JP4066542B2 - タンク屋根の浮上時における姿勢計測装置 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、タンク屋根の浮上時における姿勢計測装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図4に示す如く、例えば地下式のタンク1を建設する場合には、タンク側壁2とタンク底部3とを成す躯体4を地中に完成させた後に、該躯体4のタンク底部3上でドーム型のタンク屋根5を組み立て、次いで、該タンク屋根5の外周部下面に仮屋根5’を環状に仮設し、該仮屋根5’の外周部全周にシール部材6を装着して前記タンク側壁2に対し摺動自在に当接せしめ、然る後に、タンク屋根5の下側に図示しない送風機により加圧空気を導入し、その空気圧によりタンク屋根5を浮上させて前記タンク側壁2の上端に連結するというエアレイジング工法を採用することが多い。
【0003】
斯かるエアレイジング工法を採用するに際しては、タンク屋根5を水平状態に保持して良好に浮上させることが重要であり、従来においては、タンク屋根5の上面における半径方向にスナッチブロック7、中間ローラ8、中央ローラ9を複数組仮設し、タンク側壁2の上端付近に一方の端部を固定した複数本のバランスワイヤ10を前記スナッチブロック7、中間ローラ8、中央ローラ9に順次掛け回した上でタンク屋根5の中央を下方へ貫通させてタンク底部3の中央に他方の端部を固定し、このように張り渡した各バランスワイヤ10によって、浮上するタンク屋根5の姿勢を極力水平に維持するようにしている。
【0004】
ただし、このようにバランスワイヤ10を用いてタンク屋根5の姿勢を維持するようにしても、タンク屋根5には各種の付属品や内部配管等が不均等な配置で装着されるので、浮上するタンク屋根5がアンバランス状態となって傾斜してしまうことがあり、このようなアンバランス状態を解消する為に、前記タンク屋根5の必要位置に図示しないバランスウエイトを仮設材として取り付けてバランス調整を行うようにしている。
【0005】
そして、タンク屋根5の本浮上を開始してしまうと、その本浮上を途中で中止することが困難である為、本浮上を行う前に十分にタンク屋根5のバランス調整を行っておく必要があり、より具体的には、タンク屋根5の仮浮上を何度か繰り返してバランスウエイトの取り付け位置を微調整しておく必要がある。
【0006】
バランスウエイトの取り付け位置を微調整するにあたっては、仮浮上時のタンク屋根5の浮上姿勢を把握する目的で、各バランスワイヤ10の一方の端部側に張力計11を装備し、該各張力計11により計測されるバランスワイヤ10の夫々の張力の変化を監視(各バランスワイヤに最初に付与した張力を維持しているか否かを監視:張力が緩む箇所は他の箇所より先行して浮上している)すると共に、タンク側壁2の上端付近における円周方向複数箇所に高さ計測器12を配設し、該各高さ計測器12からワイヤロープ13を介し垂下させた錘14をタンク屋根5の外周部複数箇所に着座させ、前記ワイヤロープ13を弛まないように巻き取りながら、その巻き出し長さを計測することでタンク屋根5の外周部複数箇所の浮上高さのばらつきを監視し、これらの各張力計11及び各高さ計測器12により計測される計測項目からタンク屋根5の浮上姿勢を把握するようにしている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述した如きタンク屋根5の浮上姿勢を計測する従来手段は、過去に建設が盛んであった通常の地上式タンクに適用していた技術を踏襲したものにすぎず、この種の地上式タンクの場合では、タンク屋根の剛性が比較的高く且つ重量バランスも良かった為に計測項目が少なくて済んだが、近年において建設が盛んになってきている図示の如き地下式のタンク1(側壁周囲をプレストレスコンクリート製の外壁で被われた地上式のPCタンクの場合も同様)等の場合には、ノズル類がタンク屋根に多く付属されることにより偏載荷重が大きくなってアンバランスに伴う傾斜が起こり易くなり、特にタンク屋根5の剛性が低い場合には、前記ノズル類等の付属品を取り付ける為の強度材の配置により剛性分布が不均等となり、その剛性差に伴うオーバル変形(剛体変形)も起こり易くなる為、このようなタンク屋根5の傾斜やオーバル変形等といった浮上姿勢を詳細に把握するのに、従来の計測手段だけでは計測項目が少なすぎて不十分となり、タンク屋根5の仮浮上を何度も繰り返してバランスウエイトの取り付け位置を変更する必要が生じ、バランスウエイトによるバランス調整作業に多大な労力と時間を要するという問題があった。
【0008】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、仮浮上時におけるタンク屋根の傾斜やオーバル変形等といった浮上姿勢を詳細に把握し得るようにした姿勢計測装置を提供することによって、仮浮上の段階で容易に且つ確実にバランス調整作業を行い得るようにして、該バランス調整作業に要する労力の軽減と作業時間の短縮を図ることを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、タンク底部で組み立てたタンク屋根をエアレイジングにより仮浮上する際に、本浮上の為の適切なバランス調整を行い得るようタンク屋根の浮上姿勢を計測する姿勢計測装置であって、タンク屋根外周部に仮設した仮屋根の円周方向複数箇所とタンク側壁との間の距離を計測するシール間隔計測手段と、タンク屋根下面の半径方向複数箇所とタンク底面との間の距離を計測する浮上高さ計測手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0010】
従って、本発明では、タンク屋根をエアレイジングにより仮浮上する際に、仮屋根の円周方向複数箇所とタンク側壁との間の距離がシール間隔計測手段により計測され、タンク屋根下面の半径方向複数箇所とタンク底面との間の距離が浮上高さ計測手段により計測されるので、タンク屋根の重量のアンバランスに伴う傾斜により仮屋根とタンク側壁との間に生じたシール間隔の変化、及びタンク屋根の剛性差に伴うオーバル変形により生じたシール間隔の変化を確認することが可能となり、しかも、タンク屋根の半径方向複数箇所での浮上高さのばらつきを確認することが可能となる。
【0011】
これによって、タンク屋根の傾斜やオーバル変形等といった浮上姿勢を従来より詳細に把握することが可能となるので、バランスウエイトの取り付け位置の微調整に関する見当付けが容易となり、無駄のない効果的なバランス調整作業を行うことが可能となる。
【0012】
また、本発明においては、シール間隔計測手段を、仮屋根の円周方向複数箇所に設けた非接触式距離計により構成することが可能であり、更には、浮上高さ計測手段を、タンク屋根下面の半径方向複数箇所に懸吊したワイヤロープを所定の張力が維持されるようタンク底部で巻き取り且つタンク屋根の浮上に応じ適宜にワイヤロープを繰り出して該ワイヤロープの巻き出し長さを計測する機械式距離計により構成することが可能である。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0014】
図1〜図3は本発明を実施する形態の一例を示すもので、図4と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
【0015】
本形態例においては、タンク屋根5外周部に仮設した仮屋根5’の円周方向複数箇所に、タンク側壁2側に向けて非接触式距離計15をシール間隔計測手段として設け、該各非接触式距離計15により仮屋根5’の円周方向複数箇所とタンク側壁2との間の距離xを計測し得るようにしてある。
【0016】
ここで、前記非接触式距離計15には、タンク側壁2に対し垂直にレーザ光やマイクロ波を照射し、その反射波が戻ってくるまでの時間に基づいてタンク側壁2までの距離xを計測するような従来周知の機構のものを用いれば良い。
【0017】
また、タンク屋根5下面の半径方向複数箇所にワイヤロープ16を懸吊し、該各ワイヤロープ16をタンク底部3上の位置対応する複数箇所に設置した機械式距離計17により所定の張力が維持されるよう巻き取り且つタンク屋根5の浮上に応じ適宜にワイヤロープ16を繰り出して該ワイヤロープ16の巻き出し長さを計測し得るようにしてあり、前記各機械式距離計17によりタンク屋根5下面の半径方向複数箇所とタンク1底面との間の距離yを計測する浮上高さ計測手段が構成されている。
【0018】
尚、本形態例においては、先に図4で示した従来の場合と同様に、各張力計11によりバランスワイヤ10の夫々の張力の変化を監視すると共に、各高さ計測器12によりタンク屋根5の外周部複数箇所の浮上高さのばらつきを監視することも併用して行うようにしている。
【0019】
図3は前述した本形態例の姿勢計測装置を用いた監視システムの一例を示すもので、図示するように、各非接触式距離計15からの検出信号が専用アンプ18を介し増幅されてスキャナ19に入力されるようになっていると共に、該スキャナ19には各機械式距離計17からの検出信号も入力されるようになっており、前記スキャナ19にて夫々の検出信号をコンピュータで処理可能な電気信号に変換してデータロガー20に送り、該データロガー20にて各距離x,yの計測値の時間的推移を自動的に記録し得るようにしてある。
【0020】
ここで、各張力計11及び高さ計測器12からの検出信号もスキャナ21,19を介し前記データロガー20に入力されて、夫々の計測値の時間的推移が自動的に記録されるようになっている。
【0021】
そして、前記データロガー20は計測用コンピュータ22と接続されていて適宜にデータ検索や更新等の遣り取りが成されるようになっており、前記計測用コンピュータ22に接続されたプリンタ23により印刷記録されたり、或いは前記計測用コンピュータ22に接続されたモニタ24に表示されるようになっている。
【0022】
また、前記計測用コンピュータ22には別の画面用コンピュータ25も接続されており、該画面用コンピュータ25により電気信号の映像的な加工処理が施されて、別のモニタ26にタンク屋根5の浮上姿勢等が画像化されて表示されるようにもなっている。
【0023】
而して、本形態例によれば、タンク屋根5をエアレイジングにより仮浮上する際に、仮屋根5’の円周方向複数箇所とタンク側壁2との間の距離xが非接触式距離計15により計測され、タンク屋根5下面の半径方向複数箇所とタンク1底面との間の距離yが機械式距離計17により計測されるので、タンク屋根5の重量のアンバランスに伴う傾斜により仮屋根5’とタンク側壁2との間に生じたシール間隔の変化、及びタンク屋根5の剛性差に伴うオーバル変形により生じたシール間隔の変化を監視室等でモニタ24,26を見ながら確認することが可能となり、しかも、タンク屋根5の半径方向複数箇所での浮上高さのばらつきを監視室等でモニタ24,26を見ながら確認することが可能となる。
【0024】
これによって、タンク屋根5の傾斜やオーバル変形等といった浮上姿勢を従来より詳細に把握することが可能となるので、バランスウエイトの取り付け位置の微調整に関する見当付けが容易となり、無駄のない効果的なバランス調整作業を行うことが可能となる。
【0025】
従って、仮浮上時におけるタンク屋根5の傾斜やオーバル変形等といった浮上姿勢を詳細に把握することができ、仮浮上の段階で容易に且つ確実にバランス調整作業を行うことができるので、該バランス調整作業に要する労力の軽減と作業時間の短縮を図ることができる。
【0026】
尚、本発明のタンク屋根の浮上時における姿勢計測装置は、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、図示ではシール間隔計測手段として非接触式距離計を用いた例を示したが、例えば上下方向に転動自在なローラを先端に備えたプローブをタンク側壁に押し当ててプローブの進退動位置によりシール間隔を計測し得るようにした接触式距離計を用いても良いこと、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0027】
【発明の効果】
上記した本発明のタンク屋根の浮上時における姿勢計測装置によれば、仮浮上時におけるタンク屋根の傾斜やオーバル変形等といった浮上姿勢を詳細に把握することができ、仮浮上の段階で容易に且つ確実にバランス調整作業を行うことができるので、該バランス調整作業に要する労力の軽減と作業時間の短縮を図ることができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実施する形態の一例を示す概略断面図である。
【図2】図1の要部の拡大図である。
【図3】本形態例の姿勢計測装置を用いた監視システムの一例を示す系統図である。
【図4】従来例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
2 タンク側壁
3 タンク底部
5 タンク屋根
5’ 仮屋根
15 非接触式距離計(シール間隔計測手段)
16 ワイヤロープ
17 機械式距離計(浮上高さ計測手段)
x 距離
y 距離

Claims (3)

  1. タンク底部で組み立てたタンク屋根をエアレイジングにより仮浮上する際に、本浮上の為の適切なバランス調整を行い得るようタンク屋根の浮上姿勢を計測する姿勢計測装置であって、タンク屋根外周部に仮設した仮屋根の円周方向複数箇所とタンク側壁との間の距離を計測するシール間隔計測手段と、タンク屋根下面の半径方向複数箇所とタンク底面との間の距離を計測する浮上高さ計測手段とを備えたことを特徴とするタンク屋根の浮上時における姿勢計測装置。
  2. シール間隔計測手段を、仮屋根の円周方向複数箇所に設けた非接触式距離計により構成したことを特徴とする請求項1に記載のタンク屋根の浮上時における姿勢計測装置。
  3. 浮上高さ計測手段を、タンク屋根下面の半径方向複数箇所に懸吊したワイヤロープを所定の張力が維持されるようタンク底部で巻き取り且つタンク屋根の浮上に応じ適宜にワイヤロープを繰り出して該ワイヤロープの巻き出し長さを計測する機械式距離計により構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載のタンク屋根の浮上時における姿勢計測装置。
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