JP4066316B2 - セラミックハニカム構造体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミックハニカム構造体となるセラミック成形体を下方向に精度良く押出し成形する製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
地域環境や地球環境の保全面から、自動車などのエンジンから排出される排気ガスに含まれる有害物質の削減が求められ、これに応えるため排気ガス浄化用として、触媒コンバータや微粒子捕集用フィルタにセラミックハニカム構造体が使用されている。
このようなセラミックハニカム構造体は、セラミック坏土を押出し成形機にて押出し成形され、切断、乾燥、焼成して得られる。従来、セラミック坏土を押出し成形する際、その後工程におけるセッティング等が便利であるので、セラミック成形体を横方向に押出し成形していた。しかしながら、直径が150mmを越えるか、横方向への押出し成形時の高さが150mmを越えるような大型のセラミックハニカム成形体の場合、自重による変形を生じ易く寸法精度が悪くなるという問題があった。
【0003】
これを解決しようと、特開昭63−230304号公報には、セラミックハニカム成形体を下方向に押出し成形する方法において、下方向に押出されるセラミック成形体を保持し、セラミック成形体の押出し長さまたは押出し長さに比例する計量値を計測しつつその押出し長さに比例した力と保持力とを合わせた反力を付与することにより、自重による成形体の変形を防止したセラミックハニカム構造体を得ることができるとしている。また、その公報中には、成形体長さに比例した力及び保持力は、所定長さの成形体の重量の5倍を越えない範囲にすることが好ましいと記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術においても、外径が150mm以上の大型のセラミックハニカム構造体においては、押出し成形時の自重による変形を防ぐことは困難であり、寸法精度が悪くなるという問題を完全に解消することはできなかった。すなわち、セラミックハニカム構造体の外径が150mm以上に大きくなると、押出し成形時の金型への負荷が大きくなることから、押出し成形に使用するセラミック杯土の硬度を低下させる必要があるが、この場合、成形体の保形性が低下するという悪影響も生じる為に、セラミック成形体の押出し成形時の反力付与の制御を行っても自重による変形の発生を充分には抑えることは出来なかった。特に、ディーゼル機関の排気ガス中に含まれる微粒子捕集に用いられるフィルターの場合には、外径が190.5mm以上の大型となるため、上記の従来技術において精度良く製造することは非常に困難であった。このため、成形体を保持する支持手段の負荷荷重が小さい場合は図3(a)に示すような変形が発生し、逆に、押出される成形体を保持する支持手段の負荷荷重が大きい場合は図3(b)に示すような変形が発生するので、押出し成形時に成形体の自重による変形を抑えることは難しく、寸法精度の良い製品が得られなかった。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、変形の小さい、寸法精度の良い、外径が150mm以上の大型のセラミックハニカム構造体を安定して得ることにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討を行った結果、押出し成形時の押出し速度や押出される成形体を支持する手段に負荷する荷重を適切な範囲とすることにより、大型のセラミックハニカム構造体においても自重による変形を防ぐことができることを見出し本発明に想到した。
【0007】
すなわち、本発明は、押出し成形機から口金を介して押出される外径が150mm以上のセラミック成形体を下方向に押出し成形する方法において、セラミック成形体のセル壁厚さが0.1〜0.5mmで、セラミック成形体の押出し速度が1mm/s〜100mm/sであり、押出し成形機の口金から押出されるセラミック成形体を保持している支持手段に、押出し成形機の口金から排出される成形体質量の90〜110%の荷重を上方向に負荷するセラミックハニカム構造体の製造方法である。
【0008】
押出し成形機から口金を介して押出される外径が150mm以上のセラミック成形体を下方向に押出しする押出し速度を1mm/s〜100mm/sとすることにより、変形のない成形体を得ることができる。セラミック成形体の押出し速度とは、押出し成形機の口金から排出される成形体の押出し方向の1秒間当りの長さを言う。セラミック成形体の乾燥は通常、マイクロ波乾燥法や誘電乾燥法を行うことにより乾燥割れを防いでいるが、押出し速度が1mm/s未満の場合、押出し成形が完了するまでの時間が長く、押出し成形が完了する前に、すなわち乾燥炉に投入する前に、成形体表面が乾燥してしまい割れが生じるからである。一方、セラミック成形体の押出し速度が100mm/sを超えるように押出圧力を高くすると、押出されるセラミック成形体を保持している支持手段に、押出し成形機の口金から押出される成形体を上方向に負荷する荷重の制御が困難となり成形体が変形してしまうとともに、口金に作用する負荷が大きくなり口金が変形してしまうからである。セラミック成形体の押出し速度は好ましくは、5mm/s〜70mm/sである。更に好ましくは7mm/s〜40mm/sである。
【0009】
また、押出し成形機から口金を介して押出される外径が150mm以上のセラミック成形体を下方向に押出し成形する方法において、セラミック成形体のセル壁厚さが0.1〜0.5mmで、押出されるセラミック成形体を保持している支持手段に、押出し成形機の口金から押出される成形体質量の90%〜110%の荷重を上方向に負荷することにより自重による変形の小さい成形体を得ることが出来る。通常、押出し成形機の口金から排出される成形体質量と同じ荷重を成形体を保持する支持手段に負荷すれば、押出された成形体に変形は生じ難い。しかしながら、押出される成形体の質量を測定し、その質量と同じ負荷を支持手段から成形体に与えるには、高度な測定装置、計算手段、支持装置の微小制御装置と非常に高度な装置が必要となる。しかしながら、本発明者が本当にそのような正確な負荷を与える必要があるのか検討した。その結果、押出し成形機の口金から排出される成形体質量よりも10%程度少ない負荷を与えた場合でも、押し出された成形体の変形量が十分小さいことを見出した。さらに、押出し成形機の口金から排出される成形体質重の10%程度を余分に負荷を与えた場合でも、同様に成形体の変形を十分防ぐことができる。よって、本発明においては押出されるセラミック成形体を保持している支持手段に、押出し成形機の口金から押出される成形体質量の90%〜110%の荷重を負荷することで変形の無い成形体を得ることが出来る。より好ましくは範囲は95〜105%である。
【0010】
本発明の製造方法は、セラミックハニカム構造体のセル壁厚が0.1〜0.5mmで、坏土が口金を通過する際に口金への負荷が大きい場合や、セラミックハニカム構造体の気孔率が60〜80%で、セラミック成形体の強度が低い場合や、外径が250mm以上等の大型のハニカム構造体の場合には、特に好適である。
【0011】
【発明の実施の形態】
次に、本発明を実施例に基づき説明する。
【0012】
(実施例)
図1に示すハニカム構造体11を以下のようにして製造した。
カオリン、タルク、シリカ、水酸化アルミ、アルミナなどの粉末を、質量比でSiO2 :42〜56%、Al2O3:30〜45%、MgO:12〜16%となるよう調整した。尚、CaO、Na2O 、K2O、TiO2 、Fe2O3、PbO、P2O5などの不可避的に混入する成分を全体で2.5%以下の範囲を含んでも良い。このコージェライト生成原料粉末に、メチルセルロース等のバインダーや潤滑剤からなる成形助剤と造孔剤を添加し、規定量の水を注入して更に十分な混合を行い、ハニカム構造に押出成形可能な坏土を調整した。
次に、図2に示すように、押出し成形機21に押出成形用金型22を用いて表1に示す押出し速度と、口金から押出されるセラミック成形体の先端端面を保持している支持手段23に、押出し成形機の口金から排出される成形体質量に比例した荷重を負荷させながら押出成形し、図1に示すような外周壁とセル壁とが一体に形成された、外径267mm、長さ305mm、セル壁厚さ0.3mm、1cm2あたりのセル数45ケのハニカム構造を有する成形体を得た。
【0013】
そして、押出し成形時の成形体の自重による変形状況を評価した。その結果を表1に示す。
成形体の変形状況は、自重による変形量xが成形体直径の0.5%未満であったものを(○)、自重による変形量が成形体直径の0.3%以下の好適な結果であったものを(◎)、自重による変形量が成形体直径の0.5%以上で実使用上問題のあるものを(×)で示した。また、成形時の成形体の割れの状況についてもあわせて評価した。
【0014】
【表1】
【0015】
表1に示すように、本発明例1〜6の成形体は、成形体の押出し速度と、支持手段に負荷する荷重と排出成形体質量比が本発明の範囲内であるので、変形の小さい寸法精度の良いセラミックハニカム構造体を得ることができた。
これに対し、比較例の成形体は、成形体の押出し速度、排出成形体質量と支持手段に負荷する荷重比のいずれかが本発明の範囲を外れているので、変形が発生したセラミックハニカム構造体となった。
【0016】
【発明の効果】
以上詳細に説明したとおり、本発明によれば高度な測定装置等を用いることなく、変形の小さい寸法精度の良い外径が150mm以上の大型のセラミックハニカム構造体を安定して得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ハニカム構造体の斜視図である。
【図2】本発明の実施例である押出し成形を示した図である。
【図3】(a)口金から押出された成形体の変形状況を示した図である。
(b)口金から押出された成形体の別の変形状況を示した図である。
【符号の説明】
10:ハニカム成形体
11:ハニカム構造体
11a:外周壁
11b:セル壁
11c:セル
21:押出し成形機
22:口金
23:支持手段
x:変形量
Claims (1)
- 押出し成形機から口金を介して押出される外径が150mm以上のセラミック成形体を下方向に押出し成形する方法において、セラミック成形体のセル壁厚さが0.1〜0.5mmで、セラミック成形体の押出し速度が1mm/s〜100mm/sであり、押出し成形機の口金から押出されるセラミック成形体を保持している支持手段に、押出し成形機の口金から排出される成形体質量の90〜110%の荷重を上方向に負荷することを特徴とするセラミックハニカム構造体の製造方法。
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