、特に臭化銀、塩化銀であることが好ましい。この様なヨウ化銀含有率が高い組成のハロゲン化銀を用いることによって、現像処理後の画像保存性、特に光照射によるカブリの増加が著しく小さい好ましい熱現像感光材料が設計できる。
【0021】
さらに、ヨウ化銀含有率が85モル%以上100モル%以下であると好ましく、90モル%以上100モル%以下であることが処理後の光照射に対する画像保存性の観点では極めて好ましい。
【0022】
粒子内におけるハロゲン組成の分布は均一であってもよく、ハロゲン組成がステップ状に変化したものでもよく、或いは連続的に変化したものでもよい。また、コア/シェル構造を有するハロゲン化銀粒子も好ましく用いることができる。
構造として好ましいものは2〜5重構造であり、より好ましくは2〜4重構造のコア/シェル粒子を用いることができる。コア部のヨウ化銀含有率が高いコア高ヨウ化銀構造、またはシェル部のヨウ化銀含有率が高いシェル高ヨウ化銀構造も好ましく用いることができる。また、粒子の表面にエピタキシャル部分とした塩化銀や臭化銀を局在させる技術も好ましく用いることができる。
【0023】
2)粒子サイズ
本発明に用いる高ヨウ化銀のハロゲン化銀については、粒子サイズは特に重要である。ハロゲン化銀のサイズが大きいと、必要な最高濃度を達成するために必要なハロゲン化銀の塗布量が増加する。本発明者は、本発明で好ましく用いられるヨウ化銀含有率の高い組成のハロゲン化銀は、その塗布量が多いと現像が著しく抑制され低感化するとともに現像の時間に対する濃度安定性が悪化し好ましくなく、そのため一定以上の粒子サイズでは所定の現像時間で最高濃度が得られないことを見出した。一方、その添加量を制限すればヨウ化銀ながら十分な現像性を有することを発見した。
この様に高ヨウ化銀を用いた場合、十分な最高光学濃度を達成するためには、ハロゲン化銀粒子のサイズは従来の臭化銀や低ヨウド含量のヨウ臭化銀に比べて十分に小さいことが必要である。好ましいハロゲン化銀の粒子サイズは5nm以上55nm以下であることが好ましい。特に好ましくは10nm以上45nm以下である。ここでいう粒子サイズとは、電子顕微鏡により観察した投影面積と同面積の円像に換算したときの直径の平均をいう。
【0024】
3)塗布量
この様なハロゲン化銀粒子の塗布量は、後述する非感光性有機銀塩の銀1モルに対して0.5モル%以上15モル%以下が好ましく、1モル%以上10モル%以下であることがさらに好ましく、特に好ましくは1モル%以上7モル%以下である。本発明者の見出したヨウ化銀含有率の高い組成のハロゲン化銀による著しい現像抑制を押さえるためには、この添加量の選択は極めて重要である。
【0025】
4)粒子形成方法
感光性ハロゲン化銀の形成方法は当業界ではよく知られており、例えば、リサーチディスクロージャー1978年6月の第17029号、および米国特許第3,700,458号に記載されている方法を用いることができるが、具体的にはゼラチンあるいは他のポリマー溶液中に銀供給化合物及びハロゲン供給化合物を添加することにより感光性ハロゲン化銀を調製し、その後で有機銀塩と混合する方法を用いる。また、特開平11−119374号公報の段落番号0217〜0224に記載されている方法、特開平11−352627号、特願2000−42336号記載の方法も好ましい。
【0026】
5)粒子形状
ハロゲン化銀粒子の形状としては、立方体粒子、八面体粒子、十二面体粒子、十四面体粒子、平板状粒子、球状粒子、棒状粒子、ジャガイモ状粒子等を挙げることができるが、本発明においては特に十二面体粒子、十四面体粒子が好ましい。本発明のヨウ化銀含有率の高い組成のハロゲン化銀は複雑な形態を取り得るが、好ましい形態は例えば、R.L.JENKINS etal.J of Phot.Sci.Vo1.28(1980)のp164−Fig1に示されているような接合粒子が挙げられる。同Fig.1に示されているような平板状粒子も好ましく用いられる。ハロゲン化銀粒子のコーナーが丸まった粒子も好ましく用いることができる。感光性ハロゲン化銀粒子の外表面の面指数(ミラー指数)については特に制限はない。
【0027】
6)重金属
本発明においては、六シアノ金属錯体を粒子最表面に存在させたハロゲン化銀粒子が好ましい。六シアノ金属錯体としては、[Fe(CN)64-、[Fe(CN)63-、[Ru(CN)64-、[Os(CN)64-、[Co(CN)63-、[Rh(CN)63-、[Ir (CN)63-、[Cr(CN)63-、[Re(CN)63-などが挙げられる。本発明においては六シアノFe錯体が好ましい。
【0028】
六シアノ金属錯体は、水溶液中でイオンの形で存在するので対陽イオンは重要ではないが、水と混和しやすく、ハロゲン化銀乳剤の沈澱操作に適合しているナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオンおよびリチウムイオン等のアルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、アルキルアンモニウムイオン(例えばテトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラプロピルアンモニウムイオン、テトラ(n−ブチル)アンモニウムイオン)を用いることが好ましい。
【0029】
六シアノ金属錯体は、水の他に水と混和しうる適当な有機溶媒(例えば、アルコール類、エーテル類、グリコール類、ケトン類、エステル類、アミド類等)との混合溶媒やゼラチンと混和して添加することができる。
六シアノ金属錯体の添加量は、銀1モル当たり1×10-5モル以上1×10-2モル以下が好ましく、より好ましくは1×10-4モル以上1×10-3モル以下である。
六シアノ金属錯体をハロゲン化銀粒子最表面に存在させるには、六シアノ金属錯体を、粒子形成に使用する硝酸銀水溶液を添加終了した後、硫黄増感、セレン増感およびテルル増感のカルコゲン増感や金増感等の貴金属増感を行う化学増感工程の前までの仕込工程終了前、水洗工程中、分散工程中、または化学増感工程前に直接添加する。ハロゲン化銀微粒子を成長させないためには、粒子形成後速やかに六シアノ金属錯体を添加することが好ましく、仕込工程終了前に添加することが好ましい。
【0030】
尚、六シアノ金属錯体の添加は、粒子形成をするために添加する硝酸銀の総量の96質量%を添加した後から開始してもよく、98質量%添加した後から開始するのがより好ましく、99質量%添加した後が特に好ましい。
これら六シアノ金属錯体を粒子形成の完了する直前の硝酸銀水溶液を添加した後に添加すると、ハロゲン化銀粒子最表面に吸着することができ、そのほとんどが粒子表面の銀イオンと難溶性の塩を形成する。この六シアノ鉄(II)の銀塩は、Aglよりも難溶性の塩であるため、微粒子による再溶解を防ぐことができ、粒子サイズが小さいハロゲン化銀微粒子を製造することが可能となった。
【0031】
本発明の感光性ハロゲン化銀粒子は、周期律表(第1〜第18族までを示す)の第8族〜第10族の金属または金属錯体を含有することができる。周期律表の第8族〜第10族の金属または金属錯体の中心金属として好ましくは、ロジウム、ルテニウム、イリジウムである。これら金属錯体は1種類でもよいし、同種金属及び異種金属の錯体を2種以上併用してもよい。好ましい含有率は銀1モルに対し1×10-9モルから1×10-3モルの範囲が好ましい。これらの重金属や金属錯体及びそれらの添加方法については特開平7−225449号、特開平11−65021号段落番号0018〜0024、特開平11−119374号段落番号0227〜0240に記載されている。
さらに本発明に用いられるハロゲン化銀粒子に含有することのできる金属原子(例えば[Fe(CN)64-)、ハロゲン化銀乳剤の脱塩法や化学増感法については特開平11−84574号段落番号0046〜0050、特開平11−65021号段落番号0025〜0031、特開平11−119374号段落番号0242〜0250に記載されている。
【0032】
7)ゼラチン
本発明に用いる感光性ハロゲン化銀乳剤に含有されるゼラチンとしては、種々のゼラチンが使用することができる。感光性ハロゲン化銀乳剤の有機銀塩含有塗布液中での分散状態を良好に維持することが必要であり、分子量は、500〜60,000の低分子量ゼラチンを使用することが好ましい。これらの低分子量ゼラチンは粒子形成時あるいは脱塩処理後の分散時に使用してもよいが、脱塩処理後の分散時に使用することが好ましい。
【0033】
8)化学増感
本発明に用いられる感光性ハロゲン化銀は、未化学増感でもよいが、カルコゲン増感法、金増感法、還元増感法の少なくとも1つの方法で化学増感されるのが好ましい。カルコゲン増感法としては、硫黄増感法、セレン増感法およびテルル増感法が挙げられる。
【0034】
硫黄増感においては、不安定硫黄化合物を用い、P.Grafkides著、Chimie et Physique Photographique(Paul Momtel社刊、1987年、第5版)、Research Disclosure誌307巻307105号などに記載されている不安定硫黄化合物を用いる事が出来る。
具体的には、チオ硫酸塩(例えばハイポ)、チオ尿素類(例えば、ジフェニルチオ尿素、トリエチルチオ尿素、N−エチル−N'−(4−メチル−2−チアゾリル)チオ尿素、カルボキシメチルトリメチルチオ尿素)、チオアミド類(例えば、チオアセトアミド)、ローダニン類(例えば、ジエチルローダニン、5−ベンジリデン−N−エチルローダニン)、ホスフィンスルフィド類(例えば、トリメチルホスフィンスルフィド)、チオヒダントイン類、4−オキソ−オキサゾリジン−2−チオン類、ジスルフィド類またはポリスルフィド類(例えば、ジモルフォリンジスルフィド、シスチン、レンチオニン)、ポリチオン酸塩、元素状硫黄などの公知の硫黄化合物および活性ゼラチンなども用いることができる。特にチオ硫酸塩、チオ尿素類とローダニン類が好ましい。
【0035】
セレン増感においては、不安定セレン化合物を用い、特公昭43−13489号、同44−15748号、特開平4−25832号、同4−109340号、同4−271341号、同5−40324号、同5−11385号、特願平4−202415号、同4−330495号、同4−333030号、同5−4203号、同5−4204号、同5−106977号、同5−236538号、同5−241642号、同5−286916号などに記載されているセレン化合物を用いる事が出来る。
【0036】
具体的には、コロイド状金属セレン、セレノ尿素類(例えば、N,N−ジメチルセレノ尿素、トリフルオルメチルカルボニル−トリメチルセレノ尿素、アセチル−トリメチルセレノ尿素)、セレノアミド類(例えば、セレノアミド,N,N−ジエチルフェニルセレノアミド)、ホスフィンセレニド類(例えば、トリフェニルホスフィンセレニド、ペンタフルオロフェニル−トリフェニルホスフィンセレニド)、セレノホスフェート類(例えば、トリ−p−トリルセレノホスフェート、トリ−n−ブチルセレノホスフェート)、セレノケトン類(例えば、セレノベンゾフェノン)、イソセレノシアネート類、セレノカルボン酸類、セレノエステル類、ジアシルセレニド類などを用いればよい。またさらに、特公昭46−4553号、同52−34492号などに記載の非不安定セレン化合物、例えば亜セレン酸、セレノシアン酸塩、セレナゾール類、セレニド類なども用いる事が出来る。特に、ホスフィンセレニド類、セレノ尿素類とセレノシアン酸塩が好ましい。
【0037】
テルル増感においては、不安定テルル化合物を用い、特開平4−224595号、同4−271341号、同4−333043号、同5−303157号、同6−27573号、同6−175258号、同6−180478号、同6−208186号、同6−208184号、同6−317867号、同7−140579号、同7−301879号、同7−301880号などに記載されている不安定テルル化合物を用いる事が出来る。
【0038】
具体的には、ホスフィンテルリド類(例えば、ブチル−ジイソプロピルホスフィンテルリド、トリブチルホスフィンテルリド、トリブトキシホスフィンテルリド、エトキシ−ジフェニルホスフィンテルリド)、ジアシル(ジ)テルリド類(例えば、ビス(ジフェニルカルバモイル)ジテルリド、ビス(N−フェニル−N−メチルカルバモイル)ジテルリド、ビス(N−フェニル−N−メチルカルバモイル)テルリド、ビス(N−フェニル−N−ベンジルカルバモイル)テルリド、ビス(エトキシカルボニル)テルリド)、テルロ尿素類(例えば、N,N'−ジメチルエチレンテルロ尿素、N,N'−ジフェニルエチレンテルロ尿素)テルロアミド類、テルロエステル類などを用いれば良い。特に、ジアシル(ジ)テルリド類とホスフィンテルリド類が好ましく、特に特開平11−65021号段落番号0030に記載の文献に記載の化合物、特開平5−313284号中の一般式(II),(III),(IV)で示される化合物がより好ましい。
【0039】
特に本発明のカルコゲン増感においてはセレン増感とテルル増感が好ましく、特にテルル増感が好ましい。
【0040】
金増感においては、P.Grafkides著、Chimie et Physique Photographique(Paul Momtel社刊、1987年、第5版)、Research Disclosure誌307巻307105号に記載されている金増感剤を用いることができる。具体的には、塩化金酸、カリウムクロロオーレート、カリウムオーリチオシアネート、硫化金、金セレニドなどでありこれらにくわえて、米国特許第2642361号、同5049484号、同5049485号、同5169751号、同5252455号、ベルギー特許第691857などに記載の金化合物も用いることが出来る。またP.Grafkides著、Chimie et Physique Photographique(Paul Momtel社刊、1987年、第5版)、Research Disclosure誌307巻307105号に記載されている金以外の、白金、パラジュウム、イリジュウムなどの貴金属塩を用いる事も出来る。
金増感は単独で用いることもできるが、前記のカルコゲン増感と組み合わせて用いることが好ましい。具体的には金硫黄増感、金セレン増感、金テルル増感、金硫黄セレン増感、金硫黄テルル増感、金セレンテルル増感、金硫黄セレンテルル増感である。
【0041】
本発明においては、化学増感は粒子形成後で塗布前であればいかなる時期でも可能であり、脱塩後、(1)分光増感前、(2)分光増感と同時、(3)分光増感後、(4)塗布直前等があり得る。
【0042】
本発明で用いられるカルコゲン増感剤の使用量は、使用するハロゲン化銀粒子、化学熟成条件等によって変わるが、ハロゲン化銀1モル当たり10-8〜10-1モル、好ましくは10-7〜10-2モル程度を用いる。
同様に、本発明で用いられる金増感剤の添加量は種々の条件により異なるが、目安としてはハロゲン化銀1モル当たり10-7モル〜10-2モル、より好ましくは10-6モル〜5×10-3モルである。この乳剤を化学増感する環境条件としてはいかなる条件でも選択可能ではあるが、pAgとしては8以下、好ましくは7.0以下、より好ましくは6.5以下、とくに6.0以下、およびpAgが1.5以上、好ましくは2.0以上、特に好ましくは2.5以上の条件であり、pHとしては3〜10、好ましくは4〜9、温度としては20〜95℃、好ましくは25〜80℃程度である。
【0043】
本発明においてカルコゲン増感や金増感に加えて、さらに還元増感も併用することができる。とくにカルコゲン増感と併用するのが好ましい。還元増感法の具体的な化合物としてはアスコルビン酸、二酸化チオ尿素、ジメチルアミンボランが好ましく、その他に塩化第一スズ、アミノイミノメタンスルフィン酸、ヒドラジン誘導体、ボラン化合物、シラン化合物、ポリアミン化合物等を用いることが好ましい。還元増感剤の添加は、結晶成長から塗布直前の調製工程までの感光乳剤製造工程のどの過程でもよい。また、乳剤のpHを8以上またはpAgを4以下に保持して熟成することにより還元増感することも好ましく、粒子形成中に銀イオンのシングルアディション部分を導入することにより還元増感することも好ましい。
還元増感剤の添加量としては、同様に種々の条件により異なるが、目安としてはハロゲン化銀1モル当たり10-7モル〜10-1モル、より好ましくは10-6モル〜5×10-2モルである。
【0044】
本発明で用いるハロゲン化銀乳剤には、欧州特許公開第293,917号公報に示される方法により、チオスルホン酸化合物を添加してもよい。
本発明における感光性ハロゲン化銀粒子は、金増感、カルコゲン増感、の少なくとも1つの方法で化学増感されていることが高感度の熱現像感光材料を設計する点から好ましい。
【0045】
9)分光増感
分光増感は露光光源の分光特性に適した分光増感色素をハロゲン化銀粒子に吸着せしめ、所望の波長領域でハロゲン化銀粒子を分光増感させる技術である。本発明の熱現像感光材料は特に450nm以上900nm以下に分光感度ピークを持つように分光増感されていることが好ましい。
【0046】
しかしながら、前述したように高い分光感度を付与できる増感色素の選択は、臭化銀等より選択が厳しい。即ち、本発明者は高ヨウ化銀に対する分光増感を鋭意検討した結果、臭化銀よりもEredがより卑で親水性を抑えたLogPの高い増感色素を適用しないと高い分光感度が得られないことが判明した。その結果として、本発明に適用する増感色素は、そのEredが−1.1V vs.SCEよりも卑であり、好ましくは−1.2V vs.SCEよりも卑であり、且つ0.7以上 Log Pをもち、好ましくは1.0以上のLogPをもつシアニン色素であり、Jバンド型の吸収をもたらすシアニン色素が特に好ましい。
【0047】
かかる増感色素を用いて、高ヨウ化銀乳剤のpAgを1.5〜5.0、より好ましくは2.2〜4.0に保って該増感色素を添加し、分光増感を施すことが好ましい。
【0048】
本発明の増感色素の具体例としては、例えば、リサーチ・ディスクロジャー誌(Reserch Disclosure)176巻アイテム17643(RD17643)、同187巻アイテム18716(RD18716)及び308巻アイテム308119(RD308119)に記載の特許明細書に記載されているようなシアニン色素で、Eredが−1.1V vs.SCEよりも卑で且つLogPが0.7以上であるシアニン色素が挙げられる。
【0049】
増感色素のEred及びEoxは、谷、大関、関、ジャーナル オブ ザ エレクトロケミカル ソサイティー(T.Tani,K.Seki,Journal of the Society)138巻 1411項及びレナード、ジャーナル オブ イメージング サイエンス(J.Lenhard,Journal of Imaging Science)30巻 27項に記載の位相弁別第二高調波交流ボルタンメトリー法により測定すればよい。
また、本発明における増感色素のLogPは、次式に従い、液体クロマトグラフィーの保持時間より算出した。
【0050】
LogP=Log[(tR−t0)/t0]
【0051】
ここで、tRは増感色素の保持時間、t0は非保持物質(KI)の保持時間である。液体クロマトグラフィーの測定条件は次のとおりである。カラムはODS−80TS(TOSO社製)、溶離液は、メタノール・水(60:40)の混合液に酢酸及びトリエチルアミンをそれぞれ0.2質量%含有させた溶液で、25℃で測定した。尚、保持時間が遅い増感色素については、酢酸及びトリエチルアミンをそれぞれ0.2質量%づつ含有させたメタノール・水(70:30)の溶離液で測定し、検量線から前述のメタノール・水(60:40)溶離液に換算した。
【0052】
本発明における分光増感においては、アミノ置換スチリルアゾール誘導体化合物を組合わせて使用する。
本発明に用いられるアミノ置換スチリルアゾール誘導体化合物は、本発明に、より好ましく用いられるLogPが0.7以上でEredが−1.1V vs.SCEより卑の増感色素のEoxよりも0.2V vs.SCE以上卑のEoxを持つなら何でも良いが、好ましい化合物としては、英国特許1,310,994号、米国特許3,282,932号明細書等に開示されている化合物が挙げられる。特に好ましいアミノ置換スチリルアゾール誘導体化合物は次の一般式(II)で表される化合物である。
【0053】
一般式(II)
【化1】
Figure 0004083039
【0054】
ここで、R1及びR2は炭素総数10以下のアルキル基、アルコキシアルキル基を表すかR1はR3と、R2はR4と連結してプロピレン基を形成しても良い。またR3及びR4は水素原子または電子供与性基をも表し、R5は水素原子または電子供与性基を表わすが、同種または異種の基が複数個置換されていても良い事もあわらす。R6及びR7は同種または異種でも良く、水素原子または炭素総数6以下の電子供与性基を表し、R6とR7が連結してベンゾ環、ジオキシメチレン環、ジオキシエチレン環及びジメチレンオキシ環等のように縮合環を形成できる事も表す。
【0055】
該増感色素及び該アミノ置換スチリルアゾール誘導体化合物を高沃化銀乳剤に添加せしめるには、関係技術者には周知である通常の方法を用いればよい。即ち、直接乳剤中に分散させても良いし、水、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、メチルセルソルブ、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド等の溶媒の単独もしくは混合溶媒に溶解しても良い。また、米国特許3,469,987号明細書等に記載の如き色素を揮発性の有機溶剤に溶解し、該溶液を水または親水性コロイド中に微分散した液を乳剤中に添加する方法、特公昭46-23,389号、特公昭44-27,555号、特公昭57-22,091号等に記載されている如き、増感色素を酸に溶解し、その溶液を乳剤中に添加したり、酸または塩基を共存させて水溶液とし、そのまま乳剤中に添加したり、親水性コロイド中に分散した分散液を乳剤中に添加する方法、米国特許3,822,135号、米国特許4,006,025号明細書等に記載の如き、界面活性剤を共存させて水溶液或いはコロイド微分散物としたものを乳剤中に添加する方法、特開昭53-102,733号、特開昭58-105,141号に記載の如き、水または親水性コロイド中に増感色素を直接微分散させ、その分散物を乳剤中に添加する方法等を用いることも出来る。
本発明の増感色素は単独で用いてもよく、本発明に関わる増感色素同士或いは本発明以外の増感色素と組合せて2種以上で用いてもよい。
【0056】
本発明に用いる増感色素及びアミノ置換スチリルアゾール誘導体化合物を本発明の高沃化銀乳剤中に添加する時期は、沃臭化銀乳剤、塩臭化銀等の他の乳剤で此まで有用で有ることが認められている乳剤調製の如何なる工程中であってもよい。例えば、米国特許2,735,766号、米国特許3,628,960号、米国特許4,183,756号、米国特許4,225,666号、特開昭58-184,142号、特開昭60-196,749号等の明細書に開示されているように、ハロゲン化銀の粒子形成工程または/及び脱塩前の時期、脱塩工程中及び/または脱塩後から化学熟成の開始前までの時期、特開昭58-113,920号等の明細書に開示されているように、化学熟成の開始直前または工程中の時期、化学熟成後塗布迄の時期の乳剤が塗布される前なら如何なる時期、工程に於いて添加されても良い。また、米国特許4,225,666号、特開昭58-7,629号等の明細書に開示されているように同一増感色素を単独で、または異種構造の化合物と組み合わせて、例えば、同一工程中または粒子形成工程中と化学熟成工程中や化学熟成完了後とに分けたり、化学熟成の前または工程中と完了後とに分けるなどの異種工程に分割して添加しても良く、分割して添加する化合物及び化合物の組み合わせの種類を変えて添加されても良い。
【0057】
また、短時間で所定量を添加しても良いし、長時間、例えば粒子形成工程中の核形成後から粒子形成完了迄や化学熟成工程の大半などに亘って任意の工程に於いて連続的または間欠的に添加しても良い。かかる場合の添加速度は等速流量でも、流量をを加速したり、減速しても良いが、所定量の少なくとも一部を添加開始時に一気に添加するのがより好ましい。
【0058】
増感色素及びアミノ置換スチリルアゾール誘導体化合物を添加する温度は任意で良いが、通常は20℃〜75℃が用いられる。一定温度で添加、熟成しても良いし、添加中に温度を変えても、添加時と添加後の熟成温度を変えても良い。所定量の少なくとも一部を45℃以下で短時間内に一気に添加しその後50℃〜65℃に上げ、熟成したり、残りを添加する方法はより好ましい。
更に又、アミノ置換スチリルアゾール誘導体化合物は、分光増感色素を添加した後、または同時に添加するのがより好ましい。
【0059】
本発明における増感色素の添加量は、感度やカブリの性能に合わせて所望の量にすることができるが、感光性層のハロゲン化銀粒子の表面積1m2当たり1×10-7〜3.5×10-6モルが好ましく、さらに好ましくは8×10-7〜2×10-6モルである。
【0060】
アミノ置換スチリルアゾール誘導体化合物の好ましい使用量は、使用する高沃化銀粒子、特に粒子サイズなどにより変わるが、ハロゲン化銀1モル当たり10-7〜10-1モル、より好ましくは10-4〜10-2モル程度を用いることができ、本発明の高沃化銀を分光増感させる為に使用した分光増感色素に対し、5モル%〜200モル%が好ましく、特に10モル%〜50モル%使用するのが好ましい。
【0061】
本発明の増感色素の具体例を下記のS−1〜S−6に、一般式(II)で表されるアミノ置換スチリルアゾール誘導体化合物の具体例をII−1〜II−4に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0062】
【化2】
Figure 0004083039
【0063】
【化3】
Figure 0004083039
【0064】
10)ハロゲン化銀の併用
本発明に用いられる熱現像感光材料中の感光性ハロゲン化銀乳剤は、一種だけでもよいし、二種以上(例えば、平均粒子サイズの異なるもの、ハロゲン組成の異なるもの、晶癖の異なるもの、化学増感の条件の異なるもの)併用してもよい。感度の異なる感光性ハロゲン化銀を複数種用いることで階調を調節することができる。これらに関する技術としては特開昭57-119341号、同53-106125号、同47-3929号、同48-55730号、同46-5187号、同50-73627号、同57-150841号などが挙げられる。感度差としてはそれぞれの乳剤で0.2logE以上の差を持たせることが好ましい。
【0065】
11)ハロゲン化銀と有機銀塩の混合方法
本発明の感光性ハロゲン化銀の粒子は、非感光性有機銀塩の存在しないところで形成され、化学増感されることが特に好ましい。有機銀塩に対してハロゲン化剤を添加することによってハロゲン化銀を形成する方法では十分な感度が達成できない場合があるからである。
【0066】
ハロゲン化銀と有機銀塩を混合する方法としては、別々に調製した感光性ハロゲン化銀と有機銀塩を高速撹拌機やボールミル、サンドミル、コロイドミル、振動ミル、ホモジナイザー等で混合する方法や、あるいは有機銀塩の調製中のいずれかのタイミングで調製終了した感光性ハロゲン化銀を混合して有機銀塩を調製する方法等があげられる。いずれの方法でも本発明の効果を好ましく得ることができる。
【0067】
12)ハロゲン化銀の塗布液への混合
本発明のハロゲン化銀の画像形成層塗布液中への好ましい添加時期は、塗布する180分前から直前、好ましくは60分前から10秒前であるが、混合方法及び混合条件については本発明の効果が十分に現れる限りにおいては特に制限はない。具体的な混合方法としては添加流量とコーターへの送液量から計算した平均滞留時間を所望の時間となるようにしたタンクでの混合する方法やN.Harnby、M.F.Edwards、A.W.Nienow著、高橋幸司訳"液体混合技術"(日刊工業新聞社刊、1989年)の第8章等に記載されているスタチックミキサーなどを使用する方法がある。
【0068】
2.発光強度を10%以上低減させることが出来る物質
本発明は、77°Kにおける高沃化銀含有相に由来する発光強度を10%以上低減させることが出来る物質を含有することを特徴とする。
本発明の効果は、この発光強度を10%以上低減させることに基づいているものであって、本発明においては、この発光強度を10%以上低減させることが出来る物質であれば如何なる物質でも良い。
上記機能を有する物質としては、具体的には、1)ハロゲン化銀への吸着基と還元基を有する化合物、2)1電子酸化されて生成する1電子酸化体が1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物が挙げられる。
【0069】
始めに、本発明らによって明らかにされたこれらの物質の推定作用機構について説明する。本発明においては、この推定作用機構は、より有用な増感剤を開発するための指針であって、本発明の範囲がこの推定作用機構によって制限されるものではない。
【0070】
本発明に用いられる高沃化銀は、間接遷移型の塩化銀や臭化銀に対して直接遷移型である沃化銀相を有しているので、青色露光域の光吸収強度が大きいハロゲン化銀結晶であるが、同時に沃化銀は再結合確率も非常に高いために、分光増感の有無に関わらず、臭化銀並の高感度が得られない欠点を有する。この欠点が、光吸収強度が大きいにも関わらず、今日まで、写真感光材用に用いられてこなかった主要な理由の一つである。
【0071】
該再結合は、発光となって現れる。即ち、高沃化銀粒子では、沃化銀相に由来する460nmの強い発光が77°Kで観測される。この460nmの発光は高沃化銀粒子に分光増感色素を吸着させて分光増感を施すと短波長側にシフトし、430nm〜435nmに発光極大を持つようになる。
【0072】
従って、分光増感を施した高沃化銀粒子で高い感度を得るには、前述の強い再結合、それに伴う強い発光を効果的に抑える仕組みが極めて肝要であり、本発明者は、分光増感を施した該高沃化銀乳剤にハロゲン化銀への吸着基と還元基を有する化合物または/及びFED化合物(後述)を添加する事により、該発光を抑えられ、著しい感度向上並びに分光増感効率が得られる事を見出した。
【0073】
本発明の77°Kに於ける分光増感を施した時の高沃化銀相由来の430nm〜435nmの発光について説明する。
【0074】
77°Kは、具体的には、液体窒素に乳剤を浸すことにより実現できる。発光は、300nm〜400nmの高沃化銀の直接遷移吸収帯を用いて蛍光測定器で測定することができるが、本発明に於いては、355nmの単色光で励起した場合を定義する。具体的には、日立製作所製850型分光蛍光光度計を用い、励起光355nmで430nm〜435nmの発光強度を検出する。励起光側には装置固有の単色化フィルター以外は装着せず、蛍光検出側には400nm以長を透過させるバンドパスフィルターを装着して400nm〜600nmの波長範囲を60nm/分の走引速度で測定する。発光光量の減少は、励起光の吸収量に依存する場合がある。従って本発明での発光量は、銀量換算で0.045g/m2相当の高沃化銀乳剤を上記装置で走引速度60nm/分で400nm〜600nmの蛍光強度を測定したときの減少率として、上記条件で励起した場合と定義する。
また、蛍光測定開始迄、試料は光を照射しないようにした。
【0075】
本発明の蛍光強度を減少させ、感度および分光増感効率を飛躍的に高めた化合物について説明する。発明に用いられるこれらの化合物に重要なことは、発光強度を減少できることであり、少なくとも10%以上減少できることである。発光強度の減少率は、その化合物の高沃化銀粒子への吸着量にも依存している。本発明では高沃化銀を分光増感しており、その粒子表面には分光増感色素を吸着せしめている。発光強度を減少できる化合物が該増感色素を粒子表面から脱着させてしまっては、固有感度は向上させるかもしれないが、分光増感を阻害してしまう。従って、分光増感を阻害せぬ程度に粒子表面に吸着したり、分光増感剤の上に吸着する事が肝要である。本発明の該化合物を分光増感を施していない高沃化銀乳剤に添加した場合に比べ、かかる現象を反映している為か、発光減少率は少なくなる傾向が見られたが感度及び分光増感効率の向上は著しいものであった。
【0076】
以下に、順次、これらの機能を有する物質について説明する。
1)ハロゲン化銀への吸着基と還元基を有する化合物
まず、本発明のハロゲン化銀への吸着基と還元基を有する化合物及びその前駆体について詳しく説明する。
本発明で用いられるハロゲン化銀への吸着基と還元基を有する化合物としてはより具体的には下記一般式(I)で表される化合物及びその前駆体が挙げられる。
【0077】
一般式(I) A1−(W1)n1−B1
【0078】
一般式(I)中、A1はハロゲン化銀に吸着可能な基を含む原子群を表し、W1は2価の連結基を表し、n1は0または1を表し、B1は還元基を表す。
次に一般式(I)について詳しく説明する。
一般式(I)中、A1で表されるハロゲン化銀に吸着可能な基を含む原子群としては具体的にはメルカプト化合物(メルカプトテトラゾール基、モノ及びジメルカプトトリアゾール基、モノ及びジメルカプトイミダゾール基、メルカプトチアジアゾール基、メルカプトオキサジアゾール基、メルカプトベンズチアゾール基、メルカプトベンズオキサゾール基、メルカプトベンズイミダゾール基、メルカプトテトラアザインデン基、メルカプトピリジル基、メルカプトアルキル基、メルカプトフェニル基等)、チオン化合物(チアゾリン−2−チオン基、イミダゾリン−2−チオン基、ベンズイミダゾリン−2−チオン基、ベンズチアゾリン−2−チオン基、チオ尿素基、チオアミド基等)、イミノ銀を形成する化合物(ベンゾトリアゾール基、テトラゾール基、ヒドロキンチトラアザインデン基、ベンゾイミダゾール基等)、ベンゾチアゾール化合物、ベンゾイミダゾール化合物やベンゾオキサゾール等があげられる。なかでも、メルカプト基を有する化合物が好ましい。
【0079】
一般式(I)中、W1で表される2価の連結基は炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子から構成される2価の連結基を表わし、具体的には炭素数1〜20のアルキレン基(メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン碁、ヘキサメチレン基等)、炭素数6〜20のアリーレン基(フェニレン基、ナフチレン基等)、−CONR1−、−SO2NR2−、−〇−、−S−、−NR3−、−NR4CO−、−NR5SO2−、−NR6CONR7−、−COO−、−OCO−等があげられる。R1、R2、R3、R4、R5、R6またはR7は水素原子、脂肪族基または芳香族基を表わす。
【0080】
一般式(I)において、R1、R2、R3、R4、R5、R6またはR7で表される脂肪族基は好ましくは、炭素数1〜30のものであって特に炭素数1〜20の直鎖、分岐または環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基である。アルキル基、アルケエル基、アルキニル基、アラルキル基としては例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−オクチルル基、n−デシル基、n−へキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基、プロパルギル基、3−ペンチニル基、ベンジル基等である。
【0081】
一般式(I)において、R1、R2、R3、R4、R5、R6またはR7で表される芳香族基は好ましくは、炭素数6〜30のものであって、特に炭素数6〜20の単環または縮環のアリール基であり、例えばフェニル基、ナフチル基等である。
前記の各基は各々が組み合わされて2価の連結基を形成してもよい。
【0082】
一般式(I)中、B1で表される還元基はハロゲン化銀を還元しうる官能基ならよく具体的にはホルミル基、アミノ基、アセチレン基やプロパルギル基などの3重結合基、アルキルメルカプト基やアリールメルカプト基、ヒドロキシアミン含有基、レダクトン類含有基、フェノール類含有基、ナフトール類含有基、フェニレンジアミン類含有基、1−フェニル−3−ピラゾリドン類含有基のいずれかより誘導される基などがあげられる。なかでもホルミル基、アミノ基、3重結合基、ヒドロキシアミン含有基、レダクトン類含有基、フェニレンジアミン類含有基、1−フェニル−3−ピラゾリドン類含有基のいずれかより誘導される基が好ましい。
【0083】
ハロゲン化銀への吸着基と還元基を有する化合物の前駆体としては、例えば、チアゾリウム類(ベンゾチアゾリウム頬やナフトチアゾリウム類も含む)、チアゾリン類、チアゾリジン類、といった加水分解反応により吸着基のメルカプト基と還元基のホルミル基を生成するものや、ジスルフィド基が開裂して吸着基のメルカプト基を生成する還元基をもつジスルフィド化合物などを挙げることができ、ハロゲン化銀乳剤に添加したとき、一般式(I)の化合物を放出するものであり、チアゾリウム類の場合は、置換基に3重結合を有するものが好ましい。
【0084】
以下にハロゲン化銀への吸着基と還元基を有する化合物及びその前駆体化合物の具体例を示すが、本発明の化合物はこれに限定されるものではない。
【0085】
【化4】
Figure 0004083039
【0086】
【化5】
Figure 0004083039
【0087】
【化6】
Figure 0004083039
【0088】
【化7】
Figure 0004083039
【0089】
【化8】
Figure 0004083039
【0090】
2)1電子酸化されて生成する1電子酸化体が1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物
1電子酸化されて生成する1電子酸化体が1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物としては、タイプ1〜タイプ4に分類されるFED化合物(Fragmentable electron donating sensitizer )が好ましい。より好ましくは、一般式(FED1−1)から一般式(FED4−2)で表される化合物である。
(タイプ1) 1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合開裂反応を伴って、さらに2電子以上の電子を放出し得る化合物。
(タイプ2) 1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合開裂反応を伴って、さらにもう1電子を放出し得る化合物で、かつ同じ分子内にハロゲン化銀への吸着性基を2つ以上有する化合物。
(タイプ3) 1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合形成過程を経た後に、さらに1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物。
(タイプ4) 1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く分子内の環開裂反応を経た後に、さらに1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物。
【0091】
【化9】
Figure 0004083039
【0092】
タイプ1の好ましい化合物を表す一般式(FED1−1)及び一般式(FED1−2)について説明する。
一般式(FED1−1)に於いてRED111は1電子酸化され得る還元性基を表し、後述するR111と結合して特定の環形成をし得る基であり、具体的には次の1価基から環形成をするのに適切な箇所の水素原子1個を除いた2価基が挙げられる。例えば、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環オキシ基、アリール基、芳香族または非芳香族のヘテロ環基(例えばテトラヒドロキノリン環、ベンゾチアゾリン環、チアゾリン環、ピロール環、ピペリジン環、ベンズイミダゾール環、ベンゾチアゾリン環、ベンゾオキサゾール環など)であり、これらは置換基を有していてもよい。好ましくは、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、アリール基、芳香族または非芳香族のヘテロ環基であり、アリールアミノ基(特にアニリノ基)、アリール基(特にフェニル基)が更に好ましい。
【0093】
置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、カルボキシ基またはその塩、スルホニルカルバモイル基、アシルカルバモイル基、スルファモイルカルバモイル基、カルバゾイル基、シアノ基、チオカルバモイル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、スルホニルオキシ基、アミノ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、イミド基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、セミカルバジド基、ヒドラジノ基、アシルウレイド基、アシルスルファモイルアミノ基、ニトロ基、メルカプト基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)チオ基、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、(アルキルまたはアリール)スルフィニル基、スルホ基またはその塩、リン酸アミドもしくはリン酸エステル構造を含む基、等が挙げられる。これら置換基は、これら置換基でさらに置換されていてもよい。
【0094】
RED111がアリール基を表す時、アリール基は少なくとも1つの電子供与性基を有していることが好ましい。ここに電子供与性基とは、即ち、ヒドロキシ基、アルコキシ基、メルカプト基、スルホンアミド基、アシルアミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、活性メチン基、電子過剰な芳香族ヘテロ環基(例えばインドリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ベンズイミダゾリル基、チアゾリル基、ベンズチアゾリル基、インダゾリル基など)、窒素原子で置換する非芳香族含窒素ヘテロ環基(ピロリジニル基、インドリニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルホリノ基等)である。ここで活性メチン基とは2つの「電子求引性基」で置換されたメチン基を意味し、ここに「電子求引性基」とはアシル基、アルコシキカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、トリフルオロメチル基、シアノ基、ニトロ基、イミノ基を意味する。ここで2つの電子求引性基は互いに結合して環状構造をとっていてもよい。
【0095】
111は、前述のRED111で表される還元性基が1電子酸化された後に初めて結合開裂により脱離し得る脱離基をあらわし、具体的にはカルボキシ基もしくはその塩、またはシリル基(例えば、トリアルキルシリル基、アリールジアルキルシリル基、トリアリールシリル基等)を表す。より好ましくは、カルボキシ基もしくはその塩であり、L111がカルボキシ基の塩を表す時、塩を形成する対イオンとしてはアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、重金属イオン、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン等が挙げられる。
【0096】
111は、炭素原子及びRED111と共に、5員もしくは6員の芳香族環及び芳香族ヘテロ環のテトラヒドロ体、ヘキサヒドロ体もしくはオクタヒドロ体に相当する環状構造を形成し得る非金属原子群を表す。具体的例としては、ピロリジン環、イミダゾリジン環、チアゾリジン環、ピラゾリジン環およびオキサゾリジン環、ピペリジン環、テトラヒドロピリジン環、テトラヒドロピリミジン環、ピペラジン環、テトラリン環、テトラヒドロキノリン環、テトラヒドロイソキノリン環、テトラヒドロキナゾリン環、およびテトラヒドロキノキサリン環、テトラヒドロカルバゾール環、オクタヒドロフェナントリジン環等が挙げられる。これらの環構造は更に置換されていても良く、置換基の例としてはRED111が有していても良い置換基として説明したものと同じものが挙げられる。
【0097】
112は、水素原子または、炭素原子に置換可能な置換基を表す。置換可能な置換基としては、RED111はが有していても良い置換基として説明したものと同じものが挙げられる。但し、R112がL111と同じ基を表すことはない。
112は、好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アルキルチオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基であり、更に好ましくは、水素原子、アルキル基、フェニル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基である。
【0098】
次に一般式(FED1−2)について説明する。
RED121、L121は、それぞれ一般式(FED1−1)のRED111、L111に同義の基であり、その好ましい範囲もまた同じである。但し、RED121は下記の環状構造を形成する場合以外は1価基であり、具体的にはRED111で記載した1価基が挙げられる。
【0099】
121及びR122は、一般式(FED1−1)のR112同義の基であり、その好ましい範囲もまた同じである。ED121は電子供与性基を表す。R122とRED121、R121とR122、またはED121とRED121とは、互いに結合して環状構造を形成しても良い。
【0100】
ED121で表される電子供与性基とは、ヒドロキシ基、アルコキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルホンアミド基、アシルアミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ、活性メチン基、電子過剰な芳香族ヘテロ環基(例えば、インドリル基、ピロリル基、インダゾリル基、等)、窒素原子で置換する非芳香族含窒素ヘテロ環基(例えば、ピロリジニル基、ピペリジニル基、インドリニル基、ピペラジニル基、モルホリノ基等)、及びこれらの電子供与性基で置換されたアリール基(例えば、p−ヒドロキシフェニル基、p−ジアルキルアミノフェニル基、o,p−ジアルコキシフェニル基、4−ヒドロキシナフテル基等)である。
ここで活性メチン基とは、RED111がアリール基を表す時の置換基として説明したものに同じである。
【0101】
ED121としては、ヒドロキシ基、アルキシ基、メルカプト基、スルホンアミド基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、活性メチン基、電子過剰な方香族ヘテロ環基、窒素原子で置換する非芳香族含窒素ヘテロ環基、及びこれらの電子供与性基で置換されたフェニル基が好ましい。
【0102】
122とRED121、R121とR122、またはED121とRED121とがが、互いに結合して形成する環状構造とは、非芳香族の炭素環もしくはヘテロ環であって、5員〜7員の置換基を有していても良い単環または縮合環である。
【0103】
122とRED121とが環状構造を形成するとき、その具体例としては、ピロリジン環、ピロリン環、ビラゾリジン環、ピラゾリン環、オキサゾリジン環、オキサプリン環、インダン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、テトラヒドロピリジン環、テトラヒドロピリミジン環、インドリン環、テトラリン環、テトラヒドロキノリン環、テトラヒドロイソキノリン環、テトラヒドロキノキサリン環、テトラヒドロ−1,4−オキサジン環、2,3−ジヒドロベンゾ−1,4−オキサジン環、テトラヒドロ−1,4−チアジン環、2,3−ジヒドロベンゾ−1,4−チアジン環、2,3−ジヒドロベンゾフラン環、2,3−テトラヒドロベンゾチオフェン環等があげられる。
【0104】
121とR122とが環状構造を形成するとき、その具体例としては、シクロヘキサン環、シクロペンタン環などが挙げられる。
【0105】
ED121とRED121とが環状構造を形成するとき、ED121は、好ましくは、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基を表す場合であり、形成される環状構造の具体例としては、テトラヒドロピラジン環、ピペラジン環、テトラヒドロキノキサリン環、テトラヒドロイソキノリン環等が挙げられる。
【0106】
次にタイプ2の好ましい化合物を表す一般式(FED2)について説明する。
【0107】
RED211は一般式(FED1−1)のRED111と同義の基を表し、その好ましい範囲も同じである。L211はカルボキシ基またはその塩を表し、塩を形成する対イオンについては、一般式(FED1−1)のL111について説明したのと同じであり、その好ましい範囲も同じである。
【0108】
211、R212は水素原子または置換基を表し、これらは一般式(FED1−1)のR112と同義の基であり、その好ましい範囲も同じである。
【0109】
RED211とR211とは互いに結合して環構造を形成しても良い。ここで形成される環構造とは、非芳香族の5員〜7員の炭素環またはヘテロ環で、単環であっても縮合環であっても良く、置換基を有していても良い。環構造の具体例としては、例えば、インドリン環、2,3−ジヒドロベンゾチオフェン環、2,3−ジヒドロベンゾフラン環、1,2−ジヒドロピリジン環、1,4−ジヒドロピリジン環、ベンゾ−α−ピラン環、ベンゾチアゾリン環、ベンゾオキサゾリン環、ベンズイミダゾリン環、1,2−ジヒドロキノリン環、1,2−ジヒドロキナゾリン環、1,2−ジヒドロキノキサリン環、クロマン環、イソクロマン環等が挙げられる。好ましくは、インドリン環、ベンゾチアゾリン環、ベンズイミダブリン環、1,2−ジヒドロキノリン環等が挙げられ、インドリン環が特に好ましい。
【0110】
次にタイプ3の化合物について説明する。
タイプ3の化合物は1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合形成過程を経た後に、更に1電子以上の電子を放出し得る事を特徴とする化合物であり、ここに結合形成過程とは炭素−炭素、炭素−窒素、炭素‐硫黄、炭素−酸素等の原子間結合の形成を意味する。
【0111】
タイプ3の化合物は、好ましくは1電子酸化されて生成する1電子酸化体が引き続いて分子内に共存する炭素−炭素2重結合部位または炭素−炭素3重結合部位と反応して結合を形成した後に、更にもう1電子以上の電子を放出し得る化合物である。
【0112】
該化合物が1電子酸化されて生成する1電子酸化体とはカチオンラジカル種で有るが、そこからプロトンの脱離を伴って中性のラジカル種となる場合もあり得る。この1電子酸化体(カチオンラジカル種もしくはラジカル種)が(同じ分子内に共存する炭素−炭素2重結合部位または炭素−炭素3重結合部位に、一般に「付加環化反応」と称される形式の化学反応を起こし、炭素−炭素、炭素−窒素、炭素−硫黄、炭素−酸素等の原子間結合の形成して、分子内に新たな環構造を形成する。その際、同時に、もしくはその後に、更に1電子以上の電子が放出される点にタイプ3の化合物の特徴がある。
【0113】
更に詳細に述べると、タイプ3の化合物は、1電子酸化された後に、この付加環化反応により新たに環構造を有するラジカル種を生成するが、このラジカル種から、直接もしくはプロトン脱離を伴って、更に2電子目の電子が放出される。タイプ3の化合物はこうして生成した2電子酸化体が、その後、或る場合には加水分解反応を受けた後に、また或る場合には直接プロトンの移動に伴う互変異性化反応を起こして、そこから更に1電子以上、通常2電子以上の電子を放出し、酸化される能力を有しているものが含まれる。或いはまた、こうした互変異性化反応を経由せずに、直接その2電子酸化体から、更に1電子以上、通常2電子以上の電子を放出し、酸化される能力を有しているものが含まれる。
【0114】
タイプ3は好ましくは、一般式(FED3)で表される。一般式(FED3)について説明する。
RED311は一般式(FED1−2)のRED121と同義の基を表し、より好ましくは、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、またはヒドロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、メチル基及びアミノ基からなる群から選択される基で置換されたアリール基もしくはヘテロ環基である。好ましくはアリールアミノ基、或いはメルカプト基、メチル基またはアミノ基で置換されたアリール基もしくはヘテロ環基であり、特に好ましくはアリールアミノ基、或いはメチル基またはアミノ基で置換されたアリール基もしくはヘテロ環基である。
【0115】
311は反応性基で、具体的には炭素−炭素2重結合部位または炭素−炭素3重結合部位を少なくとも1つ含む有機基である。該炭素−炭素2重結合または炭素−炭素3重結合は置換基を有していても良く、置換基としては、一般式(FED1−1)のREDlllが有していても良い置換基として説明したものと同じものが挙げられる。好ましくは、アルキル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アシル基、シアノ基、或いは、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、スルホンアミド基、アシルアミノ基、活性メチン基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、及びこれらの基を置換基に有するアリール基である。ここで活性メチン基とは、2つの電子求引性基で置換されたメチン基を意味し、該電子求引性基とはアシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、トリフルオロメチル基、シアノ基、ニトロ基、イミノ基を意味する。2つの電子求引性基は互いに結合して環状構造をとっていても良い。
【0116】
311が炭素−炭素2重結合部位を表す時、その置換基として、より好ましくは、アルキル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、或いは、アルコキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、スルホンアミド基、アシルアミノ基、活性メチン基、メルカプト基、アルキルチオ基及びこれらの基を置換基に有するフェニル基である。また置換基としてアルキル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アルキルチオ基等が互いに結合して炭素−炭素2重結合を含む環構造を形成する場合も好ましく、具体的には、例えば、2,3−ジヒドロ−γ−ピラン環、シクロへキセン環、1−チア−2−シクロヘキセン−3−イル基、テトラヒドロピリジン環基等が挙げられる。
【0117】
311が炭素−炭素2重結合部位を含む有機基を表すとき、その置換基が互いに結合して環状構造を形成しても良い。ことに形成される環状構造は、非芳香族の5員〜7員の炭素環もしくはヘテロ環である。
311が炭素−炭素3重結合部位を表す時、その置換基としては、水素原子、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、或いは、アルコキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、スルホンアミド基、アシルアミノ基、活性メチン基、メルカプト基、アルキルチオ基及びこれらの基を置換基に有するフェニル基である。
一般式(FED3)に於いて、Y311が表す反応性基として、より好ましくは、炭素−炭素2重結合を含む有機基である。
【0118】
311は、RED311とY311とを連結する連結基を表し、具体的には、単結合、アルキレン基、アリーレン基、ヘテロ環基、−〇−、−S−、−NR311−、−C(=O)−、−SO2−、−SO−、−P(=O)−の各基の単独またはこれらの組み合わせからなる基を表す。ここに、R311は、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基を表す。L311で表される連結基は置換基を有していても良く、置換基としては、一般式(FED1−1)のRED111が有していても良い置換基として説明したものが挙げられる。
【0119】
311で表される基は、一般式(FED3)のRED311が酸化されて生成するカチオンラジカル種またはそこからプロトンの脱離を伴って生成するラジカル種とY311で表される反応性基とが反応して結合形成する際、これに関わる原子団が、L311を含めて3員〜7員の環状構造を形成し得る事が好ましい。
311の好ましい例としては、単結合、アルキレン基、アリーレン基(特にフェニレン基)、−O−、−NH−、−N(アルキル基)−、−C(=O)−、及びこれらの基の組み合わせからなる2価の連絡基が挙げられる。
【0120】
次にタイプ4の化合物について説明する。
タイプ4の化合物は還元性基の置換した環構造を有する化合物であり、該還元性基が1電子酸化された後に、環構造の開裂反応を伴って更にもう1電子以上の電子を放出し得る化合物である。ここで言う環開裂反応は、次式で表される形式のものを指す。
【0121】
【化10】
Figure 0004083039
【0122】
ここで、式中、化合物aはタィプ4の化合物を指す。化合物a中、Dは還元性基を表し、X、Yは環構造中の1電子酸化後に開裂する結合を形成している原子を表す。先ず、化合物aが1電子酸化されて1電子酸化体bを生成する。ここからD−Xの単結合が2重結合になると同時にX−Yの結合が切断され開環体cが生成する。或いはまた、1電子酸化体bからプロトンの脱離を伴ってラジカル中間体dが生成し、そこから同様に開環体eを生成する経路をとる場合もある。このように生成した開環体cまたはeから、引き続き更に1つ以上の電子が放出される点にタイプ4の化合物の特徴がある。
【0123】
タイプ4の化合物が有する環構造とは、3員〜7員の炭素環またはヘテロ環であり、単環もしくは縮合環の、飽和もしくは不飽和の非芳香族の環である。好ましくは飽和の環構造であり、より好ましくは3員環或いは4員環である。好ましい環構造の具体例には、シクロプロパン環、シクロブタン環、オキシラン環、オキセタン環、アジリジン環、アゼチジン環、エピスフィド環、チエタン環が挙げられ、シクロプロパン環、シクロブタン環、アゼチジン環が特に好ましい。環構造は置換基を有していても良い。
【0124】
タイプ4の好ましい化合物は、一般式(FED4−1)または一般式(FED4−2)で表される。
ここで、式中、RED411及びRED421は、それぞれ一般式(FED1−2)のRED121と同義の基を表し、その好ましい範囲もまた同じである。
411〜R415及びR421〜R425は、それぞれ水素原子または置換基を表す。置換基としてはRED121が有していても良い置換基と同じものが挙げられる。
421は、−CR426427−、−NR428−、または−O−を表す。ここにR426、R427は、それぞれ水素原子または置換基を表し、R428は水素原子、アルキル基、アリール基またはヘテロ環を表す。
【0125】
411は、好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、カルバモイル基、シアノ基、スルファモイル基を表し、特に好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基である。
【0126】
412〜R415は、これらの内少なくとも1つがドナー性基である場合と、R412とR413、R414とR415が共に電子吸引性である場合がより好ましい。更に好ましくは、R412〜R415の内の少なくとも1つがドナー性基である場合であり、R412〜R415の内少なくとも1つがドナー性基であり、R412〜R415の中でドナー性基でない基が水素原子またはアルキル基である場合が特に好ましい。
【0127】
ここで言うドナー性基とは、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、メルカプト基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、活性メチン基、或いはRED411及びRED421として好ましい基の群から選ばれる基である。ドナー性基として好ましくは、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、窒素原子を環内に1つ持つ5員環芳香族ヘテロ環基(単環での縮合環でも良い)、窒素原子で置換する非芳香族含窒素ヘテロ環基、少なくとも1つの電子供与性基で置換されたフェニル基(ここで電子供与性基とはヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、または窒素原子で置換する非芳香族含窒素ヘテロ環基である。)である。特に好ましくは、アリールアミノ基、窒素原子を環内に1つ持つ5員環芳香族ヘテロ環基(ここでは3−インドリル基を表す)、電子供与性基で置換されたフェニル基(ここでは特にトリアルコキシフェニル基、アルキルアミノ基またはアリールアミノ基で置換されたフェニル基を表す。)である。電子吸引性基は、既に活性メチン基についての説明の中で説明したものと同じである。
【0128】
一般式(FED4−2)に於いて、R421の好ましい範囲は、上述のR411のそれと同じである。R422〜R425として好ましくは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、メルカプト基、アリールチオ基、アルキルチオ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基であり、特に好ましくは、Z421が−CR426427−で表される基の場合には、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基であり、Z421が−NR428−または−O−を表す場合には、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基である。
421として好ましくは、−CR426427−または−NR428−であり、より好ましくは−NR428−である。
【0129】
426、R428は好ましくは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基、メルカプト基、アシルアミノ基、スルホンアミノ基、であり、より好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アミノ基である。R428は好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、芳香族ヘテロ環基を表し、より好ましくは、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、t−アミノ基、ベンジル基、ジフェニルメチル基、アリル基、フェニル基、ナフチル基、2−ピリジル基、4−ピリジル基、2−チアゾリル基である。
411〜R415及びR421〜R428の各基が置換基である場合には、それぞれ総炭素数が40以下のものが好ましく、特に好ましくは総炭素数が15以下である。またこれらの置換基は互いに結合して、或いは分子中の他の部位(RED411、RED421或いはZ421)と結合して環を形成しても良い。
【0130】
本発明のタイプ2の化合物は、「分子内にハロゲン化銀への吸着基を1つ以上有する化合物」であるが、タイプ1及びタイプ3,4の化合物も「分子内にハロゲン化銀への吸着基を1つ以上有する化合物」であるか「分子内に分光増感色素の部分構造を有する化合物」であることが好ましい。
【0131】
本発明のタイプ1〜4の化合物において、ハロゲン化銀への吸着性基とは、ハロゲン化銀に直接吸着する基またはハロゲン化銀への吸着を促進する基であり、具体的には、メルカプト基(またはその塩)、チオン基(−C(=S)−)、スルフィド基、カチオン性基、エチニル基、または窒素原子、硫黄原子、セレン原子およびテルル原子から選ばれる少なくとも1つの原子を含むヘテロ環基である。
【0132】
メルカプト基が塩を形成するとき、対イオンとしてはアルカリ金属、アルカリ土類金属、重金属などのカチオン(Li+、Na+、K+、Mg2+、Ag+、Zn2+等)、アンモニウムイオン、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基、ホスホニウムイオンなどが挙げられる。吸着性基としてのメルカプト基はさらにまた、互変異性化してチオン基となっていてもよく、具体的にはチオアミド基(ここでは−C(=S)−NH−基)、および該チオアミド基の部分構造を含む基、すなわち、鎖状もしくは環状のチオアミド基、チオウレイド基、チオウレタン基、またはジチオカルバミン酸エステル基などが挙げられる。ここで環状の例としてはチアゾリジン−2−チオン基、オキサゾリジン−2−チオン基、2−チオヒダントイン基、ローダニン基、イソローダニン基、チオハルビツール酸基、2−チオキソ−オキサゾリジン−4−オン基などが挙げられる。
【0133】
吸着性基として窒素原子、硫黄原子、セレン原子およびテルル原子から選ばれる少なくとも1つの原子を含むヘテロ環基とは、イミノ銀(>NAg)を形成しうる−NH−基をヘテロ環の部分構造として有する含窒素ヘテロ環基、または配位結合で銀イオンに配位し得る、"−S−"基または"−Se−"基または"−Te−"基または"=N−"基をヘテロ環の部分構造として有するヘテロ環基で、前者の例としてはベンゾトリアゾール基、トリアゾール基、インダゾール基、ピラゾール基、テトラゾール基、ベンズイミダゾール基、イミダゾール基、プリン基などが、後者の例としては、チエニル基、チアゾール基、オキサゾール基、ベンゾチアゾール基、ベンゾオキサゾール基、チアジアゾール基、オキサジアゾール基、トリアジン基、セレナゾール基、ベンゾセレノアゾール基、テルラゾール基、ベンゾテルラアゾール基などが挙げられる。好ましくは前者である。
【0134】
吸着性基としてスルフィド基とは、"−S−"の部分構造を有する基すべてが挙げられるが、好ましくはアルキル(またはアルキレン)−S−アルキル(またはアルキレン)、アリール(またはアリーレン)−S−アルキル(またはアルキレン)、アリール(またはアリーレン)−S−アリール(またはアリーレン)の部分構造を有する基である。さらにこれらのスルフィド基は、環状構造を形成していてもよく、また−S−S−基となっていてもよい。環状構造を形成する場合の具体例としてはチオラン環、1,3−ジチオラン環または1,2−ジチオラン環、チアン環、ジチアン環、テトラヒドロ−1,4−チアジン環(チオモルホリン環)などを含む基が挙げられる。
スルフィド基として特に好ましくはアルキル(またはアルキレン)−S−アルキル(またはアルキレン)の部分構造を有する基である。
【0135】
吸着性基としてカチオン性基とは、4級化された窒素原子を含む基を意味し、具体的にはアンモニオ基または4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基を含む基である。ここにアンモニオ基とは、トリアルキルアンモニオ基、ジアルキルアリールアンモニオ基、アルキルジアリールアンモニオ基などで、例えばベンジルジメチルアンモニオ基、トリヘキシルアンモニオ基、フェニルジエチルアンモニオ基などが挙げられる。4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基とは、例えばピリジニオ基、キノリニオ基、イソキノリニオ基、イミダゾリオ基などが挙げられる。特に好ましくはピリジニオ基である。これら4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基は任意の置換基を有していてもよいが、ピリジニオ基およびイミダゾリオ基の場合、置換基として好ましくはアルキル基、アリール基、アシルアミノ基、クロロ原子、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基などが挙げられ、ピリジニオ基の場合、置換基として特に好ましくはフェニル基である。
【0136】
吸着性基としてエチニル基とは、−C≡CH基を意味し、水素原子は置換されていてもよい。
【0137】
上記の吸着性基は任意の置換基を有していてもよい。なお吸着性基の具体例としては、さらに特開平11−95355号の明細書4〜7頁に記載されているものが挙げられる。
【0138】
吸着性基として好ましいものは、メルカプト置換含窒素ヘテロ環基(例えば2−メルカプトチアジアゾール基、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール基、5−メルカプトテトラゾール基、2−メルカプト−1,3,4−オキサジアゾール基、2−メルカプトベンズオキサゾール基、2−メルカプトベンズチアゾール基、1,5−ジメチル−1,2,4−トリアゾリウム−3−チオレート基など)、ジメルカプト置換含窒素へテロ環基(2,4−ジメルカプトピリミジン基、2,4−ジメルカプトトリアジン基、3,5−ジメルカプト−1,2,4−トリアゾール基、2,5−ジメルカプト−1,3−チアゾール基等)、またはイミノ銀(=NAg)を形成しうる−NH−基をヘテロ環の部分構造として有する含窒素ヘテロ環基(例えば、ベンゾトリアゾール基、ベンズイミダゾール基、インダゾール基など)である。
【0139】
分光増感色素の部分構造とは、分光増感色素の発色団を含む基であり、分光増感色素化合物から任意の水素原子または置換基を除いた残基である。好ましい分光増感色素は、カラー増感技法で用いられるような典型的な分光増感色素であり、例えばシアニン色素類、複合シアニン色素類、メロシアニン色素類、複合メロシアニン色素類、ヘミシアニン色素類、スチリル色素類、を含む。代表的な分光増感色素は、リサーチディスクロージャー、アイテム36544、1994年9月に開示されている。
【0140】
吸着基として分光増感色素を含む場合には、該分光増感色素が本発明の高沃化銀乳剤を分光増感出来ることが望ましく、その場合に於いては、分光増感を施す分光増感剤としても適用でき、別に施す分光増感剤と組合わせて使用することも出来る。
【0141】
本発明のタイプ1〜4の化合物は、その総炭素数が10〜60の範囲のものが好ましく、より好ましくは11〜50、12〜30が特に好ましい。
【0142】
本発明のタイプ1〜4の化合物は、これを用いた高沃化銀写真感光材料が露光されることを引き金に1電子酸化され、引き続く反応の後、更に1電子、或いはタイプによっては2電子以上の電子が放出され、酸化されるが、その1電子目の酸化電位は、約0〜約1.4V vs.SCEであることが好ましく、更には約0.3〜1.0V vs.SCEであることが好ましい。
【0143】
ここに酸化電位は、サイクリックボルタンメトリーの技法で測定でき、具体的には、試料を0.1モル/Lの過塩素酸リチウムを含むアセトニトリル:水(80%:20%)の溶液に溶解し、10分間アルゴンガスを通気した後、ガラス状のカーボンディスクを動作電極に、白金線を対極として、飽和カロメル電極を参照電極に用いて、25℃で、0.1V/秒の電位走査速度で測定した。この時のサイクリックボルタンメトリー波のピーク電位の時に酸化電位対SCEをとる。
本発明のタイプ1〜4の化合物が1電子酸化され、引き続く反応の後、更に1電子を放出する化合物である場合には、この段階の酸化電位は、好ましくは−0.5〜−2.0V vs.SCEであり、より好ましくは−0.7V〜−2.0V vs.SCEであり、特に好ましくは、−0.9V〜−1.6V vs.SCEである。
【0144】
本発明のタイプ1〜4の化合物が1電子酸化され、引き続く反応の後、更に2電子以上を放出し、酸化される化合物である場合には、この後段の酸化電位について特に制限はない。2電子目の酸化電位と3電子目の酸化電位が明確に区別できない点で、これらを正確に測定し、区別することは困難な場合が多いためである。
【0145】
以下に本発明のタイプ1〜4の化合物の具体例を列挙するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0146】
【化11】
Figure 0004083039
【0147】
【化12】
Figure 0004083039
【0148】
【化13】
Figure 0004083039
【0149】
【化14】
Figure 0004083039
【0150】
本発明の一般式(I)で表される化合物及びその前駆体と、タイプ1〜4のFED化合物の使用量は、使用する高沃化銀粒子、特に粒子サイズなどにより変わるが、ハロゲン化銀1モル当たり10-5〜1モル、より好ましくは5×10-5〜5×10-2モル程度を用いることが出来る。
【0151】
本発明の一般式(I)で表される化合物及びその前駆体と、タイプ1〜4のFED化合物は、水または水と混和しうる適当な有機溶環、例えばアルコール類、グリコール類、ケトン類、エステル類、アミド類などのうちで、写真特性に悪い影響を与えない溶媒に溶解し、溶液として、又は、固体分散物として添加することができる。
【0152】
本発明の一般式(I)の化合物及びその前駆体と、タイプ1)〜4)の化合物の添加時期は、高沃化銀乳剤の粒子形成後から塗布直前までのいずれかの時期でもよいが、好ましいのは化学増感開始前から塗布直前までの時期で、特に塗布直前が好ましい。
【0153】
3.有機銀塩の説明
本発明に用いる非感光性有機銀塩は、光に対して比較的安定であるが、露光された感光性ハロゲン化銀及び還元剤の存在下で、80℃或いはそれ以上に加熱された場合に銀画像を形成する銀塩である。有機銀塩は銀イオンを還元できる源を含む任意の有機物質であってよい。このような非感光性の有機銀塩については、特開平10-62899号の段落番号0048〜0049、欧州特許公開第0803764A1号の第18ページ第24行〜第19ページ第37行、欧州特許公開第0962812A1号、特開平11-349591号、特開2000-7683号、同2000-72711号等に記載されている。有機酸の銀塩、特に(炭素数が10〜30、好ましくは15〜28の)長鎖脂肪族カルボン酸の銀塩が好ましい。
有機銀塩の好ましい例としては、ベヘン酸銀、アラキジン酸銀、ステアリン酸銀、オレイン酸銀、ラウリン酸銀、カプロン酸銀、ミリスチン酸銀、パルミチン酸銀、これらの混合物などを含む。本発明においては、これら有機銀塩の中でも、ベヘン酸銀含有率50モル%以上100モル%以下の有機酸銀を用いることが好ましい。特にベヘン酸銀含有率は75モル%以上98モル%以下であることが好ましい。
【0154】
本発明に用いることができる有機銀塩の形状としては特に制限はなく、針状、棒状、平板状、りん片状でもよい。
本発明においてはりん片状の有機銀塩が好ましい。本明細書において、りん片状の有機銀塩とは、次のようにして定義する。有機銀塩を電子顕微鏡で観察し、有機銀塩粒子の形状を直方体と近似し、この直方体の辺を一番短かい方からa、b、cとした(cはbと同じであってもよい。)とき、短い方の数値a、bで計算し、次のようにしてxを求める。
【0155】
x=b/a
【0156】
このようにして200個程度の粒子についてxを求め、その平均値x(平均)としたとき、x(平均)≧1.5の関係を満たすものをりん片状とする。好ましくは30≧x(平均)≧1.5、より好ましくは15≧x(平均)≧1.5である。因みに針状とは1≦x(平均)<1.5である。
【0157】
りん片状粒子において、aはbとcを辺とする面を主平面とした平板状粒子の厚さとみることができる。aの平均は0.01μm以上0.3μm以下が好ましく0.1μm以上0.23μm以下がより好ましい。c/bの平均は好ましくは1以上6以下、より好ましくは1以上4以下、さらに好ましくは1以上3以下、特に好ましくは1以上2以下である。
【0158】
有機銀塩の粒子サイズ分布は単分散であることが好ましい。単分散とは短軸、長軸それぞれの長さの標準偏差を短軸、長軸それぞれで割った値の100分率が好ましくは100%以下、より好ましくは80%以下、更に好ましくは50%以下であることを指す。有機銀塩の形状の測定方法としては有機銀塩分散物の透過型電子顕微鏡像より求めることができる。
単分散性を測定する別の方法として、有機銀塩の体積加重平均直径の標準偏差から求める方法があり、体積加重平均直径で割った値の百分率(変動係数)が好ましくは100%以下、より好ましくは80%以下、更に好ましくは50%以下である。測定方法としては例えば液中に分散した有機銀塩にレーザー光を照射し、その散乱光のゆらぎの時間変化に対する自己相関関数を求めることにより得られた粒子サイズ(体積加重平均直径)から求めることができる。
【0159】
本発明に用いられる有機酸銀の製造及びその分散法は、公知の方法等を適用することができる。例えば上記の特開平10-62899号、欧州特許公開第0803763A1号、欧州特許公開第0962812A1号、特開平11-349591号、特開2000-7683号、同2000-72711号、特開2001-163827号、特開2001-163889〜90号、同11-203413号、特願2000-90093号、同2000-195621号、同2000-191226号、同2000-213813号、同2000-214155号、同2000-191226号等を参考にすることができる。
【0160】
本発明において有機銀塩水分散液と感光性銀塩水分散液を混合して感光材料を製造することが可能である。混合する際に2種以上の有機銀塩水分散液と2種以上の感光性銀塩水分散液を混合することは、写真特性の調節のために好ましく用いられる方法である。
【0161】
本発明の有機銀塩は所望の量で使用できるが、銀量として0.1〜5g/m2が好ましく、さらに好ましくは1〜3g/m2である。特に好ましく1.2〜2.5g/m2である。
【0162】
4.還元剤
本発明の熱現像感光材料は、有機銀塩のための還元剤を含む。該還元剤は、銀イオンを金属銀に還元できる任意の物質(好ましくは有機物)でよい。該還元剤の例は、特開平11―65021号、段落番号0043〜0045や、欧州特許0803764号、p.7、34行〜p.18、12行に記載されている。
【0163】
本発明に用いられる好ましい還元剤は、フェノール性水酸基のオルト位に置換基を有するいわゆるヒンダードフェノール系還元剤、あるいはビスフェノール系還元剤である。特に次の一般式(R)で表される化合物が好ましい。
【0164】
一般式(R)
【化15】
Figure 0004083039
【0165】
一般式(R)においては、R11およびR11'は各々独立に炭素数1〜20のアルキル基を表す。R12およびR12'は各々独立に水素原子またはベンゼン環に置換可能な置換基を表す。Lは−S−基または−CHR13−基を表す。R13は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を表す。X1およびX1'は各々独立に水素原子またはベンゼン環に置換可能な基を表す。
【0166】
各置換基について詳細に説明する。
1)R11およびR11'
11およびR11'は各々独立に置換または無置換の炭素数1〜20のアルキル基であり、アルキル基の置換基は特に限定されることはないが、好ましくは、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、スルホニル基、ホスホリル基、アシル基、カルバモイル基、エステル基、ハロゲン原子等があげられる。
【0167】
2)R12およびR12'、X1およびX1'
12およびR12'は各々独立に水素原子またはベンゼン環に置換可能な基を表す。
1およびX1'は、各々独立に水素原子またはベンゼン環に置換可能な基を表す。それぞれベンゼン環に置換可能な基としては、好ましくはアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルアミノ基があげられる。
【0168】
3)L
Lは−S−基または−CHR13−基を表す。R13は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を表し、アルキル基は置換基を有していてもよい。
13の無置換のアルキル基の具体例はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘプチル基、ウンデシル基、イソプロピル基、1−エチルペンチル基、2,4,4−トリメチルペンチル基などがあげられる。
【0169】
アルキル基の置換基の例はR11の置換基と同様で、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、スルホニル基、ホスホリル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基などがあげられる。
【0170】
4)好ましい置換基
11およびR11'として好ましくは炭素数3〜15の2級または3級のアルキル基であり、具体的にはイソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、t−アミル基、t−オクチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−メチルシクロプロピル基などがあげられる。R11およびR11'としてより好ましくは炭素数4〜12の3級アルキル基で、その中でもt−ブチル基、t−アミル基、1−メチルシクロヘキシル基が更に好ましく、t−ブチル基が最も好ましい。
【0171】
12およびR12'として好ましくは炭素数1〜20のアルキル基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、t−アミル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロヘキシル基、ベンジル基、メトキシメチル基、メトキシエチル基などがあげられる。より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基である。
【0172】
1およびX1'は、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基で、より好ましくは水素原子である。
【0173】
Lは好ましくは−CHR13−基である。
【0174】
13として好ましくは水素原子または炭素数1〜15のアルキル基であり、アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、2,4,4−トリメチルペンチル基が好ましい。R13として特に好ましいのは水素原子、メチル基、プロピル基またはイソプロピル基である。
13が水素原子である場合、R12およびR12'は好ましくは炭素数2〜5のアルキル基であり、エチル基、プロピル基がより好ましく、エチル基が最も好ましい。
13が炭素数1〜8の1級または2級のアルキル基である場合、R12およびR12'はメチル基が好ましい。R13の炭素数1〜8の1級または2級のアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基がより好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基が更に好ましい。
【0175】
11、R11'およびR12、R12'とがいずれもメチル基である場合、R13は2級のアルキル基であることが好ましい。この場合、R13の2級アルキル基としてはイソプロピル基、イソブチル基、1−エチルペンチル基が好ましく、イソプロピル基がより好ましい。
【0176】
上記還元剤は、R11、R11'およびR12およびR12'、およびR13の組合せにより、種々の熱現像性能が異なる。2種以上の還元剤を種々の混合比率で併用することによってこれらの熱現像性能を調整することができるので、目的によっては還元剤を2種類以上組み合わせて使用することが好ましい。
【0177】
以下に本発明の一般式(R)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0178】
【化16】
Figure 0004083039
【0179】
【化17】
Figure 0004083039
【0180】
【化18】
Figure 0004083039
【0181】
特に(R−1)〜(R−24)に示すような化合物であることが好ましい。
【0182】
本発明において還元剤の添加量は0.01〜5.0g/m2であることが好ましく、0.1〜3.0g/m2であることがより好ましく、画像形成層を有する面の銀1モルに対しては5〜50モル%含まれることが好ましく、10〜40モル%で含まれることがさらに好ましい。
本発明の還元剤は、有機銀塩、および感光性ハロゲン化銀を含む画像形成層、およびその隣接層に添加することができるが、画像形成層に含有させることがより好ましい。
【0183】
本発明の還元剤は溶液形態、乳化分散形態、固体微粒子分散物形態など、いかなる方法で塗布液に含有せしめ、感光材料に含有させてもよい。
よく知られている乳化分散法としては、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作製する方法が挙げられる。
【0184】
また、固体微粒子分散法としては、還元剤を水等の適当な溶媒中にボールミル、コロイドミル、振動ボールミル、サンドミル、ジェットミル、ローラーミルあるいは超音波によって分散し、固体分散物を作成する方法が挙げられる。好ましくは、サンドミルを使った分散方法である。尚、その際に保護コロイド(例えば、ポリビニルアルコール)、界面活性剤(例えばトリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム(3つのイソプロピル基の置換位置が異なるものの混合物)などのアニオン性界面活性剤)を用いてもよい。水分散物には防腐剤(例えばベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩)を含有させることができる。
特に好ましいのは、還元剤の固体粒子分散法であり、平均粒子サイズ0.01μm〜10μm、好ましくは0.05μm〜5μm、より好ましくは0.1μm〜1μmの微粒子して添加するのが好ましい。本願においては他の固体分散物もこの範囲の粒子サイズに分散して用いるのが好ましい。
【0185】
5.現像促進剤
本発明の熱現像感光材料では、現像促進剤として特開2000-267222号や特開2000-330234号等に記載の一般式(A)で表されるスルホンアミドフェノール系の化合物、特開2001-92075号記載の一般式(II)で表されるヒンダードフェノール系の化合物、特開平10-62895号や特開平11-15116号等に記載の一般式(I)、特開2002-156727号の一般式(D)や特願2001-074278号に記載の一般式(1)で表されるヒドラジン系の化合物、特願2000-76240号に記載されている一般式(2)で表されるフェノール系またはナフトール系の化合物が好ましく用いられる。これらの現像促進剤は還元剤に対して0.1〜20モル%の範囲で使用され、好ましくは0.5〜10モル%の範囲で、より好ましくは1〜5モル%の範囲である。感材への導入方法は還元剤同様の方法があげられる。
【0186】
本発明においては上記現像促進剤の中でも、特開2002-156727号明細書に記載の一般式(D)で表されるヒドラジン系の化合物および特願2001-264929号に記載されている一般式(2)で表されるフェノール系またはナフトール系の化合物が特に好ましい。
【0187】
本発明の特に好ましい現像促進剤は下記一般式(A−1)および(A−2)で表される化合物である。
【0188】
一般式(A−1)
1−NHNH−Q2
【0189】
一般式(A−1)において、Q1で表される芳香族基またはヘテロ環基としては5〜7員の不飽和環が好ましい。好ましい例としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、1,2,4−トリアジン環、1,3,5−トリアジン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、1,2,3−トリアゾール環、1,2,4−トリアゾール環、テトラゾール環、1,3,4−チアジアゾール環、1,2,4−チアジアゾール環、1,2,5−チアジアゾール環、1,3,4−オキサジアゾール環、1,2,4−オキサジアゾール環、1,2,5−オキサジアゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、イソチアゾール環、イソオキサゾール環、チオフェン環等が挙げられ、これらの環が互いに縮合した縮合環も好ましい。
【0190】
これらの環は置換基を有していてもよく、2個以上の置換基を有する場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。置換基の例としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、カルボンアミド基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、カルバモイル基、スルファモイル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、及びアシル基を挙げることができる。これらの置換基が置換可能な基である場合、さらに置換基を有してもよく、好ましい置換基の例としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、カルボンアミド基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、シアノ基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、およびアシルオキシ基を挙ることができる。
【0191】
2で表されるカルバモイル基は、好ましくは炭素数1〜50、より好ましくは炭素数6〜40のカルバモイル基であり、例えば、無置換カルバモイル基、メチルカルバモイル基、N−エチルカルバモイル基、N−プロピルカルバモイル基、N−sec−ブチルカルバモイル基、N−オクチルカルバモイル基、N−シクロヘキシルカルバモイル基、N−tert−ブチルカルバモイル基、N−ドデシルカルバモイル基、N−(3−ドデシルオキシプロピル)カルバモイル基、N−オクタデシルカルバモイル基、N−{3−(2,4−tert−ペンチルフェノキシ)プロピル}カルバモイル基、N−(2−ヘキシルデシル)カルバモイル基、N−フェニルカルバモイル基、N−(4−ドデシルオキシフェニル)カルバモイル基、N−(2−クロロ−5−ドデシルオキシカルボニルフェニル)カルバモイル基、N−ナフチルカルバモイル基、N−3−ピリジルカルバモイル基、N−ベンジルカルバモイル基が挙げられる。
【0192】
2で表されるアシル基は、好ましくは炭素数1〜50、より好ましくは炭素数6〜40のアシル基であり、例えば、ホルミル基、アセチル基、2−メチルプロパノイル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクタノイル基、2−ヘキシルデカノイル基、ドデカノイル基、クロロアセチル基、トリフルオロアセチル基、ベンゾイル基、4−ドデシルオキシベンゾイル基、2−ヒドロキシメチルベンゾイル基が挙げられる。
【0193】
2で表されるアルコキシカルボニル基は、好ましくは炭素数2〜50、より好ましくは炭素数6〜40のアルコキシカルボニル基であり、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、イソブチルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基が挙げられる。
【0194】
2で表されるアリールオキシカルボニル基は、好ましくは炭素数7〜50、より好ましくは炭素数7〜40のアリールオキシカルボニル基であり、例えば、フェノキシカルボニル基、4−オクチルオキシフェノキシカルボニル基、2−ヒドロキシメチルフェノキシカルボニル基、4−ドデシルオキシフェノキシカルボニル基が挙げられる。Q2で表されるスルホニル基は、好ましくは炭素数1〜50、より好ましくは炭素数6〜40のスルホニル基で、例えば、メチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、オクチルスルホニル基、2−ヘキサデシルスルホニル基、3−ドデシルオキシプロピルスルホニル基、2−オクチルオキシ−5−tert−オクチルフェニルスルホニル基、4−ドデシルオキシフェニルスルホニル基が挙げられる。
【0195】
2で表されるスルファモイル基は、好ましくは炭素数0〜50、より好ましくは炭素数6〜40のスルファモイル基で、例えば、無置換スルファモイル基、N−エチルスルファモイル基、N−(2−エチルヘキシル)スルファモイル基、N−デシルスルファモイル基、N−ヘキサデシルスルファモイル基、N−{3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピル}スルファモイル基、N−(2−クロロ−5−ドデシルオキシカルボニルフェニル)スルファモイル基、N−(2−テトラデシルオキシフェニル)スルファモイル基が挙げられる。Q2で表される基は、さらに、置換可能な位置に前記のQ1で表される5〜7員の不飽和環の置換基の例として挙げた基を有していてもよく、2個以上の置換基を有する場合には、それ等の置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0196】
次に、式(A−1)で表される化合物の好ましい範囲について述べる。Q1としては5〜6員の不飽和環が好ましく、ベンゼン環、ピリミジン環、1,2,3−トリアゾール環、1,2,4−トリアゾール環、テトラゾール環、1,3,4−チアゾール環、1,2,4−チアジアゾール環、1,3,4−オキサジアゾール環、1,2,4−オキサジアゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、イソチアゾール環、イソオキサゾール環、およびこれらの環がベンゼン環もしくは不飽和ヘテロ環と縮合した環が更に好ましい。また、Q2はカルバモイル基が好ましく、特に窒素原子上に水素原子を有するカルバモイル基が好ましい。
一般式(A−2)
【0197】
【化19】
Figure 0004083039
【0198】
一般式(A−2)においてR1はアルキル基、アシル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基を表す。R2は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルオキシ基、炭酸エステル基を表す。R3、R4はそれぞれ一般式(A−1)の置換基例で挙げたベンゼン環に置換可能な基を表す。R3とR4は互いに連結して縮合環を形成してもよい。
【0199】
1は好ましくは炭素数1〜20のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−オクチル基、シクロヘキシル基等)、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、メチルウレイド基、4−シアノフェニルウレイド基等)、カルバモイル基(n−ブチルカルバモイル基、N,N−ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基、2−クロロフェニルカルバモイル基、2,4−ジクロロフェニルカルバモイル基など)でアシルアミノ基(ウレイド基、ウレタン基を含む)がより好ましい。
【0200】
2は好ましくはハロゲン原子(より好ましくは塩素原子、臭素原子)、アルコキシ基(例えばメトキシ基、ブトキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−デシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ベンジルオキシ基など)、アリールオキシ基(フェノキシ基、ナフトキシ基など)である。
【0201】
3は好ましくは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基であり、ハロゲン原子がもっとも好ましい。R4は水素原子、アルキル基、アシルアミノ基が好ましく、アルキル基がまたはアシルアミノ基がより好ましい。これらの好ましい置換基の例はR1と同様である。R4がアシルアミノ基である場合R4はR3と連結してカルボスチリル環を形成することも好ましい。
【0202】
一般式(A−2)においてR3とR4が互いに連結して縮合環を形成する場合、縮合環としてはナフタレン環が特に好ましい。ナフタレン環には一般式(A−1)で挙げた置換基例と同じ置換基が結合していてもよい。一般式(A−2)がナフトール系の化合物であるとき、R1はカルバモイル基であることが好ましい。その中でもベンゾイル基であることが特に好ましい。R2はアルコキシ基、アリールオキシ基であることが好ましく、アルコキシ基であることが特に好ましい。
【0203】
以下、本発明の現像促進剤の好ましい具体例を挙げる。本発明はこれらに限定されるものではない。
【0204】
【化20】
Figure 0004083039
【0205】
6.水素結合性化合物
本発明では、還元剤の芳香族性の水酸基(−OH)あるいはアミノ基を有する場合はアミノ基と水素結合を形成することが可能な基を有する非還元性の化合物を併用することが好ましい。
【0206】
水素結合を形成しうる基としては、ホスホリル基、スルホキシド基、スルホニル基、カルボニル基、アミド基、エステル基、ウレタン基、ウレイド基、3級アミノ基、含窒素芳香族基などが挙げられる。その中でも好ましいのはホスホリル基、スルホキシド基、アミド基(但し、>N−H基を持たず、>N−Ra(RaはH以外の置換基)のようにブロックされている。)、ウレタン基(但し、>N−H基を持たず、>N−Ra(RaはH以外の置換基)のようにブロックされている。)、ウレイド基(但し、>N−H基を持たず、>N−Ra(RaはH以外の置換基)のようにブロックされている。)を有する化合物である。
【0207】
本発明で、特に好ましい水素結合性化合物は下記一般式(D)で表される化合物である。
【0208】
一般式(D)
【化21】
Figure 0004083039
【0209】
一般式(D)においてR21ないしR23は各々独立にアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基またはヘテロ環基を表し、これらの基は無置換であっても置換基を有していてもよい。
【0210】
21ないしR23が置換基を有する場合の置換基としてはハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アミノ基、アシル基、アシルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホンアミド基、アシルオキシ基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホニル基、ホスホリル基などがあげられ、置換基として好ましいのはアルキル基またはアリール基でたとえばメチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、t−オクチル基、フェニル基、4−アルコキシフェニル基、4−アシルオキシフェニル基などがあげられる。
【0211】
21ないしR23のアルキル基としては具体的にはメチル基、エチル基、ブチル基、オクチル基、ドデシル基、イソプロピル基、t−ブチル基、t−アミル基、t−オクチル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロヘキシル基、ベンジル基、フェネチル基、2−フェノキシプロピル基などがあげられる。
アリール基としてはフェニル基、クレジル基、キシリル基、ナフチル基、4−t−ブチルフェニル基、4−t−オクチルフェニル基、4−アニシジル基、3,5−ジクロロフェニル基などが挙げられる。
【0212】
アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、3,5,5−トリメチルヘキシルオキシ基、ドデシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、4−メチルシクロヘキシルオキシ基、ベンジルオキシ基等が挙げられる。
【0213】
アリールオキシ基としてはフェノキシ基、クレジルオキシ基、イソプロピルフェノキシ基、4−t−ブチルフェノキシ基、ナフトキシ基、ビフェニルオキシ基等が挙げられる。
【0214】
アミノ基としてはジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジオクチルアミノ基、N−メチル−N−ヘキシルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ジフェニルアミノ基、N−メチル−N−フェニルアミノ基等が挙げられる。
【0215】
21ないしR23としてはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基が好ましい。本発明の効果の点ではR21ないしR23のうち少なくとも一つ以上がアルキル基またはアリール基であることが好ましく、二つ以上がアルキル基またはアリール基であることがより好ましい。また、安価に入手する事ができるという点ではR21ないしR23が同一の基である場合が好ましい。
【0216】
以下に本発明における一般式(D)の化合物をはじめとする水素結合性化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0217】
【化22】
Figure 0004083039
【0218】
水素結合性化合物の具体例は上述の他に欧州特許1096310明細書、特開2002-156727号、同2001-124796号に記載のものがあげられる。
【0219】
本発明の水素結合性化合物は、還元剤と同様に溶液形態、乳化分散形態、固体分散微粒子分散物形態で塗布液に含有せしめ、感光材料中で使用することができる。本発明の化合物は、溶液状態でフェノール性水酸基を有する化合物と水素結合による錯体を形成しており、還元剤と本発明の一般式(D)の化合物との組み合わせによっては錯体として結晶状態で単離することができる。
【0220】
このようにして単離した結晶粉体を固体分散微粒子分散物として使用することは安定した性能を得る上で特に好ましい。また、還元剤と本発明の水素結合性化合物を粉体で混合し、適当な分散剤を使って、サンドグラインダーミル等で分散時に錯形成させる方法も好ましく用いることができる。
【0221】
本発明の水素結合性化合物は還元剤に対して、1〜200モル%の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは10〜150モル%の範囲で、さらに好ましくは30〜100モル%の範囲である。
【0222】
7.バインダー
本発明の画像形成層のバインダーはいかなるポリマーであってもよく、好適なバインダーは透明又は半透明で、一般に無色であり、天然樹脂やポリマー及びコポリマー、合成樹脂やポリマー及びコポリマー、その他フィルムを形成する媒体、例えば、ゼラチン類、ゴム類、ポリ(ビニルアルコール)類、ヒドロキシエチルセルロース類、セルロースアセテート類、セルロースアセテートブチレート類、ポリ(ビニルピロリドン)類、カゼイン、デンプン、ポリ(アクリル酸)類、ポリ(メチルメタクリル酸)類、ポリ(塩化ビニル)類、ポリ(メタクリル酸)類、スチレン−無水マレイン酸共重合体類、スチレン−アクリロニトリル共重合体類、スチレン−ブタジエン共重合体類、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)及びポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)類、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(酢酸ビニル)類、ポリ(オレフィン)類、セルロースエステル類、ポリ(アミド)類がある。バインダーは水又は有機溶媒またはエマルションから被覆形成してもよい。
【0223】
本発明では、画像形成層のバインダーのガラス転移温度は10℃以上80℃以下であることが好ましく、20℃〜70℃であることがより好ましく、23℃以上65℃以下であることが更に好ましい。
【0224】
なお、本明細書においてTgは下記の式で計算される。
1/Tg=Σ(Xi/Tgi)
【0225】
ここでは、ポリマーはi=1からnまでのn個のモノマー成分が共重合しているとする。Xiはi番目のモノマーの重量分率(ΣXi=1)、Tgiはi番目のモノマーの単独重合体のガラス転移温度(絶対温度)である。ただしΣはi=1からnまでの和をとる。
【0226】
尚、各モノマーの単独重合体ガラスの転移温度の値(Tgi)はPolymer Handbook(3rd Edition)(J.Brandrup, E.H.Immergut著(Wiley-Interscience、1989))の値を採用した。
【0227】
バインダーとなるポリマーは単独種で用いてもよいし、必要に応じて2種以上を併用しても良い。また、ガラス転移温度が20℃以上のものとガラス転移温度が20℃未満のものを組み合わせて用いてもよい。Tgの異なるポリマーを2種以上ブレンドして使用する場合には、その重量平均Tgが上記の範囲に入ることが好ましい。
【0228】
本発明においては、画像形成層が溶媒の30質量%以上が水である塗布液を用いて塗布し、乾燥して形成される場合に、さらに有機銀塩含有層のバインダーが水系溶媒(水溶媒)に可溶または分散可能である場合に、特に25℃60%RHでの平衡含水率が2質量%以下のポリマーのラテックスからなる場合に性能が向上する。
【0229】
最も好ましい形態は、イオン伝導度が2.5mS/cm以下になるように調製されたものであり、このような調製法としてポリマー合成後分離機能膜を用いて精製処理する方法が挙げられる。
【0230】
ここでいう前記ポリマーが可溶または分散可能である水系溶媒とは、水または水に70質量%以下の水混和性の有機溶媒を混合したものである。
水混和性の有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール等のアルコール系、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系、酢酸エチル、ジメチルホルミアミドなどを挙げることができる。
【0231】
また「25℃60%RHにおける平衡含水率」とは、25℃60%RHの雰囲気下で調湿平衡にあるポリマーの重量W1と25℃で絶乾状態にあるポリマーの重量W0を用いて以下のように表すことができる。
25℃60%RHにおける平衡含水率=[(W1−W0)/W0]×100(質量%)
含水率の定義と測定法については、例えば高分子工学講座14、高分子材料試験法(高分子学会編、地人書館)を参考にすることができる。
【0232】
本発明のバインダーポリマーの25℃60%RHにおける平衡含水率は2質量%以下であることが好ましいが、より好ましくは0.01質量%以上1.5質量%以下、さらに好ましくは0.02質量%以上1質量%以下が望ましい。
【0233】
本発明のバインダーは水系溶媒に分散可能なポリマーが特に好ましい。分散状態の例としては、水不溶な疎水性ポリマーの微粒子が分散しているラテックスやポリマー分子が分子状態またはミセルを形成して分散しているものなどがあるが、いずれも好ましい。分散粒子の平均粒径は1〜50000nm、より好ましくは5〜1000nm程度の範囲が好ましい。分散粒子の粒径分布に関しては特に制限は無く、広い粒径分布を持つものでも単分散の粒径分布を持つものでもよい。
【0234】
本発明において水系溶媒に分散可能なポリマーの好ましい態様としては、アクリル系ポリマー、ポリ(エステル)類、ゴム類(例えばSBR樹脂)、ポリ(ウレタン)類、ポリ(塩化ビニル)類、ポリ(酢酸ビニル)類、ポリ(塩化ビニリデン)類、ポリ(オレフィン)類等の疎水性ポリマーを好ましく用いることができる。これらポリマーとしては直鎖のポリマーでも枝分かれしたポリマーでもまた架橋されたポリマーでもよいし、単一のモノマーが重合したいわゆるホモポリマーでもよいし、2種類以上のモノマーが重合したコポリマーでもよい。コポリマーの場合はランダムコポリマーでも、ブロックコポリマーでもよい。
【0235】
これらポリマーの分子量は数平均分子量で5000〜1000000、好ましくは10000〜200000がよい。分子量が小さすぎるものは乳剤層の力学強度が不十分であり、大きすぎるものは成膜性が悪く好ましくない。
【0236】
好ましいポリマーラテックスの具体例としては以下のものを挙げることができる。以下では原料モノマーを用いて表し、括弧内の数値は質量%、分子量は数平均分子量である。多官能モノマーを使用した場合は架橋構造を作るため分子量の概念が適用できないので架橋性と記載し、分子量の記載を省略した。Tgはガラス転移温度を表す。
【0237】
P-1;-MMA(70)-EA(27)-MAA(3)-のラテックス(分子量37000、Tg61℃)
P-2;-MMA(70)-2EHA(20)-St(5)-AA(5)-のラテックス(分子量40000、Tg59℃)
P-3;-St(50)-Bu(47)-MAA(3)-のラテックス(架橋性、Tg-17℃)
P-4;-St(68)-Bu(29)-AA(3)-のラテックス(架橋性、Tg17℃)
P-5;-St(71)-Bu(26)-AA(3)-のラテックス(架橋性,Tg24℃)
P-6;-St(70)-Bu(27)-IA(3)-のラテックス(架橋性)
P-7;-St(75)-Bu(24)-AA(1)-のラテックス(架橋性、Tg29℃)
P-8;-St(60)-Bu(35)-DVB(3)-MAA(2)-のラテックス(架橋性)
P-9;-St(70)-Bu(25)-DVB(2)-AA(3)-のラテックス(架橋性)
P-10;-VC(50)-MMA(20)-EA(20)-AN(5)-AA(5)-のラテックス(分子量80000)
P-11;-VDC(85)-MMA(5)-EA(5)-MAA(5)-のラテックス(分子量67000)
P-12;-Et(90)-MAA(10)-のラテックス(分子量12000)
P-13;-St(70)-2EHA(27)-AA(3)のラテックス(分子量130000、Tg43℃)
P-14;-MMA(63)-EA(35)-AA(2)のラテックス(分子量33000、Tg47℃)
P-15;-St(70.5)-Bu(26.5)-AA(3)-のラテックス(架橋性,Tg23℃)
P-16;-St(69.5)-Bu(27.5)-AA(3)-のラテックス(架橋性,Tg20.5℃)
【0238】
上記構造の略号は以下のモノマーを表す。MMA;メチルメタクリレート、EA;エチルアクリレート、MAA;メタクリル酸、2EHA;2-エチルヘキシルアクリレート、St;スチレン、Bu;ブタジエン、AA;アクリル酸、DVB;ジビニルベンゼン、VC;塩化ビニル、AN;アクリロニトリル、VDC;塩化ビニリデン、Et;エチレン、IA;イタコン酸。
【0239】
以上に記載したポリマーラテックスは市販もされていて、以下のようなポリマーが利用できる。アクリル系ポリマーの例としては、セビアンA-4635,4718,4601(以上ダイセル化学工業(株)製)、Nipol Lx811、814、821、820、857(以上日本ゼオン(株)製)など、ポリ(エステル)類の例としては、FINETEX ES650、611、675、850(以上大日本インキ化学(株)製)、WD-size、WMS(以上イーストマンケミカル製)など、ポリ(ウレタン)類の例としては、HYDRAN AP10、20、30、40(以上大日本インキ化学(株)製)など、ゴム類の例としては、LACSTAR 7310K、3307B、4700H、7132C(以上大日本インキ化学(株)製)、Nipol Lx416、410、438C、2507(以上日本ゼオン(株)製)など、ポリ(塩化ビニル)類の例としては、G351、G576(以上日本ゼオン(株)製)など、ポリ(塩化ビニリデン)類の例としては、L502、L513(以上旭化成工業(株)製)など、ポリ(オレフィン)類の例としては、ケミパールS120、SA100(以上三井石油化学(株)製)などを挙げることができる。
これらのポリマーラテックスは単独で用いてもよいし、必要に応じて2種以上ブレンドしてもよい。
【0240】
本発明に用いられるポリマーラテックスとしては、特に、スチレン−ブタジエン共重合体のラテックスが好ましい。スチレン−ブタジエン共重合体におけるスチレンのモノマー単位とブタジエンのモノマー単位との重量比は40:60〜95:5であることが好ましい。また、スチレンのモノマー単位とブタジエンのモノマー単位との共重合体に占める割合は60〜99質量%であることが好ましい。好ましい分子量の範囲は前記と同様である。
【0241】
本発明に用いることが好ましいスチレン−ブタジエン共重合体のラテックスとしては、前記のP-3〜P-8,14,15、市販品であるLACSTAR-3307B、7132C、Nipol Lx416等が挙げられる。
【0242】
本発明の感光材料の画像形成層には必要に応じてゼラチン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどの親水性ポリマーを添加してもよい。
【0243】
これらの親水性ポリマーの添加量は画像形成層の全バインダーの30質量%以下、より好ましくは20質量%以下が好ましい。
【0244】
本発明の画像形成層は、ポリマーラテックスをバインダーに用いて形成されたものが好ましい。画像形成層のバインダーの量は、全バインダー/有機銀塩の重量比が1/10〜10/1、更には1/5〜4/1の範囲が好ましい。
【0245】
また、このような画像形成層は、通常、感光性銀塩である感光性ハロゲン化銀が含有された感光性層(乳剤層)でもあり、このような場合の、全バインダー/ハロゲン化銀の重量比は400〜5、より好ましくは200〜10の範囲が好ましい。
【0246】
本発明の画像形成層の全バインダー量は0.2〜30g/m2、より好ましくは1〜15g/m2の範囲が好ましい。本発明の画像形成層には架橋のための架橋剤、塗布性改良のための界面活性剤などを添加してもよい。
【0247】
本発明において感光材料の有機銀塩含有層塗布液の溶媒(ここでは簡単のため、溶媒と分散媒をあわせて溶媒と表す。)は、水を30質量%以上含む水系溶媒が好ましい。水以外の成分としてはメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド、酢酸エチルなど任意の水混和性有機溶媒を用いてよい。溶媒の水含有率は50質量%以上がより好ましく、さらに好ましくは70質量%以上が良い。
【0248】
好ましい溶媒組成の具体例を挙げると、水100の他、水/メチルアルコール=90/10、水/メチルアルコール=70/30、水/メチルアルコール/ジメチルホルムアミド=80/15/5、水/メチルアルコール/エチルセロソルブ=85/10/5、水/メチルアルコール/イソプロピルアルコール=85/10/5などがある(数値は質量%)。
【0249】
8.かぶり防止剤
1)ポリハロゲン化合物
本発明はカブリ防止剤として下記一般式(H)で表される化合物を含有するのが好ましい。
一般式(H)
【0250】
Q−(Y)n−C(Z1)(Z2)X
【0251】
一般式(H)において、Qはアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、Yは2価の連結基を表し、nは0または1を表し、Z1およびZ2はハロゲン原子を表し、Xは水素原子または電子吸引性基を表す。
【0252】
Qは好ましくはハメットの置換基定数σpが正の値をとる電子求引性基で置換されたフェニル基を表す。ハメットの置換基定数に関しては、Journal of Medicinal Chemistry,1973,Vol.16,No.11,1207-1216等を参考にすることができる。
【0253】
このような電子求引性基としては、例えばハロゲン原子(フッ素原子(σp値:0.06)、塩素原子(σp値:0.23)、臭素原子(σp値:0.23)、ヨウ素原子(σp値:0.18))、トリハロメチル基(トリブロモメチル(σp値:0.29)、トリクロロメチル(σp値:0.33)、トリフルオロメチル(σp値:0.54))、シアノ基(σp値:0.66)、ニトロ基(σp値:0.78)、脂肪族・アリールもしくは複素環スルホニル基(例えば、メタンスルホニル(σp値:0.72))、脂肪族・アリールもしくは複素環アシル基(例えば、アセチル(σp値:0.50)、ベンゾイル(σp値:0.43))、アルキニル基(例えば、C≡CH(σp値:0.23))、脂肪族・アリールもしくは複素環オキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル(σp値:0.45)、フェノキシカルボニル(σp値:0.44))、カルバモイル基(σp値:0.36)、スルファモイル基(σp値:0.57)、スルホキシド基、ヘテロ環基、ホスホリル基等があげられる。
σp値としては好ましくは0.2〜2.0の範囲で、より好ましくは0.4から1.0の範囲である。
【0254】
電子求引性基として好ましいのは、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アルキルホスホリル基、カルボキシル基、アルキルまたはアリールカルボニル基、およびアリールスルホニル基であり、特に好ましくはカルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アルキルホスホリル基であり、カルバモイル基が最も好ましい。
【0255】
Xは、好ましくは電子求引性基であり、より好ましくはハロゲン原子、脂肪族・アリールもしくは複素環スルホニル基、脂肪族・アリールもしくは複素環アシル基、脂肪族・アリールもしくは複素環オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基であり、特に好ましくはハロゲン原子である。
ハロゲン原子の中でも、好ましくは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であり、更に好ましくは塩素原子、臭素原子であり、特に好ましくは臭素原子である。
Yは好ましくは−C(=O)−、−SO−または−SO2−を表し、より好ましくは−C(=O)−、−SO2−であり、特に好ましくは−SO2−である。nは、0または1を表し、好ましくは1である。
【0256】
以下に本発明の一般式(H)の化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0257】
【化23】
Figure 0004083039
【0258】
【化24】
Figure 0004083039
【0259】
本発明の一般式(H)で表される化合物は画像形成層の非感光性銀塩1モル当たり、10-4〜0.8モルの範囲で使用することが好ましく、より好ましくは10-3〜0.1モルの範囲で、さらに好ましくは5×10-3〜0.05モルの範囲で使用することが好ましい。
特に、本発明のヨウ化銀含有率の高い組成のハロゲン化銀を用いた場合、十分なかぶり防止効果を得るためにはこの一般式(H)の化合物の添加量は重要であり、5×10-3〜0.03モルの範囲で使用することが最も好ましい。
【0260】
本発明において、一般式(H)で表される化合物を感光材料に含有せしめる方法としては、前記還元剤の含有方法に記載の方法が挙げられる。
【0261】
一般式(H)で表される化合物の融点は200℃以下であることが好ましく、さらに好ましくは170℃以下がよい。
【0262】
本発明に用いられるその他の有機ポリハロゲン化物として、特開平11-65021号の段落番号0111〜0112に記載の特許に開示されているものが挙げられる。特に特願平11-87297号の式(P)で表される有機ハロゲン化合物、特開平10-339934号の一般式(II)で表される有機ポリハロゲン化合物、特願平11-205330号に記載の有機ポリハロゲン化合物が好ましい。
【0263】
2)その他のかぶり防止剤
その他のカブリ防止剤としては特開平11-65021号段落番号0113の水銀(II)塩、同号段落番号0114の安息香酸類、特開2000-206642号のサリチル酸誘導体、特開2000-221634号の式(S)で表されるホルマリンスカベンジャー化合物、特開平11-352624号の請求項9に係るトリアジン化合物、特開平6-11791号の一般式(III)で表される化合物、4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン等が挙げられる。
【0264】
本発明に用いることのできるカブリ防止剤、安定剤および安定剤前駆体特開平10-62899号の段落番号0070、欧州特許0803764A1号の第20頁第57行〜第21頁第7行に記載の特許のもの、特開平9-281637号、同9-329864号記載の化合物が挙げられる。
【0265】
本発明における熱現像感光材料はカブリ防止を目的としてアゾリウム塩を含有しても良い。アゾリウム塩としては、特開昭59-193447号記載の一般式(XI)で表される化合物、特公昭55-12581号記載の化合物、特開昭60-153039号記載の一般式(II)で表される化合物が挙げられる。アゾリウム塩は感光材料のいかなる部位に添加しても良いが、添加層としては感光性層を有する面の層に添加することが好ましく、有機銀塩含有層に添加することがさらに好ましい。
【0266】
アゾリウム塩の添加時期としては塗布液調製のいかなる工程で行っても良く、有機銀塩含有層に添加する場合は有機銀塩調製時から塗布液調製時のいかなる工程でも良いが有機銀塩調製後から塗布直前が好ましい。アゾリウム塩の添加法としては粉末、溶液、微粒子分散物などいかなる方法で行っても良い。また、増感色素、還元剤、色調剤など他の添加物と混合した溶液として添加しても良い。
【0267】
本発明においてアゾリウム塩の添加量としてはいかなる量でも良いが、銀1モル当たり1×10-6モル以上2モル以下が好ましく、1×10-3モル以上0.5モル以下がさらに好ましい。
【0268】
9.その他の添加剤
1)メルカプト、ジスルフィド、およびチオン類
本発明には現像を抑制あるいは促進させ現像を制御するため、分光増感効率を向上させるため、現像前後の保存性を向上させるためなどにメルカプト化合物、ジスルフィド化合物、チオン化合物を含有させることができ、特開平10-62899号の段落番号0067〜0069、特開平10-186572号の一般式(I)で表される化合物及びその具体例として段落番号0033〜0052、欧州特許公開第0803764A1号の第20ページ第36〜56行、特願平11-273670号等に記載されている。中でもメルカプト置換複素芳香族化合物が好ましい。
【0269】
2)色調剤
本発明の熱現像感光材料では色調剤の添加が好ましく、色調剤については、特開平10−62899号の段落番号0054〜0055、欧州特許0803764A1号のp.21,23行〜48行、特開2000−356317号や特願2000−187298号に記載されており、特に、フタラジノン類(フタラジノン、フタラジノン誘導体もしくは金属塩;例えば4−(1−ナフチル)フタラジノン、6−クロロフタラジノン、5,7−ジメトキシフタラジノンおよび2,3−ジヒドロー1,4−フタラジンジオン);フタラジノン類とフタル酸類(例えば、フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸、フタル酸二アンモニウム、フタル酸ナトリウム、フタル酸カリウムおよびテトラクロロ無水フタル酸)の組み合わせ;フタラジン類(フタラジン、フタラジン誘導体もしくは金属塩;例えば4−(1−ナフチル)フタラジン、6−イソプロピルフタラジン、6−t−ブチルフタラジン、6−クロロフタラジン、5.7−ジメトキシフタラジン、および2,3−ジヒドロフタラジン)が好ましく、特に、ヨウ化銀含有率の高い組成のハロゲン化銀との組み合わせにおいては、フタラジン類とフタル酸類の組み合わせが好ましい。
【0270】
好ましいフタラジン類の添加量としては、有機銀塩1モル当たり0.01モル〜0.3モルであり、さらに好ましくは0.02〜0.2モル、特に好ましくは0.02〜0.1モルである。この添加量は、本発明のヨウ化銀含有率の高い組成のハロゲン化銀乳剤で課題である現像促進にとって重要な要因であり、適正な添加量の選択によって十分な現像性と低いかぶりの両立が可能となる。
【0271】
3)可塑剤、潤滑剤
本発明の感光性層に用いることのできる可塑剤および潤滑剤については特開平11-65021号段落番号0117に記載されている。滑り剤については特開平11-84573号段落番号0061〜0064や特願平11-106881号段落番号0049〜0062記載されている。
【0272】
4)染料、顔料
本発明の感光性層には色調改良、レーザー露光時の干渉縞発生防止、イラジエーション防止の観点から各種染料や顔料(例えばC.I.Pigment Blue 60、C.I.Pigment Blue 64、C.I.Pigment Blue 15:6)を用いることができる。これらについてはWO98/36322号、特開平10-268465号、同11-338098号等に詳細に記載されている。
【0273】
5)超硬調化剤
印刷製版用途に適した超硬調画像形成のためには、画像形成層に超硬調化剤を添加することが好ましい。超硬調化剤やその添加方法及び添加量については、特開平11-65021号公報段落番号0118、特開平11−223898号公報段落番号0136〜0193、特願平11−87297号明細書の式(H)、式(1)〜(3)、式(A)、(B)の化合物、特願平11−91652号明細書記載の一般式(III)〜(V)の化合物(具体的化合物:化21〜化24)、硬調化促進剤については特開平11−65021号公報段落番号0102、特開平11−223898号公報段落番号0194〜0195に記載されている。
【0274】
蟻酸や蟻酸塩を強いかぶらせ物質として用いるには、感光性ハロゲン化銀を含有する画像形成層を有する側に銀1モル当たり5ミリモル以下、さらには1ミリモル以下で含有させることが好ましい。
【0275】
本発明の熱現像感光材料で超硬調化剤を用いる場合には五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩を併用して用いることが好ましい。五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩としては、メタリン酸(塩)、ピロリン酸(塩)、オルトリン酸(塩)、三リン酸(塩)、四リン酸(塩)、ヘキサメタリン酸(塩)などを挙げることができる。特に好ましく用いられる五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩としては、オルトリン酸(塩)、ヘキサメタリン酸(塩)を挙げることができる。具体的な塩としてはオルトリン酸ナトリウム、オルトリン酸二水素ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸アンモニウムなどが挙げられる。
【0276】
五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩の使用量(感光材料1m2あたりの塗布量)は感度やカブリなどの性能に合わせて所望の量でよいが、0.1〜500mg/m2が好ましく、0.5〜100mg/m2がより好ましい。
【0277】
2−6.塗布液の調製
本発明の画像形成層塗布液の調製温度は30℃以上65℃以下がよく、さらに好ましい温度は35℃以上60℃未満、より好ましい温度は35℃以上55℃以下である。また、ポリマーラテックス添加直後の画像形成層塗布液の温度が30℃以上65℃以下で維持されることが好ましい。
【0278】
10.層構成
本発明の熱現像感光材料は、画像形成層に加えて非感光性層を有することができる。非感光性層は、その配置から(a)画像形成層の上(支持体よりも遠い側)に設けられる表面保護層、(b)複数の画像形成層の間や画像形成層と保護層の間に設けられる中間層、(c)画像形成層と支持体との間に設けられる下塗り層、(d)画像形成層の反対側に設けられるバック層に分類できる。
【0279】
また、光学フィルターとして作用する層を設けることができるが、(a)または(b)の層として設けられる。アンチハレーション層は、(c)または(d)の層として感光材料に設けられる。
【0280】
1)表面保護層
本発明における熱現像感光材料は画像形成層の付着防止などの目的で表面保護層を設けることができる。表面保護層は単層でもよいし、複数層であってもよい。表面保護層については、特開平11-65021号段落番号0119〜0120、特願2000-171936号に記載されている。
【0281】
本発明の表面保護層のバインダーとしてはゼラチンが好ましいがポリビニルアルコール(PVA)を用いる若しくは併用することも好ましい。ゼラチンとしてはイナートゼラチン(例えば新田ゼラチン750)、フタル化ゼラチン(例えば新田ゼラチン801)など使用することができる。
【0282】
PVAとしては、特開2000-171936号の段落番号0009〜0020に記載のものがあげられ、完全けん化物のPVA−105、部分けん化物のPVA−205,PVA−335、変性ポリビニルアルコールのMP−203(以上、クラレ(株)製の商品名)などが好ましく挙げられる。
【0283】
保護層(1層当たり)のポリビニルアルコール塗布量(支持体1m2当たり)としては0.3〜4.0g/m2が好ましく、0.3〜2.0g/m2がより好ましい。
【0284】
表面保護層(1層当たり)の全バインダー(水溶性ポリマー及びラテックスポリマーを含む)塗布量(支持体1m2当たり)としては0.3〜5.0g/m2が好ましく、0.3〜2.0g/m2がより好ましい。
【0285】
2)アンチハレーション層
本発明の熱現像感光材料においては、アンチハレーション層を画像形成層に対して露光光源から遠い側に設けることができる。アンチハレーション層については特開平11-65021号段落番号0123〜0124、特開平11-223898号、同9-230531号、同10-36695号、同10-104779号、同11-231457号、同11-352625号、同11-352626号等に記載されている。
【0286】
アンチハレーション層には、露光波長に吸収を有するアンチハレーション染料を含有する。露光波長が赤外域にある場合には赤外線吸収染料を用いればよく、その場合には可視域に吸収を有しない染料が好ましい。
【0287】
可視域に吸収を有する染料を用いてハレーション防止を行う場合には、画像形成後には染料の色が実質的に残らないようにすることが好ましく、熱現像の熱により消色する手段を用いることが好ましく、特に非感光性層に熱消色染料と塩基プレカーサーとを添加してアンチハレーション層として機能させることが好ましい。これらの技術については特開平11-231457号等に記載されている。
【0288】
消色染料の添加量は、染料の用途により決定する。一般には、目的とする波長で測定したときの光学濃度(吸光度)が0.1を越える量で使用する。光学濃度は、0.2〜2であることが好ましい。このような光学濃度を得るための染料の使用量は、一般に0.001〜1g/m2程度である。
【0289】
なお、このように染料を消色すると、熱現像後の光学濃度を0.1以下に低下させることができる。二種類以上の消色染料を、熱消色型記録材料や熱現像感光材料において併用してもよい。同様に、二種類以上の塩基プレカーサーを併用してもよい。
【0290】
このような消色染料と塩基プレカーサーを用いる熱消色においては、特開平11-352626号に記載のような塩基プレカーサーと混合すると融点を3℃以上降下させる物質(例えば、ジフェニルスルホン、4−クロロフェニル(フェニル)スルホン)を併用することが熱消色性等の点で好ましい。
【0291】
3)バック層
本発明に適用することのできるバック層については特開平11-65021号段落番号0128〜0130に記載されている。
【0292】
本発明においては、銀色調、画像の経時変化を改良する目的で300〜450nmに吸収極大を有する着色剤を添加することができる。このような着色剤は、特開昭62-210458号、同63-104046号、同63-103235号、同63-208846号、同63-306436号、同63-314535号、特開平01-61745号、特願平11-276751号などに記載されている。このような着色剤は、通常、0.1mg/m2〜1g/m2の範囲で添加され、添加する層としては画像形成層の反対側に設けられるバック層が好ましい。
【0293】
4)マット剤
本発明において、搬送性改良のためにマット剤を表面保護層、およびバック層に添加することが好ましい。マット剤については、特開平11-65021号段落番号0126〜0127に記載されている。
マット剤は感光材料1m2当たりの塗布量で示した場合、好ましくは1〜400mg/m2、より好ましくは5〜300mg/m2である。
【0294】
また、画像形成層面のマット度は、画像部に小さな白抜けが生じ、光漏れが発生するいわゆる星屑故障が生じなければいかようでも良いが、ベック平滑度が30秒以上2000秒以下が好ましく、特に40秒以上1500秒以下が好ましい。ベック平滑度は、日本工業規格(JIS)P8119「紙および板紙のベック試験器による平滑度試験方法」およびTAPPI標準法T479により容易に求めることができる。
本発明においてバック層のマット度としてはベック平滑度が1200秒以下10秒以上が好ましく、800秒以下20秒以上が好ましく、さらに好ましくは500秒以下40秒以上である。
【0295】
本発明において、マット剤は感光材料の最外表面層もしくは最外表面層として機能する層、あるいは外表面に近い層に含有されるのが好ましく、またいわゆる保護層として作用する層に含有されることが好ましい。
【0296】
5)ポリマーラテックス
本発明の表面保護層やバック層にポリマーラテックスを添加することができる。
このようなポリマーラテックスについては「合成樹脂エマルジョン(奥田平、稲垣寛編集、高分子刊行会発行(1978))」、「合成ラテックスの応用(杉村孝明、片岡靖男、鈴木聡一、笠原啓司編集、高分子刊行会発行(1993))」、「合成ラテックスの化学(室井宗一著、高分子刊行会発行(1970))」などにも記載され、具体的にはメチルメタクリレート(33.5質量%)/エチルアクリレート(50質量%)/メタクリル酸(16.5質量%)コポリマーのラテックス、メチルメタクリレート(47.5質量%)/ブタジエン(47.5質量%)/イタコン酸(5質量%)コポリマーのラテックス、エチルアクリレート/メタクリル酸のコポリマーのラテックス、メチルメタクリレート(58.9質量%)/2−エチルヘキシルアクリレート(25.4質量%)/スチレン(8.6質量%)/2−ヒドロキシエチルメタクリレート(5.1質量%)/アクリル酸(2.0質量%)コポリマーのラテックス、メチルメタクリレート(64.0質量%)/スチレン(9.0質量%)/ブチルアクリレート(20.0質量%)/2−ヒドロキシエチルメタクリレート(5.0質量%)/アクリル酸(2.0質量%)コポリマーのラテックスなどが挙げられる。
【0297】
ポリマーラテックスは、表面保護層、あるいはバック層の全バインダー(水溶性ポリマーおよびラテックスポリマーを含む)の10質量%〜90質量%用いるのが好ましく、特に20質量%〜80質量%が好ましい。
【0298】
6)膜面pH
本発明の熱現像感光材料は、熱現像処理前の膜面pHが7.0以下であることが好ましく、さらに好ましくは6.6以下である。その下限には特に制限はないが、3程度である。最も好ましいpH範囲は4〜6.2の範囲である。
【0299】
膜面pHの調節はフタル酸誘導体などの有機酸や硫酸などの不揮発性の酸、アンモニアなどの揮発性の塩基を用いることが、膜面pHを低減させるという観点から好ましい。特にアンモニアは揮発しやすく、塗布する工程や熱現像される前に除去できることから低膜面pHを達成する上で好ましい。
また、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム、水酸化リチウム等の不揮発性の塩基とアンモニアを併用することも好ましく用いられる。なお、膜面pHの測定方法は、特願平11-87297号明細書の段落番号0123に記載されている。
【0300】
7)硬膜剤
本発明の画像形成層、保護層、バック層など各層には硬膜剤を用いても良い。硬膜剤の例としてはT.H.James著"THE THEORY OF THE PHOTOGRAPHIC PROCESS FOURTH EDITION"(Macmillan Publishing Co., Inc.刊、1977年刊)77頁から87頁に記載の各方法があり、クロムみょうばん、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジンナトリウム塩、N,N−エチレンビス(ビニルスルフォンアセトアミド)、N,N−プロピレンビス(ビニルスルフォンアセトアミド)の他、同書78頁など記載の多価金属イオン、米国特許4,281,060号、特開平6-208193号などのポリイソシアネート類、米国特許4,791,042号などのエポキシ化合物類、特開昭62-89048号などのビニルスルホン系化合物類が好ましく用いられる。
【0301】
硬膜剤は溶液として添加され、この溶液の保護層塗布液中への添加時期は、塗布する180分前から直前、好ましくは60分前から10秒前であるが、混合方法及び混合条件については本発明の効果が十分に現れる限りにおいては特に制限はない。
【0302】
具体的な混合方法としては添加流量とコーターへの送液量から計算した平均滞留時間を所望の時間となるようにしたタンクでの混合する方法やN.Harnby、M.F.Edwards、A.W.Nienow著、高橋幸司訳"液体混合技術"(日刊工業新聞社刊、1989年)の第8章等に記載されているスタチックミキサーなどを使用する方法がある。
【0303】
8)界面活性剤
本発明に適用できる界面活性剤については特開平11-65021号段落番号0132に記載されている。
本発明ではフッ素系界面活性剤を使用することが好ましい。フッ素系界面活性剤の好ましい具体例は特開平10-197985号、特開2000-19680号、特開2000-214554号等に記載されている化合物が挙げられる。また、特開平9-281636号記載の高分子フッ素系界面活性剤も好ましく用いられる。本発明においては、特願2000-206560号記載のフッ素系界面活性剤の使用が特に好ましい。
【0304】
9)帯電防止剤
また、本発明では、公知の種々の金属酸化物あるいは導電性ポリマーなどを含む帯電防止層を有しても良い。帯電防止層は前述の下塗り層、バック層表面保護層などと兼ねても良く、また別途設けてもよい。帯電防止層については、特開平11-65021号段落番号0135、特開昭56-143430号、同56-143431号、同58-62646号、同56-120519号、特開平11-84573号の段落番号0040〜0051、米国特許第5,575,957号、特開平11-223898号の段落番号0078〜0084に記載の技術を適用することができる。
【0305】
10)支持体
透明支持体は二軸延伸時にフィルム中に残存する内部歪みを緩和させ、熱現像処理中に発生する熱収縮歪みをなくすために、130〜185℃の温度範囲で熱処理を施したポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートが好ましく用いられる。
【0306】
医療用の熱現像感光材料の場合、透明支持体は青色染料(例えば、特開平8-240877号実施例記載の染料-1)で着色されていてもよいし、無着色でもよい。
具体的な支持体の例は、特開平11-65021同号段落番号0134に記載されている。
【0307】
支持体には、特開平11-84574号の水溶性ポリエステル、同10-186565号のスチレンブタジエン共重合体、特開2000-39684号や特願平11-106881号段落番号0063〜0080の塩化ビニリデン共重合体などの下塗り技術を適用することが好ましい。
【0308】
11)その他の添加剤
熱現像感光材料には、さらに、酸化防止剤、安定化剤、可塑剤、紫外線吸収剤あるいは被覆助剤を添加してもよい。特開平11-65021号段落番号0133の記載の溶剤を添加しても良い。各種の添加剤は、感光性層あるいは非感光性層のいずれかに添加する。それらについてWO98/36322号、EP803764A1号、特開平10-186567号、同10-18568号等を参考にすることができる。
【0309】
12)塗布方式
本発明における熱現像感光材料はいかなる方法で塗布されても良い。具体的には、エクストルージョンコーティング、スライドコーティング、カーテンコーティング、浸漬コーティング、ナイフコーティング、フローコーティング、または米国特許第2,681,294号に記載の種類のホッパーを用いる押出コーティングを含む種々のコーティング操作が用いられ、Stephen F. Kistler、Petert M. Schweizer著"LIQUID FILM COATING"(CHAPMAN & HALL社刊、1997年)399頁から536頁記載のエクストルージョンコーティング、またはスライドコーティング好ましく用いられ、特に好ましくはスライドコーティングが用いられる。
【0310】
スライドコーティングに使用されるスライドコーターの形状の例は同書427頁のFigure 11b.1にある。また、所望により同書399頁から536頁記載の方法、米国特許第2,761,791号および英国特許第837,095号に記載の方法により2層またはそれ以上の層を同時に被覆することができる。
【0311】
本発明における画像形成層塗布液は、いわゆるチキソトロピー流体であることが好ましい。この技術については特開平11-52509号を参考にすることができる。
本発明における画像形成層塗布液は剪断速度0.1S-1における粘度は400mPa・s以上100,000mPa・s以下が好ましく、さらに好ましくは500mPa・s以上20,000mPa・s以下である。
また、剪断速度1000S-1においては1mPa・s以上200mPa・s以下が好まく、さらに好ましくは5mPa・s以上80mPa・s以下である。
【0312】
13)包装材料
本発明の熱現像感光材料は、使用される前の保存時に写真性能の変質を防ぐため、あるいはロール状態の製品形態の場合にはカールしたり巻き癖が付くのを防ぐために、酸素透過率および/または水分透過率の低い包装材料で密閉包装するのが好ましい。酸素透過率は、25℃で50ml/atm/m2・day以下であることが好ましく、より好ましくは10ml/atm/m2・day以下であり、さらに好ましくは1.0ml/atm/m2・day以下である。水分透過率は、10g/atm/m2・day以下であることが好ましく、より好ましくは5g/atm/m2・day以下であり、さらに好ましくは1g/atm/m2・day以下である。酸素透過率および/または水分透過率の低い包装材料の具体例としては、例えば特開平8-254793号、特開2000-206653号に記載されているものを利用することができる。
【0313】
14)その他の利用できる技術
本発明の熱現像感光材料に用いることのできる技術としては、EP803764A1号、EP883022A1号、WO98/36322号、特開昭56-62648号、同58-62644号、特開平9-43766、同9-281637、同9-297367号、同9-304869号、同9-311405号、同9-329865号、同10-10669号、同10-62899号、同10-69023号、同10-186568号、同10-90823号、同10-171063号、同10-186565号、同10-186567号、同10-186569号〜同10-186572号、同10-197974号、同10-197982号、同10-197983号、同10-197985号〜同10-197987号、同10-207001号、同10-207004号、同10-221807号、同10-282601号、同10-288823号、同10-288824号、同10-307365号、同10-312038号、同10-339934号、同11-7100号、同11-15105号、同11-24200号、同11-24201号、同11-30832号、同11-84574号、同11-65021号、同11-109547号、同11-125880号、同11-129629号、同11-133536号〜同11-133539号、同11-133542号、同11-133543号、同11-223898号、同11-352627号、同11-305377号、同11-305378号、同11-305384号、同11-305380号、同11-316435号、同11-327076号、同11-338096号、同11-338098号、同11-338099号、同11-343420号、特願2000-187298号、同2000-10229号、同2000-47345号、同2000-206642号、同2000-98530号、同2000-98531号、同2000-112059号、同2000-112060号、同2000-112104号、同2000-112064号、同2000-171936号も挙げられる。
【0314】
15)カラー画像形成
多色カラー熱現像感光材料の構成は、各色についてこれらの二層の組合せを含んでよく、また、米国特許第4,708,928号に記載されているように単一層内に全ての成分を含んでいてもよい。
多色カラー熱現像感光材料の場合、各画像形成層は、一般に、米国特許第4,460,681号に記載されているように、各画像形成層の間に官能性もしくは非官能性のバリアー層を使用することにより、互いに区別されて保持される。
【0315】
11.画像形成方法
1)露光
本発明の感光材料はいかなる方法で露光されても良いが、露光光源としてレーザー光が好ましい。本発明のようにヨウ化銀含有率の高いハロゲン化銀乳剤は、従来はその感度が低くて問題であった。しかし、レーザー光のような高照度で書き込むことで低感度の問題も解消され、しかもより少ないエネルギーで画像記録できることがわかった。このような強い光で短時間に書き込むことによって目標の感度を達成することができる。
【0316】
特に最高濃度(Dmax)を出すような露光量を与える場合、感光材料表面の好ましい光量は0.1W/mm2〜100W/mm2である。より好ましくは0.5W/mm2〜50W/mm2であり、最も好ましくは1W/mm2〜50W/mm2である。
【0317】
本発明によるレーザー光としては、ガスレーザー(Ar+,He−Ne,He−Cd)、YAGレーザー、色素レーザー、半導体レーザーなどが好ましい。また、半導体レーザーと第2高調波発生素子などを用いることもできる。好ましく用いられるレーザーは、熱現像感光材料の分光増感色素などの光吸収ピーク波長に対応して決まるが、赤〜赤外発光のHe−Neレーザー、赤色半導体レーザー、あるいは青〜緑発光のAr+,He−Ne,He−Cdレーザー、青色半導体レーザーである。 近年、特に、SHG(Second Harmonic Generator)素子と半導体レーザーを一体化したモジュールや青色半導体レーザーが開発されてきて、短波長領域のレーザー出力装置がクローズアップされてきた。青色半導体レーザーは、高精細の画像記録が可能であること、記録密度の増大、かつ長寿命で安定した出力が得られることから、今後需要が拡大していくことが期待されている。レーザー光のピーク波長は、300nm〜500nmも好ましく、特に400nm〜500nmが好ましい。
【0318】
レーザー光は、高周波重畳などの方法によって縦マルチに発振していることも好ましく用いられる。
【0319】
2)熱現像
本発明の熱現像感光材料はいかなる方法で現像されても良いが、通常イメージワイズに露光した熱現像感光材料を昇温して現像される。好ましい現像温度としては80〜250℃であり、さらに好ましくは100〜140℃である。
現像時間としては1〜60秒が好ましく、5〜30秒がさらに好ましく、5〜20秒が特に好ましい。
【0320】
熱現像の方式としてはプレートヒーター方式が好ましい。プレートヒーター方式による熱現像方式とは特開平11-133572号に記載の方法が好ましく、潜像を形成した熱現像感光材料を熱現像部にて加熱手段に接触させることにより可視像を得る熱現像装置であって、前記加熱手段がプレートヒータからなり、かつ前記プレートヒータの一方の面に沿って複数個の押えローラが対向配設され、前記押えローラと前記プレートヒータとの間に前記熱現像感光材料を通過させて熱現像を行うことを特徴とする熱現像装置である。プレートヒータを2〜6段に分けて先端部については1〜10℃程度温度を下げることが好ましい。
【0321】
このような方法は特開昭54-30032号にも記載されており、熱現像感光材料に含有している水分や有機溶媒を系外に除外させることができ、また、急激に熱現像感光材料が加熱されることでの熱現像感光材料の支持体形状の変化を押さえることもできる。
【0322】
3)システム
露光部および熱現像部を備えた医療用レーザーイメージャーとして富士メディカルドライイメージャー−FM-DPLやDRYPIX7000を挙げることができる。該システムは、Fuji Medical Review No.8,page39〜55に記載されており、それらの技術を利用することができる。また、DICOM規格に適合したネットワークシステムとして富士フィルムメディカル(株)が提案した「AD network」の中のレーザーイメージャー用の熱現像感光材料としても適用することができる。
【0323】
12.本発明の用途
本発明の高ヨウ化銀写真乳剤を用いた熱現像感光材料は、銀画像による黒白画像を形成し、医療診断用の熱現像感光材料、工業写真用熱現像感光材料、印刷用熱現像感光材料、COM用の熱現像感光材料として使用されることが好ましい。
【0324】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0325】
実施例1
1−1.PET支持体の作成、および下塗り
1−1.製膜
【0326】
テレフタル酸とエチレングリコ−ルを用い、常法に従い固有粘度IV=0.66(フェノ−ル/テトラクロルエタン=6/4(質量比)中25℃で測定)のPETを得た。これをペレット化した後130℃で4時間乾燥し、300℃で溶融し下記構造の染料BBを0.04質量%含有させた。その後T型ダイから押し出して急冷した。
【0327】
【化25】
Figure 0004083039
【0328】
これを、周速の異なるロ−ルを用い3.3倍に縦延伸、ついでテンタ−で4.5倍に横延伸を実施した。この時の温度はそれぞれ、110℃、130℃であった。この後、240℃で20秒間熱固定後これと同じ温度で横方向に4%緩和した。この後テンタ−のチャック部をスリットした後、両端にナ−ル加工を行い、4kg/cm2で巻き取り、厚み175μmのロ−ルを得た。
【0329】
1−2.表面コロナ放電処理
ピラー社製ソリッドステートコロナ放電処理機6KVAモデルを用い、支持体の両面を室温下において20m/分で処理した。この時の電流、電圧の読み取り値から、支持体には0.375kV・A・分/m2の処理がなされていることがわかった。この時の処理周波数は9.6kHz、電極と誘電体ロ−ルのギャップクリアランスは1.6mmであった。
【0330】
1−3.下塗り支持体の作製
1)下塗層塗布液の作成
処方▲1▼(感光層側下塗り層用)
高松油脂(株)製ペスレジンA-520(30質量%溶液) 59g
ポリエチレングリコールモノノニルフェニルエーテル
(平均エチレンオキシド数=8.5)10質量%溶液 5.4g
綜研化学(株)製 MP-1000(ポリマー微粒子、平均粒径0.4μm)
0.91g
蒸留水 935ml
【0331】
処方▲2▼(バック面第1層用)
スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス 158g
(固形分40質量%、スチレン/ブタジエン重量比=68/32)
2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−S−トリアジンナトリウム塩
8質量%水溶液 20g
ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウムの1質量%水溶液 10ml
蒸留水 854ml
【0332】
処方▲3▼(バック面側第2層用)
SnO2/SbO(9/1質量比、平均粒径0.038μm、17質量%分散物) 84g
ゼラチン(10質量%水溶液) 89.2g
信越化学(株)製 メトローズTC-5(2質量%水溶液) 8.6g
綜研化学(株)製 MP-1000 0.01g
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの1質量%水溶液 10ml
NaOH(1質量%) 6ml
プロキセル(ICI社製) 1ml
蒸留水 805ml
【0333】
2)下塗り
上記厚さ175μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート支持体の両面それぞれに、上記コロナ放電処理を施した後、片面(感光性層面)に上記下塗り塗布液処方▲1▼をワイヤーバーでウエット塗布量が6.6ml/m2(片面当たり)になるように塗布して180℃で5分間乾燥し、ついでこの裏面(バック面)に上記下塗り塗布液処方▲2▼をワイヤーバーでウエット塗布量が5.7ml/m2になるように塗布して180℃で5分間乾燥し、更に裏面(バック面)に上記下塗り塗布液処方▲3▼をワイヤーバーでウエット塗布量が7.7ml/m2になるように塗布して180℃で6分間乾燥して下塗り支持体を作製した。
【0334】
2.バック層
2−1.バック層塗布液の調製
1)塩基プレカーサーの固体微粒子分散液(a)の調製
塩基プレカーサー化合物−1を64g、デモールN(商品名、花王(株))10g、ジフェニルスルホン28g、および蒸留水220mlを加えて混合し、混合液を1/4Gサンドグラインダーミル(アイメックス(株)製)にてビーズ分散し、平均粒子径0.2μmの塩基プレカーサー化合物の固体微粒子分散物(a)を得た。
【0335】
2)染料固体微粒子分散液(a)の調製
シアニン染料化合物−1を9.6g、p−ドデシルスルホン酸ナトリウム5.8g、および蒸留水305mlを混合して、混合液を1/4Gサンドグラインダーミル(アイメックス(株)製)にてビーズ分散し、平均粒子径0.2μmの染料固体微粒子分散物(a)を得た。
【0336】
3)ハレーション防止層塗布液の調製
ゼラチン17g、ポリアクリルアミド9.6g、上記の塩基プレカーサーの固体微粒子分散液(a)70g、上記の染料固体微粒子分散液(a)を56g、単分散ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒子サイズ8μm、粒径標準偏差0.4)1.5g、ベンゾイソチアゾリノン0.03g、ポリエチレンスルホン酸ナトリウム2.2g、青色染料化合物−1を0.2g、黄色染料化合物−1を3.9g、および水844mlを混合して、ハレーション防止層塗布液を調製した。
【0337】
4)バック面保護層塗布液の調製
容器を40℃に保温し、ゼラチン50g、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム0.2g、N、N−エチレンビス(ビニルスルホンアセトアミド)2.4g、t−オクチルフェノキシエトキシエタンスルホン酸ナトリウム1g、ベンゾイソチアゾリノン30mg、フッ素系界面活性剤(F−1)37mg、フッ素系界面活性剤(F−2)0.15g、フッ素系界面活性剤(F−3)64mg、フッ素系界面活性剤(F−4)32mg、アクリル酸/エチルアクリレート共重合体(共重合重量比5/95)8.8g、エアロゾールOT(アメリカンサイアナミド社製)0.6g、流動パラフィン乳化物を流動パラフィンとして1.8g、水を950ml混合してバック面保護層塗布液とした。
【0338】
2−2.バック層の塗布
上記下塗り支持体のバック面側に、ハレーション防止層塗布液を固体微粒子染料の塗布量が0.04gとなるように、またバック面保護層塗布液をゼラチン塗布量が1.7g/m2となるように同時重層塗布し、乾燥し、バック層を作成した。
【0339】
3.画像形成層、中間層、および表面保護層
3−1.塗布用材料の準備
1)ハロゲン化銀乳剤
【0340】
(ハロゲン化銀乳剤の調製)
蒸留水1420mlに1質量%沃化カリウム溶液4.3mlを加え、さら0.5mol/L濃度の硫酸を3.5ml、フタル化ゼラチン36.7gを添加した液をステンレス製反応壺中で攪拌しながら、35℃に液温を保ち、硝酸銀22.22gに蒸留水を195.6mlに希釈した溶液Aとヨウ化カリウム21.8gを蒸留水にて容量219mlに希釈した溶液Bを一定流量で9分間かけて全量添加した。その後、3.5質量%の過酸化水素水溶液を10ml添加し、さらにベンゾイミダゾールの10質量%水溶液を10.8ml添加した。さらに、硝酸銀51.86gに蒸留水を加えて317.5mlに希釈した溶液Cと沃化カリウム60gを蒸留水にて容量600mlに希釈した溶液Dを、溶液Cは一定流量で120分間かけて全量添加し、溶液DはpAgを8.1に維持しながらコントロールドダブルジェット法で添加した。
【0341】
銀1モル当たり1×10-4モルになるよう六塩化イリジウム(III)酸カリウム塩を溶液Cおよび溶液Dを添加しはじめてから10分後に全量添加した。また、溶液Cの添加終了の5秒後に六シアン化鉄(II)カリウム水溶液を銀1モル当たり3×10-4モル全量添加した。0.5mol/L濃度の硫酸を用いてpHを3.8に調整し、攪拌を止め、沈降/脱塩/水洗工程をおこなった。1mol/L濃度の水酸化ナトリウムを用いてpH5.9に調整し、pAg8.0のハロゲン化銀分散物を作成した。調製できたハロゲン化銀乳剤中の粒子は、平均球相当径0.032μm、球相当径の変動係数17%の純沃化銀粒子であった。粒子サイズ等は、電子顕微鏡を用い1000個の粒子の平均から求めた。
【0342】
上記ハロゲン化銀分散物を攪拌しながら38℃に維持して、0.34質量%の1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オンのメタノール溶液を5ml加え、40分後にpAg5.0に調製し、分光増感色素S−6を銀1モル当たり3.2×10-3モル加え、1分後に47℃に昇温した。昇温の20分後にベンゼンチオスルフォン酸ナトリウムをメタノール溶液で銀1モルに対して7.6×10-5モル加え、そのあと5分後にテルル増感剤(ビス(N―フェニル−N―メチルカルバモイル)テルリド)を5.1×10-4モル/モル銀を加えて84分間熟成した。乳剤のpAgを7.5に調製したあと、N,N'-ジヒドロキシ-N"、N"-ジエチルメラミンの0.8質量%メタノール溶液1.3mlを加え、さらに4分後に、5-メチル-2-メルカプトベンヅイミダゾールをメタノール溶液で銀1モル当たり4.8×10-3モル及び1-フェニル-2-ヘプチル-5-メルカプト-1,3,4-トリアゾールをメタノール溶液で銀1モルに対して5.4×10-3モル添加して、ハロゲン化銀乳剤を作成した。
【0343】
この乳剤を小分けして表1に示した化合物を添加し、ハロゲン化銀乳剤1から5を調製した。化合物I-35、I-37、およびFED-29は、それぞれメタノ−ル溶液にして、表1に記載の添加量になるように添加した。
【0344】
(塗布液添加用乳剤の調製)
上記の各ハロゲン化銀乳剤を溶解し、1−(3−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾールを銀1モル当たり5×10-3モル添加した。さらに塗布液用混合乳剤1kgあたりハロゲン化銀の含有量が銀として19.6gとなるように加水した。
【0345】
2)脂肪酸銀分散物の調製
ヘンケル社製ベヘン酸(製品名Edenor C22-85R)87.6kg、蒸留水423L、5mol/L濃度のNaOH水溶液49.2L、tert-ブタノール120Lを混合し、75℃にて1時間攪拌し反応させ、ベヘン酸ナトリウム溶液を得た。別に、硝酸銀40.4kgの水溶液206.2L(pH4.0)を用意し、10℃にて保温した。635Lの蒸留水と30Lのtert−ブタノールを入れた反応容器を30℃に保温し、十分に撹拌しながら先のベヘン酸ナトリウム溶液の全量と硝酸銀水溶液の全量を流量一定でそれぞれ93分15秒と90分かけて添加した。このとき、硝酸銀水溶液添加開始後11分間は硝酸銀水溶液のみが添加されるようにし、そのあとベヘン酸ナトリウム溶液を添加開始し、硝酸銀水溶液の添加終了後14分15秒間はベヘン酸ナトリウム溶液のみが添加されるようにした。このとき、反応容器内の温度は30℃とし、液温度が一定になるように外温コントロールした。また、ベヘン酸ナトリウム溶液の添加系の配管は、2重管の外側に温水を循環させる事により保温し、添加ノズル先端の出口の液温度が75℃になるよう調製した。また、硝酸銀水溶液の添加系の配管は、2重管の外側に冷水を循環させることにより保温した。ベヘン酸ナトリウム溶液の添加位置と硝酸銀水溶液の添加位置は撹拌軸を中心として対称的な配置とし、また反応液に接触しないような高さに調製した。
【0346】
ベヘン酸ナトリウム溶液を添加終了後、そのままの温度で20分間撹拌放置し、30分かけて35℃に昇温し、その後210分熟成を行った。熟成終了後直ちに、遠心濾過で固形分を濾別し、固形分を濾過水の伝導度が30μS/cmになるまで水洗した。こうして脂肪酸銀塩を得た。得られた固形分は、乾燥させないでウエットケーキとして保管した。
【0347】
得られたベヘン酸銀粒子の形態を電子顕微鏡撮影により評価したところ、平均値でa=0.14μm、b=0.4μm、c=0.6μm、平均アスペクト比5.2、平均球相当径0.52μm、球相当径の変動係数15%のりん片状の結晶であった。(a,b,cは本文の規定)
【0348】
乾燥固形分260kg相当のウエットケーキに対し、ポリビニルアルコール(商品名:PVA-217、クラレ(株))19.3kgおよび水を添加し、全体量を1000kgとしてからディゾルバー羽根でスラリー化し、更にパイプラインミキサー(みづほ工業製:PM−10型)で予備分散した。
【0349】
次に予備分散済みの原液を分散機(商品名:マイクロフルイダイザーM−610、マイクロフルイデックス・インターナショナル・コーポレーション製、Z型インタラクションチャンバー使用)の圧力を1260kg/cm2に調節して、三回処理し、ベヘン酸銀分散物を得た。冷却操作は蛇管式熱交換器をインタラクションチャンバーの前後に各々装着し、冷媒の温度を調節することで18℃の分散温度に設定した。
【0350】
3)還元剤分散物(a)の調製
還元剤錯体−1(2,2'-メチレンビス-(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)とトリフェニルホスフィンオキシドの1:1錯体)10kg、トリフェニルホスフィンオキシド0.12kgおよび変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の10質量%水溶液16kgに、水7.2kgを添加して、よく混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて4時間30分分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて還元剤錯体の濃度が25質量%になるように調製し、還元剤分散物(a)を得た。こうして得た分散物に含まれる還元剤錯体粒子はメジアン径0.46μm、最大粒子径1.6μm以下であった。得られた還元剤錯体分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0351】
4)有機ポリハロゲン化合物分散物の調製
(有機ポリハロゲン化合物分散物(a)の調製)
有機ポリハロゲン化合物−1(トリブロモメタンスルホニルベンゼン)10kgと変性ポリビニルアルコールMP203の20質量%水溶液10kgと、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液0.4kgと、水14kgを添加して、よく混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミルUVM−2にて5時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて有機ポリハロゲン化合物の濃度が26質量%になるように調製し、有機ポリハロゲン化合物分散物(a)を得た。こうして得たポリハロゲン化合物分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子はメジアン径0.41μm、最大粒子径2.0μm以下であった。得られた有機ポリハロゲン化合物分散物は孔径10.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0352】
(有機ポリハロゲン化合物分散物(b)の調製)
有紀ポリハロゲン化合物−2(N−ブチル−3−トリブロモメタンスルホニルベンズアミド)10kgと変性ポリビニルアルコールMP203の10質量%水溶液20kgと、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液0.4kgと、水8kgを添加して、よく混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミルUVM−2にて5時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて有機ポリハロゲン化合物の濃度が25質量%になるように調製した。この分散液を40℃で5時間加温し、有機ポリハロゲン化合物−3分散物を得た。こうして得たポリハロゲン化合物分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子はメジアン径0.36μm、最大粒子径1.5μm以下であった。得られた有機ポリハロゲン化合物分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0353】
5)フタラジン化合物−1溶液の調製
8kgの変性ポリビニルアルコールMP203を水174.57kgに溶解し、次いでトリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液3.15kgとフタラジン化合物−1(6-イソプロピルフタラジン)の70質量%水溶液14.28kgを添加し、フタラジン化合物−1の5質量%溶液を調製した。
【0354】
6)メルカプト化合物−1水溶液の調製
メルカプト化合物−1(1−(3−スルホフェニル)−5−メルカプトテトラゾールナトリウム塩)7gを水993gに溶解し、0.7質量%の水溶液とした。
【0355】
7)顔料−1分散物の調製
C.I.Pigment Blue 60を64gと花王(株)製デモールNを6.4gに水250gを添加しよく混合してスラリーとした。平均直径0.5mmのジルコニアビーズ800gを用意してスラリーと一緒にベッセルに入れ、分散機(1/4Gサンドグラインダーミル:アイメックス(株)製)にて25時間分散した後、ベッセルより取出し、水で希釈して顔料濃度5質量%の顔料−1分散物を得た。こうして得た顔料分散物に含まれる顔料粒子は平均粒径0.21μmであった。
【0356】
8)SBRラテックス液の調製
Tg=23℃のSBRラテックスは以下により調整した。
重合開始剤として過硫酸アンモニウム、乳化剤としてアニオン界面活性剤を使用し、スチレン70.5質量部、ブタジエン26.5質量部およびアクリル酸3質量部を乳化重合させた後、80℃で8時間エージングを行った。その後40℃まで冷却し、アンモニア水によりpH7.0とし、さらに三洋化成(株)製サンデットBLを0.22質量%になるように添加した。次に5質量%水酸化ナトリウム水溶液を添加しpH8.3とし、さらにアンモニア水によりpH8.4になるように調整した。このとき使用したNa+イオンとNH4 +イオンのモル比は1:2.3であった。さらに、この液1kg対してベンゾイソチアゾリンノンナトリウム塩7質量%水溶液を0.15ml添加しSBRラテックス液を調製した。
【0357】
(SBRラテックス:-St(70.5)-Bu(26.5)-AA(3)-のラテックス)
Tg=23℃平均粒径0.1μm、濃度43質量%、25℃60%RHにおける平衡含水率0.6質量%、イオン伝導度4.2mS/cm(イオン伝導度の測定は東亜電波工業(株)製伝導度計CM-30S使用し、ラテックス原液(43質量%)を25℃にて測定)、pH8.4。
Tgの異なるSBRラテックスはスチレン、ブタジエンの比率を適宜変更し、同様の方法により調整した。
【0358】
3−2.塗布液の調製
1)画像形成層塗布液の調製
上記で得た脂肪酸銀分散物1000g、水104ml、顔料−1分散物30g、有機ポリハロゲン化合分散物(a)6.3g、有機ポリハロゲン化合物分散物(b)20.7g、フタラジン化合物−1溶液173g、SBRラテックス(Tg:23℃)液1082g、還元剤分散物(a)258g、メルカプト化合物−1溶液9gを順次添加し、塗布直前に各ハロゲン化銀混合乳剤のハロゲン化銀が有機酸銀に対して3.0モル%になるように添加しよく混合した画像形成層塗布液をそのままコーティングダイへ送液し、塗布した。
【0359】
2)中間層塗布液の調製
ポリビニルアルコールPVA-205(クラレ(株)製)の10質量%水溶液772g、顔料−1分散物5.3g、メチルメタクリレート/スチレン/ブチルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(共重合質量比64/9/20/5/2)ラテックス27.5質量%液226gにエアロゾールOTの5質量%水溶液を2ml、フタル酸二アンモニウム塩の20質量%水溶液を10.5ml、総量880gになるように水を加え、pHが7.5になるようにNaOHで調整して中間層塗布液とし、10ml/m2になるようにコーティングダイへ送液した。
塗布液の粘度はB型粘度計40℃(No.1ローター、60rpm)で65[mPa・s]であった。
【0360】
3)表面保護層第1層塗布液の調製
イナートゼラチン64gを水に溶解し、メチルメタクリレート/スチレン/ブチルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(共重合質量比64/9/20/5/2)ラテックス27.5質量%液80g、フタル酸の10質量%メタノール溶液を23ml、4-メチルフタル酸の10質量%水溶液23ml、0.5mol/L濃度の硫酸を28ml、エアロゾールOTの5質量%水溶液を5ml、フェノキシエタノール0.5g、ベンゾイソチアゾリノン0.1gを加え、総量750gになるように水を加えて塗布液とし、4質量%のクロムみょうばん26mlを塗布直前にスタチックミキサーで混合したものを18.6ml/m2になるようにコーティングダイへ送液した。
塗布液の粘度はB型粘度計40℃(No.1ローター、60rpm)で20[mPa・s]であった。
【0361】
4)表面保護層第2層塗布液の調製
イナートゼラチン80gを水に溶解し、メチルメタクリレート/スチレン/ブチルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(共重合質量比64/9/20/5/2)ラテックス27.5質量%液102g、フッ素系界面活性剤(F−1)の5質量%溶液を3.2ml、フッ素系界面活性剤(F−2)の2質量%水溶液を32ml、エアロゾールOTの5質量%溶液を23ml、ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒径0.7μm)4g、ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒径4.5μm)21g、4-メチルフタル酸1.6g、フタル酸4.8g、0.5mol/L濃度の硫酸44ml、ベンゾイソチアゾリノン10mgに総量650gとなるよう水を添加して、4質量%のクロムみょうばんと0.67質量%のフタル酸を含有する水溶液445mlを塗布直前にスタチックミキサーで混合したものを表面保護層第2層塗布液とし、8.3ml/m2になるようにコーティングダイへ送液した。
塗布液の粘度はB型粘度計40℃(No.1ローター,60rpm)で19[mPa・s]であった。
【0362】
3−3.熱現像感光材料の作成
【0363】
バック面と反対の面に、順に、画像形成層、中間層、表面保護層第1層、表面保護層第2層の順番でスライドビード塗布方式にて同時重層塗布し、熱現像感光材料の試料を作成した。このとき、画像形成層と中間層の塗布液は35℃に、表面保護層第1層は36℃に、表面保護層第2層は37℃に温度調整した。
画像形成層の各化合物の塗布量(g/m2)は以下の通りである。
【0364】
ベヘン酸銀 6.24
顔料(C.I.Pigment Blue 60) 0.036
ポリハロゲン化合物−1 0.04
ポリハロゲン化合物−2 0.12
フタラジン化合物−1 0.21
SBRラテックス 11.1
還元剤錯体−1 1.54
メルカプト化合物−1 0.002
ハロゲン化銀(Agとして) 0.045
【0365】
塗布乾燥条件は以下のとおりである。
塗布はスピード160m/minで行い、コーティングダイ先端と支持体との間隙を0.10〜0.30mmとし、減圧室の圧力を大気圧に対して196〜882Pa低く設定した。支持体は塗布前にイオン風にて除電した。
引き続くチリングゾーンにて、乾球温度10〜20℃の風にて塗布液を冷却した後、無接触型搬送して、つるまき式無接触型乾燥装置にて、乾球温度23〜45℃、湿球温度15〜21℃の乾燥風で乾燥させた。このようにして塗布試料21から27を得た。
乾燥後、25℃で湿度40〜60%RHで調湿した後、膜面を70〜90℃になるように加熱した。加熱後、膜面を25℃まで冷却した。
【0366】
作製された熱現像感光材料のマット度はベック平滑度で画像形成層面側が550秒、バック面が130秒であった。また、画像形成層面側の膜面のpHを測定したところ6.0であった。
【0367】
以下に本発明の実施例で用いた化合物の化学構造を示す。
【0368】
【化26】
Figure 0004083039
【0369】
【化27】
Figure 0004083039
【0370】
【化28】
Figure 0004083039
【0371】
4.写真性能の評価
(準備)
得られた試料は半切サイズに切断し、25℃50%RHの環境下で以下の包装材料に包装し、2週間常温下で保管した。
(包装材料)
PET10μm/PE12μm/アルミ箔9μm/Ny15μm/カーボン3質量%を含むポリエチレン50μm、酸素透過率:0.02ml/atm・m2・25℃・day、水分透過率:0.10g/atm・m2・25℃・day。
【0372】
上記の感光材料を以下のように評価を行った。
(蛍光発光強度とその評価)
日立製作所製850型分光蛍光光度計にて、その試料セット部に液体窒素を入れ、77°Kに保ち、感光材料試料をセットし、励起光355nmで、蛍光検出側に400nm以長を透過させるシャープカットフィルターを装着して390nm〜650nmの波長範囲を60nm/分の走引速度で測定した。400nm〜600nmの蛍光強度の積分強度を発光強度とし、表1には試料1−1の発光強度を100とした相対値で表した。
【0373】
(感光材料の露光と現像)
感光材料は以下の様にして露光及び現像処理を行った。
露光は高出力のキセノン感光計を用い、光学ウエッジを通して10-3秒間露光した。その際、固有感度を評価するためには、東芝ガラス社製V−40ガラスフィルターを通して、分光感度評価するためには、富士写真フイルム社製シャープカットゼラチンフィルターSC50を通して露光した。
【0374】
現像は、富士メディカルドライレーザーイメージャーFM−DPLの熱現像部を用いて、112℃−119℃−121℃−121℃に設定した4枚のパネルヒーターで、合計24秒間の熱現像を行った。
【0375】
(試料の評価)
得られた画像を富士写真フイルム社製FW−3自記濃度計で濃度測定し露光量の対数に対する濃度の特性曲線を作成した。未露光の部分の光学濃度を被り(Dmin)とし、感度はDmin+2.0の光学濃度が得られる露光量の逆数を感度とし、試料1−1の感度を100とし相対値で表した。値が大きいほど感度が高いことを示す。
【0376】
【表1】
Figure 0004083039
【0377】
この結果から明らかなように、分光増感を施したヨウ化銀に対して、吸着可能な基と還元性基を同時に有する化合物またはFED化合物を、並びにその両者を添加することにより、蛍光発光強度を低減でき、固有感度の増加とそれ以上の分光感度の増加が図れた。かかる本発明の化合物の添加による顕著な感度の上昇は、多くの場合、Dminの増加を伴うこともなく、予想外の好ましい結果であった。
【0378】
実施例2
実施例1のハロゲン化銀乳剤1とほぼ同様にしてヨウ化銀乳剤を調製した。但し、得られたヨウ化銀粒子のサイズは平均球相当径29nmであり、分光増感剤はS−6の代わりにpAg4.0でS−4を8.1ミリモル/モル銀用い、テルル増感剤の代わりに、セレン増感剤(ペンタフルオルフェニルジフェニルホスフィンセレニド)を5.1×10-4モル/モル銀を用いてN,N'−ジヒドロキシ− N"、N"−ジエチルメラミンのメタノール溶液を添加する10分前に、アミノ置換スチリルアゾール誘導体化合物II−3を2.0ミリモル/モル銀添加して調製した。この乳剤を小分けにして表2に示した化合物を添加した後、実施例1と同様にして、塗布試料2−1から2−9を調製した。その後、実施例1と同様に処理を行ったが、露光と現像処理後の評価は下記のように行った。得られた結果は表2にまとめたが、相対発光強度並びに相対感度は試料2−1をそれぞれ100としたときの相対値で示した。
【0379】
(感光材料試料の露光)
露光は富士メディカルドライレーザーイメージャーFM−DPLを改造して行った。即ち、FM−DPL搭載の最大60mW(IIIB)出力の660nm半導体レーザーを100μm×100μmに絞って感光材料試料を照射した。その際、レーザーの照射光量を段階的に変化させて露光を行った。
【0380】
(感度と被り(Dmin)の評価)
得られた画像をMacbeth濃度計で濃度測定し、露光量の対数に対する濃度の特性曲線を作成した。未露光部分の光学濃度を被り(Dmin)とし、Dmin+1.0の光学濃度から得られる露光量の逆数を感度とした。従って、値が大きいほど高いことを示す。
【0381】
【表2】
Figure 0004083039
【0382】
アミノ置換スチリルアゾール誘導体は、分光増感色素、特にシアニン色素と組合わせて使用すると、高ヨウ化銀乳剤での分光感度の増大を図ることができるが、表2から明らかなように、本発明の化合物を更に組合わせ使用することにより、発光強度の減少が得られ、予想外に顕著な感度の上昇が得られ、被りの増加は軽微であった。
【0383】
実施例3
実施例2で調製した試料2−1から2−9を室温で3ヶ月保管した後に、実施例2と全く同様の露光、現像処理をした。一方、その期間、−35℃の冷凍庫中に保存しておいた試料も同時に露光、現像処理した。各試料について、冷凍庫中に保存していた試料の感度を100とした時の室温3ヶ月保存の試料の感度の相対値と、冷凍庫中に保存しておいた各試料の被りからの室温3ヶ月保存試料の被り濃度の増減を表3にまとめた。
【0384】
【表3】
Figure 0004083039
【0385】
表3から明らかなように、ヨウ化銀乳剤を用いた場合、本発明の化合物により得られた顕著な感度上昇は、室温下で長期保存していても損なわれず、被りの増加もほとんどなかった。
【0386】
実施例4
実施例2において、熱現像機の搬送速度を変更して熱現像時間14秒で現像処理を行った結果、実施例2と同様に本発明の化合物により好ましい感度増加が得られた。
【0387】
実施例5
実施例1での試料1−1〜1−5、及び実施例2−1〜2−9を熱現像して得られた画像サンプルを、1000ルクスの蛍光灯下に3日間曝光した結果、いずれのサンプルでも全くプリントアウトが起こらなかった。即ち、本発明の開示技術による顕著な感度増加が達成されて、かつ、ヨウ化銀乳剤を用いたことによる高い光堅牢性はいずれのサンプルも維持された。
【0388】
【発明の効果】
本発明により、高い光堅牢性を保ち、且つ高感度で低いDminと高い保存安定性を持った熱現像感光材料を提供することができる。

Claims (8)

  1. 支持体上に少なくとも非感光性有機銀塩、感光性ハロゲン化銀、還元剤およびバインダーを含む画像形成層を有する熱現像感光材料であって、1)該ハロゲン化銀の沃化銀含有率が80モル%以上100モル%以下であり、2)該ハロゲン化銀がポーラログラフ半波還元電位が−1.1 V vs SCE より卑で且つ Log Pが0.7以上であるシアニン色素と、ポーラログラフ半波酸化電位が、該シアニン色素のポーラログラフ半波酸化電位よりも0.2 V vs SCE 以上卑であるアミノ置換スチリルアゾール誘導体化合物とにより分光増感を施され、3)下記一般式(I)で表される化合物、その前駆体、および下記のタイプ1〜4より選ばれる FED 化合物よりなる群より選ばれ、77°Kにおける高沃化銀含有相に由来する発光強度を10%以上低減させることが出来る物質を含有することを特徴とする熱現像感光材料
    一般式(I)A1− (W )n 1−B1
    (式中、A1は、ハロゲン化銀に吸着可能な基を含む原子群を表し、W1は2価の連結基を表し、n1は0または1を表し、B1は還元基を表す。);
    (タイプ1) 1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合開裂反応を伴って、さらに2電子以上の電子を放出し得る化合物;
    (タイプ2) 1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合開裂反応を伴って、さらにもう1電子を放出し得る化合物で、かつ同じ分子内にハロゲン化銀への吸着性基を2つ以上有する化合物;
    (タイプ3) 1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合形成過程を経た後に、さらに1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物;
    (タイプ4) 1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く分子内の環開裂反応を経た後に、さらに1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物
  2. 前記一般式(I)の吸着基が、メルカプト基、チオン基、およびイミノ銀を生成する基よりなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項に記載の熱現像感光材料。
  3. 前記一般式(I)の吸着基が、メルカプト基である請求項または請求項に記載の熱現像感光材料。
  4. 前記一般式(I)の還元基が、ホルミル基、アミノ基、3重結合基、アルキルまたはアリールメルカプト基、ヒドロキシアミン含有基、レダクトン類含有基、フェノール類含有基、ナフトール類含有基、フェニレンジアミン類含有基、および1−フェニル−3−ピラゾリドン類含有基よりなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の熱現像感光材料。
  5. 前記一般式(I)の前駆体となる化合物が、チアゾリウム類、チアゾリン類、チアゾリジン類、およびジスルフィド類を含有する化合物よりなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項に記載の熱現像感光材料。
  6. 前記感光性ハロゲン化銀の平均粒子サイズが5nm〜55nmである請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の熱現像感光材料。
  7. 前記感光性ハロゲン化銀を前記非感光性有機銀塩1モルに対して、1モル%〜7モル%含有する請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の熱現像感光材料。
  8. レーザー光で露光されることを特徴とする請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の熱現像感光材料。
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